特許第6579073号(P6579073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6579073-電子写真感光体 図000054
  • 特許6579073-電子写真感光体 図000055
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579073
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】電子写真感光体
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20190912BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20190912BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20190912BHJP
   C08G 63/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   G03G5/05 101
   G03G5/06 313
   G03G5/147 502
   C08G63/00
【請求項の数】5
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-190917(P2016-190917)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-53112(P2018-53112A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】東 潤
(72)【発明者】
【氏名】北口 健二
(72)【発明者】
【氏名】尾形 明彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 智文
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−255990(JP,A)
【文献】 特開2006−239884(JP,A)
【文献】 特開2000−131858(JP,A)
【文献】 特開2000−227667(JP,A)
【文献】 特開2003−295485(JP,A)
【文献】 特開2002−040676(JP,A)
【文献】 特開2014−095867(JP,A)
【文献】 特開2014−209221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00−5/16
C08G 63/00−64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、感光層とを備える電子写真感光体であって、
前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有し、
前記バインダー樹脂は、下記一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂を含む、電子写真感光体。
【化1】
前記一般式(1)中、
1、R2、R3、及びR4は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、
r、s、t、及びuは、何れも正の整数を表し、
r+s+t+u=100であり、
r+t=s+uであり、
r/(r+t)は、0.10以上0.70以下であり、
s/(s+u)は、0.10以上0.70以下であり、
Xは、化学式(2A)、化学式(2B)、化学式(2C)、又は化学式(2D)で表される二価の基を表し、
Yは、化学式(4A)、化学式(4B)、化学式(4C)、化学式(4D)、又は化学式(4E)で表される二価の基を表し、
X及びYは、互いに異なる。
【化2】
【化3】
【請求項2】
前記正孔輸送剤が、一般式(2)、一般式(3)、又は一般式(4)で表される化合物を含む、請求項に記載の電子写真感光体。
【化4】
前記一般式(2)中、
1は、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有してもよいフェニル基を表し、
2は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表し、
3、Q4、Q5、Q6、及びQ7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表し、Q3、Q4、Q5、Q6、及びQ7のうちの隣接した二つが互いに結合して環を形成してもよく、
aは、0以上5以下の整数を表し、aが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【化5】
前記一般式(3)中、
8、Q10、Q11、Q12、Q13、及びQ14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表し、
9及びQ15は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表し、
bは、0以上5以下の整数を表し、bが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ9は、互いに同一でも異なっていてもよく、
cは、0以上4以下の整数を表し、cが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ15は、互いに同一でも異なっていてもよく、
kは、0又は1を表す。
【化6】
前記一般式(4)中、
a、Rb及びRcは、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、
qは、0以上4以下の整数を表し、qが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRcは、互いに同一でも異なっていてもよく、
m及びnは、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、mが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、nが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRaは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【請求項3】
前記一般式(2)中、
1は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有するフェニル基又は水素原子を表し、
2は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表し、
3、Q4、Q5、Q6及びQ7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、Q3、Q4、Q5、Q6及びQ7のうち隣接した二つが互いに結合して環を形成してもよく、
aは、0又は1を表し、
前記一般式(3)中、
8、Q10、Q11、Q12、Q13及びQ14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、
b及びcは、0を表し、
前記一般式(4)中、
a及びRbは、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表し、
m及びnは、各々独立に、0以上2以下の整数を表し、
qは0を表す、請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記正孔輸送剤は、化学式(HTM−1)、化学式(HTM−2)、化学式(HTM−3)、化学式(HTM−4)、化学式(HTM−5)、化学式(HTM−6)、化学式(HTM−7)、化学式(HTM−8)、又は化学式(HTM−9)で表される、請求項の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【請求項5】
前記感光層は、前記電荷発生剤を含有する電荷発生層と、前記正孔輸送剤、及び前記バインダー樹脂を含有する電荷輸送層とを備え、
前記電荷輸送層は一層であり、前記電荷輸送層は最表面層として配置される、請求項の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリレート樹脂及び電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター、又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体は、例えば、単層型電子写真感光体、又は積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する感光層を備える。積層型電子写真感光体においては、感光層は電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを備える。
【0003】
特許文献1には、化学式(Resin−A)で表される繰返し単位を有するポリアリレート樹脂が記載されている。また、上記ポリアリレート樹脂を含有する電子写真感光体が記載されている。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−297601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリアリレート樹脂中の分子鎖同士の絡み合いが低下し、ポリアリレート樹脂のパッキング性が低下し、感光体の耐フィルミング性を十分に向上させることができない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、優れた耐フィルミング性を電子写真感光体に発現させるポリアリレート樹脂を提供することである。また、別の目的は、耐フィルミング性に優れる感光層を備えた電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリアリレート樹脂は、下記一般式(1)で表される。
【0009】
【化2】
【0010】
前記一般式(1)中、R1、R2、R3、及びR4は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。r、s、t、及びuは、何れも正の整数を表す。r+s+t+u=100である。r+t=s+uである。r/(r+t)は、0.10以上0.70以下である。s/(s+u)は、0.10以上0.70以下である。Xは、化学式(2A)、化学式(2B)、化学式(2C)、又は化学式(2D)で表される二価の基を表す。Yは、化学式(4A)、化学式(4B)、化学式(4C)、化学式(4D)、又は化学式(4E)で表される二価の基を表す。X及びYは、互いに異なる。
【0011】
【化3】
【0012】
【化4】
【0013】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。前記バインダー樹脂は、上述のポリアリレート樹脂を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリアリレート樹脂は、優れた耐フィルミング性を電子写真感光体に発現させることができる。また、本発明の電子写真感光体は、耐フィルミング性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、本発明の第二実施形態に係る電子写真感光体の構造の一例を示す概略断面図である。
図2】化学式(Resin−1)で表されるポリアリレート樹脂の1H−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。なお、本明細書において、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0017】
以下、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及び炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンは、各々、次の意味である。
【0018】
炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、又はオクチル基が挙げられる。
【0019】
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はヘキシル基が挙げられる。
【0020】
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。
【0021】
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、又はオクチルオキシ基が挙げられる。
【0022】
炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、又はt−ブトキシ基が挙げられる。
【0023】
炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンは、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンとしては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、又はシクロヘプタンが挙げられる。
【0024】
<第一実施形態:ポリアリレート樹脂>
本発明の第一実施形態に係るポリアリレート樹脂は、一般式(1)で表される。以下、このようなポリアリレート樹脂をポリアリレート樹脂(1)と記載することがある。
【0025】
【化5】
【0026】
一般式(1)中、R1、R2、R3、及びR4は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。r、s、t、及びuは、何れも正の整数を表す。r+s+t+u=100である。r+t=s+uである。r/(r+t)は、0.10以上0.70以下である。s/(s+u)は、0.10以上0.70以下である。Xは、化学式(2A)、化学式(2B)、化学式(2C)、又は化学式(2D)で表される二価の基を表す。Yは、化学式(4A)、化学式(4B)、化学式(4C)、化学式(4D)、又は化学式(4E)で表される二価の基を表す。X及びYは、互いに異なる。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
感光体の耐フィルミング性を更に向上させる観点から、一般式(1)中、R1、R2、R3、及びR4はメチル基を表すことが好ましい。Xは一般式(2A)若しくは一般式(2B)で表される二価の基を表すか、又はYは一般式(4A)若しくは一般式(4B)で表される二価の基を表すことが好ましい。
【0030】
感光体の耐フィルミング性を特に向上させる観点から、Xは一般式(2A)又は一般式(2B)で表される二価の基を表すことが好ましい。Yは一般式(4A)、一般式(4B)又は一般式(4E)で表される二価の基を表すことが好ましい。
【0031】
rとsとが互いに異なり、rとuとが互いに異なってもよい。tとsとが互いに異なり、tとuとが互いに異なってもよい。
【0032】
ポリアリレート樹脂(1)は、化学式(1−5)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−5)と記載することがある)、一般式(1−6)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−6)と記載することがある)、一般式(1−7)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−7)と記載することがある)、一般式(1−8)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−8)と記載することがある)を有する。
【0033】
【化8】
【0034】
一般式(1−5)中のR1及びR2、一般式(1−6)中のX、一般式(1−7)中のR3及びR4、並びに一般式(1−8)中のYは、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、X、R3、R4、及びYと同義である。
【0035】
ポリアリレート樹脂(1)は、繰返し単位(1−5)〜(1−8)以外の繰返し単位を有してもよい。ポリアリレート樹脂(1)中の繰返し単位の物質量の合計に対する繰返し単位(1−5)〜(1−8)の物質量の合計の比率(モル分率)は、0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましく、1.00が更に好ましい。
【0036】
ポリアリレート樹脂(1)における繰返し単位(1−5)〜(1−8)の配列は、芳香族ジオール由来の繰返し単位と芳香族ジカルボン酸由来の繰返し単位とが互いに隣接する限り、特に限定されない。例えば、繰返し単位(1−5)は、繰返し単位(1−6)又は繰返し単位(1−8)と隣接して互いに結合している。同様に、繰返し単位(1−7)は、繰返し単位(1−6)又は繰返し単位(1−8)と隣接して互いに結合している。ポリアリレート樹脂(1)は、繰返し単位(1−5)〜(1−8)以外の繰返し単位を有してもよい。
【0037】
一般式(1)中のr、s、t、及びuは、何れも正の整数を表す。r+s+t+u=100である。r+t=s+uである。r/(r+t)は、0.10以上0.70以下であり、0.30以上0.70以下であることが好ましい。s/(s+u)は、0.10以上0.70以下であり、0.30以上0.70以下であることが好ましい。r/(r+t)は、ポリアリレート樹脂(1)における繰返し単位(1−5)の物質量及び繰返し単位(1−7)の物質量の合計に対する繰返し単位(1−5)の物質量の比率(モル分率)を表す。r/(r+t)が0.10以上0.70以下である場合、感光体は耐フィルミング性に優れる。s/(s+u)は、ポリアリレート樹脂(1)における繰返し単位(1−6)の物質量及び繰返し単位(1−8)の物質量の合計に対する繰返し単位(1−6)の物質量の比率(モル分率)を表す。s/(s+u)が0.10以上0.70以下である場合、感光体は耐フィルミング性に優れる。
【0038】
ポリアリレート樹脂(1)としては、例えば、化学式(Resin−1)〜(Resin−7)で表されるポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(Resin−1)〜(Resin−7)と記載することがある)が挙げられる。
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、14,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることが更に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量は、100,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、70,000以下であることが更に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が20,000以上である場合、バインダー樹脂の耐摩耗性を高めることができ、電荷輸送層が摩耗しにくくなる。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量が70,000以下である場合、感光層の形成時に、バインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、感光層の形成が容易になる傾向がある。
【0047】
(バインダー樹脂の製造方法)
バインダー樹脂の製造方法は、ポリアリレート樹脂(1)を製造できれば、特に限定されない。これらの製造方法として、例えば、ポリアリレート樹脂の繰返し単位を構成するための芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。ポリアリレート樹脂(1)の合成方法は特に限定されず、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合、又は界面重合等)を採用することができる。以下、ポリアリレート樹脂(1)の製造方法の一例を説明する。
【0048】
ポリアリレート樹脂(1)は、例えば、反応式(R−1)で表される反応(以下、反応(R−1)と記載することがある)に従って又はこれに準じる方法によって製造される。ポリアリレート樹脂の製造方法は、例えば、反応(R−1)を含む。
【0049】
【化16】
【0050】
反応(R−1)において、一般式(1−11)中のR1及びR2、一般式(1−12)中のR3及びR4、一般式(1−9)中のX、並びに一般式(1−10)中のYは、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、X、及びYと同義である。
【0051】
反応(R−1)では、一般式(1−9)で表される芳香族ジカルボン酸及び一般式(1−10)で表される芳香族ジカルボン酸(以下、それぞれ芳香族ジカルボン酸(1−9)及び(1−10)と記載することがある)と、一般式(1−11)で表される芳香族ジオール酸及び一般式(1−12)で表される芳香族ジオール(以下、それぞれ芳香族ジオール(1−11)及び(1−12)と記載することがある)とを反応させて、ポリアリレート樹脂(1)を得る。
【0052】
芳香族カルボン酸(1−9)及び(1−10)の合計物質量1モルに対する、芳香族ジオール(1−11)及び(1−12)の合計物質量は、0.9モル以上1.1モル以下であることが好ましい。上記範囲であると、ポリアリレート樹脂(1)を精製し易く、ポリアリレート樹脂(1)の収率が向上するからである。
【0053】
反応(R−1)は、アルカリ及び触媒の存在下で進行させてもよい。触媒としては、例えば、第三級アンモニウム(より具体的には、トリアルキルアミン等)又は第四級アンモニウム塩(より具体的には、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等)が挙げられる。アルカリとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(より具体的には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(より具体的には、水酸化カルシウム等)が挙げられる。反応(R−1)は、溶媒中及び不活性ガス雰囲気下で進行させてもよい。溶媒としては、例えば、水又はクロロホルムが挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンが挙げられる。反応(R−1)の反応時間は、2時間以上5時間以下が好ましい。反応温度は、5℃以上25℃以下が好ましい。
【0054】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、芳香環上に結合する2つのカルボキシル基を有する芳香族ジカルボン酸(より具体的には、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル又は4,4’−ジカルボキシビフェニル等)が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸(1−9)及び(1−10)以外に他のジカルボン酸を含んでもよい。なお、ポリアリレート樹脂の合成において、芳香族ジカルボン酸の代わりに、芳香族ジカルボン酸誘導体(より具体的には、ハロゲン化アルカノイル又は芳香族ジカルボン酸無水物)を用いてもよい。
【0055】
ポリアリレート樹脂を合成する際、芳香族ジオールは、ジアセテートのような誘導体として用いることができる。芳香族ジオールは、芳香族ジオール(1−11)及び(1−12)以外の他のジオール(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールE、又はビスフェノールF)を含んでもよい。
【0056】
ポリアリレート樹脂(1)の製造では、必要に応じて他の工程(例えば、精製工程)を含んでもよい。このような工程としては、例えば、精製工程が挙げられる。精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶折等)が挙げられる。
【0057】
<第二実施形態:感光体>
本発明の第二実施形態に係る電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)は、導電性基体と、感光層とを備える。感光体としては、例えば、積層型電子写真感光体(以下、積層型感光体と記載することがある)、又は単層型電子写真感光体(以下、単層型感光体と記載することがある)が挙げられる。
【0058】
積層型感光体は、電荷発生層と、電荷輸送層とを備える。以下、図1を参照して、第二実施形態に係る積層型感光体1の構造を説明する。図1は、積層型感光体1の構造を示す概略断面図である。図1(a)に示すように、積層型感光体1は、例えば、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとを備える。図1(a)に示すように、積層型感光体1は、導電性基体2上に電荷発生層3aを備え、電荷発生層3aの上に更に電荷輸送層3bを備えてもよい。また、図1(b)に示すように、積層型感光体1は、導電性基体2上に電荷輸送層3bを備え、電荷輸送層3bの上に更に電荷発生層3aを備えてもよい。図1(a)に示すように、電荷輸送層3bは積層型感光体1の最表面層として配置されてもよい。電荷輸送層3bは、一層(単層)であってもよい。
【0059】
図1(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接的に配置されてもよい。また、図1(c)に示すように、積層型感光体1は、例えば、導電性基体2と、中間層4(下引層)と、感光層3とを備える。図1(c)に示すように、感光層3は導電性基体2上に間接的に配置されてもよい。図1(c)に示すように、中間層4は、導電性基体2と電荷発生層3aとの間に設けられてもよい。中間層4は、例えば、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとの間に設けられてもよい。電荷発生層3aは、単層であってもよく、複数層であってもよい。
【0060】
単層型感光体は、単層の感光層を備える。単層型感光体も積層型感光体と同様に、例えば、導電性基体と感光層とを備える。単層型感光体は、中間層を備えてもよい。感光層は、単層型感光体の最表面層として配置されてもよい。
【0061】
第二実施形態に係る感光体は、耐フィルミング性に優れる。その理由は以下のように推測される。第二実施形態に係る感光体は、バインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(1)を含む。ポリアリレート樹脂(1)では、フルオレン環を含む繰り返し単位を有する。更に、芳香族ジオール由来の繰返し単位のモル分率r/(r+t)が0.10以上0.70以下である。芳香族ジカルボン酸由来の繰返し単位のモル分率s/(s+u)が0.10以上0.70以下である。このような構造を有するポリアリレート樹脂(1)は、バインダー樹脂とバインダー樹脂との絡み合いが低下しにくく、かつバインダー樹脂間のパッキング性が低下しにくくなる。また、このような構造を有するポリアリレート樹脂(1)は溶剤への溶解性が高いため、感光層を形成するための塗布液を調製し易い。その結果、層密度の高く高硬度の感光層を得られ易い。よって、第二実施形態に係る感光体は、耐フィルミング性に優れる。
【0062】
以下、第二実施形態に係る感光体の要素(導電性基体、感光層、及び中間層)を説明する。更に感光体の製造方法も説明する。
【0063】
[1.導電性基体]
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部に導電性を有する材料で構成することができる。導電性基体としては、例えば、導電性を有する材料で構成される導電性基体、又は導電性材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、又はインジウムが挙げられる。これらの導電性を有する材料の中でも、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。2種以上の組合せとしては、例えば、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は真鍮)が挙げられる。
【0064】
これらの導電性を有する材料の中でも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから導電性、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0065】
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができる。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚みは、導電性基体の形状に応じて、適宜選択することができる。
【0066】
[2.感光層]
感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(1)とを含有する。感光層は、添加剤を更に含有してもよい。積層型感光体では、感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを備える。電荷発生層は、電荷発生剤を含有する。電荷輸送層は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。電荷発生層の厚さは、電荷発生層として十分に作用することができれば、特に限定されない。電荷発生層の厚さは、具体的には、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層の厚さは、電荷輸送層として十分に作用することができれば、特に限定されない。電荷輸送層の厚さは、具体的には、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0067】
単層型感光体では、感光層は単層型感光層である。単層型感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。感光層の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できれば、特に限定されない。具体的には、感光層の厚さは、5μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0068】
[2−1.共通の構成要素]
以下、電荷発生剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を説明する。更に添加剤を説明する。
【0069】
[2−1−1.電荷発生剤]
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤であれば、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンのような無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。フタロシアニン系顔料としては、例えば、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体が挙げられる。フタロシアニンとしては、例えば、無金属フタロシアニン顔料(より具体的には、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)等)が挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、例えば、金属フタロシアニン顔料(より具体的には、チタニルフタロシアニン、又はV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン等)が挙げられる。フタロシアニン系顔料の結晶形状については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。フタロシアニン顔料の結晶形状としては、例えば、α型、β型、又はY型が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。感光層がポリアリレート樹脂を含有する場合、電荷発生剤は、フタロシアニン系顔料が好ましく、金属フタロシアニン顔料がより好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが更に好ましい。
【0070】
Y型チタニルフタロシアニンは、Cu−Kα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有してもよい。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
【0071】
(CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法)
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法を説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
【0072】
所望の領域に吸収波長を有する電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上の電荷発生剤を組み合わせて用いてもよい。更に、例えば、デジタル光学式の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。デジタル光学式の画像形成装置としては、例えば、半導体レーザーのような光源を使用したレーザービームプリンター又はファクシミリが挙げられる。そのため、例えば、フタロシアニン系顔料が好ましく、Y型チタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)がより好ましい。
【0073】
短波長レーザー光源を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、又はペリレン系顔料が好適に用いられる。なお、短波長レーザー光源は、例えば、350nm以上550nm以下程度の波長を有する。
【0074】
電荷発生剤は、例えば、化学式(CGM−1)〜(CGM−4)で表されるフタロシアニン系顔料である(以下、電荷発生剤(CGM−1)〜(CGM−4)と記載することがある)。
【0075】
【化17】
【0076】
【化18】
【0077】
【化19】
【0078】
【化20】
【0079】
電荷発生剤の含有量は、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
【0080】
[2−1−2.正孔輸送剤]
正孔輸送剤としては、例えば、含窒素環式化合物又は縮合多環式化合物を使用することができる。含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体);オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール);スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン);カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール);有機ポリシラン化合物;ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン);ヒドラゾン系化合物;インドール系化合物;オキサゾール系化合物;イソオキサゾール系化合物;チアゾール系化合物;チアジアゾール系化合物;イミダゾール系化合物;ピラゾール系化合物;トリアゾール系化合物が挙げられる。
【0081】
これらの正孔輸送剤のうち、感光体の耐フィルミング性を向上させる観点から、一般式(2)、一般式(3)、又は一般式(4)で表される化合物が好ましく、一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物がより好ましく、一般式(4)で表される化合物が更に好ましい。
【0082】
【化21】
【0083】
一般式(2)中、Q1は、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有してもよいフェニル基を表す。Q2は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q3、Q4、Q5、Q6、及びQ7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q3、Q4、Q5、Q6、及びQ7のうちの隣接した二つが互いに結合して環を形成してもよい。aは、0以上5以下の整数を表す。aが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0084】
【化22】
【0085】
一般式(3)中、Q8、Q10、Q11、Q12、Q13、及びQ14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q9及びQ15は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。bは、0以上5以下の整数を表す。bが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ9は、互いに同一でも異なっていてもよい。cは、0以上4以下の整数を表す。cが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ15は、互いに同一でも異なっていてもよい。kは、0又は1を表す。
【0086】
【化23】
【0087】
一般式(4)中、Ra、Rb及びRcは、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。qは、0以上4以下の整数を表す。qが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRcは、互いに同一でも異なっていてもよい。m及びnは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。mが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRbは、互いに同一でも異なっていてもよい。nが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRaは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0088】
一般式(2)中、Q1の表すフェニル基は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有するフェニル基であることが好ましく、メチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
【0089】
一般式(2)中、Q2の表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。aは、0又は1を表すことが好ましい。
【0090】
一般式(2)中、Q3〜Q7の表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、n−ブチル基であることがより好ましい。一般式(2)中、Q3〜Q7の表す炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基は、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることがより好ましい。一般式(2)中、Q3〜Q7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表すことが好ましく、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を表すことがより好ましい。
【0091】
一般式(2)中、Q3〜Q7のうちの隣接した二つが互いに結合して、環(より具体的には、ベンゼン環、又は炭素原子数5以上7以下のシクロアルカン)を形成してもよい。例えば、Q3〜Q7のうちの隣接したQ6とQ7とが互いに結合して、ベンゼン環、又は炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを形成してもよい。Q3〜Q7のうちの隣接した二つが互いに結合してベンゼン環を形成する場合、このベンゼン環はQ3〜Q7が結合するフェニル基と縮合して二環縮合環基(ナフチル基)を形成する。Q3〜Q7のうちの隣接した二つが互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを形成する場合、この炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンはQ3〜Q7が結合するフェニル基と縮合して二環縮合環基を形成する。この場合、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンとフェニル基との縮合部位は、二重結合を含んでもよい。Q3〜Q7のうちの隣接した二つが互いに結合して、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを形成することが好ましく、シクロヘキサンを形成することがより好ましい。
【0092】
一般式(2)中、Q1は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有するフェニル基又は水素原子を表すことが好ましい。Q2は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。Q3〜Q7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。Q3〜Q7のうち隣接した二つが互いに結合して環を形成することが好ましい。aは、0又は1を表すことが好ましい。
【0093】
一般式(3)中、Q8及びQ10〜Q14の表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。一般式(3)中、Q8及びQ10〜Q14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフェニル基を表すことが好ましい。一般式(3)中、b及びcは、0を表すことが好ましい。
【0094】
一般式(4)中、Ra及びRbの表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがより好ましい。一般式(4)中、Ra及びRbは、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。m及びnは、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。qは0を表すことが好ましい。
【0095】
一般式(2)で表される正孔輸送剤としては、例えば、化学式(HTM−1)〜(HTM−4)で表される正孔輸送剤(以下、正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−4)と記載することがある)が挙げられる。一般式(3)で表される正孔輸送剤としては、例えば、化学式(HTM−5)〜(HTM−7)で表される正孔輸送剤(以下、正孔輸送剤(HTM−5)〜(HTM−7)と記載することがある)が挙げられる。一般式(4)で表される正孔輸送剤としては、例えば、化学式(HTM−8)〜(HTM−9)で表される正孔輸送剤(以下、正孔輸送剤(HTM−8)〜(HTM−9)と記載することがある)が挙げられる。
【0096】
【化24】
【0097】
【化25】
【0098】
【化26】
【0099】
【化27】
【0100】
【化28】
【0101】
【化29】
【0102】
【化30】
【0103】
【化31】
【0104】
【化32】
【0105】
積層型感光体において、正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0106】
[2−1−3.バインダー樹脂]
バインダー樹脂は、積層型感光体の電荷輸送層又は単層型感光体の感光層に用いられる。バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂(1)を含む。感光体がポリアリレート樹脂(1)を含有することにより、感光体の耐フィルミング性を向上させることができる。
【0107】
第二実施形態に用いられるバインダー樹脂としては、ポリアリレート樹脂(1)を単独で用いてもよいし、ポリアリレート樹脂(1)以外の他の樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(ポリアリレート樹脂(1)以外のポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂)、熱硬化性樹脂(シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はその他架橋性の熱硬化性樹脂)、又は、光硬化性樹脂(エポキシ−アクリル酸系樹脂、又はウレタン−アクリル酸系共重合体)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリアリレート樹脂(1)の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましく、100質量部であることが更に好ましい。
【0108】
第二実施形態において、バインダー樹脂の含有量の比率は、電荷輸送層に含まれるすべての構成要素(例えば、正孔輸送剤、又はバインダー樹脂)の質量の合計に対して40質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0109】
[2−1−4.添加剤]
電荷発生層、電荷輸送層、単層型感光体の感光層及び中間層のうちの少なくとも一つが、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤、又は紫外線吸収剤等)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、電子輸送剤及び電子アクセプター化合物、ドナー、界面活性剤、又はレベリング剤が挙げられる。これらの添加剤のうち、酸化防止剤、並びに電子輸送剤及び電子アクセプター化合物を以下で説明する。
【0110】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物、又はホスファイト化合物が挙げられる。これらの酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール化合物及びヒンダードアミン化合物が好ましい。
【0111】
電子輸送剤及び電子アクセプター化合物としては、例えば、ジフェノキノン誘導体(より具体的には、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン等)が挙げられる。
【0112】
電荷輸送層中の酸化防止剤の添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。酸化防止剤の添加量がこのような範囲内であると、感光体が酸化されることによる電気特性の低下を抑制し易い。
【0113】
[2−2.共通しない構成要素]
積層型感光体では、電荷発生層は、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することある)を含有してもよい。ベース樹脂は、感光体に適用できる限り、特に限定されない。ベース樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル酸系樹脂、又はウレタン−アクリル酸系樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのベース樹脂のうち、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0114】
ベース樹脂は、上述したバインダー樹脂と同様の樹脂も例示されているが、同一の積層型感光体においては、通常、バインダー樹脂とは異なる樹脂が選択される。これは以下の理由を根拠としている。積層型感光体を製造する際、通常、電荷発生層、電荷輸送層の順に形成するため、電荷発生層に、電荷輸送層用塗布液を塗布することになる。電荷輸送層の形成時に、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましい。そこで、ベース樹脂は、同一の積層型感光体においては、通常、バインダー樹脂とは異なる樹脂が選択される。
【0115】
[3.中間層]
第二実施形態に係る感光体は、中間層(例えば、下引き層)を有してもよい。中間層は、例えば、無機粒子、及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層を介在させると、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0116】
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、又は銅等)の粒子、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛等)の粒子、又は非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、無機粒子は、表面処理を施してもよい。
【0117】
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができれば、特に限定されない。
【0118】
[4.感光体の製造方法]
感光体の製造方法について説明する。感光体の製造方法は、例えば、感光層形成工程を有する。
【0119】
[4−1.積層型感光体の製造方法]
積層型感光体の製造方法において、感光層形成工程は、電荷発生層形成工程と電荷輸送層形成工程とを有する。電荷発生層形成工程では、まず、電荷発生層を形成するための塗布液(以下、電荷発生層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、適宜な方法で乾燥することによって、塗布した電荷発生層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷発生層を形成する。電荷発生層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、ベース樹脂と、溶剤とを含む。このような電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤を溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷発生層用塗布液は、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。
【0120】
電荷輸送層形成工程では、まず、電荷輸送層を形成するための塗布液(以下、電荷輸送層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する。次いで、適宜な方法で乾燥することによって、塗布した電荷輸送層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷輸送層を形成する。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(1)と、溶剤とを含む。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、ポリアリレート樹脂(1)とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。電荷輸送層形成用塗布液には、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。
【0121】
[4−2.単層型感光体の製造方法]
単層型感光体の製造方法において、感光層形成工程では、感光層を形成するための塗布液(以下、感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。感光層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、適宜な方法で乾燥することによって、塗布した感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して感光層を形成する。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(1)と、溶剤とを含む。このような感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(1)とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。感光層用塗布液は、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。
【0122】
以下、感光層形成工程の詳細を説明する。電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液、及び感光層用塗布液(以下、塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できれば、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、又はジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤を用いることが好ましい。
【0123】
更に、電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。積層型感光体を製造する際、通常、電荷発生層、電荷輸送層の順に形成するため、電荷発生層上に、電荷輸送層用塗布液を塗布することになる。電荷輸送層形成時に、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが求められるからである。
【0124】
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0125】
塗布液は、各成分の分散性、又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
【0126】
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
【0127】
塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
【0128】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に有してもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0129】
以上説明した本発明の電子写真感光体は、耐摩耗性に優れるため、種々の画像形成装置で好適に使用できる。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0131】
積層型感光体を製造するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を準備した。
【0132】
(電荷発生剤)
第二実施形態で説明した電荷発生剤(CGM−2)を準備した。電荷発生剤(CGM−2)は、化学式(CGM−2)で表されるチタニルフタロシアニン(Y型チタニルフタロシアニン結晶)であった。結晶構造はY型であった。
【0133】
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルチャートにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=9.2°、14.5°、18.1°、24.1°、27.2°にピークを有しており、主ピークは27.2°であった。なお、CuKα特性X線回折スペクトルは、実施形態で説明した測定装置及び測定条件で測定された。
【0134】
[チタニルフタロシアニンの合成]
Y型チタニルフタロシアニン結晶を、以下のように調製した。まず、チタニルフタロシアニンを合成した。アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17mol)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073mol)と、キノリン300gと、尿素2.28g(0.038mol)とを加えた。フラスコの内容物を攪拌しつつフラスコの内温を150℃まで昇温した。
【0135】
次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温した。その後、フラスコの内温を215℃に維持しつつ更に2時間、フラスコの内容物を攪拌して反応させた。反応終了後、フラスコの内温を150℃まで冷却した時点で内容物をフラスコから取り出した。内容物をガラスフィルターによってろ別し固体を得た。固体をN,N−ジメチルホルムアミド及びメタノールで順次洗浄した。その後、真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
【0136】
[Y型チタニルフタロシアニン結晶の製造]
次いで、Y型チタニルフタロシアニン結晶を調製した。この調製では、岩礁化前処理と、顔料化処理とを行った。
【0137】
(顔料化前処理)
青紫色の固体12gを反応容器へ投入し、N,N−ジメチルホルムアミド100mL中に加えた。反応容器の内容物を攪拌しつつ反応容器の内温を130℃に昇温し、反応容器の内温を130℃に維持して更に2時間攪拌した。次いで、2時間経過した時点で温度保持を停止し、反応容器を冷却した。反応容器の内温が23±1℃となった時点で攪拌を停止した。この状態で12時間、反応容器の内容物を静置して安定化処理を行った。そして安定化された後に内容物の上澄みをガラスフィルターによってろ別し、固体を得た。固体をメタノールで洗浄した後、真空乾燥した。その結果、チタニルフタロシアニンの粗結晶11.8gを得た。
【0138】
(顔料化処理)
チタニルフタロシアニンの粗結晶10gを、97wt%の濃硫酸100gに加えて溶解し、溶液を調製した。なお、かかる酸処理は、5℃で1時間行った。次いで、この溶液を、氷冷下の純水5L中に毎分10mLにて滴下した。その後15±3℃付近で30分間、攪拌した。その後30分静置した。次いで溶液をガラスフィルターでろ過し、ウェットケーキを得た。
【0139】
次いで、ウェットケーキをメタノール500mLに懸濁して洗浄した。その後メタノールをガラスフィルターによってろ別した。そして、かかる洗浄を4回行った。その後、ウェットケーキを20℃の純水500mLで懸濁して洗浄し、洗浄後の水をガラスフィルターでろ過した。
【0140】
次いで、洗浄後のウェットケーキ5gを、混合溶媒中に加え、溶液を得た。混合溶媒は、水0.75gと、クロロベンゼン100gとを含んでいた。溶液を50℃にて24時間加熱し攪拌した。上澄みをガラスフィルターによってろ別し、結晶を得た。結晶を100mLのメタノールで漏斗上にて洗浄した。その後、50℃で5時間、真空乾燥させて、化学式(CGM−2)で表されるY型チタニルフタロシアニン結晶(青色粉末)4.5gを得た。
【0141】
(正孔輸送剤)
第二実施形態で説明した正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−9)を準備した。
【0142】
(ポリアリレート樹脂)
第一実施形態で説明したポリアリレート樹脂(Resin−1)〜(Resin−7)に加えて、ポリアリレート樹脂(Resin−8)〜(Resin−11)を準備した。ポリアリレート樹脂(Resin−8)〜(Resin−11)は、それぞれ化学式(Resin−8)〜(Resin−11)で表される。
【0143】
【化33】
【0144】
【化34】
【0145】
【化35】
【0146】
【化36】
【0147】
(ポリアリレート樹脂(Resin−1)〜(Resin−7)の合成方法)
以下に、ポリアリレート樹脂(Resin−1)〜(Resin−7)の合成方法を説明する。
【0148】
[ポリアリレート樹脂(Resin−1)の作製]
三口フラスコを反応容器として用いた。この反応容器は、温度計、三方コック、及び滴下ロート200mLを備えた容量1Lの三口フラスコである。反応容器に9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン31.25g(82.56ミリモル)と、t−ブチルフェノール0.124g(0.826ミリモル)と、水酸化ナトリウム7.84g(196ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.240g(0.768ミリモル)とを投入した。次いで、反応容器内をアルゴン置換した。その後、水600mLを更に反応容器に投入した。反応容器の内温20℃の条件下で、反応容器の内容物を1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物を冷却し、反応容器の内温を10℃まで降温した。このようにしてアルカリ性水溶液を調製した。
【0149】
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド9.84g(38.9ミリモル)と、4,4’−オキシビス安息香酸クロリド11.47g(38.9ミリモル)とをクロロホルム(アミレン添加品)300gに溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0150】
次いで、アルカリ水溶液の反応容器の内温を10℃に維持し、反応容器内の内容物を攪拌した状態とした。アルカリ水溶液へクロロホルム溶液を投入し、重合反応を開始させた。重合反応は、反応容器の内容物を攪拌させて反応容器内の内温を13±3℃に維持しつつ、3時間進行させた。その後、デカントを用いて上層(水層)を除去し、有機層を得た。
【0151】
反応容器として容量2Lの三角フラスコを用いた。反応容器にイオン交換水500mLを投入した後に有機層を投入した。更に、反応容器にクロロホルム300gと、酢酸6mLとを添加した。反応容器の内容物を室温(25℃)で30分間攪拌した。次いで、デカントで上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、イオン交換水500mLを用いて有機層を分液ロートにて8回洗浄した。
【0152】
水洗後の有機層を分液により取り出した。有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lのビーカーに1.5Lのメタノールを投入した。メタノールを攪拌した状態で、有機層をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過によりろ別した。得られた沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、ポリアリレート樹脂(Resin−1)を得た。ポリアリレート樹脂(Resin−1)の収量は39.7gであり、収率は88.1%であった。
【0153】
[ポリアリレート樹脂(Resin−2)〜(Resin−7)の作製]
9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンをポリアリレート樹脂((Resin−2)〜(Resin−7))の出発物質である芳香族ジオールに変更し、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド及び4,4’−オキシビス安息香酸クロリドをポリアリレート樹脂((Resin−2)〜(Resin−7))の出発物質であるハロゲン化アルカノイルに変更した以外は、ポリアリレート樹脂(Resin−1)と同様にしてそれぞれポリアリレート樹脂(Resin−2)〜(Resin−7)を製造した。また、ポリアリレート樹脂(Resin−2)〜(Resin−7)の製造における出発物質の物質量は、ポリアリレート樹脂の製造における物質量と同様であった。ここで、出発物質の物質量は、芳香族ジカルボン酸の合計物質量、及び芳香族ジオールの物質量を示す。
【0154】
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、作製したポリアリレート樹脂(Resin−1)〜(Resin−7)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうちポリアリレート樹脂(Resin−1)を代表例として挙げる。以下に、ポリアリレート樹脂(Resin−1)の化学シフト値を示す。
ポリアリレート樹脂(Resin−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.81(s, 1H), 8.26(d, 1H), 8.20(d, 2H), 8.09(d, 1H), 7.74−7.80(m, 2H), 7.28−7.48(m, 7H), 6.99−7.18(m, 7H), 2.11−2.18(m, 6H).
【0155】
図2は、ポリアリレート樹脂(Resin−1)の1H−NMRスペクトルを示す。図2中、横軸は化学シフト(単位:ppm)を示し、縦軸は信号強度(単位:任意単位)を示す。1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、ポリアリレート樹脂(Resin−1)が得られていることを確認した。他のポリアリレート樹脂(Resin−2)〜(Resin−7)も同様にして、1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、それぞれポリアリレート樹脂(Resin−2)〜(Resin−7)が得られていることを確認した。
【0156】
<<感光体の製造>>
[感光体(A−1)]
以下、実施例1に係る感光体(A−1)の製造について説明する。
【0157】
(中間層の形成)
はじめに、表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−A」、平均一次粒径10nm)を準備した。詳しくは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、更に、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理したものを準備した。次いで、表面処理された酸化チタン(2質量部)と、ポリアミド樹脂であるアミラン(登録商標)(東レ株式会社製「CM8000」)(1質量部)とを、メタノール(10質量部)、ブタノール(1質量部)及びトルエン(1質量部)を含む溶剤に対して添加した。アミランは、ポリアミド6,ポリアミド12,ポリアミド66,及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂であった。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶媒を5時間混合し、溶剤中に材料を分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。
【0158】
得られた中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、ディップコート法を用いて、導電性基体の表面に中間層用塗布液を塗布した。導電性基体としてアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm、最大高さRy=0.2 鏡面素管)を用いた。続いて、塗布した中間層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚1.5μm)を形成した。
【0159】
(電荷発生層の形成)
Y型チタニルフタロシアニン結晶(1.5質量部)と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX−5」)(1質量部)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)及びテトラヒドロフラン(40質量部)を含む溶剤に対して添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶媒を12時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を作製した。得られた電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。次いで、得られたろ過液を、上述のようにして形成された中間層上にディップコート法を用いて塗布し、50℃で5分間乾燥させた。これにより、中間層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
【0160】
(電荷輸送層の形成)
正孔輸送剤(HTM−1)50質量部と、添加剤としてのヒンダードフェノール酸化防止剤(BASF株式会社製「イルガノックス(登録商標)1010」)2質量部と、電子アクセプター化合物として3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン2質量部と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(Resin−1)(粘度平均分子量40,000)100質量部とを、テトラヒドロフラン550質量部及びトルエン150質量部を含む溶剤に対して添加した。これらを12時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0161】
電荷発生層用塗布液と同様の操作により、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布した。その後、120℃で40分間乾燥させて、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚20μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。感光体(A−1)は、積層型感光体であって、導電性基体上に、中間層、電荷発生層、及び電荷輸送層が、この順で積層された構成を有していた。
【0162】
[感光体(A−2)〜(A−15)及び感光体(B−1)〜(B−4)]
正孔輸送剤(HTM−1)の代わりに表1に記載の正孔輸送剤を用いた。バインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(Resin−1)の代わりに表1に記載のバインダー樹脂を用いた。そのようにして感光体(A−2)〜(A−15)及び感光体(B−1)〜(B−4)をそれぞれ得た。表1は感光体(A−1)〜(A−15)及び感光体(B−1)〜(B−4)の構成を示す。表1中、欄「正孔輸送剤の種類」のHTM−1〜HTM−9は、それぞれ正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−9)を示す。欄「バインダー樹脂の種類」のResin−1〜Resin−11は、それぞれポリアリレート樹脂(Reisn−1)〜(Resin−11)を示す。欄「バインダー樹脂の分子量」は、バインダー樹脂の粘度平均分子量を示す。
【0163】
[感光体の性能評価]
<耐フィルミング性の評価>
(画像評価)
感光体(A−1)〜(A−15)及び感光体(B−1)〜(B−4)の何れかを評価機に搭載した。評価機は、改造機(株式会社沖データ製「カラープリンターC711dn」の改造機)であった。評価機のトナーカートリッジにシアントナーを充填した。高温高湿環境(温度32℃及び相対湿度85%RH:以下、HH環境と記載することがある)下及び16秒間隔で2,000枚印字した。次いで、低温低湿環境(温度10℃及び相対湿度15%RH:以下、LL環境と記載することがある)下で2,000枚印字した。次いで、2時間静置した後に、LL環境下にてソリッド画像(画像濃度100%)を1枚印字した。ソリッド画像を評価画像とした。目視で評価画像を観察しフィルミングの発生の有無を確認して、下記基準で耐フィルミング性を評価した。
(評価基準)
○(良い):画像の欠け(フィルミング)が確認されなかった。
×(悪い):画像の欠け(フィルミング)が確認された。
【0164】
(フィルミング率)
[感光体表面の画像作成]
印刷終了後(上記画像評価において評価画像を作成した後)、感光体を画像形成装置から取り出し、感光体表面におけるトナーフィルミングの発生の程度を観察した。具体的には、光学顕微鏡(株式会社ニコン社製「セナーK・K」)を用いて感光体表面を観察し、観察画像を得た。光学顕微鏡の視野は、1.7mm×2.1mm角であり、倍率は50倍であった。感光体の観察箇所は、以下の示す感光体の上端25mm、中央部、及び下端から25mmの三か所であった。
測定箇所1:感光体の中心部
測定箇所2:感光体の上端面から下端面に向かう方向に上端面から20mm移動した箇所
測定箇所3:感光体の下端面から上端面に向かう方向に下端面から20mm移動した箇所
【0165】
[画像処理]
観察画像に対して二値化処理を施した。具体的には、画像解析ソフトウェア(Image J)を用いて、観察画像に対して輝度値180を閾値とした2値化処理を行った。観察画像を構成する画素は、各々、0以上255以下の輝度値を有していた。閾値未満の輝度値を有する画素は、トナーフィルミングが発生している領域に対応する。一方、閾値以上の輝度値を有する画素は、トナーフィルミングが発生していない領域に対応する。
【0166】
二値化した画像を画像解析し、画像全体に対する付着物の面積の割合を算出した。具体的には、2値化処理によりトナーフィルミングが発生している領域の面積(At)と、トナーフィルミングが発生していない領域の面積(An)とを求めた。得られたAt及びAnから、計算式1に従って、トナーのフィルミングが発生している領域の面積比率(A)を求めた。
面積比率A[%]=[At/(At+An)]×100・・(計算式1)
【0167】
感光体の3箇所の観察画像について面積比率Aを求めた。測定箇所1、2及び3について求められた面積比率Aを、各々、面積比率A1、A2及びA3とした。面積比率A1、A2及びA3の平均値「(A1+A2+A3)/3」を算出し、得られた平均値をフィルミング率として耐トナーフィルミング性の評価結果とした。
フィルミング率が小さい程、感光体表面にトナーフィルミングが発生していないことを示す。例えば、フィルミング率が5.0%以下であると、形成される画像に画像不良が現れ難い。
【0168】
<電気特性評価>
(帯電電位V0の測定)
感光体(A−1)〜(A−15)及び感光体(B−1)〜(B−4)の何れかに対して、ドラム感度試験機(ジュンテック株式会社製)を用いて、回転数31rpm及びドラム流れ込み電流−10μAの条件下で、帯電させた。感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を帯電電位(V0)とした。測定環境は、温度23℃、かつ相対湿度50%RHであった。
【0169】
(感度電位VLの測定)
感光体(A−1)〜(A−15)及び感光体(B−1)〜(B−4)の何れかに対して、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、回転数31rpm及び帯電電位−600Vの条件で帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.8μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射終了後、80ミリ秒が経過した後の表面電位を測定した。測定した表面電位を感度電位(VL)とした。測定環境は、温度23℃、かつ相対湿度50%RHであった。
【0170】
表1は、感光体(A−1)〜(A−15)及び感光体(B−1)〜(B−4)の帯電電位V0、感度電位VL、フィルミング率、及び画像評価の結果を示す。
【0171】
【表1】
【0172】
表1に示すように、感光体(A−1)〜(A−15)では、電荷輸送層は、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(Resin−1)〜(Resin−7)の何れかを含有していた。ポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜(Resin−7)は、一般式(1)で表される繰返し単位を有していた。表1に示すように、感光体(A−1)〜(A−15)では、耐フィルミング性の評価結果が全て○(良い)であった。
【0173】
表1に示すように、感光体(B−1)〜(B−4)では、電荷輸送層はバインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(Resin−8)〜(Resin−11)の何れかを含有していた。ポリアリレート樹脂(Resin−8)〜(Resin−11)は、一般式(1)で表される繰返し単位を有していなかった。表1に示すように、感光体(B−2)〜(B−3)では、耐フィルミング性の評価結果が全て×(悪い)であった。感光体(B−1)及び(B−4)は、耐フィルミング性の評価を実行できなかった。具体的には、感光体(B−1)では、バインダー樹脂(Resin−8)が溶媒に十分に溶解せず、電荷輸送層用塗布液を調製できなかった。感光体(B−4)では、電荷輸送層用塗布液がゲル化し、感光層を形成できなかった。
【0174】
表1から明らかなように、一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂(Resin−1)〜(Resin−7)は、ポリアリレート樹脂(Resin−9)〜(Resin−11)に比べ、感光体の耐フィルミング性を向上させる。また、一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂を含む感光体(感光体(A−1)〜(A−15))は、一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂を含まない感光体(感光体(B−1)〜(B−4))に比べ、耐フィルミング性が優れる。従って、本発明に係る感光体によれば、耐フィルミング性に優れることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明に係る電子写真感光体は、複合機のような画像形成装置に利用できる。
【符号の説明】
【0176】
1 積層型電子写真感光体
2 導電性基体
3 感光層
3a 電荷発生層
3b 電荷輸送層
4 中間層
図1
図2