(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、本発明に係る真空ポンプの一実施の形態を示す外観斜視図である。真空ポンプ1は、第1ハウジング70と第2ハウジング80とを備えている。第1ハウジング70には、第1吸気口71、第2吸気口72および第3吸気口73が形成されたフランジ部75が設けられている。第1吸気口71、第2吸気口72および第3吸気口73には、それぞれシールリングが装着されるシールリング溝71a,72a,73aが形成されている。第2ハウジング80には後述するようにモータが設けられ、第2ハウジング80の表面(真空ポンプ1の底面)には放熱フィン86が形成されている。
【0010】
図2は、真空ポンプ1を軸方向に沿って断面した断面図である。また、
図3は、
図2のA1−A1断面図である。第1ハウジング70の内部には、第1タービンロータ20,第2タービンロータ30およびモータロータ90が固定されたシャフト10が設けられている。シャフト10は、永久磁石43,44を用いた磁気軸受とボールベアリング84とによって支持されている。モータロータ90の外周側に設けられたモータステータ91は、第2ハウジング80に保持されている。ボールベアリング84は、第2ハウジング80に固定されるベアリングホルダ83に保持されている。
【0011】
永久磁石44は、シャフト10の図示右端部に形成された凹部内に固定されている。永久磁石44の内側に配置された永久磁石43は、磁石ホルダ40に保持されている。磁石ホルダ40はホルダ支持部41に固定され、そのホルダ支持部41は第1ハウジング70に固定されている。磁石ホルダ40には、ボールベアリング42が設けられている。ボールベアリング42は、永久磁石44と永久磁石43とが接触しないようにシャフト10の
振れ回りを規制する規制部材として機能する。
【0012】
第1タービンロータ20には、複数のタービン翼を備えた第1タービン翼段21が軸方向に複数段形成されている。複数の第1タービン翼段21に対して、複数のタービン翼を備えた第1固定翼段22が軸方向に交互に配置されている。これらの第1タービン翼段21と第1固定翼段22とにより、第1ターボ分子ポンプステージTP1が構成される。
【0013】
第2タービンロータ30には、複数のタービン翼を備えた第2タービン翼段31が軸方向に複数段形成されている。複数の第2タービン翼段31に対して、複数のタービン翼を備えた第2固定翼段32が軸方向に交互に配置されている。これらの第2タービン翼段31と第2固定翼段32とにより、第2ターボ分子ポンプステージTP2が構成される。第1固定翼段22および第2固定翼段32の軸方向(図示左右方向)の位置決めは、スペーサ23,33,50によって行われる。
【0014】
第2タービンロータ30の第2タービン翼段31よりもポンプ下流側(図示左側)には、円板部34が形成されている。円板部34には、第1円筒ロータ62と第2円筒ロータ63が固定されている。第2円筒ロータ63は、第1円筒ロータ62の内周側に配置される。第1円筒ロータ62の外周側には第1ネジステータ60が設けられ、第1円筒ロータ62と第2円筒ロータ63との間には第2ネジステータ61が設けられている。第1ネジステータ60には、第1ハウジング70の第3吸気口73と対向する位置に、貫通孔60aが形成されている。
【0015】
図3に示すように、第1ネジステータ60の内周面、第2ネジステータ61の外周面と内周面、および、第2円筒ロータ63の内周面が対向する第2ハウジング80の対向面には、ネジ溝およびネジ山がそれぞれ形成されている。第1円筒ロータ62、第2円筒ロータ63、第1ネジステータ60、第2ネジステータ61と、第2ハウジング80の対向面に形成されたネジ溝およびネジ山とにより、ホルベック(Holweck)ポンプステージHPが構成される。
【0016】
図2の第1吸気口71から流入した気体は、第1ターボ分子ポンプステージTP1によって第1ターボ分子ポンプステージTP1の下流側に排気される。また、第2吸気口72から流入した気体、および、第1ターボ分子ポンプステージTP1により排気された気体は、第2ターボ分子ポンプステージTP2によって第2ターボ分子ポンプステージTP2の下流側に排気される。第2ターボ分子ポンプステージTP2により排気された気体、および、第3吸気口73から流入した気体は、ホルベックポンプステージHPによって排気される。ホルベックポンプステージHPにより排気された気体は、第2ハウジング80に形成された排気通路81,82を通過して、排気ポート85から排出される。第1吸気口71,第2吸気口72,第3吸気口73の圧力Pは、P(71)<P(72)<P(73)のように下流側ほど高くなる。
【0017】
図4は、第1ネジステータ60の内周面側の形状を示す展開図である。第1ネジステータ60の内周面(すなわち、第1円筒ロータ62に対向する面)には、ネジ溝とネジ山とが交互に形成されている。
図4に示す例では、10個のネジ溝GL1〜GL10と、10個のネジ山601とが形成されている。ネジ溝GL1〜GL10およびネジ山601は、吸気側から排気側に向かってロータ回転方向に傾斜している。
【0018】
第1ネジステータ60に形成された貫通孔60aは、ネジ溝GL3からネジ溝GL7に跨るように、第1ネジステータ60の周方向に細長く形成されている。一方、破線DLは第3吸気口73と対向するステータ外周面領域の展開形状、すなわち、円弧状領域を展開して平面状領域とした場合の形状を示している。また、二点鎖線TDCLは、第1ハウジング70の内周面に形成されたガス通路700の展開形状を示したものである。ガス通路700は、第3吸気口73から周方向に延びるように形成されている。
【0019】
貫通孔60aの周方向寸法(図示左右方向)はL2に設定され、軸方向寸法(図示上下方向寸法)はW2に設定されている。同様に、第3吸気口73と対向するステータ外周面領域の周方向寸法はL1、軸方向寸法はW1に設定されている。また、ガス通路700に対応する二点鎖線TDCLで示す領域の周方向寸法はL3、軸方向寸法はW3に設定されている。
図4に示す例では、これらの寸法は、L1≦L2≦l3、および、W1=W3≦W2のように設定されている。
【0020】
L1≦L2のように設定することで、第3吸気口73から流入したガスを、効果的にネジ溝内に導入することができる。逆に、L1>L2のように設定した場合、第3吸気口73から第3吸気口73が対向していない貫通孔領域までのコンダクタンスが小さくなり、第3吸気口73から流入するガス量に対してネジ溝によって排気されるガス流量が低下する。その結果、第3吸気口73の圧力が上昇するおそれがある。すなわち、第3吸気口73の圧力をより低くするためには、L1≦L2のように設定するのが好ましい。
【0021】
さらに、ガス通路700の周方向寸法L3についても、ガス通路700が少なくとも貫通孔60aの開口の全域に対向するように形成されるようにL2≦l3と設定するのが好ましい。それにより、貫通孔60aが連通している各ネジ溝GL3〜GL7に流入するガス量を、より均一にすることができる。もちろん、L2>L3であってもガス流量均一効果は劣るが、ガス通路700は、第3吸気口73からのガスを各ネジ溝GL3〜GL7に導く機能を有する。
【0022】
図5は、
図3,4に示す本実施形態のポンプ構成と、従来の真空ポンプ(例えば、上述した特許文献1に記載されている真空ポンプ)の構成とを比較して示した図である。いずれも、第3吸気口73の箇所をポンプ軸に対して垂直に断面した図であり、第1円筒ロータ62よりも内側の構成については図示を省略した。
【0023】
図5(b)は従来のポンプの例を示したものであり、第1ネジステータ60に形成された貫通孔600aは、第3吸気口73と対向する領域のみに形成されている。そのため、第3吸気口73から流入したガスは、貫通孔600aが貫通しているネジ溝GL4,GL5およびGL6には流れ込むが、その他のネジ溝GL1〜GL3,GL7,GL10には流れ込まない。その結果、ネジ溝GL4,GL5およびGL6のガス流量は、他のネジ溝GL1〜GL3,GL7,GL10のガス流量よりも大きくなる。
【0024】
一般的に第3吸気口73の圧力は第2吸気口72の圧力の10倍以上である。そのため、ホルベックポンプステージHPの吸気側圧力は貫通孔60aが形成されているネジ溝の吸気側圧力によって支配される。
図5(a)と
図5(b)とを比較した場合、
図5(a)の構成の方が、ガスが流れ込むネジ溝の数が多いので、ネジ溝の吸気側圧力をより低くすることができる。その結果、真空ポンプ1の排気性能の向上を図ることができる。
【0025】
図5(a)に示す本実施の形態の場合には、第3吸気口73から流入したガスは、破線矢印Gで示すようにポンプ内に流入する。流入ガスは、第3吸気口73に対向する領域に設けられたネジ溝GL4,GL5およびGL6だけでなく、ガス通路700を通ってネジ溝GL3およびGL7にも流れ込む。また、貫通孔60aの周方向寸法L2を
図5(b)の場合よりも大きくし、かつ、ガス通路700を形成しているので、ネジ溝GL4,GL6に関する、第3吸気口73の出口からネジ溝までのコンダクタンスが
図5(b)の場合よりも大きくなる。その結果、ネジ溝GL4,GL6へのガス流入量が増加する。
図5(a)に示す構成の場合には、複数形成されたネジ溝GL1〜GL10のより多くに、第3吸気口73からのガスを流入させることができ、従来の場合よりもネジ溝の流量均一化を図ることができる。
【0026】
このように、第3吸気口73から流入したガスをより多くのネジ溝に導入するためには、
図4に示すように貫通孔60aの周方向寸法L2を、第3吸気口73が対向する領域(
図4の破線DLで示す領域)の周方向寸法L1以上とするのが好ましい。ただし、そのような構成とした場合、第3吸気口73と対向していない領域のネジ溝(例えば、
図5(a)のネジ溝GL3)は、第3吸気口73と対向している領域のネジ溝に比べて、第3吸気口73からネジ溝までのコンダクタンスが小さくなる。そこで、本実施の形態では、ガス通路700を設けることにより、第3吸気口73の対向領域から離れているネジ溝にも十分なガスが流入するようにした。
【0027】
なお、
図5(a)の構成でガス通路700が無い場合でも、第3吸気口73と対向しない領域に形成されているネジ溝GL3,GL7にも貫通孔60aを介してガスは流入する。しかし、第3吸気口73の直下に設けられたネジ溝GL5に比べて、ネジ溝GL3,GL7は、第3吸気口73からネジ溝GL3,GL7までのコンダクタンスが小さい。そのため、本実施の形態では、ガス通路700を設けることによりネジ溝GL3,GL7までのコンダクタンスの改善を図り、流量均一化の効果を高めている。
【0028】
図6は、上述した実施の形態の第1変形例を示す図である。
図6に示す第1変形例では、ガス通路701は、第1ハウジング70の内周面の周方向全周に亘って形成されている。その他の構成は
図3に示した構成と同様である。この場合も、
図3の構成の場合と同様の効果を奏することができる。
【0029】
図7は、上述した実施の形態の第2変形例を示す図である。
図3に示す真空ポンプでは、第1ネジステータ60に形成された貫通孔60aは、第3吸気口73と対向する位置に一つだけ設けられている。第2変形例の第1ネジステータ60では、第3吸気口73と対向する位置に貫通孔60aを設けるとともに、貫通孔60aと位相が180度異なる位置に第2の貫通孔60bを形成した。第1ハウジング70の内周面には、
図6に示す第1変形例の場合と同様のガス通路701が形成されている。この場合も、ガス通路701は、各貫通孔60a,60bの開口の全域に対向するように形成される。
【0030】
矢印Gで示すように第3吸気口73から流入したガスの一部は、貫通孔60aを介してネジ溝GL4,GL5,GL6に流入すると共に、他の一部はガス通路701を介して貫通孔60bからネジ溝GL1,GL9,GL10に流入する。すわち、第3変形例では、第3吸気口73から流入したガスは、ネジ溝GL1〜GL10の内の6つのネジ溝GL1,GL4〜GL6,GL9,GL10に流れ込むことになる。その結果、
図5(b)に示す従来の構成に比べて各溝間の圧力の均一化が図れ、ネジ溝の吸気側圧力をより低くすることができ、真空ポンプの性能向上を図ることができる。
【0031】
−第2の実施の形態−
図8は、本発明に係る真空ポンプの第2の実施の形態を示す図である。上述した第1の実施の形態ではガス通路700,701を第1ハウジング70の内周面に形成したが、第2の実施の形態では、ガス通路を第1ネジステータ60の外周面に形成するようにした。
図8(a)に示す例では、第1ネジステータ60には第3吸気口73と対向するように設けられた貫通孔60aと、それと位相が180度異なる貫通孔60bとが形成されている。そして、第1ネジステータ60の外周面には、第3吸気口73と貫通孔60bとを接続するガス通路60G1,60G2が形成されている。
【0032】
図9は、
図8(a)に示す第1ネジステータ60の外周面側を示す展開図である。貫通孔60aはネジ溝GL4,GL5,GL6に連通し、貫通孔60bはネジ溝GL1,GL9,GL10に連通している。このように、第1ネジステータ60に2つの貫通孔60a,60bを形成する場合には、貫通孔60a周方向寸法L2aと貫通孔60bの周方向寸法L2bとの合計L2(=L2a+L2b)を、第3吸気口73と対向するステータ外周面領域の周方向寸法L1に対してL1≦L2のように設定するのが好ましい。なお、
図7に示すようにガス通路701を第1ハウジング70に形成する場合も同様である。
【0033】
さらに、貫通孔を3以上形成する場合も同様で、第1ネジステータ60に形成された一以上の貫通孔の各周方向寸法の合計を、第1ネジステータ60の外周面における第3吸気口73が対向する領域の周方向寸法以上に設定するのが好ましい。
【0034】
図10(a)は
図9のD1−D1断面を示す図であり、
図10(b)はD2−D2断面を示す図である。第1ネジステータ60の外周面には断面形状が矩形の溝が全周に亘って形成されており、ガス通路60G1,60G2はその矩形溝の一部を構成している。
図10(b)のD2−D2断面においては、ガス通路60G1は貫通孔60bを介して、内周面側に形成されたネジ溝GL10に連通している。
【0035】
図8(b)は、貫通孔を3つ設けた場合を示す。第1ネジステータ60には、第3吸気口73に対向するように設けられた貫通孔60aと、位相の異なる2つの貫通孔60b,60cとが形成されている。図示左側の貫通孔60bは、ガス通路60G1を介して第3吸気口73に接続されている。図示右側の貫通孔60cは、ガス通路60G2を介して第3吸気口73に接続されている。その結果、第3吸気口73に流入したガスは、貫通孔60a〜60cからネジ溝GL1〜GL6,GL8,GL9に流れ込むことになる。
【0036】
なお、ガス通路を第1ハウジング70の内周面に形成する第1の実施形態の場合にも、
図8(b)に示す場合と同様に貫通孔の数を3以上に設定することができる。
【0037】
(質量分析装置)
図11は、3つの吸気口71〜73を備える真空ポンプ1が搭載される質量分析装置100の一例を示す図である。
図11は、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を用いた液体クロマトグラフ質量分析装置の概略構成を示す模式図である。質量分析装置100は、イオン化室150と質量分析部110とを備えている。質量分析部110には、イオン化室150に隣接する第1中間室113と、第1中間室に隣接する第2中間室114と、第2中間室114に隣接する分析室115とがそれぞれ隔壁を介して設けられている。
【0038】
真空ポンプ1の第1吸気口71は、分析室115の排気口131に接続される。真空ポンプ1の第2吸気口72は、第2中間室114の排気口132に接続される。真空ポンプ1の第3吸気口73は、第1中間室113の排気口133に接続される。このように、圧力領域の異なる3つの空間(第1中間室113、第2中間室114および分析室115)を一つの真空ポンプ1で排気する。
【0039】
イオン化室150にはイオン化用スプレー151が設けられている。液体クロマトグラフ部LCで成分分離された液体試料は、配管152によりイオン化用スプレー151に供給される。図示していないがイオン化用スプレー151にはネブライズガスが供給され、液体試料はイオン化用スプレー151により噴霧される。イオン化用スプレー151の先端には高電圧が印加されており、噴霧の際にイオン化される。第1中間室113とイオン化室150との間にはヒータブロック112が設けられており、ヒータブロック112にはイオン化室150と中間室113とを連通する脱溶媒管120が設けられている。脱溶媒管120は、イオン化室150で生成されたイオンや試料の液滴が通過する際に、脱溶媒化およびイオン化を促進する機能を有している。
【0040】
第1中間室113には、第1イオンレンズ121が設けられている。第2中間室114には、オクタポール123とフォーカスレンズ124とが設けられている。第2中間室114と分析室115との間の隔壁には、細孔を有する入口レンズ125が設けられている。分析室115には、第1四重極ロッド126と、第2四重極ロッド127と、検出器128とが設けられている。
【0041】
イオン化室150で生成されたイオンは、脱溶媒管120、第1中間室113の第1イオンレンズ121、スキマー122、第2中間室114のオクタポール123及びフォーカスレンズ124、入口レンズ125を順に経て分析室115に送られ、四重極ロッド126、127により不要イオンが排出され、検出器128に到達した特定イオンのみが検出されることになる。
【0042】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)真空ポンプ1は、
図2,4,5に示すように、複数の吸気口(第1吸気口71,第2吸気口72および第3吸気口73)を備え、円筒状の第1ネジステータ60には、第1ネジステータ60を貫通して内周面に形成されたネジ溝GL3〜GL7と連通する貫通孔60aが形成されている。そして、貫通孔60aの周方向寸法L2は、第1ネジステータ60の外周面における第3吸気口73が対向する領域の周方向寸法L1以上に設定されている。さらに、貫通孔が貫通し且つ第3吸気口73が対向しないネジ溝GL3,GL7に、第3吸気口73から流入したガスを導くガス通路700を備えるようにした。
【0043】
図4に示すように貫通孔60aの周方向寸法L2をL1以上としているので、より多くのネジ溝GL3〜GL7にガスを導くことができる。さらに、
図5(a)のようにガス通路700を設けることで、第3吸気口73が対向しないネジ溝GL3,GL7までのコンダクタンスを大きくすることができ、ネジ溝GL3,GL7へのガス流入量を多くすることができる。その結果、ネジ溝の吸気側圧力をより低くすることができ、真空ポンプの性能向上を図ることができる。
【0044】
図9に示すように第1ネジステータ60に2つの貫通孔60a,60bを形成する場合には、貫通孔60a周方向寸法L2aと貫通孔60bの周方向寸法L2bとの合計L2(=L2a+L2b)を、第3吸気口73と対向するステータ外周面領域の周方向寸法L1に対してL1≦L2のように設定するのが好ましい。それにより、ネジ溝の吸気側圧力をより低くすることができる。
【0045】
(2)また、
図8に示すように第1ネジステータ60の外周面に溝を形成してガス通路60G1,60G2としても良いし、
図3に示すように第1ネジステータ60の外周側を覆うように設けられた第1ハウジング70の内周面に溝を形成してガス通路700としても良い。さらに、第1ネジステータ60の外周面と第1ハウジング70の内周面との両方にガス通路用溝を形成しても良く、それによりガス通路の断面積をより大きくすることができる。
【0046】
(3)さらにまた、
図3,4に示すように、ガス通路700は、貫通孔60aの開口の全域に対向するように形成されるのが好ましい。このような構成とすることで、貫通孔60aが連通している各ネジ溝GL3〜GL7に流入するガス量をより均一にすることができる。
【0047】
(4)本実施の形態の質量分析装置では、例えば、
図11に示すように、第1の分析ユニットであるオクタポール123およびフォーカスレンズ124が収納される第2中間室114の排気口132に、真空ポンプ1の第2吸気口72が接続され、第1の分析ユニットよりも高い圧力領域で動作する第1イオンレンズ121が収納される第1中間室113の排気口133に、真空ポンプ1の第3吸気口が接続される。そのため、複数のチャンバを1台の真空ポンプ1で排気することができ、質量分析装置100のコストダウンを図ることができる。
【0048】
なお、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、実施形態では3つの吸気口を有する真空ポンプを例に説明したが、本発明は、第2ターボ分子ポンプステージTP2および第2吸気口72が無く、2つの第1吸気口71,第3吸気口73を備える真空ポンプにも適用することができる。
【0049】
また、上述した実施形態では、各貫通孔60a〜60cはネジ山601も貫通するように形成されているが、
図12に示すように、ネジ山601の部分を残してネジ溝GL3〜GL7の部分だけ貫通させるようにしても良い。