特許第6578779号(P6578779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578779
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】固形組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/718 20060101AFI20190912BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20190912BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20190912BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20190912BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20190912BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20190912BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20190912BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190912BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20190912BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20190912BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20190912BHJP
【FI】
   A61K31/718
   A61K47/36
   A61K47/26
   A61K9/20
   A61K9/14
   A61K9/16
   A61K9/48
   A61P3/10
   A61P1/00
   A23L33/21
   A23L33/125
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-142888(P2015-142888)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-44176(P2016-44176A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2018年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-166673(P2014-166673)
(32)【優先日】2014年8月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥平 玄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】唐木 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳祐
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05562940(US,A)
【文献】 特開平09−168374(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/092828(WO,A1)
【文献】 特開平11−332514(JP,A)
【文献】 特開平10−195104(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)30〜90質量%のハイアミロースコーンスターチ、(b)ラクトース、グルコース、スクロース、粉糖、トレハロース、及びフルクトースからなる群から選ばれる少なくとも1種の糖、及び(c)デキストリンを含有することを特徴とする固形組成物。
【請求項2】
食品、経口医薬品又は経口医薬部外品である、請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
剤型が、錠剤、チュアブル、丸剤、粉末剤、顆粒剤またはカプセル剤である、請求項1又は2に記載の固形組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイアミロースコーンスターチを含有する固形組成物に関し、経口の医薬品又は医薬部外品、又は体内に補助的に供給するためのサプリメント等として用いられる食品分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイアミロースコーンスターチは、消化されにくいアミロースを豊富に含むハイアミロースコーンという品種のトウモロコシから作られたコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチは、オーストラリアにおいて、古典的育種法によって品種改良された
non―GMOの品種である。ハイアミロースコーンスターチは、古くからフライ食品やクッキー、パンなどの食感改良剤や成形剤として用いられており、食品中に少量の配合でその目的が達成されている。
【0003】
近年、ハイアミロースコーンスターチについて空腹時血糖値維持、食後血糖値上昇抑制、腸健康の維持等の有効性が報告されており、ハイアミロースコーンスターチを効率よく摂取できるよう高濃度で配合した食品、特にサプリメントでの開発が急務である。しかし、ハイアミロースコーンスターチは、口中に含んだ際、唾液を吸うことで口中に貼り付きが生じ、また、口溶けの悪さや特有の粉っぽさを有し、さらには、独特の不快味を呈するため、非常に摂取しづらいものである。よって、ハイアミロースコーンスターチを製品中に高濃度配合しようとする場合は、服用性コンプライアンスの面で改善が必要である。
【0004】
今まで、ハイアミロースコーンスターチを高濃度含む組成物として、特許文献1の健康補助剤が報告されている。しかしながら、ハイアミロースコーンスターチ特有の口溶けの悪さや不快味を解決するものではない。
【0005】
また、ハイアミロースコーンスターチは流動性が悪いため、ハイアミロースコーンスターチを造粒、打錠又は包材へ充填する場合には、工夫が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−508772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題に鑑み、本発明の目的は、ハイアミロースコーンスターチの服用性を改善した固形組成物を提供することである。あるいは、ハイアミロースコーンスターチを含む組成物を製造する際の作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の糖、及びデキストリンを配合すると、ハイアミロースコーンスターチの服用性を改善でき、また製造作業性も向上できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
(1)(a)ハイアミロースコーンスターチ、(b)ラクトース、アラビノース、イソマルトース、キシロース、グルコース、スクロース、粉糖、トレハロース、プシコース、フルクトース、マルトース、リボースからなる群から選ばれる少なくとも1種の糖、及び(c)デキストリンを含有することを特徴とする固形組成物、
(2)食品、経口医薬品又は経口医薬部外品である、(1)に記載の固形組成物、
(3)剤型が、錠剤、チュアブル、丸剤、粉末剤、顆粒剤またはカプセル剤である、(1)又は(2)に記載の固形組成物、
(4)ハイアミロースコーンスターチの含有量が、固形組成物全体に対し30質量%以上である(1)に記載の固形組成物、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、服用し易いハイアミロースコーンスターチ含有固形組成物を提供することが可能となった。本発明に係る組成物は、ハイアミロースコーンスターチが高濃度含まれていても、容易に服用可能となった。また、本発明により、ハイアミロースコーンスターチを含有する固形組成物を製造する際の作業効率が向上した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いるハイアミロースコーンスターチは、RDS(Rapid Degestible Starch、急速に消化されるでん粉)と、SDS(Slow Degestible Starch、ゆっくりと消化されるでん紛)と、RS(Resistant Starch、難性消化性でん紛)を含むものである。本発明のハイアミロースコーンスターチの含有量は、本発明の固形組成物中、30〜90質量%が好ましい。より好ましくは30〜70質量%以上、最も好ましくは50〜60質量%である。
【0011】
本発明の(b)成分の糖としては、ラクトース、アラビノース、イソマルトース、キシロース、グルコース、スクロース、粉糖、トレハロース、プシコース、フルクトース、マルトース、又はリボースが挙げられる。本発明の(b)成分の糖の含有量は、本発明の固形組成物中、5〜90質量%が好ましい。
【0012】
本発明のデキストリンの含有量は、本発明の固形組成物中、1〜60質量%が好ましい。
【0013】
本発明の固形組成物は、食品(特定保健用食品、特別用途食品、機能性食品、健康補助食品(サプリメントを含む)、経口医薬品又は経口医薬部外品など幅広く利用することができる。好ましい剤型としては、錠剤、チュアブル、丸剤、粉末剤、顆粒剤またはカプセル剤などが挙げられる。
【0014】
本発明の固形組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ビタミン類、アミノ酸類、タウリン、グルコサミン、カフェイン、カルシウム類、生薬等の成分を配合することができる。また、必要に応じて上記成分の他に安定化剤、界面活性剤、甘味剤、香料、コーティング剤、糖衣剤、発泡剤、崩壊剤、着色剤、流動化剤、滑沢剤等を配合してもよい。
【0015】
本発明の固形組成物の製造方法は、常法により製造することができ、特に限定されるものではない。例えば、本発明の(a)成分、(b)成分、(c)成分と、必要に応じて他の成分や公知の添加剤を混合すれば粉末剤が得られる。また、この粉末剤に造粒操作を行えば造粒物(顆粒剤)が得られる。また、前記粉末剤あるいは造粒物に適宜滑沢剤等を加えて打錠すれば、錠剤、チュアブルが得られる。また、前記粉末剤を適当な方法で球状に成形すれば丸剤が得られる。本発明で得られる造粒物(顆粒剤)は流動性が良いので、特に造粒工程含む製法で本発明の固形組成物を製造する場合は、製造効率が一層高まる。
以下に、実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は、下記の例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例の処方において、数値は質量部である。
【実施例】
【0016】
実施例1〜8、比較例1〜2
下記表1の組み合わせを、水を使用し乳鉢にて造粒し、乾燥後に篩に通し、各組成物を得た。各組成物について、表2の評価基準に従い官能評価し、味、口溶け、粉っぽさを評価した(4名による判定)。評価点が2.5以上で改善効果があると判定した。さらに、分包材等への充填を考慮し、表3の評価基準に従い流動性を目視により評価した(4名による判定)。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
実施例1〜8の固形組成物は味、口溶け、粉っぽさが改善され、さらに流動性も良好であった。比較例1においては、全ての評価項目において改善効果が低く、さらに比較例2においては、口溶けは改善できたものの、良好な流動性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明により、服用性を改善したハイアミロースコーンスターチ含有固形組成物を得ることが可能となった。よって、ハイアミロースコーンスターチを高濃度含む食品(特にサプリメント)、医薬品又は医薬部外品の分野に有益である。