特許第6579117号(P6579117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579117
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】パワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20190912BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M7/48 R
   H02J3/38 120
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-1189(P2017-1189)
(22)【出願日】2017年1月6日
(65)【公開番号】特開2018-113732(P2018-113732A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】安井 寛幸
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−089144(JP,A)
【文献】 特開2004−297959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 3/38,13/00
G01R 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電線と、第2の電線と、中性線となる第3の電線とを含む単相三線式の電力系統に連系するパワーコンディショナであって、
発電装置からの電力に基づく直流電力に変換可能な変換部と、
前記直流電力を交流電力に変換して出力可能なインバータ部と、
前記第1の電線の電流値を検出するための第1電流センサの検出結果及び前記第2の電線の電流値を検出するための第2電流センサの検出結果に基づいて前記第1電流センサ又は前記第2電流センサの取り付けエラーを示すエラー信号を出力する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記インバータ部の非動作時において、前記第1電流センサの検出値に基づく第1系統電力に基づいて前記エラー信号を出力し、前記第2電流センサの検出値に基づく第2系統電力に基づいて前記エラー信号を出力し、
前記制御部は、前記インバータ部の動作時において、第1の所定期間内において前記インバータ部の出力が第1閾値以上変動するとき、第2の所定期間において前記第1電流センサの検出値が前記インバータ部の出力の変動に応じて変動していない場合に前記エラー信号を出力し、前記第2の所定期間において前記第2電流センサの検出値が前記インバータ部の出力の変動に応じて変動していない場合に前記エラー信号を出力する
パワーコンディショナ。
【請求項2】
前記第2の所定期間は、前記第1の所定期間よりも長い
請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記制御部は、前記インバータ部の非動作時において、前記第1系統電力が0以上かつ前記第2系統電力が0未満の場合に前記エラー信号を出力し、前記第1系統電力が0未満かつ前記第2系統電力が0以上の場合に前記エラー信号を出力する
請求項1又は2に記載のパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記制御部は、前記インバータ部の非動作時において、前記第1系統電力及び前記第2系統電力が共に0以上である又は0未満であり、前記第1の所定期間内において前記インバータ部の出力が前記第1閾値以上変動するとき、前記第2の所定期間において前記第1系統電力が前記インバータ部の出力の変動に応じて変動していない場合に前記エラー信号を出力し、前記第2の所定期間において前記第2系統電力が前記インバータ部の出力の変動に応じて変動していない場合に前記エラー信号を出力する
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のパワーコンディショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置等の発電装置の直流電力を交流電力に変換して、電力系統と連系して屋内交流負荷に電力を供給するパワーコンディショナを備えるシステムが知られている。このようなシステムでは、電力の売買のため、電力系統から屋内交流負荷に電力が供給される状態とパワーコンディショナから電力系統に逆潮流する状態とを検出するように、パワーコンディショナと電力系統との間の単相三線式の電線におけるU相の電線及びW相の電線のそれぞれに電流センサが設けられている。このようなシステムでは、誤った方向や電線に電流センサが取り付けられる場合がある。このため、内部電力負荷を備え、接続機構によって電線を内部電力負荷に接続し、その内部電力負荷に電流を流すことで、電流センサの取り付けエラーを判断するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2011/093109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなシステムでは、第1電流センサ及び第2電流センサの取り付けエラーを判断するためにパワーコンディショナに設けられた内部電力負荷及び接続機構が必要であるため、パワーコンディショナの部品点数が増加してしまう。
【0005】
本発明の目的は、追加の構成を不要とし、電力系統とパワーコンディショナとを接続する電線に取り付けられる電流センサの取り付けエラーの検出を可能とするパワーコンディショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するパワーコンディショナは、第1の電線と、第2の電線と、中性線となる第3の電線とを含む単相三線式の電力系統に連系するパワーコンディショナであって、発電装置からの電力に基づく直流電力に変換可能な変換部と、前記直流電力を交流電力に変換して出力可能なインバータ部と、前記第1の電線の電流値を検出するための第1電流センサの検出結果及び前記第2の電線の電流値を検出するための第2電流センサの検出結果に基づいて前記第1電流センサ又は前記第2電流センサの取り付けエラーを示すエラー信号を出力する制御部と、を有し、前記制御部は、第1の所定期間内において前記インバータ部の出力が第1閾値以上変動するとき、第2の所定期間において前記第1電流センサの検出値が前記インバータ部の出力の変動に応じて変動していない場合に前記エラー信号を出力し、前記第2の所定期間において前記第2電流センサの検出値が前記インバータ部の出力の変動に応じて変動していない場合に前記エラー信号を出力する。
この構成によれば、制御部がインバータ部の出力の変動と第1電流センサの検出値の変動とに基づいてエラー信号を出力し、インバータ部の出力の変動と第2電流センサの検出値の変動とに基づいて制御部がエラー信号を出力するため、第1電流センサ及び第2電流センサの取り付けエラーを検出することができる。このため、エラーを検出するための負荷を別途設けることなく電流センサの取り付けエラーを検出することができる。
【0007】
上記パワーコンディショナにおいて、前記第2の所定期間は、前記第1の所定期間よりも長いことが好ましい。
第2の所定期間は、インバータ部の出力の変動態様と、第1電流センサ及び第2電流センサの検出値の変動態様とを監視する期間である。短い期間では、その期間に亘りインバータ部の出力が、電線に接続された負荷の変動と同様に変動する場合がある。本パワーコンディショナでは、第2の所定期間を長く設定しているため、インバータ部の出力と負荷とが同様に変動し続ける確率が短い期間に比べて低くなる。したがって、第1電流センサ及び第2電流センサが正しく取り付けられていることがより確実に判定される。
【0008】
上記パワーコンディショナにおいて、前記制御部は、前記インバータ部の非動作時において、前記第1電流センサの検出値に基づく第1系統電力に基づいて前記エラー信号を出力し、前記第2電流センサの検出値に基づく第2系統電力に基づいて前記エラー信号を出力することが好ましい。
インバータ部の非動作時では、電力系統からパワーコンディショナに向けて電流が流れる。すなわちインバータ部が非動作のとき、第1の電線及び第2の電線に流れる電流の方向が一定となる。ここで、例えば第1電流センサ及び第2電流センサが正しく取り付けられたとき、インバータ部の非動作における第1電流センサの検出値が正の値になり、第2電流センサの検出値が負の値になるとし、第1の電線と第3の電線との電圧を正の値とし、第2の電線と第3の電線との電圧を負の値とする。この場合、第1系統電力又は第2系統電力が負の値であれば、その負の値となる系統電力に対応した電流センサが取り付けエラーであると分かる。このようにインバータ部の非動作時における第1系統電力及び第2系統電力に基づいて第1電流センサ及び第2電流センサの取り付けエラーを容易に検出できる。
【0009】
上記パワーコンディショナにおいて、前記制御部は、前記インバータ部の非動作時において、前記第1系統電力が0以上かつ前記第2系統電力が0未満の場合に前記エラー信号を出力し、前記第1系統電力が0未満かつ前記第2系統電力が0以上の場合に前記エラー信号を出力することが好ましい。
この構成によれば、インバータ部の非動作時における第1系統電力及び第2系統電力が0を閾値として互いに異なることに基づいて、第1電流センサ及び第2電流センサの取り付けエラーを容易に検出できる。
【0010】
上記パワーコンディショナにおいて、前記制御部は、前記インバータ部の非動作時において、前記第1系統電力及び前記第2系統電力が共に0以上である又は0未満であり、前記第1の所定期間内において前記インバータ部の出力が前記第1閾値以上変動するとき、前記第2の所定期間において前記第1系統電力が前記インバータ部の出力の変動に応じて変動していない場合に前記エラー信号を出力し、前記第2の所定期間において前記第2系統電力が前記インバータ部の出力の変動に応じて変動していない場合に前記エラー信号を出力することが好ましい。
第1電流センサ又は第2電流センサが中性線である第3の電線に誤って取り付けられたとき、インバータ部の非動作時において各系統電力の正負が同じとなる場合がある。このとき、インバータ部の非動作時において各電流センサの取り付けエラーを検出できない。そこで、制御部は、インバータ部の出力の変動と各系統電力の変動との比較に基づいてエラー信号を出力する。このように、インバータ部の非動作時及び動作時の両方において各電流センサの取り付けエラーを検出することにより、第1電流センサ又は第2電流センサが中性線である第3の電線に誤って取り付けられる取り付けエラーを検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパワーコンディショナによれば、追加の構成を不要とし、電力系統とパワーコンディショナとを接続する電線に取り付けられる電流センサの取り付けエラーを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電力管理システムの概略構成図。
図2】第1電流センサ及び第2電流センサが正常に取り付けられた場合のパワーコンディショナと電力系統との間の概略構成図。
図3】インバータ部の非動作時において制御部が実行する取り付けエラー処理のフローチャート。
図4】(a)〜(c)は第1の取り付けエラーを示す概略構成図。
図5】(a)〜(c)は第2の取り付けエラーを示す概略構成図。
図6】(a)及び(b)は第3の取り付けエラーを示す概略構成図。
図7】インバータ部の動作時において制御部が実行する取り付けエラー処理のフローチャート。
図8】(a)及び(b)は第1電流センサの取り付けエラーを示す概略構成図。
図9】(a)及び(b)は第2電流センサの取り付けエラーを示す概略構成図。
図10】第1及び第2電流センサの取り付けエラーを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、パワーコンディショナの一実施形態について説明する。図1は、パワーコンディショナが適用された電力管理システム1の構成を示している。
図1に示すように、電力管理システム1は、パワーコンディショナ10と、パワーコンディショナ10に電気的に接続された発電装置の一例である太陽光発電装置2と、電力管理システム1の内容を表示する表示器3とを備える。パワーコンディショナ10は、交流母線4を介して電力系統5に接続される。交流母線4には、図示しない分電盤等を介して第1負荷6A及び第2負荷6Bが接続されている。各負荷6A,6Bは、例えば屋内負荷であり、照明、冷蔵庫、洗濯機、空気調和機、電子レンジ等が挙げられる。電力管理システム1は、第1負荷6A及び第2負荷6Bによる負荷電力量及び太陽光発電装置2の発電量に基づいて、太陽光発電装置2が発電した電力の電力系統5への逆潮流、パワーコンディショナ10から各負荷6A,6Bへの電力供給、及び電力系統5から各負荷6A,6Bへの電力供給を行う。
【0014】
太陽光発電装置2は、光発電パネル(図示略)を有し、光発電パネルが発電した直流電力をパワーコンディショナ10に供給する。太陽光発電装置2は、光発電パネルが出力する電力が最大となる出力電圧で電流を取り出す最大電力点追従制御を実行する。
【0015】
表示器3は、電力管理システム1の内容として、太陽光発電装置2の発電量、各負荷6A,6Bの電力消費量等を表示する。本実施形態の表示器3は、パワーコンディショナ10とは個別に形成されている。表示器3は、パワーコンディショナ10から表示内容に関する情報を受信する。なお、表示器3は、パワーコンディショナ10と一体化されてもよい。
【0016】
交流母線4は、U相となる第1の電線4a、W相となる第2の電線4b、及びO相(中性線)となる第3の電線4cからなる単相三線式の電線である。第1負荷6Aは、第1の電線4a及び第3の電線4cに接続されている。第2負荷6Bは、第2の電線4b及び第3の電線4cに接続されている。
【0017】
パワーコンディショナ10は、上記の単相三線式の電力系統5と連系する。パワーコンディショナ10は、変換部の一例であるPVコンバータ11、インバータ部(DC/ACコンバータ)12、及び制御部13を有する。PVコンバータ11及びインバータ部12は、高圧直流バス14を介して互いに接続されている。PVコンバータ11には、最大電力点追従制御によって変化する太陽光発電装置2の電力が入力される。PVコンバータ11は、太陽光発電装置2の電力の出力電圧を一定の電圧の直流電力に変換し、高圧直流バス14に出力可能である。この一定の電圧の一例は、380Vである。インバータ部12は、交流母線4に接続されている。インバータ部12は、高圧直流バス14の直流電力を例えば100Vの交流電力に変換して交流母線4に出力する。制御部13は、PVコンバータ11及びインバータ部12の動作を制御する。
【0018】
交流母線4において各負荷6A,6Bと電力系統5との間には、第1電流センサ21及び第2電流センサ22が取り付けられている。第1電流センサ21は、第1の電線4aに取り付けられている。第2電流センサ22は、第2の電線4bに取り付けられている。第1電流センサ21の検出結果及び第2電流センサ22の検出結果は、無線又は有線によってパワーコンディショナ10の制御部13に通信される。これにより、パワーコンディショナ10は、電力管理システム1が買電状態(電力系統5から各負荷6A,6Bに電力供給)及び売電状態(太陽光発電装置2の電力を電力系統5に供給)を検出できる。なお、第1電流センサ21の検出結果は、第1電流センサ21が検出する電流値である検出値Icuとその検出値Icuの正負の符号を含む。第2電流センサ22の検出結果は、第2電流センサ22が検出する電流値である検出値Icwとその検出値Icwの正負の符号を含む。
【0019】
交流母線4においてパワーコンディショナ10と各負荷6A,6Bとの間には、電圧センサ23が取り付けられている。電圧センサ23は、第1の電線4aと第3の電線4cとの電圧(以下、「電圧Vuo」)、及び第2の電線4bと第3の電線4cとの電圧(以下、「電圧Vwo」)を検出する。電圧センサ23の検出結果は、無線又は有線によって制御部13に通信される。電圧センサ23は、O相を基準電位とし、電圧Vuoとして正の値を検出したとき、電圧Vwoとして負の値を検出する。交流母線4の電圧は交流電圧であるため、電圧センサ23によって正の値と負の値とが交互に検出されるが、以下の説明においては、ある時点において、正の値を検出、負の値を検出と単純化して記載する。
【0020】
図2は、第1電流センサ21が第1の電線4aに正しく取り付けられている状態、及び第2電流センサ22が第2の電線4bに正しく取り付けられている状態を示している。図中の第1電流センサ21及び第2電流センサ22の矢印は、正の値を検出する方向を示している。電力系統5から第1負荷6Aに電流が供給される場合、図2に示すとおり、第1の電線4aにおいて電力系統5から第1負荷6Aに向けて電流が流れる。このため、第1電流センサ21は、第1の電線4aに流れる電流を正の値として検出する。また電力系統5から第2負荷6Bに電流が供給される場合、図2に示すとおり、第2の電線4bにおいて第2負荷6Bから電力系統5に向けて電流が流れる。このため、第2電流センサ22は、第2の電線4bに流れる電流を負の値として検出する。
【0021】
ところで、電力管理システム1は、第1電流センサ21及び第2電流センサ22の検出結果に基づいて買電状態及び売電状態を検出する。このため、第1電流センサ21及び第2電流センサ22が誤って取り付けられた場合、買電状態及び売電状態を正しく検出できない。
【0022】
そこで、制御部13は、取り付けエラー制御を実行して第1電流センサ21及び第2電流センサ22の取り付け状態を判定する。そして、制御部13は、第1電流センサ21に取り付けエラーが生じている場合にその旨を示すエラー信号を表示器3に出力し、第2電流センサ22に取り付けエラーが生じている場合にその旨を示すエラー信号を表示器3に出力する。第1電流センサ21及び第2電流センサ22の取り付けエラーは、電流センサの取り付け方向の間違い、電流センサの取り付け位置の間違い、電流センサにより電流が検出できない状態(脱落を含む)等を含む。取り付けエラー制御は、インバータ部12の非動作時における取り付けエラー処理(図3参照)と、インバータ部12の動作時における取り付けエラー処理(図7参照)とを含む。これら取り付けエラー処理は、第1電流センサ21の検出値(検出結果)及び第2電流センサ22の検出値(検出結果)に基づいて実行される。
【0023】
本実施形態では、インバータ部12の非動作時及び動作時における取り付けエラー処理において、制御部13は、第1系統電力の一例であるU相の系統電力Pu及び第2系統電力の一例であるW相の系統電力Pwの正負に基づいて取り付けエラーか否かを判定する。制御部13は、U相の系統電力Puを、第1電流センサ21の検出値Icuに電圧Vuoを乗算(Pu=Icu×Vuo)して得る。制御部13は、W相の系統電力Pwを、第2電流センサ22の検出値Icwに電圧Vwoを乗算(Pw=Icw×Vwo)して得る。制御部13は、U相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwを所定時間毎に演算する。各系統電力Pu,Pwの演算周期は、図3及び図7に示す取り付けエラー処理の制御周期よりも十分に短い。なお、U相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwは、パワーコンディショナ10の外部の制御装置により演算されてもよい。この場合、制御装置は、U相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwを制御部13に出力する。
【0024】
制御部13は、パワーコンディショナ10の施工時において、インバータ部12の非動作時における取り付けエラー処理を実行した後、インバータ部12の動作時における取り付けエラー処理を実行する。パワーコンディショナ10の施工後では、制御部13は、インバータ部12の動作時における取り付けエラー処理を所定時間毎に実行する。
【0025】
図3図6を参照して、インバータ部12の非動作時における取り付けエラー処理について説明する。なお、図4図6において網掛けが付された電流センサは取り付けエラーを示す電流センサである。また、このエラー処理は、U相の電圧Vuoが正の値、W相の電圧Vwoが負の値のときのU相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwに基づいて実行される。
【0026】
図3に示すように、制御部13は、ステップS11におけるU相の系統電力Puが0(ゼロ)未満か否かの判定と、ステップS12及びS13におけるW相の系統電力Pwが0未満か否かの判定とを行う。
【0027】
制御部13は、U相の系統電力Puが0未満(ステップS11:YES)かつW相の系統電力Pwが0以上(ステップS12:NO)と判定したとき、ステップS21において第1の取り付けエラーを示すエラー信号を表示器3(図1参照)に出力する。
【0028】
第1の取り付けエラーは、第1電流センサ21の検出値Icuが負の値になることにより第1電流センサ21が取り付けエラーとなる一方、第2電流センサ22が正常に取り付けられる第1のパターンと、各電流センサ21,22が取り付けエラーとなる第2のパターンとが考えられる。このため、第1の取り付けエラーとなる各電流センサ21,22の取り付け態様は、図4(a)及び(b)の第1のパターンと、図4(c)の第2のパターンとが挙げられる。
【0029】
図4(a)に示すように、第1の電線4aに取り付けられる第1電流センサ21の向きが反対となる。この場合、第1電流センサ21の検出値Icuが負の値になるため、検出値Icuに正の値である電圧Vuoを乗算したU相の系統電力Puが0未満となる。一方、第2電流センサ22が第2の電線4bに正常に取り付けられている。この場合、第2電流センサ22の検出値Icwが負の値になるため、検出値Icwに負の値である電圧Vwoを乗算したW相の系統電力Pwが0以上となる。なお、図4(a)に示す第1のパターンでは、第1負荷6Aの負荷電力及び第2負荷6Bの負荷電力の大小関係は条件に入らない。
【0030】
図4(b)に示す第1のパターンは、第1負荷6Aの負荷電力が第2負荷6Bの負荷電力よりも大きいことが条件となる。このため、第1負荷6Aの負荷電力が第2負荷6Bの負荷電力よりも大きいため、第1の電線4aに流れる電流Iuは、第2の電線4bに流れる電流Iwよりも大きい(Iu>Iw)。また、第3の電線4cに流れる電流Ioは、Iu−Iwとなる。これにより、第3の電線4cでは、パワーコンディショナ10側から電力系統5側に向けて電流が流れる。そして、図4(b)に示すように、第1電流センサ21が第3の電線4cに取り付けられている。また第1電流センサ21の取り付ける向きは正常である。この場合、第1電流センサ21の検出値Icuが負の値になるため、U相の系統電力Puが0未満となる。一方、第2電流センサ22が第2の電線4bに正常に取り付けられている。この場合、第2電流センサ22の検出値Icwが負の値になるため、W相の系統電力Pwが0以上となる。
【0031】
図4(c)に示すように、第1電流センサ21が第2の電線4bに取り付けられ、第2電流センサ22が第1の電線4aに取り付けられている。また、第1電流センサ21の第2の電線4bに対する取り付け向きは正常であり、第2電流センサ22の第1の電線4aに対する取り付け向きは反対となる。この場合、第2の電線4bの電流を検出した第1電流センサ21の検出値Icuが負の値になるため、検出値Icuに正の値である電圧Vuoを乗算したU相の系統電力Puが0未満となる。一方、第1の電線4aの電流を検出した第2電流センサ22の検出値Icwが負の値になるため、検出値Icwに負の値である電圧Vwoを乗算したW相の系統電力Pwが0以上となる。なお、図4(c)に示す第2のパターンでは、第1負荷6Aの負荷電力及び第2負荷6Bの負荷電力の大小関係は条件に入らない。
【0032】
図3に示すように、制御部13は、U相の系統電力Puが0以上(ステップS11:NO)かつW相の系統電力Pwが0未満(ステップS13:YES)と判定したとき、ステップS22において第2の取り付けエラーを示すエラー信号を表示器3に出力する。
【0033】
第2の取り付けエラーは、第2電流センサ22の検出値Icwが正の値になることにより第2電流センサ22が取り付けエラーとなる一方、第1電流センサ21が正常に取り付けられる第1のパターンと、各電流センサ21,22が取り付けエラーとなる第2のパターンとが考えられる。このため、第2の取り付けエラーにおける各電流センサ21,22の取り付け態様は、図5(a)及び(b)の第1のパターンと、図5(c)の第2のパターンとが挙げられる。
【0034】
図5(a)に示すように、第2の電線4bに取り付けられる第2電流センサ22の向きが反対となる。この場合、第2電流センサ22の検出値Icwが正の値になるため、検出値Icwに負の値である電圧Vwoを乗算したW相の系統電力Pwが0未満となる。一方、第1電流センサ21が第1の電線4aに正常に取り付けられている。この場合、第1電流センサ21の検出値Icuが正の値になるため、検出値Icuに正の値である電圧Vuoを乗算したU相の系統電力Puが0以上となる。なお、図5(a)に示す第1のパターンでは、第1負荷6Aの負荷電力及び第2負荷6Bの負荷電力の大小関係は条件に入らない。
【0035】
図5(b)に示す第1のパターンは、第2負荷6Bの負荷電力が第1負荷6Aの負荷電力よりも大きいことが条件となる。これにより、第3の電線4cでは、電力系統5側からパワーコンディショナ10側に向けて電流が流れる。図5(b)に示すように、第2電流センサ22が第3の電線4cに取り付けられている。一方、第2電流センサ22の取り付ける向きは正常である。この場合、第3の電線4cの電流を検出する第2電流センサ22の検出値Icwは正の値になるため、検出値Icwに負の値である電圧Vwoを乗算したW相の系統電力Pwが0未満となる。また第1電流センサ21が第1の電線4aに正常に取り付けられている。この場合、第1電流センサ21の検出値Icuが正の値になるため、U相の系統電力Puが0以上となる。
【0036】
図5(c)に示すように、第1電流センサ21が第2の電線4bに取り付けられ、第2電流センサ22が第1の電線4aに取り付けられている。また、第1電流センサ21の第2の電線4bに対する取り付け向きは反対となり、第2電流センサ22の第1の電線4aに対する取り付け向きは正常となる。この場合、第1の電線4aの電流を検出する第2電流センサ22の検出値Icwが正の値になるため、検出値Icwに負の値である電圧Vwoを乗算したW相の系統電力Pwが0未満となる。一方、第2の電線4bの電流を検出する第1電流センサ21の検出値Icuが正の値になるため、検出値Icuに正の値である電圧Vuoを乗算したU相の系統電力Puが0以上となる。
【0037】
図3に示すように、制御部13は、U相の系統電力Puが0未満(ステップS11:YES)かつW相の系統電力Pwが0未満(ステップS12:YES)と判定したとき、ステップS23において第3の取り付けエラーを示すエラー信号を表示器3に出力する。
【0038】
第3の取り付けエラーにおける各電流センサ21,22の取り付け態様は、図6(a)及び(b)のパターンが挙げられる。図6(a)に示すように、第1の電線4aに取り付けられる第1電流センサ21の向きが反対となる。この場合、第1電流センサ21の検出値Icuが負の値になるため、検出値Icuに正の値である電圧Vuoを乗算したU相の系統電力Puが0未満となる。また、第2の電線4bに取り付けられる第2電流センサ22の向きが反対となる。この場合、第2電流センサ22の検出値Icwが正の値になるため、検出値Icwに負の値である電圧Vwoを乗算したW相の系統電力Pwが0未満となる。
【0039】
図6(b)に示すように、第1電流センサ21が第2の電線4bに取り付けられ、第2電流センサ22が第1の電線4aに取り付けられる。一方、各電流センサ21,22の取り付ける向きは正常である。この場合、第1電流センサ21の検出値Icuが負の値になるため、U相の系統電力Puが0未満となる。第2電流センサ22の検出値Icwが正の値になるため、W相の系統電力Pwが0未満となる。
【0040】
一方、図3に示すように、制御部13は、U相の系統電力Puが0以上(ステップS11:NO)かつW相の系統電力Pwが0以上(ステップS13:NO)と判定したとき、処理を終了する。すなわち、各電流センサ21,22は正常に取り付けられているため、制御部13はエラー信号を表示器3に出力しない。
【0041】
表示器3は、制御部13からの第1〜第3の取り付けエラーを示すエラー信号を受信したとき、取り付けエラーの種類を表示する。この場合、作業者(施工者)は、表示器3に表示された取り付けエラーの種類から第1電流センサ21及び第2電流センサ22の取り付けエラーのパターンを絞ることができる。そして作業者は、取り付けエラーの絞ったパターンに基づいて、第1電流センサ21及び第2電流センサ22のうちの取り付けエラーとなる電流センサを正常に取り付ける。また制御部13は、第1〜第3の取り付けエラーのいずれかに応じたエラー信号を表示器3に出力するとき、パワーコンディショナ10の動作を停止させる。
【0042】
図7図10を参照して、インバータ部12の動作時における取り付けエラー処理について説明する。なお、図8図10において網掛けが付された電流センサは取り付けエラーを示す電流センサである。また図8図10において「×」が付された電流センサは、脱落又は故障した電流センサである。また、このエラー処理は、U相の電圧Vuoが正の値、W相の電圧Vwoが負の値のときのU相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwに基づいて実行される。
【0043】
図7に示すように、制御部13は、ステップS31において第1タイマのカウントを開始する。そして制御部13は、ステップS32において第1タイマのカウントの開始から第1の所定期間を経過したか否かを判定する。また制御部13は、第1の所定期間に亘りインバータ部12の出力電力を監視し、記録している。例えば、第1の所定期間は、インバータ部12の出力電力を所定量に亘って変動させるための期間である。第1の所定期間の一例は、100msである。制御部13は、インバータ部12の出力電力を、インバータ部12から第1の電線4aに供給された電流値に電圧Vuoを乗算した結果と、インバータ部12から第2の電線4bに供給された電流値に電圧Vwoを乗算した結果とを加算して得る。
【0044】
制御部13は、第1タイマのカウントの開始から第1の所定期間を経過していないと判定したとき(ステップS32:NO)、再びステップS32の判定に移行する。一方、制御部13は、第1タイマのカウントの開始から第1の所定期間を経過したと判定したとき(ステップS32:YES)、ステップS33においてインバータ部12の出力電力の変動幅が第1閾値以上か否かを判定する。例えば、第1閾値は、インバータ部12の出力電力の変動に応じて各電流センサ21,22の検出値Icu,Icwの変動が検出可能な大きさであればよい。第1閾値の一例は、50Wである。
【0045】
制御部13は、インバータ部12の出力電力の変動幅が第1閾値未満と判定したとき(ステップS33:NO)、処理を一旦終了する。一方、制御部13は、インバータ部12の出力電力の変動幅が第1閾値以上と判定したとき(ステップS33:YES)、ステップS34において第2タイマのカウントを開始する。そして制御部13は、ステップS35において第2タイマのカウントの開始から第2の所定期間を経過したか否かを判定する。また制御部13は、第2の所定期間に亘り各電流センサ21,22の検出値Icu,Icwを監視し、記録している。例えば、第2の所定期間は、インバータ部12の出力電力の変動と各負荷6A,6Bの変動とが異なると判定できる期間である。第2の所定期間の一例は、3秒である。
【0046】
制御部13は、第2タイマのカウントの開始から第2の所定期間を経過していないと判定したとき(ステップS35:NO)、再びステップS35の判定に移行する。一方、制御部13は、第2タイマのカウントの開始から第2の所定期間を経過したと判定したとき(ステップS35:YES)、ステップS36においてインバータ部12の出力電力の変動に対してU相の系統電力Puの変動幅が第2閾値以上か否かを判定する。制御部13は、ステップS36の判定後、ステップS37,S38においてインバータ部12の出力電力の変動に対してW相の系統電力Pwの変動幅が第2閾値以上か否かを判定する。例えば、第2閾値は、各相の系統電力Pu,Pwがインバータ部12の出力電力の変動に対して変動したか否かを判定するための値である。例えば、第2閾値は、第1負荷6Aの負荷電力及び第2負荷6Bの負荷電力が同じであり、インバータ部12の出力電力の変動幅が50W以上である場合、20Wである。また例えば、U相の系統電力Puの変動幅は、第2の所定期間における系統電力Puの最小値と最大値との差により規定され、W相の系統電力Pwの変動幅は、第2の所定期間における系統電力Pwの最小値と最大値との差により規定される。
【0047】
制御部13は、インバータ部12の出力電力の変動に対して、U相の系統電力Puの変動幅が第2閾値未満(ステップS36:NO)かつW相の系統電力Pwの変動幅が第2閾値以上(ステップS37:YES)と判定したとき、ステップS41において第1電流センサ21が取り付けエラーであることを示すエラー信号を表示器3に出力する。
【0048】
第1電流センサ21の取り付けエラーは、第1の電線4aから第1電流センサ21が脱落した、又は第1電流センサ21が故障により動作しない第1のパターンと、第1電流センサ21が正しく取り付けられていない第2のパターンとが考えられる。これらパターンにおける各電流センサ21,22の取り付け態様は、図8(a)の第1のパターン及び図8(b)の第2のパターンが挙げられる。
【0049】
図8(a)に示すように、第1電流センサ21は、第1の電線4aから脱落した、又は故障により動作しない。この場合、第1電流センサ21の検出値Icuは、0又は所定値で固定されているため、U相の系統電力Puの変動幅は第2閾値未満(0)となる。第2電流センサ22は、第2の電線4bに正常に取り付けられている。この場合、第2電流センサ22の検出値Icwはインバータ部12の出力電力の変動に応じて変動するため、W相の系統電力Pwの変動幅が第2閾値以上となる。なお、図8(a)に示す第1のパターンでは、第1負荷6Aの負荷電力及び第2負荷6Bの負荷電力の大小関係は条件に入らない。
【0050】
図8(b)に示す第2のパターンは、第1負荷6Aの負荷電力が第2負荷6Bの負荷電力よりも大きいことが条件となる。これにより、第3の電線4cでは、パワーコンディショナ10側から電力系統5側に向けて電流が流れる。図8(b)に示すように、第1電流センサ21は、第3の電線4cに取り付けられ、その取り付け向きが反対である。第2電流センサ22は、第2の電線4bに正常に取り付けられている。
【0051】
図8(b)に示す各電流センサ21,22の取り付け態様では、インバータ部12の非動作時において、各相の系統電力Pu,Pwが0よりも大きくなるため、制御部13は、各電流センサ21,22が正常に取り付けられているとしてエラー信号を表示器3に出力しない。
【0052】
しかし、インバータ部12から電力が交流母線4に出力すると、第1の電線4aの電流Iu及び第2の電線4bの電流Iwのそれぞれは、インバータ部12の出力電流Ipc分だけ減少する。すなわち、インバータ部12の動作時において、第3の電線4cに流れる電流Ioは、(Iu−Ipc)−(Iw−Ipc)=Iu−Iwとなり、変動しない。したがって、インバータ部12の動作時において、第1電流センサ21の検出値Icuに基づくU相の系統電力Puの変動幅が第2閾値未満(0)となる。なお、第2電流センサ22の検出値Icwはインバータ部12の出力電力の変動に応じて変動するため、W相の系統電力Pwの変動幅が第2閾値以上となる。
【0053】
図7に示すように、制御部13は、インバータ部12の出力電力の変動に対して、U相の系統電力Puの変動幅が第2閾値以上(ステップS36:YES)かつW相の系統電力Pwの変動幅が第2閾値未満(ステップS38:NO)と判定したとき、ステップS42において第2電流センサ22が取り付けエラーであることを示すエラー信号を表示器3に出力する。
【0054】
第2電流センサ22の取り付けエラーは、第2の電線4bから第2電流センサ22が脱落した、又は第2電流センサ22が故障により動作しない第1のパターンと、第2電流センサ22が正しく取り付けられていない第2のパターンとが考えられる。これらパターンにおける各電流センサ21,22の取り付け態様は、図9(a)の第1のパターン及び図9(b)の第2のパターンが挙げられる。
【0055】
図9(a)に示すように、第1電流センサ21は、第1の電線4aに正常に取り付けられている。この場合、第1電流センサ21の検出値Icuは、インバータ部12の出力電力の変動に応じて変動するため、U相の系統電力Puの変動幅が第2閾値以上となる。第2電流センサ22は、第2の電線4bから脱落した、又は故障により動作しない。この場合、第2電流センサ22の検出値Icwは、0又は所定値で固定されているため、W相の系統電力Pwの変動幅は第2閾値未満(0)となる。なお、図9(a)に示す第1のパターンでは、第1負荷6Aの負荷電力及び第2負荷6Bの負荷電力の大小関係は条件に入らない。
【0056】
図9(b)に示す第2のパターンでは、第1負荷6Aの負荷電力が第2負荷6Bの負荷電力よりも大きいことが条件となる。これにより、第3の電線4cでは、パワーコンディショナ10側から電力系統5側に向けて電流が流れる。図9(b)に示すように、第1電流センサ21は、第1の電線4aに正常に取り付けられている。第2電流センサ22は、第3の電線4cに取り付けられ、その取り付け向きが反対である。図9(b)に示す各電流センサ21,22の取り付け態様は、図8(b)に示す各電流センサ21,22の取り付け態様と同様に取り付けエラーを検出できる。
【0057】
図7に示すように、制御部13は、インバータ部12の出力変動に対して、U相の系統電力Puの変動幅及びW相の系統電力Pwの変動幅が共に第2閾値未満(ステップS36:NO、ステップS37:NO)と判定したとき、ステップS43において各電流センサ21,22のそれぞれが取り付けエラーであることを示すエラー信号を表示器3に出力する。
【0058】
図10に示すように、第1電流センサ21及び第2電流センサ22の両方の取り付けエラーは、第1電流センサ21が第1の電線4aから脱落した、又は第1電流センサ21が故障により動作しない、かつ、第2電流センサ22が第2の電線4bから脱落した、又は第2電流センサ22が故障により動作しない場合である。この場合、各電流センサ21,22の検出値Icu,Icwは、0又は固定値であるため、各相の系統電力Pu,Pwの変動幅は第2閾値未満(0)である。
【0059】
一方、図7に示すように、制御部13は、インバータ部12の出力変動に対して、U相の系統電力Puの変動幅及びW相の系統電力Pwの変動幅が共に第2閾値以上(ステップS36:YES、ステップS38:YES)と判定したとき、処理を一旦終了する。この場合、制御部13は、第1電流センサ21及び第2電流センサ22の脱落及び故障等がないため、エラー信号を表示器3に出力しない。
【0060】
表示器3(図1参照)は、制御部13からのエラー信号を受信したとき、取り付けエラーの種類を表示する。この場合、作業者(施工者)は、表示器3に表示された取り付けエラーの種類から第1電流センサ21及び第2電流センサ22の取り付けエラーのパターンを絞ることができる。そして作業者は、取り付けエラーの絞ったパターンに基づいて、第1電流センサ21及び第2電流センサ22のうちの取り付けエラーとなる電流センサを正常に取り付ける。施工後であれば、表示器3に取り付けエラーが表示されるため、家主は施工業者に取り付けエラーを連絡することができる。また制御部13は、各電流センサ21,22の取り付けエラーのいずれかに応じたエラー信号を表示器3に出力するとき、パワーコンディショナ10の動作を停止させる。
【0061】
次に、本実施形態の作用について説明する。
インバータ部12の非動作時では、電力系統5から第1負荷6A及び第2負荷6Bに電流が供給される。この場合、U相の系統電力Puは第1負荷6Aの負荷電力に等しく、W相の系統電力Pwは第2負荷6Bの負荷電力に等しい。このため、第1電流センサ21が第1の電線4aに正常に取り付けられ、第2電流センサ22が第2の電線4bに正常に取り付けられていれば、各系統電力Pu,Pwは正の値となる。すなわち、各系統電力Pu,Pwのうちの負の値となる系統電力に対応する電流センサは取り付けエラーである。
【0062】
制御部13は、インバータ部12の非動作時において、各系統電力Pu,Pwのうちの負となる系統電力に対応する電流センサの取り付けエラーを示すエラー信号を出力する。したがって、制御部13は、インバータ部12の非動作時において、各系統電力Pu,Pwの正負に基づいて各電流センサ21,22の取り付けエラーを検出できる。
【0063】
インバータ部12の動作時では、パワーコンディショナ10及び電力系統5から第1負荷6A及び第2負荷6Bに電流が供給される。この場合、インバータ部12から第1負荷6Aへの出力電力とU相の系統電力Puとの合計が第1負荷6Aの負荷電力に等しく、インバータ部12から第2負荷6Bへの出力電力とW相の系統電力Pwとの合計が第2負荷6Bの負荷電力に等しくなる。このため、インバータ部12から第1負荷6Aへの出力電力が減少した場合、U相の系統電力Puは増加し、インバータ部12から第1負荷6Aへの出力電力が増加した場合、U相の系統電力Puは減少する。インバータ部12から第2負荷6Bへの出力電力が減少した場合、W相の系統電力Pwは増加し、インバータ部12から第2負荷6Bへの出力電力が増加した場合、W相の系統電力Pwは減少する。このように、各相の系統電力Pu,Pwは、インバータ部12の出力電力の変動に応じて変動する。したがって、インバータ部12の出力電力の変動に対して、各相の系統電力Pu,Pwのうち変動しない系統電力に対応する電流センサは取り付けエラー又は故障である。
【0064】
制御部13は、インバータ部12の動作時において、インバータ部12の出力電力の変動に対して各系統電力のうち変動しない系統電力に対応する電流センサの取り付けエラーを示すエラー信号を出力する。したがって、制御部13は、インバータ部12の動作時において、インバータ部12の出力電力の変動に応じて各系統電力が変動したか否かに基づいて、各電流センサ21,22の取り付けエラーもしくは故障を検出できる。
【0065】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)インバータ部12の出力の変動と、U相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwの変動、すなわち第1電流センサ21の検出値Icu及び第2電流センサ22の検出値Icwの変動とに基づいて制御部13がエラー信号を出力する。このため、エラーを検出するための負荷を別途設けることなく各電流センサ21,22の取り付けエラーを検出することができる。
【0066】
加えて、第1電流センサ21及び第2電流センサ22が正しく取り付けられた後、第1電流センサ21及び第2電流センサ22が脱落等に起因して第1電流センサ21及び第2電流センサ22が取り付けエラーになる場合、インバータ部12の出力の変動に応じて各相の系統電力Pu,Pwが変動しない。これにより、制御部13は、第1電流センサ21及び第2電流センサ22が正しく取り付けられた後に、第1電流センサ21及び第2電流センサ22の脱落等に起因する取り付けエラーを検出できる。
【0067】
(2)第2の所定期間は、インバータ部12の出力の変動態様と、U相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwの変動態様、すなわち第1電流センサ21の検出値Icu及び第2電流センサ22の検出値Icwの変動態様とを監視する期間である。短い期間では、その期間に亘りインバータ部12の出力電力の変動と、第1の電線4aに接続された第1負荷6A及び第2の電線4bに接続された第2負荷6Bの負荷電力の変動とが同様に変動する場合がある。本実施形態のパワーコンディショナ10では、第2の所定期間を長く設定しているため、インバータ部12の出力電力と各負荷6A,6Bの負荷電力とが同様に変動し続ける確率が、短い期間に比べて低くなる。したがって、制御部13は、第1電流センサ21及び第2電流センサ22が正しく取り付けられていることがより確実に判定できる。
【0068】
(3)インバータ部12の非動作時では、電力系統5からパワーコンディショナ10に向けて電流が流れる。すなわちインバータ部12が非動作のとき、第1の電線4a及び第2の電線4bに流れる電流の方向が一定となる。これにより、例えば第1電流センサ21及び第2電流センサ22が正しく取り付けられたとき、インバータ部12の非動作における第1電流センサ21の検出値Icuが正の値及び第2電流センサ22の検出値Icwが負の値になる。このため、正の値である電圧Vuoと検出値Icuとの乗算であるU相の系統電力Pu及び負の値である電圧Vwoと検出値Icwとの乗算であるW相の系統電力Pwは共に正の値となる。したがって、U相の系統電力Pu又はW相の系統電力Pwが負の値であれば、その負の値となる系統電力に対応した電流センサが取り付けエラーであると分かる。このように制御部13は、インバータ部12の非動作時におけるU相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwに基づいて第1電流センサ21及び第2電流センサ22の取り付けエラーを容易に検出できる。
【0069】
(4)制御部13は、インバータ部12の非動作時において、U相の系統電力Puが0以上かつW相の系統電力Pwが0未満のとき、第2電流センサ22の取り付けエラーを示すエラー信号を表示器3に出力する。制御部13は、U相の系統電力Puが0未満かつW相の系統電力Pwが0以上のとき、第1電流センサ21の取り付けエラーを示すエラー信号を表示器3に出力する。このように、制御部13は、インバータ部12の非動作時におけるU相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwが0を閾値として互いに異なることに基づいて、第1電流センサ21及び第2電流センサ22のいずれかが取り付けエラーであることを容易に検出できる。
【0070】
(5)第1電流センサ21又は第2電流センサ22が中性線である第3の電線4cに誤って取り付けられたとき、インバータ部12の非動作時において各系統電力Pu,Pwが正の値となる場合がある。このとき、制御部13は、インバータ部12の非動作時において各電流センサ21,22の取り付けエラーを示すエラー信号を表示器3に出力しない。そこで、制御部13は、インバータ部12の出力電力の変動と各系統電力Pu,Pwの変動との比較に基づいて各電流センサ21,22の取り付けエラーを検出する。このように、制御部13は、インバータ部12の非動作時とインバータ部12の動作時の両方において各電流センサ21,22の取り付けエラーを検出することにより、第1電流センサ21又は第2電流センサ22が第3の電線4cに誤って取り付けられた取り付けエラーを検出することができる。
【0071】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明のパワーコンディショナが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明のパワーコンディショナは、例えば以下に示される上記実施形態の変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0072】
・上記実施形態のインバータ部12の非動作時の取り付けエラー処理において、U相の系統電力及びW相の系統電力の正負に代えて、各電流センサ21,22の検出値の正負で判定してもよい。すなわち、図3に示す取り付けエラー処理において、ステップS11の判定が「第1電流センサ21の検出値Icuが0未満か否か」の判定に置き換えられ、ステップS12,S13の判定が「第2電流センサ22の検出値Icwが0未満か否か」の判定に置き換えられる。
【0073】
・上記実施形態のインバータ部12の非動作時の取り付けエラー処理において、制御部13は、W相の系統電力Pwが0未満か否かを判定した後、U相の系統電力Puが0未満か否かを判定してもよい。
【0074】
・上記実施形態のインバータ部12の非動作時の取り付けエラー処理において、制御部13は、第1の取り付けエラーと判定した後、第1負荷6Aの負荷電力が第2負荷6Bの負荷電力よりも大きいか否かの判定を行ってもよい。この判定により、第1負荷6Aの負荷電力が第2負荷6Bの負荷電力以下の場合、図4(b)に示す取り付けエラーではないことを検出できる。また制御部13は、第2の取り付けエラーと判定した後、第2負荷6Bの負荷電力が第1負荷6Aの負荷電力よりも大きいか否かの判定を行ってもよい。この判定により、第2負荷6Bの負荷電力が第1負荷6Aの負荷電力以下の場合、図5(b)に示す取り付けエラーではないことを検出できる。
【0075】
・上記実施形態のインバータ部12の動作時の取り付けエラー処理において、制御部13は、第1の所定期間を経過していないと判定したとき(ステップS32:NO)、ステップS33においてインバータ部12の出力電力の変動幅が第1閾値以上か否かの判定を行ってもよい。すなわち制御部13は、第1の所定期間後にステップS33の判定を行うのではなく、第1の所定期間中にステップS33の判定を行ってもよい。
【0076】
・上記実施形態のインバータ部12の動作時の取り付けエラー処理において、制御部13は、インバータ部12の出力電力の変動に対してW相の系統電力Pwの変動幅が第2閾値未満か否かを判定した後、U相の系統電力Puの変動幅が第2閾値未満か否かを判定してもよい。
【0077】
・上記実施形態のインバータ部12の動作時の取り付けエラー処理のステップS36〜S38の判定において、U相の系統電力及びW相の系統電力に代えて、第1電流センサ21の検出値Icu及び第2電流センサ22の検出値Icwを用いてもよい。すなわち制御部13は、第1の所定期間内においてインバータ部12の出力電力の変動幅が第1閾値以上変動するとき、第2の所定期間において第1電流センサ21の検出値Icuがインバータ部12の出力電力の変動に応じて変動していない場合にエラー信号を表示器3に出力する。また制御部13は、第1の所定期間内においてインバータ部12の出力電力の変動幅が第1閾値以上変動するとき、第2の所定期間において第2電流センサ22の検出値Icwがインバータ部12の出力電力の変動に応じて変動してない場合にエラー信号を表示器3に出力する。
【0078】
・上記実施形態において、図2に示す第1電流センサ21及び第2電流センサ22が正常に取り付けられた状態で、インバータ部12の非動作時に電力系統5から各負荷6A,6Bに電力が供給されるとき、第1電流センサ21の検出値Icuが負の値となり、第2電流センサ22の検出値Icwが正の値となるように取り付け方向を規定してもよい。この場合、U相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwのうちの正の値となる系統電力に対応した電流センサが取り付けエラーとなる。
なお、制御部13は、インバータ部12が非動作時における取り付けエラー処理において、ステップS11の判定を「U相の系統電力が0よりも大きいか否か」の判定に変更し、ステップS12,S13の判定を「W相の系統電力が0よりも大きいか否か」の判定に変更する。
また、図8(b)及び図9(b)に示す各電流センサ21,22の取り付け態様では、インバータ部12の非動作時において、U相の系統電力Pu及びW相の系統電力Pwが共に0よりも小さくなり、制御部13は各電流センサ21,22が正常に取り付けられているとして表示器3にエラー信号を出力しない。
【0079】
・上記実施形態において、発電装置として、太陽光発電装置2に代えて、風力発電装置、ガス発電装置、地熱発電装置等を用いることができる。この場合、パワーコンディショナ10は、変換部としてPVコンバータ11に代えて、上記発電装置に対応した変換部を有する。
【符号の説明】
【0080】
4a…第1の電線、4b…第2の電線、4c…第3の電線、5…電力系統、10…パワーコンディショナ、11…PVコンバータ(変換部)、12…インバータ部、13…制御部、21…第1電流センサ、22…第2電流センサ、Icu…第1電流センサの検出値、Icw…第2電流センサの検出値、Pu…U相の系統電力(第1系統電力)、Pw…W相の系統電力(第2系統電力)。
図1
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図10