(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の主面と平行な方向における、前記トレンチの前記側面と前記底部との接点と、前記第1領域の側面との距離は、0.1μm以上0.5μm以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
前記炭化珪素基板を形成する工程は、前記第4領域に対してイオン注入を行うことにより、前記第1導電型を有し、かつ前記第4領域よりも高い不純物濃度を有する第6領域を形成する工程をさらに含み、
前記第3領域を形成する工程において、前記第1領域および前記第6領域の各々上に前記第3領域が形成される、請求項8に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0018】
(1)本発明の一態様に係る炭化珪素半導体装置1は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜15と、ゲート電極27と、第1電極16と、第2電極20とを備えている。炭化珪素基板10は、第1の主面10aと、第1の主面10aと反対側の第2の主面10bとを有する。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域12と、第1不純物領域12と接し、かつ第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2不純物領域13と、第1導電型を有し、第2不純物領域13によって第1不純物領域12から隔てられた第3不純物領域14と、第2導電型を有し、かつ第2不純物領域13よりも高い不純物濃度を有する第4不純物領域17とを含む。炭化珪素基板10の第1の主面10aには、第1の主面10aと連接する側面S1と、側面S1と連接する底部B1とを有するトレンチT1が形成されている。第4不純物領域17は、トレンチT1の底部B1と第2不純物領域13の一部とに対面する第1領域17cと、第2不純物領域13に対面する第2領域17aとを含む。第1不純物領域12は、トレンチT1の側面S1と、第2不純物領域13と、第1領域17cと、第2領域17aとに接する第3領域12aと、第3領域12aよりも第2の主面10b側に位置し、第3領域12aと電気的に接続され、かつ第3領域12aよりも低い不純物濃度を有する第4領域12cとを含む。第2の主面10bに対面する第1領域17cの面17c1は、第2の主面10bに対面する第2領域の面17a1よりも、第2の主面10bに対して垂直な方向において第2の主面10b側に位置している。ゲート絶縁膜15は、トレンチT1の側面S1において、第3領域12aと、第2不純物領域13と、第3不純物領域14とに接する。ゲート電極27は、ゲート絶縁膜15上に設けられている。第1電極16は、第1の主面10a側において、第3不純物領域14と電気的に接続されており、第2電極20は、第2の主面10b側において、第4領域12cと電気的に接続されている。第4不純物領域17は、第1電極16と電気的に接続されている。
【0019】
上記(1)に係る炭化珪素半導体装置によれば、第4不純物領域17は、トレンチT1の底部B1と第2不純物領域13の一部とに対面する第1領域17cと、第2不純物領域13に対面する第2領域17aとを含む。第2の主面10bに対面する第1領域17cの面17c1は、第2の主面10bに対面する第2領域の面17a1よりも、第2の主面10bに対して垂直な方向において第2の主面10b側に位置している。これにより、第2不純物領域13が高電界に晒されることを抑制することができる。また第3領域12aが第4領域12cよりも高い不純物濃度を有することにより、オン抵抗を低減することができる。さらにトレンチT1の底部B1と第2不純物領域13の一部とに対面する第1領域17cを設けることにより、トレンチT1の側面S1および底部B1に接するゲート絶縁膜15に高い電界がかかり、ゲート絶縁膜15が劣化または破壊されることを抑制することができる。特に、第2不純物領域13においてアバランシェが発生する部分をゲート絶縁膜15から離間させることにより、アバランシェ発生時におけるゲート絶縁膜15の劣化または破壊を効果的に抑制することができる。結果として、高い信頼性を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0020】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置において好ましくは、第4不純物領域17は、第2領域17aから見て、第2不純物領域13と反対側に位置し、かつ第2領域17aと接する第5領域17bをさらに含む。これにより、第2不純物領域13が高電界に晒されることを効果的に抑制することができる。
【0021】
(3)上記(2)に係る炭化珪素半導体装置において好ましくは、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1に対して突出するように設けられている。これにより、第1領域17cと第5領域17bとにより電界を一旦狭窄した上で、第2領域17aで電界をさらに狭窄することにより、第2不純物領域13に対して直接高い電界がかからないようにすることができる。
【0022】
(4)上記(2)に係る炭化珪素半導体装置において好ましくは、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1とは反対側に後退するように設けられている。これにより、第1領域17cと第5領域17bとにより電界を一旦狭窄した上で、第2領域17aで電界を第1の主面10aと平行な方向に広げることにより、第2不純物領域13にかかる電界の強度を弱めることができる。
【0023】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置において好ましくは、第2の主面10bに対して垂直な方向における、第2不純物領域13と第1領域17cとの間の距離aは、0.2μm以上2μm以下である。これにより、高い耐圧を維持しつつ低い特性オン抵抗を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0024】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置において好ましくは、第2の主面10bと平行な方向における、トレンチT1の側面S1と底部B1との接点と、第1領域17cの側面17c2との距離bは、0.1μm以上0.5μm以下である。これにより、ゲート絶縁膜15にかかる電界の強度を低く維持しつつ低い特性オン抵抗を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0025】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置において好ましくは、第2の主面10bと平行な方向における、第1領域17cの側面17c2と、第2領域17aの側面17a2との距離cは、0.6μm以上1.5μm以下である。これにより、高い耐圧を維持しつつ低い特性オン抵抗を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0026】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置において好ましくは、第3領域12aの不純物濃度は、1×10
16cm
-3以上4×10
17cm
-3以下である。これにより、低い特性オン抵抗を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0027】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置において好ましくは、第2不純物領域13の不純物濃度は、1×10
15cm
-3以上4×10
17cm
-3以下である。これにより、低い特性オン抵抗を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0028】
(10)本発明の一態様に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法は以下の工程を備えている。第1の主面10aと、第1の主面10aと反対側の第2の主面10bとを有する炭化珪素基板10が準備される。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域12と、第1不純物領域12と接し、かつ第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2不純物領域13と、第1導電型を有し、第2不純物領域13によって第1不純物領域12から隔てられた第3不純物領域14と、第2導電型を有し、かつ第2不純物領域13よりも高い不純物濃度を有する第4不純物領域17とを含む。炭化珪素基板10の第1の主面10aには、第1の主面10aと連接する側面S1と、側面S1と連接する底部B1とを有するトレンチT1が形成されている。第4不純物領域17は、トレンチT1の底部B1と第2不純物領域13の一部とに対面する第1領域17cと、第2不純物領域13に対面する第2領域17aとを含む。第1不純物領域12は、トレンチT1の側面S1と、第2不純物領域13と、第1領域17cと、第2領域17aとに接する第3領域12aと、第3領域12aよりも第2の主面10b側に位置し、第3領域12aと電気的に接続され、かつ第3領域12aよりも低い不純物濃度を有する第4領域12cとを含む。第2の主面10bに対面する第1領域17cの面17c1は、第2の主面10bに対面する第2領域17aの面17a1よりも、第2の主面10bに対して垂直な方向において第2の主面10b側に位置している。トレンチT1の側面S1において、第3領域12aと、第2不純物領域13と、第3不純物領域14とに接するゲート絶縁膜15が形成される。ゲート絶縁膜15上にゲート電極27が形成される。第1の主面10a側において、第3不純物領域14と電気的に接続される第1電極16が形成される。第2の主面10b側において、第4領域12cと電気的に接続される第2電極20が形成される。第4不純物領域17は、第1電極16と電気的に接続されている。
【0029】
上記(10)に係る炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、第4不純物領域17は、トレンチT1の底部B1と第2不純物領域13の一部とに対面する第1領域17cと、第2不純物領域13に対面する第2領域17aとを含む。第2の主面10bに対面する第1領域17cの面17c1は、第2の主面10bに対面する第2領域の面17a1よりも、第2の主面10bに対して垂直な方向において第2の主面10b側に位置している。これにより、第2不純物領域13が高電界に晒されることを抑制することができる。またトレンチT1の底部B1と第2不純物領域13の一部とに対面する第1領域17cを設けることにより、トレンチT1の側面S1および底部B1に接するゲート絶縁膜15に高い電界がかかり、ゲート絶縁膜15が劣化または破壊されることを抑制することができる。特に、ベース領域13においてアバランシェが発生する部分をゲート絶縁膜15から離間させることにより、アバランシェ発生時におけるゲート絶縁膜15の劣化または破壊を効果的に抑制することができる。結果として、高い信頼性を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0030】
(11)上記(10)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10を形成する工程は、エピタキシャル成長により第4領域12cを形成する工程と、第4領域12cに対してイオン注入を行うことにより、第1領域17cを形成する工程と、エピタキシャル成長により第1領域17c上に第3領域12aを形成する工程と、第3領域12aに対してイオン注入を行うことにより、第2領域17aを形成する工程とを含む。これにより、高い不純物濃度を有する第1領域17cと第2領域17aとを効果的に形成することができる。
【0031】
(12)上記(11)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10を形成する工程は、第4領域12cに対してイオン注入を行うことにより、第1導電型を有し、かつ第4領域12cよりも高い不純物濃度を有する第6領域12bを形成する工程をさらに含む。第3領域12aを形成する工程において、第1領域17cおよび第6領域12bの各々上に第3領域12aが形成される。これにより、特性オン抵抗を低減することができる。
【0032】
(13)上記(10)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10を形成する工程は、エピタキシャル成長により第4領域12cを形成する工程と、エピタキシャル成長により第3領域12aを第4領域12c上に形成する工程と、第1注入エネルギーで第4領域12c内にイオン注入を行うことにより、第4領域12cに接する第1領域17cを形成する工程と、第1注入エネルギーよりも低い第2注入エネルギーで第3領域12a内にイオン注入を行うことにより、第3領域12aに接する第2領域17aを形成する工程とを含む。これにより、簡易な方法で、第1領域17cおよび第2領域17aを形成することができる。
【0033】
(14)上記(10)〜(13)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10を形成する工程は、エピタキシャル成長により、第2領域17aおよび第3領域12aの双方に接する第2不純物領域13を形成する工程をさらに含む。これにより、均一な不純物濃度を有する第2不純物領域13を形成することができる。
【0034】
(15)上記(10)〜(14)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第4不純物領域17は、第2領域17aから見て、第2不純物領域13と反対側に位置し、かつ第2領域17aと接する第5領域17bをさらに含む。これにより、第2不純物領域13が高電界に晒されることを効果的に抑制することができる。
【0035】
(16)上記(15)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1に対して突出するように設けられている。これにより、第1領域17cと第5領域17bとにより電界を一旦狭窄した上で、第2領域17aで電界をさらに狭窄することにより、第2不純物領域13に対して直接高い電界がかからないようにすることができる。
【0036】
(17)上記(15)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1とは反対側に後退するように設けられている。これにより、第1領域17cと第5領域17bとにより電界を一旦狭窄した上で、第2領域17aで電界を第1の主面10aと平行な方向に広げることにより、第2不純物領域13にかかる電界の強度を弱めることができる。
【0037】
(18)上記(10)〜(17)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第2の主面10bに対して垂直な方向における、第2不純物領域13と第1領域17cとの間の距離aは、0.2μm以上2μm以下である。これにより、高い耐圧を維持しつつ低い特性オン抵抗を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0038】
(19)上記(10)〜(18)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第2の主面10bと平行な方向における、トレンチT1の側面S1と底部B1との接点と、第1領域17cの側面17c2との距離は、0.1μm以上0.5μm以下である。これにより、ゲート絶縁膜15にかかる電界の強度を低く維持しつつ低い特性オン抵抗を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0039】
(20)上記(10)〜(19)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第2の主面10bと平行な方向における、第1領域17cの側面17c2と、第2領域17aの側面17a2との距離は、0.6μm以上1.5μm以下である。これにより、高い耐圧を維持しつつ低い特性オン抵抗を有する炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【0040】
(21)上記(10)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第3領域12aは、イオン注入により形成される。これにより、デバイス作製工程の途中でエピ工程を入れる必要がなくなり工程を簡素化して工期を短縮することができる。
【0041】
(22)上記(10)〜(13)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第2不純物領域13は、イオン注入により形成される。これにより、デバイス作製工程の途中でエピ工程を入れる必要がなくなり工程を簡素化して工期を短縮することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
【0042】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFETの構成について説明する。
【0043】
図1を参照して、実施の形態1に係るMOSFET1は、炭化珪素基板10と、ゲート電極27と、ゲート絶縁膜15と、層間絶縁膜21と、ソース電極16と、ソース配線19と、ドレイン電極20と、保護膜24とを主に有している。炭化珪素基板10は、第1の主面10aと、第1の主面10aと反対側の第2の主面10bとを有し、炭化珪素単結晶基板11と、炭化珪素単結晶基板11上に設けられた炭化珪素エピタキシャル層5とを主に含む。炭化珪素単結晶基板11は、炭化珪素基板10の第2の主面10bを構成し、かつ炭化珪素エピタキシャル層5は、炭化珪素基板10の第1の主面10aを構成する。
【0044】
炭化珪素単結晶基板11は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素単結晶からなる。炭化珪素基板10の第1の主面10aの最大径は、たとえば150mmであり、好ましくは150mm以上である。炭化珪素基板10の第1の主面10aは、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下オフした面である。炭化珪素単結晶基板11の厚みは、たとえば400μmである。炭化珪素単結晶基板11の抵抗率はたとえば0.017Ωcmである。
【0045】
炭化珪素エピタキシャル層5は、ドリフト領域12(第1不純物領域12)と、ベース領域13(第2不純物領域13)と、ソース領域14(第3不純物領域14)と、コンタクト領域18と、埋込領域17(第4不純物領域17)と、バッファ層22とを主に有している。ドリフト領域12は、窒素などのn型を付与するためのn型不純物(ドナー)を含むn型(第1導電型)の領域である。ドリフト領域12は、バッファ層22上に設けられた第4領域12cと、第4領域12c上に設けられた第6領域12bと、第6領域12b上に設けられた第3領域12aとを有する。第3領域12aは、ベース領域13と接する。第6領域12bは、第3領域12aと接し、第3領域12aから見てベース領域13と反対側に位置する。第4領域12cは、第6領域12bと接し、第6領域12bから見て第3領域12aと反対側に位置する。バッファ層22は、たとえば第4領域12cよりも高い不純物濃度を有し、かつ炭化珪素単結晶基板11と第4領域12cとの間に設けられている。
【0046】
ベース領域13(第2不純物領域13)は、ドリフト領域12と接するようにドリフト領域12および埋込領域17の各々上に設けられている。ベース領域13は、n型とは異なるp型(第2導電型)を有する領域である。ベース領域13は、たとえばAl(アルミニウム)またはB(ホウ素)などのp型を付与するためのp型不純物(アクセプタ)を含んでいる。好ましくは、ベース領域13のp型不純物の濃度は、1×10
15cm
-3以上4×10
17cm
-3以下であり、より好ましくは3×10
15cm
-3以上3×10
16cm
-3以下であり、さらに好ましくは5×10
15cm
-3以上1×10
16cm
-3以下である。ベース領域13のp型不純物の濃度は、5×10
15cm
-3以上であることが好ましい。ベース領域13は、たとえばエピタキシャル成長により形成されたエピタキシャル層である。ベース領域13の厚みは、たとえば0.5μm以上1.5μm以下である。
【0047】
ソース領域14(第3不純物領域14)は、ベース領域13によってドリフト領域12から隔てられるようにベース領域13上に設けられている。ソース領域14は、リンなどのn型を付与するためのn型不純物を含んでおり、n型を有する。ソース領域14が含むn型不純物の濃度は、ドリフト領域12の第3領域12a、第6領域12bおよび第4領域12cの各々が含むn型不純物の濃度よりも高い。ソース領域14が含むリンなどのn型不純物の濃度は、たとえば2×10
18cm
-3以上1×10
19cm
-3以下である。ソース領域14の厚みは、たとえば0.1μm以上0.4μm以下である。
【0048】
コンタクト領域18は、たとえばアルミニウムまたはホウ素などのp型不純物を含むp型領域である。コンタクト領域18は、ソース領域14およびベース領域13の各々に挟まれるように、ソース領域14およびベース領域13の各々を貫通して埋込領域17に達するように設けられている。言い換えれば、コンタクト領域18は、炭化珪素基板10の第1の主面10aと埋込領域17とを繋ぐように形成されている。コンタクト領域18が含むp型不純物の濃度は、ベース領域13が含むp型不純物の濃度よりも高い。コンタクト領域18が含むアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、たとえば2×10
18cm
-3以上1×10
19cm
-3以下である。コンタクト領域18の厚みは、たとえば0.1μm以上1.5μm以下である。
【0049】
炭化珪素基板10の第1の主面10aには、第1の主面10aと連接する側面S1と、側面S1と連接する底部B1とを有するトレンチT1が形成されている。トレンチT1の側面S1は、ソース領域14およびベース領域13の各々を貫通し、ドリフト領域12の第3領域12aに至り、トレンチT1の底部B1は、ドリフト領域12の第3領域12aに位置する。つまり、第3領域12aと、ベース領域13と、ソース領域14とはトレンチの側面S1に接し、第3領域12aはトレンチT1の底部B1に接する。トレンチT1の側面S1は、炭化珪素基板10の第1の主面10aに対してほぼ垂直な方向に沿って延在しており、かつトレンチT1の底部B1は、炭化珪素基板10の第1の主面10aとほぼ平行である。トレンチT1の側面S1と底部B1との境界は曲率を有するように形成されていてもよい。トレンチT1の深さは、たとえば0.5μm以上2.3μm以下である。トレンチT1の幅は、たとえば0.5μm以上3μm以下である。
【0050】
埋込領域17は、たとえばアルミニウムまたはホウ素などのp型不純物を含み、p型を有する。埋込領域17は、ベース領域13よりも高い不純物濃度を有する。埋込領域17は、ソース電極16と電気的に接続されている。埋込領域17は、第1領域17cと、第2領域17aとを主に含んでいる。埋込領域17は、第5領域17bを有していてもよい。第1領域17c、第2領域17aおよび第5領域17bの各々が含むアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、たとえば1×10
18cm
-3以上2×10
19cm
-3以下であり、好ましくは、2×10
18cm
-3以上9×10
18cm
-3以下である。第1領域17cは、トレンチT1の底部B1とベース領域13の一部とに対面する。第1領域17cは、トレンチT1の底部B1の全面を覆い、かつトレンチT1の側面S1からベース領域13に向かう方向に沿って延在している。好ましくは、第1領域17cは、ゲート絶縁膜15と接するベース領域13におけるチャネル領域CH全体を覆うように配置されている。炭化珪素基板10の第2の主面10bと平行な方向に沿って見た場合(
図1の視野)において、第1領域17cの幅は、トレンチT1の底部B1の幅よりも大きい。第1領域17cの厚みは、たとえば0.5μm以上1.5μm以下である。
【0051】
第2領域17aは、ベース領域13に対面して設けられている。第2領域17aは、ベース領域13と、第2の主面10bとの間に設けられている。第2領域17aは、ベース領域13と直接接していてもよいし、ベース領域13から離間していてもよい。第2の主面10bと平行な方向において、第2領域17aの幅は、コンタクト領域18の幅よりも大きくてもよい。好ましくは、第2領域17aは、コンタクト領域18と、ベース領域13とに接して設けられている。第2領域17aの厚みは、たとえば0.5μm以上1.5μm以下である。
【0052】
第2の主面10bに対面する第1領域17cの面17c1は、第2の主面10bに対面する第2領域17aの面17a1よりも、第2の主面10bに対して垂直な方向において第2の主面10b側に位置している。言い換えれば、第2の主面10bに対して垂直な方向において、第2の主面10bと第1領域17cの面17c1との間の距離は、第2の主面10bと第2領域17aの面17a1よりも短い。埋込領域17は、第2領域17aから見て、ベース領域13と反対側に位置し、かつ第2領域17aと接する第5領域17bをさらに含むことが好ましい。第5領域17bは、第2領域17aとドリフト領域12の第4領域12cとに挟まれて設けられている。好ましくは、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1とは反対側に後退するように設けられている。第2の主面10bと平行な方向において、第2領域17aの幅は、第5領域17bの幅と同じであってもよい。
【0053】
好ましくは、第2の主面10bに対して垂直な方向における、ベース領域13と第1領域17cとの間の距離aは、0.2μm以上2μm以下である。距離aは、ベース領域13と接する第3領域12aの厚みと等しい。より好ましくは、距離aは、0.5μm以上0.7μm以下である。
【0054】
好ましくは、第2の主面10bと平行な方向における、トレンチT1の側面S1と底部B1との接点と、第1領域17cの側面17c2との距離bは、0.1μm以上0.5μm以下である。距離bは、ベース領域13と対面する第1領域17cの領域の幅と等しい。より好ましくは、距離bは、0.2μm以上0.4μm以下である。
【0055】
好ましくは、第2の主面10bと平行な方向における、第1領域17cの側面17c2と、第2領域17aの側面17a2との距離cは、0.6μm以上1.5μm以下である。距離cは、トレンチT1の側面S1と、第2領域17aとに挟まれた第3領域12aの幅から、距離aを引いた値と等しい。より好ましくは、距離cは、0.7μm以上1μm以下である。
【0056】
好ましくは、第2の主面10bと平行な方向における、第1領域17cの側面17c2と、第2領域17aの側面17a2との距離cは、第1領域17cの側面17c2と、第5領域17bの側面17b2との距離dよりも長い。距離dは、第1領域17cと、第5領域17bとに挟まれた第6領域12bの幅に等しい。第2の主面10bと平行な方向における、距離dは、たとえば0.5μm以上1.5μm以下であり、好ましくは0.7μm以上1.5μm以下であり、さらに好ましくは0.7μm以上1.0μm以下である。
【0057】
図2を参照して、平面視(第2の主面10bに対して垂直な方向に沿って見た視野)において、第1領域17cおよび第5領域17bの各々は、たとえば長軸と短軸とを有する長尺状(たとえば長方形)の形状を有する。平面視において、トレンチT1の底部B1は、第1領域17cと重なるように配置されている。トレンチT1の底部B1は、第1領域17cの長軸方向に沿って延在している。埋込領域17は、第1領域17cと第5領域17bとを繋ぐ接続部17dを含む。接続部17dは、第2の主面10bに対して垂直な方向から見て、第1領域17cの長軸方向の一辺の一部と第5領域17bの長軸方向の一辺の一部とを繋ぐ。接続部17dは、アルミニウムなどのp型不純物を含み、p型を有する。平面視において、第6領域12bは、第1領域17cと、第5領域17bと、接続部17dとに囲まれるように配置されている。接続部17dは、第1領域17cの長軸方向に沿って複数配置されていてもよい。接続部17dは、第1領域17cの短辺方向に沿って複数配置されていてもよい。
【0058】
図1を参照して、ドリフト領域12の第3領域12aは、トレンチT1の側面S1と、ベース領域13と、第1領域17cと、第2領域17aとに接する。ドリフト領域12の第4領域12cは、第3領域12aよりも第2の主面10b側に位置し、第3領域12aと電気的に接続され、かつ第3領域12aよりも低い不純物濃度を有する。ドリフト領域12の第6領域12bは、第2の主面10bに垂直な方向において第3領域12aおよび第4領域12cに挟まれて配置されており、かつ第2の主面10bに平行な方向において第1領域17cおよび第5領域17bに挟まれて配置されている。第6領域12bが含むn型不純物の濃度は、第4領域12cが含むn型不純物の濃度よりも高いことが好ましい。好ましくは、第3領域12aおよび第6領域12bの各々の不純物濃度は、1×10
16cm
-3以上4×10
17cm
-3以下であり、より好ましくは、2×10
16cm
-3以上2×10
17cm
-3以下である。第6領域12bの厚みは、たとえば0.4μm以上1.5μm以下である。第3領域12aの厚みは、たとえば0.2μm以上1.0μm以下である。
【0059】
第4領域12cが含む窒素などの不純物の濃度および第4領域12cの厚みは、耐圧によって変化する。耐圧が1200Vの場合、第4領域12cの厚みは、たとえば10μm程度であり、かつ第4領域12cが含む窒素濃度は1×10
16cm
-3程度である。また耐圧が1700Vの場合、第4領域12cの厚みは、たとえば20μm程度であり、かつ第4領域12cが含む窒素濃度は5×10
15cm
-3程度である。さらに耐圧が3300Vの場合、第4領域12cの厚みは、たとえば30μm程度であり、かつ第4領域12cが含む窒素濃度は3×10
15cm
-3程度である。
【0060】
好ましくは、バッファ層22が含む窒素などのn型不純物の濃度は、炭化珪素単結晶基板11が含む窒素などのn型不純物の濃度よりも低い。炭化珪素単結晶基板11が含む窒素などのn型不純物の濃度は、たとえば5×10
18cm
-3以上9×10
18cm
-3以下である。バッファ層22が含む窒素などのn型不純物の濃度は、たとえば1×10
18cm
-3以上2×10
18cm
-3以下である。なお上記各不純物領域に含まれている不純物の元素および濃度は、たとえばSCM(Scanning Capacitance Microscope)またはSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などにより測定可能である。
【0061】
ゲート絶縁膜15は、たとえば二酸化珪素からなり、トレンチT1の側面S1と、底部B1とに接するように設けられている。ゲート絶縁膜15は、トレンチT1の側面S1において、第3領域12aと、ベース領域13と、ソース領域14とに接し、トレンチT1の底部B1において、第3領域12aと接する。ゲート絶縁膜15に接するベース領域13にチャネル領域CHが形成可能に構成されている。ゲート絶縁膜15の厚みは、たとえば50nm以上150nm以下である。
【0062】
ゲート電極27は、ゲート絶縁膜15上に設けられている。ゲート電極27は、ゲート絶縁膜15に接触して配置され、ゲート絶縁膜15により形成される溝を埋めるように設けられている。ゲート電極27は、第1の主面10aに対向する位置に設けられていてもよい。ゲート電極27は、たとえば不純物がドーピングされたポリシリコンなどの導電体からなっている。
【0063】
ソース電極16は、たとえばNiとTiとを含む材料からなる。ソース電極16は、炭化珪素基板10の第1の主面10a側においてソース領域14と電気的に接続されている。好ましくは、ソース電極16は、コンタクト領域18と接する。ソース電極16は、ソース領域14とオーミック接合している合金層を含む。合金層は、たとえばソース電極16が含む金属とのシリサイドである。好ましくは、ソース電極16は、Tiと、Alと、Siを含む材料からなる。
【0064】
層間絶縁膜21は、炭化珪素基板10の第1の主面10aに対向する位置に設けられている。具体的には、層間絶縁膜21は、ゲート電極27を覆うようにゲート電極27およびゲート絶縁膜15の各々に接して設けられている。層間絶縁膜21は、たとえばTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)酸化膜と、PSG(Phosphorus Silicon Glass)とを含む。層間絶縁膜21は、ゲート電極27とソース電極16とを電気的に絶縁している。ソース配線19は、層間絶縁膜21を覆い、かつソース電極16に接するように設けられている。ソース配線19は、ソース電極16を介してソース領域14と電気的に接続されている。ソース配線19は、たとえばAlSiCuを含む材料からなる。保護膜24は、ソース配線19を覆うように、ソース配線19上に設けられている。保護膜24は、たとえば窒化膜とポリイミドとを含む。
【0065】
ドレイン電極20は、炭化珪素基板10の第2の主面10bに接して設けられている。ドレイン電極20は、第2の主面10b側において、第4領域12cと電気的に接続されている。ドレイン電極20は、たとえばNiSi(ニッケルシリサイド)など、n型の炭化珪素単結晶基板11とオーミック接合可能な材料からなっている。これにより、ドレイン電極20は炭化珪素単結晶基板11と電気的に接続されている。
【0066】
次に、実施の形態1に係るMOSFET1の動作について説明する。
図1を参照して、ゲート電極27に印加された電圧が閾値電圧未満の状態、すなわちオフ状態では、ソース電極16とドレイン電極20との間に電圧が印加されても、ベース領域13と第1不純物領域12との間に形成されるpn接合が逆バイアスとなり、非導通状態となる。一方、ゲート電極27に閾値電圧以上の電圧が印加されると、ベース領域13のゲート絶縁膜15と接触する付近であるチャネル領域CHにおいて反転層が形成される。その結果、ソース領域14と第1不純物領域12とが電気的に接続され、ソース電極16とドレイン電極20との間に電流が流れる。以上のようにして、MOSFET1は動作する。
【0067】
次に、実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の製造方法について説明する。
【0068】
図4を参照して、たとえば改良レーリー法により成長させた炭化珪素単結晶インゴットをスライスして基板を切り出し、基板の表面に対して鏡面研磨を行うことにより、炭化珪素単結晶基板11が準備される。炭化珪素単結晶基板11は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素である。炭化珪素単結晶基板11の主面の直径はたとえば150mmであり、厚みはたとえば400μmである。炭化珪素単結晶基板11の主面は、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下程度オフした面である。
【0069】
次に、第1のn型エピタキシャル層形成工程(S10:
図3)が実施される。たとえば、炭化珪素単結晶基板11上に、水素を含むキャリアガスと、シラン、プロパンを含む原料ガスと、窒素を含むドーパントガスが供給され、100mbar(10kPa)の圧力下、炭化珪素単結晶基板11が、たとえば1550℃程度に加熱される。これにより、
図5に示すように、n型を有する炭化珪素エピタキシャル層が炭化珪素単結晶基板11上に形成される。炭化珪素エピタキシャル層は、炭化珪素単結晶基板11に形成されたバッファ層22と、バッファ層22上に形成された第4領域12cとを有する。第4領域12cには窒素がドーピングされており、窒素の濃度は、たとえば8.0×10
15cm
-3である。第4領域12cの厚みは、たとえば10μmである。
【0070】
次に、第1のp型不純物イオン注入工程(S20:
図3)が実施される。具体的には、
図6を参照して、炭化珪素エピタキシャル層5の第4領域12c上にイオン注入マスク41が形成される。イオン注入マスク41は、TEOS酸化膜を含む材料からなり、イオン注入マスク41の厚みは、たとえば1.6μmである。次に、CHF
3およびO
2を用いてイオン注入マスク41に対してRF(Radio Frequency)エッチングが行われる。これにより、イオン注入が行われる予定の部分上に、たとえば80nm程度のスルー膜(
図6におけるイオン注入マスク41の薄い領域)が残される。次に、スルー膜を有するイオン注入マスク41を用いて、炭化珪素エピタキシャル層5の第4領域12cに対してイオン注入が実施される。たとえばAl(アルミニウム)イオンが、スルー膜を通して炭化珪素エピタキシャル層5内に対して矢印の方向にイオン注入されることにより、p型を有し、かつベース領域13よりも高い不純物濃度を有する、第1領域17cと第5領域17bとが形成される(
図7参照)。第1領域17cおよび第5領域17bの各々が含むアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、たとえば2×10
18cm
-3以上9×10
18cm
-3以下である。第1領域17cおよび第5領域17bの各々の厚みは、たとえば0.5μm以上1.5μm以下である。
【0071】
次に、第1のn型不純物イオン注入工程(S30:
図3)が実施される。具体的には、イオン注入マスク41が除去された後、たとえば80nmの厚みを有するスルー膜42が、第1領域17cと、第5領域17bと、第4領域12cとに接して形成される。次に、スルー膜42上から矢印の方向に、第1領域17cと、第5領域17bと、第4領域12cとに対して、たとえば窒素イオンが注入される。これにより、断面視において、第1領域17cと、第5領域17bとに挟まれた領域に、n型を有し、かつ第4領域12cよりも高い不純物濃度を有する第6領域12bが形成される。第6領域12bが含む窒素などのn型不純物の濃度は、たとえば1×10
16cm
-3以上7×10
16cm
-3以下である。第6領域12bの厚みは、たとえば0.5μm以上1.0μm以下である(
図8参照)。次に、第1領域17cと、第5領域17bと、第6領域12bとの上に形成されたスルー膜42が除去される。
【0072】
次に、第2のn型エピタキシャル層形成工程(S40:
図3)が実施される。具体的には、たとえば窒素などのn型不純物がドーピングされながら、第3領域12aがエピタキシャル成長により形成される。第3領域12aが含む窒素などのn型不純物の濃度は、たとえば1×10
16cm
-3以上7×10
16cm
-3以下である。第3領域12aは、第1領域17cと、第5領域17bと、第6領域12bとに接するように形成される。第3領域12aの厚みは、たとえば0.3μm以上1.0μm以下である。なお、第3領域12aは、たとえば第4領域12cなどの炭化珪素エピタキシャル領域に対して、たとえば窒素またはリンなどのn型不純物がイオン注入されることにより形成されてもよい。
【0073】
次に、第2のp型不純物イオン注入工程(S50:
図3)が実施される。炭化珪素エピタキシャル層5の第3領域12aの一部に対してイオン注入が実施される。たとえばアルミニウムなどのp型不純物が第3領域12aの一部に対してイオン注入されることにより、第5領域17bと接し、かつp型を有する第2領域17aが形成される(
図9参照)。第2領域17aが含むアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、たとえば2×10
18cm
-3以上9×10
18cm
-3以下である。第2領域17aの厚みは、たとえば0.5μm以上1.0μm以下である。
【0074】
次に、p型エピタキシャル層形成工程(S60:
図3)が実施される。具体的には、たとえばアルミニウムなどのp型不純物がドーピングされながら、ベース領域13がエピタキシャル成長により形成される。ベース領域13が含むアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、たとえば5×10
15cm
-3以上1×10
17cm
-3以下である。ベース領域13は、第2領域17aおよび第3領域12aの双方に接するように形成される(
図10参照)。ベース領域13の厚みは、たとえば0.5μm以上1.5μm以下である。なお、ベース領域13は、たとえば第4領域12cまたは第3領域12aなどの炭化珪素エピタキシャル層に対して、アルミニウムなどのp型不純物がイオン注入されることにより形成されてもよい。
【0075】
次に、第3のn型不純物イオン注入工程(S70:
図3)が実施される。具体的には、炭化珪素エピタキシャル層5のベース領域13に対してイオン注入が実施される。たとえばリンなどのn型不純物が、矢印の方向に炭化珪素エピタキシャル層5のベース領域13内にイオン注入されることにより、n型を有するソース領域14が形成される。n型不純物のイオン注入は、ベース領域13上に形成されたスルー膜43を用いて行われてもよい。
【0076】
次に、第3のp型不純物イオン注入工程(S80:
図3)が実施される。具体的には、ベース領域13およびソース領域14上にイオン注入マスクが形成される。イオン注入マスクは、たとえば酸化膜を含む材料からなる。次に、炭化珪素エピタキシャル層5のベース領域13およびソース領域14に対してイオン注入が実施される。たとえばアルミニウムイオンが、第2領域17aに達する深さまで、ベース領域13およびソース領域14に対して注入される。これにより、ソース領域14およびベース領域13の各々に挟まれ、炭化珪素基板10の第1の主面10aと第2領域17aとを繋ぐように形成され、かつ導電型がp型のコンタクト領域18が形成される(
図11参照)。
【0077】
次に、活性化アニール工程が実施される。イオン注入マスクが、炭化珪素基板10の第1の主面10aから除去された後、炭化珪素基板10の第1の主面10aが保護膜43により覆われる。次に、炭化珪素基板10が、アルゴン雰囲気中において、たとえば1600℃以上1750℃以下の温度で5分以上30分以下程度加熱される。これにより、ベース領域13が含んでいるアルミニウムなどのp型不純物と、ソース領域14が含んでいるリンなどのn型不純物と、コンタクト領域18が含むアルミニウムなどのp型不純物と、第6領域12bが含む窒素などのn型不純物と、埋込領域17が含むアルミニウムなどのp型不純物とが活性化される。
【0078】
次に、トレンチ形成工程(S90:
図3)が実施される。
図12を参照して、ソース領域14およびコンタクト領域18上にエッチングマスク44が形成される。エッチングマスク44、たとえばTEOS酸化膜を含む材料からなり、エッチングマスク44の厚みはたとえば1.6μmである。次に、CHF
3およびO
2を用いて、トレンチT1が形成される領域上のエッチングマスク44に対してRFエッチングが行われるによりエッチングマスク44に開口が形成される。次に、トレンチT1が形成される領域上に開口が形成されたエッチングマスク44を用いて、炭化珪素基板10に対してエッチングが行われる。たとえば、SF
6およびO
2を用いて、炭化珪素基板10に対してECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチングが行われる。これにより、炭化珪素基板10の第1の主面10aに連接する側面S1と、側面S1と連接する底部B1とを有するトレンチT1が形成される。ソース領域14と、ベース領域13と、第3領域12aとはトレンチT1の側面S1に露出し、かつ第3領域12aはトレンチT1の底部B1に露出する。トレンチT1の深さは、たとえば0.5μm以上2.3μm以下である。トレンチT1の幅は、たとえば0.5μm以上3μm以下である。
【0079】
以上により、第1の主面10aと、第1の主面10aと反対側の第2の主面10bとを有する炭化珪素基板10が準備される。炭化珪素基板10は、n型を有するドリフト領域12と、ドリフト領域12と接し、かつn型とは異なるp型を有するベース領域13と、n型を有し、ベース領域13によってドリフト領域12から隔てられたソース領域14と、p型を有し、かつベース領域13よりも高い不純物濃度を有する埋込領域17とを含む。炭化珪素基板10の第1の主面10aには、第1の主面10aと連接する側面S1と、側面S1と連接する底部B1とを有するトレンチT1が形成されている。埋込領域17は、トレンチT1の底部B1とベース領域13の一部とに対面する第1領域17cと、ベース領域13に対面する第2領域17aとを含む。ドリフト領域12は、トレンチT1の側面S1と、ベース領域13と、第1領域17cと、第2領域17aとに接する第3領域12aと、第3領域12aよりも第2の主面10b側に位置し、第3領域12aと電気的に接続され、かつ第3領域12aよりも低い不純物濃度を有する第4領域12cとを含む。第2の主面10bに対面する第1領域17cの面17c1は、第2の主面10bに対面する第2領域17aの面17a1よりも、第2の主面10bに対して垂直な方向において第2の主面10b側に位置している。
【0080】
埋込領域17は、第2領域17aから見て、ベース領域13と反対側に位置し、かつ第2領域17aと接する第5領域17bをさらに含む。第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1とは反対側に後退するように設けられている。第2の主面10bに対して垂直な方向における、ベース領域13と第1領域17cとの間の距離aは、0.5μm以上2μm以下である。第2の主面10bと平行な方向における、トレンチT1の側面S1と底部B1との接点と、第1領域17cの側面17c2との距離bは、0.1μm以上0.5μm以下である。第2の主面10bと平行な方向における、第1領域17cの側面17c2と、第2領域17aの側面17a2との距離cは、0.6μm以上1.5μm以下である。
【0081】
次に、ゲート絶縁膜形成工程(S100:
図3)が実施される。具体的には、マスク44が除去された後、第1の主面10aにトレンチT1が形成された炭化珪素基板10が加熱炉内に配置される。加熱炉に対して酸素を導入し、たとえば1100℃以上1300℃以下の温度で炭化珪素基板10をドライ酸化することにより、トレンチT1の側面S1および底部B1に接するゲート絶縁膜15が形成される(
図13参照)。ゲート絶縁膜15は、トレンチT1の側面S1において、第3領域12aと、ベース領域13と、ソース領域14とに接し、かつ前記トレンチT1の底部B1において第3領域12aと接する。ゲート絶縁膜15は、第1の主面10aにおいてソース領域14と、コンタクト領域18とに接する。ゲート絶縁膜15の厚みは、たとえば50nm以上150nm以下である。なお、ゲート絶縁膜15は、堆積酸化膜であってもよい。
【0082】
次に、NOアニール工程が実施される。具体的には、窒素を含む雰囲気中において第1の主面10aにおいてゲート絶縁膜15が形成された炭化珪素基板10が、たとえば1100℃以上1300℃以下の温度で熱処理される。窒素を含む気体とは、たとえば窒素で10%希釈された一酸化二窒素などである。好ましくは、ゲート絶縁膜15が形成された炭化珪素基板10が、窒素を含む気体中においてたとえば30分以上360分以下の間保持される。
【0083】
次に、ゲート電極形成工程(S110:
図3)が実施される。具体的には、ゲート絶縁膜15により形成された溝を埋めるようにゲート絶縁膜15上にゲート電極27が形成される。ゲート電極27は、たとえば不純物を含むポリシリコンを含む材料からなる。次に、ゲート電極27を覆うように層間絶縁膜21が形成される。層間絶縁膜21は、たとえばTEOS酸化膜と、PSGとを含む。
【0084】
次に、ソース電極形成工程(S120:
図3)が実施される。具体的には、ソース電極16が形成される予定の領域において層間絶縁膜21およびゲート絶縁膜15が除去されることにより、ソース領域14およびコンタクト領域18の各々が、層間絶縁膜21から露出する。次に、ソース電極16が、炭化珪素基板10の第1の主面10aにおいて、ソース領域14およびコンタクト領域18の双方と接するように、たとえばスパッタリングにより形成される。ソース電極16は、たとえばNiおよびTiを含む。ソース電極16は、TiAlSiを含む材料から構成されていてもよい。次に、炭化珪素基板10の第1の主面10aにおいて、ソース領域14およびコンタクト領域18の各々に接して設けられたソース電極16が形成された炭化珪素基板10に対して、たとえば900℃以上1100℃以下のRTA(Rapid Thermal Anneal)が2分程度実施される。これにより、ソース電極16の少なくとも一部が、炭化珪素基板が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域14とオーミック接合するソース電極16が形成される。好ましくは、ソース電極16は、ソース領域14およびコンタクト領域18の各々とオーミック接合する。以上のように、第1の主面10a側において、ソース領域14と電気的に接続されるソース電極16が形成される。埋込領域17は、ソース電極16と電気的に接続される。
【0085】
図1を参照して、ソース電極16に接し、かつ層間絶縁膜21を覆うようにソース配線19が形成される。ソース配線19は、好ましくはAlを含む材料からなり、たとえばAlSiCuを含む材料からなる。次に、ソース配線19を覆うように保護膜24が形成される。保護膜24は、たとえば窒化膜とポリイミドとを含む材料からなる。
【0086】
次に、ドレイン電極形成工程(S130:
図3)が実施される。具体的には、炭化珪素基板10の第2の主面10bと接して、たとえばNiSiからなるドレイン電極20が形成される。ドレイン電極20は、たとえばTiAlSiなどであっても構わない。ドレイン電極20の形成は、好ましくはスパッタリング法により実施されるが、蒸着により実施されても構わない。当該ドレイン電極20が形成された後、当該ドレイン電極20がたとえばレーザーアニールにより加熱される。これにより、当該ドレイン電極20の少なくとも一部がシリサイド化し、炭化珪素単結晶基板11とオーミック接合し、第2の主面10b側において、第4領域12cと電気的に接続されるドレイン電極20が形成される。以上のように、
図1に示すMOSFET1が製造される。
【0087】
次に、実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の製造方法の変形例について説明する。
【0088】
図4を参照して、たとえば改良レーリー法により成長させた炭化珪素単結晶インゴットをスライスして基板を切り出し、基板の表面に対して鏡面研磨を行うことにより、炭化珪素単結晶基板11が準備される。炭化珪素単結晶基板11は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素である。炭化珪素単結晶基板11の主面の直径はたとえば150mmであり、厚みはたとえば400μmである。炭化珪素単結晶基板11の主面は、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下程度オフした面である。
【0089】
次に、第1のn型エピタキシャル層形成工程が実施される。たとえば、炭化珪素単結晶基板11上に、水素を含むキャリアガスと、シラン、プロパンを含む原料ガスと、窒素を含むドーパントガスが供給され、100mbar(10kPa)の圧力下、炭化珪素単結晶基板11が、たとえば1550℃程度に加熱される。これにより、
図5に示すように、n型を有する炭化珪素エピタキシャル層が炭化珪素単結晶基板11上に形成される。炭化珪素エピタキシャル層は、炭化珪素単結晶基板11に形成されたバッファ層22と、バッファ層22上に形成された第4領域12cとを有する。第4領域12cには窒素がドーピングされており、窒素の濃度は、たとえば8.0×10
15cm
-3である。第4領域12cの厚みは、たとえば10μmである。以上のように、エピタキシャル成長により第4領域12cがバッファ層22上に形成される。
【0090】
次に、第2のn型エピタキシャル層形成工程が実施される。具体的には、たとえば窒素などのn型不純物がドーピングされながら、第4領域12cを覆うように第3領域12aがエピタキシャル成長により形成される。第3領域12aが含む窒素などのn型不純物の濃度は、たとえば1×10
16cm
-3以上7×10
16cm
-3以下である。第3領域12aは、第4領域12cに接するように形成される。第3領域12aの厚みは、たとえば0.3μm以上1.0μm以下である。以上のように、エピタキシャル成長により第3領域12aが第4領域12c上に形成される(
図14参照)。
【0091】
次に、p型不純物イオン注入工程が実施される。具体的には、第3領域12a上にイオン注入マスク(図示せず)が形成される。当該イオン注入マスクを用いて、炭化珪素エピタキシャル層5の第4領域12cに対してイオン注入が実施される。たとえばアルミニウムイオンが、第1注入エネルギーで第4領域12c内にイオン注入されることにより、第4領域12cに接する第1領域17cと第5領域17bとが形成される。次に、第2領域17aが形成される予定の領域上に開口を有するイオン注入マスク(図示せず)が第3領域12a上に形成される。当該イオン注入マスクを用いて、第3領域12aに対してイオン注入が実施される。たとえばアルミニウムイオンが、第1注入エネルギーよりも低い第2注入エネルギーで第3領域12a内にイオン注入を行われることにより、第5領域17bと、第3領域12aとに接する第2領域17aが形成される(
図15参照)。第1注入エネルギーおよび第2注入エネルギーは、たとえば、それぞれ900keVおよび700keVである。なお、上記では、第1領域17cが形成された後に第2領域17aが形成される場合について説明したが、第2領域17aが形成された後に第1領域17cが形成されてもよい。
【0092】
次に、第2領域17aと、第3領域12aとに接してベース領域13がエピタキシャル成長により形成される(
図10参照)。以降の工程は、上記で説明した工程と同様である。
【0093】
次に、実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1およびその製造方法の作用効果について説明する。
【0094】
実施の形態1に係るMOSFET1によれば、埋込領域17は、トレンチT1の底部B1とベース領域13の一部とに対面する第1領域17cと、ベース領域13に対面する第2領域17aとを含む。第2の主面10bに対面する第1領域17cの面17c1は、第2の主面10bに対面する第2領域の面17a1よりも、第2の主面10bに対して垂直な方向において第2の主面10b側に位置している。これにより、ベース領域13が高電界に晒されることを抑制することができる。また第3領域12aが第4領域12cよりも高い不純物濃度を有することにより、オン抵抗を低減することができる。さらにトレンチT1の底部B1とベース領域13の一部とに対面する第1領域17cを設けることにより、トレンチT1の側面S1および底部B1に接するゲート絶縁膜15に高い電界がかかり、ゲート絶縁膜15が劣化または破壊されることを抑制することができる。特に、ベース領域13においてアバランシェが発生する部分をゲート絶縁膜15から離間させることにより、アバランシェ発生時におけるゲート絶縁膜15の劣化または破壊を効果的に抑制することができる。結果として、高い信頼性を有するMOSFET1を得ることができる。
【0095】
また実施の形態1に係るMOSFET1によれば、埋込領域17は、第2領域17aから見て、ベース領域13と反対側に位置し、かつ第2領域17aと接する第5領域17bをさらに含む。これにより、ベース領域13が高電界に晒されることを効果的に抑制することができる。
【0096】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1とは反対側に後退するように設けられている。これにより、第1領域17cと第5領域17bとにより電界を一旦狭窄した上で、第2領域17aで電界を第1の主面10aと平行な方向に広げることにより、ベース領域13にかかる電界の強度を弱めることができる。
【0097】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、第2の主面10bに対して垂直な方向における、ベース領域13と第1領域17cとの間の距離aは0.2μm以上2μm以下である。これにより、高い耐圧を維持しつつ低い特性オン抵抗を有するMOSFET1を得ることができる。
【0098】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、第2の主面10bと平行な方向における、トレンチT1の側面S1と底部B1との接点と、第1領域17cの側面17c2との距離bは、0.1μm以上0.5μm以下である。これにより、ゲート絶縁膜15にかかる電界の強度を低く維持しつつ低い特性オン抵抗を有する炭MOSFET1を得ることができる。
【0099】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、第2の主面10bと平行な方向における、第1領域17cの側面17c2と、第2領域17aの側面17a2との距離cは0.6μm以上1.5μm以下である。これにより、高い耐圧を維持しつつ低い特性オン抵抗を有するMOSFET1を得ることができる。
【0100】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、第3領域12aの不純物濃度は、1×10
16cm
-3以上4×10
17cm
-3以下である。これにより、低い特性オン抵抗を有するMOSFET1を得ることができる。
【0101】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1によれば、ベース領域13の不純物濃度は、1×10
15cm
-3以上4×10
17cm
-3以下である。これにより、これにより、低い特性オン抵抗を有するMOSFET1を得ることができる。
【0102】
実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、埋込領域17は、トレンチT1の底部B1とベース領域13の一部とに対面する第1領域17cと、ベース領域13に対面する第2領域17aとを含む。第2の主面10bに対面する第1領域17cの面17c1は、第2の主面10bに対面する第2領域の面17a1よりも、第2の主面10bに対して垂直な方向において第2の主面10b側に位置している。これにより、ベース領域13が高電界に晒されることを抑制することができる。またトレンチT1の底部B1とベース領域13の一部とに対面する第1領域17cを設けることにより、トレンチT1の側面S1および底部B1に接するゲート絶縁膜15に高い電界がかかり、ゲート絶縁膜15が劣化または破壊されることを抑制することができる。特に、ベース領域13においてアバランシェが発生する部分をゲート絶縁膜15から離間させることにより、アバランシェ発生時におけるゲート絶縁膜15の劣化または破壊を効果的に抑制することができる。結果として、高い信頼性を有するMOSFET1を得ることができる。
【0103】
また実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、炭化珪素基板10を形成する工程は、エピタキシャル成長により第4領域12cを形成する工程と、第4領域12cに対してイオン注入を行うことにより、第1領域17cを形成する工程と、エピタキシャル成長により第1領域17c上に第3領域12aを形成する工程と、第3領域12aに対してイオン注入を行うことにより、第2領域17aを形成する工程とを含む。これにより、高い不純物濃度を有する第1領域17cと第2領域17aとを効果的に形成することができる。
【0104】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、炭化珪素基板10を形成する工程は、第4領域12cに対してイオン注入を行うことにより、第1導電型を有し、かつ第4領域12cよりも高い不純物濃度を有する第6領域12bを形成する工程をさらに含む。第3領域12aを形成する工程において、第1領域17cおよび第6領域12bの各々上に第3領域12aが形成される。これにより、特性オン抵抗を低減することができる。
【0105】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、炭化珪素基板10を形成する工程は、エピタキシャル成長により第4領域12cを形成する工程と、エピタキシャル成長により第3領域12aを第4領域12c上に形成する工程と、第1注入エネルギーで第4領域12c内にイオン注入を行うことにより、第4領域12cに接する第1領域17cを形成する工程と、第1注入エネルギーよりも低い第2注入エネルギーで第3領域12a内にイオン注入を行うことにより、第3領域12aに接する第2領域17aを形成する工程とを含む。これにより、簡易な方法で、第1領域17cおよび第2領域17aを形成することができる。
【0106】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、炭化珪素基板10を形成する工程は、エピタキシャル成長により、第2領域17aおよび第3領域12aの双方に接するベース領域13を形成する工程をさらに含む。これにより、均一な不純物濃度を有するベース領域13を形成することができる。
【0107】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、埋込領域17は、第2領域17aから見て、ベース領域13と反対側に位置し、かつ第2領域17aと接する第5領域17bをさらに含む。これにより、ベース領域13が高電界に晒されることを効果的に抑制することができる。
【0108】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1とは反対側に後退するように設けられている。これにより、第1領域17cと第5領域17bとにより電界を一旦狭窄した上で、第2領域17aで電界を第1の主面10aと平行な方向に広げることにより、ベース領域13にかかる電界の強度を弱めることができる。
【0109】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、第2の主面10bに対して垂直な方向における、ベース領域13と第1領域17cとの間の距離aは、0.2μm以上2μm以下である。これにより、高い耐圧を維持しつつ低い特性オン抵抗を有するMOSFET1を得ることができる。
【0110】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、第2の主面10bと平行な方向における、トレンチT1の側面S1と底部B1との接点と、第1領域17cの側面17c2との距離bは、0.1μm以上0.5μm以下である。これにより、ゲート絶縁膜15にかかる電界の強度を低く維持しつつ低い特性オン抵抗を有するMOSFET1を得ることができる。
【0111】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、第2領域17aの側面17a2との距離cは、0.6μm以上1.5μmである。これにより、高い耐圧を維持しつつ低い特性オン抵抗を有するMOSFET1を得ることができる。
【0112】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、第3領域12aは、イオン注入により形成される。これにより、デバイス作製工程の途中でエピ工程を入れる必要がなくなり工程を簡素化して工期を短縮することができる。
【0113】
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、ベース領域13は、イオン注入により形成される。これにより、デバイス作製工程の途中でエピ工程を入れる必要がなくなり工程を簡素化して工期を短縮することができる。
【0114】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFETの構成について説明する。実施の形態2に係るMOSFETは、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1に対して突出するように設けられている点において実施の形態1に係るMOSFETと異なっており、他の構成は、実施の形態1に係るMOSFETとほぼ同じである。そのため、同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0115】
図16を参照して、埋込領域17の第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1に対して突出するように設けられている。この場合、第2領域17aは、第6領域12bに接する。つまり、第2領域17aは、第2の主面10bに対して垂直な方向において、ベース領域13と第6領域12bとに挟まれて設けられている。第2の主面10bと平行な方向における、第1領域17cの側面17c2と、第2領域17aの側面17a2との距離cは、第1領域17cの側面17c2と、第5領域17bの側面17b2との距離dよりも短い。
【0116】
実施の形態2に係るMOSFETは、実施の形態1における第2のp型不純物イオン注入工程(S50:
図3)において、第5領域17bよりも広い開口幅を有するイオン注入マスクを用いて、第3領域12aに対してたとえばアルミニウムなどのp型不純物がイオン注入されることにより第2領域17aが形成される。これにより、第2領域17aの側面17a2が、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1に対して突出する第2領域17aが形成される。他の工程は、実施の形態1におけるMOSFETの製造方法とほぼ同様である。
【0117】
次に、実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の作用効果について説明する。
【0118】
実施の形態2に係るMOSFET1によれば、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1に対して突出するように設けられている。これにより、第1領域17cと第5領域17bとにより電界を一旦狭窄した上で、第2領域17aで電界をさらに狭窄することにより、ベース領域13に対して直接高い電界がかからないようにすることができる。
【0119】
実施の形態2に係るMOSFET1の製造方法によれば、第2領域17aの側面17a2は、第5領域17bの側面17b2からトレンチT1の側面S1に対して突出するように設けられている。これにより、第1領域17cと第5領域17bとにより電界を一旦狭窄した上で、第2領域17aで電界をさらに狭窄することにより、ベース領域13に対して直接高い電界がかからないようにすることができる。
【0120】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFETの構成について説明する。実施の形態3に係るMOSFETは、トレンチT1の底部B1が第1領域17cに接している点において実施の形態1に係るMOSFETと異なっており、他の構成は、実施の形態1に係るMOSFETとほぼ同様である。そのため、同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0121】
図17を参照して、トレンチT1の底部B1は、第1領域17cに接している。トレンチT1は、たとえば第3領域12aを貫通して第1領域17cに至っていてもよい。つまり、トレンチT1の底部B1と、第1領域17cとの間には、第3領域12aが設けられていなくてもよい。トレンチT1の底部B1は、第2領域17aと第5領域17bとの境界面と同一平面に位置していてもよい。第1領域17cがトレンチT1の底部B1と接することによって、トレンチT1の底部B1における電界集中を効果的に緩和することができる。
【0122】
なお上記各実施の形態において、第1導電型はn型であり、かつ第2導電型はp型であるとして説明したが、第1導電型をp型とし、かつ第2導電型をn型としてもよい。炭化珪素半導体装置としてMOSFETを例に挙げて説明したが、炭化珪素半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。炭化珪素半導体装置がIGBTの場合、第1電極16はエミッタ電極であり、かつ第2電極20はコレクタ電極であってもよい。トレンチT1の側面S1は、炭化珪素基板10の第1の主面10aに対してほぼ垂直の場合について説明したが、トレンチT1の側面S1は、第1の主面10aに対して傾斜していてもよい。
【実施例1】
【0123】
実施の形態2に係るMOSFET(
図16参照)における距離a(第2の主面10bに対して垂直な方向における、ベース領域13と第1領域17cとの間の距離)を変化させた場合におけるMOSFETの特性オン抵抗および耐圧をシミュレーションによって計算した結果について説明する。距離aの値を0.3μmから2.5μmまで変化させながら、MOSFETの特性オン抵抗および耐圧を計算した。距離b(第2の主面10bと平行な方向における、トレンチT1の側面S1と底部B1との接点と、第1領域17cの側面17c2との距離)を0.2μmとした。距離c(第2の主面10bと平行な方向における、第1領域17cの側面17c2と、第2領域17aの側面17a2との距離)を0.7μmとした。第4領域12cの不純物濃度を8×10
15cm
-3とした。第6領域12bの不純物濃度を4.8×10
16cm
-3とした。第3領域12aの不純物濃度を4×10
16cm
-3とした。第1領域17c、第2領域17aおよび第5領域17bの各々の不純物濃度を2×10
18cm
-3とした。ベース領域13の不純物濃度を5×10
15cm
-3とした。
【0124】
図18を参照して、距離aと特性オン抵抗との関係および距離aと耐圧との関係について説明する。図中において横軸は距離a(μm)を示し、左側縦軸がMOSFETの特性オン抵抗(mΩcm
2)を示し、かつ右側縦軸はMOSFETの耐圧(kV)を示している。図中において白丸はオン抵抗の値を示しており、白四角は耐圧の値を示している。
【0125】
特性オン抵抗に関しては、距離aが0.7μm以上2.5μm以下の範囲においては、特性オン抵抗はほぼ一定である。しかしながら、距離aが0.7μm未満になると特性オン抵抗が徐々に大きくなり、距離aが0.5μm未満になると特性オン抵抗が急激に増大する。なお、距離aが0.3μmの場合は、特性オン抵抗は6mΩcm
2を超えているため
図18には表示されていない。耐圧に関しては、距離aが0.5μm以上2.5μm以下の範囲においては、耐圧はほぼ一定である。しかしながら、距離aが0.5μm未満になると、オン抵抗が上昇する。ただし、第3領域12aおよび第6領域12bの不純物濃度を、
図18のプロットの条件より1桁あげると、距離aの下限は0.2μm程度となる。以上の結果より、高耐圧と低特性オン抵抗とを両立可能な距離aの範囲は、0.2μm以上2μm以下であり、好ましくは0.6μm以上1.5μm以下であることが判明した。
【実施例2】
【0126】
実施の形態2に係るMOSFET(
図16参照)における距離bを変化させた場合におけるゲート酸化膜(ゲート絶縁膜15)の最大電界およびMOSFETの耐圧をシミュレーションによって計算した結果について説明する。距離bの値を−0.1μmから0.5μmまで変化させながら、ゲート酸化膜の最大電界およびMOFETの耐圧を計算した。なお、距離bの値が0とは、第1領域17cの側面17c2と、トレンチT1の側面S1とが同一直線上に位置していることを意味する。距離bがマイナスの値は、第1領域17cの側面17c2が、トレンチT1の側面S1から第5領域17bに対して後退していることを意味している。距離bがプラスの値は、第1領域17cの側面17c2が、トレンチT1の側面S1から第5領域17bに対して突出していることを意味している。距離aを0.6μmとした。距離cを0.7μmとした。第4領域12cの不純物濃度を8×10
15cm
-3とした。第6領域12bの不純物濃度を4.8×10
16cm
-3とした。第3領域12aの不純物濃度を4×10
16cm
-3とした。第1領域17c、第2領域17aおよび第5領域17bの各々の不純物濃度を2×10
18cm
-3とした。ベース領域13の不純物濃度を5×10
15cm
-3とした。
【0127】
図19を参照して、距離bとゲート酸化膜の最大電界との関係および距離bと耐圧との関係について説明する。図中において横軸は距離b(μm)を示し、左側縦軸がMOSFETの特性オン抵抗(mΩcm
2)を示し、かつ右側縦軸はゲート酸化膜の最大電界(MV/cm)を示している。図中において白丸はオン抵抗の値を示しており、白四角はゲート酸化膜の最大電界の値を示している。
【0128】
特性オン抵抗に関しては、距離bが−0.1μm以上0.4μm以下の範囲においては、特性オン抵抗はほぼ一定である。しかしながら、距離bが0.5μm以上になると特性オン抵抗が徐々に大きくなる。ゲート酸化膜の最大電界に関しては、距離bが0.1μm以上0.5μm以下の範囲においては、酸化膜の信頼性を維持できる最大電界3MV/cmよりも十分低い最大電界強度を維持することができる。しかしながら、距離aが0.1μm未満になると、ゲート酸化膜の最大電界強度が上昇する。以上の結果より、ゲート酸化膜の最大電界強度を信頼性を維持できる最大電界強度(3MV/cm)以下に維持しつつ低特性オン抵抗を達成可能な距離bの範囲は、0.1μm以上0.5μm以下であり、好ましくは0.2μm以上0.4μm以下であることが判明した。
【実施例3】
【0129】
実施の形態2に係るMOSFET(
図16参照)における距離cを変化させた場合におけるMOSFETの特性オン抵抗および耐圧をシミュレーションによって計算した結果について説明する。距離cの値を0.1μmから1.9μmまで変化させながら、MOSFETの特性オン抵抗および耐圧を計算した。距離aを0.6μmとした。距離bを0.2μmとした。距離dを1.5μmとした。第4領域12cの不純物濃度を8×10
15cm
-3とした。第6領域12bの不純物濃度を4.8×10
16cm
-3とした。第3領域12aの不純物濃度を4×10
16cm
-3とした。第1領域17c、第2領域17aおよび第5領域17bの各々の不純物濃度を2×10
18cm
-3とした。ベース領域13の不純物濃度を5×10
15cm
-3とした。
【0130】
図20を参照して、距離cと特性オン抵抗との関係および距離cと耐圧との関係について説明する。図中において横軸は距離c(μm)を示し、左側縦軸がMOSFETの特性オン抵抗(mΩcm
2)を示し、かつ右側縦軸はMOSFETの耐圧を示している。図中において白丸はオン抵抗の値を示しており、白四角は耐圧の値を示している。
【0131】
特性オン抵抗に関しては、距離cが0.7μm以上1.9μm以下の範囲においては、特性オン抵抗はほぼ一定である。しかしながら、距離bが0.6μmになると特性オン抵抗が徐々に大きくなり、距離bが0.6μm未満になると特性オン抵抗の値が20mΩcm
2超と急激に大きくなる。耐圧に関しては、距離cが0.1μm以上0.7μm以下の範囲においては、ほぼ一定の高い耐圧を維持することができる。距離cが0.7μmを超えると耐圧は除去に低下し、距離cが1.7μm以上1.9μm以下の範囲ではほぼ一定の値を維持する。以上の結果より、高耐圧と低特性オン抵抗とを両立可能な距離cの範囲は、0.6μm以上1.5μm以下であり、好ましくは0.7μm以上1.0μm以下であることが判明した。
【実施例4】
【0132】
実施の形態2に係るMOSFET(
図16参照)における距離dを変化させた場合におけるMOSFETの特性オン抵抗および耐圧をシミュレーションによって計算した結果について説明する。第1の場合(
図21参照)においては、距離cを0.8μmとして、距離dの値を0.7μmから1.5μmまで変化させながら、MOSFETの特性オン抵抗および耐圧を計算した。第2の場合(
図22参照)においては、距離cを0.9μmとして、距離dの値を0.9μmから1.5μmまで変化させた。双方の場合において、距離aを0.6μmとした。距離bを0.2μmとした。第4領域12cの不純物濃度を8×10
15cm
-3とした。第6領域12bの不純物濃度を4.8×10
16cm
-3とした。第3領域12aの不純物濃度を4×10
16cm
-3とした。第1領域17c、第2領域17aおよび第5領域17bの各々の不純物濃度を2×10
18cm
-3とした。ベース領域13の不純物濃度を5×10
15cm
-3とした。
【0133】
図21および
図22を参照して、距離dと特性オン抵抗との関係および距離dと耐圧との関係について説明する。図中において横軸は距離d(μm)を示し、左側縦軸がMOSFETの特性オン抵抗(mΩcm
2)を示し、かつ右側縦軸はMOSFETの耐圧を示している。図中において白丸はオン抵抗の値を示しており、白四角は耐圧の値を示している。
【0134】
図21を参照して、距離dが0.7μm以上1.5μm以下の範囲においては、低い特性オン抵抗と高い耐圧を維持することができる。
図22を参照して、距離dが1.1μm以下の範囲においては、低い特性オン抵抗を維持しつつ高い耐圧を維持することができる。以上の結果より、高耐圧と低特性オン抵抗とを両立可能な距離dの範囲は、0.5μm以上1.5μm以下であり、好ましくは0.7μm以上1.5μm以下であり、さらに好ましくは0.7μm以上1.0μm以下であることが判明した。
【実施例5】
【0135】
実施の形態2に係るMOSFET(
図16参照)における第2不純物領域13における不純物濃度を変化させた場合におけるMOSFETの特性オン抵抗をシミュレーションによって計算した結果について説明する、第2不純物領域13における不純物濃度の値を3×10
15cm
-3から5×10
16cm
-3まで変化させながら、MOSFETの特性オン抵抗を計算した。距離cを0.7μmとした。
【0136】
図23を参照して、第2不純物領域の不純物濃度と特性オン抵抗との関係について説明する。図中において横軸は第2不純物領域の不純物濃度(cm
-3)を示し、左側縦軸がMOSFETの特性オン抵抗(mΩcm
2)を示している。
【0137】
チャネルを形成する第2不純物領域13は、不純物濃度が低いほど移動度が高くなる。実施の形態2に示すMOSFETの構造によれば、第2不純物領域の不純物濃度を1×10
17cm
-3以下にしても、第2不純物領域においてパンチスルーが発生することなく高い耐圧を維持することができる。第2不純物領域の不純物濃度を3×10
15cm
-3まで下げた場合であっても耐圧を維持することが可能である。しかしながら、不純物濃度を3×10
15cm
-3未満に低減しても、移動度を高くする効果がない一方で短チャネル効果が発生する。そのため、第2不純物領域13の不純物濃度は、3×10
15cm
-3以上3×10
16cm
-3以下であることが望ましい。第1領域17c、第2領域17aおよび第5領域17bの各々の不純物濃度は、耐圧を高く維持する観点から、1×10
18cm
-3以上であることが好ましく、欠陥によるリーク電流を抑制する観点から、2×10
19cm
-3以下であることが好ましい。
【0138】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。