特許第6578981号(P6578981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578981
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】溶銑の脱りん方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 1/02 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   C21C1/02 110
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-24437(P2016-24437)
(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公開番号】特開2017-141496(P2017-141496A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】上原 脩司
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−055707(JP,A)
【文献】 特開2008−138281(JP,A)
【文献】 特開2007−154313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉型反応容器に溶銑を装入した後にCaO源を添加して吹錬を行う転炉型溶銑予備脱りん処理において、装入塩基度を1.0〜1.5とし、前記CaO源の一部として、高炉装入鉄源である焼結鉱のうち粒度が6mm以下の焼結鉱を、吹錬前もしくは吹錬中に、前記転炉型容器の内部へ装入し、吹錬時間5〜8分間で吹錬を終了することを特徴とする溶銑の脱りん方法。
【請求項2】
前記CaO源は生石灰および石灰石を含むとともに、前記焼結鉱を1kg/ton以上含むことを特徴とする請求項1に記載された溶銑の脱りん方法。
【請求項3】
前記CaO源はカルシウムフェライトを含まない請求項1または請求項2に記載された溶銑の脱りん方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑の脱りん方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工程においては、転炉で脱炭吹錬を行う前に溶銑中のSi,S,P等の元素を予め取り除く溶銑予備処理が行われている。脱炭吹錬で発生するスラグ量を軽減したり、後工程よりも有利な精錬条件で事前に不純物元素を除去することにより、製錬コスト全体の低減を図るためである。
【0003】
溶銑予備処理のうち脱りん工程は、酸化精錬により行われ、その容器としては、転炉型反応容器や溶銑鍋、トーピードカーが用いられる。特に転炉型反応容器は、他の容器に比べてフリーボードが大きく、酸素供給速度を高めて急激な反応を起こすことが可能であるため、短時間での予備脱りんが可能になる。
【0004】
脱りん反応を進行させるには、添加するCaO量を増加してスラグの塩基度(≒CaO/SiO)を上昇させることが有効である。しかし、脱りん炉へ装入されるSiOの量は溶銑成分に依存するため、スラグの塩基度を上昇させるためには多量のCaOが必要になり経済的でない。また、発生するスラグ量が増加するため環境負荷の面でも不利である。
【0005】
CaO量の削減、スラグ発生量の低減を目的として低塩基度スラグによる脱りん吹錬の開発が求められるが、低塩基度スラグではりん分配比が低下するため、長時間吹錬時間を行えばある程度の脱りん能を維持することはできるが、転炉型予備脱りんの特徴である短時間脱りん処理が困難になる。
【0006】
特許文献1には、転炉型反応容器に保持した溶銑に精錬剤を添加し、酸素ガスを上吹きしながら炉底羽口から吹込むガスで溶銑を撹拌して脱燐する溶銑の予備処理に際し、精錬剤の一部に20kg/t以上の高炉装入鉄源である焼結鉱を用い、焼結鉱が溶銑中へ持ち込む酸素量を特定の範囲とすることによって、高効率で、かつ蛍石や塩化物等を使用せず、環境規制に適応して溶銑を予備処理する発明が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、CaOを主体とする脱燐精錬剤を添加し、酸素源として気体酸素源及び固体酸素源(焼結鉱等)を供給して、添加したCaOを主体とする脱燐精錬剤を滓化させてスラグとなし、溶銑に対して脱燐処理を施す溶銑の脱燐処理に際し、気体酸素源を上吹きランスから溶銑浴面に噴射して供給し、上吹きランスから噴射される気体酸素源が溶銑浴面に衝突する位置に、特定量の固体酸素源を、搬送ガスを用いて供給することによって、フッ素含有媒溶剤を用いなくとも少ない石灰使用量で、従来と同等の脱りん効率および鉄歩留りを得られる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−60825号公報
【特許文献2】特開2007−154313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1により開示された発明では、製錬剤の一部に20kg/ton以上という多量の焼結鉱を用いるとしているが、この理由は、特許文献1の段落0030に記載されるように脱りん吹錬時の装入塩基度が1.5〜2.5と高いことを前提とするためである。このため、特許文献1により開示された発明では、低塩基度かつ短時間で溶銑予備脱りん処理を行うことはできない。
【0010】
特許文献2により開示された発明を実施するためには、固体酸素源である焼結鉱を、ガスを用いて粉体吹込みするために、摩耗対策やガス圧確保等の大掛かりな設備改造を行う必要がある。このため、特許文献2により開示された発明では、低塩基度かつ短時間で溶銑予備脱りん処理を低コストで行うことはできない。
【0011】
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、低塩基度かつ短時間で溶銑予備脱りん処理を低コストで行うための溶銑の脱りん方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、転炉型溶銑予備脱りん処理を低塩基度かつ短時間で、かつ低コストで完了するためには、吹錬開始前に、高炉装入鉄源である焼結鉱のうち粒度が6mm以下の焼結鉱(本明細書では「焼結粉」ともいう)を転炉型反応容器内に上方添加してから脱りん吹錬を開始すればよいことを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。本発明は以下に列記の通りである。
(1)転炉型反応容器に溶銑を装入した後にCaO源を添加して吹錬を行う転炉型溶銑予備脱りん処理において、装入塩基度を1.0〜1.5とし、前記CaO源の一部として、高炉装入鉄源である焼結鉱のうち粒度が6mm以下の焼結鉱を、吹錬前もしくは吹錬中に、前記転炉型反応容器の内部へ装入(上方添加)し、吹錬時間5〜8分間で吹錬を終了することを特徴とする溶銑の脱りん方法。
(2)前記CaO源は生石灰および石灰石を含むとともに、前記焼結鉱を1kg/ton以上含むことを特徴とする1項に記載された溶銑の脱りん方法。
(3)前記CaO源はカルシウムフェライトを含まない1項または2項に記載された溶銑の脱りん方法。
【0013】
この場合には、CaO源は、例えば、高炉装入鉄源である焼結鉱のうち粒度が6mm以下の焼結鉱と、生石灰および石灰石とからなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉄鉱石やスケール等の一般的な固酸源ではなく、焼結鉱のうち高炉に装入できない焼結粉を利用し、高価なカルシウムフェライトを用いなくとも、装入塩基度1.0〜1.5という低塩基度かつ吹錬時間5〜8分間という短時間での操業により脱りん後[P]を低位安定化させて、溶銑予備脱りん処理を低コストで行うことができる。これにより、本発明によれば、CaO原単位の削減、およびスラグ排出量の低減、スラグ生成に伴う鉄ロスの低減、さらには、脱りん炉の稼働率上昇を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、吹錬時間と脱りん後[P]の関係(カルシウムフェライトなし)を示すグラフである。
図2図2は、吹錬時間と脱りん率の関係(カルシウムフェライトなし)を示すグラフである。
図3図3は、吹錬時間と脱りん後[P]の関係(カルシウムフェライトあり)を示すグラフである。
図4図4は、吹錬時間と脱りん率の関係(カルシウムフェライトあり)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
本発明では、転炉型反応容器に溶銑を装入した後にCaO源を添加して吹錬を行う転炉型溶銑予備脱りん処理において、装入塩基度を1.0〜1.5とし、CaO源の一部として、高炉装入鉄源である焼結鉱のうち粒度が6mm以下の焼結鉱である焼結粉を、吹錬前もしくは吹錬中に、転炉型反応容器へ装入(上方添加)し、吹錬時間5〜8分間で吹錬を終了する。
【0018】
装入塩基度が1.0未満であると、所望の脱りん率を確保することが困難となり、後工程での脱りん負荷が上昇するために経済的でない。一方、装入塩基度が1.5超であると、脱りん吹錬で用いるCaO量が増加することから、やはり経済的でない。このため、装入塩基度は1.0以上1.5以下とする。
【0019】
また、吹錬時間が5分間未満であると、本発明によっても物質移動律速となり、一般的な溶銑[P](≒0.100〜0.200質量%程度)を十分に脱りんするには吹錬時間が不足する。一方、吹錬時間が8分間超であると、脱りん炉の稼働率が低下してしまい、そもそも溶銑予備処理を行ってスラグ排出量を削減することができなくなる。このため、吹錬時間は5分間以上8分間以下とする。
【0020】
本発明では、CaO源として、一般的にCaO源として使用されている生石灰および石灰石ととともに、焼結粉を複合して用いるとともに、この焼結粉を1kg/ton以上含む。CaO源として粒度が6mm以下の焼結鉱を用いる理由を説明する。
【0021】
短い吹錬時間のなかで脱りん能を確保するためには、如何にして早期に脱りん反応を開始させることができるかが重要になる。りんの酸化は、Siの酸化の後に起こるため、脱りん期を早めるためには脱Si期を速く終了させる必要がある。
【0022】
脱りん吹錬では、熱源調整のために一般的に鉄鉱石(Fe)やスケール(FeO)といった固酸源が使用される。固酸源から供給される酸素分は、吹錬初期から反応し、主に脱Si反応を進行させることに消費される。つまり、脱Si反応を早期に終了させるためには固酸源を増量するか、あるいは固酸源の脱Si反応効率を高めることが有効である。しかし、固酸源の増量は熱バランスを崩すために現実的ではない。そこで、本発明では、固酸源の一部として焼結鉱を使用することにより、脱Si反応効率の向上を図る。
【0023】
脱Si反応のためにはスラグ液相にFeOが存在する必要があるが、固酸源に鉄鉱石やスケールを用いる場合、吹錬初期のスラグ中(%CaO)が低位となるためFeOが存在する液相領域が狭い。
【0024】
これに対し、焼結鉱は、後述するようにCaOを約10質量%程度含んでいるため、FeOが存在する液相領域が拡大され、より脱Si反応に有利なスラグを生成することができる。
【0025】
また、鉄鉱石,スケール等に比べて粒度が6mm以下の焼結鉱は、鉄鉱石,スケール等よりも低融点であるために溶融し易く、スラグの形成も短時間で進行する。
【0026】
このように、粒度が6mm以下の焼結鉱を利用して吹錬時間のうちの脱Si期を迅速に完了し、脱りん反応を早期に開始することにより、1.0〜1.5という低塩基度であっても、5〜8分間という短時間での脱りん吹錬が可能になる。
【0027】
ここで、焼結鉱を簡単に説明する。焼結鉱は、製鉄原料の1種として高炉に装入される高炉装入鉄源である。高炉に装入される焼結鉱は、粉状鉄鉱石を主原料に、ダスト、スケールなどの雑原料、石灰石などのCaO源、返鉱(焼結鉱篩下粉で、通常の粒度は6mm以下)などを副原料として加え、さらに、燃料としての粉コークス等の凝結材が配合され、その後、水分を添加して転動造粒し、焼結機で焼成して製造される。
【0028】
通常、これらの原料は、その銘柄毎に原料ホッパーに貯蔵されて、配合に応じて定量切り出しされる。切り出された各原料および凝結材は、原料搬送用のベルトコンベア上で合流し、造粒機まで搬送される。造粒機では、焼結原料に水分が添加されて混合造粒が行われる。
【0029】
さらに、混合造粒後の配合原料は、サージホッパー(原料給鉱ホッパー)から焼結機に供給され、循環連続走行するパレット上に装入されて原料充填層を形成する。原料充填層は、パレットとともに水平方向に移送され、原料充填層の最上部に点火される。
【0030】
その後、原料充填層の上層部から下層部に向かって、大気中の空気が充填層内を通して下方吸引されることによって、凝結材が燃焼するとともに、燃焼により生成した高温ガスにより焼結原料が加熱昇温される。
【0031】
その結果、原料充填層の上層部から下層部に向かって、焼結原料が融体を形成するなどの物理的,化学的変化、いわゆる焼結反応が順次進行する。上層部から下層部まで焼結が完了した塊状物(焼結ケーキという)は、焼結機の排鉱部において粗破砕された後に、冷却機により冷却される。冷却機から排出された後で篩分け工程を経て、成品(通常の粒度は6mm超)は高炉へ送られ、それ以下の粒度の焼結鉱が返鉱として原料ホッパーへ戻される。
【0032】
本発明では、この返鉱である、粒度が6mm以下の焼結鉱(焼結粉)を、CaO源として用いることができる。
【0033】
得られる焼結鉱の成分は、鉄鉱石および各種副原料の配合比率と成分から算出することができるが、Fe,FeなどのFeの酸化物と、CaO,SiO,MgO,Alなどのスラグ分とに大別される。
【0034】
本発明において用いる焼結粉の成分は、例えば、Feを主成分として、CaO:10質量%、SiO:5質量%が例示される。
【0035】
焼結粉を転炉型反応容器に投入するタイミングは、吹錬前もしくは吹錬中でよく、吹錬中としては極力吹錬早期に投入というタイミングが好ましい。
【0036】
粒度が6mm以下の焼結鉱の使用量が1kg/t未満であると、装入塩基度1.0〜1.5という低塩基度かつ吹錬時間5〜8分間という短時間での操業により溶銑予備脱りん処理することが容易ではない。このため、本発明では、CaO源として粒度が6mm以下の焼結鉱を1kg/ton以上含むことが好ましい。
【0037】
しかし、粒度が6mm以下の焼結鉱の使用量が20kg/t超であると、スラグ塩基度の急激な低下によるスロッピングという問題を生じるので、粒度が6mm以下の焼結鉱の使用量は20kg/t以下であることが好ましい。
【0038】
また、本発明のポイントは、粒度が6mm以下の焼結鉱による迅速な脱Si反応促進であり、そのためには焼結鉱が速やかに溶解する必要がある。焼結鉱の粒度が6mmより大きい場合、溶解遅れによる反応停滞が懸念されるため、焼結鉱の粒度は6mm以下とする。なお、焼結鉱の粒度は6mm角目の篩下として規定される。
【0039】
図1,2は、それぞれ、CaO源として、粒度が6mm以下の焼結鉱、生石灰および石灰石を用い、転炉型溶銑予備脱りん処理を行った場合における、吹錬時間と脱りん後[P]との関係を示すグラフ,吹錬時間と脱りん率との関係を示すグラフである。
【0040】
図1,2のグラフに示すように、CaO源としてカルシウムフェライトを用いない場合、吹錬時間を短縮しても脱りん後[P]を低位安定化させることができ、脱りん率が悪化しなかった。これにより、本発明により吹錬時間を短縮できることがわかる。
【0041】
図3,4は、それぞれ、CaO源として、粒度が6mm以下の焼結鉱、生石灰、石灰石およびカルシウムフェライトを用い、転炉型溶銑予備脱りん処理を行った場合における、吹錬時間と脱りん後[P]との関係を示すグラフ,吹錬時間と脱りん率との関係を示すグラフである。
【0042】
図3,4のグラフに示すように、CaO源としてカルシウムフェライトを焼結鉱とともに複合して投入すると、焼結粉による脱りん促進効果は、図1,2のグラフに示す結果よりは小さくなった。これは、焼結粉よりも低融点に設計されたカルシウムフェライトの脱りん促進効果によって、焼結粉の脱りん促進効果が若干減殺されたためと解される。
【0043】
しかし、カルシウムフェライトは非常に高価であるため、焼結粉に比べて経済性に劣る。このため、CaO源の一部として焼結鉱を用いて脱りんを促進する本発明では、CaO源の一部としてカルシウムフェライトを用いないことが好ましい。
【0044】
CaO源の一部としてカルシウムフェライトを用いる場合の使用量は例えば15kg/ton以下であることが好ましい。
【実施例】
【0045】
出湯温度:1290〜1320℃、溶銑[Si]:0.30〜0.60質量%、スケール:10〜25kg/t、脱Si外酸素:8〜10Nm/tの条件下で、溶銑を転炉型反応容器に装入した後にCaO源を添加して吹錬を行う転炉型溶銑予備脱りん処理を行った。なお、CaO源は、上方添加により投入した。
【0046】
この転炉型溶銑予備脱りん処理の条件(装入塩基度、固酸源、CaO源、焼結鉱粒度(粒径)、焼結鉱投入量)、結果(脱りん吹錬時間、脱りん率)および判定結果を表1にまとめて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1における実施例1〜4は、いずれも、本発明で規定する条件を総て満たしており、吹錬時間8分間以下かつ脱りん率70%超えという良好な結果が得られた。また、CaO源として高価なカルシウムフェライトを用いないために処理コストの低下を図ることもできた。
【0049】
実施例5は、焼結鉱の投入量が請求項2で規定する本発明の好適な範囲の下限を下回るものの、吹錬時間8分間以下かつ脱りん率66%の良好な結果が得られた。また、CaO源として高価なカルシウムフェライトを用いないために処理コストの低下を図ることもできた。
【0050】
実施例6は、CaO源として、粒度が6mm以下の焼結鉱を2kg/ton,カルシウムフェライトを10kg/ton含むが、吹錬時間8分間以下かつ脱りん率85%の良好な結果が得られた。
【0051】
これに対し、比較例1,2は、CaO源として焼結粉を含まないため、脱りん率60,65%と不芳な結果になった。
【0052】
比較例3は、吹錬時間が4分間と短く、脱りん率60%と不芳な結果となった。
【0053】
比較例4は、脱りん率は75%と良好であったが、吹錬時間が10分間と長く、生産能率が低下した。
【0054】
比較例5は、焼結粉の粒径が請求項1で規定する範囲よりも大きく、脱りん率63%と不芳な結果となった。これは、焼結粉の粒度が大き過ぎたため焼結粉の溶解に時間を要し、脱りん反応促進に寄与し難くなったことが原因である。
【0055】
さらに、表1における従来例は、CaO源として焼結粉を用いずに、従来用いられるカルシウムフェライト、生石灰、石灰石を添加した条件であり、吹錬時間8分間以下かつ脱りん率80%の良好な結果が得られた。しかし、カルシウムフェライトは非常に高価であるため、本発明と比較して製錬コストが上昇した。
図1
図2
図3
図4