(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1端面、前記第2端面および前記底面に平行な方向からみて、前記第1引出部と前記第1外部電極のなす角度と、前記第2引出部と前記第2外部電極のなす角度とは、鋭角である、請求項1に記載のインダクタ部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のインダクタ部品を実装基板に実装すると、以下の問題があることを見出した。インダクタ部品を実装基板に実装するとき、インダクタ部品の第1、第2外部電極のそれぞれは、実装基板の配線に接続される。実装基板の配線は、基本的に無駄な引き回しがないよう、第1、第2外部電極のそれぞれの直下を通る直線をインダクタ部品の外側に延伸した形状にレイアウトされる。このため、インダクタ部品に対して、インダクタ部品の第1、第2端面側から信号が出入力される。この場合、第1外部電極において第2端面側の第1端と第1端面側の第2端との間に渡って電流が流れ、第2外部電極において第1端面側の第1端と第2端面側の第2端との間に渡って電流が流れてしまう。
【0006】
このため、実装基板からインダクタ部品に伝達された電流は、第1外部電極および第2外部電極のそれぞれにおいて、第1端と第2端の間を流れないと、コイルに流出入できない。これにより、第1外部電極および第2外部電極における電流の線路長が長くなって、損失が増加し、Q値が低減する。
【0007】
そこで、本発明の課題は、損失の増加を抑制でき、Q値を向上できるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のインダクタ部品は、
素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極および第2外部電極と
を備え、
前記素体は、互いに対向する第1端面および第2端面と、前記第1端面と前記第2端面の間に接続された底面とを含み、
前記第1外部電極は、前記底面の前記第1端面側に形成され、前記第2外部電極は、前記底面の前記第2端面側に形成され、
前記コイルの第1端は、前記第1外部電極の前記第1端面側の端部に接続され、前記コイルの第2端は、前記第2外部電極の前記第2端面側の端部に接続されている。
【0009】
本発明のインダクタ部品によれば、コイルの第1端は、第1外部電極の第1端面側の端部に接続され、コイルの第2端は、第2外部電極の第2端面側の端部に接続されている。インダクタ部品を実装基板に実装するとき、第1外部電極および第2外部電極が、実装基板の配線に接続される。そして、コイルと実装基板の間に電流を流すと、第1外部電極および第2外部電極のそれぞれにおいて、電流は、該端部付近を流れただけでコイルに流出入することができる。これにより、第1外部電極および第2外部電極における電流の線路長が短くなって、損失の増加を抑制でき、Q値を向上できる。
【0010】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記コイルは、螺旋状に巻回された巻回部と、前記巻回部の第1端と前記第1外部電極の前記第1端面側の端部の間に接続された第1引出部と、前記巻回部の第2端と前記第2外部電極の前記第2端面側の端部の間に接続された第2引出部とを有する。
【0011】
前記実施形態によれば、コイルは、巻回部と第1引出部と第2引出部とを有するので、巻回部の形状設計と、第1、第2外部電極の形状設計を独立させることができ、設計の自由度が向上する。
【0012】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1端面、前記第2端面および前記底面に平行な方向からみて、前記第1引出部と前記第1外部電極のなす角度と、前記第2引出部と前記第2外部電極のなす角度とは、鋭角である。
【0013】
前記実施形態によれば、電流が実装基板からインダクタ部品に流れる際、例えば、電流は、素体の第1端面側から素体の内側に向かって、第1外部電極に流れる。そして、電流は、第1外部電極を通過して第1引出部を流れる。このとき、第1引出部と第1外部電極のなす角度は、鋭角であるため、電流の向きが急角度に変化しないので、反射や渦電流による損失を低減できる。
【0014】
一方、電流がインダクタ部品から実装基板に流れる際、電流は、第2引出部と第2外部電極を通過して、素体の内側から素体の第2端面側に向かって流れる。このとき、第2引出部と第2外部電極のなす角度は、鋭角であるため、電流の向きが急角度に変化しないので、反射や渦電流による損失を低減できる。
【0015】
したがって、電流を円滑に流すことができて、電流の反射損失の増加を抑制でき、Q値を向上できる。なお、上記では、電流が、第1外部電極から、第1引出部、巻回部、第2引出部、第2外部電極の順に流れる例で説明したが、電流が上記とは逆方向に流れる場合も同様である。
【0016】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記巻回部は、前記底面に平行な軸方向に螺旋状に巻回されている。
【0017】
前記実施形態によれば、巻回部の軸方向が底面に平行であるので、底面に形成された第1、第2外部電極が巻回部により発生する磁束を遮りにくい構造となり、より損失を低減できる。
【0018】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記巻回部の軸方向からみて、
前記第1引出部は、前記第1引出部が前記巻回部に最短距離で交差する第1位置と、前記第1引出部が前記巻回部に接する第2位置との間で、前記巻回部に接続し、
前記第2引出部は、前記第2引出部が前記巻回部に最短距離で交差する第1位置と、前記第2引出部が前記巻回部に接する第2位置との間で、前記巻回部に接続する。
【0019】
前記実施形態によれば、第1引出部が巻回部に最短距離で交差するとき、第1引出部の長さを最短とでき、線路長増加に伴う損失の増加を抑制できる。一方、第1引出部が巻回部に接するとき、第1引出部と巻回部の間の電流の流れを円滑にできる。
【0020】
同様に、第2引出部が巻回部に最短距離で交差するとき、第2引出部の長さを最短とでき、線路長増加に伴う損失の増加を抑制できる。一方、第2引出部が巻回部に接するとき、第2引出部と巻回部の間の電流の流れを円滑にできる。
【0021】
したがって、第1引出部および第2引出部が、第1位置と第2位置との間で、巻回部に接続する場合は、第1、第2引出部の線路長と電流の流れの円滑性のバランスが取れる。
【0022】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記巻回部は、前記第1端面、前記第2端面および前記底面に平行な軸方向に螺旋状に巻回されている。
【0023】
前記実施形態によれば、巻回部の軸方向が第1端面、第2端面および底面に平行であるので、例えば、第1外部電極から第1引出部を電流が流れる向きと、第1引出部から巻回部を電流が流れる向きとが、逆向きにならないので、より反射や渦電流による損失を低減できる。巻回部、第2引出部および第2外部電極を順に流れる電流の向きについても同様である。
【0024】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1引出部および前記第2引出部は、前記素体の前記底面から前記素体の前記底面に対向する天面に向かって延在している。
【0025】
前記実施形態によれば、第1引出部および第2引出部は、底面から天面に向かって延在しているので、第1引出部および第2引出部が底面に沿って延在している場合に比べて、コイルのターン数を増加できる。
【0026】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記巻回部は、平面状に巻回されたコイル導体層を含む。
【0027】
前記実施形態によれば、インダクタ部品を積層インダクタとできる。
【0028】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1外部電極は、前記素体の前記第1端面から露出し、前記第2外部電極は、前記素体の前記第2端面から露出している。
【0029】
前記実施形態によれば、第1外部電極は、第1端面から露出し、第2外部電極は、第2端面から露出している。これにより、はんだによってインダクタ部品を実装基板に実装するとき、はんだは、第1外部電極の第1端面側、および、第2外部電極の第2端面側にも、接合される。したがって、インダクタ部品の実装基板に対する固着強度を向上できる。
【0030】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1外部電極は、前記素体の前記第1端面に覆われ、前記第2外部電極は、前記素体の前記第2端面に覆われている。
【0031】
前記実施形態によれば、第1外部電極は、第1端面に覆われ、第2外部電極は、第2端面に覆われている。これにより、はんだによってインダクタ部品を実装基板に実装するとき、はんだは、第1外部電極の第1端面側、および、第2外部電極の第2端面側を、濡れ上がらない。したがって、はんだは、素体の端面の外側に拡がらず、はんだを含めたインダクタ部品の実装基板に対する実装面積を低減できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のインダクタ部品によれば、第1外部電極および第2外部電極における電流の線路長が短くなって、損失の増加を抑制でき、Q値を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す透視斜視図である。
図2は、インダクタ部品の分解斜視図である。
図3は、インダクタ部品の透視正面図である。
図1と
図2と
図3に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10の内部に設けられた螺旋状のコイル20と、素体10に設けられコイル20に電気的に接続された第1外部電極30および第2外部電極40とを有する。
図1と
図3では、素体10は、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。
【0036】
インダクタ部品1は、第1、第2外部電極30,40を介して、図示しない回路基板の配線に電気的に接続される。インダクタ部品1は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、インダクタ部品1の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
【0037】
素体10は、複数の絶縁層11を積層して構成される。絶縁層11は、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とする材料や、フェライト、樹脂などの材料からなる。なお、素体10は、焼成などによって、複数の絶縁層11同士の界面が明確となっていない場合がある。素体10は、略直方体状に形成されている。素体10の表面は、第1端面15と、第1端面15に対向する第2端面16と、第1端面15と第2端面16の間に接続された底面17と、底面17に対向する天面18とを有する。第1端面15、第2端面16、底面17および天面18は、絶縁層11の積層方向Aに平行な面となる。ここで、本願における「平行」とは、厳密な平行関係に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な平行関係も含む。
【0038】
第1外部電極30および第2外部電極40は、例えば、Ag、Cu、Auやこれらを主成分とする合金などの導電性材料から構成される。第1外部電極30は、底面17の第1端面15側に形成されている。第2外部電極40は、底面17の第2端面16側に形成されている。
【0039】
第1外部電極30は、素体10の底面17に沿って延在している。第1外部電極30は、底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。第1外部電極30の下面は、底面17と同一平面に位置する。さらに、第1外部電極30は、第1端面15から露出している。第1外部電極30の側面は、第1端面15と同一平面に位置する。
【0040】
第2外部電極40は、第1外部電極30と同様に、底面17に沿って延在している。さらに、第2外部電極40は、第1外部電極30と同様に、底面17および第2端面16から露出するように素体10に埋め込まれている。
【0041】
なお、第1外部電極30および第2外部電極40は、素体10(絶縁層11)に埋め込まれた複数の第1外部電極導体層33および第2外部電極導体層43が積層された構成を有している。外部電極導体層33は、第1端面15側で底面17に沿って延在しており、外部電極導体層43は、第2端面16側で底面17に沿って延在している。これにより、素体10内に外部電極30,40を埋め込むことができるため、素体10に外部電極を外付けする構成に比べて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。また、コイル20と外部電極30,40を同一工程で形成することができ、コイル20と外部電極30,40との間の位置関係のばらつきを低減することで、インダクタ部品1の電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0042】
コイル20は、例えば、第1、第2外部電極30,40と同様の導電性材料から構成される。コイル20は、絶縁層11の積層方向Aに沿って、螺旋状に巻き回されている。コイル20の第1端は、第1外部電極30の第1端面15側の端部30aに接続され、コイル20の第2端は、第2外部電極40の第2端面16側の端部40aに接続されている。なお、本実施形態では、コイル20と第1、第2外部電極30,40とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、コイルと外部電極とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0043】
コイル20は、絶縁層11上に平面状に巻回された複数のコイル導体層25を含む。このように、コイル20が微細加工可能なコイル導体層25で構成されることによりインダクタ部品1の小型化、低背化を図れる。積層方向Aに隣り合うコイル導体層25は、絶縁層11を厚み方向に貫通するビア導体層26を介して、電気的に直列に接続される。このように、複数のコイル導体層25は、互いに電気的に直列に接続されながら、螺旋を構成している。具体的には、コイル20は、互いに電気的に直列に接続され、巻回数が1周未満の複数のコイル導体層25が積層された構成を有し、コイル20はヘリカル形状である。このとき、コイル導体層25内で発生する寄生容量やコイル導体層25間で発生する寄生容量を低減でき、インダクタ部品1のQ値を向上させることができる。
【0044】
コイル20は、巻回部23と、巻回部23の第1端と第1外部電極30の間に接続された第1引出部21と、巻回部23の第2端と第2外部電極40の間に接続された第2引出部22とを有する。本実施形態では、巻回部23と第1、第2引出部21,22とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、巻回部と引出部とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0045】
巻回部23は、コイル導体層25及びおよびビア導体層26によって構成され、第1端面15、第2端面16および底面17に平行な軸方向Lに螺旋状に巻回されている。インダクタ部品1では、巻回部23の軸方向Lは、絶縁層11の積層方向Aと一致する。巻回部23(コイル20)の軸とは、巻回部23の螺旋形状の中心軸を意味する。巻回部23の軸は、第1、第2外部電極30,40に平行となる。これにより、第1、第2外部電極30,40付近に発生するコイル20の磁束は、第1、第2外部電極30,40に平行となる。したがって、この磁束のうち、第1、第2外部電極30,40により遮られる割合を低減でき、第1、第2外部電極30,40により発生する渦電流損が低減するため、コイル20のQ値の低下を抑えることができる。
【0046】
巻回部23は、軸方向Lからみて、略長円形に形成されているが、この形状に限定されない。巻回部23の形状は、例えば、円形、楕円形、長方形、その他の多角形などであってもよい。
【0047】
第1引出部21は、第1外部電極30の第1端面15側の端部30aに接続されている。第2引出部22は、第2外部電極40の第2端面16側の端部40aに接続されている。
図3に示すように、巻回部23の軸方向Lからみて、第1引出部21と第1外部電極30のなす第1角度θ1と、第2引出部22と第2外部電極40のなす第2角度θ2とは、鋭角である。本実施形態では、第1角度θ1と第2角度θ2とは、同じであるが、異なっていてもよい。ここで、
図4に示すように、加工性の観点から、第1引出部21の第1外部電極30と接続する部分にフィレットfを設けることがあるが、このフィレットfにおいて第1角度θ1を測定しない。つまり、軸方向Lからみて、第1引出部21が延在する方向と平行となる第1引出部21の側面において、第1角度θ1を測定する。なお、第2引出部22においても同様である。
【0048】
前記インダクタ部品1によれば、コイル20の第1端は、第1外部電極30の第1端面15側の端部30aに接続され、コイル20の第2端は、第2外部電極40の第2端面16側の端部40aに接続されている。
図5に示すように、インダクタ部品1を実装基板50に実装するとき、第1外部電極30が、実装基板50の第1配線51に接続され、第2外部電極40が、実装基板50の第2配線52に接続される。そして、コイル20と実装基板50の間に電流を流すと、電流は、矢印に示すように、第1外部電極30の端部30a付近を流れてコイル20に流入し、第2外部電極40の端部40a付近を流れてコイル20から流出する。これにより、第1外部電極30および第2外部電極40における電流の線路長が短くなって、損失の増加を抑制でき、Q値を向上できる。
【0049】
前記インダクタ部品1によれば、コイル20は、巻回部23と第1引出部21と第2引出部22とを有するので、巻回部23の形状設計と、第1、第2外部電極30,40の形状設計を独立させることができ、設計の自由度が向上する。
【0050】
前記インダクタ部品1によれば、
図5に示すように、電流が実装基板50の第1配線51からインダクタ部品1に流れる際、例えば、電流は、素体10の第1端面15側から素体10の内側に向かって、第1外部電極30に流れる。そして、電流は、第1外部電極30を通過して第1引出部21を流れる。このとき、第1引出部21と第1外部電極30のなす第1角度θ1は、鋭角であるため、電流の向きが急角度に変化しないので、反射や渦電流による損失を低減できる。
【0051】
一方、電流がインダクタ部品1から実装基板50の第2配線52に流れる際、電流は、第2引出部22と第2外部電極40を通過して、素体10の内側から素体10の第2端面16側に向かって流れる。このとき、第2引出部22と第2外部電極40のなす第2角度θ2は、鋭角であるため、電流の向きが急角度に変化しないので、反射や渦電流による損失を低減できる。
【0052】
したがって、電流を円滑に流すことができて、電流の反射損失の増加を抑制でき、Q値を向上できる。なお、上記では、電流が、第1外部電極から、第1引出部、巻回部、第2引出部、第2外部電極の順に流れる例で説明したが、電流が上記とは逆方向に流れる場合も同様である。
【0053】
前記インダクタ部品1によれば、第1外部電極30は、第1端面15から露出し、第2外部電極40は、第2端面16から露出している。これにより、はんだによってインダクタ部品1を実装基板50に実装するとき、はんだは、第1外部電極30の第1端面15側、および、第2外部電極40の第2端面16側にも、接合される。したがって、インダクタ部品1の実装基板50に対する固着強度を向上できる。
【0054】
なお、前記インダクタ部品1では、
図6に示すように、巻回部23の軸方向Lからみて、第1引出部21は、第1位置Z1と第2位置Z2の間で、巻回部23に接続していることが好ましい。第1位置Z1は、1点鎖線に示すように、第1引出部21が巻回部23に最短距離で交差する位置である。つまり、第1位置Z1は、第1引出部21が巻回部23の外周の接線と直交する位置である。第2位置Z2は、第1引出部21が巻回部23に接する位置である。つまり、第2位置Z2は、第1引出部21が巻回部23の外周の接線と一致する位置である。同様に、第2引出部22は、第2引出部22が巻回部23に最短距離で交差する第1位置と、第2引出部22が巻回部23に接する第2位置との間で、巻回部23に接続する。
【0055】
前記インダクタ部品1によれば、第1引出部21が巻回部23に最短距離で交差するとき、第1引出部21の長さを最短とでき、線路長増加に伴う損失の増加を抑制できる。一方、第1引出部21が巻回部23に接するとき、
図5に示すように、第1引出部21と巻回部23の間の電流の流れを円滑にできる。
【0056】
同様に、第2引出部22が巻回部23に最短距離で交差するとき、第2引出部22の長さを最短とでき、線路長増加に伴う損失の増加を抑制できる。一方、第2引出部22が巻回部23に接するとき、
図5に示すように、第2引出部22と巻回部23の間の電流の流れを円滑にできる。
【0057】
したがって、第1引出部21および第2引出部22が、第1位置Z1と第2位置Z2との間で、巻回部23に接続する場合は、第1、第2引出部21,22の線路長と電流の流れの円滑性のバランスが取れる。
【0058】
図1と
図3に示すように、第1引出部21および第2引出部22は、素体10の底面17から素体10の天面18に向かって延在している。つまり、第1引出部21は、巻回部23と天面18側で接続し、第2引出部22は、巻回部23と天面18側で接続している。このように、コイル20は、底面17から天面18に向かって延在し、天面18から底面17を通過して天面18に戻るように複数回巻回され、天面18から底面17に向かって延在するように、形成される。
【0059】
前記インダクタ部品1によれば、第1引出部21および第2引出部22は、底面17から天面18に向かって延在しているので、第1引出部および第2引出部が底面に沿って延在している場合に比べて、コイル20のターン数を増加できる。以下、
図7Aと
図7Bを用いて、この効果を具体的に説明する。
図7Aと
図7Bでは、コイルのターン数を実際のターン数より少なくして説明する。
【0060】
図7Aに示すように、コイル120の第1引出部121が、第1外部電極130から素体110の底面117に沿って延在し、コイル120の第2引出部122が、第2外部電極140から素体110の底面117に沿って延在しているとき、コイル120の巻回部123のターン数は、1ターンとなる。一方、
図7Bに示すように、第1引出部21および第2引出部22が、底面17から天面18に向かって延在しているとき、コイル20の巻回部23のターン数は、1.5ターンとなる。つまり、巻回部23の第1部分23aおよび第2部分23bが、
図7Aと比べて、長くなる。
【0061】
(第2実施形態)
図8は、本発明のインダクタ部品の第2実施形態を示す簡略正面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、外部電極の位置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0062】
図8に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、第1外部電極30は、素体10の第1端面15に覆われ、第2外部電極40は、素体10の第2端面16に覆われている。つまり、第1、第2外部電極30,40は、素体10の底面17のみから露出している。
【0063】
前記インダクタ部品1Aによれば、はんだによってインダクタ部品1Aを実装基板に実装するとき、はんだは、第1外部電極30の第1端面15側、および、第2外部電極40の第2端面16側を、濡れ上がらない。したがって、はんだは、素体10の端面15,16の外側に拡がらず、素体10の底面17に存在することになり、はんだを含めたインダクタ部品1Aの実装基板に対する実装面積を低減できる。このとき、実装基板50の第1、第2配線51,52(
図5参照)の線路長が長くなることがあるが、第1、第2配線51,52は、第1、第2外部電極30,40よりも抵抗が小さく、損失の増加は抑制される。
【0064】
(第3実施形態)
図9Aと
図9Bは、本発明のインダクタ部品の第3実施形態を示す簡略正面図である。第3実施形態は、第2実施形態とは、第1、第2角度の大きさが相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第3実施形態において、第2実施形態と同一の符号は、第2実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0065】
図9Aに示すように、インダクタ部品1Bでは、巻回部23の軸方向Lからみて、第1引出部21と第1外部電極30のなす第1角度θ1と、第2引出部22と第2外部電極40のなす第2角度θ2とは、直角である。これにより、第1、第2外部電極30,40を巻回部23の下側に配置することができ、素体10の第1端面15と第2端面16の間の距離を小さくできる。
【0066】
図9Bに示すように、インダクタ部品1Cでは、巻回部23の軸方向Lからみて、第1引出部21と第1外部電極30のなす第1角度θ1と、第2引出部22と第2外部電極40のなす第2角度θ2とは、鈍角である。これにより、第1、第2外部電極30,40を巻回部23の直下側に配置することができ、素体10の第1端面15と第2端面16の間の距離を一層小さくできる。このように、第1角度θ1と、第2角度θ2とは、鋭角に限られない。また、例えば、第1角度θ1が鋭角で、第2角度θ2が直角又は鈍角など、第1、第2角度θ1,θ2において、鋭角、直角、鈍角の選択は適宜組合せても良い。
【0067】
(第4実施形態)
図10は、本発明のインダクタ部品の第4実施形態を示す簡略正面図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、外部電極の位置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第4実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0068】
図10に示すように、インダクタ部品1Dでは、第1外部電極30および第2外部電極40は、素体10に埋め込まれないで、素体10の底面17に設けられている。つまり、第1外部電極30および第2外部電極40は、素体10の底面17の外側に位置する。これにより、第1、第2外部電極30,40を素体10に外付けで形成することができ、第1、第2外部電極30,40を容易に製造できる。
【0069】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。前記実施形態では、外部電極、外部電極導体層の積層により連続した平板状に形成されたが、これに限られず、隣り合う外部電極導体層の間をビアで接続して外部電極を構成してもよい。
【0070】
前記実施形態では、コイルは、積層されたコイル導体層から構成されているが、絶縁被覆された銅線などのワイヤによって構成されていてもよい。なお、前記実施形態では、コイルは、巻回数が1周未満の複数のコイル導体層が積層された構成であったが、コイル導体層の巻回数は1周以上であってもよい。つまり、コイル導体層は、平面スパイラル形状であってもよい。
【0071】
前記実施形態では、コイルは、引出部を有するが、引出部を設けないで、磁束の発生に寄与する巻回部のみから構成するようにしてもよい。このとき、巻回部の両端を外部電極に直接に接続するようにする。
【0072】
前記実施形態では、第1、第2外部電極の両方を、端面から露出するようにし、または、端面で覆うようにしているが、一方の外部電極を端面から露出するようにし、他方の外部電極を端面で覆うようにしてもよい。
【0073】
前記実施形態では、第1、第2外部電極の素体から露出している部分をそのままとしているが、第1、第2外部電極の素体から露出している部分にめっきを施すようにしてもよい。具体的に述べると、
図11に示すように、第1外部電極30の第1端面15および底面17から露出している部分に、Snめっき61とNiめっき62を順に施す。なお、本願においては、外部電極に当該めっき61,62は含まないものとする。
【0074】
前記実施形態では、巻回部の軸方向は、絶縁層の積層方向と一致する方向であるが、巻回部の軸方向は、絶縁層の積層方向と異なる方向であってもよい。例えば、巻回部の軸が、素体の端面に直交してもよく、また、巻回部の軸が、素体の底面に直交してもよい。
【0075】
前記実施形態では、外部電極は、素体のコイル軸方向に対向する側面から露出していないが、外部電極は、素体の側面から露出するようにしてもよい。具体的に述べると、
図12に示すように、素体10の第1端面15側からみて、第1外部電極30の両端は、素体10の軸方向Lに対向する両側面19から露出する。同様に、第2外部電極の両端は、素体10の両側面19から露出する。このとき、
図2に示す積層方向Aの両端の絶縁層11にも外部電極導体層33,43を設ける。
【0076】
(実施例)
以下、インダクタ部品1の製造方法の実施例を説明する。
【0077】
まず、硼珪酸ガラスを主成分とする絶縁ペーストをスクリーン印刷によりキャリアフィルム等の基材上に塗布することを繰り返して、絶縁層を形成する。この絶縁層は、コイル導体層よりも外側に位置する外層用絶縁層となる。なお、基材は任意の工程にて絶縁層から剥がされ、インダクタ部品の状態では残らない。
【0078】
その後、絶縁層上に感光性導電ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、コイル導体層及び外部電極導体層を形成する。具体的には、絶縁層上にAgを金属主成分とする感光性導電ペーストをスクリーン印刷により塗布して、感光性導電ペースト層を形成する。さらに、感光性導電ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。これによりコイル導体層および外部電極導体層が絶縁層上に形成される。この時、フォトマスクによりコイル導体層および外部電極導体層は所望のパターンに描くことができる。この際、コイル導体層(コイル)の第1端を、外部電極導体層(外部電極)における絶縁層の外縁側(素体の端面側)の端部に接続する。
【0079】
そして、絶縁層上に感光性絶縁ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、開口及びビアホールが設けられた絶縁層を形成する。具体的には、絶縁層上に感光性絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布して感光性絶縁ペースト層を形成する。さらに、感光性絶縁ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。この時、フォトマスクにより外部電極導体層の上方に開口を、コイル導体層の端部にビアホールを、それぞれ設けるよう、感光性絶縁ペースト層をパターニングする。
【0080】
その後、開口及びビアホールが設けられた絶縁層上に感光性導電ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、コイル導体層及び外部電極導体層を形成する。具体的には、開口及びビアホールを埋めるように絶縁層上にAgを金属主成分とする感光性導電ペーストをスクリーン印刷により塗布して、感光性導電ペースト層を形成する。さらに、感光性導電ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。これにより、開口を介して下層側の外部電極導体層に接続された外部電極導体層と、ビアホールを介して下層側のコイル導体層と接続されたコイル導体層とが絶縁層上に形成される。
【0081】
上記のような絶縁層とコイル導体層及び外部電極導体層を形成する工程を繰り返すことにより、複数の絶縁層上に形成されたコイル導体層からなるコイル及び複数の絶縁層上に形成された外部電極導体層からなる外部電極が形成される。さらに、コイル及び外部電極が形成された絶縁層上に、絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布することを繰り返して、絶縁層を形成する。この絶縁層は、コイル導体層よりも外側に位置する外層用絶縁層となる。なお、以上の工程において絶縁層上にコイル及び外部電極の組を行列状に形成すれば、マザー積層体を得ることができる。
【0082】
その後、ダイシング等によりマザー積層体を複数の未焼成の積層体にカットする。マザー積層体のカット工程では、カットにより形成されるカット面において外部電極をマザー積層体から露出させる。この際、一定量以上のカットずれが生じると、上記工程で形成されたコイル導体層の外周縁が端面または底面に出現する。
【0083】
そして、未焼成の積層体を所定条件で焼成しコイルおよび外部電極を含む素体を得る。この素体に対してバレル加工を施して適切な外形サイズに研磨するとともに、外部電極が積層体から露出している部分に、2μm〜10μmの厚さを有するNiめっき及び2μm〜10μmの厚さを有するSnめっきを施す。以上の工程を経て、0.4mm×0.2mm×0.2mmのインダクタ部品が完成する。
【0084】
なお、インダクタ部品の形成工法は上記に限定されるものではなく、例えば、コイル導体層及び外部電極導体層の形成方法は、導体パターン形状に開口したスクリーン版による導体ペーストの印刷積層工法でも良いし、スパッタ法や蒸着法、箔の圧着等により形成した導体膜をエッチングまたはメタルマスクによりパターン形成する方法であっても良いし、セミアディティブ法のようにネガパターンを形成してめっき膜により導体パターンを形成した後、不要部を除去する方法であっても良い。また、インダクタ部品の素体となる絶縁層とは別の基板上にパターン形成した導体を、絶縁層上に転写する方法を用いても良い。
【0085】
また、絶縁層ならびに開口、ビアホールの形成方法は上記に限定されるものではなく、絶縁材料シートの圧着やスピンコート、スプレー塗布後、レーザーやドリル加工によって開口される方法でも良い。また、外部電極の端部を素体の側面から露出させる場合、外層用絶縁層に外部電極導体層を形成してもよい。
【0086】
また、絶縁層の絶縁材料は上記のようなガラス、フェライトなどのセラミックス材料に限定されるものではなく、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリマー樹脂のような有機材料でも良いし、ガラスエポキシ樹脂のような複合材料でも良いが、インダクタ部品を高周波でのマッチングコイル用途で使用する際は誘電率、誘電損失の小さいものが望ましい。
【0087】
また、インダクタ部品のサイズは、上記に限定されるものではない。また、外部電極の形成方法について、カットにより露出させた外部電極にめっき加工を施す方法に限定されるものではなく、カットにより露出させた外部電極にさらに導体ペーストのディップやスパッタ法等によって被膜を形成してもよいし、さらにその上にめっき加工を施す方法でもよい。なお、上記被膜やめっきが形成される場合のように、外部電極はインダクタ部品の外部へ露出している必要はない。このように、外部電極の素体からの露出とは、外部電極が素体に覆われていない部分を有することを意味し、当該部分はインダクタ部品の外部へ露出していてもよいし、他の部材へ露出していてもよい。