【文献】
徐超男,“応力発光によるコンクリート構造物状態の可視化”,コンクリート工学,日本,公益社団法人日本コンクリート学会,2015年 5月,Vol. 53, No. 5,p. 462-467
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記構造物が、破壊強度に異方性があり、負荷に対する破壊強度の強い方向と弱い方向を有する材料であって、その破壊強度の弱い方向に負荷が加わっていることを示す発光の輝度に着目して負荷の程度及び方向を判定する、請求項1〜4のいずれかに記載の負荷測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構造物の負荷測定方法について説明する。
本発明の構造物の負荷測定方法は、
応力発光材料を塗料組成物に配合してなる応力発光性塗料組成物を構造物に塗布し、
応力発光材料による発光の輝度を測定するとともに、発光の模様を観察することによって、構造物に加わっている負荷の程度を判定することを特徴とする。
【0020】
<応力発光材料>
本発明の負荷測定方法において好ましく使用することができる応力発光材料につき、以下に説明する。
この応力発光材料は、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム系応力発光材料等の、アルミン酸ストロンチウムを母体とする応力発光材料であることが望ましい。
【0021】
アルミン酸ストロンチウムは、一般的にSr
xAl
yO
z(0<x、0<y、0<z)で表される化合物である。特に限定されないが、アルミン酸ストロンチウムの具体例としては、SrAl
2O
4、SrAl
4O
7、Sr
4Al
14O
25、SrAl
12O
19、Sr
3Al
2O
6等の種々の化合物が知られている。
【0022】
上記アルミン酸ストロンチウムは、θアルミナ、κアルミナ、δアルミナ、ηアルミナ、χアルミナ、γアルミナ、及びρアルミナから選択される少なくとも1種のアルミナを含有するアルミナ原料又は水酸化アルミニウムと、ストロンチウム源とから合成されたものであるのが好ましい。通常「アルミナ」といえば安価で汎用のαアルミナを指す場合が多いが、θアルミナなどのいわゆる活性アルミナ、又は水酸化アルミニウムを原料として用いれば、αアルミナを用いた場合よりも高い発光強度を達成できるためである。
【0023】
賦活剤としては、ユーロピウム(Eu)イオンを含有することが望ましい。上記応力発光材料中に含まれるEuイオンの量は特に限定されないが、アルミン酸ストロンチウム1モル当たり、0.0001〜0.01モル、好ましくは0.0005〜0.01モル、より好ましくは0.0005〜0.005モルである。Euイオンの量が少なすぎると十分な発光強度を達成することができず、また多すぎても発光強度は飽和する一方で、別の物性にも影響をおよぼすことがある。
【0024】
応力発光材料は、さらに共賦活剤を含んでもよい。共賦活剤としては、特に限定されないが、Eu以外の希土類元素の化合物又はイオンが挙げられる。上記Eu以外の希土類元素の例としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等から選択される1種以上の元素が挙げられる。これらはイオン半径や価数の異なる元素で置換することにより格子欠陥が形成され、結晶構造がより歪みやすくなる結果、応力発光能が向上するため好ましい。中でも特にNd、Dy、Hoを共賦活剤とした場合には高い発光輝度が得られる点で好ましい。
また、上記希土類元素の化合物としては、上記元素の炭酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0025】
応力発光材料には、さらに、粒子の分散性を高めるための分散剤が添加されていてもよい。分散剤の例としては、特に限定されないが、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤としては、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられ、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
応力発光材料には、さらに、粒子の結晶性を高めるためにフラックス成分が添加されていても良い。上記フラックス成分としては、特に限定されないが、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等の化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
また、応力発光材料の表面をシランカップリング剤で被覆して、熱処理を行うことによって、耐水性を高めた応力発光材料であってもよい。
上記シランカップリング剤は、トリアルコキシシランを含むことが望ましい。
また、上記トリアルコキシシランのアルコキシ基以外の置換基は、炭素数3以上の炭化水素基であることが望ましい。
上記のようなシランカップリング剤によると、アルコキシ基以外の置換基の構造により疎水性を高めることができるため、さらに耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
【0028】
また、上記シランカップリング剤は、フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤であることが望ましい。
シランカップリング剤がフルオロアルキル基を有すると、疎水性を高めることができるため、さらに耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
【0029】
また、上記シランカップリング剤は、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランであることが望ましい。
3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランを用いると、特に耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
【0030】
また、応力発光材料とリン酸化合物を混合してスラリーを作製し、粉砕することにより、応力発光材料の表面をリン酸化合物により改質してなる、表面処理層を有する応力発光材料であってもよい。
このような表面処理層を有する応力発光材料も、充分な耐水性を有する応力発光材料になるため望ましい。
【0031】
リン酸化合物は特に規定されず、無機リン酸塩、有機リン酸塩ともに使用が可能である。その中では水溶性塩(リン酸も含む)が望ましく、具体的には、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びリン酸からなる群から選択された少なくとも1種であることが望ましい。
【0032】
<応力発光材料の製造方法>
応力発光材料の製造方法は特に限定されるものではない。応力発光材料がユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム系応力発光材料である場合には、母体となるアルミン酸ストロンチウムはアルミナとストロンチウム化合物を反応させることにより得ることができる。
ストロンチウム化合物の例としては、特に限定されないが、炭酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ハロゲン化ストロンチウム(塩化ストロンチウム等)、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、リン酸水素ストロンチウム等が挙げられる。
ユーロピウム化合物としては特に限定されず、例えば炭酸ユーロピウム、酸化ユーロピウム、塩化ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウムなどが挙げられる。
【0033】
応力発光材料には、上述した共賦活剤、分散剤、フラックス成分を添加してもよく、これらの成分を混合し、焼成することによって応力発光材料が得られる。
【0034】
上記成分の混合手段は特に限定されず、公知の混合手段を用いることができる。中でも、混合を効率良く行なうために粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器内で、分散媒(例えば水など)の存在下、湿式混合を行うのが好ましい。ここで、粉砕媒体撹拌型粉砕機とは、粉砕容器内に粉砕媒体を投入し、被粉砕物とともに、粉砕容器を揺動、回転(自転又は公転)させて撹拌するか、粉砕媒体を撹拌部で直接撹拌して、粉砕を行う粉砕機をいう。粉砕媒体撹拌型粉砕機の例としては、特に限定されないが、遊星ミル、ビーズミル、及び振動ミルからなる群から選択されるいずれか1種であるのが好ましい。なかでも、自転、公転を伴う遊星ミルが特に好ましい。湿式混合後、分散媒を除去して乾燥することにより、応力発光材料用原料組成物となる。
【0035】
さらに、応力発光材料用原料組成物を焼成することにより応力発光材料が得られる。焼成条件は特に限定されず、一般的な焼成方法に従って実施できる。例えば得られた応力発光材料用原料組成物を、焼成(例えば1000℃以上、還元雰囲気下で焼成)し、必要に応じて粉砕・整粒等を行なうことで、応力発光材料が得られる。
【0036】
応力発光材料は、様々な環境下において、物理的かつ化学的に比較的安定であり、そして、機械的な外力を加えて変形させることによって、格子欠陥又は格子欠陥と発光中心のキャリアが励起されて、基底に戻る場合に発光する。
【0037】
<応力発光性塗料組成物>
本発明の負荷測定方法では、応力発光材料を塗料組成物に配合してなる応力発光性塗料組成物を使用する。応力発光性塗料組成物は、構造物の表面に塗布することができ、該応力発光材料が塗布された構造物に機械的な負荷を加えて塗膜にひずみが生じると、その塗膜が発光する。応力発光性塗料組成物は発光輝度が高いため、視認性の高い塗装を行うことができる。
【0038】
塗料組成物として、樹脂を含有する塗料組成物が使用される。塗料組成物には、樹脂の他に、必要に応じて、溶剤、分散剤、充填剤、増粘剤、表面調整剤あるいはレベリング剤、硬化剤、架橋剤、顔料、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を含む光安定剤、難燃剤、硬化用触媒、殺菌剤、及び抗菌剤、密着性付与、等の塗料用添加剤を含有することができる。
【0039】
塗料組成物に用いる樹脂としては熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等各種のものを用いることができ、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂等や、オルガノシリケート、オルガノチタネート等が挙げられる。インキ膜形成材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、及び塩素化プロピレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中ではエポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂を含むことが望ましい。塗料組成物がエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂系塗料又はポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂系塗料であると、構造物に加わっている負荷の大きさと発光の輝度の対応関係が明確であり、構造物に加わっている負荷の程度の判定が容易である。
【0040】
溶剤としては、脂肪族炭化水素類や、芳香族炭化水素(C7〜10、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(C4〜10、例えばメトキシブチルアセテート)、エーテル(C4〜10、例えば、テトラヒドロフラン、EGのモノエチルエーテル、EGのモノブチルエーテル、PGのモノメチルエーテルおよびDEGのモノエチルエーテル)、ケトン(C3〜10、例えば、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン)、アルコール(C1〜10、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール)、アミド(C3〜6、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(C2〜4、例えばジメチルスルホキシド)、およびこれらの2種以上の混合溶剤や、水又は前述の混合溶媒等が挙げられる。
【0041】
分散剤としては、高分子分散剤であれば、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、アンモニウム塩等]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩(上記に同じ)、ポリアクリル酸塩(上記に同じ)、ポリ(2〜4)カルボン酸(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩(上記に同じ)、カルボキシメチルセルロース(Mn2,000〜10,000)およびポリビニルアルコール(Mn2,000〜100,000)等が挙げられる。低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO(C2〜4)1〜30モル付加物。
脂肪族アルコールとしては、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノール、
ドデカノール等;[アルキル(C1〜30)]フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2〜6またはそれ以上)アルコール(例えばGR、PE、ソルビトールおよびソルビタン)のモノエステル化合物。
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸(上記に同じ)のアルカリ金属(NaおよびK等)塩。
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(NaおよびK等)塩等。
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノールのスルホン酸アルカリ金属(NaおよびK等)塩。
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、4級アンモニウム塩等]。
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸(上記に同じ)のモノエステル、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩。
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩等。
【0042】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属(上記に同じ)塩およびリン酸系分散剤(リン酸、モノアルキルリン酸エステル、及びジアルキルリン酸エステル等)等が挙げられる。
【0043】
充填剤としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、マイカを始めとする酸化物系無機物、炭化珪素、窒化珪素等の非酸化物系無機物の微粉、あるいはアクリル樹脂、フッ素樹脂、等の有機化合物、が挙げられる。また用途によってはアルミニウム、亜鉛、銅等の金属粉末の添加も可能である。さらに充填剤の具体例としては、シリカゾル、ジルコニアゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等のゾル;ケイ砂、石英、ノバキュライト、ケイ藻土等のシリカ系物質;合成無定形シリカ;カオリナイト、雲母、滑石、ウオラストナイト、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩;ガラス粉末、ガラス球、中空ガラス球、ガラスフレーク、泡ガラス球等のガラス体;窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化チタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化物系無機物;炭酸カルシウム、酸化亜鉛、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、酸化ベリリウム等の金属酸化物;硫酸バリウム、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、弗化炭素その他無機物;アルミニウム、ブロンズ、鉛、ステンレススチール、亜鉛等の金属粉末;及びカーボンブラック、コークス、黒鉛、熱分解炭素、中空カーボン球等のカーボン体等が挙げられる。
【0044】
増粘剤としてはモンモリロナイト系粘土鉱物、これらの鉱物を含むベントナイト、コロイド状アルミナ等の無機充填剤系増粘剤、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヘキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系増粘剤、ウレタン樹脂系増粘剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等ポリエーテル樹脂系増粘剤、ウレタン変性ポリエーテル系等の会合型増粘剤増粘剤、ポリエーテルポリオール系ウレタン樹脂系等の特殊高分子非イオン型増粘剤、ノニオン系等の界面活性剤系増粘剤、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤、及びアルギン酸ソーダ等アクリル酸系増粘剤等が挙げられる。
【0045】
レベリング剤としてはPEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、及び変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]等が挙げられる。
【0046】
硬化剤としては、ポリオール類の硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ポリイソシアネート化合物のヌレート体、ビュレット体、ポリイソシアネート化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパンのようなポリオールとの付加体、ブロック化したポリイソシアネート硬化剤等の単体または二種以上の混合物や、これらのポリオール付加物や、これらの共重合体やブロック重合体等のような常温での硬化が可能なイソシアネート類が挙げられる。エポキシ樹脂類の硬化剤としては、酸無水物、ポリアミド樹脂、アミン付加物、ポリメルカプタン、イミダゾール類、及びイソシアネート類等が挙げられる。
【0047】
架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物、ブロックポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂の他、ヘキサメトキシメチル化メラミン、N,N,N’,N’−テトラヒドロキシメチルサクシナミド、テトラメトキシメチル化尿素、2,4,6−テトラヒドロキシメチル化フェノール等のヒドロキシメチル基、及びメトキシメチル基、又はエトキシメチル基等を有する化合物が挙げられる。
【0048】
顔料としては前述したもの以外に、五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、バナジン酸マグネシウム及びメタバナジン酸アンモニウム等のバナジウム化合物;リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム・アンモニウム共析物、リン酸一水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、リン酸マグネシウム・コバルト共析物、リン酸マグネシウム・ニッケル共析物、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、トリポリリン酸二水素アルミニウム、トリポリリン酸マグネシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウムの酸化マグネシウム処理物、トリポリリン酸二水素亜鉛の酸化マグネシウム処理物等のリン酸金属塩のマグネシウム含有化合物による処理物、さらに、シリカ変性リン酸マグネシウム等のようなリン酸マグネシウムのシリカ変性化合物等のリン酸塩系防錆顔料;リン酸亜鉛等の亜鉛成分を含有した防錆顔料、マグネシウム処理トリポリリン酸二水素アルミニウム、カルシウム処理リン酸カルシウム等の亜鉛フリー防錆顔料;オルト珪酸カルシウム成分又はメタ珪酸カルシウム成分を含む複合珪酸カルシウム等のケイ酸カルシウム;カルシウムイオン交換シリカ、マグネシウムイオン交換シリカ等の金属イオン交換シリカ;及び六価クロムや鉛等を含む防錆顔料等が挙げられる。
【0049】
消泡剤としては、例えばシリコーン油、ジメチルポリシロキサン、有機変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤、ミネラルオイル系消泡剤、非シリコーン・ポリマー系消泡剤、有機変性フッ素化合物、及びポリオキシアルキレン化合物から選択される少なくとも1種を含む消泡剤、並びに炭素数18以上の脂肪族アルコールよりなる消泡剤等が挙げられる。
【0050】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、及びチオエーテル系化合物等が挙げられる。
【0051】
ヒンダードフェノール系化合物としては、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0052】
ホスファイト系化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。他のホスファイト系化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものが挙げられる。
【0053】
ホスホナイト系化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、及びビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
【0054】
チオエーテル系化合物として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、及びペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤を含む光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物およびヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0056】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0057】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−(4’−オクトキシ−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0058】
芳香族ベンゾエート系化合物としては、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のアルキルフェニルサリシレート類等が挙げられる。
【0059】
蓚酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、及び2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。
【0060】
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0061】
ヒンダードアミン系化合物としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジメタノールとの縮合物等が挙げられる。
【0062】
難燃剤としては臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤、トリアジン系難燃剤、及びリン酸とピペラジンとの塩の他無機系難燃剤等が挙げられる。
【0063】
臭素系難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリアクリレート、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂の分子鎖末端のグリシジル基の一部又は全部を封止した変性物、臭素化ビスフェノールAを原料として合成したポリカーボネートオリゴマー、臭素化ジフタルイミド化合物、臭素化ビフェニルエーテル、及び1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン等の臭素化ジフェニルアルカン等の化合物が挙げられる。これらの中でもポリトリブロモスチレン等の臭素化ポリスチレン、ポリ(ジブロモフェニレンオキシド)、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン、エチレン−ビス−(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA、臭素化ポリカーボネートオリゴマー、ポリトリブロモスチレン等の臭素化ポリスチレンや1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン等が挙げられる。
【0064】
リン系難燃剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル等リン酸エステル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニルホスフェート)、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物等の芳香族縮合リン酸エステル等縮合リン酸エステル等が挙げられる。
【0065】
塩素系難燃剤としては、ペンタクロロペンタシクロデカン、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロトルエン、テトラクロロビスフェノールA、及びポリクロロスチレン等が挙げられる。
【0066】
トリアジン系難燃剤としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ノニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−エトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−プロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−1,3,5−トリアジン、及び2−アミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0067】
リン酸とピペラジンとの塩としては、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、及びポリリン酸ピペラジン等が挙げられる。
【0068】
無機系難燃剤としては三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び赤リン等が挙げられる。
【0069】
硬化用触媒としては、(t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等)およびアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル等)等の有機過酸化物、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、2−エチルヘキサン酸鉛オクチル酸鉛およびテトラn−ブチルチタネート等の金属と有機および無機酸との塩等有機金属誘導体、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等スルホン酸化合物、スルホン酸化合物のアミン中和物、トリエチルアミン等の有機アミン、リン酸、ピロリン酸等や、リン酸モノ又はジエステル等が挙げられる。リン酸モノエステルとしては、例えば、リン酸モノオクチル、リン酸モノプロピル、及びリン酸モノラウリル等が挙げられる。リン酸ジエステルとしては、例えば、リン酸ジオクチル、リン酸ジプロピル、及びリン酸ジラウリル等が挙げられる。更には、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等のリン酸化合物、ジアザビシクロウンデセン系触媒、ルイス酸、及び酸無水物等が挙げられる。
【0070】
殺菌剤としては、オキシン銅等の銅殺菌剤、ジネブ、マンネブ等の有機硫黄殺菌剤、キャプタン、クロロタロニル等の有機塩素系殺菌剤、チオファネートメチル、ベノミル、カルベンダゾール、チアベンダゾール等のベンゾイミダゾール系殺菌剤、イプロジオン、ビンクロゾリン、プロシミドン等のジカルボキシイミド系殺菌剤、フラメトピル等の酸アミド系殺菌剤、フルジオキソニル等のフェニルピロール系殺菌剤、ジメトモルフ等のモルフォリン系殺菌剤、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、オリブライト等のメトキシアクリレート系殺菌剤、メパニピリム、シプロジニル、ピリメタニル等のアニリノピリミジン系殺菌剤、トリアジメホン、トリフルミゾール等のエルゴステロール生合成阻害剤、クロルピクリン、PCNB等の土壌殺菌剤、その他フルアジナム、o−フェニルフェノール(OPP)、ジフェニル、クロロジフェニル、クレゾール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、けい皮アルデヒド、酢酸フェニル、イソチアン酸アリル、α−メチルアセトフェノン、チモール、パークロロシクロペンタジエン、ブロム酢酸、2,2−ジブロモ−3−ニトリルプロピオンアミド、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸メチル、5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オン、グルタルアルデヒド、及びヒノキチオール等が挙げられる。
【0071】
抗菌剤としては、銀、亜鉛、銅の一種若しくは2種以上の抗菌性金属を無機化合物に担持させた無機系粉体が挙げられる。担持体としてはゼオライト、アパタイト、リン酸ジルコニウム、酸化チタン、シリカゲル、アルミニウム硫酸塩水酸化物、燐酸カルシウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。またリン酸系、硼酸系、珪酸系の各系ガラスの一種若しくは2種以上をガラス形成成分としたガラスに、銀、亜鉛、銅の一種若しくは2種以上の抗菌性金属を含有せしめた抗菌性ガラス粉体も挙げられる。
【0072】
<構造物>
本発明の負荷測定方法において、負荷の程度を判定する対象となる構造物の材質及び用途は特に限定されるものではないが、好適な材質として、通常の紙、合成紙、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の高分子素材、天然ゴムあるいは合成ゴム、ガラス、セラミックス、金属、木、人工繊維または天然繊維、コンクリート、あるいはこれらの組み合わせ、およびこれらの加工製品等が挙げられる。また、構造物の好適な用途として、ビル建物、高架橋、橋梁、道路、鉄道レール、支柱、塔、パイプライン及びトンネル等の大型構造物、床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材、鉄鋼、コンクリート等の建材、歯車、カム等の動力伝達部材、自転車、自動車、電車、船、飛行機等に使用される外装用部品又は内蔵部品(エンジン部品、タイヤ、ベルト等)、軸受部品、軸受用保持器、および、光センサ付軸受、ネジ、ボルト、ナット、ワッシャ等の締結用部品等が挙げられる。
【0073】
また、本発明の負荷測定方法では、応力発光性塗料組成物を塗布する構造物が、破壊強度に異方性があり、負荷に対する破壊強度の強い方向と弱い方向を有する材料であってもよい。
破壊強度に異方性がある材料としては、木材、人工繊維、天然繊維等が代表例として挙げられる。また、一部のセラミックスや金属も異方性を有する。なお、コンクリートは本来異方性がない材料であるが、施工時の硬化条件等により異方性が実質的に出ているため、本願では異方性がある材料として扱う。
本発明の負荷測定方法では、発光の模様を観察することによって構造物に加わる負荷の方向に関する情報が得られるので、発光の模様から判定される負荷の方向が破壊強度の弱い方向である場合に、その発光の輝度に着目して構造物に加わっている負荷の重要性を判断することができる。仮に発光の輝度自体が大きかったとしても、発光の模様から負荷の方向が破壊強度の強い方向であると判断されたならば、さほどその負荷を気にする必要はないので、構造物の破壊防止のために過剰な措置をとる必要がなくなり、構造物の保守管理が容易になる。
また、時間経過毎に発光の模様を観察することも望ましい。時間経過毎に発光の模様を観察して、発光の模様が変化したことを確認することができれば、その模様の変化から、構造物に構造破壊が生じたかに関する情報を得ることができる。
【0074】
<負荷測定方法>
本発明の構造物の負荷測定方法では、応力発光性塗料組成物を構造物に塗布する。
応力発光性塗料組成物の塗布方法は、塗料組成物を通常塗布する方法により行うことができ、特に限定されるものではないが、スプレー塗布、刷毛による塗布、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ディッピング法による塗布などを使用することができる。
応力発光性塗料組成物の塗布後、塗料組成物の種類によっては熱硬化、紫外線硬化等の処理を行い、塗料組成物を構造物の表面に定着させることが望ましい。
塗料組成物の塗布厚みは1〜500μmとすることが望ましい。
塗布厚みが1μm未満であると応力発光材料の絶対量が少なく、発光の輝度が不足するため負荷測定が難しい場合がある。また、塗布厚みを500μmを超えて厚くしても発光の輝度がそれほど上がるわけではないため経済的でない。
【0075】
応力発光性塗料組成物の構造物への塗布は、通常は構造物の表面全体に行い、構造物全体に加わる負荷の程度を判定することが望ましい。ただし、構造物のうちの特定の部位のみにおける負荷の程度を判定する場合は、その特定の部位のみに応力発光性塗料組成物を塗布すればよい。
【0076】
応力発光性塗料組成物が塗布された構造物に負荷が加わり、塗膜にひずみが生じると、応力発光材料が発光する。
本発明の構造物の負荷測定方法では、その発光の様子を観察する。具体的には、応力発光材料による発光の輝度を測定するとともに、発光の模様を観察する。輝度からはひずみ量やひずみ量の変化速度の情報を、発光の模様からは負荷がかかっている方向についての情報を得ることが出来る。
発光の輝度の測定は、発光している構造体の写真撮影又は動画撮影を行い、写真または動画を画像解析ソフトにより解析することにより行うことができる。
具体的には、画像解析ソフト(例えば、ImageJ:アメリカ国立衛生研究所(NIH)製)を用いて、画像全体又は測定したい一部の領域の輝度を算出し、その部分のバックグラウンドの輝度を差し引いた値を応力発光の輝度とすることができる。
【0077】
発光の模様の観察は、観察者の目視により行い、特徴的な発光のパターンを認識するようにする。その際、負荷が加わっている方向や構造物の強度の特徴が分かっていれば、それらを参考にして観察することにより、発光の模様と負荷が加わっている方向や構造物の強度との関連性を見出すようにすることが望ましい。
具体的な模様の例は後述する実施例で示す。
【0078】
輝度の測定及び発光の模様の観察を、構造物の設置後、意図的な負荷を加えずに定期的に行う場合、構造物が設置された場所において構造物に加わっている負荷に関する情報を定期的に記録することができる。
この場合、構造物が設置された場所で定期的に撮影(写真及び/又は動画)を行い、記録を取ることが望ましい。
【0079】
また、構造物に意図的に負荷を加える場合は、材料の強度試験を行う装置(引張試験機、圧縮試験機、曲げ試験機等)を用いて構造体に負荷を加え、発光の様子を観察することによって、材料に加えた負荷の値と発光の挙動の関係を測定することができる。
負荷を加える条件は、構造物の材料に関するJISの規定等に従うことができる。
【実施例】
【0080】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げる。ただし本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
測定対象の構造物として、円柱形状のコンクリート柱(JIS A 1132に規定するコンクリート強度試験用供試体の作り方とJIS A 1138に規定する試験室におけるコンクリートの作り方に従って作製したもので直径100mm×高さ200mmの試験体)を準備した。
応力発光材料としてSrAl
2O
4:Eu
2+で表される希土類賦活アルミン酸ストロンチウム42.0gを準備し、エポキシ樹脂系塗料主剤5.6g(ビスフェノールA型 エピクロン850 DIC製)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.21g(和光試薬特級)、トルエン12.0g(和光試薬特級)、分散剤1.26g(DA234 楠本化成製ディスパロン)、密着性付与剤1.32g(BYK−4510 BYK Chemie製)、表面調整剤0.21g(BYK−333 BYK Chemie製)を秤量して塗料化し、1.0mm径ガラスビーズ90g(ユニオン製 ユニビーズ)を分散メディアとして使用し、ペイントシェーカー(RED DEVIL製)を用いて分散することにより応力発光性塗料組成物を調製した。
調製した応力発光性塗料組成物62.6gに対して硬化剤4.9g(リカシッドMH−700 新日本理化製)の割合で混ぜてからスプレー塗装により構造物全体に塗布した。塗布後の塗料組成物の平均厚さは250μmであった。
【0082】
応力発光性塗料組成物を塗布したコンクリート柱を、暗室で圧縮試験機(前川試験機製:2000kN耐圧試験機)に設置し、365nmの紫外線を1分間照射し、3分間待機させた後、JIS A 1108に規定するコンクリートの圧縮強度試験方法に従い、圧縮試験を行い、コンクリート柱が破壊に至るまでの応力(N/mm
2)と縦ひずみ量(μST)を測定した。応力増加速度は毎秒0.631N/mm
2とした。
図1は、実施例1の圧縮試験における応力測定値と縦ひずみ量を時間軸に対してプロットしたグラフと、測定中の発光の様子を示す写真である。
図1には、圧縮試験中の発光を観察し、応力−ひずみ曲線におけるA,B,C,D時点で撮影した写真を示している。
なお、圧縮試験における圧縮の方向は、コンクリート柱の縦方向(長手方向に平行な方向)である。
【0083】
図1に示す写真から、構造物に加わる応力が増し、縦ひずみ量が大きくなるのに伴い発光輝度が増していることが明確にわかる。
また、塗膜には発光による模様が生じているが、塗膜は一様に面発光しているのではなく、線状のひびが入ったような模様が観察される。B時点での写真で最も明瞭にわかるように、コンクリート柱の横方向に線状のひびが入ったような模様が観察される。
このことから、実施例1の構造体における圧縮試験では、負荷の方向である縦方向とは異なる方向(横方向)に発光の模様が生じることがわかる。そして、発光の模様の生じる傾向を事前に確認しておけば、構造体の横方向に発光がみられた場合には縦方向に負荷が加わっていると推定することができる。
【0084】
図2は、実施例1の圧縮試験における縦ひずみ量と発光輝度の関係を示したグラフである。発光輝度は、測定中の発光の様子を写真撮影し、写真に含まれる各画素の輝度を画像解析ソフト(ImageJ:アメリカ国立衛生研究所(NIH)製)により算出し、各画素の輝度の平均値をとることによって得られた値(ImageJ解析平均値)である。
今回の実施例では、圧縮試験において所定の間隔(時間)おきに写真を撮影し、各写真における発光輝度を測定した。そして、
図2には、各写真における発光輝度を相対値で示している。このとき発光輝度が0.5となるまでに要した時間αは205秒であり、0.5から1.0となるまでに要した時間βは10秒であった。
図2からわかるように、縦ひずみ量が大きくなるに伴い、発光輝度が高くなるので、発光輝度を測定することによって構造物に生じているひずみ(負荷)を推定することが可能である。
また、圧縮試験の最後で生じた発光輝度の急落はコンクリート柱の破壊に起因している。
【0085】
(実施例2)
実施例1において、圧縮試験の際の応力増加速度を毎秒2.209N/mm
2に変更した他は同様にして圧縮試験を行い、コンクリート柱が破壊に至るまでの応力(N/mm
2)と縦ひずみ量(μST)を測定した。また、発光輝度を実施例1と同様にして算出した。
図3は、実施例2の圧縮試験における応力測定値と縦ひずみ量を時間軸に対してプロットしたグラフと、測定中の発光の様子を示す写真である。
図3でも、
図1と同様に、応力−ひずみ曲線におけるA,B,C,D時点で撮影した写真を示している。
図3のD時点の写真では、縦方向に周りよりも明るい模様(写真では白く太いすじに見える)があるが、これはコンクリート柱にクラックが入っていることを示している。つまり縦方向に周りより明るい模様が現れたときはコンクリートの構造破壊がはじまったと推定することができる。
また、
図4は、実施例2の圧縮試験における縦ひずみ量と発光輝度の関係を示したグラフである。このとき発光輝度が0.5となるまでに要した時間αは96秒であり、0.5から1.0となるまでに要した時間βは3秒であった。
【0086】
図1、3の各グラフにおいて各縦ひずみ量に対する縦ひずみ量変化速度を読み取り、縦ひずみ量と縦ひずみ量変化速度の積を算出した。またその際の発光輝度を
図2、4から読み取った。
図5は、実施例1と実施例2の圧縮試験における縦ひずみ量変化速度とそのときの縦ひずみ量を乗じて得られる値と発光輝度の関係を示したグラフである。
図5に示すグラフから、コンクリートに発生するひずみ量とそのときのひずみ量変化速度の積が大きくなるのに伴って発光輝度が増していることがわかる。以上のことから発光輝度がひずみ量とひずみ量変化速度の両方に対して相関することがわかる。また、実施例1と2とは応力増加速度が異なるが、縦ひずみ量と縦ひずみ量変化速度の積と発光輝度の関係性は変わらないこともわかった。
【0087】
(実施例3)
応力発光材料としてSrAl
2O
4:Eu
2+で表される希土類賦活アルミン酸ストロンチウム27.0gを準備し、ポリウレタン樹脂系塗料主剤16.0g(Vトップ 大日本塗料製)、キシレン7.0g(和光試薬特級)、分散剤1.35g(DA234 楠本化成製ディスパロン)を秤量して塗料化し、1.0mm径ガラスビーズ30g(ユニオン製 ユニビーズ)を分散メディアとして使用し、ペイントシェーカー(RED DEVIL製)を用いて分散することにより応力発光性塗料組成物を調製した。
調製した応力発光性塗料組成物51.4gとジイソシアネート系硬化剤4.0g(Vトップ硬化剤 大日本塗料製)を混ぜてからスプレー塗装により構造物全体に塗布した。塗布後の塗料組成物の平均厚さは250μmであった。
【0088】
応力発光性塗料組成物を塗布したコンクリート柱を、実施例1と同様にして暗室で圧縮試験機に設置し、365nmの紫外線を1分間照射し、3分間待機させた後、JIS A 1108に規定するコンクリートの圧縮強度試験方法に従い、圧縮試験を行い、コンクリート柱が破壊に至るまでの応力(N/mm
2)と縦ひずみ量(μST)を測定した。応力増加速度は毎秒0.631N/mm
2とした。
図6は、実施例3の圧縮試験における応力測定値と縦ひずみ量を時間軸に対してプロットしたグラフと、測定中の発光の様子を示す写真である。
図6には、圧縮試験中の発光を観察し、応力−ひずみ曲線におけるA,B,C,D時点で撮影した写真を示している。
また、
図7は、実施例3の圧縮試験における縦ひずみ量と発光輝度の関係を示したグラフである。このとき発光強度が0.5となるまでに要した時間αは357秒であり、0.5から1.0となるまでに要した時間βは16秒であった。
【0089】
図1と
図3と
図6、
図2と
図4と
図7をそれぞれ比較して分かるように、圧縮試験の際の応力増加速度が異なっていても、発光の模様の傾向は同様であり、また、縦ひずみ量の増加に伴い発光輝度が高くなるという傾向は同様であった。
このことから、本発明の負荷測定方法により、圧縮負荷の大きさに拠らず、コンクリート柱に加わる負荷の程度を判定することが可能であった。
【0090】
(実施例4)
測定対象として、アルミニウム製の試験片(材質:A1050P、150mm×35mm×0.8mmt)を準備し,実施例1と同様にしてスプレーにて塗料を塗布し試験片上に塗膜を形成させた。塗膜は試験片中心部に塗布し、その大きさは17mm×17mmとした。その後、130℃×1時間の条件で乾燥させたものを試験体とした。
試験片上に形成された応力発光塗膜の厚みは130μmであった。
この試験体を暗室に置き、365nmの紫外線を1分間照射し、3分間待機させた後、引張試験器(ミネベア製:万能材料試験器TGI−50kN)を用いチャック間距離を100mmにして引っ張り加重を加えてその時に試験片に生じたひずみによる発光輝度を測定した。引っ張り荷重は試験片が塑性変形に至る直前で止めた。その時の引張速度は20mm/minであり、発光強度の測定は、光電子増倍管を使用した(メーカー:浜松ホトニクス(株)、型式:光電子増倍管H7827−011、測定時の光電子増倍管の電圧:0.7V)。
ひずみの測定は塗膜が形成されている面とは逆側の面において塗膜形成部分と同じ位置にひずみゲージを貼り付けて引張方向のひずみを測定した。
図8は実施例4の引張荷重をかけた際の塗膜の発光外観を撮影した画像であり、
図9は、実施例4の引張試験において、縦ひずみ量と発光輝度を時間軸に対してプロットしたグラフであり、
図10は、実施例4の引張試験における縦ひずみ量と発光輝度の関係を示したグラフである。
図10に示すグラフから、試験片に発生する縦ひずみ量が大きくなるのに伴って発光輝度が増していることが明確にわかる。また、測定対象としてはコンクリート構造物だけでなく金属を材質とする構造物でも適用可能であり、圧縮荷重だけでなく引張荷重においても同様にしてひずみ量と発光輝度に相関があることがわかる。
【0091】
(実施例5)
実施例4の評価において引張速度を10mm/minとして試験を行った。
図11は、実施例5の引張試験において、縦ひずみ量と発光輝度を時間軸に対してプロットしたグラフであり、
図12は、実施例5の引張試験における縦ひずみ量と発光輝度の関係を示したグラフである。
【0092】
(実施例6)
実施例4の評価において引張速度を40mm/minとして試験を行った。
図13は、実施例6の引張試験において、縦ひずみ量と発光輝度を時間軸に対してプロットしたグラフであり、
図14は、実施例6の引張試験において、縦ひずみ量と発光輝度の関係を示したグラフである。
【0093】
図9、11、13の各グラフにおいて500μST、1000μST、1500μST、2000μSTにおける縦ひずみ量変化速度を読み取り、縦ひずみ量と縦ひずみ量変化速度の積を算出した。またその際の発光輝度を
図10、12、14から読み取った。
図15は実施例4〜6の引張試験における縦ひずみ量変化速度とそのときの縦ひずみ量を乗じて得られる値と発光輝度の関係を示したグラフである。
図15に示すグラフから、試験片に発生するひずみ量とその時のひずみ量変化速度の積が大きくなるのに伴って発光輝度が増していることが明確にわかる。以上のことから発光輝度がひずみ量とひずみ量変化速度の両方に対して相関することがわかる。また、実施例4〜6では引張速度が異なるが、縦ひずみ量と縦ひずみ量変化速度の積と発光輝度の関係性は変わらないこともわかった。
ひずみ量が小さくひずみ量変化速度が大きいという現象は、言い換えると試験片が瞬間的に大きくひずむがひずみをためずに復元することを示唆し、ひずみ量が大きくひずみ変化速度が小さいという現象は、言い換えると試験片の見た目の変化は小さいがひずみを多くためていることを示唆する。
この性質を応用して、例えば交通量の多い橋や高架橋に本発明品を塗布しておくことで瞬間的に荷重がかかる箇所を判別し、繰り返し瞬間的に荷重がかかる箇所は危険であることが推定できたり、一見荷重がかかっていないように見える部位が実はひずんでいて崩壊の危険性があると判定できたりすることが期待される。