特許第6579154号(P6579154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6579154-車両用サウンドシステム 図000002
  • 特許6579154-車両用サウンドシステム 図000003
  • 特許6579154-車両用サウンドシステム 図000004
  • 特許6579154-車両用サウンドシステム 図000005
  • 特許6579154-車両用サウンドシステム 図000006
  • 特許6579154-車両用サウンドシステム 図000007
  • 特許6579154-車両用サウンドシステム 図000008
  • 特許6579154-車両用サウンドシステム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579154
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】車両用サウンドシステム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20190912BHJP
   H04S 7/00 20060101ALI20190912BHJP
   G10K 15/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B60R11/02 B
   H04S7/00 300
   G10K15/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-94621(P2017-94621)
(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公開番号】特開2018-188089(P2018-188089A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】浅田 健志
(72)【発明者】
【氏名】十亀 克維
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓允
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−253772(JP,A)
【文献】 特開平10−276500(JP,A)
【文献】 特開2000−197199(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/141325(WO,A1)
【文献】 特開2006−115364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
G10K 15/00
H04S 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
前記エンジンの発生する音が車室内の運転者にとって第1の位置から聞こえるように定位させるエンジン音定位手段と、
前記オーディオ装置の発生するオーディオ音が車室内の運転者にとって第2の位置から聞こえるように定位させるオーディオ音定位手段と、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行状態検出により所定の走行状態が検出されたときに、前記第2の位置を前記第1の位置から離間させる方向に変更させる定位位置変更手段と、
を備え、
前記第1の位置は、運転席に着座している運転者の前方に設定され、
前記定位位置変更手段は、前記第2の位置を、前記第1の位置に対して下方へ移動させる、
とを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項2】
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
前記エンジンの発生する音が車室内の運転者にとって第1の位置から聞こえるように定位させるエンジン音定位手段と、
前記オーディオ装置の発生するオーディオ音が車室内の運転者にとって第2の位置から聞こえるように定位させるオーディオ音定位手段と、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行状態検出により所定の走行状態が検出されたときに、前記第2の位置を前記第1の位置から離間させる方向に変更させる定位位置変更手段と、
を備え、
前記第1の位置は、運転席に着座している運転者の前方に位置するフロントウインドガラスに設定されている、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記所定の走行状態が、乗員の運転負荷が高くなる走行状態とされている、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項4】
請求項3において、
乗員の運転負荷が高くなる走行状態が、エンジン回転数が所定回転数よりも大きくなる走行状態とされている、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項5】
請求項3において、
乗員の運転負荷が高くなる走行状態が、車両に作用するGが所定値よりも大きくなる走行状態とされている、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項6】
請求項2において、
前記第1の位置が、前記フロントウインドガラスのうち、運転者の眼の位置と略同じ高さ位置に設定されている、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サウンドシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両においては、車室内にオーディオ音を流すオーディオ装置が装備されていることが一般的となっている。特許文献1、特許文献2には、オーディオ音が乗員にとって車室内の所定位置から聞こえるようにするために、オーディオ音の定位を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2776092号公報
【特許文献2】特開平5・85288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばスポーツカー等の走行を楽しむことが重視される車両においては、エンジン音を乗員特に運転者に対して積極的に聞かせる(聴かせる)ことが望まれるものである。すなわち、エンジン音は、車両状態をよく示すことから、走行を楽しむ場合にエンジン音というものが非常に重要な要素なる。したがって、オーディオ装置が作動しているときに、オーディオ音を聞きつつも、エンジン音をいかに効果的に乗員に聞かせるようにするかということが重要となる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、オーディオ音を聞かせつつも、必要に応じてエンジン音を乗員がより明確に聞くことのできるようにした車両用サウンドシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
前記エンジンの発生する音が車室内の運転者にとって第1の位置から聞こえるように定位させるエンジン音定位手段と、
前記オーディオ装置の発生するオーディオ音が車室内の運転者にとって第2の位置から聞こえるように定位させるオーディオ音定位手段と、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行状態検出により所定の走行状態が検出されたときに、前記第2の位置を前記第1の位置から離間させる方向に変更させる定位位置変更手段と、
を備え、
前記第1の位置は、運転席に着座している運転者の前方に設定され、
前記定位位置変更手段は、前記第2の位置を、前記第1の位置に対して下方へ移動させる、
ようにしてある。
【0007】
上記第1の解決手法によれば、エンジン音とオーディオ音とをそれぞれ定位させることにより、運転者はエンジン音とオーディオ音とを区別しつつ聞くことができる。そして、所定の走行条件となったときは、オーディオ音の定位位置がエンジン音の定位位置から離間する様に移動(変更)されるので、運転者は、エンジン音(特にその変化)をより明確に認識して、エンジン音に基づく車両状態をより明確に認識することができる。特に、所定の走行条件となったときに、オーディオ音の定位位置を、運転者にとって相対的に聞きずらくなる下方へ移動させることによって、より明確に認識されるエンジン音に基づいて車両状態に意識を集中させることができる。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項2に記載のように、
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
前記エンジンの発生する音が車室内の運転者にとって第1の位置から聞こえるように定位させるエンジン音定位手段と、
前記オーディオ装置の発生するオーディオ音が車室内の運転者にとって第2の位置から聞こえるように定位させるオーディオ音定位手段と、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行状態検出により所定の走行状態が検出されたときに、前記第2の位置を前記第1の位置から離間させる方向に変更させる定位位置変更手段と、
を備え、
前記第1の位置は、運転席に着座している運転者の前方に位置するフロントウインドガラスに設定されている、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
前記所定の走行状態が、乗員の運転負荷が高くなる走行状態とされている、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、運転負荷が高いときに、運転者は、エンジン音をより明確に認識して、エンジン音に基づいて車両状態に意識を集中でき、安全性を高める上で好ましいものとなる。
【0009】
乗員の運転負荷が高くなる走行状態が、エンジン回転数が所定回転数よりも大きくなる走行状態とされている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、エンジン回転数が高くなる状況において、より明確に認識されるエンジン音に基づいて車両状態に意識を集中でき、安全性を高める上で好ましいものとなる。
【0010】
乗員の運転負荷が高くなる走行状態が、車体に作用するGが所定値よりも大きくなる走行状態とされている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、車体に作用するGが大きくなる状況において、より明確に認識されるエンジン音に基づいて車両状態に意識を集中でき、安全性を高める上で好ましいものとなる。
【0011】
前記第1の位置が、前記フロントウインドガラスのうち、運転者の眼の位置と略同じ高さ位置に設定されている、ようにしてある(請求項6対応)。
【0012】
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オーディオ音を聞かせつつも、必要に応じてエンジン音を乗員がより明確に聞くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が適用された車両の一例を示す平面図。
図2図1に示す車両の側面一部断面図。
図3】ダッシュパネルに形成されたエンジン音透過部分の構造を示す分解斜視図。
図4】エンジン音とオーディオ音と警報音との定位位置の一例を示すもので、車室後部から前方を見た正面図。
図5】オーディオ装置の制御系統例をブロック図的に示す図。
図6】オーディオ音の定位位置を変更するための制御系統例を示す図。
図7】オーディオ音の定位位置を変更するための制御例を示すフローチャート。
図8】オーディオ音の定位位置を変更するための別の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図2において、車両Vは、実施形態では、2ドアのオープンカーとされている。図中、1はダッシュパネルで、エンジンルーム2と車室3とを仕切っている。4は、エンジンルーム2を上方から覆うボンネット、5R、5Lは、左右一対のサイドドア、6はトランクリッド、7はルーフである。また、8は運転席、9は助手席、10はステアリングハンドルである。さらに、11はインストルメントパネル、12はフロントウインドガラスである。
【0016】
図2に示すように、ルーフ7は、リアウインドガラス7aを有しており、図2では、ルーフ7が閉状態のとき、つまりルーフ7によって車室3が上方から覆われた状態が示される。また、図1では、ルーフ7が閉じられた状態を示すが、ルーフ7を透視した状態となっており、またフロントウインドガラス12の上端部を一部カットした状態が示される。
【0017】
車室3の床面を構成するフロアパネル20は、車幅方向中央部において前後方向に延びるトンネル部21を有し、トンネル部21の上面はトリム材22により覆われている。フロアパネル20の後端部は、キックアップ部23を経てリアパネル24へと連なっている。
【0018】
ダッシュパネル1の前方に構成されたエンジンルーム2には、エンジン30が配設されている。エンジン30は、実施形態では縦置きとされて、エンジン本体が符号30Aで示され、吸気系部材が符号30Bで示され、排気系部材が符号30Cで示される。エンジン30(エンジン本体30A)の後部には、変速機31が連結されている。
【0019】
なお、エンジン30には、エンジン本体30Aにより駆動されるオルタネータ、エアコン用コンプレッサ等々の補器類が装備されているが、これらは図示を略してある。エンジン音は、エンジン本体30Aが回転されたり燃焼されるときに発生される音の他、吸気音や排気音、さらには補器類が駆動された音がミックスされた音となる。
【0020】
車両Vの後部には、差動装置(デファレンシャルギア)40が配設されている。この差動装置40と、変速機31(つまりエンジン30)とが、プロペラシャフト41によって連結されている。つまり、車両Vは、実施形態では後輪駆動車とされている。そして、変速機31と差動装置40とが、プロペラシャフト41を取り巻くように配設された円環状のトルクチューブ44によって連結されている。
【0021】
エンジン30から延びる排気通路42が後方へ延びている。この排気通路42は、車両後部の下方に配設されたマフラー43に接続されている。マフラー43は、後方へ開口された左右一対の排気パイプ43Aが接続されている。排気ガスが、最終的に、排気パイプ43Aから外部(大気)へ排出される。
【0022】
次に、エンジン音およびオーディオ音の定位について説明する。まず、図4に示すように、エンジン音が定位される第1の位置(部位あるいは領域)が符号T1で示され、オーディオ音が定位される第2の位置が符号T2で示される。この他、実施形態では、警報音を第3の位置T3で定位するようにしてある。
【0023】
第1の位置T1・第3の位置T3は、実施形態では、それぞれ、運転席8に着座される運転者の前方に位置するように設定される。すなわち、第1の位置T1は、フロントウインドガラス12に設定されている。具体的には、第1の位置T1は、フロントウインドガラス12のうち、運転者の眼の位置と略同じ高さ位置で、車幅方向略中央部に位置するように設定されている。
【0024】
また、第2の位置T2は、第1の位置T1よりも所定距離だけ低い位置に設定されている。具体的には、第2の位置T2は、インストルメントパネル11のうち略後方を向いた面のうち、車幅方略中央部に位置するように設定されている。この第2の位置T2は、第1の位置T1よりも車幅方向に広い領域設定とされている(オーディオ音を運転者や助手席乗員に聞かせるため)。なお、第1の位置T1と第2の位置T2とは、所定距離だけ離間しておくので、エンジン音とオーディオ音とを区別して聞き分ける上で好ましいものとなるが、上記所定距離は、少なくとも30cm以上で、50cm以上とするのが好ましい。
【0025】
図4に示す第2の位置T2は、デフォルト(基本)状態のときを示し、エンジン音とオーディオ音とが共に乗員(特に運転者)が区別して聞き分けることのできる位置とされている。この第2の位置T2は、あらかじめ設定された走行条件に応じて、その位置変更が行われる。すなわち、例えば走行条件としての運転負荷が高くなるときは、エンジン音をより明確に運転者が認識できるように、第2の位置T2が、第1の位置T1から離間される。第1の位置T1と第2の位置T2とが離間することによって、運転者は、オーディオ音を聞きつつも、エンジン音をより明確オーディオ音を区別して認識することができる。
【0026】
上記運転負荷が大きくなる状態としては、積極的に運転(走行)を行っている状況ともいえ、例えば、エンジン回転数が所定回転数以上の高回転時、車体に作用するG(横Gあるは前後Gの少なくとも一方あるいは両方)が所定値以上のとき、ワインディングロードを走行しているとき、頻繁に加減速が行われるとき、頻繁にハンドル操作が行われるとき、山岳路を走行しているとき、サーキットを走行しているとき、高車速のとき(例えば80km/hを超えるとき)等がある。また、運転者によりマニュアル操作されるモード切換スイッチを設けて、このモード切換スイッチの操作に応じて第2の位置T2の位置を移動(変更)させるようにすることもできる。
【0027】
第2の位置T2を第1の位置T1から離間させる位置変更は、例えば、次のように行うことができる。すなわち、第2の位置T2を、図4に示す位置から下方へ移動させることである。運転者は、オーディオ音の定位位置が下方にいくにしたがって、オーディオ音を認識するレベルが低くなり、その分エンジン音をより明確に認識するようになる。また、第2の位置T2を、車幅方向において助手席側に移動させることであり(図4において、第2の位置T2を左方に移動させることで、第2の位置T2が運転席から離間する方向への移動となる)。さらに、第2の位置T2を、助手席かつ下方側へと斜めに移動させることである。さらに又、第2の位置T2を、運転席の後方へ移動させることもできる(例えば、前後方向ではキックアップ部23付近の位置で、車幅方向ではその略中央部あるいは助手席後方部位)。
【0028】
第2の位置T2をデフォルト位置から移動させる条件が解除されたときは、第2の位置T2を、図4に示すデフォルト位置へ復帰させればよい。第2の位置T2をデフォルト位置とデフォルト位置から移動された移動位置との間で変更するのは、徐々に(例えば3・4秒程度かけて)行うのが、聞こえ方の急激な変動を防止あるいは抑制する上で好ましいものとなる。なお、デフォルト位置から移動位置への変更はすみやかに行う一方、移動位置からデフォルト位置への復帰を徐々に行うこともできる。
【0029】
第3の位置T3は、運転席8に着座している運転者が前方を目視したときに、運転者の視線延長線上に位置するように設定されている。第3の位置T3は、例えばフロントウインドガラス12上に設定することもでき、フロントウインドガラス12よりもさらに前方に設定することもできるが、ヘッドアップディスプレイによる運転者への情報提示位置に設定するのが好ましい。
【0030】
なお、定位位置T1、T2、T3の領域は、図示したものに限らず、例えば、車幅方向や上下方向に拡大した領域でもよく、またT1の位置は、フロントウインドガラス12の領域内において、車両状態、例えばステアリング舵角等に応じて可変としてもよい。
【0031】
次に、エンジン音を第1の位置T1に定位する具体構造例について説明する。まず、ダッシュパネル1のうち、エンジン30(エンジン本体30A)が位置する高さおよび車幅方向位置に、図3に示すように開口部50が形成される。この開口部50は、エンジンルーム2とインストルメントパネル11(の空間)内とを連通している。そして、開口部50は、空気や液体を遮断する膜部材51によって施蓋されている。つまり、エンジンルーム2からのエンジン音が、膜部材51を震動させてインストルメントパネル11内へと効果的に伝達される。
【0032】
インストルメントパネル11には、その上面に開口部11aが形成されている(図2参照)。インストルメントパネル11内に伝達されたエンジン音は、開口部11aを通過してフロントウインドガラス12に向けて伝達されることにより、このフロントウインドガラス12で反射されて、運転席8に着座している運転者へと伝達されることになる。つまり、第1の位置T1は、エンジン音がフロントウインドガラス12で反射される部位とされる。エンジンルーム2内の空気や液体は、膜部材51で遮断されて、車室3へと流れこむことが防止される。
【0033】
図3に示すように、膜部材51により施蓋された開口部50には、弁部材52が取付けられている。弁部材52は、開口部50に臨む短い筒部材52Aと、筒部材52Aを開閉する電磁式の弁体52Bとを有する。実施形態では、弁部材52は常時全開位置とされて、開口部50からのエンジン音が、筒部材52Aを通ってインストルメントパネル11内に常時伝達されるようになっている。なお、車両の走行状態に応じて弁部材52の開度を変更することもできる(例えばエンジン音あるいは車速が大きいほど、弁部材52の開度を大きくする)。
【0034】
オーディオ音用となる第2の位置T2を定位させるために、実施形態では、図4に示すように、上下左右の合計4個のスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRが設けられている。上方に位置する左右一対のスピーカ60UL、60URは、ツイータ+フルレンジとされて、左右のフロントピラー13L、13Rに取付けられている。下方に位置する左右一対のスピーカ60BL、60BRは、ツイータ+フルレンジとされて、左右のサイドドア5L、5Rに取付けられている。
【0035】
上記4つのスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを利用して、既知のタイムアライメントの手法により、オーディオ音が第2の位置T2から聞こえるように定位される。また、第2の位置T2を、タイムアライメントの手法によって、図4に示す位置から、例えば下方、左方(車幅方向のうち運転席8から離間する方向で、助手席9に接近する方向)、左下方(車幅方向において運転席8から離間しつつ下方への移動という斜め方向)あるいは運転席後方等、所望位置へ移動させることができる。
【0036】
第3の位置T3は、上記4つのスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを利用して、既知のタイムアライメントの手法により、警報音が第3のT3から聞こえるように定位される。つまり、警報音は、オーディオ音に重畳されてスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRから流されることになる。
【0037】
図5は、オーディオ装置ODの一例を示すものである。図中、70は、DSP(デジタル・サウンド・プロセッサ)である。このDSP70は、オーディオ用の音源71からの信号が入力されると、第2の位置T2でオーディオ音が定位されるように前述したタイムアライメントの処理を行って、アンプ72を介してスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを駆動する。また、後述するコントローラUからの指令信号に応じて、第2の位置T2の位置を移動させる制御を行う。
【0038】
DSP70は、警報用音源を記憶した記憶手段(メモリ)73を有する。DSP70は、警報を行う旨の指令信号が入力されると、第3の位置T3で警報音が定位されるようにタイムアライメントの処理を行って、アンプ72を介してスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを駆動する。
【0039】
実施形態では、さらに、排気音を定位するようにしてある。すなわち、運転者が排気音の聞こえる位置となる第4の位置T4を、車室後部のうち車幅方向略中央部に設定してある(図1図2参照)。この第4の位置T4は、車室内への開口部に弁部材を配設した構造となっており、実質的に図3に示すのと同様の構造とされているので、その重複した説明は省略する。
【0040】
第4の位置T4(の開口部)は、車室内の換気用となる外部に開口されたエキストラチャンバ80に対して、ダクト81を介して接続されている(図1図2参照)。エキストラチャンバ80は、排気パイプ30Aの近くに形成されていることから、排気音が効果的に第4の位置T4へと伝達することができる。なお、第4の位置T4における弁部材は、常時全開とすることもできるが、市街地走行や低速走行時等のスポーツ走行が想定されないときは閉弁しておくこともできる。また、この弁部材は、エンジン回転数が上昇するにつれて、その開度を徐々に増大させることもできる。
【0041】
図6は、第2の位置T2を位置変更する場合の制御系統例を示す。図中、Uはマイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラであり、図5のオーディオ装置ODに対して第2の位置T2の位置指令を行うものとなっている。このコントローラUには、センサあるいはスイッチS1・S3からの信号が入力される。S1は、車体に作用するG(前後方向および横方向の加速度と減速度)を検出するGセンサである。S2は、エンジン回転数を検出する回転数センサである。S3は、イグニッションスイッチである。
【0042】
次に、図7のフローチャートを参照しつつ、コントローラUによる制御例について説明する。なお、以下の説明でQはステップを示し、また第2の位置T2をデフォルト位置から移動させる所定の走行条件としては、車体に作用する横Gあるいは前後Gの少なくとも一方が、があらかじめ設定された所定値よりも大きいときとしてある。また、図7の制御は、イグニッションスイッチS3がオンとなったときに開始される。さらに、以下の説明で、ノーマルモードは、オーディオ音の定位位置である第2の位置T2が、図4に示すデフォルトの位置されるときを示す。また、スポーツモードが、オーディオ音の定位位置である第2の位置T2が、図4に示すデフォルト位置から第1の位置T1に対して離間する方向へと移動(変更)されるときを示す。
【0043】
まずQ1において、オーディオ音装置ODがオンであるか否かが判別される。このQ1の判別でYESのときは、Q2において、前後方向Gあるいは横方向Gの少なくとも一方が、所定値(例えば0.3G)よりも大きいか否かが判別される。このQ2の判別でYESのときは、Q3において、タイマが初期値0にリセットされると共に、新たにカウントが開始される。この後Q4において、上記所定値よりも大きいGが検出されてから短い所定時間(実施形態では1秒)が経過したか否かが判別される。このQ4の判別でNOのときは、Q4の判別が繰り返される。
【0044】
Q4の判別でYESのときは、Q5において、再度、Q2と同様の判別が行われる。このQ5の判別でYESのときは、短時間の間に大きなGが継続(あるいは繰り返し)発生しているときであり、運転者が走行を楽しむために積極的な運転を行っている状況である。
【0045】
上記Q5の判別でYESのときは、Q6において、タイマが0にリセットされると共に、新たにカウントが開始される。この後、Q7において、スポーツモードとされて、オーディオ音の定位位置T2が、図4に示すデフォルト位置から第1の位置T1に対して離間する方向へと移動(変更)される。
【0046】
上記Q7の後、Q8において、前後方向および横方向のGがそれぞれ所定値(実施形態では0.3G)以下になったか否かが判別される。このQ8の判別でNOのときは、Q6に戻る。
【0047】
上記Q8の判別でYESのときは、Q9において、タイマでのカウント値が所定の長い時間(実施形態では30秒)を超えているか否かが判別される。このQ9の判別でNOのときは、Q7に戻る。
【0048】
上記Q9の判別でYESのときは、スポーツモードは行っていない状況が明確に確認されたということで、Q10において、ノーマルモードへ変更される(第2の位置T2が図4に示すデフォルト位置へ復帰される)。
【0049】
前記Q1の判別でNOのときは、Q12において、スポーツモードが設定される(ただし、オーディオ音は車室内に流れない状況)。なお、Q1の判別でNOのときは、そのままリーンさせるようにしてもよい。
【0050】
前記Q2の判別でNOのときは、あるいはQ5の判別でNOのときは、それぞれQ10に移行される。
【0051】
Q10の後あるいはQ12の後はそれぞれ、Q11において、エンジンが停止されたか否かが判別される。このQ11の判別でNOのときはあQ1に戻る。また、Q11の判別でYESのときは、制御が終了される。
【0052】
以上の説明から明かなように、図7の実施形態では、スポーツモードに設定されているときは、スポーツモードに設定する所定の走行条件を満足しないことが所定の長い時間(実施形態では30秒)維持されていることが確認されるまでは、スポーツモードをそのまま維持する制御とされている(スポーツモードとノーマルモードとの間での頻繁な変更を抑制)。スポーツモードとノーマルモードとの間での頻繁な変更をより防止あるいは抑制するために、例えばQ8での所定値(Gの値)を、Q2あるいはQ5での所定値(Gの値)よりも所定分小さい値に設定しておくこともできる。
【0053】
図8は、図7に対応した別の制御例を示すものである。本制御例では、所定の走行条件として、車体に作用するGの代わりに、エンジン回転数を用いてある。すなわち、Q22(図7のQ2対応)、Q25(図7のQ5対応)、Q29(図7のQ9対応)では、エンジン回転数が所定回転数(実施形態では5500rpm)よりも大きいか(あるいは以下か)を判別するようにしてある。すなわち、実施形態では、エンジンの最高許容回転数が7500rpm程度とされており、所定値としてのエンジン回転数5500rpmは、最高許容回転数よりも所定分低い程度の高回転数として設定してある(最大出力あるいは最大トルクを発生する付近での回転数)。図8の制御は、図7におけるGを用いる代わりに、エンジン回転数を用いた点が相違するのみで、その他は図7の場合と同じなので、その重複した説明は省略する。
【0054】
また、スポーツモードとノーマルモードとの間での切換えを、アクセル開度に応じて行うようにしてもよく、この場合は、アクセル開度が大きい(所定開度以上の)ときにスポーツモードとし、アクセル開度が小さいときにノーマルモードとすればよい。
【0055】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。第1位置T1は、適宜選択することができる。例えば、第1の位置T1を、第2の位置T2よりも低い位置に設定したり(例えば、第1位置T1をインストルメントパネル11の上面かあるいはそれよりも低い位置に設定する一方、第2の位置T2を例えばインストルメントパネル11の上面よりも高い位置に設定する等)。また、第1位置T1を、車幅方向中央部よりも運転者側寄りの位置に設定することもできる(エンジン音は、助手席乗員よりも運転者にとって重要な情報である)。スピーカの数は、例えば6以上にする等適宜選択することができ、またその配設位置もその一部をインストルメントパネル11にする等、適宜選択できる。
【0056】
状況に応じて(特にエンジン音を強調したいとき)、オーディオ音を定位させないようにすることもできる(広い周囲から全体的にオーディオ音が聞こえるようにしたり、複数の各スピーカの設置位置そのものからそれぞれオーディオ音が聞こえるようにする)。第2の位置警報音としては、エンジン回転数が上限に達したときを報知するレブリミット音を含めることができる。警報音の定位位置は、適宜の位置に変更することができるが、エンジン音やオーディオ音の定位位置とは異なる位置とするのが好ましい。また、警報音の定位を行わないようにしてもよい。同様に、排気音の定位を行わないようにしてもよい。本発明は、オープンカーに限らず、セダン型やSUV型、4輪駆動車等、種々の形式の車両に適用できる。また、変速機31が車両後部(差動装置40の位置)に配設されたものであってもよく、プロペラシャフト41を有しない前輪駆動車(いわゆるFF車)やエンジン30が車室後方に配設されたものであってもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、エンジン音とオーディオ音とを区別させつつ、必要に応じてエンジン音をより明確に認識させる上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0058】
T1:エンジン音の定位位置
T2:オーディオ音の定位位置
T3:警報音の定位位置
OD:オーディオ装置
U:コントローラ
S1:Gセンサ
S2:回転数センサ
S3:イグニッションスイッチ
1:ダッシュパネル
2:エンジンルーム
3:車室
5L、5R:サイドドア
8:運転席
9:助手席
11:インストルメントパネル
11a:開口部(エンジン音通過用)
12:フロントウインドガラス
13L、13R:フロントピラー
20:フロアパネル
21:トンネル部
22:トリム材
23:キックアップ部
24:リアパネル
30:エンジン
31:変速機
40:差動装置
41:プロペラシャフト
42:排気通路
43:マフラー
43A:排気パイプ
50:開口部(エンジン音透過用)
51:膜部材
52:弁部材
60UL、60UR、60BL、60BR:スピーカ
70:DSP
71:音源(オーディオ用)
72:アンプ
73:記憶手段(警報音用)
80:エキストラチャンバ
81:ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8