(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなエアバッグの展開制御においては、常に、その制御内容の改善が進められている。また、近年では、このようなエアバッグの展開制御のみならず、様々な制御分野において、そのシートにおける乗員の着座状態が考慮されるようになっている。そして、これにより、その着座状態検知についてもまた、より詳細に乗員の着座状態を把握することが求められることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より詳細に乗員の着座状態を検知することのできる乗員検知方法及び乗員検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する乗員検知方法は、車両のシート荷重を検出する工程と、シートに対する乗員の着座を検知する工程と、前記シート荷重の偏向状態を示す荷重比率を演算する工程と、前記荷重比率の推移を監視する工程と、前記荷重比率に基づき前記シートにおける着座状態の偏向を検知する工程と、前記着座状態の偏向が検知されたとき、該着座状態の偏向検知に至る前記荷重比率の変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたと判定される場合に、前記乗員の着座姿勢が、前記シート荷重の偏向方向に傾いていると推定する工程と、を備えることが好ましい。
【0008】
即ち、シートに着座する乗員が姿勢を傾ける動作は、その着座面から臀部や大腿部を離すことなく行うことができる。そして、この場合、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率の変化は、傾きの変動幅が小さい安定した変化となる。従って、上記構成によれば、精度よく、その偏向した着座状態の類型が、着座姿勢の傾きであると推定することができる。
【0009】
上記課題を解決する乗員検知方法は、前記着座状態の偏向検知に至る前記荷重比率の変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していなかったと判定される場合に、前記乗員の着座位置が、前記シート荷重の偏向方向にずれていると推定する工程を備えることが好ましい。
【0010】
即ち、多くの場合、シートに着座する乗員は、その着座面上に位置する左右の臀部及び大腿部を交互に持ち上げる態様で、シートに着座した状態のまま、その着座位置を変更する。そして、これにより生ずるシート荷重の変動が、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率の不安定な変化に現れることになる。従って、上記構成によれば、シートに対する着座位置のズレを、その着座姿勢の傾きと区別して検知することができる。
【0011】
上記課題を解決する乗員検知方法は、前記荷重比率の演算周期毎に該荷重比率の変化量を演算する工程と、前記変化量の今回値と前回値との差が所定の閾値よりも小さい場合に前記荷重比率の変化における傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定する工程と、を備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、精度よく、その荷重比率の変化が、傾きの変動幅が小さい安定した変化であると判定することができる。
上記課題を解決する乗員検知方法は、前記傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定された連続回数を計測する工程と、前記着座状態の偏向が検知されたとき、前記連続回数が所定の閾値以上である場合に、前記着座状態の偏向検知に至る前記荷重比率の変化において前記傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたと判定する工程と、を備えることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、精度よく、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率の変化が傾きの変動幅が小さい安定した変化であったと判定することができる。そして、この判定結果に基づいて、その偏向した着座状態の類型が、着座姿勢の傾きであると推定することができる。
【0014】
上記課題を解決する乗員検知方法は、前記着座状態の偏向が検知されたとき、所定時間、過去に遡って、前記連続回数が所定の閾値以上であった区間がある場合に、前記着座状態の偏向検知に至る前記荷重比率の変化において前記傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたと判定する工程を備えることが好ましい。
【0015】
即ち、乗員が傾斜姿勢に移行する所用時間は、個体差を考慮しても略一定の時間範囲内に収まる。従って、上記構成によれば、前記着座状態の偏向が検知されたとき、荷重比率の変化が一時的に不安定な状態であった場合でも、それ以前に傾きの変動幅が小さい安定した区間があった場合には、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率の変化が傾きの変動幅が小さい安定した変化であったとみなすことができる。そして、この判定結果に基づいて、その偏向した着座状態の類型が、着座姿勢の傾きであると推定することができる。
【0016】
上記課題を解決する乗員検知方法は、前記荷重比率が所定の開始閾値に到達した場合に、前記傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定された回数の計測を開始する工程と、前記着座状態の偏向が検知されたとき、前記傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定された回数が所定の閾値以上である場合に、前記着座状態の偏向検知に至る前記荷重比率の変化において前記傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたと判定する工程と、を備えることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、「傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定された回数」が多い場合には、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率の変化が傾きの変動幅が小さい安定した変化であったと判定される。つまり、その「継続の態様」が「断続的なもの」であることを許容する。そして、これにより、外乱の影響を受けやすい状況においても、その偏向した着座状態の類型が、着座姿勢の傾きであると推定することができる。
【0018】
上記課題を解決する乗員検知装置は、車両のシート荷重を検出する荷重検出部と、シートに対する乗員の着座を検知する着座検知部と、前記シート荷重の偏向状態を示す荷重比率を演算する荷重比率演算部と、前記荷重比率の推移を監視する荷重比率監視部と、前記荷重比率に基づき前記シートにおける着座状態の偏向を検知する着座状態偏向検知部と、前記着座状態の偏向が検知されたとき、該着座状態の偏向検知に至る前記荷重比率の変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたと判定される場合に、前記乗員の着座姿勢が、前記シート荷重の偏向方向に傾いていると推定する傾斜姿勢推定部と、を備えることが好ましい。
【0019】
上記課題を解決する乗員検知装置は、前記着座状態の偏向検知に至る前記荷重比率の変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していなかったと判定される場合に、前記乗員の着座位置が、前記シート荷重の偏向方向にずれていると推定する位置ずれ推定部を備えることが好ましい。
【0020】
上記課題を解決する乗員検知装置は、前記荷重比率の演算周期毎に該荷重比率の変化量を演算する変化量演算部と、前記変化量の今回値と前回値との差が所定の閾値よりも小さい場合に前記荷重比率の変化における傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定する安定性判定部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、より詳細に乗員の着座状態を検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
以下、車両用のシートに実装された乗員検知装置に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に対して傾動自在に設けられたシートバック3と、を備えている。そして、そのシートバック3の上端には、ヘッドレスト4が設けられている。
【0025】
本実施形態では、車両の床部Fには、車両前後方向に延びる左右一対のロアレール5が設けられている。また、これら各ロアレール5には、それぞれ、その延伸方向に沿って当該ロアレール5上を相対移動可能なアッパレール6が装着されている。そして、本実施形態のシート1は、これらの各ロアレール5及びアッパレール6が形成するシートスライド装置10の上方に支持される構成となっている。
【0026】
また、
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、シート1の下方には、複数の荷重センサ11が設けられている。具体的には、これらの荷重センサ11(11a〜11d)は、上記のようにシートスライド装置10を構成する支持部材としてのアッパレール6と当該アッパレール6の上方に支持されたシート1との間、詳しくは、そのシートクッション2のフレームとの間に介在されている。尚、これらの荷重センサ11には、周知の歪みセンサが用いられている。そして、これらの各荷重センサ11は、それぞれ、略矩形状の着座面2sを有するシートクッション2の四隅に対応する位置に配置されている。
【0027】
図2に示すように、これら各荷重センサ11の出力信号は、乗員検知装置としてのECU20に入力される。そして、本実施形態のECU20は、各荷重センサ11a〜11dの出力信号に基づいて、当該各荷重センサ11a〜11dが設けられた4つの領域、即ちシートクッション2の着座面2sを前後左右に4分割した各領域A1〜A4毎に、そのシート荷重(センサ荷重検出値Wa〜Wd)を検出する構成になっている。
【0028】
即ち、第1の荷重センサ11aによるセンサ荷重検出値Waは、シート1における前方外側(アウター側、
図2中、領域A1)のシート荷重を示し、第2の荷重センサ11bによるセンサ荷重検出値Wbは、前方内側(インナー側、同図中、領域A2)のシート荷重を示している。そして、第3の荷重センサ11cによるセンサ荷重検出値Wcは、シート1における後方外側(同図中、領域A3)のシート荷重を示し、第4の荷重センサ11dによるセンサ荷重検出値Wdは、後方内側(同図中、領域A4)のシート荷重を示すものとなっている。
【0029】
また、本実施形態のECU20は、これら各センサ荷重検出値Wa〜Wdの合計値Wtを演算し、その合計値Wtをシート1全体としてのシート荷重の検出値Wxとする(Wx=Wt=Wa+Wb+Wc+Wd)。そして、本実施形態のECU20は、これらの各センサ荷重検出値Wa〜Wd、及びその合計値Wtであるシート荷重の検出値Wxに基づいて、そのシート1に対する乗員30の着座状態を検知する構成になっている。
【0030】
詳述すると、
図3のフローチャートに示すように、本実施形態のECU20は、センサ荷重検出値Wa〜Wdを取得すると(ステップ101)、続いて、これら各センサ荷重検出値Wa〜Wdの合計値Wtを演算することにより、その合計値Wtをシート1全体としてのシート荷重の検出値Wxとする(ステップ102)。そして、このシート荷重の検出値Wxに基づいて、そのシート1に乗員30が着座した状態にあるか否かを判定する(着座検知判定、ステップ103)。
【0031】
具体的には、
図4のフローチャートに示すように、本実施形態のECU20は、この着座検知判定(
図3参照、ステップ103)において、そのシート荷重の検出値Wxが予め設定された所定の閾値Wth以上であるか否かを判定する(ステップ201)。また、ECU20は、そのシート荷重の検出値Wxが安定しているか否かを判定する(ステップ202)。尚、本実施形態のECU20は、このシート荷重安定状態判定において、そのシート荷重の検出値Wxが、所定時間、所定の変動範囲内にある場合に、当該シート荷重の検出値Wxが安定しているものと判定する。そして、そのシート荷重の検出値Wxが閾値Wth以上であり(W≧Wth、ステップ201:YES)、且つシート荷重の検出値Wxが安定している場合(ステップ202:YES)に、そのシート1に乗員30が着座しているものと判定する(着座検知、ステップ203)。
【0032】
図3のフローチャートに示すように、本実施形態のECU20は、ステップ103の着座検知判定において、シート1に乗員30が着座した状態にあると判定した場合(ステップ104:YES)には、その乗員30の着座状態が何れかの方向に偏向した着座状態にあるか否かを判定する(着座状態偏向判定、ステップ105)。そして、本実施形態の車両においては、この着座状態偏向判定の結果、つまり、そのシート1に対する乗員の着座状態が適正なものであるか否かに基づいて、そのエアバッグの展開制御モードが選択され、及びウォーニングランプやスピーカー(図示略)等を用いた報知出力が実行されるようになっている。
【0033】
詳述すると、本実施形態のECU20は、乗員30が着座するシート1にシート荷重の偏向が生じているか否かを判定する。そして、これにより、そのシート荷重の偏向が生じている方向に、シート1の乗員30が偏向して着座した状態にあることを検知する構成になっている。
【0034】
具体的には、
図5のフローチャートに示すように、ECU20は、シート1の内側荷重(
図2参照、領域A2,A4のシート荷重)を示すセンサ荷重検出値Wb,Wdの合計値を各センサ荷重検出値Wa〜Wdの合計値Wtで除することにより、そのシート1における幅方向荷重比率Rwを演算する(Rw=(Wb+Wd)/Wt、ステップ301)。更に、ECU20は、この幅方向荷重比率Rwが所定の閾値R1以下であるか否かを判定し(ステップ302)、当該幅方向荷重比率Rwが閾値R1以下であると判定した場合(Rw≦R1、ステップ302:YES)には、シート荷重が車幅方向外側に偏向した状態にあると判定する(外側重心、ステップ303)。そして、これにより、そのシート1の乗員30が、車幅方向外側に偏向した着座状態にあることを検知する(外側偏向着座状態、ステップ304)。
【0035】
一方、上記ステップ302において、幅方向荷重比率Rwが所定の閾値R1よりも高いと判定した場合(Rw>R1、ステップ302:NO)、ECU20は、続いて、その幅方向荷重比率Rwが所定の閾値R2以上であるか否かを判定する(ステップ305)。そして、その幅方向荷重比率Rwが閾値R2以上であると判定した場合(Rw≧R2、ステップ305:YES)には、シート荷重が車幅方向内側に偏向した状態にあると判定することで(内側重心、ステップ306)、そのシート1の乗員30が、車幅方向内側に偏向した着座状態にあることを検知する(内側偏向着座状態、ステップ307)。
【0036】
また、
図6のフローチャートに示すように、ECU20は、シート1の前方荷重(
図2参照、領域A1,A2のシート荷重)を示すセンサ荷重検出値Wa,Wbの合計値を各センサ荷重検出値Wa〜Wdの合計値Wtで除することにより、そのシート1における前方荷重比率Rfを演算する(Rf=(Wa+Wb)/Wt、ステップ401)。更に、ECU20は、この前方荷重比率Rfが所定の閾値R3以上であるか否かを判定し(ステップ402)、当該前方荷重比率Rfが閾値R3以上であると判定した場合(Rf≧R3、ステップ402:YES)には、シート荷重が前側に偏向した状態にあると判定する(前側重心、ステップ403)。そして、これにより、そのシート1の乗員30が、前側に偏向した着座状態にあることを検知する(ステップ404)。
【0037】
このように、ECU20は、シート荷重の偏向を示すシート1の荷重比率Rxとして、幅方向荷重比率Rw及び前方荷重比率Rfを演算することにより、その着座状態偏向判定を実行する。また、本実施形態のECU20は、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの推移を監視する。そして、これにより、その偏向した着座状態の類型を推定する構成になっている。
【0038】
即ち、例えば、
図7(a)(b)に示すように、シート1に着座する乗員30の姿勢が車幅方向外側に傾いている場合(
図7(a)参照、外側傾斜姿勢、ドアもたれ)、その重心がシート1の車幅方向外側に位置することで、上記シート荷重偏向判定において、そのシート荷重の外側偏向が検知される(
図5参照、ステップ303)。そして、シート1に対する乗員30の着座位置が車幅方向外側にずれている場合(
図7(b)参照、外側横座り)にも、その重心がシート1の車幅方向外側に位置することで、シート荷重の外側偏向が検知されることになる。
【0039】
しかしながら、このように同じくシート荷重の外側偏向を伴う着座状態であっても、これら「外側傾斜姿勢」と「外側横座り」との間には、その偏向した着座状態に至る乗員30の動作に違いがある。そして、本実施形態のECU20は、この乗員30の動作が荷重比率Rxの推移に及ぼす影響を監視することにより、その偏向した着座状態の類型が、シート荷重の偏向方向における「着座姿勢の傾き」又は「着座位置のズレ」の何れであるかを推定する構成になっている。
【0040】
詳述すると、
図8のフローチャートに示すように、本実施形態のECU20は、着座状態の偏向が検知されたとき(ステップ501:YES)、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化が、略一定の傾きで推移する安定した変化であったか否かを判定する(ステップ502)。そして、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化が、安定した変化であったと判定される場合(ステップ502:YES)には、そのシート1に着座する乗員30の姿勢が、シート荷重の偏向方向に傾いていると推定する(着座姿勢の傾き、ステップ503)。
【0041】
そして、ECU20は、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化が、不安定な変化であったと判定される場合(ステップ502:NO)には、シート1における乗員30の着座位置が、シート荷重の偏向方向にずれていると推定する構成になっている(着座位置のズレ、ステップ504)。
【0042】
例えば、
図9及び
図10に示すように、本実施形態のECU20は、外側偏向着座状態にあることを検知したとき、その着座状態の偏向検知に至る幅方向荷重比率Rwの変化が、略一定の傾きで推移する安定した変化(
図9参照)、又は増減を繰り返しながら推移する不安定な変化(
図10参照)の何れであったかを判定する。そして、その幅方向荷重比率Rwの変化が安定的であった場合には、
図7(a)に示すように、シート1に着座する乗員30の姿勢が、車幅方向外側に傾いていると推定し、不安定であった場合には、
図7(b)に示すように、シート1における乗員30の着座位置が、車幅方向外側にずれていると推定する構成になっている。
【0043】
即ち、多くの場合、シート1に着座する乗員30は、その着座面2s上に位置する左右の臀部及び大腿部を交互に持ち上げる態様で、シート1に着座した状態のまま、その着座位置を変更する。そして、これにより生ずるシート荷重の変動が、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの不安定な変化に現れることになる。
【0044】
しかしながら、シート1に着座する乗員30が姿勢を傾ける際には、必ずしも、このような着座面2sから臀部や大腿部を持ち上げるような動作を必要とせず、この場合、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化は、傾きの変動幅が小さい安定した変化となる。そして、本実施形態のECU20は、このような特徴を利用することによって、その「着座姿勢の傾き」と「着座位置のズレ」とを区別して推定することが可能になっている。
【0045】
さらに詳述すると、本実施形態のECU20は、着座状態の偏向が検知されたとき、当該着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたと判定される場合に、その荷重比率Rxの変化が安定的なものであったと判定する。そして、着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していなかった場合に、その荷重比率Rxの変化が、不安定なものであったと判定する構成になっている。
【0046】
具体的には、本実施形態のECU20は、所定の演算周期で、荷重比率Rxを演算するとともに、前回の演算周期において演算された荷重比率Rxの前回値Rxbを、その記憶領域20aに保持する(
図2参照)。また、ECU20は、これら荷重比率Rxの今回値と前回値Rxbとの変化量ΔRxを演算するとともに(ΔRx=|Rx−Rxb|)、この変化量ΔRxについてもまた、その前回の演算周期において演算された値(前回値ΔRxb)を記憶領域20aに保持する。そして、本実施形態のECU20は、その荷重比率Rxの変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さい(|ΔRx−ΔRxb|<δ)か否かを判定する。
【0047】
即ち、荷重比率Rxの変化における傾きは、その演算周期毎の変化量ΔRxに表される。また、一演算周期における傾きの変動幅は、その変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差(|ΔRx−ΔRxb|)に表される。そして、本実施形態のECU20は、これにより、その荷重比率Rxの変化における傾きの変動幅が上記所定の閾値δに規定される所定範囲内にある状態(ΔRx<ΔRxb±δ)にあるか否か、及びこの状態が継続しているか否かを判定する構成になっている。
【0048】
次に、本実施形態のECU20が実行する荷重比率Rxの変化状態に関する安定性判定の処理手順について説明する。
図11のフローチャートに示すように、本実施形態のECU20は、荷重比率Rxを演算すると(ステップ601)、先ず、荷重比率Rxの前回値Rxbを読み出すことにより(ステップ602)、その演算周期における荷重比率Rxの変化量ΔRxを演算する(ΔRx=|Rx−Rxb|、ステップ603)。次に、ECU20は、荷重比率Rxの変化状態に関する安定性判定の実行中であるか否かを判定し(ステップ604)、実行中でないと判定した場合(ステップ604:NO)には、上記ステップ603において演算された荷重比率Rxの変化量ΔRxが所定の閾値γ以上であるか否かを判定する(ステップ605)。そして、荷重比率Rxの変化量ΔRxが閾値γ以上である場合(ΔRx≧γ、ステップ605:YES)には、その安定性判定の実行中であることを示す判定フラグをセットし、及びカウンタをセットする(N=0、ステップ606)。
【0049】
次に、ECU20は、前回の演算周期において演算された荷重比率Rxについての変化量ΔRxの前回値ΔRxbを読み出して(ステップ607)、その変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さいか否かを判定する(ステップ608)。更に、ECU20は、その変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差が閾値δよりも小さい場合(|ΔRx−ΔRxb|<δ、ステップ608:YES)には、上記ステップ606でセットしたカウンタをインクリメントして(N=N+1、ステップ609)、そのカウンタ値Nが所定の閾値N0以上であるか否かを判定する(ステップ610)。そして、本実施形態のECU20は、このカウンタ値Nが閾値N0以上である場合(N≧N0、ステップ610:YES)に、その荷重比率Rxの変化について、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続する安定した変化状態であると判定する(ステップ611)。
【0050】
次に、ECU20は、荷重比率Rxについて、その上記ステップ601において演算した今回値により前回値Rxbを更新する(Rxb=Rx、ステップ612)。そして、その荷重比率Rxの変化量ΔRxについても同様に、上記ステップ603において演算された今回値により前回値ΔRxbを更新する構成になっている(ΔRxb=ΔRx、ステップ613)。
【0051】
尚、本実施形態のECU20は、上記ステップ610において、カウンタ値Nが所定の閾値N0に満たないと判定した場合(N<N0、ステップ610:NO)、上記ステップ611の処理を実行することなく、これらステップ612及びステップ613の処理を実行する。そして、本実施形態のECU20は、上記ステップ608において、荷重比率Rxの変化量ΔRxについて、その今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δ以上である場合(|ΔRx−ΔRxb|≧δ、ステップ608:NO)、上記ステップ609〜ステップ611の処理を実行しない。
【0052】
即ち、本実施形態におけるカウンタ値Nは、周期的に演算される荷重比率Rxについて、その変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さい(|ΔRx−ΔRxb|<δ)、つまりは、「荷重比率Rxの変化について、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にある」と判定された連続回数を示すものとなっている。そして、その安定性判定の計測記録(カウンタ値N及び計測時間等)を記憶領域20aに登録し(ステップ614)、及び判定中フラグをクリアして(ステップ615)、上記ステップ612及びステップ613の処理を実行する。
【0053】
更に、本実施形態のECU20は、上記ステップ604において、既に荷重比率Rxの変化状態に関する安定性判定の実行中であると判定した場合(ステップ604:YES)には、上記ステップ605及びステップ606の処理を実行しない。そして、上記ステップ605において、その荷重比率Rxの変化量ΔRxが所定の閾値γよりも小さいと場合(ステップ605:NO)には、上記ステップ606〜ステップ611、ステップ614及びステップ615の処理を実行することなく、上記ステップ612及びステップ613の処理を実行する構成になっている。
【0054】
即ち、本実施形態のECU20は、着座状態の偏向が検知されたとき(
図8参照、ステップ501:YES)、その荷重比率Rxの変化について、上記ステップ611において変化の安定性が示されている状態にあるか否かを判定する。つまり、周期的に演算される荷重比率Rxについて、その変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さい(|ΔRx−ΔRxb|<δ、ステップ608:YES)と判定された連続回数を示すカウンタ値Nが所定の閾値N0以上であるか否かを判定する。そして、変化の安定性が示されている場合(N≧N0、ステップ610:YES、及びステップ611)に、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化における傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた」と判定して、その偏向した着座状態の類型を「着座姿勢の傾き」と判定する構成になっている(
図8参照、ステップ503)。
【0055】
また、本実施形態のECU20は、上記ステップ611において変化の安定性が示されていない場合(ステップ605:NO、ステップ608:NO、又はステップ610:NO)には、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、その傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していなかった」と判定する。そして、その偏向した着座状態の類型を「着座位置のズレ」と判定する構成になっている(
図8参照、ステップ504)。
【0056】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)荷重検出部及び荷重比率演算部としてのECU20は、シートクッション2の四隅に対応する位置に設けられた各荷重センサ11による各センサ荷重検出値Wa〜Wd、及びその合計値Wtに基づいて、シート荷重の偏向状態を示す荷重比率Rxを演算する。また、着座検知部及び着座状態偏向検知部としてのECU20は、そのシート荷重の偏向が生じている方向に、シート1の乗員30が偏向して着座した状態にあることを検知する。そして、荷重比率監視部及び傾斜姿勢推定部としてのECU20は、着座状態の偏向が検知されたとき、当該着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたと判定される場合に、その乗員30の着座姿勢が、シート荷重の偏向方向に傾いていると推定する。
【0057】
即ち、シート1に着座する乗員30が姿勢を傾ける動作は、その着座面2sから臀部や大腿部を離すことなく行うことができる。そして、この場合、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化は、傾きの変動幅が小さい安定した変化となる。従って、上記構成によれば、精度よく、その偏向した着座状態の類型が、着座姿勢の傾きであると推定することができる。
【0058】
(2)位置ずれ推定部としてのECU20は、着座状態の偏向が検知されたとき、当該着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していなかったと判定される場合に、その乗員30の着座位置が、シート荷重の偏向方向にずれているものと推定する。
【0059】
即ち、多くの場合、シート1に着座する乗員30は、その着座面2s上に位置する左右の臀部及び大腿部を交互に持ち上げる態様で、シート1に着座した状態のまま、その着座位置を変更する。そして、これにより生ずるシート荷重の変動が、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの不安定な変化に現れることになる。従って、上記構成によれば、シート1に対する着座位置のズレを、その着座姿勢の傾きと区別して検知することができる。
【0060】
(3)変化量演算部としてのECU20は、荷重比率Rxの演算周期毎に、当該荷重比率Rxの変化量ΔRxを演算する。また、安定性判定部としてのECU20は、その変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さい場合(|ΔRx−ΔRxb|<δ)に、荷重比率Rxの変化における傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定する。更に、ECU20は、その傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定された連続回数を計測する(カウンタ値N)。そして、ECU20は、着座状態の偏向が検知されたとき、そのカウンタ値Nが所定の閾値N0以上である場合(N≧N0)に、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、その傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた」と判定する。これにより、精度よく、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化が、傾きの変動幅が小さい安定した変化であったと判定することができる。
【0061】
[第2の実施形態]
以下、車両用のシートに実装された乗員検知装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0062】
図12(a)〜(c)に示すように、本実施形態のECU20は、荷重比率Rx(Rw,Rf)の変化状態に関する安定性判定について、予め、その開始閾値Rn´を設定する。また、ECU20は、シート1の荷重比率Rxが、この荷重比率変化安定性判定の開始閾値Rn´に到達した後、着座状態偏向判定(
図5及び
図6参照)の閾値Rnに到達するまでの間、「荷重比率Rxの変化量ΔRxについての今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さい状態にある」と判定された回数を計測する(カウンタ値Z)。そして、ECU20は、このカウンタ値Zが所定の閾値Z0以上である場合(Z≧Z0)に、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、その傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた」と判定する。
【0063】
詳述すると、荷重比率変化安定性判定の開始閾値Rn´(R1´,R2´,R3´)には、乗員30が傾斜姿勢に移行する動作の途中にあると推定し得る荷重比率Rxの値が設定される。具体的には、
図12(a)に示すように、外側傾斜姿勢の推定において、その荷重比率変化安定性判定の開始閾値R1´は、上記着座状態偏向判定における所定の閾値R1(
図5参照、ステップ302)よりも大きな値に設定される(R1<R1´<0.5)。また、
図12(b)に示すように、内側傾斜姿勢の推定において、その荷重比率変化安定性判定の開始閾値R2´は、上記着座状態偏向判定における所定の閾値R2(
図5参照、ステップ305)よりも小さな値に設定される(R2>R2´>0.5)。更に、
図12(c)に示すように、前傾姿勢の推定において、その荷重比率変化安定性判定の開始閾値R3´は、上記着座状態偏向判定における所定の閾値R3(
図6参照、ステップ402)よりも小さな値に設定される(R3>R3´>0.5)。そして、本実施形態のECU20は、シート1の荷重比率Rx(Rw,Rf)が、これらの開始閾値Rn´(R1´,R3´,R3´)に到達した場合(Rw≦R1´,Rw≧R2´,Rf≧R3´)に、荷重比率変化安定性判定を開始し、及びその判定結果に基づいて、シート1に着座する乗員30についての傾斜姿勢推定を実行する構成になっている。
【0064】
詳述すると、
図13及び
図14のフローチャートに示すように、本実施形態のECU20は、シート1の荷重比率Rxが、その荷重比率変化安定性判定の開始閾値Rn´(R1´,R2´,R3´)に到達したと判定した場合(ステップ701:YES)には、先ず、タイマ及びカウンタをセットする(T=0,Z=0、ステップ702)。
【0065】
次に、ECU20は、上記実施形態における荷重比率変化安定性判定(
図11参照)と同様、荷重比率Rxを演算(ステップ703)し、荷重比率Rxの前回値Rxbを読み出す(ステップ704)。また、ECU20は、演算周期における荷重比率Rxの変化量ΔRxを演算し(ΔRx=|Rx−Rxb|、ステップ705)、及び前回の演算周期において演算された荷重比率Rxについての変化量ΔRxの前回値ΔRxbを読み出す(ステップ706)。そして、ECU20は、その荷重比率Rxの変化における傾きの変動幅を示す荷重比率Rxの変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差(|ΔRx−ΔRxb|)が所定の閾値δよりも小さいか否かを判定する(ステップ707)。
【0066】
次に、ECU20は、このステップ707の判定条件を満たす場合(|ΔRx−ΔRxb|<δ、ステップ707:YES)、即ち「荷重比率の変化における傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にある」と判定した場合、上記ステップ702でセットしたカウンタをインクリメントする(Z=Z+1、ステップ708)。そして、このステップ707の判定条件を満たさない場合(|ΔRx−ΔRxb|≧δ、ステップ707:NO)には、ステップ708の処理を実行しない。
【0067】
次に、ECU20は、シート1の荷重比率Rx(Rw,Rf)が、着座状態偏向判定の閾値Rn(R1,R2,R3)に到達した否かを判定する(ステップ709)。また、ECU20は、その荷重比率Rxが着座状態偏向判定の閾値Rnに到達していない場合(ステップ709:NO)には、そのシート1の荷重比率Rxが荷重比率変化安定性判定の開始閾値Rn´に到達してから、所定時間T0が経過したか否かを判定する(ステップ710)。更に、この所定時間T0が経過していない場合(ステップ710:NO)、ECU20は、荷重比率Rxについて、その今回値により前回値Rxbを更新し(Rxb=Rx、ステップ711)、及び荷重比率Rxの変化量ΔRxについて、その今回値により前回値ΔRxbを更新する(ΔRxb=ΔRx、ステップ712)。そして、ECU20は、上記ステップ709において、荷重比率Rxが着座状態偏向判定の閾値Rnに到達したと判定される(ステップ709:YES)、又は上記ステップ710において、所定時間T0を経過したと判定されるまで(ステップ710:YES)、上記ステップ703〜ステップ712の処理を繰り返し実行する。
【0068】
次に、ECU20は、上記ステップ709において、荷重比率Rxが着座状態偏向判定の閾値Rnに到達したと判定した場合(ステップ709:YES)、上記ステップ702においてセットしたカウンタ値Zが所定の閾値Z0以上となっているか否かを判定する(ステップ713)。そして、そのカウンタ値Zが所定の閾値Z0以上である場合(Z≧Z0、ステップ713:YES)には、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、その傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた」と判定して、その乗員30の姿勢が、シート荷重の偏向方向に傾いていると推定する(着座姿勢の傾き、ステップ714)。
【0069】
また、ECU20は、上記ステップ713において、カウンタ値Zが所定の閾値Z0に満たない場合(Z<Z0、ステップ713:NO)には、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、その傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していなかった」と判定する。そして、シート1における乗員30の着座位置が、車幅方向外側にずれていると推定する(着座位置のズレ、ステップ714)。
【0070】
即ち、本実施形態のECU20は、「荷重比率Rxの変化における傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたか否か」の判断について、必ずしも、その連続性を重視しない。つまり、本実施形態におけるカウンタ値Zは、荷重比率Rxが着座状態偏向判定の閾値Rnに到達するまでの間、その「傾きの変動幅」を示す荷重比率Rxの変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差(|ΔRx−ΔRxb|)が「所定範囲」を規定する所定の閾値δよりも小さい状態にあると判定された回数を示している。そして、本実施形態のECU20は、この「傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定された回数」が多い場合には、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率の変化が傾きの変動幅が小さい安定した変化であったと判定する。
【0071】
つまり、本実施形態のECU20は、その「継続の態様」が「断続的なもの」であることを許容する。そして、これにより、外乱の影響を受けやすい状況においても、その偏向した着座状態の類型が、着座姿勢の傾きであると推定することが可能になっている。
【0072】
また、本実施形態のECU20は、上記ステップ710において、シート1の荷重比率Rxが荷重比率変化安定性判定の開始閾値Rn´に到達してから所定時間T0が経過したと判定された場合(T≧T0、ステップ710:YES)、上記ステップ713〜ステップ715の処理を実行しない(タイムオーバー)。即ち、乗員30が傾斜姿勢に移行する所用時間は、個体差を考慮しても略一定の時間範囲(所定時間T0)内に収まる。そして、本実施形態のECU20は、これにより、精度よく、着座状態の偏向を検知し、及びその偏向した着座状態の類型を推定することが可能になっている。
【0073】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、シート1の下方には、そのシートクッション2の四隅に対応する位置に、それぞれ、荷重センサ11(11a〜11d)が設けられることとした。しかし、これに限らず、シート荷重の検出及びその偏向検知に用いる荷重センサ11の数及びその配置は、任意に変更してもよい。即ち、荷重センサ11の数は、2つでも3つでもよく、5つ以上であってもよい。例えば、シート1の前後方向に離間した2つの荷重センサ11を含む構成であれば、その前後方向におけるシート荷重の偏向を検知することができる。そして、車幅方向に離間した2つの荷重センサ11を含む構成であれば、その車幅方向(内側及び外側)におけるシート荷重の偏向を検知することができる。
【0074】
・また、
図15に示すように、シートクッション2の着座面2sに感圧部を形成する着座センサ40を組み合わせる構成としてもよい。具体的には、この
図13に例示するシート1Bにおいて、着座センサ40には、複数の感圧点を有するシート状の感圧センサ41が用いられている。そして、この感圧センサ41をシート表皮2aの裏側に配置することにより、その着座面2sの全域に感圧部を形成する構成になっている。
【0075】
即ち、着座センサ40を用いて着座面2sの圧力分布を検出する。そして、この圧力分布に基づいて、そのシート荷重の偏向を検知する構成としてもよい。このような構成を採用することで、荷重センサ11の数を一つにすることができる。尚、この場合、荷重センサ11は、着座面2sの中央に対応する位置に設けるとよい。また、その着座センサ40によりシート1Bに対する乗員30の着座を検知する構成であってもよい。そして、着座センサ40を構成する感圧センサ41が荷重値を検出可能なものである場合、即ち、この感圧センサ41が荷重センサとしての機能を有するものである場合には、上記実施形態の荷重センサ11のようなシート1と当該シート1の支持部材との間に介在される歪みセンサを用いない構成としてもよい。
【0076】
・上記実施形態では、シート1の車幅方向両側及び前側の三方向について、そのシート1の荷重比率Rx(Rw,Rf)に基づいた着座状態の偏向判定を実行する。そして、更に、これら三方向について、その乗員30の着座姿勢が、シート荷重の偏向方向に傾いているか否かを推定することとした。しかし、これに限らず、着座姿勢の傾斜推定を行う方向については、任意に設定してもよい。例えば、シート荷重が車幅方向外側に偏向している場合についてのみ、その着座姿勢が車室の壁部を構成するサイドドア等にもたれ掛かった外側傾斜姿勢(所謂ドアもたれ姿勢)にあることを推定する構成であってもよい。また、シート荷重が前側に偏向している場合についてのみ、その着座姿勢の前傾を推定する構成であってもよい。更に、シート荷重が車幅方向内側に偏向している場合についてのみ、その着座姿勢がコンソールボックス等に肘をついた内側傾斜姿勢(所謂肘付き姿勢)にあることを推定する構成であってもよい。そして、これら三方向のうちの何れか2方向について、その着座姿勢の傾斜推定を行う構成であってもよい。
【0077】
・上記各実施形態では、荷重比率Rxの演算周期毎に、当該荷重比率Rxの変化量ΔRxを演算し、その変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さい場合(|ΔRx−ΔRxb|<δ)に、荷重比率Rxの変化における傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定することとした。しかし、これに限らず、荷重比率Rxの変化における傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあるか否かの判定は、必ずしも、荷重比率Rxの演算周期毎に行わなくともよく、例えば、その演算周期よりも長い所定周期で行う構成であってもよい。
【0078】
・上記第1の実施形態では、変化量ΔRxの今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さいと判定された連続回数を示すカウンタ値Nが閾値N0以上である場合(
図11参照、N≧N0、ステップ610:YES)に、その荷重比率Rxの変化について傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続する安定した変化状態であると判定する。そして、着座状態の偏向が検知されたとき(
図8参照、ステップ501:YES)、その実行中の安定性判定において変化の安定性が示されている場合(
図11参照、ステップ611)に、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた」と判定することとした。
【0079】
しかし、これに限らず、例えば、着座状態の偏向が検知されたとき、実行中の安定性判定において上記連続回数を示すカウンタ値Nが所定の閾値N0に満たない場合(
図11参照、N<N0、ステップ610:NO)には、ECU20の記憶領域20aに保持(登録)された前回までの安定性判定の計測記録(同図中、ステップ614)を参照する。そして、その記憶領域20aに保持された過去の計測記録に基づいて、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた」か否かを判定する構成としてもよい。
【0080】
例えば、乗員30が傾斜姿勢に移行する所用時間は、個体差を考慮しても略一定の時間範囲(所定時間Tb)内に収まる。この点を踏まえ、シート1の荷重比率Rxに基づき着座状態の偏向が検知されたとき、その時点から、所定時間Tb、過去に遡って「傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた区間」があるか否かを判定する。そして、このような区間がある場合にも、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、その傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた」と判定して、そのシート1に着座する乗員30の姿勢が、シート荷重の偏向方向に傾いていると推定する構成としてもよい。
【0081】
具体的には、
図16のフローチャートに示すように、ECU20は、シート1の荷重比率Rxに基づき着座状態の偏向が検知された場合(ステップ801:YES)、上記実施形態と同様、その荷重比率Rxの変化状態に関する安定性判定(
図11参照、ステップ611)を参照する(ステップ802)。そして、この時点において「傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続している(
図11参照、連続回数:N≧N0)」と判定した場合(ステップ803:YES)には、乗員30の着座姿勢が傾いていると推定する(ステップ804)。
【0082】
一方、シート1の荷重比率Rxに基づき着座状態の偏向が検知された時点において、「傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していない(
図11参照、連続回数:N<N0)」と判定した場合(ステップ803:NO)、ECU20は、その時点から所定時間Tb、遡って、過去の計測記録Nbxを読み出す(ステップ804)。尚、
図14中、「Nb1,Nb2,Nb3,…」は、それぞれ、1回前、2回前、3回前の計測記録として記憶領域20aに登録された上記連続回数を示すカウンタ値Nである。次に、ECU20は、これら過去の計測記録Nbxについて、それぞれ、上記所定の閾値N0以上であるか否かを判定する(ステップ805)。そして、これら過去の計測記録Nbxの何れかに、閾値N0以上のものがある場合(N≧N0、ステップ806:YES)、つまり、その荷重比率Rxの変化について「傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた区間」があったと判定される場合にも、乗員30の着座姿勢が傾いていると推定する構成としてもよい(ステップ804)。
【0083】
上記構成を採用することで、着座状態の偏向が検知されたとき、荷重比率Rxの変化が一時的に不安定な状態であった場合でも、それ以前に傾きの変動幅が小さい安定した区間があった場合には、その着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化が傾きの変動幅が小さい安定した変化であったとみなすことができる。そして、この判定結果に基づいて、その偏向した着座状態の類型が、着座姿勢の傾きであると推定することができる。
【0084】
・更に、
図17のフローチャートに示すように、ECU20は、シート1の荷重比率Rxに基づき着座状態の偏向が検知された場合(ステップ901)、先ず実行中の安定性判定(
図11参照)を参照し(ステップ902)、そのカウンタ値Nを取得する(ステップ903)。次に、その着座状態の偏向が検知された時点から所定時間Tb、遡って、過去の計測記録Nbxを読み出す(ステップ904)。更に、これら過去の計測記録Nbxに示されるカウンタ値と現在のカウンタ値Nとの合計値(カウンタ合計値Nt)を演算する(Nt=N+Nb1+Nb2+Nb3+…、ステップ905)。そして、このカウンタ合計値Ntが所定の閾値Nt0以上である場合(ステップ906:YES)に、そのシート1に着座する乗員30の姿勢が、シート荷重の偏向方向に傾いていると推定する構成としてもよい(ステップ907)。
【0085】
即ち、シート1の荷重比率Rxに基づき着座状態の偏向が検知された時点から所定時間Tb、過去に遡って、その「荷重比率Rxの変化量ΔRxについての今回値と前回値ΔRxbとの差が所定の閾値δよりも小さい状態にある」と判定された回数の総和を演算する。そして、その総和を示すカウンタ合計値Ntが所定の閾値Nt0以上である場合(ステップ906:YES)に、「着座状態の偏向検知に至る荷重比率Rxの変化において、その傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していた」と判定する構成であってもよい。このような構成を採用することで、上記第2の実施形態と同様、外乱の影響を受けやすい状況においても、その偏向した着座状態の類型が、着座姿勢の傾きであると推定することができる。
【0086】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を記載する。
(イ)前記シート荷重は、前記シートと該シートの支持部材との間に介在された荷重センサにより検出されるものであること、を特徴とする。
【0087】
(ロ)前記シート荷重は、前記シートの着座面を構成するシート表皮の裏側に設けられた荷重センサにより検出されるものであること、を特徴とする。
(ハ)前記着座状態の偏向が検知されたとき、所定時間、過去に遡って、前記傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態にあると判定された回数の合計値を演算する工程と、前記合計値が所定の閾値を超える場合に、前記着座状態の偏向検知に至る前記荷重比率の変化において前記傾きの変動幅が所定範囲内に収まる状態が継続していたと判定する工程を備えること、を特徴とする乗員検知方法。