特許第6578983号(P6578983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578983
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】車両用気流制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20190912BHJP
   B62D 35/00 20060101ALI20190912BHJP
   B62D 33/04 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B62D37/02 Z
   B62D35/00 Z
   B62D33/04 B
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-25504(P2016-25504)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-144751(P2017-144751A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 由博
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−041481(JP,U)
【文献】 特開2007−191085(JP,A)
【文献】 特開平08−192774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/04
B62D 35/00
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の両側面の一部であって前記車両の後端板よりも前方に矩形状に設けられ、前方端を固定点として後方端が移動可能である、可動板と、
前記車両の両側面に設けられた前記可動板の後方端の上端及び下端をそれぞれ独立に前記側面と面一の位置から前記車両内部に引き込んだ引き込み位置まで移動可能なアクチュエータと、
を備えることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用気流制御装置であって、
前記車両の制動時に、両側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記引き込み位置に配置されることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用気流制御装置であって、
前記車両の制動時に、両側面の前記可動板の後方端の上端は前記面一の位置に配置され、下端は前記引き込み位置に配置されることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の車両用気流制御装置であって、
前記車両を右周りに回転させる時計回りのヨーイングが生じたときに、左側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記引き込み位置に配置され、右側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記面一の位置に配置されることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の車両用気流制御装置であって、
前記車両を左周りに回転させる反時計回りのヨーイングが生じたときに、右側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記引き込み位置に配置され、左側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記面一の位置に配置されることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の車両用気流制御装置であって、
前記車両右側が沈み左側が持ち上がる時計回りのローリングが生じたときに、右側面の前記可動板の後方端の上端及び左側面の前記可動板の後方端の下端が前記引き込み位置に配置され、右側面の前記可動板の後方端の下端及び左側面の前記可動板の後方端の上端が前記面一の位置に配置されることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の車両用気流制御装置であって、
前記車両左側が沈み右側が持ち上がる反時計回りのローリングが生じたときに、右側面の前記可動板の後方端の下端及び左側面の前記可動板の後方端の上端が前記引き込み位置に配置され、右側面の前記可動板の後方端の上端及び左側面の前記可動板の後方端の下端が前記面一の位置に配置されることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の車両用気流制御装置であって、
前記車両後方が沈み前方が持ち上がる時計回りのピッチングが生じたときに、両側面の前記可動板の後方端の上端が前記引き込み位置に配置され、両側面の前記可動板の後方端の下端が前記面一の位置に配置されることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の車両用気流制御装置であって、
前記車両前方が沈み後方が持ち上がる反時計回りのピッチングが生じたときに、両側面の前記可動板の後方端の下端が前記引き込み位置に配置され、両側面の前記可動板の後方端の上端が前記面一の位置に配置されることを特徴とする、車両用気流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のボデー回りの気流を制御する、車両用気流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のボデー周りの気流を制御する機構が知られている。例えば特許文献1では、車両のリアデッキ面上中央に三角錐状に突出する気流制御装置を設け、車両後方に流れる気流を中央から両脇に流すことで、リアデッキ面上中央における渦流の形成を抑制している。また特許文献2では、シリンダによって自動車後部の外板中央を膨出させることで、特許文献1と同様に、リアデッキ面上中央における渦流の形成を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−199251号公報
【特許文献2】特開平7−69250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両側面に気流制御機構を設けようとする場合、当該気流制御機構が車両側面から突出するような構造であると、車両の脇を通過する自転車や歩行者等の妨げになるおそれがある。そこで本発明は、車両側面に設けられ、かつ側面から突出することのない、車両用気流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両用気流制御装置に関する。当該装置は、車両の両側面の一部であって前記車両の後端板よりも前方に矩形状に設けられ、前方端を固定点として後方端が移動可能である、可動板と、前記車両の両側面に設けられた前記可動板の後方端の上端及び下端をそれぞれ独立に前記側面と面一の位置から前記車両内部に引き込んだ引き込み位置まで移動可能なアクチュエータと、を備える。
【0006】
また、上記発明において、前記車両の制動時に、両側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記引き込み位置に配置されることが好適である。
【0007】
また、上記発明において、前記車両の制動時に、両側面の前記可動板の後方端の上端は前記面一の位置に配置され、下端は前記引き込み位置に配置されることが好適である。
【0008】
また、上記発明において、前記車両を右周りに回転させる時計回りのヨーイングが生じたときに、左側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記引き込み位置に配置され、右側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記面一の位置に配置されることが好適である。
【0009】
また、上記発明において、前記車両を左周りに回転させる反時計回りのヨーイングが生じたときに、右側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記引き込み位置に配置され、左側面の前記可動板の後方端の上端及び下端が前記面一の位置に配置されることが好適である。
【0010】
また、上記発明において、前記車両右側が沈み左側が持ち上がる時計回りのローリングが生じたときに、右側面の前記可動板の後方端の上端及び左側面の前記可動板の後方端の下端が前記引き込み位置に配置され、右側面の前記可動板の後方端の下端及び左側面の前記可動板の後方端の上端が前記面一の位置に配置されることが好適である。
【0011】
また、上記発明において、前記車両左側が沈み右側が持ち上がる反時計回りのローリングが生じたときに、右側面の前記可動板の後方端の下端及び左側面の前記可動板の後方端の上端が前記引き込み位置に配置され、右側面の前記可動板の後方端の上端及び左側面の前記可動板の後方端の下端が前記面一の位置に配置されることが好適である。
【0012】
また、上記発明において、前記車両後方が沈み前方が持ち上がる時計回りのピッチングが生じたときに、両側面の前記可動板の後方端の上端が前記引き込み位置に配置され、両側面の前記可動板の後方端の下端が前記面一の位置に配置されることが好適である。
【0013】
また、上記発明において、前記車両前方が沈み後方が持ち上がる反時計回りのピッチングが生じたときに、両側面の前記可動板の後方端の下端が前記引き込み位置に配置され、両側面の前記可動板の後方端の上端が前記面一の位置に配置されることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両側面に設けられ、かつ側面から突出することのない、車両用気流制御装置を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両用気流制御装置及びこれを搭載した車両を例示する斜視図である。
図2】本実施形態に係る車両用気流制御装置を搭載した車両から後端板を取り去ったときの様子を例示する斜視図である。
図3】本実施形態に係る車両用気流制御装置の構成を説明するブロック構成図である。
図4】本実施形態に係る車両用気流制御装置の可動板の操作パターンを例示する表である。
図5】通常状態における可動板の操作例である。
図6】制動時における可動板の操作例である。
図7】ヨーイング発生時における可動板の操作例である。
図8】ローリング発生時における可動板の操作例である。
図9】ピッチング発生時における可動板の操作例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に、本実施形態に係る車両用気流制御装置10を搭載した車両12を例示する。図1に示す車両12はいわゆる貨物車両であるが、この形態に限らず、クーペ、セダン、ステーションワゴン、ミニバン等の乗用車にも、本実施形態に係る車両用気流制御装置10を搭載することが可能である。
【0017】
なお、図1,2,5〜9には、車両の斜視図が例示されているが、これらの図では、車両の進行方向(前進方向)をX軸、高さ方向(鉛直上方向)をZ軸、幅方向をY軸とする。
【0018】
また、車両12及び車両用気流制御装置10の各構成の位置や配置等を説明するに当たり、前方とは車両の前進方向を指し、後方とはこれと対向する方向を指すものとする。例えばX軸の正方向が前方であり負方向が後方に該当する。また、右及び左とは、車両の前進方向から見て右及び左側を指すものとする。例えばY軸の正方向が左側であり負方向が右側である。さらに上及び下とは、鉛直方向に沿った上下関係を指すものとする。例えばZ軸の正方向が上方向であり、負方向が下方向である。
【0019】
図1には車両12の後方斜視図が例示され、図2は車両12の後端板14を取り去ったときの後方斜視図が例示されている。さらに図3には本実施形態に係る車両用気流制御装置10の各構成のブロック図が例示されている。本実施形態に係る車両用気流制御装置10は、可動板16A,16B、アクチュエータ18A〜18D、制御部20、ブレーキペダルセンサ22、ヨーレートセンサ24、ローリングセンサ26、及びピッチングセンサ28を含んで構成される。
【0020】
可動板16A,16Bは、車両12の側面30A,30Bの一部にそれぞれ設けられる。なお、理解を容易にするため、図1では側面30A,30Bを鉛直面、つまり高さ方向(Z軸方向)に平行な面として図示しているが、この形態に限らない。例えば高さ方向に対して±10°程度傾いていてもよいし、全体的に丸みを帯びた形状であってもよい。
【0021】
可動板16A,16Bは矩形状の板部材であって、(車両の前進方向を基準にした)前方端31A,31Bを固定点として後方端32A,32Bが移動可能となっている。可動板16A,16Bは、少なくともその後方端32A,32B(車両の前進方向に対する後方端)が上下方向(Z軸方向)及び車両内側方向(Y軸方向)に撓むことのできるような比較的薄板から構成されている。可動板16A,16Bは、例えば貨物室34の側面板の一部を矩形状に切断加工したものであってもよい。
【0022】
可動板16A,16Bは、車両12の側面30A,30Bのうち、車両12の後端板14よりも前方に設けられている。要するに可動板16A,16Bの形成領域が車両12の後端板14を貫通しないような構成となっている。このような構成とすることで、後述するように、可動板16A,16Bを車両内側に引き込ませることで、可動板16A,16Bと後端板14とで気流を堰き止めるスポイラーが形成される。具体的には、可動板16Aと後端板14によって左側面スポイラー35Aが形成され、可動板16Bと後端板14によって右側面スポイラー35Bが形成される。可動板16A,16Bの後方上端及び下端の引き込みを制御することで左側面スポイラー35A及び右側面スポイラー35Bの形状が変化し、それによって制動力やダウンフォース、揚力を得ることができる。
【0023】
なお、図1の例では、後端板14として貨物室34の背面板を挙げたが、この例に限らない。要するに車両の後方に設けられ、車両前進方向に延びるX軸を実質的な法線とするような面を持つ板部材であればよい。具体的にはラゲージコンパートメントドアやバックドアの鉛直部分(略鉛直部分)が後端板14に該当する。
【0024】
アクチュエータ18A〜18Dは、可動板16A,16Bの後方端32A,32Bの上端36A,36B及び下端38A,38Bをそれぞれ独立に移動させる。アクチュエータ18A〜18Dは、例えばリニアアクチュエータから構成される。
【0025】
アクチュエータ18Aは左側面30Aに設けられた可動板16Aの後方端32Aの上端36Aを移動可能となっている。またアクチュエータ18Bは可動板16Aの後方端32Aの下端38Aを移動可能となっている。
【0026】
同様にして、アクチュエータ18Cは右側面30Bに設けられた可動板16Bの後方端32Bの上端36Bを移動可能となっている。またアクチュエータ18Dは可動板16Bの後方端32Bの下端38Bを移動可能となっている。
【0027】
アクチュエータ18A〜18Dはいずれも車両12の内部に設けられており、それぞれ、可動板16Aの後方端32Aの上端36A、下端38A、可動板16Bの後方端32Bの上端36B、下端38Bの各面の車両内側(裏面)にアクチュエータ18A〜18Dのシリンダが取り付けられている。
【0028】
アクチュエータ18A〜18Dは、可動板16A,16Bの後方端32A,32Bの上端36A,36B及び下端38A,38Bを、それぞれ独立に、側面30A,30Bと面一の位置から車両内部に引き込んだ引き込み位置まで移動可能となっている。引き込み位置は、例えば側面30A,30Bから車両内側に最大30°程度可動板16A,16Bの上端36A,36B、下端38A,38Bを引き込ませた位置であってよい。アクチュエータ18A〜18Dの動作によって、左側面スポイラー35A及び右側面スポイラー35Bの形状が変化する。
【0029】
制御部20は、図3に示すように、各アクチュエータ18A〜18Dの動作を制御する。制御部20は、例えば車両12の電子制御ユニット(ECU)から構成される。制御部20は、例えばコンピュータから構成され、演算回路であるCPU及び記憶部を備える。記憶部はSRAM等の揮発性メモリ及びROMやハードディスク等の不揮発性メモリを含んで構成される。記憶部には後述するアクチュエータ18A〜18Dの操作マップが記憶されている。
【0030】
制御部20は、車両に搭載された各種センサから検出値を受信する。具体的にはブレーキペダルセンサ22、ヨーレートセンサ24、ローリングセンサ26、及びピッチングセンサ28から、それぞれ、ブレーキペダルの踏み込み量、ヨーイング(ヨーイングモーメント)の大きさ、ローリング(ローリングモーメント)の大きさ、及びピッチング(ピッチングモーメント)の大きさを受信する。制御部20は、これらのセンサから受信した値に基づいて、アクチュエータ18A〜18Dの動作を制御する。
【0031】
<可動板の操作表>
図4に可動板16A,16Bの操作マップを例示する。このマップでは、車両の状態に応じた可動板16A,16Bの操作パターンが記憶されている。なお、このマップでは、可動板16A,16Bの上端36A,36B、下端38A,38Bを車両内部に引き込んだ引き込み位置に配置させた状態を「Pull」で表す。また、可動板16A,16Bの上端36A,36B、下端38A,38Bを側面30A,30Bと面一の位置に配置させた状態を「0」で表す。
【0032】
図5図9には、図4の操作マップに応じた可動板16A,16Bの操作例が示されている。なお、図5図9では、図示を簡略化するために、貨物室34の構造のみ示している。
【0033】
(通常状態)
図5には、通常状態のときの可動板16A,16Bが示されている。ここで通常状態とは、下記の制動時、ヨーイング発生時、ローリング発生時、ピッチング発生時以外の状態を指すものである。このとき、可動板16A,16Bがそれぞれ左右側面30A,30Bと面一になっており、左右側面スポイラー35A,35Bは形成されない。したがって気流の堰き止めによる制動力等が生じずに、走行時の空力特性の低下が避けられる。
【0034】
(制動時1)
車両12の制動時には、図6上段のように、左側面30Aの可動板16Aの上端36A及び下端38Aならびに右側面30Bの可動板16Bの上端36B及び下端38Bを引き込み位置に配置させる。これにより左側面30A及び右側面30Bに左側面スポイラー35A及び右側面スポイラー35Bがそれぞれ形成される。これらスポイラーによって左側面30A及び右側面30Bに沿って流れる気流はそれぞれ左側面スポイラー35A及び右側面スポイラー35Bに堰き止められ、その結果制動力が生じる。
【0035】
(制動時2)
また、制動時は図6下段のように可動板16A,16Bを操作してもよい。すなわち、左側面30Aの可動板16Aの下端38A及び右側面30Bの可動板16Bの下端38Bを引き込み位置に配置させる。一方、左側面30Aの可動板16Aの上端36A及び右側面30Bの可動板16Bの上端36Bは左右側面30A,30Bと面一の位置に配置させる。上端36A,36Bを左右側面30A,30Bと面一とすることで、左右側面スポイラー35A,35Bでは、上端36A,36Bから下端38A,38Bに気流が向かう流れが形成され、その結果上記の制動力に加えてダウンフォースが発生する。
【0036】
制御部20は、ブレーキペダルセンサ22によってブレーキペダルが踏み込まれたことを検知すると、上記制動時1の操作に基づいて、アクチュエータ18A〜18Dに対してすべて引き込み駆動させる。または、上記制動時2の操作に基づいて、アクチュエータ18B,18Dに対して引き込み駆動をさせ、またアクチュエータ18A,18Cに対して、可動板16A,16Bの上端36A,36Bを左右側面30A,30Bと面一にさせるよう押し出し駆動(面一駆動)させる。
【0037】
制動時に上記の制動時1及び制動時2のどちらを選択するかは、予め記憶させてもよいし、運転状態に応じて切り替えるようにしてもよい。
【0038】
(時計回りヨーイング発生時)
図7には車両12にヨーイング、つまりZ軸周りの回転が生じたときの可動板16A,16Bの操作が例示されている。図7上段は、車両12が右回りする時計回りヨーイング発生時の可動板16A,16Bの操作が例示されている。このとき、左側面30Aの可動板16Aの上端36A及び下端38Aを引き込み位置に配置させる。一方、右側面30Bの可動板16Bの上端36B及び下端38Bは右側面30Bと面一の位置に配置させる。
【0039】
このようにすることで、車両12が右回りにスピンする際に、左側面30Aに沿って流れる気流が左側面スポイラー35Aに堰き止められ、時計回りのヨーイングとは逆方向のモーメントが生じる。その結果、時計回りのヨーイングが抑制される。
【0040】
(反時計回りヨーイング発生時)
図7下段には、車両12が左回りする反時計回りヨーイング発生時の可動板16A,16Bの操作が例示されている。このとき、右側面30Bの可動板16Bの上端36B及び下端38Bを引き込み位置に配置させる。一方、左側面30Aの可動板16Aの上端36A及び下端38Aは左側面30Aと面一の位置に配置させる。
【0041】
このようにすることで、車両12が左回りにスピンする際に、右側面30Bに沿って流れる気流が右側面スポイラー35Bに堰き止められ、反時計回りのヨーイングとは逆方向のモーメントが生じる。その結果、反時計回りのヨーイングが抑制される。
【0042】
制御部20は、ヨーレートセンサ24によってヨーイングの発生を検知すると、その回転方向に応じて上記した時計回りヨーイング発生時または反時計回りヨーイング発生時の操作に従ってアクチュエータ18A〜18Dを駆動させる。
【0043】
(時計回りローリング発生時)
図8には車両12にローリング、つまりX軸周りの回転が生じたときの可動板16A,16Bの操作が例示されている。図8上段は、車両12の右側が沈み左側が持ち上がる時計回りローリング発生時の可動板16A,16Bの操作が例示されている。このとき、左側面30Aの可動板16Aの上端36Aを左側面30Aと面一の位置に、下端38Aを引き込み位置に配置させる。一方、右側面30Bの可動板16Bの上端36Bを引き込み位置に、下端38Bを右側面30Bと面一の位置に配置させる。
【0044】
このようにすることで、車両12が時計回りにローリングする際に、左側面30Aにおいて上方から下方に流れる気流が左側面スポイラー35Aに堰き止められる。また右側面30Bにおいて下方から上方に流れる気流が右側面スポイラー35Bに堰き止められる。その結果、時計回りのローリングとは逆方向のモーメントが生じ、時計回りのヨーイングが抑制される。
【0045】
(反時計回りローリング発生時)
図8下段は、車両12の左側が沈み右側が持ち上がる反時計回りローリング発生時の可動板16A,16Bの操作が例示されている。このとき、左側面30Aの可動板16Aの上端36Aを引き込み位置に、下端38Aを左側面30Aと面一の位置に配置させる。一方、右側面30Bの可動板16Bの上端36Bを右側面30Bと面一の位置に、下端38Bを引き込み位置に配置させる。
【0046】
このようにすることで、車両12が反時計回りにローリングする際に、左側面30Aにおいて下方から上方に流れる気流が左側面スポイラー35Aに堰き止められる。また右側面30Bにおいて上方から下方に流れる気流が右側面スポイラー35Bに堰き止められる。その結果、反時計回りのローリングとは逆方向のモーメントが生じ、反時計回りのヨーイングが抑制される。
【0047】
制御部20は、ローリングセンサ26によってローリングの発生を検知すると、その回転方向に応じて上記した時計回りローリング発生時または反時計回りローリング発生時の操作に従ってアクチュエータ18A〜18Dを駆動させる。
【0048】
(時計回りピッチング発生時)
図9には車両にピッチング、つまりY軸周りの回転が生じたときの可動板16A,16Bの操作が例示されている。図9上段は、車両12の後方が沈み前方が持ち上がる時計回りピッチング発生時の可動板16A,16Bの操作が例示されている。このとき、左側面30Aの可動板16Aの上端36A及び右側面30Bの可動板16Bの上端36Bを引き込み位置に配置する。一方、左側面30Aの可動板16Aの下端38A及び右側面30Bの可動板16Bの下端38Bをそれぞれ左右側面30A,30Bと面一の位置に配置させる。
【0049】
このようにすることで、車両12が時計回りにピッチングする際に、左右側面30A,30Bにおいて下方から上方に流れる気流が左側面スポイラー35A及び右側面スポイラー35Bに堰き止められる。その結果、時計回りのピッチングとは逆方向のモーメントが生じ、時計回りのピッチングが抑制される。
【0050】
(反時計回りピッチング発生時)
図9下段は、車両12の前方が沈み後方が持ち上がる反時計回りピッチング発生時の可動板16A,16Bの操作が例示されている。このとき、左側面30Aの可動板16Aの下端38A及び右側面30Bの可動板16Bの下端38Bを引き込み位置に配置する。一方、左側面30Aの可動板16Aの上端36A及び右側面30Bの可動板16Bの上端36Bを左右側面30A,30Bと面一の位置に配置させる。
【0051】
このようにすることで、車両12が反時計回りにピッチングする際に、左右側面30A,30Bにおいて上方から下方に流れる気流が左側面スポイラー35A及び右側面スポイラー35Bに堰き止められる。その結果、反時計回りのピッチングとは逆方向のモーメントが生じ、反時計回りのピッチングが抑制される。
【0052】
制御部20は、ピッチングセンサ28によってピッチングの発生を検知すると、その回転方向に応じて上記した時計回りピッチング発生時または反時計回りピッチング発生時の操作に従ってアクチュエータ18A〜18Dを駆動させる。
【0053】
なお、上述の実施形態では、可動板16A,16Bの後方上端36A,36B及び下端38A,38Bの引き込み位置を固定していたが、この形態に限らない。例えば制動量、ヨーイング量、ローリング量、及びピッチング量に応じて引き込み量を調整してもよい。
【0054】
また、上述の実施形態では、可動板16A,16Bと車両後端板14とによって左右側面スポイラー35A,35Bを形成していたが、この形態に限らない。例えば後端板14より前方(また当然に可動板16A,16Bより後方)にX軸を法線とするような平面を持つ障壁を設け、この障壁と可動板16A,16Bとによって左右側面スポイラー35A,35Bを形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用気流制御装置、12 車両、14 車両の後端板、16A,16B 可動板、18A〜18D アクチュエータ、20 制御部、22 ブレーキペダルセンサ、24 ヨーレートセンサ、26 ローリングセンサ、28 ピッチングセンサ、30A,30B 車両側面、31A,31B 可動板の前方端、32A,32B 可動板の後方端、34 貨物室、35A 左側面スポイラー、35B 右側面スポイラー、36A,36B 可動板の後方端の上端、38A,38B 可動板の後方端の下端。
図1
図2
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図8
図9