(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態に係る基板分割装置について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0015】
(実施形態1)
まず、分割された基板から形成される電子部品の一例として、表面実装型の積層コイルの構造および製造方法について説明する。なお、電部品としては、積層コイルに限られず、抵抗チップなどの分割された基板から形成される電子部品であればよい。
【0016】
図1は、電子部品の一例である積層コイルの外観を示す斜視図である。
図1に示すように、電子部品の一例である積層コイル900は、素体910と、素体910の両端面を覆うように設けられた外部電極920とを備えている。素体910の主面には、図示しない薄膜コイルが設けられている。薄膜コイルは、導電体パターンが積層されて構成されている。
図1においては、素体910の長さ方向をX軸方向、素体910の幅方向をY軸方向、素体910の厚さ方向をZ軸方向として示している。
【0017】
図2は、一定間隔毎にスクライブ溝が設けられた基板の外観を示す斜視図である。
図2に示すように、直方体状の基板910mの両主面にマトリックス状にスクライブ溝が設けられている。具体的には、X軸方向において一定間隔毎にスクライブ溝911が設けられている。複数のスクライブ溝911は、X軸方向に並んでいる。Y軸方向において一定間隔毎にスクライブ溝912が設けられている。複数のスクライブ溝912は、Y軸方向に並んでいる。
【0018】
スクライブ溝911およびスクライブ溝912の各々は、レーザスクライビングまたはダイシングにより形成される。基板910mの一方の主面上において、スクライブ溝911およびスクライブ溝912により区切られる領域の各々に、図示しない薄膜コイルが設けられている。
【0019】
基板910mの厚さは、たとえば、0.3mm以上1.0mm以下である。スクライブ溝911同士の間隔、および、スクライブ溝912同士の間隔の各々は、たとえば、0.3mm以上1.0mm以下である。基板910mは、ガラスまたはアルミナなどの無機物、または、セラミックで構成されている。
【0020】
スクライブ溝911およびスクライブ溝912の各々の深さは、基板910mの厚さの30%以下であることが好ましい。スクライブ溝911の深さとスクライブ溝912の深さとは、互いに異なっていてもよい。たとえば、先にスクライブ溝911の位置にて基板910mが分割される場合、スクライブ溝911の深さが、スクライブ溝912の深さより深いことが好ましい。
【0021】
図3は、基板をスクライブ溝の位置にて分割して形成された、素体となる部分が1列に並ぶ棒状の素体群を示す斜視図である。
図3に示すように、基板910mを複数のスクライブ溝911の各々の位置にて分割することにより、素体となる部分が1列に並ぶ棒状の素体群910sが形成される。素体群910sにおいては、複数のスクライブ溝912がY軸方向に並んでいる。
【0022】
図4は、棒状の素子群の両端面に外部電極を設けた状態を示す斜視図である。
図4に示すように、素体群910sの両端面に外部電極920が設けられる。外部電極920は、導電性ペーストをディップ法により素体群910sの両端面の各々に付着させ、または、素体群910sの両端面の各々に導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成される。その後、外部電極920には、必要に応じてめっき処理が施されていてもよい。
【0023】
外部電極920が設けられた素体群910sを複数のスクライブ溝912の各々の位置にて分割することにより、
図1に示す複数の積層コイル900が製造される。本実施形態に係る基板分割装置100は、基板として、外部電極920が設けられた素体群910sを分割する装置である。
【0024】
以下、本発明の実施形態1に係る基板分割装置の構成について説明する。
図5は、本発明の実施形態1に係る基板分割装置の構成を示す斜視図である。
図6は、本発明の実施形態1に係る基板分割装置の構成を示す側面図である。
図5,6においては、基板分割装置100の幅方向をX軸方向、基板分割装置100の奥行方向をY軸方向、基板分割装置100の高さ方向をZ軸方向として示している。
【0025】
図5,6に示すように、本発明の実施形態1に係る基板分割装置100は、スクライブ溝が並ぶ方向と搬送方向(Y軸方向)とが平行になるように基板が載置された状態で基板を搬送する無端の第1平ベルト110と、第1平ベルト110を駆動する第1駆動プーリ130と、第1平ベルト110の上方に配置された無端の第2平ベルト120と、第1駆動プーリ130の回転軸と平行な回転軸を有し、第2平ベルト120を駆動する第2駆動プーリ140と、第1駆動プーリ130の回転軸と平行な回転軸を有し、第1平ベルト110の内周面と接する第1押圧プーリ150と、第2駆動プーリ140の回転軸と平行な回転軸を有し、第2平ベルト120の内周面と接する第2押圧プーリ160とを備える。
【0026】
具体的には、基板分割装置100は、垂直方向に延在する骨格壁190を有している。骨格壁190には、複数のプーリを回転可能にそれぞれ支持する複数の回転軸が、基板分割装置100の幅方向(X軸方向)に延在するように設けられている。第1平ベルト110が巻き掛けられるプーリとして、第1駆動プーリ130および3つの第1従動プーリ131,132,133が、骨格壁190の一方の壁面に沿って配置されている。第1従動プーリ132と第1従動プーリ133との間に位置する部分の第1平ベルト110は、基板分割装置100の奥行方向(Y軸方向)に延在している。
【0027】
第1駆動プーリ130は、第1従動プーリ133の下方に位置している。第1従動プーリ131は、第1従動プーリ132の下方に位置している。第1駆動プーリ130の回転軸は、骨格壁190の他方の壁面側に配置された図示しないモータに接続されている。第1駆動プーリ130が駆動することにより、第1平ベルト110は、第1従動プーリ131、第1従動プーリ132および第1従動プーリ133をこの順に通過するように回転する。
【0028】
本実施形態においては、第1平ベルト110は、第3平ベルト111と第4平ベルト112とが積層されて構成されている。第4平ベルト112は、第3平ベルト111の外側に配置されている。基板分割装置100は、第3平ベルト111と第4平ベルト112とを離間させた状態で第3平ベルト111に張力を付加する第1テンショナ134と、第3平ベルト111と第4平ベルト112とを離間させた状態で第4平ベルト112に張力を付加する第2テンショナ135とをさらに備える。
【0029】
第1テンショナ134は、第1駆動プーリ130と第1従動プーリ131との間に位置する部分の第3平ベルト111を押し上げるように、第3平ベルト111の外周面に対して転がり接触しつつ押圧している。第2テンショナ135は、第1駆動プーリ130と第1従動プーリ131との間に位置する部分の第4平ベルト112を押し下げるように、第4平ベルト112の内周面に対して転がり接触しつつ押圧している。
【0030】
第1押圧プーリ150は、第1従動プーリ132と第1従動プーリ133との間に位置する部分の第3平ベルト111の内周面と転がり接触している。本実施形態においては、第1押圧プーリ150の回転軸は、骨格壁190に固定されているが、第1押圧プーリ150の回転軸が、垂直方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0031】
第2平ベルト120が巻き掛けられるプーリとして、第2駆動プーリ140および3つの第2従動プーリ141,142,143が、骨格壁190の一方の壁面に沿って配置されている。第2従動プーリ142と第2従動プーリ143との間に位置する部分の第2平ベルト120は、基板分割装置100の奥行方向(Y軸方向)に延在している。
【0032】
第2駆動プーリ140は、第2従動プーリ143の下方に位置している。第2従動プーリ141は、側面視にて第2従動プーリ142の斜め下方に位置している。第2従動プーリ141は、水平方向(Y軸方向)において第2従動プーリ142より第2駆動プーリ140から離れて位置している。第2駆動プーリ140の回転軸は、骨格壁190の他方の壁面側に配置された図示しないモータに接続されている。第2駆動プーリ140が駆動することにより、第2平ベルト120は、第2従動プーリ143、第2従動プーリ142および第2従動プーリ141をこの順に通過するように回転する。
【0033】
第2押圧プーリ160は、第2駆動プーリ140と第2従動プーリ141との間に位置する部分の第2平ベルト120の内周面と転がり接触している。第2駆動プーリ140と第2押圧プーリ160との間に位置する部分の第2平ベルト120は、基板分割装置100の奥行方向(Y軸方向)に延在している。第2押圧プーリ160の回転軸は、骨格壁190の他方の壁面側に配置された駆動機構161と接続されており、矢印162で示す垂直方向に移動可能に設けられている。駆動機構161として、空圧アクチュエータ、油圧アクチュエータまたは電動アクチュエータなどを用いることができる。第2押圧プーリ160の直径は、第1押圧プーリ150の直径より小さい。
【0034】
第2押圧プーリ160は、側面視にて第2従動プーリ141の斜め下方に位置している。第2押圧プーリ160は、第1押圧プーリ150の上方に位置している。第2押圧プーリ160の回転軸は、第1押圧プーリ150の回転軸に対して、基板分割装置100の奥行方向(Y軸方向)に僅かにずれて位置している。この僅かなずれにより、後述するように第1押圧プーリ150と第2押圧プーリ160とによって素体群910sを押圧した際の、素体群910sの挙動を調整することができる。
【0035】
第1押圧プーリ150と第1従動プーリ133との間に位置する部分の第1平ベルト110は、第2駆動プーリ140と第2押圧プーリ160との間に位置する部分の第2平ベルト120と、隙間をあけて対向している。
【0036】
基板分割装置100は、外部電極920が設けられた素体群910sを順次供給する供給フィーダ170と、供給フィーダ170から供給された素体群910sを第1平ベルト110上に搬送する搬送フィーダ171とをさらに備える。搬送フィーダ171によって第1平ベルト110上に載置された素体群910sの複数のスクライブ溝912は、基板分割装置100の奥行方向(Y軸方向)に並んでいる。
【0037】
基板分割装置100は、第1駆動プーリ130と第1従動プーリ133との間に位置する部分の第1平ベルト110と対向するように、骨格壁190の一方の壁面に沿って配置された回収ガイド180と、回収ガイド180の下方に配置された回収ボックス181とをさらに備える。
【0038】
ここで、本実施形態に係る基板分割装置100の第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々の構成および製造方法について説明する。
【0039】
図7は、本発明の実施形態1に係る基板分割装置の第2平ベルト、第3平ベルトおよび第4平ベルトが切り出される無端ロールの外観を示す斜視図である。
図8は、本発明の実施形態1に係る基板分割装置の第2平ベルト、第3平ベルトおよび第4平ベルトの各々の積層構造を示す断面図である。
【0040】
図7,8に示すように、本実施形態に係る基板分割装置100の第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々は、1つの無端ロール10が輪切りにされることにより形成される。無端ロール10は、ウレタン樹脂12にて表面を被覆された継ぎ目のない筒状の布11で構成されている。無端ロール10の外周面および内周面の各々は研磨されており、無端ロール10の厚さのばらつきが5%以内に抑えられている。
【0041】
よって、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々における、厚さのばらつきは5%以下である。また、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112間における、厚さのばらつきも5%以下である。
【0042】
本実施形態においては、第1テンショナ134および第2テンショナ135によって、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々に別々に張力を付加することにより、第3平ベルト111および第4平ベルト112の一方に弛みが生じることを抑制し、第3平ベルト111および第4平ベルト112の一方の弛みによって第1平ベルト110の厚さがばらつくことを抑制している。
【0043】
第1平ベルト110は、第3平ベルト111と第4平ベルト112とが積層されて構成されているため、第1平ベルト110の厚さは、第2平ベルト120の厚さの略2倍である。よって、第1平ベルト110は、第2平ベルト120より厚い。第1平ベルト110の厚さが、第2平ベルト120の厚さの2倍以上であることが好ましい。
【0044】
以下、本実施形態に係る基板分割装置100の動作について説明する。搬送フィーダ171によって第1平ベルト110上に載置された素体群910sは、第1平ベルト110の回転により基板分割装置100の奥行方向(Y軸方向)に搬送され、第1押圧プーリ150と第2押圧プーリ160との間の位置を通過する。
【0045】
図9は、本発明の実施形態1に係る基板分割装置において、基板が第1押圧プーリと第2押圧プーリとの間の位置を通過している状態を示す側面図である。
【0046】
図9に示すように、素体群910sは、第1押圧プーリ150と第2押圧プーリ160との間の位置を通過する際に、第1平ベルト110と第2平ベルト120とによって挟まれた状態となる。この状態において、第1押圧プーリ150と第2押圧プーリ160とによって押圧されることにより、第1平ベルト110および第2平ベルト120を通じて、素体群910sに押圧力が負荷される。その結果、素体群910sの両主面のスクライブ溝912の先端から進展した亀裂90が繋がって、素体群910sが、スクライブ溝912の位置にて分割される。
【0047】
分割されて形成された積層コイル900は、第1平ベルト110と第2平ベルト120とによって挟まれた状態のまま搬送され、第1従動プーリ133の上方を通過した後、第1駆動プーリ130と第1従動プーリ133との間に位置する部分の第1平ベルト110と回収ガイド180との間を通過して、回収ボックス181内に落下する。
【0048】
本実施形態に係る基板分割装置100においては、ウレタン樹脂12にて表面を被覆された、第1平ベルト110と第2平ベルト120との間に素体群910sを挟んだ状態で、第1押圧プーリ150および第2押圧プーリ160によって素体群910sを押圧してスクライブ溝912の位置にて分割しているため、素体群910sに負荷される押圧力のばらつきを小さくして、安定して素体群910sを分割することができる。
【0049】
また、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々における、厚さのばらつきが5%以下であるため、素体群910sに負荷される押圧力のばらつきをより小さくすることができる。
【0050】
さらに、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々に別々に張力を付加することにより、第3平ベルト111および第4平ベルト112の一方の弛みによって第1平ベルト110の厚さがばらつくことを抑制していることによっても、素体群910sに負荷される押圧力のばらつきを小さくすることができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、基板として外部電極920が設けられた素体群910sを基板分割装置100によって分割する場合について説明したが、基板分割装置100によって基板910mをスクライブ溝911の位置にて分割するようにしてもよい。この場合は、基板分割装置100の幅が広くなる。
【0052】
基板分割装置100を用いて、スクライブ溝911が並ぶ方向に基板910mを搬送して、スクライブ溝911の位置にて基板910mを分割して素体群910sを形成した後、基板分割装置100を再度用いて、素体群910sをスクライブ溝912が並ぶ方向に搬送して、スクライブ溝912の位置にて素体群910sを分割することにより、積層コイル900を作製してもよい。
【0053】
ここで、本実施形態に係る基板分割装置100の効果を検証した実験例について説明する。
【0054】
(実験例1)
実施例1,2および比較例1,2に係る4種類の基板分割装置を用いて、素体群910sを分割し、その分割状態について検証した。素体群910sには、10個のスクライブ溝912を形成した。
【0055】
実施例1に係る基板分割装置においては、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々は、ウレタン樹脂12にて表面を被覆されている。第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々における、厚さのばらつきを5%以下とし、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112間における、厚さのばらつきも5%以下とした。
【0056】
実施例2に係る基板分割装置においては、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々は、ウレタン樹脂12にて表面を被覆されている。第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々における、厚さのばらつきを5%以下とし、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112間における、厚さのばらつきを5%より大きく7%以下とした。
【0057】
比較例1に係る基板分割装置においては、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々は、シリコン樹脂にて表面を被覆されている。第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々における、厚さのばらつきを5%以下とし、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112間における、厚さのばらつきも5%以下とした。
【0058】
比較例2に係る基板分割装置においては、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々は、シリコン樹脂にて表面を被覆されている。第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112の各々における、厚さのばらつきを5%以下とし、第2平ベルト120、第3平ベルト111および第4平ベルト112間における、厚さのばらつきを5%より大きく7%以下とした。
【0060】
表1は、実験例1の条件および結果をまとめたものである。表1に示すように、スクライブ溝の先端から斜め方向に亀裂が進展して基板が歪な形状で分割された箇所は、実施例1においては0箇所、実施例2においては2箇所、比較例1においては8箇所、比較例2においては9箇所であった。スクライブ溝の先端から亀裂が十分に進展せずにスクライブ溝の位置にて分割されなかった部分は、実施例1および実施例2においては認められず、比較例1および比較例2においては認められた。
【0061】
実験例1の結果から、ウレタン樹脂にて表面を被覆された、第1平ベルトと第2平ベルトとの間に素体群を挟んだ状態で、第1押圧プーリおよび第2押圧プーリによって素体群を押圧してスクライブ溝の位置にて分割することにより、素体群に負荷される押圧力のばらつきを小さくして、安定して素体群を分割することができることが確認できた。
【0062】
また、ウレタン樹脂にて表面を被覆された、第2平ベルト、第3平ベルトおよび第4平ベルト間における、それぞれのベルトの厚さのばらつきが5%以下である場合は、基板が歪な形状で分割された箇所および未分割部分の両方が認められず、安定して素体群を分割することができることが確認できた。
【0063】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る基板分割装置について説明する。
図10は、本発明の実施形態2に係る基板分割装置の構成を示す正面図である。
図11は、
図10の基板分割装置を矢印XI方向から見た側面図である。
図12は、本発明の実施形態2に係る基板分割装置において、ローラが降下した状態を示す正面図である。
図13は、本発明の実施形態2に係る基板分割装置において、基板がローラとステージとの間の位置を通過して分割されている状態を、
図12のXIII−XIII線矢印方向から見た断面図である。本実施形態においては、基板分割装置200が、基板として、外部電極920が設けられた素体群910sを分割する場合について説明する。
【0064】
図10〜13においては、基板分割装置200の幅方向をX軸方向、基板分割装置200の奥行方向をY軸方向、基板分割装置200の高さ方向をZ軸方向として示している。
【0065】
図10〜13に示すように、本発明の実施形態2に係る基板分割装置200は、回転可能に支持されたローラ260と、スクライブ溝912が並ぶ方向と搬送方向(Y軸方向)252とが平行になるように、ローラ260の下方をローラ260の回転軸と直交する方向に通過して基板を搬送するステージ250と、ステージ250上に載置され、基板が載置される第1ウレタン樹脂シート210と、基板を覆うように基板上に載置された第2ウレタン樹脂シート220とを備える。
【0066】
具体的には、基板分割装置200は、ベース290を有している。金属製のステージ250が、ベース290上において矢印251で示す基板分割装置200の奥行方向(Y軸方向)に移動可能に設けられている。ステージ250は、ステージ250を基板分割装置200の奥行方向(Y軸方向)に移動させる図示しないサーボモータなどの駆動機構と接続されている。ステージ250の上面には、複数の吸引孔が設けられている。複数の吸引孔の各々は、図示しない真空ポンプと接続されている。真空ポンプを稼働させることにより、ステージ250上に載置されている第1ウレタン樹脂シート210を真空吸引により保持することができる。
【0067】
基板分割装置200の幅方向(X軸方向)においてステージ250を互いの間に挟むように、基板分割装置200の高さ方向(Z軸方向)に延在する2本の支持柱264がベース290上に設けられている。2本の支持柱264の先端部同士を繋ぐように、駆動機構261が設けられている。駆動機構261として、空圧アクチュエータ、油圧アクチュエータまたは電動アクチュエータなどを用いることができる。
【0068】
駆動機構261は、ローラ260を矢印266で示す垂直方向に移動させる。具体的には、ローラ260の回転軸の両端を支持する1対の腕部263が、駆動機構261の下方に位置する平板部262の下面に固定されている。平板部262の上面には、3本のシリンダ部265の各々の下端が接続されている。駆動機構261は、基板分割装置200の幅方向(X軸方向)において互いに間隔をあけて位置する3本のシリンダ部265の各々の上端に接続されており、3本のシリンダ部265の各々を垂直方向に伸縮させる。
【0069】
3本のシリンダ部265が垂直方向に伸縮することにより、ローラ260の回転軸を水平方向に維持しつつローラ260が垂直方向に移動する。本実施形態においては、ローラ260は自由に回転可能に支持されているが、ローラ260を任意の回転速度で回転させる駆動機構が設けられていてもよい。本実施形態においては、ローラ260は、金属製であるが、樹脂製であってもよい。ローラ260が金属製である場合には、素体群910sに押圧力を均等に負荷することができる。
【0070】
第1ウレタン樹脂シート210および第2ウレタン樹脂シート220の各々の厚さは、0.5mm以下である。第1ウレタン樹脂シート210および第2ウレタン樹脂シート220の各々の厚さのばらつきは、5%以下である。第1ウレタン樹脂シート210および第2ウレタン樹脂シート220の各々は、ウレタン樹脂のみで構成されている。
【0071】
以下、本実施形態に係る基板分割装置200の動作について説明する。ステージ250上に載置された第1ウレタン樹脂シート210上に素体群910sを載置し、素体群910s上に第2ウレタン樹脂シート220を載置した状態において、真空ポンプを稼働させる。この状態において、素体群910sは、複数のスクライブ溝912が基板分割装置200の奥行方向(Y軸方向)に並ぶように位置している。その後、駆動機構261を稼働させて
図12中の矢印268に示すようにローラ260を所定の高さまで下降させる。
【0072】
次に、ステージ250を
図13中の矢印252に示す基板分割装置200の奥行方向(Y軸方向)に移動させることにより、素体群910sは、ローラ260の下方の位置を通過する。
【0073】
図13に示すように、素体群910sは、ローラ260の下方の位置を通過する際に、第1ウレタン樹脂シート210と第2ウレタン樹脂シート220とによって挟まれた状態において、ローラ260とステージ250とによって押圧されることにより、第1ウレタン樹脂シート210および第2ウレタン樹脂シート220を通じて、素体群910sに押圧力が負荷される。その結果、素体群910sの両主面のスクライブ溝912の先端から進展した亀裂90が繋がって、素体群910sが、スクライブ溝912の位置にて分割され、積層コイル900が形成される。
【0074】
ステージ250の移動速度は、5mm/秒以上100mm/秒以下であることが好ましい。ステージ250の移動速度が速すぎる場合、スクライブ溝912の先端から亀裂が十分に進展せずにスクライブ溝912の位置にて分割されない部分が現れることがある。ステージ250の移動速度が遅すぎる場合、基板に負荷される押圧力が大きくなり、スクライブ溝912の先端から斜め方向に亀裂が進展して素体群910sが歪な形状で分割されやすい。
【0075】
本実施形態に係る基板分割装置200においては、厚さのばらつきが5%以下である、第1ウレタン樹脂シート210と第2ウレタン樹脂シート220との間に素体群910sを挟んだ状態で、ローラ260およびステージ250によって素体群910sを押圧してスクライブ溝912の位置にて分割しているため、素体群910sに負荷される押圧力のばらつきを小さくして、安定して素体群910sを分割することができる。
【0076】
なお、本実施形態においては、基板として外部電極920が設けられた素体群910sを基板分割装置200によって分割する場合について説明したが、基板分割装置200によって基板910mをスクライブ溝911の位置にて分割するようにしてもよい。
【0077】
基板分割装置200を用いて、スクライブ溝911が並ぶ方向に基板910mを搬送して、スクライブ溝911の位置にて基板910mを分割して素体群910sを形成した後、基板分割装置200を再度用いて、素体群910sをスクライブ溝912が並ぶ方向に搬送して、スクライブ溝912の位置にて素体群910sを分割することにより、積層コイル900を作製してもよい。
【0078】
ここで、本実施形態に係る基板分割装置200の効果を検証した実験例について説明する。
【0079】
(実験例2)
実施例3,4および比較例3,4に係る4種類の基板分割装置を用いて、基板910mを分割して素体群910sを形成し、さらに素体群910sを分割して、その分割状態について検証した。基板910mには、スクライブ溝911およびスクライブ溝912の各々を9個形成した。
【0080】
実施例3に係る基板分割装置においては、厚さのばらつきが5%以下である、第1ウレタン樹脂シート210と第2ウレタン樹脂シート220との間に基板910mを挟んだ状態で、ローラ260およびステージ250によって基板910mを押圧した。
【0081】
実施例4に係る基板分割装置においては、厚さのばらつきが5%より大きく7%以下である、第1ウレタン樹脂シート210と第2ウレタン樹脂シート220との間に基板910mを挟んだ状態で、ローラ260およびステージ250によって基板910mを押圧した。
【0082】
比較例3に係る基板分割装置においては、厚さのばらつきが5%以下である、第1シリコン樹脂シートと第2シリコン樹脂シートとの間に基板910mを挟んだ状態で、ローラ260およびステージ250によって基板910mを押圧した。
【0083】
比較例4に係る基板分割装置においては、厚さのばらつきが5%より大きく7%以下である、第1シリコン樹脂シートと第2シリコン樹脂シートとの間に基板910mを挟んだ状態で、ローラ260およびステージ250によって基板910mを押圧した。
【0085】
表2は、実験例2の条件および結果をまとめたものである。表2に示すように、スクライブ溝の先端から斜め方向に亀裂が進展して基板が歪な形状で分割された箇所は、実施例3においては0箇所、実施例4においては5箇所、比較例3においては7箇所、比較例4においては23箇所であった。スクライブ溝の先端から亀裂が十分に進展せずにスクライブ溝の位置にて分割されなかった部分は、実施例3および実施例4においては認められず、比較例3および比較例4においては認められた。
【0086】
実験例2の結果から、厚さのばらつきが5%以下である、第1ウレタン樹脂シート210と第2ウレタン樹脂シート220との間に素体群910sを挟んだ状態で、ローラ260およびステージ250によって素体群910sを押圧してスクライブ溝912の位置にて分割した場合は、基板が歪な形状で分割された箇所および未分割部分の両方が認められず、安定して素体群を分割することができることが確認できた。
【0087】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0088】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。