【文献】
Kono et al.,Compact and Low Power DP-QPSK Modulator Module with InP-Based Modulator and Driver ICs,OFC/NFOEC Technical Digest,米国,Optical Society of America,2013年,OW1G.2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0012】
本願発明は、(1)基板上に形成され、側面および上面によって画定され、端面を有する導波路と、前記基板上において前記導波路を埋め込む樹脂と、を備え、前記導波路の側面および上面に前記樹脂が設けられていない非樹脂領域が、前記端面から前記導波路の延びる方向に所定距離にわたって延びる、光半導体素子である。
(2)前記導波路は、入力導波路と、光分岐部と、2本のアームと、光合波部と、出力導波路とを含むマッハツェンダ変調器を構成し、前記非樹脂領域は、前記入力導波路の端面から前記光分岐部に至るまでもしくは途中まで延びてもよい。
(3)前記非樹脂領域は、前記出力導波路の端面から前記光合波部に至るまでもしくは途中まで延びてもよい。
(4)前記樹脂は、ベンゾシクロブテンとしてもよい。
他の本願発明は、(5)基板上に、側面および上面によって画定されかつ端面を有する導波路を形成し、前記基板上において前記導波路を樹脂で埋め込み、前記端面から前記導波路の延びる方向に所定距離にわたって前記樹脂を除去する、光半導体素子の製造方法である。
他の本願発明は、(6)基板上に形成され、側面および上面によって画定され、端面を有する半導体の導波路と、前記基板上において前記導波路を埋め込む樹脂と、を備え、前記導波路の側面および上面に前記樹脂が設けられていない非樹脂領域が前記端面から前記導波路の延びる方向に所定距離にわたって延びる光半導体素子の検査方法であって、前記端面に光入射させることによって前記導波路から得られる電気信号を計測する、光半導体素子の検査方法である。
(7)光ファイバから前記端面に光入射させ、前記電気信号の計測結果に応じて、前記光ファイバの位置を決定してもよい。
(8)光ファイバからレンズを介して前記端面に光入射させ、前記電気信号の計測結果に応じて、前記光ファイバおよび前記レンズの位置を決定してもよい。
【0013】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光半導体素子、光半導体素子の製造方法および光半導体素子の検査方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
まず、実施例の説明に先立って、比較例に係る変調器200の概略について説明する。
図1は、変調器200の光導波路部分の斜視図である。
図1で例示するように、変調器200は、基板10上に、メサ状の光導波路の経路を組み合わせて構成されたマッハツェンダ変調器1が設けられた構成を有する。マッハツェンダ変調器1は、基板10上に、2本の入力導波路21a,21bと、入力導波路21a,21bに接続され、入力導波路21aから入力された光を分岐する光カプラ22と、分岐された光を伝搬させる2本の変調導波路(アーム)23a,23bと、変調導波路23a,23bを伝搬した光を合波させる光カプラ24と、光カプラ24からの出力光を外部へと導く出力導波路25a,25bと、を含む。
【0015】
図1の例では、光カプラ22,24として2×2カプラを用いている。
図1では、後述するグランド電極32が図示されている。なお、メサ状の光導波路以外の領域では半導体が形成されていなくてもよいが、
図1ではグランド電極32以外の領域において半導体層50が形成されている。
【0016】
図2は、光導波路部分を覆う樹脂を含む斜視図である。
図2では、マッハツェンダ変調器1をなす光導波路の経路を点線で図示する。
図2で例示するように、変調器200において、マッハツェンダ変調器1上を樹脂40が覆っている。それにより、光導波路をなすメサが樹脂40によって埋め込まれている。樹脂40は、BCB(ベンゾシクロブテン)などの有機材料である。
【0017】
配線パターンは、p側の進行波型電極31a,31b、n側のグランド電極32、およびp側の位相調整電極33a,33bを含む。グランド電極32は、変調導波路23aと変調導波路23bとの間に形成された樹脂40の開口に設けられている。グランド電極32以外の配線パターンは、樹脂40上に設けられている。グランド電極32以外の配線パターンは、樹脂40に形成された開口を介してマッハツェンダ変調器1に接続されている。
【0018】
進行波型電極31aは、
図1の変調導波路23aに接続されている。進行波型電極31bは、
図1の変調導波路23bに接続されている。進行波型電極31a,31bに高周波の電気信号が供給されると、グランド電極32との間で高周波の電気信号が流れる。それにより、変調導波路23a,23bの屈折率が変化し、変調導波路23a,23bを通過する光の位相が変化する。それにより、出力導波路25a,25bから出力される光がオン・オフし、変調信号が得られる。
【0019】
図1の変調導波路23a上には、進行波型電極31aと離間して位相調整電極33aが接続されている。
図1の変調導波路23b上には、進行波型電極31bと離間して位相調整電極33bが接続されている。位相調整電極33aから変調導波路23aには、外部から直流信号が供給される。それにより、変調導波路23aを伝搬する光の位相が調整される。位相調整電極33bから変調導波路23bには、外部から直流信号が供給される。それにより、変調導波路23bを伝搬する光の位相が調整される。
【0020】
変調器200を使用する場合、入力光として外部から光強度の大きいレーザ光が入力導波路21aに入射する。入力光が入力導波路21aからズレて樹脂40に集光されると、レーザ光の高エネルギによって樹脂40が分解・気化され、端面に再付着する障害などが発生するおそれがある。特に、変調器の光導波路の幅は数μm程度(例えば1.5μm)と狭いため、入力光が樹脂に入射しやすい傾向にある。再付着した樹脂は、光の吸収や散乱を引き起こす。そのため、光損失が増大し、入射効率の低下を招くおそれがある。
【0021】
そこで、以下の実施形態では、樹脂の分解・気化を抑制することができる光半導体素子、光半導体素子の製造方法および光半導体素子の検査方法について説明する。
【0022】
(実施形態)
図3は、実施形態に係る変調器100の斜視図であり、
図2に対応する図である。以下、
図1および
図2の変調器200と異なる点について説明する。なお、変調器200と同じ構成については、同じ符号を付すことによって説明を省略する。
図3で例示するように、変調器100が変調器200と異なる点は、入力導波路21aの端面周辺において樹脂40が設けられていない点である。この構成により、側面および上面によって画定される入力導波路21aの端面周辺において、入力導波路21aの側面および上面が露出している。
【0023】
図4(a)は、入力導波路21aの端面図である。
図4(a)で例示するように、入力導波路21aの端面において、入力導波路21aを中心として、所定の幅にわたって樹脂40が設けられていない。なお、樹脂40が設けられていない領域(以下、非樹脂領域)の幅は、特に限定されるものではない。例えば、非樹脂領域は、変調器100の一方の側端面から他方の側端面に至るまでの領域であってもよい。また、非樹脂領域は、入力導波路21aから、当該入力導波路21aに近い側の側端面に至る途中までの領域であってもよい。また、非樹脂領域は、入力導波路21aから入力導波路21bに至るまでもしくはその途中までの領域であってもよい。例えば、非樹脂領域は、入力導波路21aを中心として、両側に10μm以上の幅を有していることが好ましい。両側に25μm以上の幅を有していることがより好ましい。なお、非樹脂領域の幅は、外部機器からの入力導波路21aの端面に対する焦点の誤差以上としてもよい。
【0024】
図4(b)は、入力導波路21a周辺の上面図である。
図4(b)で例示するように、入力導波路21aの端面から奥行き方向(入力導波路21aが延びる方向)に所定距離にわたって非樹脂領域が設けられている。なお、非樹脂領域の奥行き距離は、特に限定されるものではない。例えば、非樹脂領域は、入力導波路21aの端面から光カプラ22に至るまでもしくはその途中までにおける領域であってもよい。例えば、非樹脂領域は、入力導波路21aの端面から20μm以上の奥行き距離を有していることが好ましく、50μm以上の奥行き距離を有していることがより好ましい。なお、非樹脂領域の奥行き距離は、外部機器からの入力導波路21aの端面に対する焦点の誤差以上としてもよい。
【0025】
本実施形態によれば、入力導波路21aの端面周辺において、樹脂40が設けられていない。この場合、入力導波路21aに入力される光が樹脂40において焦点をなすことが抑制され、樹脂40の分解・気化が抑制される。それにより、樹脂が入力導波路21aの端面などに再付着することが抑制される。その結果、光吸収や光散乱が抑制され、入射効率低下が抑制される。
【0026】
(変形例)
図5は、変形例に係る変調器100aの斜視図である。変調器100aが変調器100と異なる点は、出力導波路25aの端面周辺においても、樹脂40が設けられていない点である。それにより、側面および上面によって画定される出力導波路25aの端面周辺において、出力導波路25aの側面および上面が露出している。このような構成では、出力導波路25aに光を入射しつつ変調器100の検査を行う場合などにおいて、樹脂40の分解・気化を抑制することができる。なお、出力導波路25aの端面周辺の非樹脂領域は、入力導波路21aの端面周辺の非樹脂領域と同様の形状を有していてもよい。また、非樹脂領域は、出力導波路25bの端面周辺に設けられていてもよい。
【0027】
(製造方法)
続いて、変調器100の製造方法について説明する。
図6(a)〜
図6(f)は、
図3のA−A線およびB−B線断面の一方の光導波路周辺における製造フロー図である。まず、
図6(a)で例示するように、n型InPの基板10上に、有機金属気相成長法(MOVPE法)によりn型InPの下部クラッド層51、AlGaInAs井戸層およびAlInAsバリア層を含むMQWからなるコア層52、p型InPの上部クラッド層53、p+型InGaAsのコンタクト層54を含む結晶成長を行う。
【0028】
次に、
図6(b)で例示するように、
図6(a)の成長工程で得られたウェハ上に、例えば熱CVD法等を用いてSiO
2膜55を形成し、リソグラフィー法を用いて当該SiO
2膜55を光導波路の形状にパターニングする。次に、
図6(c)で例示するように、SiO
2膜55をマスクとして用いて、塩素系反応性イオンエッチング(RIE)により下部クラッド層51、コア層52、上部クラッド層53およびコンタクト層54の加工を行い、メサを形成する。例えば、光導波路幅を1.5μmとし、メサ高さを3μmとする。
【0029】
次に、
図6(d)で例示するように、バッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより、SiO
2膜55を除去する。次に、
図6(e)で例示するように、半導体表面保護のための新たなSiO
2膜56を、熱CVD法により形成する。次に、
図6(f)で例示するように、樹脂40を6μmの厚さにスピン塗布して表面を平坦化し、300℃程度の高温でキュアを行い硬化させる。
【0030】
図7(a)〜
図7(f)および
図8(a)〜
図8(d)は、
図6(f)後の製造フロー図である。
図7(a)〜
図7(c)および
図8(a)〜
図8(b)は、
図3のA−A線断面の変調導波路23a周辺に対応する。
図7(d)〜
図7(f)および
図8(c)〜
図8(d)は、
図3のB−B線断面の入力導波路21a周辺に対応する。なお、進行波型電極31bおよび位相調整電極33a,33bが設けられた箇所における製造工程は、B−B線断面と共通する。
【0031】
図7(a)で例示するように、例えばCF
4とO
2との混合ガスを用いたRIEにより、樹脂40に対してエッチングを行う。それにより、変調導波路23a上面のSiO
2膜56を露出させる。樹脂40の開口幅は、例えば10μm程度である。なお、
図7(d)で例示するように、B−B線断面においては、マスクなどを形成することで、エッチングを行わない。
【0032】
次に、
図7(b)で例示するように、変調導波路23a上のSiO
2膜56を、フッ素RIEなどにより除去する。なお、
図7(e)で例示するように、B−B線断面においては、マスクなどを形成することで、エッチングを行わない。次に、
図7(c)および
図7(f)で例示するように、ウェハ全面にわたってTi/Pt/Auのオーミック電極57を蒸着し、リフトオフする。
【0033】
次に、
図8(a)および
図8(c)で例示するように、変調導波路23a上のオーミック電極57上にAuメッキを行うことにより、例えば厚さ3μmの進行波型電極31aを形成する。進行波型電極31a以外の領域のオーミック電極57についてはミリングなどにより除去する。次に、
図8(d)で例示するように、CF
4とO
2との混合ガスを用いたRIEなどにより、光入力側の入力導波路21aの端面付近の樹脂40を除去する。なお、
図8(b)で例示するように、入力導波路21aの端面付近以外の領域においては、マスクなどを用いてエッチングを行わない。その後、裏面工程、チップ劈開工程を経て、
図3の変調器100が得られる。
【0034】
なお、進行波型電極31bおよび位相調整電極33a,33b変調導波路23bが設けられた光導波路は、
図6(a)〜
図6(f)、
図7(a)〜
図7(c)および
図8(a)〜
図8(b)と同様の工程により形成することができる。変形例に係る変調器100aにおいては、
図6(a)〜
図6(f)、
図7(d)〜
図7(f)および
図8(c)〜
図8(d)と同様の工程により、出力導波路25aの非樹脂領域を形成することができる。
【0035】
(検査方法)
続いて、変調器の検査方法について説明する。一例として、変形例に係る変調器100aの検査方法について説明する。
図9は、変調器100aの検査に用いる検査装置300の概略図である。
図9で例示するように、進行波型電極31a,31bおよびグランド電極32と、電圧・電流計61とを配線により接続する。また、入力導波路21aに、複数のレンズ62を用いて、光ファイバ63を光結合させる。また、出力導波路25aを、複数のレンズ64を用いて、光ファイバ65に光結合させる。複数のレンズ62、光ファイバ63、複数のレンズ64および光ファイバ65は、それぞれが微動機構を有する棒などに把持されており、例えば、それぞれ±20μm程度の範囲を±1μm程度の精度で動かすことができる。
【0036】
図10は、変調器100aの検査方法のフロー図である。以下、
図9および
図10を参照しつつ、変調器100aの検査方法について説明する。まず、p側の進行波型電極31a,31bとn側のグランド電極32との間に、電圧・電流計61を用いて、例えば−3Vの逆バイアス電圧を印加しつつ、電流を測定する(ステップS1)。入力導波路21aに光が入射していない状態では、ほとんど電流は流れない。
【0037】
次に、入力導波路21aに、複数のレンズ62および光ファイバ63を近付け、複数のレンズ62、光ファイバ63および変調器100aを顕微鏡で観察しながら、入力導波路21aに光が入ると思われる位置に配置する(ステップS2)。このときには、入力導波路21aと複数のレンズ62の焦点の位置とは、±10μm程度のずれを含んでいる。
【0038】
次に、光ファイバ63に、検査用の光を入射する(ステップS3)。例えば波長が1.55μmで、光強度が0dBm〜+17dBm(例えば+13dBm)である。なお、光強度が10dBmを越える場合に集光点に樹脂に位置すると、樹脂の気化が懸念される。光が入力導波路21aに入射すると、進行波型電極31a,31bとグランド電極32との間に、フォトキャリアに起因する電流が流れる。そこで、電圧・電流計61を用いて電流を測定しながら、複数のレンズ62および光ファイバ63の位置を
図8で例示するxyzの三方向に動かし、電流が最大になる場合の複数のレンズ62および光ファイバ63の位置を探す(ステップS4)。電流が最大になった位置で、複数のレンズ62および光ファイバ63を固定し、検査用の光を停止する(ステップS5)。電流が最大のとき、複数のレンズ62および光ファイバ63と入力導波路21aとの光結合が、最も良好になっている。
【0039】
ここで用いる複数のレンズ62の焦点距離は2mm〜3mm(例えば2mm)である。レンズの開口数NAは、0.2〜1程度(例えば0.5)である。変調器100aの端面に集光されるスポット径は2μm〜6μm(例えば3μm)である。+13dBm程度の高強度の光が3μmのスポット径の領域に集光されるので、集光された領域は高温になる。光を入射した時点では、集光点が入力導波路21aの位置から±10μm程度ずれた位置になる可能性があるが、変調器100aではこの範囲の樹脂40を除去してあるため、樹脂40に集光点が位置しない。
【0040】
次に、出力導波路25aにも同様の方法で、複数のレンズ64および光ファイバ65の位置調整を行う(ステップS6)。すなわち、出力導波路25aの近傍に、顕微鏡で観察しながら複数のレンズ64および光ファイバ65を配置し、光ファイバ65から検査用の光を入射する。それにより、出力導波路25aの端面の近傍に検査用の光が集光される。進行波型電極31a,31bとグランド電極32との間に流れる電流を電圧・電流計61で観測しながら、複数のレンズ64および光ファイバ65の位置を微調整し、電流が最大となる位置を探す。電流最大の位置で、複数のレンズ64および光ファイバ65を固定する。
【0041】
次に、検査用の光を出力導波路25aに入射した状態で、光ファイバ63を、光検出器に接続する。進行波型電極31a,31bとグランド電極32との間の電圧を0V〜−10Vまでスイープしながら、光検出器で光の出力強度を測定する(ステップS7)。それにより、電圧と光出力特性との検査を行うことができる。以上の過程を経て、変調器100aの検査が終了する。当該検査方法によれば、樹脂40の分解・気化を抑制しつつ、変調器100aを検査することができる。なお、変調器100に対して当該検査方法により検査を行っても、光入力側において樹脂40の分解・気化を抑制しつつ、変調器100を検査することができる。
【0042】
なお、上記例では、上面からコア層までストライプ状に形成されたハイメサ導波路を用いたInP系の変調器を例として説明したが、光入力用の導波路を有する他の光半導体素子(光スイッチ、導波路入射型受光素子、光アンプ、光集積素子など)にも、上記例を適用することができる。導波路形態は、上面から上部クラッド層までストライプ状に形成されたリッジ導波路であってもよい。