特許第6578680号(P6578680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6578680レベル設定装置およびレベル設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578680
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】レベル設定装置およびレベル設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   H04R3/00
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-48468(P2015-48468)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-171389(P2016-171389A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 光太郎
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−143728(JP,A)
【文献】 特開2010−232950(JP,A)
【文献】 特開2001−356854(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0027682(US,A1)
【文献】 特開2008−227568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の系の個々のレベルを、それぞれ設定する個別レベル設定手段と、
複数の前記系をまとめてグループ化することが可能とされ、グループ化された複数の前記系における前記個別レベル設定手段の個々の設定レベルを一括して設定する全体レベル設定手段と、
前記個々の系毎に前記グループ化を設定するグループ設定手段と、
前記系毎に、前記個別レベル設定手段で設定された個別設定レベルが表示され、前記グループ化された複数の前記系では、前記個別設定レベルに、前記全体レベル設定手段で設定された全体設定レベルを反映させたレベルが、前記個々の系からミキシング用のバスに送出される送出レベルとして、前記個別設定レベルの表示にオーバレイ表示される表示手段と、
を備えることを特徴とするレベル設定装置。
【請求項2】
前記表示手段には、前記複数の系のそれぞれの前記個別設定レベルと前記送出レベルとのレベル値が、前記系毎に並べて表示されることを特徴とする請求項1に記載のレベル設定装置。
【請求項3】
さらに、前記系をオン/オフする切換手段を備え、
該切換手段によりオフされた系においては、前記送出レベルを最小のレベルとすることを特徴とする請求項1または2に記載のレベル設定装置。
【請求項4】
それぞれの入力チャンネルに設けられ、当該入力チャンネルのレベルを制御するチャンネルフェーダと、
複数の前記入力チャンネルをまとめてグループ化することが可能とされ、グループ化された複数の前記入力チャンネルにおけるチャンネルフェーダの個々の設定レベルを一括して設定するグループフェーダと、
前記入力チャンネル毎に前記グループ化を設定するグループ設定手段と、
前記チャンネルフェーダで設定したチャンネルフェーダレベルに、前記グループフェーダで設定したグループフェーダレベルを反映させたレベルを、前記グループ化された複数の前記各入力チャンネルからミキシング用のバスに送出される送出レベルとして算出する算出手段と、
前記入力チャンネル毎に前記チャンネルフェーダレベルが表示され、前記グループ化された複数の前記入力チャンネルでは、前記チャンネルフェーダレベルの表示に、前記算出手段で算出した前記送出レベルがオーバレイ表示される表示手段と、
を備えることを特徴とするレベル設定装置。
【請求項5】
前記表示手段は、バーの長さによりレベルが示されるレベル表示部を有し、該レベル表示部と、該レベル表示部の所定レベル位置に置かれることによりレベルを示すレベル指示手段とにより、前記チャンネルフェーダレベルの表示に、前記算出手段で算出した前記送出レベルがオーバレイ表示されることを特徴とする請求項4に記載のレベル設定装置。
【請求項6】
さらに、1つの前記入力チャンネルから複数の前記ミキシング用のバスへ送るセンドレベルを前記バス毎に制御する複数のセンドを備え、
前記算出手段は、前記グループ化されていない前記入力チャンネルでは、前記チャンネルフェーダで設定した前記チャンネルフェーダレベルに、前記各センドに設定されたセンドレベルを反映させることにより、前記各センドから前記バスへ送出される送出レベルを算出し、前記グループ化された前記入力チャンネルでは、前記チャンネルフェーダで設定したチャンネルフェーダレベルに、前記グループフェーダで設定したグループフェーダレベルを反映させると共に、前記各センドに設定されたセンドレベルを反映させることにより、前記各センドから前記バスへ送出される送出レベルを算出することを特徴とする請求項4に記載のレベル設定装置。
【請求項7】
前記表示手段は、バーの長さによりレベルが示されるレベル表示部を有し、該レベル表示部と、該レベル表示部の所定レベル位置に置かれることによりレベルを示すレベル指示手段とにより、前記センドに設定されたセンドレベルの表示に、前記算出手段で算出した送出レベルがオーバレイ表示されることを特徴とする請求項6に記載のレベル設定装置。
【請求項8】
表示手段を少なくとも備えるコンピュータに、
複数の系の各系が備える個別レベル設定手段のユーザ操作に応じて、ユーザ操作された系の個別設定レベルを設定する個別レベル設定ステップと、
全体レベル設定手段のユーザ操作に応じて、複数の前記系をまとめたグループに属する複数の前記系における前記個別レベル設定手段の個々の設定レベルを一括してレベル設定する全体レベル設定ステップと、
前記個々の系毎に前記グループに属させるか否かをユーザ操作に応じて設定するグループ設定ステップと、
前記系毎に、前記個別レベル設定ステップで設定された個別設定レベルを表示し、前記グループ化された複数の前記系では、前記個別設定レベルに、前記全体レベル設定ステップで設定された全体設定レベルを反映させたレベルを、前記個々の系からミキシング用のバスに送出される送出レベルとして、前記個別設定レベルの表示にオーバレイ表示する表示ステップと、
からなる手順を実行させることを特徴とするレベル設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、個別レベル設定手段で設定されたレベルと、全体レベル設定手段で設定されたレベルを反映したレベルとを恒常的に同時に表示することができるレベル設定装置およびレベル設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミキサは、入力信号系列として複数のマイク/ライン入力の入力チャンネル(以下、「チャンネル」を「ch」として表す。)を備え、入力chからミキシング用のバスに送出する。このバスからのミキシング信号は、出力信号系列である複数の出力chから出力される。各入力chでは、周波数特性および音量レベルが設定され、次いでバスへ送出されるセンドレベルが設定される。
従来のミキサにおいて、各入力ch毎に備えられているchフェーダの複数をDCAグループとしてまとめ、DCAフェーダを操作することで、同一グループ内のchフェーダを連動させて操作する機能が知られている。この場合、実際にそのchからバスへ送出されるレベルは、chフェーダのレベルにDCAフェーダのレベルを反映したレベルとなる。そして、従来のミキサにおいて、chフェーダのツマミの位置がフェーダレベルを示すことになるが、スイッチを操作することにより、chフェーダのツマミの位置を、フェーダレベルにDCAフェーダのDCAレベルを反映した位置に動かして、実際にそのchからバスへ送出されるレベルをツマミの位置により表示することが知られている(特許文献1参照)。これにより、スイッチを操作することで実際にそのchから送出されるレベルを簡単に確認することができるようになる。そして、スイッチを操作しない限りDCAフェーダのレベルが反映されないので、chフェーダにおいてはツマミを動かしてレベルを細かく設定することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−253876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のミキサにおいては、一時的にDCAフェーダで設定されたDCAレベルを反映したレベルを表示することはできたが、現在のchフェーダで設定されたフェーダレベルと、DCAレベルを反映した実際に送出されるレベルとを対比できるように恒常的に同時に表示することはできなかった。すなわち、レベルを設定する際にフェーダレベルとDCAレベルとの対比ができず、効率的にレベルを設定することができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、個別レベル設定手段で設定されたレベルと、全体レベル設定手段で設定されたレベルを反映した実際に送出されるレベルとを対比できるように恒常的に同時に表示するレベル設定装置およびレベル設定プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のレベル設定装置は、複数の系の個々のレベルを、それぞれ設定する個別レベル設定手段と、複数の前記系をまとめてグループ化することが可能とされ、グループ化された複数の前記系における前記個別レベル設定手段の個々の設定レベルを一括して設定する全体レベル設定手段と、前記個々の系毎に前記グループ化を設定するグループ設定手段と、前記系毎に、前記個別レベル設定手段で設定された個別設定レベルが表示され、前記グループ化された複数の前記系では、前記個別設定レベルに、前記全体レベル設定手段で設定された全体設定レベルを反映させたレベルが、前記個々の系からミキシング用のバスに送出される送出レベルとして、前記個別設定レベルの表示にオーバレイ表示される表示手段とを備えることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレベル設定装置では、個別レベル設定手段で設定された個別設定レベルを表示する表示手段に、グループ化された複数の系では、個別レベル設定手段の個別設定レベルに、全体レベル設定手段の全体設定レベルを反映させたレベルを、個々の系から送出される送出レベルとして、前記個別設定レベルの表示にオーバレイ表示している。これにより、表示手段を見ることで、個別レベル設定手段で設定されたレベルと、全体レベル設定手段で設定されたレベルを反映した実際に送出されるレベルとを対比することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明にかかるレベル設定装置を備えるミキサの主要な構成を示す回路ブロック図である。
図2】本発明にかかるミキサの構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明にかかるレベル設定装置を備えるミキサで実行される表示処理のフローチャートである。
図4】本発明にかかるレベル設定装置を備えるミキサに表示される入力チャンネルのチャンネル画面、その一部を拡大して示す図、異なる表示態様のチャンネル画面である。
図5】本発明にかかるレベル設定装置を備えるミキサに表示される入力チャンネルのメイン画面、および、その一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にかかるレベル設定装置を備えるミキサ1の主要な構成を示す回路ブロック図を図1に示す。
図1において、ミキサ1は、入力ch数がnとされている入力ch毎に設けられた入力ch部10−1,10−2,・・・,10−nを備え、各入力ch部10−1〜10−nにおいて周波数特性およびAUXバス12とSTバス13に送出されるレベルが制御される。本発明にかかるレベル設定装置は、入力ch部10−1〜10−nと、ミキサ1が備える図示しないパネルに設けられた後述するチャンネル画面30およびメイン画面40が表示される表示手段とにより構成される。入力ch部10−1には入力ch1の音信号In1が入力され、入力ch部10−2には入力ch2の音信号In2が入力され、・・・,入力ch部10−nには入力chnの音信号Innが入力される。各入力ch部10−1〜10−nは同じ構成とされており、ヘッドアンプ(HA)21、イコライザ(EQ)22、コンプレッサ(Comp)23、フェーダ(Fader)24、パン(Pan)25を縦続接続した構成、および、センド(Send)26を備えている。HA21は、入力された音信号In1〜Innを所定レベルに増幅するアンプであり、EQ22は、入力chの音信号In1〜Innの周波数特性を調整するイコライザであり、例えば、HI,MID HI,LOW MID,LOWの4バンドの各バンド毎の周波数特性を可変できるようにされている。また、コンプレッサ23は、入力chの音信号In1〜Innのダイナミックレンジを狭くして、入力chの音信号In1〜Innが飽和することを防止しており、フェーダ24は、入力chの音信号In1〜Innのレベルを制御する電動フェーダ等のレベル可変手段であり、パン25は、入力ch部10−1〜10−nからLRの2系統のステレオ(ST)バス13に送られるステレオ信号の左右の定位を調節している。さらに、センド26には、フェーダ24の前と後とのいずれかの音信号が供給されており、複数本(m本)のミキシング用のAUXバス12のそれぞれに送る音信号のセンドレベルを制御している。この場合、センド26には、m本のAUXバス12毎にフェーダ24の前からのプリフェーダ信号あるいは後からのポストフェーダ信号が選択されて供給され、選択された音信号のセンドレベルを制御して各AUXバス12に送っている。
【0010】
また、ミキサ1では、各入力ch部10−1〜10−nに備えられているフェーダ24の複数をDCAグループとしてまとめて、DCAフェーダ11を操作することで、同一のDCAグループに属するフェーダ24を連動させて操作する機能を有している。ミキサ1には、グループ設定手段が備えられており、このグループ設定手段によりDCAグループを複数作成して、任意の入力chを任意のDCAグループに属させる設定を行うことができる。DCAグループに属する入力chでは、実際にその入力chのフェーダ24から送出されるレベルは、フェーダ24で設定したフェーダレベルにDCAフェーダ11のDCAレベルを反映したレベルとなる。
ミキサ1においては、入力ch1〜chnの音信号を入力ch部10−1〜10−nから、m本のAUXバス12の任意のバスに供給してミキシングすることができると共に、STバス13に供給してミキシングすることができる。そして、m本のAUXバス12からのミキシング信号は、出力ch数がmとされている出力ch毎に設けられた出力ch部14−1,14−2,・・・,14−mのそれぞれの出力chに出力されている。また、STバス13でミキシングされたステレオ信号はステレオ出力ch部15に出力されている。出力ch部14−1,14−2,・・・,14−mおよびステレオ出力ch部15においては、イコライザ、コンプレッサ、フェーダなどが縦続接続されて設けられており、出力する音信号の周波数特性やレベルが制御される。
【0011】
ミキサ1の構成を示す機能ブロック図を図2に示す。
図2に示すミキサ1において、音信号の信号処理はDSP(Digital Signal Processor)52を用いて実行されており、CPU(Central Processing Unit)50の制御の元で入力ch部10−1〜10−n、AUXバス12、STバス13、出力ch部14−1〜14−m、ステレオ出力ch部15における信号処理を行っている。これらの信号処理をCPU50にて動作するソフトウェアによって実現しても良い。ミキサ1の全体の制御はCPU50により行われている。メモリ51は、フラッシュメモリとRAM(Random Access Memory)とを備え、CPU50が実行するレベル設定プログラム等の動作ソフトウェアや各種データがフラッシュメモリに記憶され、CPU50のワークメモリ領域や一時保存データ等の領域がRAMに設定される。なお、フラッシュメモリの一部領域をRAMとして用いてもよいし、フラッシュメモリに替えてハードディスク等の書換可能な不揮発性の記憶デバイスを用いてもよい。表示手段である表示部53は、液晶表示器等とされ後述するチャンネル画面30やメイン画面40などの画面が表示される。操作部54は、フェーダ24やセンド26等の操作子を備え、操作子の操作を検出している。検出された操作信号に基づいて信号処理に用いるパラメーターが編集される。表示部53をタッチパネル付きとして、タッチパネルを操作部54とすることができる。その他I/F55は、外部機器を接続するためのインタフェースであり、ネットワーク用のインタフェースやUSB(Universal Serial Bus)などのシリアルインタフェースとされる。音声I/F56は、ミキサ1に音信号を入力するアナログ入力ポートや信号処理された音信号を出力するアナログ出力ポート、ディジタル信号を入力すると共に、外部に信号処理されたディジタル信号を出力するディジタル入力/出力ポートを備えている。アナログ入力ポートから入力された音信号はディジタル信号に変換されて音声/通信バス57に送出され、入力されたディジタル入力信号も音声/通信バス57に送出される。音声/通信バス57へ送出されたディジタル信号はDSP52が受け取って所定の信号処理が施される。これにより、DSP52から音声/通信バス57に送出された音信号を音声I/F56からスピーカ等へ供給することができるようになる。
【0012】
ミキサ1は本発明にかかるレベル設定プログラムを実行することにより、以下に説明するレベル設定装置を実現している。レベル設定装置では、入力ch部10−1〜10−nのフェーダ24から送出される音信号の実際のレベルを算出して表示する表示処理をCPU50が行い、表示処理により後述するチャンネル画面30のフェーダレベルを表示する表示部に、フェーダ24から実際に送出されるレベルがオーバレイ表示されるようになる。表示処理では、DCAグループに属する入力chでは、フェーダ24で設定したフェーダレベルにDCAフェーダ11で設定したDCAレベルを反映させて算出したレベルをオーバレイ表示するようにし、DCAグループに属していない入力chでは、フェーダ24で設定したフェーダレベルが実際の送出レベルとなることから、フェーダレベルのみ表示する。CPU50で実行される表示処理のフローチャートを図3に示す。
表示処理は所定タイミングが到来する毎にスタートされ、表示処理がスタートされると、ステップS10にてDCAが反映されるチャンネルか否かをCPU50が判断する。ここでは、DCAグループに属していない入力chの場合はDCAが反映しないと判断されてステップS11に進む。ステップS11では、CPU50は表示するレベルをフェーダ24で設定されているフェーダレベル値のみとする。また、DCAグループに属している入力chの場合は、ステップS10でDCAが反映すると判断されてステップS12に進む。ステップS12では、CPU50は、フェーダ24で設定されているフェーダレベルを表示部53に表示すると共に、DCAフェーダ11で設定されているDCAレベルをフェーダレベルに乗算してフェーダ24から送出される実際のレベルを算出し、算出したレベルを表示部53にオーバレイ表示する。ステップS11あるいはステップS12の処理が終了すると表示処理は終了する。なお、ステップS12において乗算により算出するのは、フェーダレベルおよびDCAレベルがリニアスケールの場合であり、dBスケールの場合はフェーダレベルにDCAレベルが加算されて表示部53に表示するレベルが算出される。なお、フローチャートでは示されていないが表示処理が一度スタートすると、全ての入力ch部10−1〜10−nにおける全てのフェーダ24から送出される実際の各レベルの全てがCPU50で算出される。すなわち、n回の表示処理がCPU50で繰り返し行われることになる。そして、算出された各レベルで表示部53に表示される表示レベルが更新されて記憶手段に記憶される。
【0013】
本発明にかかるミキサ1の表示部53に表示される入力チャンネルのチャンネル画面を図4(a)に、その一部を拡大して図4(b)に、異なる表示態様のチャンネル画面を図4(c)に示す。
ユーザの操作により表示部53に、図4(a)に示すチャンネル画面30を表示することができる。チャンネル画面30は、各入力chの主なパラメータの設定状態を表示する画面であり、図示する例は、チャンネル画面30には入力ch1(CH1)〜入力ch8(CH8)におけるパラメータの設定状態が表示されている。また、入力ch1〜入力ch8はDCAグループに属しており、属するDCAグループのDCAフェーダ11で設定されたDCAレベルを表示するDCAレベル表示部11aが設けられている。入力ch1〜入力ch8では、各入力chから実際に送出されるレベルを表示する後述するchレベル表示部31bと、各入力chのフェーダ24で設定したフェーダレベルを表示する後述するフェーダレベル指示部31cがchレベル表示部31bにオーバレイ表示されている。また、入力ch1〜入力ch8では、各入力chにおける他のパラメータの設定状態も表示されており、図4(b)に拡大して示す入力ch4(CH4)を例に挙げて説明する。
【0014】
パラメータの設定状態が表示されている図4(b)に示す入力ch4では、入力ch4のチャンネル番号「CH4」がch番号部31aに表示され、その上側にchレベル表示部31bとフェーダレベル表示部31cとが表示されている。フェーダレベル表示部31cは、フェーダのノブを模擬する横に細長い矩形状とされ、フェーダレベル指示部31cの下からの高さ位置でフェーダレベルを示している。chレベル表示部31bは、縦に長い矩形状の枠で表示され、例えば濃い色のバーの下からの長さでchレベルを表示している。このchレベル表示部31bに表示されるchレベルは、実際に送出されるレベル(フェーダ24で設定されたフェーダレベル×DCAフェーダ11で設定されたDCAレベル)であり、フェーダレベル表示部31cにオーバレイ表示されている。レベル表示部31bの上側にはパン25の定位状態を示すPAN 部25aと、さらにその上側に入力チャンネルをオン/オフするCHSW27aが表示されている。AUXバスセンドエリア31では、AUXバス12が8本とされている例が示されている。また、CHSW27aは、図1に示すフェーダ24とPAN25とを接続するラインであって、フェーダ24からの信号を分岐する前に挿入されており、CHSW27aをオフすると、フェーダ24からAUXバス12およびSTバス13への送出がオフになる。
【0015】
なお、chレベル表示部31bでは、上記した図3に示す表示処理で算出されたフェーダ24から実際に送出されるレベルが記憶手段から読み出され、表示された濃色で示すバーの長さが読み出されたレベルに応じた長さとされる。図示する場合は、入力ch4がDCAグループに属しており、入力ch4の入力ch部10−4のフェーダ24に設定されているフェーダレベルに、DCAフェーダ11に設定されているDCAレベルが乗算されたレベルが表示される。他の入力ch(CH1〜CH3,CH5〜CH8)でも表示態様は同様とされている。
このように、チャンネル画面30を表示させるとフェーダ24で設定したフェーダレベルに、フェーダ24から実際に送出されるレベルがオーバレイ表示されていることから、ユーザはチャンネル画面30を見ることで、レベルを設定する際にフェーダレベルとDCAレベルとを対比しながら、効率的にレベルを設定することができるようになる。
【0016】
ところで、前述したようにCHSW27aをオフすると、フェーダ24からAUXバス12およびSTバス13へ送出されなくなることから、フェーダ24から実際に送出されるレベルは最小のレベルとなる。CHSW27aをオフされた場合のチャンネル画面30の表示態様を図4(c)に示す。
図4(c)に示す例では、入力ch3,5,6(CH3,CH5,CH6)のCHSW27aがオフされており、CHSW27aの欄がグレー表示されている。CH3,CH5,CH6のchレベル表示部31bでは、0レベルが実際に送出されるレベルとして表示されているが、CHSW27aのオン/オフに関わらずフェーダ24で設定されたフェーダレベルはフェーダレベル指示部31cで表示されている。なお、上記した表示処理では、CHSW27aのオン/オフをフェーダ24から実際に送出されるレベルに反映させており、CHSW27aをオフした場合は、0レベルが算出されて表示されるようになる。なお、0レベルが算出されるのは、フェーダレベルおよびDCAレベルがリニアスケールの場合であり、dBスケールの場合は最小のレベルが算出される。
【0017】
本発明にかかるミキサ1の表示部53に表示される入力chのメイン画面40の構成を図4(a)に示す。
ユーザがメイン画面40を表示させる操作を行うと、表示部53に図4(a)に示す入力ch用のメイン画面(CH View)40が表示される。図示する例は、入力ch1用のメイン画面40であり、「Ch.1 Vocal」のch名と、入力ch1に対応する入力ch部10−1に設定されている各種パラメータが表示される。なお、図示しないチャンネル移動ボタンを操作することにより、入力ch2〜nのいずれかの入力ch用のメイン画面40を表示することができ、何れであってもメイン画面40は共通の構成とされている。メイン画面40には、HA21のゲインを回転角度で示すノブとレベルメータとからなるHA部21aと、EQ22の周波数特性のグラフとレベルメータとからなるEQ部22aと、コンプレッサ23の出力レベル特性を示すグラフとレベルメータとからなるComp部23aとが向かって左側からほぼ中央部に表示されている。その右側には、フェーダ24のフェーダレベルを設定するノブを備えるFader部24aと、そのレベルメータとが表示され、その上側にパン25の定位状態を示すPAN 部25aと、さらにその上側にチャンネルをオン/オフするCHSW27aが表示されている。さらに、これらの右側にセンド26に設けられているセンドフェーダで設定されたセンドレベルと、AUXバス12のm本の各バスへ送出される実際のレベルとをオーバレイ表示する後述するレベル表示部42cと、後述するPre/Post表示部42bとを備えるAUXバスセンドエリア41が表示されている。図示するAUXバスセンドエリア41では、AUXバス12が8本とされている例が示されている。
【0018】
AUXバスセンドエリア41に表示されるAUXバス12のバス1に関連する表示態様を拡大して図5(b)に示す。この図に示すように、バス番号部41aに「1」と表示され、その右側にPre/Post表示部42bが表示され、その右側にセンドフェーダで設定されたセンドレベルをフェーダのノブを模擬するセンドレベル指示部42dのレベル位置で示すレベル表示部42cが表示されている。AUXバス12のバス1には、このバス3に接続されているセンド部から送出された音信号が供給される。Pre/Post表示部42bが図示するように白抜きの○が表示されている場合は、バス1に接続されているセンド部にフェーダ24の前からのプリフェーダ(PRE)の音信号が供給されていることを示しており、塗りつぶされて●が表示されている場合は、バス1に接続されているセンド部にフェーダ24の後からのポストフェーダ(POST)の音信号が供給されていることを示している。また、上記した図3に示す表示処理で算出されたレベルにセンドフェーダで設定されたセンドレベルが乗算されて、センド部から実際に送出されるレベルが算出され、算出されたレベルが濃色で示すバーの長さで示されるレベル表示がレベル表示部42cにオーバレイ表示されている。AUXバス12の他のバスでも表示態様は同様とされている。
このように、AUXバスセンドエリア41のレベル表示部42cに表示されるレベルを、センドレベルと、AUXバス12に実際に送出されるレベルとすることができることから、ユーザはAUXバスセンドエリア41を見ることで、センドレベルとフェーダレベルおよびDCAレベルとを対比しながら、AUXバス12の各バスへ送る実際の音量を設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上説明した本発明のレベル設定装置を備えるミキサでは、各入力chに設けられているフェーダ24が、複数の系の個々のレベルを、それぞれ設定する個別レベル設定手段に相当し、DCAフェーダ11が、複数の前記系をまとめてグループ化することが可能とされ、グループ化された複数の前記系における前記個別レベル設定手段の個々の設定レベルを一括して設定する全体レベル設定手に相当し、任意の入力chを任意のDCAグループに属させる設定を行うグループ設定手段が、個々の系毎にグループ化を設定するグループ設定手段に相当し、フェーダ24で設定したフェーダレベルをフェーダレベル指示部31cで表示すると共に、算出された実際に送出されるレベルをオーバレイ表示するchレベル表示部31bが、前記系毎に、前記個別レベル設定手段で設定された個別設定レベルが表示され、前記グループ化された複数の前記系では、前記個別設定レベルに、前記全体レベル設定手段で設定された全体設定レベルを反映させたレベルが、前記個々の系から送出される送出レベルとして、前記個別設定レベルの表示にオーバレイ表示される表示手段に相当する。
なお、DCAグループに属していない入力chでは、フェーダレベルのみ表示するようにしたが、chレベル表示部31bを用いてフェーダレベルと同値の送出レベルをフェーダレベル指示部31cにオーバレイ表示してもよい。
【0020】
上記説明したミキサ1のセンド26は、プリフェーダ信号あるいはポストフェーダ信号を選択するAUXバス12と同数のm個の選択部と、選択部にそれぞれ縦続接続されたm個のセンド部とを備えている。各センド部は、m本のAUXバス12のそれぞれに送るセンドレベルを設定している。
本発明のレベル設定装置は、ミキサのレベル設定装置として説明したが、これに限ることはなく、例えば、複数の照明を備える照明装置の各照明の照度レベルを制御するレベル設定装置とすることができる。この場合は、複数の照明の個々の照度レベルを個別レベル設定手段で設定し、複数の照明の個々の照度レベルを、一括して全体レベル設定手段で制御することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ミキサ、10−1〜10−n 入力ch部、11 DCAフェーダ、11a DCAレベル表示部、12 AUXバス、13 STバス、14−1〜14−m 出力ch部、15 ステレオ出力ch部、21 HA、21a HA部、22 EQ、22a EQ部、23 コンプレッサ、23a Comp部、24 フェーダ、24a Fader部、25 パン、25a PAN 部、26 センド、30 チャンネル画面、31 バスセンドエリア、31a ch番号部、31b chレベル表示部、31c フェーダレベル指示部、40 メイン画面、41 AUXバスセンドエリア、41a バス番号部、42b Pre/Post表示部、42c レベル表示部、42d センドレベル指示部、50 CPU、51 メモリ、52 DSP、53 表示部、54 操作部、55 その他I/F、56 音声I/F、57 通信バス
図1
図2
図3
図4
図5