特許第6578905号(P6578905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578905
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】脱硫装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20190912BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B01D53/50 245
   B01D53/50ZAB
   B01D53/18 120
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-229508(P2015-229508)
(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-94282(P2017-94282A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 俊之
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/196575(WO,A1)
【文献】 特開平10−118449(JP,A)
【文献】 国際公開第94/23826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/50
B01D 53/18
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下り勾配を有する上流の傾斜流路と上り勾配を有する下流の傾斜流路がV字形に接続されて内部を排煙が流動するV字流路と、前記V字流路の最下部に形成したスラリー貯留槽と、少なくとも前記上流の傾斜流路に設けられ、軸受装置により前記傾斜流路の軸心を中心に回転可能な反応層と、前記スラリー貯留槽からの吸収液スラリーを上流から前記反応層に向けて噴射するノズル装置とを有する脱硫装置であって、
前記反応層は、外筒と、該外筒の内部に排煙が流通するための複数の反応通路を形成する反応通路壁を有し、
前記反応層には、前記傾斜流路を流動する排煙により回転力を生じるよう前記反応層に設けた回転力発生装置と、前記反応層を前記傾斜流路に対して回転駆動する回転駆動装置の少なくとも1つを備えた
ことを特徴とする脱硫装置。
【請求項2】
前記回転力発生装置は、前記反応層の上流側に設けた回転用羽根と、前記反応層の内部に螺旋通路を形成する螺旋通路壁の少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1に記載の脱硫装置。
【請求項3】
前記ノズル装置は、前記反応層の回転を促進させる方向へ傾斜して吸収液スラリーを噴射する傾斜ノズルを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の脱硫装置。
【請求項4】
前記軸受装置には、前記傾斜流路と前記反応層との間のシールを行うシール装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱硫装置。
【請求項5】
前記回転駆動装置は、前記反応層の外筒の外周面に備えた環状歯車と、該環状歯車に噛合したピニオンを駆動するモータを有することを特徴とする請求項1に記載の脱硫装置。
【請求項6】
前記回転駆動装置は、前記反応層の軸心に固定されて前記傾斜流路の外部に延長した回転軸と該回転軸を駆動するモータを有することを特徴とする請求項1に記載の脱硫装置。
【請求項7】
前記上流の傾斜流路と前記下流の傾斜流路の夫々に前記反応層を設け、一方の反応層には該反応層の軸心に固定されて前記傾斜流路の外部に延長した回転軸と該回転軸を駆動するモータを備え、前記一方の反応層と他方の反応層の間には伝達軸と歯車を有する動力伝達機構を備え、前記一方の反応層と前記他方の反応層を前記1つのモータで駆動することを特徴とする請求項1に記載の脱硫装置。
【請求項8】
前記軸受装置を含む前記反応層は、フランジにより前記傾斜流路に対して着脱が可能な反応層ユニットを形成していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項9】
前記上流の傾斜流路には前記反応層と前記ノズル装置を配置し、前記下流の傾斜流路には、前記外筒の外部に振動子を備えた非回転の振動反応層を伸縮継手を介して配置し、前記振動反応層の上流に前記スラリー貯留槽からの吸収液スラリーを噴射する別のノズル装置を配置したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や工場等のボイラから排出される排煙に含まれる硫黄酸化物を湿式で脱硫する脱硫装置に関し、消費エネルギを小さく抑えて略100%の脱硫率を達成できる脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等で化石燃料を燃焼するボイラからは硫黄酸化物を含んだ排煙が排出される。硫黄酸化物のうち特に二酸化硫黄や三酸化硫黄は、大気汚染・酸性雨等の環境問題の主原因の一つとなっている。このため、火力発電所等のボイラには、排煙中の硫黄酸化物を除去するための脱硫装置が設置される。
【0003】
脱硫装置は、石灰石−石膏法による湿式法が主流を占めており、中でもスプレー方式が多く採用されている。このスプレー式脱硫装置は、縦型の吸収塔の内部に排煙を下方から上方へ向けて流動させつつ、上部から吸収液(吸収液スラリー)をスプレーすることにより、気液接触させて排煙中の硫黄酸化物を吸収液により脱硫している。脱硫装置は、硫黄酸化物が吸収液と気液接触している時間(以下、反応時間という)が長ければ長いほど、脱硫能力(脱硫率)は高くなる。このため、反応時間を長くとるために吸収塔の高さを高く設計することが行われているが、吸収塔を高い構成にすると、吸収塔の建設コストが増加するという問題が発生する。
【0004】
そこで、吸収塔の高さを抑えつつ反応時間を長くとることができる簡易脱硫装置が既に提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の簡易脱硫装置は、ボイラと煙突を繋ぐ煙道の下方に、煙道中を流れる排煙の一部を煙道から導き出して再び煙道へ戻すV字形の反応器を有している。この反応器の上流側の内部には、排煙の流れと同じ向きに吸収液をスプレーするスプレー手段を設け、前記反応器の最下部には吸収液を捕集する液溜めを設けている。
【0005】
又、装置の高さを低くできる脱硫装置としては、特許文献2に示す排煙脱硫装置がある。特許文献2の排煙脱硫装置は、水平な煙道に、該煙道の軸心を中心に回転する籠型回転円筒体を設け、該籠型回転円筒体の内部に、短い管状物等からなる気液接触用充填物を充填することにより回転充填層を構成している。回転充填層の下方にはスラリー貯留槽を設けられ、該スラリー貯留槽の吸収液スラリーを前記回転充填層の上部から散布するスラリー散布手段を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−118449号公報
【特許文献2】特開2013−237017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示す簡易脱硫装置においては、V字形の反応器の内部に排煙と同じ向きに吸収液をスプレーすると、吸収液は重力の影響を受けて下方へ落下してしまう。従って、反応器内を吸収液が均一な濃度に保持して進むことができないために、脱硫能力(脱硫率)を有意に高めることができないという課題を有していた。
【0008】
又、特許文献2に示す排煙脱硫装置においては、排煙が回転充填層の上部をパスして流れることがないように、籠型回転円筒体の内部には100%に近い充填率で気液接触用充填物を充填する必要がある。従って、特許文献2の回転充填層の重量は非常に大きなものとなってしまい、このために、回転充填層の回転を駆動するモータの消費エネルギが増大するという問題がある。更に、高い充填率で気液接触用充填物を充填した反応充填層は、排煙の流動抵抗が非常に大きく圧力損失が増加するために、下流で排煙を誘引する誘引ファンの消費エネルギが増大するという問題がある。
【0009】
本発明の課題は、消費エネルギを小さく抑えて略100%の脱硫率を達成できる脱硫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下り勾配を有する上流の傾斜流路と上り勾配を有する下流の傾斜流路がV字形に接続されて内部を排煙が流動するV字流路と、前記V字流路の最下部に形成したスラリー貯留槽と、少なくとも前記上流の傾斜流路に設けられ、軸受装置により前記傾斜流路の軸心を中心に回転可能な反応層と、前記スラリー貯留槽からの吸収液スラリーを上流から前記反応層に向けて噴射するノズル装置とを有する脱硫装置であって、
前記反応層は、外筒と、該外筒の内部に排煙が流通するための複数の反応通路を形成する反応通路壁を有し、
前記反応層には、前記傾斜流路を流動する排煙により回転力を生じるように前記反応層に設けた回転力発生装置と、前記反応層を前記傾斜流路に対して回転駆動する回転駆動装置の少なくとも1つを備えた
ことを特徴とする脱硫装置。
【0011】
上記脱硫装置において、前記回転力発生装置は、前記反応層の上流側に設けた回転用羽根と、前記反応層の内部に螺旋通路を形成する螺旋通路壁の少なくとも1つからなる。
【0012】
又、上記脱硫装置において、前記ノズル装置は、前記反応層の回転を促進させる方向へ傾斜して吸収液スラリーを噴射する傾斜ノズルを有することができる。
【0013】
又、上記脱硫装置において、前記軸受装置には、前記傾斜流路と前記反応層との間のシールを行うシール装置を備えることができる。
【0014】
又、上記脱硫装置において、前記回転駆動装置は、前記反応層の外筒の外周面に備えた環状歯車と、該環状歯車に噛合したピニオンを駆動するモータを有することができる。
【0015】
又、上記脱硫装置において、前記回転駆動装置は、前記反応層の軸心に固定されて前記傾斜流路の外部に延長した回転軸と該回転軸を駆動するモータを有することができる。
【0016】
又、上記脱硫装置において、前記上流の傾斜流路と前記下流の傾斜流路の夫々に前記反応層を設け、一方の反応層には該反応層の軸心に固定されて前記傾斜流路の外部に延長した回転軸と該回転軸を駆動するモータを備え、前記一方の反応層と他方の反応層の間には伝達軸と歯車を有する動力伝達機構を備え、前記一方の反応層と前記他方の反応層を前記1つのモータで駆動することができる。
【0017】
又、上記脱硫装置において、前記軸受装置を含む前記反応層は、フランジにより前記傾斜流路に対して着脱が可能な反応層ユニットを形成することができる。
【0018】
又、上記脱硫装置において、前記上流の傾斜流路には前記反応層と前記ノズル装置を配置し、前記下流の傾斜流路には、前記外筒の外部に振動子を備えた非回転の振動反応層を伸縮継手を介して配置し、前記振動反応層の上流に前記スラリー貯留槽からの吸収液スラリーを噴射する別のノズル装置を配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の脱硫装置によれば、消費エネルギを小さく抑えて略100%の脱硫率を達成できるという優れた効果を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る脱硫装置の第一の実施例を示す側断面図である。
図2】本発明に備える反応層の形状を示すもので、(a)は反応層の側面図、(b)は反応層における反応流路の形状を示す平面図、(c)は反応層における反応流路の他の形状を示す平面図である。
図3】本発明に備える軸受装置の一例を示す側断面図である。
図4】本発明に備える軸受装置の他の例を示すもので、(a)は側断面図、(b)は(a)をIV方向から見た正面図である。
図5図4に類似した軸受装置の他の例を示す正面図である。
図6】反応層に備える回転力発生装置の例を示すもので、(a)は回転用羽根による回転力発生装置の斜視図、(b)は反応層の内部に螺旋通路を形成する螺旋通路壁による回転力発生装置の斜視図である。
図7】本発明に係る脱硫装置の第二の実施例を示す側断面図である。
図8】本発明に係る脱硫装置の第三の実施例を示す側断面図である。
図9】本発明に係る脱硫装置の第四の実施例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る脱硫装置の第一の実施例を、図1を参照しつつ説明する。図1は、脱硫装置の側断面図である。
【0022】
燃焼装置の一例であるボイラBからの排煙Gを煙突に導く煙道1の途中には、下り勾配を有する上流の傾斜流路2と、上り勾配を有する下流の傾斜流路3がV字形に接続され、内部を排煙Gが流動するV字流路4を設ける。V字流路4の最下部にはスラリー貯留槽5を設ける。前記上流の傾斜流路2と下流の傾斜流路3の各上端を繋ぐ前記煙道1には、排煙GをV字流路4に流すためのダンパ6を設けている。前記V字流路4よりも下流の煙道1には排煙Gを誘引して煙突に導くための誘引ファン7が設けられている。図1中、8は下流の傾斜流路3の下流に設けたミストエリミネータであり、該ミストエリミネータ8で分離したミストは、前記スラリー貯留槽5に戻すようにしている。
【0023】
前記V字流路4の少なくとも上流の傾斜流路2には、後述するシール装置9と共に備えた軸受装置10を介して前記傾斜流路2の軸心Oを中心に回転できる反応層11を設ける。図1は、上流の傾斜流路2に軸受装置10を設けた場合を示している。
【0024】
反応層11は、図2に示すように、外筒12と、該外筒12の内部に排煙が流通するための一端から他端に亘って延びる複数の反応通路13を形成する反応通路壁14とから構成される。図2(b)は反応通路13の断面がハニカム(六角)形の場合を示しており、図2(c)は反応通路13の断面が四角形の場合を示しているが、反応通路13の形状は図示例以外の種々の形状とすることができる。
【0025】
図2に示した反応通路壁14により反応通路13を形成した反応層11は、排煙Gが反応通路13を通り抜けることから排煙Gの流動抵抗は小さく、しかも反応層11は構造が簡単であるため軽量にできる。反応通路壁14に大きな強度は要求されないことから、反応層11全体を合成樹脂やFRP等を用いて軽量に形成できる。又、形状保持のための強度が必要な外筒12は鋼等の金属やFRPを用いて製造し、反応通路壁14は合成樹脂により製造することもできる。
【0026】
図1に示すように、前記反応層11の上流には、反応層11に向けて吸収液スラリー15を噴射するノズル装置18を設ける。前記ノズル装置18には、スラリー貯留槽5の吸収液スラリー15が循環ポンプ16を備えた循環流路17を介して供給される。
【0027】
前記スラリー貯留槽5には、吸収液タンク19からの吸収液20がポンプ21により供給される。前記ポンプ21は、前記スラリー貯留槽5に設けたレベル計22が検出する信号によって制御され、スラリー貯留槽5には常に一定の吸収液スラリー15が貯留されるようになっている。
【0028】
前記反応層11の上流と下流における排煙Gの圧力差を検出する差圧計23を設けると共に、前記反応層11の下流の硫黄濃度を検出する硫黄濃度計24を設け、差圧計23と前記硫黄濃度計24からの検出信号は制御器25に入力している。制御器25は、差圧計23からの差圧が増加するとノズル装置18から噴射する吸収液スラリー15の噴射量を増加するように、又、前記硫黄濃度計24からの硫黄濃度が増加するとそれに応じてノズル装置18から噴射する吸収液スラリー15の噴射量を増加するように、前記循環ポンプ16を制御する。
【0029】
前記循環ポンプ16の下流の循環流路17には、調節弁26を備えたスラリー取出管27が接続され、前記循環ポンプ16の出口の循環流路17には石膏濃度計28を設けている。石膏濃度計28の石膏濃度が所定値を超えると、調節弁26を調節して吸収液スラリー15を図示しない石膏製造装置に排出する。これにより、スラリー貯留槽5の吸収液スラリー15の石膏濃度は常に一定に保持される。図1中、29は前記スラリー貯留槽5の吸収液スラリー15を均一な状態に撹拌するための撹拌装置であり、撹拌装置29の近傍にはスラリー貯留槽5には吸収液スラリー15の酸化を行うための空気30が供給されている。
【0030】
図3は、軸受装置10の一例を示す側断面図である。図3では、前記反応層11を構成する外筒12の端部の外側を覆うように、前記傾斜流路2には拡径部31が形成されている。軸受装置10のコロ32を支持する内輪33は前記外筒12の外面に固定され、外輪34は前記拡径部31の内面に固定されている。
【0031】
更に、前記軸受装置10を構成する前記外輪34の長手方向(左右方向)の両端部には、内周端が前記内輪33に微小な隙間を有して接近したシール板35、35の外周端が固定され、このシール板35、35によりシール装置9が構成されている。従って、図3は軸受装置10にシール装置9を備えたシール付き自動調心コロ軸受の場合を示している。
【0032】
図4は、軸受装置10の他の例を示す側断面図である。図4(a)、(b)では、前記反応層11の外筒12の外面と前記傾斜流路2に形成した拡径部31との内面に、磁力が互いに反発する向きの複数の永久磁石36、36'を固定することで、磁気軸受による軸受装置10を設けた場合を示している。永久磁石36、36'の磁力の反発を利用した磁気軸受による軸受装置10は、外筒12の外面と拡径部31の内面の全周に永久磁石36、36'を設けてもよいが、図4(b)に示すように、拡径部31の内面に設ける永久磁石36'は、軸心Oよりも下方の半円位置にのみ設置しても、前記反応層11を回転可能に支持できる。
【0033】
更に、図4(a)に示すように、永久磁石36、36'備えた磁気軸受による軸受装置10の近傍位置における前記外筒12と前記傾斜流路2との間には、交互に隣接して突出する複数のプレート37を設置することにより、ラビリンスシールと称されるシール装置9を設けることができる。
【0034】
一方、磁気軸受による軸受装置10としては、図5に示すように、ヨーク38にコイル39を巻いた電磁石40を、前記傾斜流路2に形成した拡径部31の内面に沿って所定の間隔で配置した構成とすることができる。電磁石40による軸受装置10の場合は、電磁石40の引っ張り力によって前記外筒12が前記拡径部31と同心に支持されるように作動される。図5の電磁石40による軸受装置10の場合も、図4(a)に示したようなシール装置9を備える。
【0035】
図1の上流の傾斜流路2に設置した反応層11には、傾斜流路2を流動する排煙Gによって回転力を生じる図6(a)、(b)に示すような回転力発生装置41を設ける。
【0036】
図6(a)は、前記反応層11の上流側に、流動する排煙Gによって回転力を生じるように湾曲した複数の回転用羽根42からなる回転力発生装置41を一体に設けた場合を示す。
【0037】
又、図6(b)は、前記反応層11の内部に、流動する排煙Gによって回転力を生じるように軸心Oを中心に捻じれた螺旋通路43aを形成する螺旋通路壁43を設けた回転力発生装置41の場合を示す。図6(b)の回転力発生装置41は前記反応層11の外周部分のみに螺旋通路壁43を設けた場合を示しているが、反応層11の内部全体に螺旋通路壁43を形成してもよい。
【0038】
図6(a)に示す反応層11の上流側に一体に備えた回転用羽根42による回転力発生装置41と、図6(b)に示す反応層11の内部に螺旋通路43aを形成する螺旋通路壁43を設けた回転力発生装置41は、その一方を反応層11に設けるか、又は、その両方を反応層11に設けることができる。
【0039】
又、図6に示すように、反応層11の上流に備えるノズル装置18には、反応層11の回転を促進する方向に傾斜して吸収液スラリー15を噴射する傾斜ノズル44を設けることができる。図6では1つのリング管45に複数の傾斜ノズル44を設けた場合を示したが、直径が異なる複数のリング管45に傾斜ノズル44を設けてもよい。又、図示しないが、放射状に配置した管に前記傾斜ノズル44を設けてもよい。
【0040】
図1に示すように、前記シール装置9及び前記軸受装置10を含む前記反応層11は、フランジ46を介して前記傾斜流路2に着脱可能に取り付けられる反応層ユニットUを構成している。
【0041】
図1に示す第一の実施例によれば以下のように作用する。
【0042】
図3図5に示す軸受装置10を介して上流の傾斜流路2に配置した図1の反応層11は、軸受装置10により傾斜流路2の軸心Oを中心に自由に回転できる。
【0043】
前記傾斜流路2の内部は、煙道1に設けられる誘引ファン7によって負圧に保持されている。しかし、前記軸受装置10には図3図4に示すようなシール装置9が設けられているので、反応層11が回転する際に傾斜流路2に対して外気が侵入するのをシールし、排煙Gに外気が混入するのを防止できる。
【0044】
従って、図6(a)に示すように、反応層11の上流側に設けた回転用羽根42からなる回転力発生装置41と、図6(b)に示すように、反応層11の内部に螺旋通路43aを形成する螺旋通路壁43を設けた回転力発生装置41のいずれか一方又は両方を備えた前記反応層11は、シールを保持して自力で回転するようになる。このとき、前記反応層11は、外筒12の内部に反応通路壁14又は螺旋通路壁43を設けた簡略な構成を有しているため、重量が軽減され反応層11は自力で回転し易くなっている。
【0045】
更に、前記反応層11の上流に設置するノズル装置18に、前記反応層11の回転を促進する方向に傾斜して吸収液スラリーを噴射する傾斜ノズル44を設けたので、前記反応層11の回転力は更に高められる。
【0046】
上記したように、回転用羽根42及び螺旋通路壁43からなる回転力発生装置41を備えた反応層11は自力で回転できるため、反応層11を回転するための消費エネルギを無くすことができる。
【0047】
ノズル装置18により反応層11に向けて吸収液スラリー15を噴射すると、前記反応層11が回転していることから、各反応通路13を形成する反応通路壁14に吸収液スラリー15が行き渡って流れるようになり、反応通路壁14に沿って流れる吸収液スラリー15と排煙Gが接触して排煙Gは効果的に脱硫される。ここで、脱硫能力(脱硫率)は反応流路壁14の長さに関係するので、反応層11の長さ寸法を増加すれば、脱硫率を高めることができ、又は、前記反応層11を複数段に設けることにより、更に脱硫率を高めることができ、これにより例えば略100%の脱硫率を達成することができる。
【0048】
又、反応層11が回転することで各反応通路13を形成する反応通路壁14に吸収液スラリー15が行き渡って流れるため、前記反応層11に石膏が堆積するという問題は防止できる。本発明者の知見によれば、吸収液スラリーが流動している装置部分には石膏が堆積しないことを確認している。又、ノズル装置18から噴射した吸収液スラリー15は回転している反応層11に均一に供給されるため、従来の脱硫装置に備えられる噴霧装置のような微細な液滴を生成させる高価な装置を備える必要はない。
【0049】
上記したように、反応層11に石膏が堆積する問題を防止できること、及び、反応層11は反応通路13を備えた簡略な構成であることにより、反応層11を通る排煙Gの流動抵抗は小さく圧力損失が小さいため、誘引ファン7の消費エネルギは大幅に低減することができる。
【0050】
前記シール装置9を備えた軸受装置10を含む前記反応層11は、フランジ46を介して傾斜流路2に対し着脱可能な反応層ユニットUを形成しているので、脱硫装置の定期検査時等にフランジ46を介して反応層ユニットUを取り外すことにより、反応層11のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0051】
図1の下流の傾斜流路3には、前記反応層11の外筒12の外部に振動子47を取り付けた非回転の振動反応層48を、伸縮継手49(べローズ[bellows])を介して配置している。又、前記振動反応層48の上流には、前記スラリー貯留槽5からの吸収液スラリー15を、循環ポンプ16を有する循環流路17により導いて噴射する別のノズル装置18'を配置している。前記ノズル装置18'に吸収液スラリー15を送給する循環ポンプ16は、振動反応層48の上流と下流における排煙Gの圧力差を検出する差圧計23と、振動反応層48の下流の硫黄濃度を検出する硫黄濃度計24からの検出信号が入力された制御器25により制御される。更に、前記差圧計23の差圧に基づいて制御器25から発せられる信号が前記振動子47に入力されており、差圧計23の差圧が大きくなると石膏が堆積したことを検出し、振動子47を作動させるようになっている。
【0052】
従って、上流の傾斜流路2に設けた反応層11により例えば70%の脱硫率が達成できた場合には、前記振動反応層48によって残りの30%の脱硫率を達成できるように相互に振り分けて脱硫することができる。前記振動反応層48では、振動反応層48に石膏が付着しないように振動子47を作動させる、或いは、差圧計23の差圧により石膏の堆積が検出されたときに振動子47を作動させて振動反応層48に堆積した石膏を流れ落とすように作用することができる。
【0053】
図7は、本発明の第二の実施例を示す側断面図であり、この実施例では、上流の傾斜流路2に配置した反応層11に、該反応層11を回転駆動するための回転駆動装置50を設けている。下流の傾斜流路3には、図1と同様の振動反応層48を設けた場合を示している。
【0054】
尚、図7の実施例は、図2に示すように回転力発生装置41を備えていない反応層11に対して前記回転駆動装置50を設ける場合と、図6に示すように回転力発生装置41を備えた反応層11に対して前記回転駆動装置50を設ける場合の両方に適用できることを示している。
【0055】
図7に示す回転駆動装置50は、前記反応層11の外筒12の外周面に備えた環状歯車51と、該環状歯車51に噛合したピニオン52を駆動するモータ53を備えた場合を示す。
【0056】
図7に示すように、環状歯車51と、ピニオン52と、モータ53とかるなる回転駆動装置50は、コンパクトな構成とすることができる。
【0057】
図7の実施例において、図2に示すように回転力発生装置41を備えていない反応層11に対して前記回転駆動装置50を設けた場合は、簡略な構成を有する反応層11が圧力損失を小さく抑えて誘引ファン7の消費エネルギを大幅に低減できるという利点に加えて、回転駆動装置50のモータ53の駆動により反応層11を任意の速度で回転できる利点がある。
【0058】
又、図7の実施例において、図6に示すような回転力発生装置41を備えた反応層11に対して前記回転駆動装置50を設けた場合には、反応層11は回転力発生装置41により自力で回転力を生じるので、前記利点に加え、回転力発生装置41による自力の回転力分だけモータ53の消費エネルギを削減できる利点がある。又、回転力発生装置41による自力での回転が不安定或いは不能になった場合には、回転駆動装置50のモータ53の駆動により反応層11を任意の速度で確実に回転させることができる。
【0059】
図8は、図7とは異なる本発明の第三の実施例を示す側断面図であり、図8では上流の傾斜流路2と下流の傾斜流路3の夫々に、前記回転力発生装置41を備えた反応層11を設置して脱硫率を高めるようにしいる。尚、図8では、前記実施例において説明した制御器25に関する構成を省略しているが、図8の実施例においても前記制御器25の構成は備えられている。図8に備える回転駆動装置50は、各反応層11の軸心Oに固定されて前記傾斜流路2、3の外部に延長した回転軸54と該回転軸54を駆動するモータ55を備えた場合を示している。図8の実施例によれば、図7の実施例と同様に作用することができ、更に、傾斜流路2の反応層11と、傾斜流路3の反応層11の回転速度を任意に設定することができる。
【0060】
図9は、図8に類似した本発明の第四の実施例を示す側断面図であり、図9では上流の反応層11の軸心Oに固定されて上流の傾斜流路2の外部に延長した回転軸54と該回転軸54を駆動するモータ55を設け、一方である上流の反応層11と他方である下流の反応層11の間を、連結軸56と歯車57(傘歯歯車)を備えた動力伝達機構58により連結した場合を示している。動力伝達機構58は、歯車57を包囲してV字流路4に固定したケース59を備えており、該ケース59により動力伝達機構58を支持し、歯車57への給油を可能にしている。図9の実施例によれば、図7の実施例と同様に作用することができ、更に、上流の反応層11と下流の反応層11を前記1つのモータ55で駆動することができる。
【0061】
なお、本発明の脱硫装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 煙道
2 上流の傾斜流路
3 下流の傾斜流路
4 V字流路
5 スラリー貯留槽
9 シール装置
10 軸受装置
11 反応層
12 外筒
13 反応通路
14 反応通路壁
15 吸収液スラリー
18 ノズル装置
32 コロ(軸受装置)
33 内輪(軸受装置)
34 外輪(軸受装置)
35 シール板(シール装置)
36 永久磁石(軸受装置)
36' 永久磁石(軸受装置)
40 電磁石(軸受装置)
41 回転力発生装置
42 回転用羽根(回転力発生装置)
43 螺旋通路壁(回転力発生装置)
43a 螺旋通路
44 傾斜ノズル
47 振動子
48 振動反応層
49 伸縮継手
50 回転駆動装置
51 環状歯車
52 ピニオン
53 モータ
54 回転軸
55 モータ
56 連結軸
57 歯車
58 動力伝達機構
G 排煙
O 軸心
U 反応層ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9