(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象物に対して非接触で配置された非接触温度センサーと、前記非接触温度センサーにより検出された温度に基づき前記測定対象物の表面温度を求めるセンサー制御部とを備え、
前記非接触温度センサーは、
測定対象物の表面温度に対応する非接触温度を検出する非接触温度検出部と、
当該非接触温度センサーの周囲温度を検出する周囲温度検出部と、
当該非接触温度センサーについて予め設定された個体別補正係数を記憶した記憶部と、を備え、
前記センサー制御部は、
前記測定対象物の加熱開始に際し、前記個体別補正係数を前記記憶部から取得すると共に、前記加熱開始より一定時間経過したときに前記非接触温度検出部により検出された非接触温度及び前記周囲温度検出部により検出された周囲温度を取得し、この取得した個体別補正係数、非接触温度、及び周囲温度を用いて前記測定対象物の表面温度を算出し、この算出した表面温度を、前記取得した非接触温度及び周囲温度と共に前記記憶部に記憶させておき、
次回の前記測定対象物の再度の加熱開始に際し、前記再度の加熱開始より一定時間経過したときに前記非接触温度検出部により検出された非接触温度を取得して、この取得した非接触温度と前記記憶部に記憶されている非接触温度の差を求め、この差が予め設定された非接触温度の検出温度閾値以上である場合に、前記非接触温度検出部に異常があると判定し、
前記表面温度、前記非接触温度、及び前記周囲温度が前記記憶部に記憶されていない場合には、前記非接触温度センサーが未使用のものであると判定する非接触温度センサー異常判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態にかかる非接触温度センサー異常判定装置について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る一実施形態の非接触温度センサー異常判定装置が適用された画像形成装置の構造を示す正面断面図である。この画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えたMFP(複合機)である。この画像形成装置1は、装置本体2に、画像読取装置(ISU;Image scanner unit)5、操作部47、画像形成部120、定着装置13、及び給紙部14等を設けて構成される。
【0017】
操作部47は、利用者により操作されて、画像形成動作や画像読取動作等の実行指示を受け付ける。
【0018】
画像読取動作を行う場合、画像読取装置5は、原稿の画像を光学的に読取って、画像データを生成する。画像読取装置5により生成された画像データは、内蔵HDD又はネットワーク接続されたコンピューター等に保存される。
【0019】
画像形成動作を行う場合は、上記の画像読取動作により生成された画像データ、ネットワーク接続されたコンピューターやスマートフォン等の端末装置から受信した画像データ、又は内蔵HDDに記憶されている画像データ等に基づいて、画像形成部120が、給紙部14から供給される記録媒体としての記録紙Pにトナー像を形成する。
【0020】
画像形成部120は、マゼンタ用の画像形成ユニット12M、シアン用の画像形成ユニット12C、イエロー用の画像形成ユニット12Y、及びブラック用の画像形成ユニット12Bkを備えている。各画像形成ユニット12M、12C、12Y、及び12Bkは、感光体ドラム122と、感光体ドラム122の表面を均一に帯電させる帯電装置と、感光体ドラム122の表面を露光して、その表面に静電潜像を形成する露光装置(LSU;Laser scanning units)123と、トナーを用いて、感光体ドラム122の表面の静電潜像をトナー像に現像する現像装置124と、1次転写ローラー126とをそれぞれ備えている。
【0021】
カラー印刷を行う場合、各画像形成ユニット12M、12C、12Y、及び12Bkにおいては、感光体ドラム122の表面を均一に帯電させてから露光して、その表面にカラーの色成分の画像に対応する静電潜像を形成し、感光体ドラム122の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム122上にその色成分のトナー像を形成し、トナー像を1次転写ローラー126により駆動ローラー125A及び従動ローラー125Bに張架されている中間転写ベルト125上に1次転写させる。
【0022】
中間転写ベルト125は、その外周面にトナー像が転写される像担持面が設定されており、感光体ドラム122の周面に当接した状態で駆動ローラー125Aによって駆動される。中間転写ベルト125は、各感光体ドラム122と同期しながら、駆動ローラー125Aと従動ローラー125Bとの間を無端走行する。
【0023】
中間転写ベルト125上に転写される各色成分のトナー画像は、転写タイミングを調整して中間転写ベルト125上で重ね合わされ、カラーのトナー像となる。2次転写ローラー210は、中間転写ベルト125の表面に形成されたカラーのトナー像を、該2次転写ローラー210と中間転写ベルト125の間のニップ部Nにおいて給紙部14から搬送路190を通じて搬送されてきた記録紙Pに2次転写させる。
【0024】
この後、定着装置13で記録紙Pが加熱及び加圧されて、記録紙P上のトナー像が熱圧着により定着され、更に記録紙Pが排出ローラー対159を通じて排出トレイ151に排出される。
【0025】
給紙部14は、複数の記録紙Pを収容しており、ピックアップローラー145を回転駆動して、記録紙Pを搬送路190へと搬送供給する。
【0026】
次に、画像形成装置1の構成を説明する。
図2は、画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0027】
画像形成装置1は、制御ユニット60、画像読取装置5、定着装置13、画像形成部120、操作部47、画像メモリー62、HDD63、ファクシミリ通信部64、及びネットワークインターフェイス部66等を備えて構成される。なお、
図1を用いて説明した構成要素と同じものには同じ番号を付している。
【0028】
制御ユニット60は、CPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、及び専用のハードウェア回路等から構成される。制御ユニット60は、主制御部61を備える。
【0029】
主制御部61は、制御ユニット60、画像読取装置5、定着装置13、画像形成部120、操作部47、画像メモリー62、HDD63、ファクシミリ通信部64、及びネットワークインターフェイス部66等と接続され、これらの制御を行って、画像形成装置1を全体的に制御する。
【0030】
ファクシミリ通信部64は、図略の符号化/復号化部、変復調部、及びNCU(Network Control Unit)を備え、公衆電話回線網を用いてのファクシミリ通信を行うものである。
【0031】
ネットワークインターフェイス部66は、LANボード等の通信モジュールから構成され、ネットワークインターフェイス部66に接続されたLAN等を介して、ローカルエリア内又はインターネット上のパーソナルコンピューター等の端末装置67と種々のデータ通信を行う。
【0032】
画像メモリー62は、画像読取装置5により読取られた原稿の画像データを一時的に記憶したり、画像形成部120のプリント対象となる画像データを一時的に保存したりする領域である。HDD63は、画像データ等を記憶する大容量の記憶装置である。
【0033】
このような構成において、利用者は、操作部47を操作することによりファクシミリ通信機能、コピー機能、プリンター機能、及びスキャナー機能のいずれかを選択して、選択した機能の動作を開始させることができる。例えば、操作部47の操作により、コピー機能が選択され、コピー動作の開始が指示されると、主制御部61は、画像読取部5により原稿の画像を読取らせ、画像形成部120により該原稿の画像を記録紙に印刷させる。
【0034】
なお、定着装置13には、ヒーター33、センサー制御部38、及び非接触温度センサー34が備えられている(詳細は後述)。
【0035】
次に、本実施形態の非接触温度センサー異常判定装置が設けられた定着装置13ついて詳しく説明する。
【0036】
図3は、定着装置13の構成を概略的に示す図である。
図3に示すように定着装置13は、加熱ローラー31、加圧ローラー32、ヒーター33、非接触温度センサー34、剥離爪35、及びセンサー制御部38等を備えている。
【0037】
加熱ローラー31は、金属製の円筒体の外周面をコート層で被覆したものである。加圧ローラー32は、金属製の円筒体又は円柱体の外周面をコート層で被覆したものである。
【0038】
加圧ローラー32は、加熱ローラー31と平行に配置されて、該加熱ローラー31の外周面に圧接され、加熱ローラー31との間にニップ域Nを形成している。加熱ローラー31が矢印方向に回転駆動され、この加熱ローラー31に圧接された加圧ローラー32が従動回転する。記録紙Pは、2次転写ローラー210(
図1に示す)から加熱ローラー31と加圧ローラー32の間のニップ域Nへと導かれて、このニップ域Nを通じて搬送される。
【0039】
また、ヒーター33は、例えばハロゲンヒーター又はIHヒーターであり、加熱ローラー31の内側に設けられて、加熱ローラー31を加熱する。
【0040】
非接触温度センサー34は、例えばサーモパイルであり、加熱ローラー31の表面から僅かに離間して非接触で配置され、センサー制御部38に接続されている。センサー制御部38は、加熱ローラー31の熱の影響を受け難い位置に配置されており、非接触温度センサー34を通じて加熱ローラー31の表面温度Thを検出する。
【0041】
主制御部61(
図2に示す)は、その検出された加熱ローラー31の表面温度Thに基づきヒーター33のオンオフ制御(点灯制御)を行って、ヒーター33を発熱させ、加熱ローラー31の表面温度Thを、記録紙P上のトナー像の熱圧着に適した規定の温度に調節する。
【0042】
このような構成の定着装置13においては、記録紙Pが加熱ローラー31と加圧ローラー32の間のニップ域Nを通じて搬送されるときに、記録紙Pがニップ域Nで加熱及び加圧されて、記録紙P上のトナー像が熱圧着される。そして、記録紙Pが剥離爪35により加熱ローラー31から剥がされて更に搬送され、排紙トレイ151(
図1に示す)に排出される。
【0043】
次に、本実施形態の非接触温度センサー異常判定装置Sについて説明する。この非接触温度センサー異常判定装置Sは、
図3に示すように非接触温度センサー34及びセンサー制御部38からなる。
【0044】
詳しくは、非接触温度センサー34は、
図4(a)に示すように加熱ローラー31の表面温度に対応する非接触温度Tnを検出する赤外線センサー41と、当該非接触温度センサー34の周囲温度Tsを検出するサーミスター42と、当該非接触温度センサー34について予め設定された個体別補正係数αを記憶したRAM等のメモリー43とを備えている。センサー制御部38は、非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び個体別補正係数αを非接触温度センサー34から取得して、これらをRAM等のメモリー45に一時的に記憶し、非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び個体別補正係数αに基づき加熱ローラー31の表面温度Thを求める。
【0045】
ここで、非接触温度センサー34は、個体差が大きいため、工場出荷などのときに個体別に個体別補正係数αが予め求められて、この個体別補正係数αが非接触温度センサー34のメモリー43に記憶されている。この個体別補正係数αは、センサー制御部38によりメモリー43から読み出されて加熱ローラー31の表面温度Thを求めるために用いられる。
【0046】
また、センサー制御部38は、加熱ローラー31の表面温度Thを求めるだけではなく、個体別補正係数αの誤り、赤外線センサー41やサーミスター42の故障などを判定する。
【0047】
センサー制御部38によるそれらの判定の概略は次の通りである。すなわち、センサー制御部38は、加熱ローラー31の加熱開始に際し、個体別補正係数αを非接触温度センサー34のメモリー43から読出して取得すると共に、加熱ローラー31の加熱開始より時間Qが経過したときに赤外線センサー41より検出された非接触温度Tn及びサーミスター42に検出された周囲温度Tsを取得し、この取得した個体別補正係数α、非接触温度Ts、及び周囲温度Tnに基づき加熱ローラー31の表面温度Thを算出して、この算出した表面温度Thを、その取得した非接触温度Ts及び周囲温度Tnと共に非接触温度センサー34のメモリー43に記憶し、次回の加熱ローラー31の再度の加熱開始に際し、メモリー43に記憶されている表面温度Th、非接触温度Tn、及び周囲温度Tsを用いて、上記の判定を行う。
【0048】
次に、加熱ローラー31の表面温度Thを求めたり、個体別補正係数αの誤り、赤外線センサー41やサーミスター42の故障などを判定したりするためのセンサー制御部38による処理手順を、
図5A及び
図5Bに示すフローチャートに従って説明する。
【0049】
まず、画像形成装置1の電源がオンにされると、主制御部61によるヒーター33のオンオフ制御が開始されて、加熱ローラー31の加熱が開始される。センサー制御部38は、加熱ローラー31の加熱が開始されると(ステップS101)、この加熱の開始時点からの経過時間を計時し(ステップS102)、この経過時間が予め設定された時間Qに達すると(ステップS103で「Yes」)、赤外線センサー41により検出された非接触温度Tn及びサーミスター42により検出された周囲温度Tsを取得する(ステップS104)。また、センサー制御部38は、個体別補正係数αを非接触温度センサー34のメモリー43から読出して取得する(ステップS105)。
【0050】
そして、センサー制御部38は、
図4(b)に示すように個体別補正係数α、非接触温度Tn、及び周囲温度Tsをメモリー45に一旦記憶し、これらに基づき加熱ローラー31の表面温度Thを演算して求める(ステップS106)。この演算の方法は、非接触温度センサー34について規定されている周知の方法である。この加熱ローラー31の表面温度Thは、センサー制御部38から主制御部61へと出力され、主制御部61によるヒーター33のオンオフ制御に用いられる。
【0051】
また、センサー制御部38は、非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び表面温度Thが非接触温度センサー34のメモリー43に記憶されているか否かに基づき、非接触温度センサー34が未使用のものであるか否かを判定する(ステップS107)。すなわち、センサー制御部38は、各温度Tn、Ts、及びThが非接触温度センサー34のメモリー43に記憶されていれば、非接触温度センサー34が未使用のものでないと判定し(ステップS107で「No」)、また各温度Tn、Ts、及びThが非接触温度センサー34のメモリー43に記憶されていなければ、非接触温度センサー34が未使用のものであると判定する(ステップS107で「Yes」)。
【0052】
そして、センサー制御部38は、非接触温度センサー34が未使用のものであると判定すると(ステップS107で「Yes」)、
図4(c)に示すように非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び表面温度Thを非接触温度センサー34のメモリー43に記憶して(ステップS108)、その判定結果を主制御部61に出力する(ステップS109)。主制御部61は、この判定結果を操作部47の表示部473に表示する。この判定結果の表示により、ユーザー又はサービスマンは、交換又は取付けられた未使用の非接触温度センサー34の動作を確認することができる。
【0053】
また、センサー制御部38は、非接触温度センサー34が未使用のものでないと判定すると(ステップS107で「No」)、引き続くステップS110からの処理に移る。
【0054】
ここで、非接触温度センサー34が未使用のものである場合は、非接触温度センサー34のメモリー43が初期状態にあり、
図4(a)に示すようにメモリー43には個体別補正係数αが記憶されていても、非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び表面温度Thが記憶されていない。このため、画像形成装置1の電源がオンにされて、加熱ローラー31の加熱が開始され(ステップS101)、非接触温度Tn、周囲温度Ts、個体別補正係数αが取得されて(各ステップS104、S105)、加熱ローラー31の表面温度Thが算出された後に(ステップS106)、非接触温度センサー34が未使用のものであると判定されて(ステップS107で「Yes」)、
図4(c)に示すように非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び表面温度Thが非接触温度センサー34のメモリー43に初めて記憶される(ステップS108)。
【0055】
また、画像形成装置1の電源が再びオンにされて、加熱ローラー31の加熱が再度開始されたときには(ステップS101)、各温度Tn、Ts、及びThが非接触温度センサー34のメモリー43に既に記憶されているので、非接触温度センサー34が未使用のものでないと判定される(ステップS107で「No」)。すなわち、センサー制御部38は、非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び表面温度Thが非接触温度センサー34のメモリー43に記憶されているか否かに基づき、非接触温度センサー34が未使用のものであるか否かを判定する。
【0056】
また、ステップS108において非接触温度センサー34のメモリー43に記憶された各温度Tn、Ts、Thは、個体別補正係数αの誤り、各センサー41、42の故障などの判定の基準となる。このため、非接触温度センサー34が交換又は取付けられて、画像形成装置1の電源が初めてオンにされ、各温度Tn、Ts、Thがメモリー43に初めて記憶されるときには(ステップS108)、電源オンより時間Qが経過した時点で加熱ローラー31の表面温度Thを別の温度計で測定して、この表面温度Thが規定の温度に調節されていることを確認するのが好ましい。
【0057】
次に、センサー制御部38により非接触温度センサー34が未使用のものでないと判定された場合は(ステップS107で「No」)、非接触温度センサー34が交換又は取付けられた後の2回目以降の電源オンにより画像形成装置1が動作しており、この状態で引き続くステップS110からの処理が行われて、非接触温度センサー34のメモリー43内の非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び表面温度Thに基づき各センサー41、42の故障や個体別補正係数αの誤りなどが判定される。
【0058】
例えば、センサー制御部38は、非接触温度Tnを非接触温度センサー34のメモリー43から読出し、この読み出した非接触温度TnとステップS104で検出されて入力した非接触温度Tnの差Δtnを求めて(ステップS110)、この差Δtnが予め設定された検出温度閾値Vn以上であるか否かに基づき赤外線センサー41が故障しているか否かを判定する(ステップS111)。非接触温度センサー34のメモリー43から読出した非接触温度Tn及びステップS104で検出されて入力した非接触温度Tnのいずれも、加熱ローラー31の加熱開始時点からの経過時間が時間Qに達したときに検出されているので、赤外線センサー41に故障が発生しない限り、両者の非接触温度Tnの差Δtnが大きくなることはない。このため、差Δtnが検出温度閾値Vn以上であるか否かに基づき赤外線センサー41が故障しているか否かを判定することができる。
【0059】
そして、センサー制御部38は、差Δtnが検出温度閾値Vn以上であって、赤外線センサー41が故障していると判定すると(ステップS111で「Yes」)、赤外線センサー41の故障フラッグFnを「1」に設定して(ステップS112)、その判定結果を主制御部61に出力する。主制御部61は、この判定結果、すなわち赤外線センサー41の故障を操作部47の表示部473に表示し(ステップS113)、また画像形成装置1を待機状態とすると共にヒーター33の発熱を停止させる(ステップS114)。これにより、ユーザー又はサービスマンは、赤外線センサー41の故障を知ることができ、また加熱ローラー31が過熱状態になることを未然に防止することができる。
【0060】
また、センサー制御部38は、差Δtnが検出温度閾値Vn以上でなければ、赤外線センサー41が故障していないと判定し(ステップS111で「No」)、上記赤外線センサー41の故障フラッグFnを「0」に維持して、各ステップS112〜114の処理を行うことがない。
【0061】
引き続いて、センサー制御部38は、周囲温度Tsを非接触温度センサー34のメモリー43から読出し、この読み出した周囲温度TsとステップS104で検出されて入力した周囲温度Tsの差Δtsを求めて(ステップS115)、この差Δtsが予め設定された検出温度閾値Vs以上であるか否かに基づきサーミスター42が故障しているか否かを判定する(ステップS116)。ステップS104で入力した周囲温度Tsと非接触温度センサー34のメモリー43から読出して入力した周囲温度Tsのいずれも、加熱ローラー31の加熱の開始時点からの経過時間が時間Qに達したときに検出されているので、サーミスター42に故障が発生したときには両者の非接触温度Tnの差Δtnが大きくなる。このため、差Δtsが検出温度閾値Vs以上であるか否かに基づきサーミスター42が故障しているか否かを判定することができる。
【0062】
そして、センサー制御部38は、差Δtsが検出温度閾値Vs以上であって、サーミスター42が故障していると判定すると(ステップS116で「Yes」)、サーミスター42の故障フラッグFsを「1」に設定して(ステップS117)、その判定結果を主制御部61に出力する。主制御部61は、この判定結果、すなわちサーミスター42の故障を操作部47の表示部473に表示し(ステップS118)、また画像形成装置1を待機状態とすると共にヒーター33の発熱を停止させる(ステップS119)。これにより、ユーザー又はサービスマンは、サーミスター42の故障を知ることができ、また加熱ローラー31が過熱状態になることを未然に防止することができる。
【0063】
また、センサー制御部38は、差Δtsが検出温度閾値Vs以上でなく、サーミスター42が故障していないと判定すると(ステップS116で「No」)、上記サーミスター42の故障フラッグFsを「0」に維持して、各ステップS117〜119の処理を行うことがない。
【0064】
引き続いて、センサー制御部38は、赤外線センサー41の故障フラッグFnが「0」かつサーミスター42の故障フラッグFsが「0」であるか否かを判定し(ステップS120)、少なくとも一方のフラッグが「1」であれば(ステップS120で「No」)、既に赤外線センサー41の故障又はサーミスター42の故障が表示部473に表示され(ステップS113又はS118)、また既に画像形成装置1が待機状態にされると共にヒーター33の発熱が停止されているので(ステップS114又はS119)、
図5A、
図5Bの処理を終了する。
【0065】
また、センサー制御部38は、各故障フラッグFn、Fsのいずれも「0」であれば(ステップS120で「Yes」)、表面温度Thを非接触温度センサー34のメモリー43から読出し、この読み出した表面温度ThとステップS106で求めた表面温度Thの差Δthを求めて(ステップS121)、この差Δthが予め設定された表面温度閾値Vh以上であるか否かに基づき個体別補正係数αに誤りが生じているか否かを判定する(ステップS122)。各故障フラッグFn、Fsのいずれも「0」である場合は、ステップS104で入力した非接触温度Tn及び周囲温度Tsのいずれも誤差が小さい。それにもかかわらず、両者の表面温度Thの差Δthが大きいということは、ステップS106で表面温度Thを求めるために用いた個体別補正係数αに誤りが生じていることとなる。すなわち、個体別補正係数αを非接触温度センサー34のメモリー43から読み出すときになどに、この個体別補正係数αに誤りが発生している。
【0066】
センサー制御部38は、差Δthが表面温度閾値Vh以上であって、個体別補正係数αに誤りが生じていると判定すると(ステップS122で「Yes」)、この判定結果を主制御部61に出力する。主制御部61は、この判定結果、すなわち非接触温度センサー34のメモリー43内の個体別補正係数αの誤りの発生を操作部47の表示部473に表示し(ステップS123)、また画像形成装置1を待機状態とすると共にヒーター33の発熱を停止させる(ステップS124)。これにより、ユーザー又はサービスマンは、個体別補正係数αの誤りの発生を知ることができ、また加熱ローラー31が過熱状態になることを未然に防止することができる。
【0067】
また、センサー制御部38は、差Δthが表面温度閾値Vh以上ではなく、個体別補正係数αに誤りが生じていないと判定すると(ステップS122で「No」)、非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び表面温度Thのいずれの誤差も小さいこととなるので、これらの温度Tn、Ts、Thを非接触温度センサー34のメモリー43に記憶して、メモリー43内の各温度Tn、Ts、Thを更新する(ステップS125)。すなわち、ステップS122で「No」と判定されるには、ステップS120で「Yes」と判定されること及びステップS106で求めた表面温度Thの誤差が小さいことが条件となる。また、ステップS120で「Yes」と判定されるには、ステップS104で入力した非接触温度Tn及び周囲温度Tsのいずれの誤差も小さいことが条件となる。従って、各温度Tn、Ts、Thのいずれの誤差も小さいこととなり、これらの温度Tn、Ts、Thを、非接触温度センサー34のメモリー43に記憶して、個体別補正係数αの誤り、各センサー41、42の故障などの判定のために用いることができる。この後、
図5A、
図5Bの処理を終了する。
【0068】
このように本実施形態では、
図4(c)に示すように非接触温度Tn、周囲温度Ts、及び表面温度Thがメモリー43に記憶されていれば、非接触温度センサー34が未使用のものでないと判定し(ステップS107で「No」)、また
図4(a)に示すように各温度Tn、Ts、及びThがメモリー43に記憶されていなければ、非接触温度センサー34が未使用のものであると判定している(ステップS107で「Yes」)。この判定結果に基づき、交換又は取付けられた未使用の非接触温度センサー34の動作を確認することができる。
【0069】
また、非接触温度センサー34のメモリー43から読出した非接触温度TnとステップS104で検出されて入力した非接触温度Tnの差Δtnが検出温度閾値Vn以上であれば、赤外線センサー41が故障していると判定している(ステップS111で「Yes」)。同様に、非接触温度センサー34のメモリー43から読出した周囲温度TsとステップS104で検出されて入力した周囲温度Tsの差Δtsが検出温度閾値Vs以上であれば、サーミスター42が故障していると判定している(ステップS116で「Yes」)。これらの判定結果に基づき赤外線センサー41やサーミスター42の故障を知ることができ、加熱ローラー31が過熱状態になることを未然に防止することができる。
【0070】
また、非接触温度Tnの差Δtnが検出温度閾値Vn以上でなくかつ周囲温度Tsの差Δtsが検出温度閾値Vs以上でなく、よって赤外線センサー41及びサーミスター42のいずれにも故障が発生していない状態で、非接触温度センサー34のメモリー43から読出した表面温度ThとステップS106で求めた表面温度Thの差Δthが表面温度閾値Vh以上である場合に、個体別補正係数αに誤りが生じていると判定している(ステップS122で「Yes」)。この判定結果に基づき、個体別補正係数αの誤りの発生を知ることができ、加熱ローラー31が過熱状態になることを未然に防止することができる。
【0071】
従って、本実施形態では、非接触温度センサー34が未使用のものであるか否か、赤外線センサー41の故障、サーミスター42の故障、及び個体別補正係数αの読出しエラーを判定することができる。
【0072】
図6は、比較例の非接触温度センサー異常判定装置を例示する図である。この比較例の非接触温度センサー異常判定装置では、非接触温度センサー34のメモリー43に該非接触温度センサー34の個体別補正係数α及び個体別IDを予め記憶すると共に、センサー制御部38のメモリー45にも非接触温度センサー34の個体別補正係数α及び個体別IDを予め記憶している。
【0073】
そして、画像形成装置1の電源がオンにされたときに、センサー制御部38は、非接触温度センサー34のメモリー43から個体別補正係数α及び個体別IDを読出して入力し、この入力した個体別補正係数α及び個体別IDと該センサー制御部38のメモリー45内の個体別補正係数α及び個体別IDを照合している。両者の個体別IDが一致しない場合は、非接触温度センサー34が交換されたものであると判定することができる。また、両者の個体別IDが一致しても、両者の個体別補正係数αが一致しない場合は、非接触温度センサー34のメモリー43からの個体別補正係数αの読出しエラー、又はセンサー制御部38のメモリー45からの個体別補正係数αの読出しエラーであると判定することができる。
【0074】
しかしながら、この比較例では、非接触温度センサー34を交換したときに、センサー制御部38のメモリー45内の個体別補正係数α及び個体別IDをその交換された非接触温度センサー34のメモリー43内の個体別補正係数α及び個体別IDに一致させるために書き換える必要があって、手間がかかる。また、個体別補正係数αの読出しエラーが、非接触温度センサー34のメモリー43及びセンサー制御部38のメモリー45のいずれで生じたかを特定することができない。
【0075】
これに対して本実施形態の非接触温度センサー異常判定装置Sでは、センサー制御部38のメモリー45に非接触温度センサー34の個体別補正係数αや個体別IDを記憶させる必要がない。また、非接触温度センサー34のメモリー43のみから個体別補正係数αの読出しが行われるので、個体別補正係数αの読出しエラーの発生個所が特定される。
【0076】
なお、上記実施形態では、加熱ローラー31の加熱開始時点からの経過時間が時間Qに達した時点で、非接触温度Tn及び周囲温度Tsを検出しているが、加熱ローラー31の加熱開始時点からの経過時間がそれぞれの時間Q1、Q2、……に達した複数の時点で、非接触温度Tn及び周囲温度Tsを検出してもよい。この場合は、複数の時点で検出された非接触温度Tn及び周囲温度Tsをセンサー制御部38のメモリー45に記憶しておき、次回の加熱ローラー31の加熱開始に際し、複数の時点で再度検出された非接触温度Tn及び周囲温度Tsをセンサー制御部38に入力して、複数の時点別に、入力した非接触温度Tnとメモリー45内の非接触温度Tnの差、及び入力した周囲温度Tsとメモリー45内の周囲温度Tsの差を求め、これらの差に基づき赤外線センサー41の故障及びサーミスター42の故障を判定する。あるいは、加熱ローラー31の加熱開始時点からの経過時間が時間Qに達したときの非接触温度Tnの温度勾配及び周囲温度Tsの温度勾配を求めても構わない。この場合は、非接触温度Tnの温度勾配及び周囲温度Tsの温度勾配をセンサー制御部38のメモリー45に記憶しておき、次回の加熱ローラー31の加熱開始に際して再度求められた非接触温度Tnの温度勾配及び周囲温度Tsの温度勾配をメモリー45内の非接触温度Tnの温度勾配及び周囲温度Tsの温度勾配と比較して、赤外線センサー41の故障及びサーミスター42の故障を判定する。
【0077】
また、上記実施形態では、ステップS125において非接触温度センサー34のメモリー43内の非接触温度Tn、周囲温度Ts、表面温度Thを更新しているが、このステップS125を省略しても構わない。
【0078】
また、上記実施形態では、画像形成装置の一例としてカラー複合機を用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、モノクロ複合機や他の電子機器、例えば、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置でもよい。
【0079】
また、
図1乃至
図6を用いて説明した上記実施形態の構成及び処理は、本発明の一例に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。