(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料からの回折散乱光を複数の受光素子で受光することにより得られる光強度分布データの入力を受け付けるデータ入力受付ステップと、
屈折率ごとに得られる光学モデルが結合された係数行列を生成する係数行列生成ステップと、
前記光強度分布データ及び前記係数行列に基づいて演算を行うことにより、屈折率が異なる複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを生成する粒子径分布データ生成ステップとを含むことを特徴とするデータ処理方法。
前記粒子径分布データ生成ステップにより生成された複数種類の粒子ごとの粒子径分布データの粒子径範囲が同一となるように補正を行うデータ補正ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ処理方法。
前記データ補正ステップにより補正された複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを、同一の表示領域に表示させる表示処理ステップをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のデータ処理方法。
屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料からの回折散乱光を複数の受光素子で受光することにより得られる光強度分布データの入力を受け付けるデータ入力受付部と、
屈折率ごとに得られる光学モデルが結合された係数行列を記憶する記憶部と、
前記光強度分布データ及び前記係数行列に基づいて演算を行うことにより、屈折率が異なる複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを生成する粒子径分布データ生成部とを備えることを特徴とするデータ処理装置。
屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料からの回折散乱光を複数の受光素子で受光することにより得られる光強度分布データの入力を受け付けるデータ入力受付部と、
前記光強度分布データ、及び、屈折率ごとに得られる光学モデルが結合された係数行列に基づいて演算を行うことにより、屈折率が異なる複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを生成する粒子径分布データ生成部としてコンピュータを機能させることを特徴とするデータ処理プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来は、特定の屈折率を有する1種類の粒子を含む試料の粒子径分布しか測定することができなかった。試料中には、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合されている場合があるが、このような場合でも、いずれか1種類の粒子に対応する屈折率を用いた演算しか行うことができないため、粒子径分布を精度よく測定することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料の粒子径分布を精度よく測定することができるデータ処理方法、データ処理装置及びデータ処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るデータ処理方法は、データ入力受付ステップと、係数行列生成ステップと、粒子径分布データ生成ステップとを含む。前記データ入力受付ステップでは、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料からの回折散乱光を複数の受光素子で受光することにより得られる光強度分布データの入力を受け付ける。前記係数行列生成ステップでは、屈折率ごとに得られる光学モデルが結合された係数行列を生成する。前記粒子径分布データ生成ステップでは、前記光強度分布データ及び前記係数行列に基づいて演算を行うことにより、屈折率が異なる複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを生成する。
【0009】
このような構成によれば、屈折率ごとに得られる光学モデルが結合された係数行列を用いて演算を行うことにより、屈折率が異なる複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを一度に生成することができる。これにより、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料であっても、複数種類の粒子ごとの粒子径分布を精度よく測定することができる。
【0010】
(2)前記係数行列生成ステップでは、各列が一次独立である前記係数行列を生成してもよい。
【0011】
このような構成によれば、係数行列の各列が一次独立であるため、屈折率が異なる複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを確実に区別することができる。したがって、複数種類の粒子ごとの粒子径分布をより精度よく測定することができる。
【0012】
(3)前記データ処理方法は、前記粒子径分布データ生成ステップにより生成された複数種類の粒子ごとの粒子径分布データの粒子径範囲が同一となるように補正を行うデータ補正ステップをさらに含んでいてもよい。
【0013】
このような構成によれば、複数種類の粒子ごとの粒子径分布データの粒子径範囲を同一として、粒子径分布データ同士を互いに比較しやすくすることができる。したがって、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料について、複数種類の粒子ごとの粒子径分布を容易に解析することができる。
【0014】
(4)前記データ処理方法は、前記データ補正ステップにより補正された複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを、同一の表示領域に表示させる表示処理ステップをさらに含んでいてもよい。
【0015】
このような構成によれば、複数種類の粒子ごとの粒子径分布データが同一の表示領域に表示されるため、粒子径分布データ同士を比較しやすい。特に、複数種類の粒子ごとの粒子径分布データの粒子径範囲が同一となるように補正されているため、各粒子径範囲における粒子量を容易に比較することができる。
【0016】
本発明に係るデータ処理装置は、データ入力受付部と、記憶部と、粒子径分布データ生成部とを備える。前記データ入力受付部は、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料からの回折散乱光を複数の受光素子で受光することにより得られる光強度分布データの入力を受け付ける。前記記憶部は、屈折率ごとに得られる光学モデルが結合された係数行列を記憶する。前記粒子径分布データ生成部は、前記光強度分布データ及び前記係数行列に基づいて演算を行うことにより、屈折率が異なる複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを生成する。
【0017】
本発明に係るデータ処理プログラムは、データ入力受付部と、粒子径分布データ生成部としてコンピュータを機能させる。前記データ入力受付部は、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料からの回折散乱光を複数の受光素子で受光することにより得られる光強度分布データの入力を受け付ける。前記粒子径分布データ生成部は、前記光強度分布データ、及び、屈折率ごとに得られる光学モデルが結合された係数行列に基づいて演算を行うことにより、屈折率が異なる複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを生成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料であっても、複数種類の粒子ごとの粒子径分布を粒子量の相対的な大小の情報を含めて精度よく測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るデータ処理装置5を備える粒子径分布測定装置の構成例を示した概略図である。この粒子径分布測定装置は、試料に含まれる粒子群の粒子径と粒子量との関係を測定することにより、粒子径分布データを生成するためのものであり、試料の測定を行うための測定機構1を備えている。
【0021】
測定機構1には、光源11、集光レンズ12、空間フィルタ13、コリメータレンズ14、フローセル15、集光レンズ16及び検出器17などが備えられている。測定対象となる試料は、例えば超音波振動子が内蔵された循環式サンプラ2などの供給源からフローセル15に供給されるようになっている。
【0022】
光源11は、例えばレーザ光源からなり、当該光源11から放射された光(測定光)が、集光レンズ12、空間フィルタ13及びコリメータレンズ14を通過することにより平行光となる。このようにして平行光とされた測定光は、試料が供給されているフローセル15に照射され、フローセル15内の試料に含まれる粒子群で回折又は散乱された光(回折散乱光)が、集光レンズ16を通って検出器17により受光されるようになっている。ただし、フローセル15に限らず、測定ごとに回分セル内に試料が収容されて測定が行われるような構成であってもよい。
【0023】
検出器17は、試料からの光を検出するためのものであり、例えばフォトダイオードアレイにより構成される。検出器17は、例えば互いに異なる半径を有するリング状又は半リング状の検出面が形成された複数(例えば、64個)の受光素子171を、集光レンズ16の光軸を中心として同心円状に配置することにより構成されており、各受光素子171には、それぞれの位置に応じた角度の方向に回折又は散乱された試料からの光が入射する。したがって、検出器17の各受光素子171の検出信号は、入射角度に対応する光の強度を表すことになる。
【0024】
この
図1の例では、フローセル15の前方(光源11とは反対側)にのみ検出器17が示されている。ただし、フローセル15の後方(光源11側)や側方(光の入射方向に対して直交する面内)にも、それぞれ試料で回折又は散乱された光を受光する受光素子を備えた検出器が設けられていてもよい。
【0025】
検出器17の各受光素子171の検出信号は、A/D変換器3によりアナログ信号からデジタル信号に変換された後、通信部4を介してデータ処理装置5に入力されるようになっている。これにより、検出器17の各受光素子171の素子番号と各受光素子171における検出強度とが対応付けられた光強度分布データが、データ処理装置5に入力される。
【0026】
データ処理装置5は、試料の粒子径分布を測定する際のデータを処理する。データ処理装置5は、例えばコンピュータにより構成されており、制御部51、操作部52、表示部53及び記憶部54などを備えている。制御部51は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成であり、操作部52、表示部53及び記憶部54などの各部が電気的に接続されている。
【0027】
操作部52は、例えばキーボード及びマウスを含む構成であり、ユーザが操作部52を操作することにより入力作業などを行うことができるようになっている。表示部53は、例えば液晶表示器などにより構成されており、測定機構1における測定結果などの各種情報が表示部53に表示される。記憶部54は、例えばRAM(Random Access Memory)及びハードディスクなどにより構成される。
【0028】
図2は、
図1のデータ処理装置5の具体的構成について説明するためのブロック図である。本実施形態における制御部51は、CPUがプログラムを実行することにより、データ入力受付部511、粒子径分布データ生成部512、データ補正部513及び表示処理部514などとして機能する。
【0029】
記憶部54には、光強度分布データ記憶部541、粒子径分布データ記憶部542及び係数行列記憶部543などが割り当てられている。光強度分布データ記憶部541には、検出器17の各受光素子171からの入力信号に基づいて、光強度分布データが記憶される。制御部51は、光強度分布データ記憶部541に記憶されている光強度分布データに基づいて粒子径分布データを生成し、その粒子径分布データを粒子径分布データ記憶部542に記憶させる。制御部51が粒子径分布データを生成する際、係数行列記憶部543に記憶されている係数行列が用いられる。
【0030】
本実施形態における粒子径分布測定装置では、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料の粒子径分布を測定することができる。このような試料を測定機構1で測定し、試料中の各粒子(屈折率が異なる複数種類の粒子)からの回折散乱光を複数の受光素子171で受光することにより、光強度分布データが得られる。得られた光強度分布データは、光強度分布データ記憶部541に記憶される。
【0031】
データ入力受付部511は、粒子径分布データを生成する際に、光強度分布データ記憶部541に記憶されている光強度分布データの入力を受け付ける。粒子径分布データ生成部512は、光強度分布データ記憶部541から入力された光強度分布データに対して、屈折率を用いた演算を行うことにより、その屈折率に応じた粒子径分布データを生成する。本実施形態では、試料中に含まれる複数種類の粒子ごとに屈折率が異なるため、それぞれの屈折率に基づいて生成された1つの係数行列を用いて粒子径分布データ生成部512が行列演算を行うことにより、複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを生成することができるようになっている。生成された各粒子径分布データは、粒子径分布データ記憶部542に記憶される。
【0032】
粒子径分布データを演算する際には、下記式(1)の関係を用いることができる。
【数1】
【0033】
ここで、s、q及びAは、下記式(2)〜(4)で表される。
【数2】
【0034】
ベクトルsは、光強度分布データである。ベクトルsにおける各要素s
u(u=1,2,・・・,k)は、検出器17の各受光素子171、並びに、フローセル15の後方や側方に設けられた受光素子(いずれも図示せず)における検出強度である。
【0035】
ベクトルqは、頻度分布%として表現される粒子径分布データである。この例では、屈折率が異なる2種類の粒子(粒子a及び粒子b)が試料に含まれる場合のベクトルqが示されており、各要素q
ai(i=1,2,・・・,n)が粒子aの粒子量、各要素q
bj(j=1,2,・・・,m)が粒子bの粒子量をそれぞれ表している。すなわち、粒子a及び粒子bを含む粒子の全体が、n+m個の要素を持つベクトルqとして表されている。
【0036】
より具体的には、各要素q
ai(i=1,2,・・・,n)は、粒子径の測定対象範囲(最大粒子径がx
1、最小粒子径がx
n+1)をn分割し、それぞれの粒子径範囲を[x
i,x
i+1]としたときに、各粒子径範囲[x
i,x
i+1]に対応する粒子aの粒子量を示している。一方、各要素q
bj(j=1,2,・・・,m)は、粒子径の測定対象範囲(最大粒子径がy
1、最小粒子径がy
m+1)をm分割し、それぞれの粒子径範囲を[y
j,y
j+1]としたときに、各粒子径範囲[y
j,y
j+1]に対応する粒子bの粒子量を示している。このように、粒子径分布データの粒子径範囲は、複数種類の粒子(粒子a及び粒子b)ごとに異なっている。もちろんn=mとして、nとmを同じ値にすることも可能である。
【0037】
粒子量は体積基準で計算され、表示の際にはすべての粒子量の合計が100%となるように規格化される。すなわち、下記式(5)を満たすように表示される。また、表示としては、粒子aについての各要素q
a1〜q
anの合計が100%とする表示、すなわち式(6)を満たす表示や、粒子bについての各要素q
b1〜q
bmの合計が100%とする表示、すなわち式(7)を満たす表示を採用してもよい。
【数3】
【0038】
行列Aは、粒子径分布データqを光強度分布データsに変換するための係数がマトリクス状に配列された係数行列である。行列Aは、複数種類の粒子の屈折率ごとに得られる光学モデル(理論光強度)が結合されることにより生成されている。この例では、屈折率が異なる2種類の粒子(粒子a及び粒子b)についての光学モデルA1及びA2が結合されている。光学モデルA1における各要素a
u,i(u=1,2,・・・,k、i=1,2,・・・,n)は、各粒子径範囲[x
i,x
i+1]に属する単位体積の粒子aに単位強度の測定光を照射したときのu番目の受光素子171における回折散乱光の受光強度である。光学モデルA2における各要素a
u,j(u=1,2,・・・,k、j=1,2,・・・,m)は、各粒子径範囲[y
j,y
j+1]に属する単位体積の粒子bに単位強度の測定光を照射したときのu番目の受光素子171における回折散乱光の受光強度である。
【0039】
各光学モデルA1,A2における各要素a
u,i,a
u,jの値は、粒子a,bの屈折率をパラメータの一つとして用いて予め理論的に計算することができる。例えば、粒子径が光源11からの測定光の波長に比べて十分に大きい場合(例えば10倍以上)には、フラウンホーファ回折理論を用いて計算することができる。一方、粒子径が光源11からの測定光の波長と同程度、又は、それより小さい場合には、ミー散乱理論を用いて計算することができる。このようにして得られた各粒子a,bについての光学モデルA1,A2は、行数kが同じであり、互いに異なる列を構成するように横に並べて結合されることにより行列Aが生成される。結果的に、行列Aは、k行、(n+m)列の要素を持つ行列となる。
【0040】
行列Aを生成する際には、行列Aの各列が一次独立となるように各要素a
u,i,a
u,jの値が選択される。すなわち、行列Aの各列ベクトルに係数を乗算して足し合わせた値が0となるのは、係数が全て0のときだけである。行列Aの各列が一次独立であるか否かは、行列Aの階数(ランク)を計算することにより確認することができ、階数が行列Aの列数(n+m)よりも小さければ、行列Aは一次独立ではないと判断することができる。この場合、粒子径分布データの粒子径範囲を複数種類の粒子ごとに調整すれば、各列が一次独立である行列Aを生成することができる。
【0041】
粒子径分布データ生成部512による行列演算では、上記式(1)に基づいて、下記式(8)によりベクトルqが求められる。ただし、A
TはAの転置行列である。この場合、求められたベクトルqが粒子径分布データとなり、各要素q
ai(i=1,2,・・・,n)が粒子aの粒子量、各要素q
bj(j=1,2,・・・,m)が粒子bの粒子量として算出される。
【数4】
【0042】
このように、本実施形態では、屈折率ごとに得られる光学モデルA1,A2が結合された係数行列(行列A)を用いて演算を行うことにより、屈折率が異なる複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布データを一度に生成することができる。これにより、屈折率が異なる複数種類の粒子a,bが混合された試料であっても、複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布を、粒子aと粒子bの相対的な粒子量の大小の情報を含めて、精度よく測定することができる。
【0043】
特に、本実施形態では、係数行列(行列A)の各列が一次独立であるため、屈折率が異なる複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布データを確実に区別することができる。したがって、複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布をより精度よく測定することができる。
【0044】
データ補正部513は、上記のようにして生成された複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布データに対する補正を行う。具体的には、複数種類の粒子ごとの粒子径分布データの粒子径範囲が同一となるように補正が行われる。すなわち、粒子aについての粒子径範囲[x
i,x
i+1]と、粒子bについての粒子径範囲[y
j,y
j+1]とが同一となるように補正される。このような補正は、周知の補間法を用いることにより行うことができる。
【0045】
表示処理部514は、粒子径分布データを表示部53に表示させるための処理を行う。本実施形態では、データ補正部513により補正された複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布データが、表示部53における同一の表示領域に表示されるようになっている。
【0046】
図3Aは、表示部53に対する粒子径分布データの表示態様の一例を示した図である。この例では、粒子aの粒子径分布データを表す折れ線グラフG11と、粒子bの粒子径分布データを表す折れ線グラフG12とが、同一の表示領域Dに同時に表示されている。各折れ線グラフG11,G12は、同一の粒子径範囲に対応付けて、それぞれの粒子径範囲における粒子a,bの粒子量を示している。
【0047】
図3Bは、表示部53に対する粒子径分布データの表示態様の他の例を示した図である。この例では、粒子aの粒子径分布データを表す棒グラフG21と、粒子bの粒子径分布データを表す棒グラフG22とが、同一の表示領域Dに同時に表示されている。各棒グラフG21,G22は、同一の粒子径範囲に対応付けて、それぞれの粒子径範囲における粒子a,bの粒子量を示している。この例では、それぞれの粒子径範囲において各棒グラフG21,G22が積層されて(積算されて)表示されることにより、各粒子径範囲における粒子a,b全体の粒子量の積算値を確認することができるようになっている。
【0048】
図3A及び
図3Bに例示されるように、本実施形態では、複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布データの粒子径範囲を同一として、粒子径分布データ同士を互いに比較しやすくすることができる。したがって、屈折率が異なる複数種類の粒子a,bが混合された試料について、複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布を容易に解析することができる。
【0049】
また、複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布データが同一の表示領域Dに表示されるため、粒子径分布データ同士を比較しやすい。特に、複数種類の粒子a,bごとの粒子径分布データの粒子径範囲が同一となるように補正されているため、各粒子径範囲における粒子量を容易に比較することができる。
【0050】
図4は、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料の粒子径分布を測定する際の流れを示したフローチャートである。試料中に屈折率が異なる複数種類の粒子が含まれる場合には、それらの屈折率に基づいて係数行列(行列A)が予め生成され、係数行列記憶部543に記憶される(ステップS101:係数行列生成ステップ)。このとき、係数行列は、作業者が操作部52を操作することにより生成されてもよいし、予め生成された係数行列が外部からデータ処理装置5に入力されてもよい。
【0051】
その後、測定機構1において試料の測定が行われた場合には、その試料からの回折散乱光が検出器17の各受光素子171で受光されることにより光強度分布データが生成され、データ入力受付部511により当該光強度分布データの入力が受け付けられる(ステップS102:データ入力受付ステップ)。ただし、光強度分布データは、測定機構1から直接入力されるような構成に限らず、予め試料を測定することにより得られた光強度分布データが外部からデータ処理装置5に入力されてもよい。
【0052】
光強度分布データが入力されると、係数行列記憶部543から係数行列(行列A)が読み出され、光強度分布データ及び係数行列に基づいて、粒子径分布データ生成部512により上記式(8)に示す行列演算が行われる。これにより、複数種類の粒子ごとの粒子径分布データが生成され(ステップS103:粒子径分布データ生成ステップ)、生成された粒子径分布データは粒子径分布データ記憶部542に記憶される。
【0053】
粒子径分布を測定するだけであれば、ステップS103までの処理で終了となるが、測定した粒子径分布を表示部53に表示させる際には、さらにステップS104及びS105の処理が行われる。具体的には、まず、ステップS103で生成された複数種類の粒子ごとの粒子径分布データの粒子径範囲が同一となるように、データ補正部513により各粒子径分布データに対する補正が行われる(ステップS104:データ補正ステップ)。
【0054】
その後、補正された各粒子径分布データが、表示処理部514により表示部53の同一の表示領域Dに表示される(ステップS105:表示処理ステップ)。これにより、屈折率が異なる複数種類の粒子が混合された試料について、複数種類の粒子ごとの粒子径分布の測定結果が分かりやすく表示部53に表示される。
【0055】
以上の実施形態では、屈折率が異なる2種類の粒子a,bが試料に含まれる場合について説明したが、屈折率が異なる3種類以上の粒子が試料に含まれていてもよい。この場合、各粒子についての光学モデルを3つ以上横に並べて結合することにより、係数行列(行列A)を生成すればよい。
【0056】
表示部53に粒子径分布データを表示させる際の態様は、折れ線グラフG11,G12や棒グラフG21,G22に限られるものではない。すなわち、複数種類の粒子ごとの粒子径分布データを同一の表示領域Dに表示させることができるような態様であれば、他のグラフや、グラフ以外の表示態様で粒子径分布データが表示されてもよい。
【0057】
また、以上の実施形態では、粒子径分布データを算出するためのデータ処理装置5が、粒子径分布測定装置に備えられた構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、粒子径分布測定装置とは別にデータ処理装置5が設けられた構成であってもよい。この場合、粒子径分布測定装置の測定機構1から出力される光強度分布データは、有線通信又は無線通信を介してデータ処理装置5に入力されるような構成であってもよいし、記憶媒体(図示せず)に一旦記憶された後、当該記憶媒体からデータ処理装置5に入力されるような構成などであってもよい。
【0058】
データ処理装置5は、測定機構1から入力される光強度分布データを、光強度分布データ記憶部541に一旦記憶してから演算に用いるような構成に限らず、外部から入力される光強度分布データから、そのまま粒子径分布データが算出されるような構成であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態に係るデータ処理装置5のように、光強度分布データに基づいてデータを処理するためのデータ処理装置5を提供することができるだけでなく、データ処理装置5としてコンピュータを機能させるためのプログラム(データ処理プログラム)を提供することも可能である。この場合、上記プログラムは、記憶媒体に記憶された状態で提供されるような構成であってもよいし、有線通信又は無線通信を介してプログラム自体が提供されるような構成であってもよい。