(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端部に起伏可能に取り付けられたジブと、前記ジブの後方に配置され前記ジブを支持するストラットであって、前記ブームの先端部に所定の回転軸回りに回動可能に軸支されるストラット支点部を含むストラット本体と、前記ストラット支点部の回転軸と平行な回転軸回りに前記ストラット本体に回転可能に支持される少なくとも一つのストラットシーブと、を含むストラットと、を有するクレーンの前記ストラットを引き起こす方法であって、
前記ストラット支点部の回転軸と平行な回転軸回りに回転可能な少なくとも一つのブームシーブを前記ブームに配置することであって、前記ブームおよび前記ジブが前記クレーン本体の設置面に沿うように倒伏され且つ前記ストラットが前記ジブの上方に倒伏された倒伏状態で、前記回転軸と平行な方向から見て、前記少なくとも一つのストラットシーブの軸心と前記少なくとも一つのブームシーブの軸心とを結ぶ直線が前記ストラット支点部よりも上方に位置するように、前記倒伏状態における前記ブームの上面部に位置する部分に前記少なくとも一つのブームシーブを配置することと、
前記少なくとも一つのブームシーブと前記少なくとも一つのストラットシーブとの間に引き起こし用ロープを掛け渡すことと、
前記引き起こし用ロープの他端を後方に引っ張ることで、前記直線と前記ストラット支点部との距離に応じて前記少なくとも一つのストラットシーブに付与される前記ストラット支点部回りのモーメントによって前記ストラットを引き起こすことと、
を備える、クレーンのストラット引き起こし方法。
前記クレーンは、前記ジブの先端部から垂下され吊り荷に接続されるジブ吊り荷用ロープと、前記ジブ吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うように作動する第1巻き上げ用ウインチと、前記第1巻き上げ用ウインチと前記ジブの先端部との間で前記ジブ吊り荷用ロープを支持するストラットアイドラシーブと、を更に有し、
前記少なくとも一つのストラットシーブとして、前記ストラットアイドラシーブを用いることを更に備える、請求項1に記載のクレーンのストラット引き起こし方法。
前記クレーンは、前記ストラットに対して前記ジブを相対的に回動させるように前記ジブの先端部と前記ストラットの先端部との間において掛け渡されるジブ起伏用ロープと、前記ジブ起伏用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うように作動するジブ起伏用ウインチと、前記ジブ起伏用ウインチと前記ストラットの先端部との間で前記ジブ起伏用ロープを支持するジブ起伏用アイドラシーブと、を更に有し、
前記少なくとも一つのブームシーブとして、前記ジブ起伏用アイドラシーブを用いることを更に備える、請求項1に記載のクレーンのストラット引き起こし方法。
前記クレーンは、前記ブームの先端部から垂下され吊り荷に接続されるブーム吊り荷用ロープと、前記ブーム吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うように作動する第2巻き上げ用ウインチと、前記第2巻き上げ用ウインチと前記ブームの先端部との間で前記ブーム吊り荷用ロープを支持するブームアイドラシーブと、を更に有し、
前記少なくとも一つのブームシーブとして、前記ブームアイドラシーブを用いることを更に備える、請求項1に記載のクレーンのストラット引き起こし方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のストラット引き起こし方法では、予めストラットに引き起こし専用の部材を装着する必要や、ストラットの強度を高めておく必要があるという問題があった。具体的に、特許文献1に記載の技術では、引き起こし専用の起立架台が予めストラットに装着される必要がある。また、特許文献2に記載の技術では、ロープの先端部がストラットの先端部に接続されるため、引き起こし作業時にストラットに大きな負荷が掛かりやすい。このため、ストラットの先端部の強度を予め高めておく必要があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、引き起こし作業のためにストラットの強度を部分的に高める必要がなく、また、ストラットに引き起こし作業専用の器具を装着することなく、ストラットを引き起こすことが可能なクレーンおよびクレーンのストラット引き起こし方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る方法は、クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端部に起伏可能に取り付けられたジブと、前記ジブの後方に配置され前記ジブを支持するストラットであって、前記ブームの先端部に所定の回転軸回りに回動可能に軸支されるストラット支点部を含むストラット本体と、前記ストラット支点部の回転軸と平行な回転軸回りに前記ストラット本体に回転可能に支持される少なくとも一つのストラットシーブと、を含むストラットと、を有するクレーンの前記ストラットを引き起こす方法である。当該ストラットの引き起こし方法は、前記ストラット支点部の回転軸と平行な回転軸回りに回転可能な少なくとも一つのブームシーブを前記ブームに配置することであって、前記ブームおよび前記ジブが前記クレーン本体の設置面に沿うように倒伏され且つ前記ストラットが前記ジブの上方に倒伏された倒伏状態で、前記回転軸と平行な方向から見て、前記少なくとも一つのストラットシーブの軸心と前記少なくとも一つのブームシーブの軸心とを結ぶ直線が前記ストラット支点部よりも上方に位置するように、前記倒伏状態における前記ブームの上面部に位置する部分に前記少なくとも一つのブームシーブを配置することと、前記少なくとも一つのブームシーブと前記少なくとも一つのストラットシーブとの間に引き起こし用ロープを掛け渡すことと、前記引き起こし用ロープの他端を後方に引っ張ることで、前記直線と前記ストラット支点部との距離に応じて前記少なくとも一つのストラットシーブに付与される前記ストラット支点部回りのモーメントによって前記ストラットを引き起こすことと、を備える。
【0009】
本方法によれば、クレーンのストラットが備えるストラットシーブを利用して、ストラットを引き起こすことができる。このため、引き起こし作業時に専用の器具をストラットに装着する必要がない。また、引き起こし用ロープはストラットシーブに掛けられるため、ロープの一端が直接ストラット本体に接続される場合と比較して、引き起こし作業時にストラットに大きな負荷が局所的に掛かることが抑止される。このため、上記の場合と比較して、ストラットの強度を予め高めておく必要が低減される。更に、ストラットの引き起こし時には、引き起こし用ロープの他端を後方に引っ張ることで、ストラットを容易に引き起こすことが可能となる。
【0010】
上記の構成において、前記クレーンは、前記ジブの先端部から垂下され吊り荷に接続されるジブ吊り荷用ロープと、前記ジブ吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うように作動する第1巻き上げ用ウインチと、前記第1巻き上げ用ウインチと前記ジブの先端部との間で前記ジブ吊り荷用ロープを支持するストラットアイドラシーブと、を更に有し、前記少なくとも一つのストラットシーブとして、前記ストラットアイドラシーブを用いることを更に備えるものでもよい。
【0011】
本方法によれば、ジブ吊り荷用ロープを支持するストラットアイドラシーブを利用して、ストラットを引き起こすことができる。
【0012】
上記の構成において、前記クレーンは、前記ストラットに対して前記ジブを相対的に回動させるように前記ジブの先端部と前記ストラットの先端部との間において掛け渡されたジブ起伏用ロープと、前記ジブ起伏用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うように作動するジブ起伏用ウインチと、前記ジブ起伏用ウインチと前記ストラットの先端部との間で前記ジブ起伏用ロープを支持するジブ起伏用アイドラシーブと、を更に有し、前記少なくとも一つのブームシーブとして、前記ジブ起伏用アイドラシーブを用いることを更に備えるものでもよい。
【0013】
本方法によれば、ジブ起伏用ロープを支持するジブ起伏用アイドラシーブを利用して、ストラットを引き起こすことができる。
【0014】
上記の構成において、前記クレーンは、前記ブームの先端部から垂下され吊り荷に接続されるブーム吊り荷用ロープと、前記ブーム吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うように作動する第2巻き上げ用ウインチと、前記第2巻き上げ用ウインチと前記ブームの先端部との間で前記ブーム吊り荷用ロープを支持するブームアイドラシーブと、を更に有し、前記少なくとも一つのブームシーブとして、前記ブームアイドラシーブを用いることを更に備えるものでもよい。
【0015】
本方法によれば、ブーム吊り荷用ロープを支持するブームアイドラシーブを利用して、ストラットを引き起こすことができる。
【0016】
上記の構成において、前記少なくとも一つのストラットシーブとして複数のストラットシーブを用いるとともに、前記少なくとも一つのブームシーブとして複数のブームシーブを用いることと、前記複数のストラットシーブと前記複数のブームシーブとの間に、前記引き起こし用ロープを複数回掛け渡すことと、を更に備えるものでもよい。
【0017】
本方法によれば、引き起こし用ロープが複数のストラットシーブと複数のブームシーブとの間に複数回掛け渡されているため、引き起こし用ロープが後方に引っ張られる量に対して、ストラットの上方への移動量を小さくすることができる。このため、ストラットの急激な上昇が抑止され、作業者はより安全にストラットを引き起こすことができる。
【0018】
上記の構成において、前記クレーンは、前記ジブの後方に配置されるフロントストラットと、前記フロントストラットの後方に配置されるリヤストラットと、を有し、前記倒伏状態として、前記ブームおよび前記ジブが前記クレーン本体の設置面に沿うように倒伏され且つ前記フロントストラットが前記ジブの上方に倒伏され且つ前記リヤストラットが前記フロントストラットの上方に倒伏された状態とすることと、前記倒伏状態から前記引き起こし用ロープの他端を後方に引っ張ることで、前記ストラットとして前記リヤストラットを引き起こすことと、を備えるものでもよい。
【0019】
本方法によれば、リヤストラットに引き起こし作業専用の器具を装着することなく、リヤストラットを容易に引き起こすことが可能とされる。
【0020】
また、本発明の他の局面に係るクレーンは、クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられたブームと、前記ブームの先端部に起伏可能に取り付けられたジブと、前記ジブの後方に配置され前記ジブを支持するストラットであって、前記ブームの先端部に所定の回転軸回りに回動可能に軸支されるストラット支点部を含むストラット本体と、前記ストラット支点部の回転軸と平行な回転軸回りに前記ストラット本体に回転可能に支持される少なくとも一つのストラットシーブと、を含むストラットと、前記ブームに配置され、前記ストラット支点部の回転軸と平行な回転軸回りに回転可能な少なくとも一つのブームシーブであって、前記ブームおよび前記ジブが前記クレーン本体の設置面に沿うように倒伏され且つ前記ストラットが前記ジブの上方に倒伏された倒伏状態で、前記回転軸と平行な方向から見て、前記少なくとも一つのストラットシーブの軸心と前記少なくとも一つのブームシーブの軸心とを結ぶ直線が前記ストラット支点部よりも上方に位置するように、前記倒伏状態における前記ブームの上面部に位置する部分に配置される、少なくとも一つのブームシーブと、前記少なくとも一つのブームシーブと前記少なくとも一つのストラットシーブとの間に架け渡される引き起こし用ロープであって、前記倒伏状態において、前記直線と前記ストラット支点部との距離に応じて前記少なくとも一つのストラットシーブに付与される前記ストラット支点部回りのモーメントによって前記ストラットを引き起こすことが可能なように後方に引っ張られる、引き起こし用ロープと、を有する。
【0021】
本構成によれば、クレーンのストラットが備えるストラットシーブを利用して、ストラットを引き起こすことができる。このため、引き起こし作業時に専用の器具をストラットに装着する必要がない。また、引き起こし用ロープはストラットシーブに掛けられるため、ロープの一端が直接ストラット本体に接続される場合と比較して、引き起こし作業時にストラットに大きな負荷が局所的に掛かることが抑止される。このため、上記の場合と比較して、ストラットの強度を予め高めておく必要が低減される。更に、ストラットの引き起こし時には、引き起こし用ロープの他端を後方に引っ張ることで、ストラットを容易に引き起こすことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、引き起こし作業のためにストラットの強度を部分的に高める必要がなく、また、ストラットに引き起こし作業専用の器具を装着することなく、ストラットを引き起こすことが可能なクレーンおよびクレーンのストラット引き起こし方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン10の側面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るクレーン10の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係るクレーンの移動方向や使用態様などを限定するものではない。
【0025】
クレーン10は、クレーン本体に相当する旋回体12と、この旋回体12を旋回可能に支持する走行体14と、ブーム16及びジブ18を含む起伏部材と、ブーム起伏用部材であるマスト20と、を備える。また、旋回体12の後部には、クレーン10のバランスを調整するためのカウンタウエイト13が積載されている。また、旋回体12の前端部には、キャブ15が備えられている。キャブ15は、クレーン10の運転席に相当する。
【0026】
図1に示されるブーム16は、いわゆるラチス型であり、下部ブーム16Aと、一または複数(図例では3個)の中間ブーム16B,16C、16Dと、上部ブーム16Eとから構成される。具体的に、下部ブーム16Aは、旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。中間ブーム16B,16C,16Dは、その順に下部ブーム16Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。上部ブーム16Eは中間ブーム16Dの先端側に着脱可能に継ぎ足され、この上部ブーム16Eの先端部に、ジブ18およびジブ18を回動させるためのリヤストラット21およびフロントストラット22がそれぞれ回動可能に連結される。ブーム16は、下端部に備えられたブームフットピン16Sを支点として左右方向に延びる回転軸回りに旋回体12に回動可能に軸支される。
【0027】
また、ブーム16は、中間ブームシーブ46と、上部ブームシーブ65(ブームアイドラシーブ)(
図2、
図4)と、各アイドラシーブ32S、34S、36Sと、を有する。中間ブームシーブ46は、中間ブーム16Dの先端側の後側面に配置されている。上部ブームシーブ65は、上部ブーム16Eの後側面に配置されている。アイドラシーブ32S、アイドラシーブ34Sおよびアイドラシーブ36Sは、ブーム16の基端部の後側面に回転可能に支持されている。
【0028】
ただし、本発明ではブームの具体的な構造は限定されない。例えば、当該ブームは、中間部材がないものでもよく、また、上記とは中間部材の数が異なるものでもよい。更に、ブームは、単一の部材で構成されたものでもよい。
【0029】
ジブ18も、その具体的な構造は限定されない。そして、このジブ18の基端部は、ブーム16の上部ブーム16Eの先端部に回動可能に連結(軸支)されており、ジブ18の回動軸は、旋回体12に対するブーム16の回動軸(ブームフットピン16S)と平行な横軸になっている。
【0030】
マスト20は、基端及び回動端を有し、その基端が旋回体12に回動可能に連結される。マスト20の回動軸は、ブーム16の回動軸と平行でかつ当該ブーム16の回動軸のすぐ後方に位置している。すなわち、このマスト20はブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。一方、このマスト20の回動端は左右一対のブーム用ガイライン24を介してブーム16の先端に連結される。この連結は、マスト20の回動とブーム16の回動とを連携させる。
【0031】
更に、クレーン10は、左右一対のバックストップ23と、リヤストラット21(ストラット)と、フロントストラット22と、左右一対のストラットバックストップ25およびガイライン26と、左右一対のジブ用ガイライン28と、を備える。
【0032】
左右一対のブームバックストップ23はブーム16の下部ブーム16Aの左右両側部に設けられる。これらのブームバックストップ23は、ブーム16が
図1に示される起立姿勢まで到達した時点で、旋回体12の前後方向の中央部に当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。
【0033】
リヤストラット21は、ブーム16の先端部に回動可能に軸支される。リヤストラット21は、ストラット本体210を有する。ストラット本体210の基端部には、支点部21S(ストラット支点部)が配置されており、ブーム16の先端部に回動可能に軸支される。リヤストラット21は、上部ブーム16Eの先端からブーム起立側(
図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、リヤストラット21とブーム16との間に左右一対のストラットバックストップ25及び左右一対のガイライン26が介在する。ストラットバックストップ25は、中間ブーム16Dとリヤストラット21の中間部位との間に介在し、リヤストラット21を下から支える。ガイライン26は、リヤストラット21の先端部とブーム16の下部ブーム16Aとを接続するように張設され、その張力によってリヤストラット21の位置を規制する。換言すれば、左右一対のストラットバックストップ25及び左右一対のガイライン26は、クレーン10の使用状態において、ブーム16に対するリヤストラット21の相対的な回動を規制する。なお、リヤストラット21は、シーブブロック47、リヤストラットアイドラシーブ52、62を有する。シーブブロック47は、リヤストラット21の回動端部に配置され、幅方向に配列された複数のシーブを含む。リヤストラットアイドラシーブ52、62は、リヤストラット21の長手方向の中央部よりも基端部側に位置する部分に配置され、それぞれ幅方向に配列された複数のシーブを含む。なお、リヤストラットアイドラシーブ52は、本発明のストラットシーブ、ストラットアイドラシーブを構成する。
【0034】
フロントストラット22は、ジブ18の後方に配置されており、ジブ18と連動して回動するようにブーム16の先端部(上部ブーム16E)に回動可能に軸支されている。詳しくは、このフロントストラット22の先端部とジブ18の先端部とを連結するように左右一対のジブ用ガイライン28が張設される。従って、このフロントストラット22の回動駆動によって、ジブ18もフロントストラット22と一体的に回動駆動される。なお、前述のリヤストラット21は、
図1に示すようにフロントストラット22の後側に配置され、フロントストラット22との間で略二等辺三角形形状を形成する。なお、フロントストラット22は、シーブブロック48と、フロントストラットアイドラシーブ53、63と、を有する。シーブブロック48は、フロントストラット22の回動端部に配置され、幅方向に配列された複数のシーブを含む。フロントストラットアイドラシーブ53、63は、フロントストラット22の長手方向の中央部よりも基端部側に位置する部分に配置され、それぞれ幅方向に配列された複数のシーブを含む。
【0035】
クレーン10は、各種ウインチを更に備える。具体的には、クレーン10は、ブーム16を起伏させるためのブーム起伏用ウインチ30と、ジブ18を起伏方向に回動させるためのジブ起伏用ウインチ32と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36とを備える。また、クレーン10は、ブーム起伏用ロープ38と、ジブ起伏用ロープ44と、主巻ロープ50(引き起こし用ロープ、ジブ吊り荷用ロープ)と、補巻ロープ60と、を備える。本実施形態に係るクレーン10では、ジブ起伏用ウインチ32、主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36がブーム16の基端近傍部位に据え付けられる。また、ブーム起伏用ウインチ30が旋回体12に据え付けられる。これらのウインチ30,32,34,36の位置は、上記に限定されるものではない。
【0036】
ブーム起伏用ウインチ30は、ブーム起伏用ロープ38の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取り及び繰り出しによりマスト20が回動するようにブーム起伏用ロープ38が配索される。具体的には、マスト20の回動端部及び旋回体12の後端部にはそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック40,42が設けられ、ブーム起伏用ウインチ30から引き出されたブーム起伏用ロープ38がシーブブロック40,42間に掛け渡される。従って、ブーム起伏用ウインチ30がブーム起伏用ロープ38の巻き取りや繰り出しを行うことにより、両シーブブロック40,42間の距離が変化し、これによってマスト20さらにはこれと連動するブーム16が起伏方向に回動する。
【0037】
ジブ起伏用ウインチ32は、リヤストラット21とフロントストラット22との間に掛け回されたジブ起伏用ロープ44の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取りや繰り出しによってフロントストラット22が回動するようにジブ起伏用ロープ44が配索される。具体的には、ジブ起伏用ウインチ32から引き出されたジブ起伏用ロープ44がアイドラシーブ32S、中間ブームシーブ46に掛けられ、更に、シーブブロック47,48間に複数回掛け渡される。従って、ジブ起伏用ウインチ32は、ジブ起伏用ロープ44の巻き取りおよび繰り出しを行うことで、両シーブブロック47,48間の距離を変え、リヤストラット21に対してフロントストラット22を相対的に回動させる。この結果、ジブ起伏用ウインチ32は、フロントストラット22と連動するジブ18を起伏させる。
【0038】
主巻用ウインチ34(第1巻き上げ用ウインチ)は、主巻ロープ50による吊り荷の巻き上げ及び巻き下げを行う。この主巻について、前述のように、リヤストラット21の基端近傍部位、フロントストラット22の基端近傍部位、及びジブ18の先端部にはそれぞれリヤストラットアイドラシーブ52、フロントストラットアイドラシーブ53、主巻用ガイドシーブ54が回転可能に設けられ、さらに主巻用ガイドシーブ54に隣接する位置に複数の主巻用ポイントシーブ56が幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50が、アイドラシーブ34S、リヤストラットアイドラシーブ52、フロントストラットアイドラシーブ53、主巻用ガイドシーブ54に順に掛けられ、かつ、シーブブロックの主巻用ポイントシーブ56と、吊荷用の主フック57に設けられたシーブブロックのシーブ58との間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34が主巻ロープ50の巻き取りや繰り出しを行うと、両シーブ56,58間の距離が変わって、ジブ18の先端から垂下された主巻ロープ50に連結された主フック57の巻き上げ及び巻き下げが行われる。
【0039】
同様にして、補巻用ウインチ36は、補巻ロープ60による吊り荷の巻き上げ及び巻き下げを行う。この補巻については、リヤストラットアイドラシーブ52、フロントストラットアイドラシーブ53、主巻用ガイドシーブ54とそれぞれ同軸にリヤストラットアイドラシーブ62、フロントストラットアイドラシーブ63、補巻用ガイドシーブ64が回転可能に設けられ、補巻用ガイドシーブ64に隣接する位置に不図示の補巻用ポイントシーブが回転可能に設けられている。補巻用ウインチ36から引き出された補巻ロープ60は、リヤストラットアイドラシーブ62、フロントストラットアイドラシーブ63、補巻用ガイドシーブ64に順に掛けられ、かつ、補巻用ポイントシーブから垂下される。従って、補巻用ウインチ36が補巻ロープ60の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻ロープ60の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
【0040】
<ストラットの引き起こしについて>
図2乃至
図9は、本実施形態に係るクレーン10の組立作業において、リヤストラット21が引き起こされる様子を示す側面図である。なお、
図4は、
図3のクレーン10においてブーム16の先端部の周辺を拡大した側面図である。また、
図6は、
図5のクレーン10においてフロントストラット22およびリヤストラット21の周辺を拡大した側面図である。
【0041】
リヤストラット21が本実施形態に係るストラット引き起こし方法によって引き起こされるにあたって、予めクレーン10が
図2に示されるような状態とされる。すなわち、ブーム16が旋回体12に回動可能(起伏可能)に装着されるとともに水平方向に沿って倒伏された状態とされ、ジブ18はブーム16の先端部に回動可能(起伏可能)に装着されるとともに水平方向に沿って倒伏された状態とされる。なお、予め旋回体12上に装着されたマスト20は、
図2に示すように前方に傾いた状態で旋回体12上に起立しており、マスト20の回動端部とブーム16の先端部とはブーム用ガイライン24によって接続されている。また、ブーム起伏用ウインチ30から引き出されたブーム起伏用ロープ38は、シーブブロック40とシーブブロック42との間に掛け回されている。そして、ブーム起伏用ロープ38の先端部は、マスト20の回動端部に固定される。なお、一対のバックストップ23の一端部は、ブーム16の基端部付近に装着されており、一対のバックストップ23の他端部は、空中に位置している。更に、リヤストラット21およびフロントストラット22は、略水平方向に沿って倒伏された状態とされている。この際、フロントストラット22は、ジブ18上に載置されており、リヤストラット21の先端部はフロントストラット22上に載置されている。
【0042】
また、
図2に示される状態では、リヤストラット21とフロントストラット22との間に、ジブ起伏用ロープ44が配索されている。すなわち、ジブ起伏用ウインチ32から引き出されたジブ起伏用ロープ44は、アイドラシーブ32Sに掛けられた後、中間ブームシーブ46の周面の下端部に掛けられ、更に、シーブブロック47とシーブブロック48との間で複数回掛け回されている。なお、ジブ起伏用ロープ44の先端部は、リヤストラット21の回動端部に固定されている。このように、
図2に示される状態では、ジブ起伏用ロープ44の仕込が完了している。また、フロントストラット22とジブ18とは、固定治具70によって固定されている。固定治具70は、ジブ起伏用ロープ44によってフロントストラット22が上方に引っ張られた場合でも、フロントストラット22とジブ18とを連結することでフロントストラット22の引き上げを防止する。
【0043】
図3および
図4を参照して、作業者は次に主巻ロープ50の配索を実施する。この際、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50は、アイドラシーブ34Sに掛けられた後、中間ブームシーブ46の周面の上端部に掛けられる。更に、主巻ロープ50は、上部ブームシーブ65の周面の下端部に掛けられた後、リヤストラットアイドラシーブ52の周面の上端部側からリヤストラットアイドラシーブ52に掛けられる。その後、
図4に示すように、主巻ロープ50は、リヤストラットアイドラシーブ52と上部ブームシーブ65との間で複数回掛け回される。主巻ロープ50の先端部(ロープ終端)は、上部ブームシーブ65に固定される。なお、主巻ロープ50の先端部は、リヤストラットアイドラシーブ52に固定されてもよく、また、シーブ以外の部分に固定されてもよい。
【0044】
なお、
図4に示すように、本実施形態では、リヤストラットアイドラシーブ52および上部ブームシーブ65は、軸方向(左右方向)に隣接した複数のシーブを含む。これら隣接した複数のシーブの軸心は僅かにずれて配置されている。リヤストラットアイドラシーブ52および上部ブームシーブ65が複数のシーブを含むことで、主巻ロープ50を複数回掛け回すことができる。
【0045】
図5および
図6を参照して、次に、作業者は、ジブ起伏用ウインチ32を操作してジブ起伏用ロープ44を繰り出しながら(矢印D2)、主巻用ウインチ34を操作して主巻ロープ50を巻き取る(矢印D1)。本実施形態では、
図6に示すように、上部ブームシーブ65の軸心とリヤストラットアイドラシーブ52の軸心とを結ぶ直線CLが、リヤストラット21の支点部21Sから距離Lだけ上方に位置するように、上部ブームシーブ65およびリヤストラットアイドラシーブ52の位置が配置されている。この結果、主巻ロープ50の巻き取りに伴って、リヤストラット21に対して上方に引き起こすモーメント(矢印D3)が付与される。この際、2つのシーブ間に主巻ロープ50を巻き取る力が分散するため、ブーム16やリヤストラット21に係る負荷が低減される。なお、ジブ起伏用ロープ44の繰り出しは、ジブ18に固定されたフロントストラット22に対して、リヤストラット21が上方に移動することを可能とするために行われる。
【0046】
なお、主巻ロープ50の巻き取りに伴って、リヤストラット21に対して発生するモーメントMは、直線CLとリヤストラット21の支点部21Sとの距離をL、主巻ロープ50のラインプル(引っ張り力)をP、上部ブームシーブ65とリヤストラットアイドラシーブ52との間の主巻ロープ50のシーブ掛け数をN、シーブ効率をηとすると、以下の式1で求められる。
M=L×P×N×η ・・・(式1)
【0047】
図5に示される状態からリヤストラット21が引き起こされると、やがて
図7に示すように、リヤストラット21が後方に傾斜した状態となる。ここで、ジブ起伏用ロープ44の繰り出しおよび主巻ロープ50の巻き取りが停止される。そして、リヤストラット21の回動端部(先端部)とブーム16とがガイライン26によって接続される。換言すれば、
図7に示されるリヤストラット21の角度(対地角)は、ガイライン26がブーム16に接続可能となる角度である。
【0048】
図7および
図8を参照して、次に、作業者は、主巻用ウインチ34を操作し主巻ロープ50を繰り出しながら(
図8の矢印D1)、ジブ起伏用ウインチ32を操作してジブ起伏用ロープ44を巻き込む(
図8の矢印D2)。この際、前述のように、フロントストラット22が固定治具70によってジブ18に固定されている。このため、ジブ起伏用ロープ44の巻き込みおよび主巻ロープ50の繰り出しによって、リヤストラット21が前方に回動する(
図8の矢印D3)。
【0049】
やがて、リヤストラット21が
図9に示す位置まで回動すると、作業者は、ジブ起伏用ロープ44の巻き込みと主巻ロープ50の繰り出しを停止する。そして、左右一対のストラットバックストップ25がリヤストラット21およびブーム16に接続される。また、作業者は、中間ブームシーブ46、上部ブームシーブ65およびリヤストラットアイドラシーブ52から主巻ロープ50を取り外すとともに、フロントストラット22およびジブ18から固定治具70を取り外す。
【0050】
上記のような手順によって、水平方向に沿って倒伏していたリヤストラット21が、
図9の起立姿勢まで引き起こされるとともに、リヤストラット21がガイライン26およびストラットバックストップ25によって、ブーム16に支持される。
図9の状態から、作業者は、左右一対のジブ用ガイライン28(
図1)によって、フロントストラット22の回動端部とジブ18の先端部とを接続する。その後、作業者は、ブーム起伏用ウインチ30を操作してブーム起伏用ロープ38の巻き取りを実行する。この結果、ブーム16が引き起こされ、クレーン10が
図1に示される使用状態に姿勢変更する。
【0051】
以上のように、本実施形態では、クレーン10は、旋回体12および走行体14によって構成されるクレーン本体と、旋回体12に起伏可能に取り付けられたブーム16と、ブーム16の先端部に起伏可能に取り付けられたジブ18と、ジブ18の後方に配置されジブ18を支持するリヤストラット21であって、ブーム16の先端部に所定の回転軸回りに回動可能に軸支される支点部21Sを含むストラット本体210と、支点部21Sの回転軸と平行な回転軸回りにストラット本体210に回転可能に支持される少なくとも一つのリヤストラットアイドラシーブ52(ストラットシーブ)と、を含むリヤストラット21と、を有する。クレーン10のリヤストラット21を引き起こす引き起こし方法は、支点部21Sの回転軸と平行な回転軸回りに回転可能な上部ブームシーブ65をブーム16に配置することであって、ブーム16およびジブ18がクレーン本体の設置面に沿うように倒伏され且つリヤストラット21がジブ18の上方に倒伏された倒伏状態で、前記回転軸と平行な方向から見て、リヤストラットアイドラシーブ52の軸心と上部ブームシーブ65の軸心とを結ぶ直線が支点部21Sよりも上方に位置するように、前記倒伏状態におけるブーム16の上面部に位置する部分に上部ブームシーブ65を配置することと、上部ブームシーブ65とリヤストラットアイドラシーブ52との間に主巻ロープ50を掛け渡すとともに、主巻ロープ50の一端をブーム16に固定することと、主巻ロープ50の他端を後方に引っ張ることで、前記直線と支点部21Sとの距離に応じてリヤストラットアイドラシーブ52に付与される支点部21S回りのモーメントによってリヤストラット21を引き起こすことと、を備える。このような方法によれば、クレーン10のリヤストラット21が備えるリヤストラットアイドラシーブ52を利用して、リヤストラット21を引き起こすことができる。このため、引き起こし作業時に専用の器具をリヤストラット21に装着する必要がない。また、主巻ロープ50はリヤストラットアイドラシーブ52に掛けられるため、主巻ロープ50の一端が直接リヤストラット21のストラット本体210に接続される場合と比較して、引き起こし作業時にリヤストラット21に大きな負荷が局所的に掛かることが抑止される。なお、クレーン10が元々備える上部ブームシーブ65やリヤストラットアイドラシーブ52は、その外周にロープが掛けられ強く引っ張られた場合でも、その力に充分耐えうるような設計がなされている。このため、上記の場合と比較して、リヤストラット21の強度を予め高めておく必要が低減される。更に、リヤストラット21の引き起こし時には、主巻ロープ50の他端を後方に引っ張ることで、リヤストラット21を容易に引き起こすことが可能となる。また、本実施形態では、リヤストラットアイドラシーブ52と上部ブームシーブ65との間の距離を縮めるように主巻ロープ50を引っ張ることで、リヤストラット21が引き起こされる。このため、リヤストラット21のストラット本体210に主巻ロープ50の一端が接続され引っ張られる場合と比較して、小さな張力(ラインプル)でリヤストラット21を引き起こすことができる。この結果、主巻用ウインチ34への主巻ロープ50の食い込みを抑止することができる。
【0052】
また、本実施形態では、主巻用ウインチ34を利用して、リヤストラット21を引き起こすことができる。このため、クレーン10とは別の補助クレーンによってリヤストラット21を引き起こす必要がない、または、補助クレーンに要求される耐荷重を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態では、クレーン10は、ジブ18の先端部から垂下され吊り荷に接続される主巻ロープ50(ジブ吊り荷用ロープ)と、主巻ロープ50の巻き取りおよび繰り出しを行うように作動する主巻用ウインチ34(第1巻き上げ用ウインチ)と、主巻用ウインチ34とジブ18の先端部との間で主巻ロープ50を支持するリヤストラットアイドラシーブ52(ストラットアイドラシーブ)と、を更に有する。そして、本発明に係るストラットシーブとして、リヤストラットアイドラシーブ52(ストラットアイドラシーブ)が用いられる。このような方法によれば、主巻ロープ50を支持するリヤストラットアイドラシーブ52を利用して、リヤストラット21を引き起こすことができる。
【0054】
また、本実施形態では、クレーン10は、リヤストラット21に対してジブ18を相対的に回動させるようにジブ18の先端部とリヤストラット21の先端部との間、詳しくは、リヤストラット21の先端部とフロントストラット22の先端部との間において掛け渡されたジブ起伏用ロープ44と、ジブ起伏用ロープ44の巻き取りおよび繰り出しを行うように作動するジブ起伏用ウインチ32と、ジブ起伏用ウインチ32とリヤストラット21の先端部との間でジブ起伏用ロープ44を支持する中間ブームシーブ46(ジブ起伏用アイドラシーブ)と、を更に有する。そして、本発明に係るストラットシーブとして、中間ブームシーブ46(ジブ起伏用アイドラシーブ)が用いられる。このような方法によれば、ジブ起伏用ロープ44を支持する中間ブームシーブ46を利用して、リヤストラット21を引き起こすことができる。
【0055】
また、本実施形態では、本発明に係る少なくとも一つのストラットシーブとして複数のリヤストラットアイドラシーブ52が用いられるとともに、少なくとも一つのブームシーブとして複数の上部ブームシーブ65が用いられる。そして、複数のリヤストラットアイドラシーブ52と複数の上部ブームシーブ65との間に、主巻ロープ50が複数回掛け渡される。このような方法によれば、主巻ロープ50が複数のリヤストラットアイドラシーブ52と複数の上部ブームシーブ65との間に複数回掛け渡されているため、主巻ロープ50が後方に引っ張られる量に対して、リヤストラット21の上方への移動量を小さくすることができる。このため、作業者は、リヤストラット21の移動を確認しながら、より安全にリヤストラット21を引き起こすことができる。
【0056】
また、本実施形態では、クレーン10は、ジブ18の後方に配置されるフロントストラット22と、フロントストラット22の後方に配置されるリヤストラット21と、を有する。そして、リヤストラット21の引き起こし作業では、前記倒伏状態として、ブーム16およびジブ18がクレーン本体の設置面に沿うように倒伏され且つフロントストラット22がジブ18の上方に倒伏され且つリヤストラット21がフロントストラット22の上方に倒伏された状態とされる。また、前記倒伏状態から主巻ロープ50の他端が後方に引っ張られることで、本発明に係るストラットとしてリヤストラット21を引き起こされる。このような方法によれば、リヤストラット21に引き起こし作業専用の器具を装着することなく、リヤストラット21を容易に引き起こすことが可能とされる。
【0057】
以上、本発明の実施形態に係るクレーン10のリヤストラット21の引き起こし方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
【0058】
(1)上記の実施形態では、
図5に示される状態から、ジブ起伏用ウインチ32および主巻用ウインチ34によってリヤストラット21が引き起こされる態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。リヤストラット21が
図5に示される状態から僅かに上昇するまでの間、クレーン10とは別の補助クレーンがリヤストラット21を引き上げる態様でもよい。この場合も、リヤストラット21が補助クレーンによって所定の高さまで引き起こされた後、ジブ起伏用ウインチ32および主巻用ウインチ34によってリヤストラット21が引き起こされる。このため、補助クレーンに要求される耐荷重を低減することができる。
【0059】
(2)また、上記の実施形態では、
図1に示されるクレーン10をもって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係るクレーンは、所定のブーム、ジブおよびストラットを備えるものであればよい。特に、クレームは、リヤストラット21およびフロントストラット22の2つのストラットを備えるものに限定されない。クレーンは、ブームの先端部に回動可能に支持された1つのストラットを備えるものでもよい。
【0060】
(3)また、上記の実施形態では、リヤストラット21の引き起こし作業時に、上部ブームシーブ65とリヤストラットアイドラシーブ52との間に主巻ロープ50が掛け渡される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図4において、中間ブームシーブ46とリヤストラットアイドラシーブ52との間に主巻ロープ50が掛け渡される態様でもよい。
【0061】
(4)また、クレーン10は、ジブ18の先端部からではなく、ブーム16の先端部から吊り荷用ロープが垂下されることで、吊り荷を吊りあげるものでもよい。この場合、クレーン10は、ブーム16の先端部から垂下され吊り荷に接続される不図示の吊り荷用ロープ(ブーム吊り荷用ロープ)と、
図4の主巻用ウインチ34と同様の位置に配置され、前記吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うように作動する不図示の吊り荷用ウインチ(第2巻き上げ用ウインチ)と、を更に有する。そして、本発明に係るブームシーブとして、
図4の上部ブームシーブ65と同様の位置に配置され、前記吊り荷用ウインチとブーム16の先端部との間で前記吊り荷用ロープを支持するブームアイドラシーブを用いるものでもよい。このような方法によれば、ブーム吊り荷用ロープを支持するブームアイドラシーブを利用して、リヤストラット21を引き起こすことができる。
【0062】
(5)また、上記の実施形態では、本発明に係るストラットの引き起こし方法によって、リヤストラット21が引き起こされる態様にて説明したが、他の態様として、フロントストラット22が本発明に係るストラットの引き起こし方法によって引き起こされる態様でもよい。
【0063】
(6)また、上記の実施形態では、クレーン10の使用時に用いられる中間ブームシーブ46および上部ブームシーブ65を利用して、リヤストラット21の引き起こしを行う態様にて説明したが、本発明に係るブームシーブは、引き起こし作業時のみに使用される専用の部材、器具であってもよい。この場合、ブームシーブは、リヤストラット21の引き起こし作業完了後に、ブーム16から取り外されてもよい。この結果、通常作業時におけるクレーン10の重量を低減することができる。
【0064】
(7)また、上記の実施形態では、リヤストラット21の引き起こし作業時に、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50は、中間ブームシーブ46(
図4)に掛けられた後、リヤストラットアイドラシーブ52および上部ブームシーブ65に掛け渡される態様にて説明したが、本発明の変形実施形態として、主巻ロープ50は、中間ブームシーブ46を経由することなく、直接リヤストラットアイドラシーブ52および上部ブームシーブ65に掛け渡されてもよい。また、主巻ロープ50が各シーブに掛け渡される順番、経路は
図4の態様に限定されるものではない。
【0065】
図10は、本発明の変形実施形態に係るクレーンの組立作業において、ブーム16の先端部の周辺を拡大した側面図である。本変形実施形態では、先の実施形態における中間ブームシーブ46(
図4)が備えられていない。一方、本変形実施形態に係るクレーンは、アイドラシーブ46Aを備える。アイドラシーブ46Aは、複数の上部ブームシーブ65のうちの一のシーブの外周面に対向する外周面を備える。主巻用ウインチ34(
図1)から引き出された主巻ロープ50は、上記の上部ブームシーブ65のうちの一のシーブとアイドラシーブ46Aとの間を経由して、リヤストラットアイドラシーブ52に掛けられた後、先の実施形態と同様に、上部ブームシーブ65に掛けられる。
【0066】
このような構成によれば、先の実施形態に係る中間ブームシーブ46(
図1)を利用することなく、リヤストラット21を引き起こすことが可能となる。また、本変形実施形態では、主巻ロープ50は、アイドラシーブ46Aに掛けられた後、リヤストラットアイドラシーブ52の外周面に対して下方(
図10とは反対の方向、リヤストラットアイドラシーブ52の外周面を反時計まわりに)および上方(
図10と同様、リヤストラットアイドラシーブ52の外周面を時計回りに)の何れからでも掛けることができる。
【0067】
(8)また、リヤストラット21は、ブーム16の先端部に支持される態様に限定されるものではない、リヤストラット21は、ジブ18、或いはフロントストラット22の基端部に支持される態様でもよい。