【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年8月27日の廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議(第21回)で公開。 2015年8月27日に、下記のウェブサイトのアドレス(URL)に掲載。「http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/osensuitaisakuteam/2015/0827_01.html」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中継装置は、底部にキャスタを有し、上部に前記挿入棒が差し込まれて前記挿入棒を支持する挿入棒支持部を有し、さらに、前記カメラ、前記照明装置、前記無線機の接続ケーブルのプラグを差し込むコネクタ型中継端子を有し、前記コネクタ型中継端子を介して、前記カメラ、前記照明装置、前記無線機の接続ケーブルを前記遠隔操作装置の接続ケーブルに接続することを特徴とする請求項1記載の遠隔操作ロボットシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、小型調査ロボットを遠隔操作するためには無線通信を利用するが、狭隘部を構成する構造物が分厚いコンクリート等の遮蔽体となっている場合は、狭隘部の奥の空間まで電波が届きにくく無線通信が困難となることがある。
【0006】
また、狭隘部の空間においては、小型調査ロボットの搭載の多機能携帯端末のカメラでは、小型調査ロボットの足元が見えづらいため、操作者は狭隘部の隙間や段差に気づきにくく適切な操作が難しい。また、狭隘路の空間では前方遠くしか視野に入らないため、適切な操作ができずに壁面等にぶつかる恐れがある。小型調査ロボットの足元を確認するためにはカメラ搭載台数を増やすことが考えられるが、小型調査ロボットにおいてはカメラの台数を増やすことは容易ではない。
【0007】
さらには、小型調査ロボットは狭隘部を通過することできるように設計されているため全幅が狭いうえ、マイクロコンピュータ(マイコン)等の搭載機器を小型調査ロボット本体の上部スペースに設置している。従って、重心が比較的高いので狭隘部の空間で隙間や段差走行時には横転するリスクがある。
【0008】
本発明の目的は、狭隘部の奥の空間まで無線通信ができ、狭隘路の空間の映像を取得でき、しかもロボットが横転しても正常な姿勢に復帰させることができる遠隔操作ロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る遠隔操作ロボットシステムは、現場の調査領域の情報を収集するための多機能携帯端末を搭載し前記現場の調査領域を調査するロボットと、先端部が前記現場の調査領域に位置するように前記現場の狭隘部に挿入される挿入棒と、前記狭隘部の手前の位置に配置され前記挿入棒を支持する中継装置と、前記中継装置に設けられ前記ロボットに接続されたワイヤを収納するためのワイヤ収納装置と、前記挿入棒に設けられ前記狭隘部や前記現場の調査領域を撮影するカメラと、前記挿入棒に設けられ前記カメラが撮影する方向を照明する照明装置と、前記挿入棒の所定箇所に設けられ前記ロボットと通信を行う無線機と、前記無線機を中継して前記ロボットを遠隔操作する遠隔操作装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係る遠隔操作ロボットシステムは、請求項1の発明において、前記中継装置は、底部にキャスタを有し、上部に前記挿入棒が差し込まれて前記挿入棒を支持する挿入棒支持部を有し、さらに、前記カメラ、前記照明装置、前記無線機の接続ケーブルのプラグを差し込むコネクタ型中継端子を有し、前記コネクタ型中継端子を介して、前記カメラ、前記照明装置、前記無線機の接続ケーブルを前記遠隔操作装置の接続ケーブルに接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、先端部が現場の調査領域に位置するように現場の狭隘部に挿入される挿入棒を設け、挿入棒には、狭隘部や現場の調査領域を撮影するカメラと、カメラが撮影する方向を照明する照明装置と、ロボットと通信を行う無線機を設けるので、狭隘部の奥の空間まで無線通信ができ、狭隘路の空間の映像を取得できる。
【0012】
また、ロボットに接続されたワイヤを収納するワイヤ収納装置を、狭隘部の手前の位置に配置した中継装置に設けるので、ロボットの走行に伴ってワイヤを送り出すことができ、ワイヤを引っ張ることでロボットを吊り上げることができ、ロボットが横転しても正常な姿勢に復帰させることができる。
【0013】
また、中継装置は、底部にキャスタを有し、上部に挿入棒が差し込まれて挿入棒を支持する挿入棒支持部を有し、さらに、カメラ、照明装置、無線機の接続ケーブルのプラグを差し込むコネクタ型中継端子を有するので、挿入棒の設置は短時間で行える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る遠隔操作ロボットシステムを現場の調査領域に至るまでに狭隘部がある箇所に適用した一例を示す構成図である。現場の調査領域に至るまでに狭隘部がある箇所としては、例えば、原子力発電所の原子炉格納容器(以下、PCVという)の外壁部分からPCV機器ハッチに至るまでの狭隘部がある。この場合の現場の調査領域はPCV機器ハッチが位置する空間である。
図1は本発明の実施形態に係る遠隔操作ロボットシステムを、PCVの外壁部分からPCV機器ハッチに至るまでの狭隘部に適用した場合を示している。
【0016】
原子炉建屋にはPCVが設置され、PCVには原子炉圧力容器RPVが収納されている。
図1に示すように、原子炉建屋は二重扉11で仕切られ、原子炉建屋の外部であるタービン建屋にロボット12を遠隔操作する遠隔操作装置13が配置されている。ロボット12は小型ロボットであり、現場の調査領域の情報を収集するための多機能携帯端末及び遠隔操作装置13と無線通信を行う無線機を搭載している。
【0017】
原子炉建屋内のPCVは、
図1の左側に位置し、PCVの外壁部分には、PCV内部に通じるPCV機器ハッチ14が設けられている。PCV機器ハッチ14は、通常時は閉じられており、さらに、PCV機器ハッチ14の外側には、シールドプラグ15が設けられPCVの外壁である遮蔽コンクリート16とともにPCV機器ハッチ14をシールドしている。
【0018】
PCV機器ハッチ14の外側の空間の状態を調査する場合、シールドプラグ15と遮蔽コンクリート16との間に隙間がある場合には、その隙間であるシールドプラグ15と遮蔽コンクリート16との間の狭隘部17を通ってロボット12を走行させることになる。
【0019】
そこで、本発明の実施形態では、先端部が現場の調査領域(PCV機器ハッチ14が位置する空間)18に位置するように現場の調査領域18に至るまでの狭隘部17に挿入される挿入棒19を用意した。挿入棒19には、カメラ20a、20bと、カメラ20a、20bが撮影する方向を照明する照明装置21a、21bと、ロボット12と通信を行う無線機22a、22bが設けられている。無線機22a、22bは同一の識別記号(Wi-Fiの場合はSSID)を有した親機であり、ロボット12に搭載の無線機が子機である。ロボット12に搭載の無線機はローミング機能を有しており、これにより、ロボット12の移動時にも無線接続が継続される。
【0020】
挿入棒19は中継装置23により支持される。中継装置23は狭隘部17の手前の位置に配置され挿入棒支持部24により挿入棒19を支持する。中継装置23は第1コネクタ型中継端子25及び第2コネクタ型中継端子26を有し、第1コネクタ型中継端子25を介して第1接続ケーブル27により遠隔操作装置13に接続され、第2コネクタ型中継端子26を介して第2接続ケーブル28により、カメラ20a、20b、照明装置21a、21b、無線機22a、22bに接続される。第2接続ケーブル28は操作棒19の下部に設けられたケーブル受け部36で保持される。これにより、遠隔操作装置13は中継装置23を経由し無線機22を中継してロボット12を遠遠隔操作する。
【0021】
中継装置23には、ロボット12に接続されたワイヤ29を収納するワイヤ収納装置30が設けられている。ワイヤ収納装置30は、例えばボビンであり、ロボット12の走行に伴ってワイヤ29を送り出す。
ワイヤ29は操作棒19の先端部まで操作棒19の上部に設けられたワイヤ保持部38で案内される。
図1では、ロボット12を走行させる前であるので、ロボット12は、中継装置23の位置の近くである狭隘部17の手前の位置にあり、ワイヤ収納装置30からのワイヤ29は挿入棒19の先端部まで送り出され、さらに、挿入棒19の先端部で折り返してロボット12の位置まで送り出されている。また、中継装置23には、底部にキャスタ31が設けられ、中継装置23を狭隘部17の手前の位置まで移動し易くしている。挿入棒19及び中継装置23の詳細は後述する。
【0022】
図2は、
図1の状態から現場の調査領域18までロボット12を走行させた状態を示す説明図である。
図1の状態は、狭隘部17の手前まで中継装置23を搬入し、中継装置23に操作棒19を支持して、操作棒19の先端部が現場の調査領域18に位置するように狭隘部17に操作棒19を挿入した状態である。この場合、前述したように、ロボット12は、中継装置23の位置の近くである狭隘部17の手前の位置にある。
【0023】
図1の状態から、操作者は遠隔操作装置13にてロボット12の遠隔操作を行う。ロボット12が狭隘部17の手前の位置するときは、遠隔操作装置13は中継装置23を介して、操作棒19の狭隘部17の手前側にある無線機22aからロボット12に対して無線通信する。ロボット12は多機能携帯端末を搭載しているので、狭隘部17に入るまでは、操作者は多機能携帯端末のカメラにてロボット12の周囲を監視しながらロボット12を操作する。
【0024】
そして、ロボット12が狭隘部17に入ると、操作者は、操作棒19の中間位置に設けられたカメラ20a及び照明装置21aを動作させ、多機能携帯端末のカメラ及び操作棒19のカメラ20aからの双方のカメラ映像を監視しロボット12を操作する。多機能携帯端末のカメラ及び操作棒19のカメラ20aの双方のカメラ映像を監視できるので、操作者はロボット12の足元、狭隘部17の隙間や段差も確認できロボット12の適切な操作ができる。
【0025】
さらに、ロボット12が狭隘部17を通り抜けて現場の調査領域18に入ると、ロボット12の移動に伴う無線機22a、22b間の切り替えを行う。無線機22a、22bの切替時には、無線接続が瞬断し再接続まで時間がかかる場合もあるため、ロボット12が無線切断を検出したときに動作を停止させる暴走防止機能をロボット12に持たせる。すなわち、ロボット12が無線切断を検出したときは、ロボット12の動作を一時停止させ、無線機22a、22bの切替時が完了した後にロボット12は動作を開始する。
【0026】
無線機22a、22bの切替時が完了すると、遠隔操作装置13は中継装置23を介して、操作棒19の先端部にある無線機22bからロボット12に対して無線通信する。操作者は、操作棒19の先端部に設けられたカメラ20b及び照明装置21bを動作させ、多機能携帯端末のカメラ及び操作棒19のカメラ20bからの双方のカメラ映像を監視しロボット12を操作する。調査領域18にはシールドプラグ15を移動させるレール溝などがあり、多機能携帯端末のカメラ及び操作棒19のカメラ20bの双方のカメラ映像を監視することにより、操作者はシールドプラグ15のレール溝などの段差を確認できロボット12の適切な操作ができる。
【0027】
このように、挿入棒19には中継装置23側に無線機22aを搭載し、先端部に無線機22bを搭載しているので、狭隘部17を構成する構造物が分厚いコンクリート等の遮蔽体となっている場合であっても、狭隘部17の奥の空間まで電波を届かせることができ無線通信が可能となる。すなわち、挿入棒19は中継装置23側に無線機22aを搭載しており、ロボット12が狭隘部17に進入する前に無線通信することが可能である。また、挿入棒19は先端部に無線機22bを搭載しており、狭隘部17を通過した調査領域18ではロボット12には無線機22bからの電波が届くため、ロボット12を安定して操作することができる。
【0028】
次に中継装置23について説明する。
図3は本発明の実施形態に係る遠隔操作ロボットシステムの中継装置23の斜視図であり、
図3(a)は中継装置本体32の斜視図、
図3(b)は挿入棒支持部24の斜視図である。
図3(a)において、中継装置本体32の底部にはキャスタ31を有し、狭隘部17の手前の位置まで移動し易くしている。また、中継装置本体32の側面部には、遠隔操作装置13に接続される第1接続ケーブル27のプラグを差し込むための第1コネクタ型中継端子25を有し、中継装置本体32の上部には、挿入棒19に取り付けられたカメラ20a、20b、照明装置21a、21b、無線機22a、22bに接続される第2接続ケーブル28のプラグを差し込むための第2コネクタ型中継端子26を有する。
【0029】
また、中継装置本体32の上部にはロボット12に接続されたワイヤ29を送り出すためのワイヤ収納部30が設けられ、さらに、
図3(b)に示す挿入棒支持部24を装着するための装着穴33a、33bが設けられている。この装着穴33a、33bに挿入棒支持部24の装着柱34a、34bが差し込まれて挿入棒支持部24が中継装置本体32に装着される。なお、
図3(a)では中継装置本体32に収納される電気機器、例えば、アダプタや電源装置等の図示は省略している。
【0030】
図3(b)に示すように、挿入棒支持部24は、中継装置本体32の装着穴33a、33bに差し込まれ挿入棒支持部24を中継装置本体32に装着するための装着柱34a、34bを有している。装着柱34a、34bは挿入棒の高さ方向の位置を確保するものである。また、装着柱34a、34bの上部には挿入棒受け部35が設けられており、挿入棒受け部35に挿入棒の後端部が差し込まれて挿入棒19を掛止する。すなわち、挿入棒受け部35の内部は空洞となっており、挿入棒受け部35に挿入棒19の後端部が差し込まれて掛止される。後述するように、挿入棒19の後端部は尖っており、挿入棒受け部35は挿入棒19の後端部の尖部に対応した形状となっている。挿入棒19の後端部に尖部を設けたのは、挿入棒19の挿入棒受け部35への差し込みを容易にするためである。
【0031】
次に、挿入棒19について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る遠隔操作ロボットシステムの操作棒の斜視図である。
図4において、前述したように、挿入棒19には、カメラ20a、20bと、カメラ20a、20bが撮影する方向を照明する照明装置21a、21bと、ロボット12と通信を行う無線機22a、22bが設けられている。カメラ20a、20b、照明装置21a、21b、無線機22a、22bに接続された第2接続ケーブル28は、操作棒19の下部に設けられたケーブル受け部36で保持され、他方端にはプラグ37が設けられ、この第2接続ケーブルのプラグ37を中継装置23の第2コネクタ型中継端子26に差し込むことによって中継装置23に接続される。このように、第2接続ケーブル28の中継装置23への接続は、プラグ37を中継装置23の第2コネクタ型中継端子26に差し込むだけであるので、短時間でセッティングが可能である。
【0032】
操作棒19の上部には、ロボット12に接続されたワイヤ29を保持するためのワイヤ保持部38が設けられ、ロボット12の走行に伴ってワイヤ収納部30から送り出されたワイヤ29を案内する。ワイヤ29はワイヤ保持部38で案内されるので、また、送り出されたワイヤ29を引っ張ることでロボット12を吊り上げることができ、ロボット12が横転しても正常な姿勢に復帰させることができる。
【0033】
また、操作棒19の後端部39は尖っておりストッパ40を有している。後端部59に尖部を設けることにより挿入棒支持部24の挿入棒受け部35への差し込みを容易にするともに、ストッパ40を設けることにより挿入棒受け部35への差し込み位置を確保している。これにより、短時間で制御棒19を中継装置23の挿入棒支持部24にセッティングが可能である。
【0034】
以上の説明では、ワイヤ収納装置30は中継装置本体32の上部に設けた場合について説明したが、ワイヤ収納装置30の内部に設けるようにしてもよい。
【0035】
本発明の実施形態によれば、狭隘部17の手前の位置に配置される中継装置23は、キャスタ31を有するので、狭隘部17の手前の位置まで容易に移動でき、挿入棒19の中継装置23への支持は挿入棒支持装置24への差し込むだけで行え、また、第2接続ケーブル28の接続もプラグ37を第2コネクタ型中継端子26に差し込むだけでよいので、短時間で現場にセッティングすることができる。
【0036】
また、挿入棒19は先端部に無線機22bを搭載しており、ロボット12が狭隘部17の奥の空間である調査領域18に位置しても無線機22bからの電波が届くため、ロボット12を安定して操作することができる。一方、挿入棒19の後端部側にも別の無線機22aを搭載しており、ロボット12が狭隘部17に進入する前にも無線通信することが可能である。
【0037】
また、挿入棒19には中間部と先端部とにカメラ20a、20bをそれぞれ搭載しており、先端部のカメラ20bは狭隘部17の奥の空間(調査領域18)を、中間部のカメラ20aは狭隘部自体を真上から俯瞰することができ、カメラ画像はロボット操作場所に表示される。こうすることで、操作者はロボット搭載カメラの情報を補完し、適切な操作が可能となる。
【0038】
ロボット12にはワイヤ29が接続され、ワイヤ29は挿入棒19に沿って中継装置23のワイヤ収納装置30に巻かれており、ロボット12が調査へ向かう際はワイヤ収納装置30から自然にワイヤ29が繰り出される。ロボット12が調査から帰還する際は、繰り出されたワイヤ29を避けて走行することで、車輪(クローラ)への巻き込みを防止できる。
【0039】
さらに、ロボット12が横転した場合には作業員が中継装置23まで行き、ワイヤ29を引っ張ってロボット12を一旦吊り上げ、再度吊り下ろして正常な姿勢に復帰させることができる。もしロボット12がスタックする等自走不能な場合や、吊り下ろしても姿勢が回復しない場合には、吊り上げたまま挿入棒19を引き抜くことでロボット12を回収できる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。