(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578828
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】医薬品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4535 20060101AFI20190912BHJP
A61P 11/10 20060101ALI20190912BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20190912BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20190912BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20190912BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20190912BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20190912BHJP
【FI】
A61K31/4535
A61P11/10
A61P11/14
A61K9/08
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/42
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-173958(P2015-173958)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-79172(P2016-79172A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2018年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-208534(P2014-208534)
(32)【優先日】2014年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小山 藍
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 幸市朗
【審査官】
伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−082823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4535
A61K 9/08
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/42
A61P 11/10
A61P 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)チペピジンヒベンズ酸塩、及びB)カラギーナン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、ジェランガム又はポリL-グルタミン酸から選ばれる1種類以上であるポリアニオンを含有し、可溶化していることを特徴とする医薬品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チペピジンヒベンズ酸塩を含有する組成物に関し、医薬品の分野に応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
チペピジンはコデインリン酸塩と同等又はそれ以上の鎮咳作用を有すると共に、去痰作用を併有する物質であり、しかも非麻薬性であるため普通薬として扱うことができ、一般用医薬品のかぜシロップ剤、咳止めシロップ剤としても使用されている。
【0003】
チペピジンの塩にはクエン酸塩とヒベンズ酸塩があり、クエン酸塩は水への溶解性は良好であるが、強い苦味を有するため、特に液剤とした場合服用しにくいという欠点があった。一方ヒベンズ酸塩は苦味がないため特に小児用として適しているが、水に極めて溶けにくいという欠点がある。医療用医薬品では懸濁剤としてチペピジンヒベンズ酸塩配合シロップ剤も発売されているが、懸濁剤では含量均一性を保つための製剤的工夫が求められる。特に小児用のかぜシロップやせき止めシロップは一回の服用量が少なく、年齢によって服用量を調整する必要があることから分割製剤とすることが多い。その場合、含量均一性が保てないと適切な量の薬物を摂取できないという問題がある。医師や薬剤師による服薬指導により、よく振って使用する等の対処も可能であるが、使用者が必ずしも適切な量の薬物を摂取できるか懸念が残る。したがって、飲みやすく、適切な量の薬物を確実に摂取することのできるシロップ剤の開発には、苦味のないチペピジンヒベンズ酸塩の可溶化が必要であった。
【0004】
これまでも難溶性薬物を可溶化する手法が開発されている。例えば、油性成分や界面活性剤等により、難溶性薬物を乳化、可溶化する方法が報告されている。(特許文献1、2参照)
【0005】
これら公知の方法で可溶化できる難溶性薬物は主に脂溶性薬物である。しかし、チペピジンヒベンズ酸塩は有機溶剤にもほとんど溶けず脂溶性も極めて低いため、油性成分や界面活性剤等では可溶化することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4590067
【特許文献2】特許4872153
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はチペピジンヒベンズ酸塩を安定に可溶化した医薬品組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、チペピジンヒベンズ酸塩を配合した医薬品組成物において、カラギーナン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、ジェランガム、ポリL−グルタミン酸等のポリアニオンを配合したところ、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、A)チペピジンヒベンズ酸塩、及びB)カラギーナン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、ジェランガム又はポリL−グルタミン酸から選ばれる1種類以上であるポリアニオンを含有することを特徴とする医薬品組成物である。
一般にポリアニオン等を用いて、微細な粒子を分散させる方法が知られているが、これらは溶解していない粒子を分散させて懸濁する方法である。今回、本発明者らは驚くことに特定のポリアニオンを配合することで、難溶性のチペピジンヒベンズ酸塩を安定に可溶化できることを発見した。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、チペピジンヒベンズ酸塩を安定に可溶化することにより、苦味がなく、よく振って使用する等の対処がなくても含量均一性に問題のない、服用が容易な医薬品組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の医薬品組成物中におけるチペピジンヒベンズ酸塩の含有量は、0.004〜0.125w/v%であり、特に溶解が困難となる濃度は0.01w/v%以上である。
【0012】
本発明は特定のポリアニオンに関する発明であり、ポリアニオンとは、陰イオン性残基を有するポリマー骨格の化合物である。陰イオン性残基としては、カルボキシル基、カルボキシメチル基、硫酸基、リン酸基等が挙げられる。一方、ポリマー骨格としては、糖アルコール、セルロース、アミロース等の糖類、アミノ酸類、核酸塩基類等が挙げられる。陰イオン性残基とポリマー骨格とを組み合わせたポリアニオンとしては、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ジェランガム、ポリL−グルタミン酸のようなポリアミノ酸、核酸、デキストラン硫酸、アルギン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸等を例示できる。
【0013】
本発明における特定のポリアニオンとは、上記ポリアニオンのうち、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ジェランガム及びポリL−グルタミン酸であり、特に本発明の効果を発揮する。一般的に、カラギーナンの分子量は10万以上、主には80万〜100万(第8版食品添加物公定書解説書)、カルボキシビニルポリマーの分子量は20万〜600万(特表2011−520963号公報)、キサンタンガムの分子量は200万〜300万、ジェランガムの分子量は150万〜200万、ポリL-グルタミン酸の分子量は60万〜150万と言われている。本発明における特定のポリアニオンは分子量が比較的大きいという共通の特徴があり、分子量10万以上のポリアニオンでは、本発明の効果を有すると推定される。また、上記特定のポリアニオンには、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の塩を形成したものも含まれ、本発明におけるポリアニオンは、単独で使用してもよいし、二種以上併用してもよい。本発明における特定のポリアニオンは公知の方法に基づいて製造することにより入手可能であるが、市販品を購入することでも入手可能である。例えばカラギーナンとしてはCP Kelco社のGENUVISCOカラギーナンPJ-JPE、カーギル社のSATIAGUM BDC20、キサンタンガムとしては三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のサンエースPH、カルボキシビニルポリマーとしてはLUBRIZOL社製のカーボポール981、ジェランガムとしては三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のケルコゲルLT−100、ポリL−グルタミン酸としては株式会社明治フードマテリアの明治ポリグルタミン酸等が市販品として入手可能である。本発明の医薬品組成物におけるポリアニオンの濃度は0.01〜2.0w/v%程度であり、好ましくは0.02〜1.0w/v%、さらに好ましくは0.05〜0.2w/v%である。
【0014】
本発明の医薬品組成物は長期間保管後も可溶化した状態であり、更には長期間保管後の低温環境下でも沈殿物が生じずに可溶化状態が維持された。ここで、低温とは好ましくは10℃以下を意味し、さらに好ましくは5℃以下である。
【0015】
本発明の医薬品組成物のpHは、2.5〜7.0の範囲、好ましくは3.0〜6.0の範囲である。pHを上記範囲に保つためには、必要に応じてpH調節剤を配合することができる。このpH調節剤としてはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸等の有機酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸等の無機酸及びそれらの塩類等が挙げられる。これらのpH調節剤は一種又は二種以上使用できる。
【0016】
また、本発明の医薬品組成物には、チペピジンヒベンズ酸塩のぬれ性を向上させ、より溶解しやすくするために必要に応じて界面活性剤を配合することができる。この界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルビン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明の医薬品組成物における界面活性剤の濃度は0.0005〜2.5%程度であり、好ましくは0.005〜0.25w/v%、さらに好ましくは0.01〜0.05w/v%である。
【0017】
また、本発明の医薬品組成物には、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、チペピジンヒベンズ酸塩以外のデキストロメトルファン臭化水素酸塩、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、ノスカピンなどの鎮咳剤、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウムなどの去痰剤、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、エテンザミド、サリチルアミドなどの解熱鎮痛剤、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン剤、メチルエフェドリンなどの気管支拡張剤、アミノ酢酸などの胃粘膜保護成分、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸及びその塩類、生薬及び生薬抽出物、ローヤルゼリー、カフェイン等を配合することができる。また、必要に応じて、砂糖、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、液糖、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビアなどの甘味剤、保存剤、着色剤、pH調節剤、溶解補助剤、抗酸化剤、香料、溶剤等の医薬品組成物に一般に使用される成分を配合することができる。
【0018】
本発明に関わる医薬品組成物は常法により調製でき、その方法は特に制限されない。例えばシロップ剤等の液剤は、通常、各成分を規定量以下の精製水にて混合し、規定量に容量調整し、必要に応じてろ過、殺菌処理をすることで得られる。このとき、チペピジンヒベンズ酸塩、有機酸、界面活性剤、ポリアニオン等をあらかじめ熱溶解することで、チペピジンヒベンズ酸塩を速やかに溶解させることができる。
【0019】
本発明の医薬品組成物は、例えばシロップ剤等の経口液剤、経口ゼリー剤、トローチ剤(アメを含む)等の医薬品に適用できる。
【0020】
本発明の医薬品組成物は、感冒、上気道炎(咽喉頭炎,鼻カタル)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症等の疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難等の予防又は治療薬として有用であり、さらには注意欠如多動症、うつ病(治療抵抗性うつ病)、双極性障害、統合失調症、不安障害、認知症、強迫性障害(治療抵抗性強迫性障害)、パーキンソン病、排尿障害、疼痛等の予防又は治療薬としての用途にも使用可能である。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0022】
試験例1
(1)液剤の製造:
表1〜表7に示す液剤を製造した。ポリアニオン、砂糖、クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムを精製水又は80℃温水で溶解し試験液1とした。別に、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、クエン酸、チペピジンヒベンズ酸塩を80℃温水により溶解し、試験液2とした。試験液1と試験液2を混合した後、希塩酸で各pHに調整し、更に精製水を加えて60mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し、液剤(実施例1〜30、比較例1〜12)を得た。
【0023】
(2)評価方法
実施例1〜30及び比較例1〜12の液剤に結晶核としてチペピジンヒベンズ酸塩原料を少量(1mg程度)添加し、5℃で1週間保管後、チペピジンヒベンズ酸塩の結晶の析出の状態を目視により観察した。析出の程度は表8に示す基準により判定した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
【表7】
【0031】
【表8】
【0032】
表1〜7に示した通り、ポリアニオンであるカラギーナン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、ジェランガム、ポリL-グルタミン酸を添加した実施例1〜30の液剤は、ポリノニオンであるポリビニルピロリドンを添加した比較例1〜3や、ポリマーを添加していない比較例4〜6、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムを添加した比較例7〜12と比較して、添加したチペピジンヒベンズ酸塩原料を核とした結晶が析出していないという結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、チペピジンヒベンズ酸塩を安定に可溶化することにより、苦味がなく、よく振って使用する等の対処がなくても含量均一性に問題のない、服用が容易な医薬品組成物を提供することが可能となった。