(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下流フィンの軸に沿う方向の前記伝達孔の寸法は、前記伝達部がないとした場合であって、前記操作ノブのスライドに伴い、前記伝達シャフトが上流端部を支点として揺動した場合に、前記接触子が移動する領域の寸法よりも小さく設定され、
前記上流フィンの軸に沿う方向の前記伝達孔の寸法は、前記伝達部がないとした場合であって、前記下流フィンを傾動させるための前記操作ノブの操作に伴い、前記伝達シャフトが上流端部を支点として揺動した場合に、前記接触子が移動する領域の寸法よりも大きく設定されている請求項1に記載の空調用レジスタ。
両中央上流フィン間には、一方の前記中央上流フィンの前記軸から偏倚した箇所と、他方の前記中央上流フィンの前記軸から偏倚した箇所とを連結する副連結ロッドが設けられており、
前記伝達機構部は、前記伝達シャフトのうち両中央上流フィン間に位置する部分と、前記副連結ロッドとに設けられている請求項1又は2に記載の空調用レジスタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記特許文献1に記載された空調用レジスタでは、操作ノブ118がスライドされたときに特定の上流フィン114に対し行なわれる、フォーク部124及び伝達軸部115の組合わせ(又はラック及びピニオンの組合わせ)による力の伝達が、複数の上流フィン114のうち、配列方向(上下方向)の中央部分から外れた箇所で行なわれる。そのため、操作ノブ118をスライドさせた場合に操作トルクが大きく変動し、操作感が損なわれてしまう。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、操作ノブをスライドさせた場合の操作トルクの変動を小さくして操作感の向上を図ることのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する空調用レジスタは、空調用空気の通風路に配置され、かつ軸により傾動可能に支持された下流フィンと、前記通風路の前記下流フィンよりも上流に配列され、かつ軸により傾動可能に支持され、同軸から偏倚した箇所で連結ロッドにより連結された複数の上流フィンと、前記通風路の前記上流フィンよりも上流に傾動可能に配置されたシャットダンパと、前記下流フィンにスライド可能に設けられ、かつ回動部を有する操作ノブと、前記通風路における前記空調用空気の流れ方向に沿って延びた状態で、複数の上流フィンのうち配列方向の中央部分で隣り合う一対の中央上流フィンの間に配置された伝達シャフトとを備え、前記伝達シャフトの上流端部は、上流自在継手により前記シャットダンパに駆動連結され、前記伝達シャフトの下流端部は、前記下流フィンの前記軸よりも上流の下流自在継手により前記回動部に駆動連結され、両中央上流フィン間には、前記操作ノブのスライドに伴う前記伝達シャフトの揺動を両中央上流フィンに伝達するとともに、前記下流フィンを傾動させるための前記操作ノブの操作に伴う前記伝達シャフトの揺動が両中央上流フィンに伝達されるのを遮断する伝達機構部が設けられている。
【0014】
上記の構成によれば、操作ノブに対し下流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられると、操作ノブが回動部及び下流自在継手を伴って同方向へスライドされる。そのため、伝達シャフトは、上流端部を支点として上記方向へ揺動する。この揺動が伝達機構部により両中央上流フィンに伝達され、各中央上流フィンがその軸を支点として傾動する。両中央上流フィンの傾動は連結ロッドに伝達されて、同連結ロッドが上記方向へ移動する。その結果、両中央上流フィン以外の上流フィンも軸を支点として両中央上流フィンと同方向へ傾動する。
【0015】
また、操作ノブに対し、上流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられると、下流フィンがその軸を支点として傾動する。この傾動は、下流フィンの軸よりも上流の下流自在継手を介して伝達シャフトの下流端部に伝達される。そのため、伝達シャフトは、上流端部を支点として上記方向へ揺動する。しかし、この揺動は、伝達機構部により両中央上流フィンに伝達されないため、全ての上流フィンは傾動しない。
【0016】
操作ノブにおける回動部が回動されると、その回動は、下流自在継手、伝達シャフト及び上流自在継手を介してシャットダンパに伝達される。シャットダンパが傾動され、同シャットダンパの開度が変化する。通風路においてシャットダンパを通過する空調用空気の量が調整される。この際、伝達シャフトの回動が、両中央上流フィンにも下流フィンにも伝達されないため、いずれの上流フィンも下流フィンも傾動しない。
【0017】
このように、回動部を有する操作ノブを操作することで、下流フィン、上流フィン及びシャットダンパをそれぞれ傾動させることが可能である。そのため、回動部を操作ノブとは別の箇所に設けた場合とは異なり、回動部の設置スペースを別途設けなくてもすむ。
【0018】
また、伝達シャフトが両中央上流フィン間に配置されている。さらに、伝達シャフトの揺動を両中央上流フィンに伝達したり、その伝達を遮断したりする伝達機構部が、両中央上流フィン間に設けられている。そのため、操作ノブがスライドされたときに上流フィンに対し行なわれる、伝達機構部による力の伝達が、複数の上流フィンのうち配列方向の中央部分で行なわれることとなる。その結果、操作ノブをスライドさせた場合に操作トルクが大きく変動することが抑制され、操作感が向上する。
【0019】
上記空調用レジスタにおいて、前記伝達機構部は、前記伝達シャフトのうち両中央上流フィン間に位置する部分と、前記連結ロッドのうち両中央上流フィン間に位置する部分とに設けられていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、操作ノブに対し、下流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられて、伝達シャフトが上流端部を支点として同方向へ揺動すると、その揺動は、両中央上流フィン間において、伝達シャフト及び連結ロッドに設けられた伝達機構部により両中央上流フィンに伝達される。各中央上流フィンが軸を支点として傾動する。両中央上流フィンの傾動は連結ロッドを介して他の上流フィンに伝達されて、同上流フィンも軸を支点として両中央上流フィンと同方向へ傾動する。
【0021】
また、操作ノブに対し、上流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられて、伝達シャフトが上流端部を支点として同方向へ揺動しても、その揺動は、両中央上流フィン間において、伝達シャフト及び連結ロッドに設けられた伝達機構部によっては、両中央上流フィンに伝達されず、全ての上流フィンが傾動しない。
【0022】
操作ノブにおける回動部が回動されると、その回動は、下流自在継手、伝達シャフト及び上流自在継手を介してシャットダンパに伝達されて同シャットダンパが傾動される。しかし、伝達シャフトの回動は、連結ロッドにも下流フィンにも伝達されないため、いずれの上流フィンも下流フィンも傾動しない。
【0023】
なお、上記の構成では、連結ロッドが伝達機構部の一部として機能するため、同一部を連結ロッド及び伝達シャフトとは別の箇所に設けなくてもすむ。
上記空調用レジスタにおいて、両中央上流フィン間には、一方の前記中央上流フィンの前記軸から偏倚した箇所と、他方の前記中央上流フィンの前記軸から偏倚した箇所とを連結する副連結ロッドが設けられており、前記伝達機構部は、前記伝達シャフトのうち両中央上流フィン間に位置する部分と、前記副連結ロッドとに設けられていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、操作ノブに対し、下流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられて、伝達シャフトが上流端部を支点として同方向へ揺動すると、その揺動は、両中央上流フィン間において、伝達シャフト及び副連結ロッドに設けられた伝達機構部により両中央上流フィンに伝達される。各中央上流フィンが軸を支点として傾動する。両中央上流フィンの傾動は、連結ロッドを介して他の上流フィンに伝達されて、同上流フィンも軸を支点として両中央上流フィンと同方向へ傾動する。
【0025】
また、操作ノブに対し、上流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられて、伝達シャフトが上流端部を支点として同方向へ揺動しても、その揺動は、両中央上流フィン間において、伝達シャフト及び副連結ロッドに設けられた伝達機構部によっては、両中央上流フィンに伝達されず、全ての上流フィンが傾動しない。
【0026】
操作ノブにおける回動部が回動されると、その回動は、下流自在継手、伝達シャフト及び上流自在継手を介してシャットダンパに伝達されて同シャットダンパが傾動される。しかし、伝達シャフトの回動は、副連結ロッドにも下流フィンにも伝達されないため、いずれの上流フィンも下流フィンも傾動しない。
【0027】
上記空調用レジスタにおいて、前記伝達シャフトの上流端部及び前記シャットダンパは傘歯車機構を介して連結されており、前記傘歯車機構は、前記シャットダンパに設けられた従動側の傘歯車と、前記従動側の傘歯車に噛み合わされた駆動側の傘歯車とを備え、前記上流自在継手は、前記伝達シャフトの上流端部に設けられた球状の係合部と、前記駆動側の傘歯車に設けられ、かつ前記係合部が係合される外殻部とを備えていることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、伝達シャフトは、駆動側の傘歯車に設けられた外殻部に係合された球状の係合部を支点として揺動可能である。また、伝達シャフトは、その回動を上流端部の係合部により駆動側の傘歯車に伝達可能である。
【0029】
そのため、操作ノブに対し、下流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられると、伝達シャフトは、係合部を支点として同方向へ揺動する。また、操作ノブに対し、上流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられると、伝達シャフトは、上記係合部を支点として同方向へ揺動する。さらに、操作ノブにおける回動部が回動されると、伝達シャフトが回動される。伝達シャフトの回動は、傘歯車機構を介してシャットダンパに伝達される。この際、伝達シャフトからシャットダンパに伝達される回動の方向が傘歯車機構によって変更される。シャットダンパの開度は、傾動されることで変化する。
【0030】
上記空調用レジスタにおいて、前記伝達機構部は、両中央上流フィンに対し動力伝達可能に連結され、かつ前記伝達シャフトが挿通される伝達孔を有する伝達部と、前記伝達シャフトの前記伝達孔に対する挿通箇所に設けられた接触子とを備え、前記伝達部における前記伝達孔の内壁面は、前記操作ノブのスライドに伴い、前記伝達シャフトが上流端部を支点として揺動した場合にのみ、その揺動を前記伝達部に伝達するものであることが好ましい。
【0031】
上記の構成によれば、操作ノブに対し、下流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられて、伝達シャフトが上流端部を支点として同方向へ揺動した場合、その揺動は接触子を介して伝達部に伝達される。伝達部が上記方向へ移動し、その移動は両中央上流フィンに伝達され、各中央上流フィンが軸を支点として傾動する。両中央上流フィンの傾動は連結ロッドを介して他の上流フィンに伝達され、同上流フィンも軸を支点として両中央上流フィンと同方向へ傾動する。
【0032】
また、操作ノブに対し、上流フィンの軸に沿う方向へ力が加えられて、伝達シャフトが上流端部を支点として同方向へ揺動した場合、その揺動は接触子を介して伝達部に伝達されない。両中央上流フィンを含め、全ての上流フィンは傾動しない。
【0033】
シャットダンパの傾動のために、操作ノブにおける回動部が回動されて、伝達シャフトが回動された場合、その回動は伝達部に伝達されない。伝達シャフトの回動に伴い接触子が伝達孔内で回動し、接触子と伝達部との間で力の伝達が行なわれないからである。
【0034】
上記空調用レジスタにおいて、前記下流フィンの軸に沿う方向の前記伝達孔の寸法は、前記伝達部がないとした場合であって、前記操作ノブのスライドに伴い、前記伝達シャフトが上流端部を支点として揺動した場合に、前記接触子が移動する領域の寸法よりも小さく設定され、前記上流フィンの軸に沿う方向の前記伝達孔の寸法は、前記伝達部がないとした場合であって、前記下流フィンを傾動させるための前記操作ノブの操作に伴い、前記伝達シャフトが上流端部を支点として揺動した場合に、前記接触子が移動する領域の寸法よりも大きく設定されていることが好ましい。
【0035】
伝達孔が上記の条件を満たす寸法に形成されることで、操作ノブのスライドに伴い、伝達シャフトが上流端部を支点として揺動した場合に、接触子が伝達孔の内壁面に接触し、接触子と伝達部との間で力の伝達が行なわれる。
【0036】
また、下流フィンを傾動させるための操作ノブの操作に伴い、伝達シャフトが上流端部を支点として揺動した場合、接触子が伝達孔内を上流フィンの軸に沿う方向へ移動し、接触子と伝達部との間で力の伝達が行なわれない。
【0037】
上記空調用レジスタにおいて、前記下流フィンの下流端縁は、同下流フィンの軸に沿う方向へ直線状に延びており、前記軸は、前記流れ方向における前記下流フィンの下流端部に設けられていることが好ましい。
【0038】
ここで、仮に、下流フィンの軸が空調用空気の流れ方向の下流端部よりも上流に設けられていると、同下流フィンが傾動されて、軸よりも下流部分が傾斜した場合、この傾斜部分が空調用レジスタの下流側から見え、見栄えを悪くする。また、軸が下流フィンにおいて、空調用空気の流れ方向の下流端部に設けられ、かつ下流フィンの下流端縁が下流側へ膨らむように湾曲している場合にも、上記と同様の見栄えの問題が生ずる。
【0039】
しかし、上記の構成によれば、下流端縁が軸に沿う方向へ直線状に延びる下流フィンにあって、その軸が上記流れ方向の下流端部に設けられている。そのため、下流フィンが傾動された場合に軸よりも下流部分が傾斜して見えることによる見栄えの低下が起こりにくい。
【発明の効果】
【0040】
上記空調用レジスタによれば、操作ノブをスライドさせた場合の操作トルクの変動を小さくして操作感の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
以下、車両用の空調用レジスタに具体化した第1実施形態について、
図1〜
図12を参照して説明する。
【0043】
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0044】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられ、その左右方向(車幅方向)における中央部、側部等には空調用レジスタが組込まれている。この空調用レジスタの主な機能は、空調装置から送られてきて、吹出口から車室内に吹き出す空調用空気の向きを変更すること、同空調用空気の吹出し量を調整すること等である。吹出し量の調整には、吹き出しを遮断することが含まれる。
【0045】
図1〜
図3に示すように、空調用レジスタは、リテーナ10、下流フィン群、上流フィン群、シャットダンパ52及び操作ノブ56を備えている。次に、空調用レジスタを構成する各部の構成について説明する。
【0046】
<リテーナ10>
図1及び
図2に示すようにリテーナ10は、空調装置の送風ダクト(図示略)と、インストルメントパネルに設けられた開口(図示略)とを繋ぐためのものであり、リテーナ本体11及びベゼル24を備えている。
【0047】
リテーナ10の内部空間は、空調用空気A1の流路(以下「通風路16」という)を構成している(
図6参照)。ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近い側を「上流」、「上流側」等といい、同空調装置から遠い側を「下流」、「下流側」等というものとする。
【0048】
リテーナ本体11は、その上半部を構成する上本体構成部12と、下半部を構成する下本体構成部14とを備えている。上本体構成部12は、自身の左右の各側部に設けられた係止孔13において、下本体構成部14の対応する箇所に設けられた係止突起15に係止されることにより、同下本体構成部14に連結されている。こうして形成されたリテーナ本体11は、上流端と下流端とが開放され、かつ左右方向の寸法が上下方向の寸法よりも大きな略四角筒状をなしている。
【0049】
上記通風路16は、リテーナ本体11の4つの壁部によって取り囲まれている。これらの4つの壁部は、左右方向に相対向する一対の側壁部17と、上下方向に相対向する上壁部18及び底壁部19とからなる。
【0050】
ベゼル24は、リテーナ10の最下流部分を構成する部材である。ベゼル24は、その上部の複数箇所及び下部の複数箇所に設けられた係止孔25において、上壁部18及び底壁部19の対応する箇所に設けられた係止突起21に係止されることにより、リテーナ本体11に連結されている。
図5に示すように、ベゼル24において、通風路16の下流端となる箇所には、空調用空気A1が吹き出される吹出口26が形成されている。ベゼル24の下流端面であって、吹出口26の周りの部分は、空調用レジスタの意匠面を構成している。
【0051】
吹出口26は、それぞれ略上下方向へ延びる一対の短辺部27と、それぞれ左右方向へ延び、かつ各短辺部27よりも長い一対の長辺部28とからなる。各短辺部27は、対応する側壁部17の下流に位置し(
図6参照)、各長辺部28は、上壁部18及び底壁部19のうち対応するものの下流に位置している(
図8参照)。こうした構成の吹出口26は、上下方向よりも左右方向に細長い長方形状をなしている。
【0052】
図7に示すように、上壁部18及び底壁部19のそれぞれにおいて下流部を除く大部分は、平坦な一般壁部22によって構成されている。両一般壁部22は互いに平行の関係にある。上壁部18の下流部は、通風路16から上方へ膨出する膨出壁部23によって構成されている。底壁部19の下流部は、通風路16から下方へ膨出する膨出壁部23によって構成されている。上下の各膨出壁部23の内部空間は、後述する下流フィン36が一般壁部22よりも通風路16の上側又は下側へ傾動するのを許容する傾動空間TSを構成している。
【0053】
図2及び
図6に示すように、リテーナ本体11における左右の各側壁部17とベゼル24との境界部分であって、上下方向へ互いに離間した2箇所には、それぞれ軸受部31が設けられている。これらの軸受部31は、上壁部18及び底壁部19に接近した箇所であって、ベゼル24における吹出口26の周辺部分の上流近傍に位置している。また、各側壁部17の下流端部であって、上本体構成部12と下本体構成部14との境界部分にも軸受部31が設けられている。この軸受部31は、上述した上下一対の軸受部31間の中央部分に位置している。
【0054】
図2及び
図8に示すように、上壁部18及び底壁部19の各一般壁部22において、上記軸受部31よりも上流であって、左右方向に互いに離間した複数箇所には、軸受部32がそれぞれ設けられている。さらに、各側壁部17において、軸受部32よりも上流であって、上本体構成部12と下本体構成部14との境界部分には軸受部33がそれぞれ設けられている(
図6参照)。
【0055】
<下流フィン群>
図3及び
図8に示すように、下流フィン群は、複数(3つ)の下流フィンからなる。各下流フィンは、吹出口26から吹き出す空調用空気A1の短辺部27に対しなす角度αを変更するために用いられている。3つの下流フィンを区別するために、配列方向(上下方向)の中央部に位置するものを「下流フィン35」といい、その上下両隣に位置するものを「下流フィン36」というものとする。両下流フィン36は、互いに同一の構成を有している。各下流フィン35,36の主要部は、長辺部28に沿って左右方向に延びる板状体によって構成されている。
【0056】
各下流フィン35,36の左右方向における両方の端面には、同方向へ延びる軸38がそれぞれ設けられている。各軸38は、空調用空気A1の流れ方向については、下流フィン35,36の下流端部に位置している。下流フィン35,36毎の軸38は、上記軸受部31により両側壁部17に支持されている(
図6参照)。
【0057】
下流フィン35,36の下流端縁37は、軸38に沿って左右方向へ直線状に延びている(
図6参照)。
図3及び
図6に示すように、各下流フィン35,36において一方(第1実施形態では右方)の軸38から上流へ偏倚した箇所には、同軸38に平行に延びる連結ピン39が設けられている。これらの連結ピン39は、上下方向へ延びる連結ロッド41によって相互に連結されている。上記連結ピン39及び連結ロッド41により、下流フィン35及び両下流フィン36を機械的に連結し、両下流フィン36を下流フィン35と同じ傾向の傾きとなるように同下流フィン35に同期した状態で傾動させるリンク機構LM1が構成されている。
【0058】
図3及び
図7に示すように、下流フィン35における左右方向の中央部には、空調用空気A1の流れ方向に延びて、上流端及び下流端がともに開放された筒状部42が一体に形成されている。筒状部42は、上下方向の寸法に対し左右方向の寸法が大きな偏平な形状をなしている。筒状部42のうち、上下の内壁部の各上流部であって、左右方向の中央部分には、正面視で円弧状をなす嵌合部43が形成されている(
図11(a)参照)。
【0059】
<上流フィン群>
図3、
図6及び
図8に示すように、上流フィン群は、通風路16内の下流フィン群よりも上流側に配列された複数の上流フィンからなる。各上流フィンは、吹出口26から吹き出す空調用空気A1の長辺部28に対しなす角度βを変更するために用いられている。各上流フィンは、それぞれ通風路16内で上下方向及び空調用空気A1の流れ方向へ延びる板状体によって構成されている。複数の上流フィンは、左右方向には略等間隔で互いに略平行に離間した状態で配設されている。
【0060】
ここで、複数の上流フィンを区別するために、左右方向における中央部分で互いに隣り合うものを「中央上流フィン45」といい、それ以外のものを「上流フィン46」というものとする。なお、複数の上流フィンを区別する必要がない場合には、単に、上流フィン45,46ということもある。
【0061】
各上流フィン45,46の上下方向における両方の端面には、同方向へ延びる軸47が設けられている。各軸47は、空調用空気A1の流れ方向については、上流フィン45,46の略中央部に位置している。上流フィン45,46毎の両軸47は、上記軸受部32により上壁部18及び底壁部19に対し傾動可能に支持されている(
図9参照)。
【0062】
各上流フィン45,46には、切欠き部48及び連結ピン49がそれぞれ設けられている。各切欠き部48は、空調用空気A1の流れ方向については、上流フィン45,46の下流部に位置している。また、各切欠き部48は、上下方向については、上流フィン45,46の中央部分に位置している。各連結ピン49は、切欠き部48の下面であって、軸47から下流側へ偏倚した箇所から上方へ突出している。上流フィン45,46毎の連結ピン49は、左右方向へ延びる連結ロッド51によって相互に連結されている。そして、これらの連結ピン49及び連結ロッド51により、全ての上流フィン45,46を同じ傾向の傾きとなるように同期した状態で傾動させるリンク機構LM2が構成されている。
【0063】
<シャットダンパ52>
図3、
図6及び
図7に示すように、シャットダンパ52は、リテーナ10内の上流フィン群よりも上流側で通風路16を開放及び閉鎖するためのものである。シャットダンパ52は、空調用空気A1の流れ方向よりも左右方向に細長い長方形の板状をなすダンパプレート53と、ダンパプレート53の周囲に装着されたシール部材54とを備えている。
【0064】
ダンパプレート53の左右方向の両端部には、同方向へ延びる軸55が設けられている。シャットダンパ52は、両軸55において両軸受部33により両側壁部17に支持されており、開位置と閉位置との間で傾動可能である。シャットダンパ52は、開位置では、
図7において実線で示すように、上下の両一般壁部22間の略中央部分で、それらの一般壁部22に対し略平行となって、通風路16を大きく開放する。シャットダンパ52は、閉位置では、同
図7において二点鎖線で示すように、両一般壁部22に対し大きく傾斜し、シール部材54においてリテーナ10の各内壁面に接触し、通風路16を閉鎖する。
【0065】
<操作ノブ56>
図4、
図11(a)及び
図12(a)に示すように、操作ノブ56は、下流フィン35,36、上流フィン45,46及びシャットダンパ52をそれぞれ傾動させる際に乗員によって操作される部材である。操作ノブ56は、ノブ本体57及び回動部71を備えている。
【0066】
ノブ本体57の左右方向における中央部分は、円盤状の基部58によって構成されている。基部58の中心部には、空調用空気A1の流れ方向に延びる中心孔59があけられている。基部58の下流端面であって中心孔59の周りには、それぞれその中心孔59に沿って湾曲した状態で下流側へ突出する一対の突部61が形成されている。
【0067】
また、基部58において、突部61の周りには、溝部62及び装着孔63がそれぞれ形成されている。溝部62は、基部58の下流端面において開口し、かつ中心孔59に沿って湾曲している。装着孔63は、基部58を空調用空気A1の流れ方向に貫通する横長の孔によって構成されている。
【0068】
ノブ本体57の左右方向における両側部は、同方向へ延びる棒状をなす一対の腕部64によって構成されている。各腕部64には、上流端面において開口した状態で左右方向へ延びる装着溝部65(
図8)が形成されている。なお、基部58と各腕部64との境界部分には補強リブ66(
図9)が形成されている。
【0069】
上記構成のノブ本体57は、基部58が筒状部42に対向し、かつ両腕部64が下流フィン35における筒状部42の左右両側部に対向するように、同下流フィン35の下流側に配置されている。さらに、ノブ本体57は、各腕部64において下流フィン35の上記両側部に対し、左右方向へスライド可能に装着されている。この装着は、各腕部64が装着溝部65において上記両側部に対し、下流側から嵌合されることでなされている。
【0070】
なお、
図3及び
図6に示すように、下流フィン35の下流端であって、筒状部42の左右両側部には、それぞれ係止爪67が形成されている。これらの係止爪67が、各腕部64に設けられた係止溝部(図示略)に係止されることで、ノブ本体57の下流フィン35からの脱落が規制されている。
【0071】
図4、
図11(a)及び
図12(a)に示すように、回動部71は、摘み部72及び軸部76を備えている。摘み部72は、上記基部58と同程度の外径を有する円盤状をなしており、その中心軸線を基部58の中心軸線に合致させた状態で、同基部58の下流側に配置されている。摘み部72には、その上流端面において開口する凹部73が形成されており、この凹部73内に基部58の両突部61が入り込んでいる。摘み部72において凹部73を取り囲む周壁部74には、上流側へ突出する突起部75(
図11(a)参照)が形成されており、この突起部75が基部58の溝部62に係合されている。突起部75は、摘み部72の回動に伴い溝部62内で中心孔59の周りを旋回する。表現を変えると、突起部75の旋回は、溝部62内でのみ許容される。突起部75は、溝部62の周方向における端部に当接することで、それ以上旋回することを規制される。このようにして、摘み部72が所定の角度範囲内で回動し得るように構成されている。
【0072】
軸部76は、空調用空気A1の流れ方向に延びる軸本体77と、その軸本体77の上流端に一体に形成された外殻部78とを備えている。軸本体77は、筒状部42に挿通されるとともに上記基部58の中心孔59に回動可能に挿通されており、その下流部において摘み部72に一体回動可能に連結されている。
【0073】
外殻部78は軸本体77よりも大径の略円筒状をなしており、下流フィン35の筒状部42内であって、基部58よりも上流、より詳しくは、下流フィン35の軸38よりも上流へ離れた箇所に配置されている。外殻部78は、筒状部42における上下の両嵌合部43に摺動可能に嵌合されている。外殻部78には、その上流端面において開口し、かつ球面状の内面を有する係合凹部79が形成されている。外殻部78の上流端には、係合凹部79から径方向であって互いに反対方向へ延びる一対の伝達凹部81(
図4参照)が形成されている。
【0074】
なお、上記基部58の装着孔63には、弾性部材82が嵌合により装着されている。弾性部材82は、下流フィン35の上記筒状部42に下流側から弾性的に接触している(
図11(a)参照)。この形態の接触により、操作ノブ56がスライド操作されるときに弾性部材82と下流フィン35(筒状部42)との間に摺動抵抗が発生し、適度な操作荷重が付与される。また、摘み部72の凹部73内であって、両突部61の周りには、弾性部材83が嵌合により装着されている。弾性部材83は、両突部61に弾性的に接触している。この形態の接触により、摘み部72が回動操作されるときに、弾性部材83と両突部61との間に摺動抵抗が発生し、適度な操作荷重が付与される。
【0075】
さらに、操作ノブ56の動きを、下流フィン35、両中央上流フィン45及びシャットダンパ52のそれぞれに伝達して、これらを傾動させるために次の構成が採用されている。複数の上流フィン45,46のうち左右方向の中央部分で隣り合うもの(一対の上流フィン45)の間には、空調用空気A1の流れ方向に沿って延びる伝達シャフト84が、連結ロッド51に接近した状態で配置されている。
【0076】
伝達シャフト84の下流端部は、下流自在継手UJ1により回動部71に駆動連結されている。より詳しくは、伝達シャフト84の下流端部には、球状の係合部85が形成されている。係合部85には、径方向であって互いに反対方向へ突出する一対の伝達ピン86が形成されている。係合部85は、その外面を、係合凹部79の球面状の内面に接触させた状態で、外殻部78に対し摺動可能に係合されている。係合部85の両伝達ピン86は、外殻部78の対応する伝達凹部81に係合されている。そして、これらの外殻部78及び係合部85により下流自在継手UJ1が構成されている。
【0077】
伝達シャフト84の上流端部は、傘歯車機構BGMを介してシャットダンパ52に駆動連結されている。傘歯車機構BGMは、シャットダンパ52の軸55とは異なる方向へ延びる伝達シャフト84の回動を、そのシャットダンパ52に伝達するためのものである。傘歯車機構BGMは、シャットダンパ52に設けられた従動側の傘歯車91(
図3参照)と、同傘歯車91に噛み合わされた駆動側の傘歯車94とを備えている。従動側の傘歯車91は、シャットダンパ52のダンパプレート53に一体に形成されている。傘歯車91は、左右方向へ延びる軸部92を有している。軸部92は、リテーナ10の上壁部18から垂下する支持部93によって回動可能に支持されている(
図9、
図10参照)。駆動側の傘歯車94は、空調用空気A1の流れ方向へ延びる外殻部95を有している。外殻部95は、上流端が閉塞され、かつ下流端が開放された略円筒状をなしている。外殻部95は、上壁部18において上記支持部93に接近した箇所から垂下する別の支持部96によって回動可能に支持されている。
【0078】
外殻部95の内部空間は、円筒状の内面を有する係合凹部97となっている。係合凹部97の内面であって、外殻部95の中心軸線を挟んで相対向する箇所には、同中心軸線に沿って延びる一対の係合溝部98(
図4参照)が形成されている。
【0079】
一方、伝達シャフト84の上流端部には、球状の係合部88が形成されている。係合部88には、径方向であって互いに反対方向へ突出する伝達ピン89が形成されている。係合部88は、その外面を、係合凹部97の円筒状の内面に接触させた状態で、外殻部95に対し摺動可能に係合されている。両伝達ピン89は、外殻部95の対応する係合溝部98に係合されている。そして、これらの外殻部95及び係合部88により、上流自在継手UJ2が構成されている。この上流自在継手UJ2では、伝達シャフト84は、球状の係合部88を支点として外殻部95に対し揺動可能である。また、伝達シャフト84は、その回動を係合部88の両伝達ピン89により駆動側の傘歯車94に伝達可能である。さらに、各伝達ピン89は、対応する係合溝部98に沿って空調用空気A1の流れ方向へ移動可能である。
【0080】
伝達シャフト84のうち両中央上流フィン45間に位置する部分と、連結ロッド51のうち両中央上流フィン45間に位置する部分とには、次の2つの機能を有する伝達機構部101が設けられている。1つ目の機能は、操作ノブ56のスライドに伴う伝達シャフト84の係合部88を支点とした左右方向の揺動を、両中央上流フィン45に伝達することである。2つ目の機能は、下流フィン35を傾動させるための操作ノブ56の操作に伴う伝達シャフト84の係合部88を支点とした上下方向の揺動が、両中央上流フィン45に伝達されるのを遮断することである。
【0081】
図3、
図11(a)及び
図12(a)に示すように、連結ロッド51のうち、両中央上流フィン45間に位置する部分には、伝達孔103を有する伝達部102が一体に形成されている。伝達孔103は、伝達部102において空調用空気A1の流れ方向に貫通している。伝達部102は、連結ロッド51の一部によって両中央上流フィン45に動力伝達可能に連結されている。伝達シャフト84は、その長さ方向の中間部であって、係合部85寄りの箇所において伝達孔103に挿通されている。伝達シャフト84の伝達孔103に対する挿通箇所には、その伝達シャフト84の直径よりも大きな直径を有する球状の接触子87が形成されている。
【0082】
伝達孔103は、縦長の長孔形状に形成されている。これは、伝達部102における伝達孔103の内壁面が、操作ノブ56のスライドに伴い、伝達シャフト84が上流端部を支点として左右方向へ揺動した場合にのみ、その揺動を伝達部102に伝達するためである。
【0083】
より詳しくは、伝達孔103では、下流フィン35の軸38に沿う方向(左右方向)の寸法と、上流フィン45,46の軸47に沿う方向(上下方向)の寸法とが次の条件を満たす大きさに設定されている。
【0084】
条件1:伝達孔103の左右方向の寸法は、伝達部102がないとした場合であって、操作ノブ56のスライドに伴い、伝達シャフト84が上流端部を支点として左右方向へ揺動した場合に、接触子87が移動する領域の寸法よりも小さい。
【0085】
第1実施形態では、伝達孔103の左右方向の寸法は、接触子87の直径よりも僅かに大きな寸法に設定されている。
条件2:伝達孔103の上下方向の寸法は、伝達部102がないとした場合であって、下流フィン35を傾動させるための操作ノブ56の操作に伴い、伝達シャフト84が上流端部を支点として上下方向へ揺動した場合に、接触子87が移動する領域の寸法よりも大きい。
【0086】
上述した連結ロッド51に設けられ、かつ伝達孔103を有する伝達部102と、伝達シャフト84における接触子87とによって伝達機構部101が構成されている。
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0087】
図7の二点鎖線は、シャットダンパ52が閉位置にあるときの状態を示している。この状態では、通風路16がシャットダンパ52によって閉塞される。通風路16のシャットダンパ52よりも下流では空調用空気A1の流通が遮断され、吹出口26からの空調用空気A1の吹き出しが停止される。
【0088】
これに対し、
図7の実線は、シャットダンパ52が開位置にあるときの状態を示している。この状態では、通風路16が全開となり、空調用空気A1がシャットダンパ52の上側と下側とに分かれて流れる。シャットダンパ52を通過した空調用空気A1は、上流フィン群、下流フィン群等に沿って流れた後、吹出口26から吹き出す。
【0089】
シャットダンパ52の閉位置から開位置への切替え、及び開位置から閉位置への切替えは、
図11(a)及び
図12(a)に示すように、操作ノブ56における摘み部72の回動操作を通じて行なわれる。摘み部72が乗員によって回動操作されると、軸部76が摘み部72と一緒になって回動する。軸部76の回動は、その外殻部78の両伝達凹部81(
図4参照)に係合された両伝達ピン86を介して伝達シャフト84の係合部85に伝達される。伝達シャフト84がその中心軸線を中心として回動し、その回動が上流側の係合部88の両伝達ピン89を介して駆動側の傘歯車94の外殻部95に伝達される。駆動側の傘歯車94が伝達シャフト84と同方向へ回動する。この回動は、従動側の傘歯車91を介してシャットダンパ52に伝達される。この際、伝達される回動の方向が傘歯車機構BGMにより変更される。シャットダンパ52が両軸55を支点として傾動されることにより、同シャットダンパ52の開度が変化する。突起部75が溝部62の周方向における一方の端部に当接するまで摘み部72が回動されると、シャットダンパ52が開位置に達し、通風路16を大きく開放する。突起部75が溝部62の周方向における他方の端部に当接するまで摘み部72が回動されると、シャットダンパ52が閉位置に達し、通風路16を閉鎖する。
【0090】
上記のように、摘み部72を回動操作することでシャットダンパ52の開度を変化させ、通風路16においてシャットダンパ52を通過する空調用空気A1の量を調整することができる。
【0091】
また、上記のように伝達シャフト84が回動された場合、その回動は両中央上流フィン45に伝達されない。上記回動に伴い接触子87が伝達孔103内で回動し、接触子87と伝達部102との間で力の伝達が行なわれないからである。そのため、上流フィン45,46は傾動しない。また、伝達シャフト84と筒状部42との間で力の伝達が行なわれない。そのため、下流フィン35,36も傾動しない。
【0092】
なお、以下の説明は、シャットダンパ52が開位置にあることを前提としている。
図7及び
図8は、空調用レジスタの中立状態を示している。中立状態では、上下の両下流フィン36が、対応する傾動空間TSの通風路16との境界部分で、上下の両一般壁部22に対し略平行にされる。中央の下流フィン35も両一般壁部22に対し略平行にされる。上下両下流フィン36は、ベゼル24における吹出口26の周辺部分の上流に位置し、隠れて見えにくい。空調用レジスタの下流側(車室側)からは、複数の下流フィン35,36のうち中央に位置する下流フィン35が見えるにとどまり、見栄えがよい。また、中立状態では、上流フィン45,46が左右の両側壁部17に対し略平行にされる(
図6参照)。
【0093】
従って、シャットダンパ52を通過した空調用空気A1は、上流フィン45,46及び側壁部17に沿って流れた後、下流フィン35,36等に沿って流れて吹出口26から真っ直ぐ吹き出す。
【0094】
また、このときには、各傾動空間TSは、通風路16との境界部分で、対応する下流フィン36によって塞がれた状態となる。そのため、傾動空間TSに流入する空調用空気A1は少ない。
【0095】
このとき、操作ノブ56は下流フィン35のうち、左右方向の中央部分に位置している。回動部71は、筒状部42の左右方向における中央部分に位置している。回動部71における軸部76の中心軸線は、下流フィン35と同様、上下の両一般壁部22に対し略平行になっている。伝達シャフト84は、両一般壁部22に対しても、両側壁部17に対しても略平行になっている。
【0096】
上記中立状態から、操作ノブ56に対し上流フィン45,46の軸47に沿う方向である上下方向、例えば、上方へ向かう力が加えられると、下流フィン35がその軸38を支点として
図11(b)の反時計回り方向へ傾動させられる。この傾動は、リンク機構LM1(
図3、
図6参照)を介して両下流フィン36に伝達される。この伝達により、両下流フィン36が中央の下流フィン35に同期して、操作ノブ56の操作された側へ傾動する。操作ノブ56及び各下流フィン35,36はともに、下流側ほど高くなるように傾斜した状態となる。特に、下側の下流フィン36は、その全体が下側の傾動空間TSに入り込むことで、上記の傾斜状態になる。
【0097】
空調用空気A1は、上記のように傾動された下流フィン35,36に沿って流れることで、向きを変えられて吹出口26から斜め上方へ向けて吹き出す。空調用空気A1の短辺部27に対しなす角度α(
図8参照)が、中立状態のときよりも大きくなる。
【0098】
ここで、仮に、下流フィン35,36の軸38が空調用空気A1の流れ方向の下流端部よりも上流に設けられているとすると、同下流フィン35,36が傾動されて、軸38よりも下流部分が傾斜した場合、この傾斜部分が空調用レジスタの下流側から見え、見栄えを悪くする。また、軸38が下流フィン35,36の左右方向における両端部であって、空調用空気A1の流れ方向の下流端部に設けられ、かつ下流フィン35,36の各下流端縁37が下流側へ膨らむように湾曲している場合にも、上記と同様の見栄えの問題が生ずる。下流フィン35,36には、湾曲しているとはいえ、両軸38よりも下流に位置する部分があり、下流フィン35,36が傾動されたときに、この部分が下流側から見えるためである。
【0099】
しかし、第1実施形態では、下流フィン35,36として、下流端縁37が軸38に沿う方向である左右方向へ直線状に延びるもの、すなわち、上述したような湾曲した部分のないものが採用されている。軸38は、こうした下流フィン35,36の下流端部に設けられている。そのため、下流フィン35,36において、軸38よりも下流部分が傾斜して見えることがなく、見栄えが良好となる。
【0100】
こうした効果は、空調用レジスタがインストルメントパネルの左右方向における複数箇所に組込まれた場合に特に有効である。下流フィン35,36の軸38が空調用空気A1の流れ方向の下流端部よりも上流に設けられている空調用レジスタの場合には、隣り合う空調用レジスタ間で下流フィン35,36の傾動方向が異なると、軸38よりも下流の傾斜部分の高さが空調用レジスタ毎に異なって不揃いとなる。このことが、複数の空調用レジスタを下流側から見た場合の見栄えをさらに悪くする。
【0101】
この点、第1実施形態では、下流フィン35,36の下流端縁37の高さが、隣り合う空調用レジスタ間で同一となる。そのため、この点でも、空調用レジスタを下流側から見た場合の見栄えが良好となる。
【0102】
なお、下流自在継手UJ1は塊となるため、見栄えの低下の一因となり得る。この傾向は、特に、下流自在継手UJ1が下流フィン35の下流側に位置するほど強くなる。空調用レジスタを下流側から見た場合、下流自在継手UJ1の塊が目に入りやすくなるからである。
【0103】
しかし、第1実施形態では、上述したように下流自在継手UJ1(係合部85及び外殻部78)は、下流フィン35の軸38よりも上流に位置している。そのため、下流自在継手UJ1の塊が見栄えを低下させる度合いを、同下流自在継手UJ1が下流フィン35の軸38と同一線上に位置している場合よりも小さくすることができる。
【0104】
上記操作ノブ56の傾動は、下流フィン35の軸38よりも上流側の下流自在継手UJ1を介して伝達シャフト84に伝達される。そのため、伝達シャフト84は、上流自在継手UJ2、より詳しくは、傘歯車94の外殻部95に係合された球状の係合部88を支点として、上下方向へ揺動する。例えば、上記のように操作ノブ56に対し上方へ向かう力が加えられると、軸部76は上流側ほど低くなるように傾斜する。そのため、伝達シャフト84は、係合部88を支点として下方へ揺動する。伝達シャフト84は、下流側ほど低くなるように傾斜した状態となる。
【0105】
ただし、伝達シャフト84の上記揺動は、両中央上流フィン45間において、伝達シャフト84及び連結ロッド51に設けられた伝達機構部101によっては、両中央上流フィン45に伝達されない。これは、伝達孔103の上下方向の寸法が上記条件2を満たす大きさに設定されていることから、上記揺動に伴い伝達シャフト84の接触子87が伝達孔103内を上記方向(下方)へ移動し、接触子87と伝達部102との間で力の伝達が行なわれないからである。伝達孔103の上下の両内壁面は接触子87にも、伝達シャフト84の接触子87とは異なる箇所にも接触しない。その結果、全ての上流フィン45,46が傾動しない。
【0106】
また、上記中立状態から、操作ノブ56に対し、下流フィン35の軸38に沿う方向である左右方向、例えば、右方へ向かう力が加えられると、
図12(b)に示すように、操作ノブ56が回動部71及び下流自在継手UJ1を伴って同方向へスライドされる。そのため、伝達シャフト84は、球状の係合部88を支点として、上記方向(右方)へ揺動する。
【0107】
伝達シャフト84の上記揺動は、両中央上流フィン45間において、伝達シャフト84及び連結ロッド51に設けられた伝達機構部101により両中央上流フィン45に伝達される。これは、伝達孔103の左右方向の寸法が上記条件1を満たす大きさに設定されていることから、揺動に伴い伝達シャフト84の接触子87が伝達孔103の左右の内壁面に接触し、接触子87と伝達部102との間で力の伝達が行なわれるからである。伝達部102が連結ロッド51の他の部分と一緒に右方へ移動する。この動きが両中央上流フィン45に伝達されるとともに、他の上流フィン46に伝達される。その結果、両中央上流フィン45及び全ての上流フィン46が、それぞれ軸47を支点として
図12(b)の反時計回り方向へ傾動する。
【0108】
この際、伝達孔103の左右の両内壁面は、伝達シャフト84の接触子87とは異なる箇所には接触しない。空調用空気A1は、上記のように傾動された上流フィン45,46に沿って流れることで、向きを変えられて吹出口26から右方へ吹き出す。空調用空気A1の長辺部28に対しなす角度β(
図6参照)が、中立状態のときよりも大きくなる。
【0109】
なお、以上は、中立状態を基準とし、この中立状態から操作ノブ56を傾動させたりスライドさせたりした場合の作用であるが、中立状態とは異なる状態から操作ノブ56を傾動させたりスライドさせたりした場合にも、空調用レジスタの各部は上記と同様に作動する。また、回動部71における摘み部72を回動させてシャットダンパ52を傾動させる操作は、上流フィン45,46が両側壁部17に対し傾斜した状態であっても、下流フィン35,36が一般壁部22に対し傾斜した状態であっても可能である。これは、伝達シャフト84の下流端部が下流自在継手UJ1によって回動部71に連結され、上流端部が上流自在継手UJ2によってシャットダンパ52に連結されているからである。伝達シャフト84の中心軸線と回動部71の中心軸線とが交差していても、力の伝達が行なわれる。また、伝達シャフト84の中心軸線と外殻部95の中心軸線とが交差していても、力の伝達が行なわれるからである。
【0110】
このように、回動部71を有する操作ノブ56を操作することで、下流フィン35,36、上流フィン45,46及びシャットダンパ52をそれぞれ傾動させることができる。そのため、回動部71を操作ノブ56とは別の箇所に設けた場合とは異なり、回動部71の設置スペースを別途設けなくてもすむ。
【0111】
また、伝達シャフト84が、複数の上流フィン45,46のうち中央部分で隣り合うもの(一対の上流フィン45)の間に配置されている。さらに、伝達シャフト84の揺動を両中央上流フィン45に伝達したり、その伝達を遮断したりする伝達機構部101が、両中央上流フィン45間において、連結ロッド51及び伝達シャフト84に設けられている。
【0112】
そのため、操作ノブ56がスライドされたときに上流フィン45,46に対し行なわれる伝達機構部101による力の伝達が、配列方向の中央部分に位置するもの(一対の中央上流フィン45)で行なわれることとなる。その結果、操作ノブ56をスライドさせた場合に操作トルクが大きく変動することが抑制される。力の伝達のために、フォーク部124及び伝達軸部115の組合わせ(又はラック及びピニオンの組合わせ)が用いられ、その力の伝達が、複数の上流フィン114のうち、配列方向の中央部分から外れた箇所で行なわれる特許文献1に比べ操作感を向上させることができる。
【0113】
なお、
図11(a),(b)に示すように、操作ノブ56の傾動に伴い、下流自在継手UJ1の外殻部78が下流フィン35の軸38の周りを旋回する。下流自在継手UJ1の外殻部78と上流自在継手UJ2の外殻部95との間隔が、同外殻部78の上下方向の位置に応じて変化する。上記間隔は、中立状態のときに最小となり、操作ノブ56が、傾動に伴い中立状態での位置から遠ざかるに従い増加する。
【0114】
また、
図12(a),(b)に示すように、操作ノブ56のスライドに伴い、下流自在継手UJ1の外殻部78も同方向へ移動する。上記両外殻部78,95の間隔が、同外殻部78の左右方向の位置に応じて変化する。上記間隔は、中立状態のときに最小となり、操作ノブ56が、スライドに伴い中立状態での位置から遠ざかるに従い増加する。
【0115】
これに対し、伝達シャフト84は伸縮せず、下流端部の係合部85と上流端部の係合部88との間隔は変化しない。
この点、伝達シャフト84の係合部88は、伝達ピン89が対応する係合溝部98に沿って動くことで、空調用空気A1の流れ方向に移動可能である。そのため、操作ノブ56が傾動又はスライドされる際には、係合部88が上記流れ方向へ移動しながら、その係合部88を支点として伝達シャフト84が揺動することで、上記間隔の変化が吸収される。伝達シャフト84の揺動が支障なくスムーズに行なわれる。
【0116】
さらに、第1実施形態では、連結ロッド51の一部として設けられた伝達部102が、伝達機構部101の一部として機能する。そのため、この伝達部102を連結ロッド51及び伝達シャフト84とは別の箇所に設けなくてもすむ。
【0117】
(第2実施形態)
次に、車両用の空調用レジスタに具体化した第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0118】
第2実施形態では、伝達機構部101の一部を構成する伝達部102が連結ロッド51とは異なる箇所に設けられている。
図13に示すように、各上流フィン45,46における連結ピン49は、同上流フィン45,46のうち、軸47から上流側へ偏倚した箇所に設けられている。各連結ピン49は、上下方向については、各上流フィン45,46の上側近傍又は下側近傍に設けられてもよい。この場合には、第1実施形態とは異なり切欠き部48が不要となる。また、第1実施形態と同様に、各上流フィン45,46の上流部に切欠き部48が設けられ、その切欠き部48内に連結ピン49が設けられてもよい。上流フィン45,46毎の連結ピン49は、左右方向へ延びる連結ロッド51によって相互に連結されている。
【0119】
また、各中央上流フィン45には、切欠き部104及び連結ピン105が設けられている。各切欠き部104は中央上流フィン45の下流部に設けられている。各連結ピン105は、切欠き部104の上面又は下面であって、軸47から下流側へ偏倚した箇所から突出している。両連結ピン105は、左右方向へ延びる副連結ロッド106によって相互に連結されている。副連結ロッド106は、2つの中央上流フィン45のみを連結するものであり、全ての上流フィン45,46を連結する連結ロッド51よりも左右方向に短く形成されている。
【0120】
両中央上流フィン45間において、副連結ロッド106のうち伝達シャフト84と接近する部分には、伝達孔103を有する伝達部102が一体に形成されている。伝達シャフト84の伝達孔103に対する挿通箇所には、球状の接触子87が形成されている。これらの伝達部102及び接触子87は、第1実施形態で説明したものと同様の形状や大きさを有している。伝達孔103の左右方向の寸法、及び上下方向の寸法が上記条件1及び条件2を満たす大きさに形成されている点も第1実施形態と同様である。
【0121】
伝達シャフト84のうち両中央上流フィン45間に位置する部分に設けられた接触子87と、副連結ロッド106に設けられた、伝達孔103を有する伝達部102とによって伝達機構部101が構成されている。
【0122】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記のように構成された第2実施形態では、操作ノブ56に対し、下流フィン35の軸38に沿う方向である左右方向へ力が加えられると、伝達シャフト84が上流端部の係合部88を支点として同方向へ揺動する。伝達シャフト84の揺動は、両中央上流フィン45間において、伝達シャフト84及び副連結ロッド106に設けられた伝達機構部101により両中央上流フィン45に伝達される。各中央上流フィン45が軸47を支点として傾動する。両中央上流フィン45の傾動は、連結ロッド51を介して他の上流フィン46に伝達されて、同上流フィン46も軸47を支点として両中央上流フィン45と同方向へ傾動する。
【0123】
また、操作ノブ56に対し、上流フィン45,46の軸47に沿う方向である上下方向へ力が加えられると、伝達シャフト84が係合部88を支点として同方向へ揺動する。ただし、伝達シャフト84の上記揺動は、両中央上流フィン45間において、伝達シャフト84及び副連結ロッド106に設けられた伝達機構部101によっては、両中央上流フィン45に伝達されず、全ての上流フィン45,46が傾動しない。
【0124】
操作ノブ56における摘み部72が回動操作されると、その回動は、下流自在継手UJ1、伝達シャフト84及び上流自在継手UJ2を介してシャットダンパ52に伝達されて同シャットダンパ52が傾動される。しかし、伝達シャフト84の回動は、下流フィン35,36にも副連結ロッド106にも伝達されないため、いずれの上流フィン45,46も下流フィン35,36も傾動しない。
【0125】
従って、第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。ただし、第2実施形態では、連結ロッド51とは別に副連結ロッド106が必要となる。反面、第2実施形態では、連結ロッド51の位置が伝達シャフト84によって制約を受けにくい。そのため、連結ロッド51を上流フィン45,46の上側や下側に配置して、空調用空気A1の流れに及ぼす影響を小さくすることが可能である。
【0126】
また、副連結ロッド106とは別の部材によって構成された連結ロッド51を、空調用レジスタの下流側(車室側)から見えにくい箇所に設置することで、意匠性の向上を図ることができる。例えば、連結ロッド51を上記のように上流フィン45,46の上側や下側に配置することで、この効果を得ることができる。
【0127】
なお、上記各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・上記各実施形態では、下流自在継手UJ1として、伝達シャフト84の下流端部における球状の係合部85の外面を、外殻部78における係合凹部79の球面状の内面に面接触させた、いわゆるボールジョイントが用いられたが、これとは異なるタイプが採用されてもよい。ただし、下流自在継手UJ1は、軸部76及び伝達シャフト84を、それらの交差する角度が自由に変化し得るように連結するものであるといった条件を満たす必要がある。
【0128】
例えば、互いに直交する2つの軸部からなる十字状の中間軸が、軸部76及び伝達シャフト84の間に介在される。軸部76の上流端が二股状に分岐され、これらが中間軸の一方の軸部の両端部に回動可能に連結される。伝達シャフト84の下流端が二股状に分岐され、これらが中間軸の他方の軸部の両端部に回動可能に連結されてもよい。
【0129】
・第2実施形態における連結ロッド51は、左右方向に延びる単一の部材からなり、かつ全ての上流フィン45,46の連結ピン49を連結するものであってもよい。これに代えて、連結ロッド51は、それぞれ左右方向に延びる左右一対の連結ロッドによって構成されてもよい。この場合、右側の中央上流フィン45の連結ピン49と、それよりも右側に位置する上流フィン46の連結ピン49とが右側の連結ロッドによって連結される。左側の中央上流フィン45の連結ピン49と、それよりも左側に位置する上流フィン46の連結ピン49とが左側の連結ロッドによって連結される。
【0130】
・第1実施形態において、連結ロッド51は、上流フィン45,46をそれらの上流部で相互に連結するものであってもよい。この場合、切欠き部48が各上流フィン45,46の上流部に設けられ、連結ピン49が軸47よりも上流に設けられてもよい。
【0131】
・第2実施形態において、連結ロッド51は、上流フィン45,46をそれらの下流部で相互に連結するものであってもよい。この場合、切欠き部104、連結ピン105及び副連結ロッド106は、両中央上流フィン45の上流部に設けられてもよい。
【0132】
・下流フィン36及び上流フィン46の数が、上記各実施形態とは異なる数に変更されてもよい。
・上記空調用レジスタは、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に設けられる空調用レジスタにも適用可能である。
【0133】
・上記空調用レジスタは、空調装置から送られてきた空調用空気の向きを上流フィン及び下流フィンによって変更して室内に吹き出すとともに、その吹き出しをシャットダンパによって遮断することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【0134】
・上記空調用レジスタは、吹出口が縦長となるように配置されるタイプの空調用レジスタにも適用可能である。この場合、下流フィンとして、それぞれ上下方向へ延びるものが用いられ、これらが左右方向に配列される。複数の上流フィンとして、それぞれ左右方向へ延びるものが用いられ、これらが互いに上下方向に離間した状態で配列される。
【0135】
・空調用レジスタは、吹出口が矩形状をなす非薄型の空調用レジスタにも適用可能である。