(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プラスチックフィルム、シリコンウェハー、金属箔及びガラスから選ばれる少なくとも1つの基材と、該基材の少なくとも一方の面に請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂組成物を用いて形成されてなるポリイミド樹脂層とを有する積層体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ポリイミド樹脂組成物>
本発明のポリイミド樹脂組成物は、本発明のポリイミド樹脂とシリカ微粒子とを含有する。以下、本発明のポリイミド樹脂組成物に含有される成分について説明する。
[ポリイミド樹脂]
本発明のポリイミド樹脂は、下記式(1)及び下記式(2)で表わされる繰り返し単位を含有し、下記式(1)及び下記式(2)で表わされる繰り返し単位の合計量に対する、下記式(2)で表わされる繰り返し単位の割合が、20〜60モル%であることを特徴とする。
【化2】
【0012】
式(1)で表わされる繰り返し単位は、好ましくは1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物に由来する骨格と2,2’−ジメチルベンジジン(m−トリジン)に由来する骨格を有する。式(2)で表わされる繰り返し単位は、好ましくは1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物に由来する骨格と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する骨格を有する。
式(1)及び式(2)で表わされる繰り返し単位の合計量に対する、式(2)で表わされる繰り返し単位の割合は、機械的強度、表面硬度及び透明性の観点から、20〜60モル%であり、30〜50モル%であることが好ましい。
本発明のポリイミド樹脂はその全構成単位中に、式(1)、式(2)で表わされる繰り返し単位以外の繰り返し単位として、下記式(3)で表わされる繰り返し単位を含んでもよい。
【化3】
式(3)において、R
1は2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン以外の、下記に示す芳香族ジアミンに由来する2価の基、脂肪族ジアミンに由来する2価の基、又は脂環族ジアミンに由来する2価の基である。
【0013】
2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン以外の、芳香族ジアミンに由来する2価の基は炭素数2〜39の2価の芳香族基又はこれらの組み合わせからなる2価の基であればよい。前記芳香族ジアミンの主鎖には、−O−、−SO
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−OSi(CH
3)
2−、−C
2H
4O−及び−S−からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有していてもよく、カルボキシル基、水酸基及びカルボニル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有していてもよい。前記芳香族ジアミンは、より具体的には、ポリアルキレン、ポリオキシアルキレン、キシリレン及びそれらのアルキル置換体、ハロゲン置換体、カルボキシ置換体及びヒドロキシ置換体などの2価の脂肪族基;シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、ジメチルシクロヘキサン、イソフォロン、ノルボルナン及びそれらのアルキル置換体、ハロゲン置換体、カルボキシ置換体及びヒドロキシ置換体等から誘導される2価の脂環族基;及び、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフォン、ベンゾフェノン及びそれらのアルキル置換体、ハロゲン置換体、カルボキシ置換体及びヒドロキシ置換体等から誘導される2価の芳香族基を含むものが挙げられる。機械特性を保つためにはビフェニル骨格を有する芳香族ジアミンが好ましい。
【0014】
前記、芳香族ジアミンに由来する2価の基としては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレンに由来する2価の基が挙げられる。
【0015】
前記、脂肪族ジアミンに由来する2価の基としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、シロキサンジアミン類に由来する2価の基が挙げられる。
【0016】
前記、脂環族ジアミンに由来する2価の基としては、例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミンに由来する2価の基が挙げられる。
【0017】
ポリイミド樹脂の全構成単位中の、式(1)および式(2)で表わされる繰り返し単位の合計が占める割合は80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%が更に好ましい。
【0018】
ポリイミド樹脂は後述するように、溶液重合法、ポリアミック酸溶液を調製した後これを製膜してイミド化する方法、等により製造することができる。また、製造時に触媒を使用してもよい。
【0019】
ポリイミド樹脂は、ポリイミド溶液として使用されるので、その分子量は粘度、特に対数粘度で表わすことが望ましい。ポリイミド樹脂の対数粘度n(0.5g/dLのN−メチル−2−ピロリドン溶液を用いて30℃で測定)は0.3dL/g〜2.0dL/gであることが好ましい。対数粘度が0.3dL/g未満であるとポリイミド樹脂自体の強度が弱くなる。対数粘度が2dL/gを超えるものは溶液の流動性が極端に悪化するため、重合時の撹拌が難しく、また取り扱いも困難になる。取り扱いと強度のバランスを保つため、対数粘度は0.3〜1.5dL/gがより好ましく、1.0〜1.5dL/gが更に好ましい。
【0020】
ポリイミド樹脂は、ジアミン成分(Z)とテトラカルボン酸成分(Y)を反応させる事により得られる。
【0021】
テトラカルボン酸成分(Y)としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸エステルが挙げられる。1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸エステルとしては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジメチル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジエチルが挙げられる。これらの化合物の異性体を含んでもよい。上記の中でも1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0022】
ジアミン成分(Z)は、2,2’−ジメチルベンジジンおよび2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを主成分として含む。ジアミン成分(Z)中の、2,2’−ジメチルベンジジンおよび2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの合計が占める割合は80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%が更に好ましい。
【0023】
ジアミン成分(Z)は、上記2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン以外の芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミンを含んでもよい。なお、本発明において“芳香族ジアミン”とは、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基、脂環族基、芳香族基、その他の置換基を含んでいてもよい。“脂肪族ジアミン”とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基、脂環族基、芳香族基、その他の置換基を含んでいてもよく、カルボキシル基、水酸基及びカルボニル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有していてもよい。“脂環族ジアミン”とは、アミノ基が脂環族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基、脂環族基、芳香族基、その他の置換基を含んでいてもよく、カルボキシル基、水酸基及びカルボニル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有していてもよい。例えば、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンは、アミノ基が芳香族環(ベンゼン環)に直接結合しているので芳香族ジアミンであり、m−キシリレンジアミンはアミノ基が脂肪族基(メチレン基)に直接結合しているので脂肪族ジアミンである。
【0024】
前記、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン以外の芳香族ジアミンとしては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン等が挙げられる。
【0025】
前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、シロキサンジアミン類等が挙げられる。
【0026】
前記脂環族ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミンが挙げられる。
【0027】
ジアミン成分(Z)は、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン以外に、上記で例示した脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、および脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも1つの化合物を含んでよく、複数の化合物を含んでいてもよい。
【0028】
ポリイミド樹脂の製造方法としては、(1)溶液重合法、(2)ポリアミック酸溶液を調製し、これを製膜し、イミド化する方法、(3)1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物のハーフエステル塩などの塩又はイミドオリゴマーを得、固相重合を行なう方法、(4)テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネートを反応させる方法、その他従来公知の方法で製造することができる。それぞれの方法を併用してもよい。テトラカルボン酸成分(Y)とジアミン成分(Z)との反応は、酸、三級アミン類、無水物などの従来公知の触媒の存在下で行ってもよい。
【0029】
ポリイミド樹脂を製造する際に使用される有機溶媒は、ジアミン類、テトラカルボン酸二無水物、ポリアミド酸、ポリイミドに対して溶解性を有する特定の有機溶媒がよい。そのような有機溶媒の具体例は、m−クレゾール、p−クロロフェノール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、中でも有機溶媒として、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンを用いることが好ましい。有機溶媒は上記化合物を単独で、または2種類以上を混合して使用することが出来る。有機溶媒は、ポリイミド樹脂の濃度が、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%になるような量で用いられる。また、溶液重合の場合、上記有機溶媒と併せてヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の貧溶媒を重合体が析出しない程度に使用することが出来る。ポリイミド樹脂は、製造時に使用される有機溶剤を含んでいてもよい。
【0030】
これらの方法の中で、ポリイミド樹脂の溶液が直接得られるので、溶液重合法が好ましい。溶液重合法は下記(I)〜(III)の工程を有することが好ましい。
(I)ジアミン成分(Z)、有機溶媒、及び必要に応じて触媒を含む混合物を10〜600rpmで攪拌して均一溶液とし、これを温度30〜90℃に保ち、テトラカルボン酸成分(Y)及び必要に応じて触媒を添加する。
(II)テトラカルボン酸成分(Y)、有機溶媒、及び必要に応じて触媒を含む混合物を10〜600rpmで攪拌して均一溶液とし、これを温度30〜90℃に保ち、ジアミン成分(Z)及び必要に応じて触媒を添加する。
(III)(I)又は(II)の方法の後に、0.1〜6時間かけて160〜230℃、好ましくは180〜205℃まで昇温する。この温度は使用する有機溶媒の沸点によって左右される。反応系外に除去される成分を捕集しつつ、温度を0.5〜24時間、好ましくは2〜12時間ほぼ一定に保つ。その後必要ならば有機溶媒を更に添加し、適温まで冷却する。
【0031】
ポリイミド樹脂を製造するための溶液重合に触媒を使用することができる。前記溶液重合で使用出来る触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、イミダゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン等の3級アミン化合物から選ばれる少なくとも1種の触媒が挙げられる。触媒を使用する場合、その使用量は、テトラカルボン酸成分(Y)に対して0.1〜100モル%が好ましく、1〜50モル%がより好ましい。
【0032】
ポリイミド樹脂は前記ジアミン成分(Z)1モルに対して前記テトラカルボン酸成分(Y)を、好ましくは0.66モル〜1.5モル、より好ましくは0.9〜1.1モル、さらに好ましくは0.97〜1.03モル反応させることにより製造される。
【0033】
上記の溶液重合法により得られたポリイミド樹脂溶液から、ポリイミド樹脂を単離する方法としては、ポリイミド樹脂を変性させるものでなければ特に制限はない。例えば、(1)ポリイミド樹脂溶液を貧溶媒中に滴下する方法、(2)ポリイミド樹脂溶液を撹拌しながら貧溶媒を滴下していく方法、(3)ポリイミド樹脂溶液を高温下に噴霧して高速乾燥する等の公知の方法がある。
【0034】
上記貧溶媒はポリイミド樹脂に対して溶解性を示さないものであればよく、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メタキシレン、パラキシレン、混合キシレン、トルエン、アセトン等が挙げられる。貧溶媒は、単独でも又は2種類以上の混合液を用いてもよい。
【0035】
本発明のポリイミド樹脂は単独で用いても耐熱性、引張弾性率の点で優れるポリイミドフィルムを得ることができるが、本発明のポリイミド樹脂組成物は、更にシリカ微粒子を含むことで、表面硬度、引張弾性率が更に向上したポリイミドフィルムを得ることができる。
【0036】
[シリカ微粒子]
シリカ微粒子に使用されるシリカとは、二酸化ケイ素(SiO
2)のことであり、その形態(結晶形態、無定形など)については限定されない。また、シリカ微粒子の形状も特に限定されず、球状、楕円形状、扁平状、ロッド状、繊維状などが挙げられる。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、ポリイミド樹脂組成物及びポリイミドフィルムにおいて高い光線透過率を保持する観点から、粒径が小さいことが好ましく、その平均粒子径は、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、更に好ましくは5〜25nmの範囲である。シリカ微粒子の平均粒子径は、例えばBET法により測定することができる。
【0037】
上記シリカ微粒子は、ポリイミド樹脂溶液への分散性の観点から、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されたものであってもよい。
シランカップリング剤としては公知のものを用いることができるが、ポリイミド樹脂との親和性の観点から、アミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(3−アミノプロピルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(3−アミノプロピルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシラン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
シリカ微粒子のシランカップリング剤による表面処理方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、シリカ微粒子を有機溶剤等に分散させた分散液を調製し、ここに前記のシランカップリング剤を添加して、室温〜80℃程度の温度下で数時間撹拌することにより行うことができる。このとき少量の水を加え処理反応を促進してもよい。
【0039】
本発明のポリイミド樹脂組成物中の前記ポリイミド樹脂とシリカ微粒子との合計量に対するシリカ微粒子の割合としては、1〜80質量%であることが好ましく、30〜75質量%であることがより好ましく、35〜60質量%であることが更に好ましく、40〜60質量%であることがより更に好ましく、40〜55質量%であることがより更に好ましく、40〜50質量%であることがより更に好ましい。ポリイミド樹脂組成物中の前記ポリイミド樹脂とシリカ微粒子との合計量に対するシリカ微粒子の割合が前記の範囲であれば、ポリイミド樹脂組成物を用いて得られるポリイミドフィルムの柔軟性が良好であり、耐熱性に優れ、表面硬度、引張弾性率に優れたものとなる。
【0040】
[その他の成分]
本発明のポリイミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミド樹脂及びシリカ微粒子以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、有機溶剤、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、前記ポリイミド樹脂以外のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の化合物が挙げられる。上記有機溶剤としては、ポリイミド樹脂の製造時に使用される有機溶媒として前記で例示された化合物、後述するシリカ微粒子の分散媒やポリイミド樹脂組成物中の固形分濃度を制御する目的で添加する希釈剤として例示される化合物が挙げられ、好ましいものも同じである。
【0041】
[ポリイミド樹脂組成物の調製方法]
本発明のポリイミド樹脂組成物の調製方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリイミド樹脂溶液にアルコキシシランやポリアルコキシシランを添加し、水等の加水分解促進剤を少量加え、ゾル−ゲル法により溶液中にシリカ微粒子を分散させる方法が挙げられる。また、コロイダルシリカとして気相法で製造したシリカ微粒子の粉末を、ポリイミド樹脂溶液に直接添加、混合することにより調製してもよい。
【0042】
本発明のポリイミド樹脂組成物を調製するための好適な例としては、ポリイミド樹脂溶液とオルガノシリカゾルとを混合し調製する方法が挙げられる。オルガノシリカゾルは、分散媒にシリカ微粒子を20質量%程度の割合で分散させたものをいう。シリカ微粒子の分散媒は、ポリイミド樹脂に対し良溶媒であることが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、イソプロパノール、メタノール等が挙げられる。これらの中でもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、トルエンが好ましい。
【0043】
本発明のポリイミド樹脂組成物の固形分濃度は、後述するポリイミドフィルムや積層体を形成する際の作業性等に応じて適宜選択することができ、有機溶媒を揮発させて凝縮する、または、希釈剤を添加することにより該組成物の固形分濃度や粘度を調整してもよい。ポリイミド樹脂組成物の固形分濃度は5〜60質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましい。ポリイミド樹脂組成物の粘度は1〜200Pa・sが好ましく、5〜150Pa・sがより好ましい。該希釈剤は、ポリイミド樹脂を溶解させることができるものであれば特に限定されないが、上記シリカ微粒子の分散媒として例示した化合物が挙げられ、好ましいものも同じである。
【0044】
〔ポリイミドフィルム〕
本発明は、前記ポリイミド樹脂組成物からなるポリイミドフィルムを提供する。また、本発明は、前記ポリイミド樹脂からなるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面にハードコート層が形成されたポリイミドフィルムを提供する。なお、本明細書において、前記ポリイミド樹脂組成物からなるポリイミドフィルムのことを、ポリイミド−ナノコンポジットフィルムということがある。
本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミド樹脂を含む溶液、または有機溶剤を含む前記ポリイミド樹脂組成物をガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に塗布(キャスト)し、加熱して溶媒成分を蒸発させることにより製造できる。
【0045】
ポリイミド樹脂を含む溶液は、ポリイミド樹脂を溶媒に溶解させる事により得られる。前記溶媒は、ポリイミド樹脂が溶解するものであればよく、特に制限はないが、m−クレゾール、p−クロロフェノール、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、トルエンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0046】
前記ポリイミド樹脂を含む溶液は、重合法により得られるポリイミド樹脂溶液そのものであってもよい。また、前記ポリイミド樹脂溶液に対してポリイミド樹脂が溶解する溶媒として前記で例示された化合物から選ばれる少なくとも1種を混合したものでもよい。上記のようにポリイミド樹脂を含む溶液及び有機溶剤を含む前記ポリイミド樹脂組成物の固形分濃度や粘度を調整することにより、ポリイミドフィルムの厚さを容易に制御することができる。
【0047】
上記支持体の表面に、必要に応じて離形剤を塗布してもよい。上記支持体に前記ポリイミド樹脂を含む溶液または有機溶剤を含む前記ポリイミド樹脂組成物を塗布した後、加熱して溶媒成分を蒸発させる方法としては、以下の方法が好ましい。すなわち、120℃以下の温度で溶剤を蒸発させて自己支持性フィルムとした後、該自己支持性フィルムを支持体より剥離し、該自己支持性フィルムの端部を固定し、用いた溶媒成分の沸点以上350℃以下の温度で乾燥してポリイミドフィルムを製造することが好ましい。また、窒素雰囲気下で乾燥することが好ましい。乾燥雰囲気の圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよい。ポリイミドフィルムの厚さは1〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、20〜80μmが更に好ましい。
【0048】
本発明のポリイミド樹脂組成物からなるポリイミドフィルムは、少なくとも一方の面に、ハードコート層を設けても良い。また、本発明のポリイミド樹脂からなるポリイミドフィルムは、その少なくとも一方の面にハードコート層が形成される。前記ハードコート層が形成されるのは、前記ポリイミドフィルの少なくとも一方の面の全部であっても一部分であってもよい。前記ハードコート層の厚さはフィルム表面硬度の改良および高度な透明性を達成する観点から、1〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0049】
ポリイミドフィルムの表面に、ハードコート層を設ける方法には公知の方法を使用することができ、例えばポリイミドフィルムの表面にハードコート剤を含む溶液を塗布製膜した後、乾燥させる方法が挙げられる。
【0050】
ハードコート剤を含む溶液としては、例えばアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコン系などの架橋構造を形成する化合物が挙げられる。これらの中でアクリル系やウレタン系、エポキシ系の化合物はフィルム表面硬度の改良効果が高く、また耐摩耗性や透明性に優れるために好ましい。
【0051】
ポリイミドフィルムの表面にハードコート剤を含む溶液を塗布製膜する方法としてはスピンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ディッピング、スプレーなどといった公知の方法を使用できる。塗布製膜された溶液の乾燥および硬化に際しては、紫外線硬化、熱硬化あるいは電子線硬化などの公知の技術を用いることができる。
【0052】
ハードコート剤を含む溶液は、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、防曇剤、および有機溶剤から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0053】
前記紫外線吸収剤としては従来公知のものを使用することが出来、例えばベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系、トリアジン系等の化合物が挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリチル酸エステル等が挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。その他紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートが挙げられる。
【0054】
<積層体>
本発明は、プラスチックフィルム、シリコンウェハー、金属箔及びガラスから選ばれる少なくとも1つの基材と前記基材の少なくとも一方の面に設けられるポリイミド樹脂組成物を用いて形成されてなるポリイミド樹脂層とを有する積層体を提供する。本発明の積層体は、前記ポリイミド層を少なくとも1つ有していればよく、2つ以上有していてもよい。
【0055】
[ポリイミド樹脂層]
基材の少なくとも一方の面に設けられるポリイミド樹脂層は、本発明のポリイミド樹脂組成物を用いて形成されてなる。また、ポリイミド樹脂層の厚みは、積層体の用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1〜10μmである。
前記ポリイミド樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化チタン微粒子、ジルコニア微粒子、金ナノ微粒子、酸化ニオブ、アルミナ微粒子等の他、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカルボン酸、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリブチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル等を含んでもよい。
【0056】
[基材]
本発明の積層体に用いられる基材は、プラスチックフィルム、シリコンウェハー、金属箔及びガラスから選ばれる。
プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等が挙げられる。これらのうち、耐熱性及び寸法安定性の観点から、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネートが好ましい。
金属箔を構成する金属としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケルが挙げられる。これらのうち、銀又は銅が好ましく、銅がより好ましい。
【0057】
基材の厚みは、積層体の用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは1〜250μmの範囲である。
【0058】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前記基材に、有機溶剤を含む本発明のポリイミド樹脂組成物を塗布した後、該有機溶剤を除去する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
下記実施例で得たフィルム(ポリイミドフィルム、ポリイミド−ナノコンポジットフィルム、ハードコート積層フィルム)の物性は以下に示す方法によって測定した。
【0060】
(1)表面硬度
測定はJIS K5600−5−4に準拠し、新東科学株式会社製表面性測定器「TYPE14FW」を用いた。
(2)引張弾性率、引張強度
測定はASTM−882−88に準拠し、東洋精機株式会社製引張試験機「ストログラフVC−1」を用いて行った。
(3)全光線透過率、YI
測定はJIS K7105に準拠し、日本電色工業株式会社色彩・濁度同時測定器(COH400)を用いて行った。
(4)耐屈曲性
測定はポリイミドフィルムをR=0mmまで1度折り曲げ、破断するかを試験した。測定は5回実施し、折り曲げた5箇所のうち、全てで破断しなければA(破断箇所0個)、1箇所でも破断しなければB(破断箇所1〜4個)、全てで破断すればC(破断箇所5個)と記載した。
【0061】
<実施例1>
ステンレス製半月型攪拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた2Lの5つ口ガラス製丸底フラスコ中で、2,2’−ジメチルベンジジン(和歌山精化工業(株)製)112.68g(0.530モル)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(和歌山精化工業(株)製)42.50g(0.133モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)297.15g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)33.57gを、反応系内温度70℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)147.85g(0.663モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)74.27gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃で3.5時間維持した。N,N−ジメチルアセトアミド48.26g添加しさらに190℃で1時間維持した。その後N,N−ジメチルアセトアミド36.18gを添加し、1時間190℃で保持した。最後にN,N−ジメチルアセトアミド664.14gを添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.4dL/gのポリイミド樹脂溶液(a)を得た。
ポリイミド樹脂溶液(a)を
1H NMRにより分析した結果、得られたポリイミド樹脂中の、2,2’−ジメチルベンジジンに由来する構成単位と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の合計に対する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の割合は、20モル%であった。また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。
得られたポリイミド樹脂溶液(a)をガラス基板上に塗布し、60℃30分、100℃1時間の条件で溶媒を蒸発させて自己支持性フィルムとした後、該自己支持性フィルムをガラス基板から剥離し、フィルム端部を固定し、280℃、窒素雰囲気下で、2時間乾燥することにより溶媒を除去し、厚さ65μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの引張弾性率は3.4GPa、引張強度は121.2MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は90.3%、YI値は1.5、耐屈曲性の評価はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(a)50.0g、及びコロイダルシリカ分散液(「DMAC−ST」日産化学工業(株)製、シリカ含有量20質量%、平均粒子径11nm、N,N−ジメチルアセトアミド溶液)40gを自転公転ミキサー(株式会社シンキー製、ARE−250)で2000rpm、2分撹拌することで、ポリイミド−ナノシリカコンポジット溶液を得た。その溶液をガラス基板上に塗布し、60℃30分、100℃1時間の条件で溶媒を蒸発させて自己支持性フィルムとした後、該自己支持性フィルムをガラス基板から剥離し、フィルム端部を固定し、280℃窒素雰囲気下、2時間乾燥し、厚さ58μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムAを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムAの評価結果を表1に示す。
【0062】
<実施例2>
ステンレス製半月型攪拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた300mL五つ口ガラス製丸底フラスコ中で2,2’−ジメチルベンジジン(和歌山精化工業(株)製)12.634g(0.060モル)2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(和歌山精化工業(株)製)12.706g(0.040モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)46.518g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)5.018gを、反応系内温度70℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)22.235g(0.099モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)11.629gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に3.75時間維持した。N,N−ジメチルアセトアミド4.92g添加しさらに190℃で1.5時間撹拌した。最後にN,N−ジメチルアセトアミド112.94gを添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.3dL/gのポリイミド樹脂溶液(b)を得た。
実施例1と同様の方法により分析した結果、得られたポリイミド樹脂中の、2,2’−ジメチルベンジジンに由来する構成単位と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の合計に対する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の割合は、40モル%であった。また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。
ポリイミド樹脂溶液(b)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ62μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの引張弾性率は3.6GPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は90.3%、YI値は1.8、耐屈曲性の評価はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(b)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ45μmポリイミド−ナノコンポジットフィルムBを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムBの評価結果を表1に示す。
【0063】
<実施例3>
実施例2で使用したものと同様の五つ口ガラス製丸底フラスコ中で2,2’−ジメチルベンジジン(和歌山精化工業(株)製)8.032g(0.038モル)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(和歌山精化工業(株)製)18.174g(0.057モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)46.355g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)4.786gを、反応系内温度70℃、窒素雰囲気下、200 rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)21.203g(0.095モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)11.59gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に5.75時間維持し、ポリイミド溶液を得た。最後にN,N−ジメチルアセトアミド118.06gを添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.3dL/gのポリイミド樹脂溶液(c)を得た。
実施例1と同様の方法により分析した結果、得られたポリイミド樹脂中の、2,2’−ジメチルベンジジンに由来する構成単位と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の合計に対する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の割合は、60モル%であった。また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。
ポリイミド樹脂溶液(c)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ64μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの引張弾性率は3.1GPa、引張強度は132.1MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は90.7%、YI値は1.8、耐屈曲性の評価はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(c)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ56μmポリイミド−ナノコンポジットフィルムCを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムCの評価結果を表1に示す。
【0064】
<実施例4>
実施例2で使用したものと同様の五つ口ガラス製丸底フラスコ中で2,2’−ジメチルベンジジン(和歌山精化工業(株)製)10.278g(0.048モル)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(和歌山精化工業(株)製)15.505g(0.048モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)46.435g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)4.899gを、反応系内温度70℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)21.707g(0.097モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)11.61gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に5.75時間維持し、ポリイミド溶液を得た。最後にN,N−ジメチルアセトアミド117.96gを添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.2dL/gのポリイミド樹脂溶液(d)を得た。
実施例1と同様の方法により分析した結果、得られたポリイミド樹脂中の、2,2’−ジメチルベンジジンに由来する構成単位と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の合計に対する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の割合は、50モル%であった。また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。
ポリイミド樹脂溶液(d)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ55μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドの引張弾性率は3.3GPa、引張強度は114.7MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は90.4%、YI値は1.8、耐屈曲性の評価はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(d)を用いた以外は実施例1と同様の方法で45μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムDを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムDの評価結果を表1に示す。
【0065】
<ハードコート溶液の調製>
実施例2で使用したものと同様の300mL五つ口ガラス製丸底フラスコにウレタンアクリル系ハードコート剤(日立化成(株)製、ヒタロイド7902−1)102.6g、紫外線吸収剤として2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート(シプロ化成(株)製、SEESORB502)9.4g、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン(株)、IRGACURE184)4.6g、及び酢酸エチル(関東化学(株)製)83.4gを、窒素雰囲気下、200rpmで30分間攪拌してハードコート溶液を得た。
【0066】
<実施例5>
実施例1と同様の方法でポリイミド樹脂溶液(a)を用いて得た厚み60μmのポリイミドフィルムに、前段落で調製したハードコート溶液を適量滴下して、バーコーター#8を用いて製膜した。該製膜フィルムを予め温度80℃に加熱した熱風乾燥機中に2分間静置して余分な有機溶剤を揮発させ、その後出力密度80W/cmの高圧水銀灯を用いて、光源下10cmの位置でコンベアスピード3.0m/分で紫外線を照射して硬化させた。このようにしてハードコート層の塗膜厚が6.5μmである、ハードコート積層フィルムEを得た。ハードコート積層フィルムEの評価結果を表1に示す。
【0067】
<実施例6>
実施例1と同様の方法で得た厚み57μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムを用いたこと以外は実施例5と同様の方法でハードコート溶液を製膜し、ハードコート積層フィルムFを得た。ハードコート積層フィルムFの評価結果を表1に示す。
【0068】
<比較例1>
実施例2で使用したものと同様の五つ口ガラス製丸底フラスコ中で2,2’−ジメチルベンジジン(和歌山精化工業(株)製)3.838g(0.018モル)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(和歌山精化工業(株)製)23.157g(0.072モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)46.208g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)4.573gを、反応系内温度70℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)20.263g(0.090モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)11.55gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に維持したまま5.75時間撹拌し、ポリイミド溶液を得た。最後にN,N−ジメチルアセトアミド118.242gを添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.3dL/gのポリイミド樹脂溶液(e)を得た。
実施例1と同様の方法により分析した結果、得られたポリイミド樹脂中の、2,2’−ジメチルベンジジンに由来する構成単位とに2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン由来する構成単位の合計に対する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位の割合は、80モル%であった。また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。ポリイミド樹脂溶液(e)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ48μmポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの引張弾性率は2.8GPa、引張強度は107.5MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は90.4%、YI値は2.2、耐屈曲性の評価はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(e)を用いた以外は実施例1と同様の方法で53μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムGを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムGの評価結果を表1に示す。
【0069】
<比較例2>
実施例2で使用したものと同様の五つ口ガラス製丸底フラスコ中で2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(和歌山精化工業(株)製)30.237g(0.094モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)50.261g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)4.777gを、反応系内温度70℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)21.166g(0.094モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)12.57gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃で5.75時間維持した。最後にN,N−ジメチルアセトアミド129.17gを添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.2dL/gのポリイミド樹脂溶液(f)を得た。
また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。
ポリイミド樹脂溶液(f)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ48μmポリイミドフィルムを得た。このポリイミド樹脂フィルムの引張弾性率は2.9GPa、引張強度は121.9MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は90.9%、YI値は2.0、耐屈曲性はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(f)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ48μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムHを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムHの評価結果を表1に示す。
【0070】
<比較例3>
実施例2で使用したものと同様の五つ口ガラス製丸底フラスコ中で2,2’−ジメチルベンジジン(和歌山精化工業(株)製)21.207g(0.100モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)46.236g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)2.527gを、反応系内温度70℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)22.393g(0.100モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)11.56gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に4.5時間維持し、ポリイミド溶液を得た。最後にN,N−ジメチルアセトアミド102.20gを添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.2dL/gのポリイミド樹脂溶液(g)を得た。
また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。ポリイミド樹脂溶液(g)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ80μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドの引張弾性率は3.2GPa、引張強度126.9MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は89.9%、YI値は1.6、耐屈曲性はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(g)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ55μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムIを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムIの評価結果を表1に示す。
【0071】
<比較例4>
実施例2で使用したものと同様の五つ口ガラス製丸底フラスコ中で2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(和歌山精化工業(株)製)30.173g(0.073モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)45.612g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)3.719gを、系内温度70℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)16.476g(0.073モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)11.40gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に4時間維持し、ポリイミド溶液を得た。粘度の上昇に合わせて随時γ−ブチロラクトンで希釈(合計添加量29.8g)しつつ合計撹拌時間が5.25時間経過したところで、固形分濃度が20質量%になるようにN,N−ジメチルアセトアミドを89.368g添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.3dL/gのポリイミド樹脂溶液(h)を得た。
また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。
ポリイミド樹脂溶液(h)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの引張強度は2.2GPa、引張強度は86.7MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は89.7%、YI値は1.3、耐屈曲性の評価はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(h)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ54μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムJを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムJの評価結果を表1に示す。
【0072】
<比較例5>
実施例2で使用したものと同様の五つ口ガラス製丸底フラスコ中で4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和歌山精化工業(株)製)22.686g(0.113モル)、γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)47.014g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)5.732gを、反応系内温度70℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)25.397g(0.113モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)11.75gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に4.75時間維持し、ポリイミド溶液を得た。N,N−ジメチルアセトアミド117.206g添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%、対数粘度1.4dL/gのポリイミド樹脂溶液(i)を得た。
また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。
ポリイミド樹脂溶液(i)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ64μmのポリイミドフィルムを得た。ポリイミドフィルムの引張弾性率は2.6GPa、引張強度は104.3MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は89.3%、YI値は2.5、耐屈曲性の評価はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(i)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ56μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムKを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムKの評価結果を表1に示す。
【0073】
<比較例6>
実施例2で使用したものと同様の五つ口ガラス製丸底フラスコ中で2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(和歌山精化工業(株)製)14.034g(0.044モル)、3,3’−ジヒドロキシベンジジン(和歌山精化工業(株)製)9.496g(0.044モル),γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)製)51.790g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学(株)製)0.967gを、反応系内温度100℃、窒素雰囲気下、200rpmで攪拌して溶液を得た。これに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)19.757g(0.088モル)とN,N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学(株)製)12.95gをそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、撹拌数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃で4.0時間維持した。最後にN,N−ジメチルアセトアミド95.26gを添加後、100℃付近で約3時間攪拌して均一な溶液とし、固形分濃度20質量%のポリイミド樹脂溶液(j)を得た。なお、ポリイミド樹脂溶液(j)の対数粘度は固形分抽出時の熱履歴により不溶化してしまうため測定することができなかった。
また、FT−IRにより原料ピークの消失およびイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。
ポリイミド樹脂溶液(j)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ67μmポリイミドフィルムを得た。このポリイミド樹脂フィルムの引張弾性率は3.3GPa、引張強度は105.8MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は86.2%、YI値は8.5、耐屈曲性の評価はAであった。
ポリイミド樹脂溶液(j)を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ53μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムLを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムLの評価結果を表1に示す。
【0074】
<実施例7>
コロイダルシリカ分散液(「DMAC−ST」日産化学工業(株)製、シリカ含有量20質量%、平均粒子径11nm、N,N−ジメチルアセトアミド溶液)を20g用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ45μmのポリイミド−ナノコンポジットフィルムMを得た。ポリイミド−ナノコンポジットフィルムMの引張弾性率は4.5GPa、引張強度は119MPa、表面硬度は<6B、全光線透過率は88%、YI値は4.4、耐屈曲性の評価はAであった。
【0075】
【表1】
【0076】
表中の略号は以下のとおりである。
mTB:2,2’−ジメチルベンジジン(m−トリジン)
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
HAB:3,3’−ジヒドロキシベンジジン