特許第6579185号(P6579185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6579185-滑水性に優れた表面を有する樹脂成形体 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579185
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】滑水性に優れた表面を有する樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20190912BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20190912BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20190912BHJP
   B32B 27/14 20060101ALI20190912BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20190912BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190912BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   C08J7/04 ZCER
   C08J7/06 ZCEZ
   B32B27/18
   B32B27/14
   C09K3/18 101
   C08L101/00
   C08K9/00
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-234066(P2017-234066)
(22)【出願日】2017年12月6日
(62)【分割の表示】特願2013-139017(P2013-139017)の分割
【原出願日】2013年7月2日
(65)【公開番号】特開2018-83948(P2018-83948A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2017年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晋也
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 洋介
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−103751(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/093002(WO,A1)
【文献】 特開2010−254377(JP,A)
【文献】 特開2007−138095(JP,A)
【文献】 特開2013−091289(JP,A)
【文献】 特開2010−237585(JP,A)
【文献】 特開2009−262552(JP,A)
【文献】 特開2013−39930(JP,A)
【文献】 特開2013−75822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04− 7/06
B32B 1/00− 43/00
C08L101/00
C08K 9/00
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が300m/gよりも大きく、且つフロータビリティが40%以下である疎水性微粒子が分布している表面を有し、該疎水性微粒子の表面分布の程度は、該表面に純水30mgを滴下したときの転落角が1°以下であることを特徴とする樹脂成形体。
【請求項2】
前記疎水性微粒子が、シリカ表面に疎水性官能基が導入されたものである、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記疎水性官能基が、アルキルシリル基、アルキル基、フルオロアルキルシリル基、フルオロアルキル基である、請求項2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記アルキルシリル基がジメチルシリル基である請求項3に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
フィルムの形態を有しており、該フィルムの表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜4の何れかに記載の樹脂成形体。
【請求項6】
ボトルの形態を有しており、該ボトルの内面または口部の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜4の何れかに記載の樹脂成形体。
【請求項7】
注出具またはキャップの形態を有しており、注出具またはキャップでの内容液の注ぎ出し流路となる部分の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜4の何れかに記載の樹脂成形体。
【請求項8】
トレーの形態を有しており、該トレーの内面の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜4の何れかに記載の樹脂成形体。
【請求項9】
カップの形態を有しており、該カップの内面の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布している、請求項1〜4の何れかに記載の樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑水性に優れた表面を有する樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、成形が容易であり、安価に製造でき、耐薬品性が良好であるばかりか、柔軟性、可撓性に富んでおり、種々の用途、特に日用品、包装材料に使用されている。
【0003】
近年、濡れ性などの表面特性を改善した高機能な材料が開発されている。以下の文献において、稠調な内容物は、包装材料内面に付着し易いく、これを解決するため、内容物に対する非付着性や滑落性の表面特性を有する材料が開発されている。
【0004】
特許文献1或いは2には、一次粒子平均径が3〜100nmであり、BET比表面積が50〜300m/gの疎水性酸化物微粒子(例えば疎水性シリカ)が表面(内面)に付着している容器や蓋等の包装材料が開示されている。この包装材料は、ヨーグルトなどの含水物質が付着し難いという表面特性を有する。
【0005】
特許文献3には、平均粒径が1〜20μmの樹脂粒子により形成された樹脂膜の表面に平均粒径が5nm〜100nmの酸化物微粒子が分散付着している構造の撥水性膜が表面に形成されている蓋体が提案されている。
【0006】
特許文献1〜2で提案されている技術は、何れも内容物が接触する面に微細な凹凸を形成し、微細な凹凸面に酸化物微粒子を付着させることにより撥水性(疎水性)を発現させ、この疎水性によって含水物質等に対する非付着性を発現させているものである。
しかしながら、かかる技術では、含水物質に対する非付着性という点では満足し得るものの、滑り性(滑落性)という点では未だ満足し得るものではなく、従って、粘稠な含水物質に対する滑落性についてはさらなる改良が必要である。
【0007】
また、特許文献4には、最内層が、MFR(メルトフローレート)が10g/10min以上のオレフィン系樹脂からなる多層構造のボトルが提案されている。
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
【0008】
また、ケチャップのような植物繊維が水に分散されている粘稠な非油性内容物用のボトルについては、特許文献5或いは特許文献6に、最内層に滑剤として飽和或いは不飽和の脂肪族アミドが配合されたポリオレフィン系樹脂ボトルが提案されている。
【0009】
上述した特許文献4〜6は、何れもプラスチック容器について、容器内面を形成する熱可塑性樹脂の種類や該樹脂に配合する滑剤を適当に選択することにより、内容物に対する滑り性を向上させたものであり、ある程度の滑り性向上は達成されているが、滑り性向上には限界があり、飛躍的な向上は達成されていないのが実情である。
また、上記の技術では、酸化物微粒子を表面に付着させることが必要であることから、特にボトルの形態を有する容器には適用が困難であるという欠点もある。延伸成形に代表されるブローボトルのような形態の容器では、口部が細く、酸化物微粒子を分散させた液を吹き付けによって容器の内面に付着させるという手法を採用することが難しいからである。
さらに、酸化物微粒子を、表面を形成する樹脂に分散させておき、このような樹脂を用いてボトルの形態に成形することにより、ボトルの内表面に酸化物微粒子を分布させることも考えられるが、本発明者等の研究によると、ある程度の滑落性を発現させるためには多量の酸化物微粒子を分散させなければならないことが確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−254377号公報
【特許文献2】特開2011−93315号公報
【特許文献3】特許第4878650号
【特許文献4】特開2007−284066号公報
【特許文献5】特開2008−222291号公報
【特許文献6】特開2009−214914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、滑水性に優れており、粘稠な含水物質に対する滑り性が極めて高く、しかも、フィルム、ボトル、トレーやカップのような形態としても使用し得る樹脂積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、疎水性微粒子を樹脂成形体表面に分布させたときの滑落性について検討した結果、BET比表面積が300m/gよりも大きい疎水性微粒子を用いた場合には、非常に優れた滑落性を発現させ得るという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明によれば、BET比表面積が300m/gよりも大きい疎水性微粒子が分布している表面を有し、該疎水性微粒子の表面分布の程度は、該表面に純水30mgを滴下したときの転落角(純水が滑落を始めるときの表面の傾斜角)が1°以下であることを特徴とする樹脂成形体が提供される。
【0014】
本発明においては、
(1)前記疎水性微粒子が、シリカ微粒子表面に疎水性官能基が導入されたものであること、
(2)前記疎水性官能基が、アルキルシリル基、アルキル基、フルオロアルキルシリル基、またはフルオロアルキル基であること、
(3)前記アルキルシリル基がジメチルシリル基であること、
(4)フィルムの形態を有しており、該フィルムの表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布していること、
(5)ボトルの形態を有しており、該ボトルの内面または口部の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布していること、
(6)注出具またはキャップの形態を有しており、注出具またはキャップでの内容液の注ぎ出し流路となる部分の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布していること、
(7)トレーの形態を有しており、該トレーの内面の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布していること、
(8)カップの形態を有しており、該カップの内面の表面樹脂層に前記疎水性微粒子が分散され且つその一部が表面に分布していること、
が好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂成形体は、BET比表面積が300m/gよりも大きい疎水性微粒子が表面に分布しているという点に顕著な特徴を有する。即ち、このような大きな比表面積を有する疎水性微粒子が分布しているため、極めて優れた滑水性を示す。
【0016】
例えば、後述する実施例及び比較例に示されているように、疎水性微粒子が配合された樹脂(ポリエステル)により成形されたフィルムの表面の滑水性を試験すると、本発明にしたがってBET比表面積が300m/gよりも大きい疎水性微粒子(シリカ)を用いた場合には、樹脂よりも遙かに少ない配合量で純水の転落角を1°以下にすることができる。一方、BET比表面積が300m/g以下の疎水性微粒子(シリカ)を用いた場合には、純水の転落角を1°以下にするためには、樹脂(ポリエステル)よりもかなり多い量を配合することが必要となる。
このことから理解されるように、BET比表面積が300m/g以下の疎水性微粒子を用いて滑水性を発現させる場合には、樹脂の成形性が大きく損なわれてしまうため、外添(外部からの付着)によらざるを得ず、従って、フィルムやボトルのような形態の成形体に高い滑水性を発現させることは不可能といってよい。一方、本発明にしたがって、BET比表面積が300m/gよりも大きな疎水性微粒子を用いた場合には、少量で高い滑水性が発現するため、樹脂の成形性の低下が少なく、高い滑水性を発現させることができる。
【0017】
本発明において、BET比表面積が大きい疎水性微粒子を用いることにより樹脂成形体表面に高い滑水性が発現することは、現象として見出されたものであって理論的に解明されてはいないが、本発明者等は以下のように推定している。
樹脂に配合されている疎水性微粒子は、BET比表面積が大きいため、滑水性に有効な疎水性基が多量に分布している。しかも、BET比表面積が大きな疎水性微粒子は、細孔が非常に多く存在するため空気をかみ込みやすく純水が浸透しにくい。そのため液体との接触面積は小さくなり、この結果、樹脂成形体表面に露出している疎水性微粒子の量が少なくても、極めて優れた滑水性が発現するものと考えられる。一般に、物質が滑落するとき、空気を巻き込み易くするためには、粗面加工等により滑落表面に凹凸を形成するという手法が考えられるが、本発明では、このような凹凸面をあえて形成する必要はなく、このことは、BET比表面積が300m/gよりも大きな疎水性微粒子の使用により、空気を巻き込みやすくなっていることを裏付けている。
【0018】
このように、本発明の樹脂成形体は、滑水性が優れていることから、例えば防水シートのような防水具などの用途に適しているが、特に含水物質に対する滑落性も優れており、例えばケチャップ、ソース類、ドレッシング類、水性糊、水性インク等に対する滑落性、注出口の液切れ性にも優れ、これらを収容するための用途としても極めて好適に適用される。
特に本発明の樹脂成形体においては、所定の疎水性微粒子を表面に分布せしめることが可能であり、フィルム、ボトル、トレーやカップの形態として、さらには、スパウトなどの注出具やキャップなどの形態においても、液が接触する部分や液が流れる流路となる部分に疎水性微粒子を分布させて滑水性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の樹脂成形体の一例である積層体について、その外観を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<疎水性微粒子>
本発明の樹脂成形体は、疎水性微粒子が分布している表面を有しているものであり、かかる疎水性微粒子は、フロータビリティが40%以上であり、極めて高い疎水性を示すものである。
尚、フロータビリティは、混合比が種々異なる水とメタノールとの混合溶媒を用意し、これらの混合溶媒に微粒子をゆっくりと加えたとき、該微粒子が沈降するときの混合溶媒のメタノール含有率(体積分率)である。例えば、表面処理がされていないシリカ微粒子は、親水性が高く、フロータビリティはほとんどゼロ%である。一方、テフロン(登録商標)のような疎水性の高い粉末は、水には沈まないため、フロータビリティは、ほぼ100%である。従って、本発明で用いる疎水性微粒子は、フロータビリティが40%以上であることから、特に高い疎水性を示す。
【0021】
このような高い疎水性を示す疎水性微粒子は、シリカ、アルミナ、チタン酸化物などの金属酸化物の微粒子の表面を疎水性官能基で修飾することにより得られる。
この疎水性官能基としては、30mJ/m以下の臨界表面張力を示す官能基、例えば、メチル基等のアルキル基、メチルシリル基などのアルキルシリル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルシリル基などが挙げられる。
このような疎水性官能基による修飾は、これらの官能基を有する疎水化剤(例えばシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物、チタンアルコキシド化合物など)を用いてのカップリングやコーティングにより行われる。
本発明において、特に好適に使用されるのは、コストや入手のし易さから、疎水性シリカ微粒子であり、ジメチルシリル基で表面修飾されている疎水性シリカ微粒子が最も好ましい。
【0022】
また、上述した疎水性微粒子は、BET比表面積が300m/gよりも大きく、好ましくは400m/g以上であることが必要であり、これにより、優れた滑水性を発現させることができる。例えば、外添せず、樹脂に配合して滑水性に優れた表面を形成させる場合においても少量の配合(樹脂100重量部当り40〜300重量部、特に40〜200重量部)でよく、従って、樹脂の成形性が損なわれず、フィルムやボトルのような形態においても、優れた滑水性を発現させることができる。BET比表面積が上記範囲よりも小さな疎水性微粒子を用いた場合には、優れた滑水性を発現させることが困難となってしまい、樹脂に配合して滑水性に優れた表面を形成させようとする場合には、極めて多量の疎水性微粒子を配合することが必要となってしまい、この結果、樹脂の成形性が損なわれ、結局、滑水性を発現させることができなくなってしまう。
【0023】
このような疎水性微粒子は、BET比表面積が上記範囲内にある限り、その製法は特に制限されず、公知の方法で製造される。例えば、シリカを例にとって説明すると、シラン、シロキサンなどのケイ素化合物の火炎反応による乾式法、アルコキシシランの加水分解、縮合によるゾルゲル法、ケイ酸ソーダと酸との反応による湿式法などによりシリカ微粒子を製造し、これを疎水化処理することにより製造される。反応条件等は、目的とするBET比表面積や疎水性(フロータビリティ)が得られるように設定すればよい。
【0024】
<樹脂成形体>
本発明において、樹脂成形体の製造に用いる樹脂は、疎水性微粒子が表面に分布した表面(以下、滑水性表面と呼ぶ)を形成し得るものであれば特に制限されず、用途に応じて各種の樹脂を使用することができ、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の何れも使用することができるが、疎水性微粒子を外添して滑水性表面を形成する場合には、疎水性微粒子を分散媒に分散した分散液を使用することが好ましい。また、疎水性微粒子を内添して滑水性表面を形成する場合には、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0025】
分散媒に用いる溶媒としては、これに限定されないが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロビルアルコール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3−メトキシー3−メチル−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、水のような極性溶媒、ヘキサン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の非極性溶を適宜選択することができる。さらに、性能を損なわない範囲内で、分散剤、粘度調整剤を適宜添加することができる。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、環状オレフィン共重合体など、そしてエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイドや、その他、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、アリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、或いはポリ乳酸などの生分解性樹脂等を例示することができ、さらに、これらのブレンド物や、これら樹脂が適宜共重合により変性されたものであってもよい。
特に、包装材料の分野で使用する場合には、ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂やポリエステルが好ましい。
また、これらの樹脂から成形される樹脂成形体は、疎水性微粒子が分布している滑水性表面が形成される限りにおいて、多層構造を有していてもよいし、さらに用途に応じて、適宜の添加剤(例えば酸化防止剤、着色剤など)が配合されていてよい。
【0027】
本発明の疎水性微粒子を分布させる基材としては、公知の材料を使用することができる。紙、樹脂(ガスバリア性樹脂、酸素吸収剤樹脂)、金属、蒸着層、ガラス、布地の単体又はこれらの複合材料・積層材料を用いることができる。また、基材に適宜の添加剤(例えば、有機系・無機系の充填剤など)を配合してもよい。
【0028】
疎水性微粒子の表面分布の程度は、該表面に純水30mgを滴下したときの転落角(純水が滑落を始めるときの表面の傾斜角)が1°以下とするのがよい。例えば、内添によりこのような転落角を得るためには、樹脂100重量部当り、40〜300重量部、好ましくは40〜200重量部、最も好ましくは40〜100重量部の量で疎水性微粒子を配合しておけばよい。即ち、本発明ではBET比表面積が大きい疎水性微粒子を使用しているため、このような少ない配合量で上記のような転落角を示す滑水性を発現させることができる。勿論、上記範囲よりも多量に使用した場合にも、上記のような転落角を発現させることは可能であるが、この場合には、樹脂の成形性が損なわれてしまい、目的とする樹脂成形体の形態に成形することが困難となってしまう。
【0029】
<樹脂成形体の形態>
上述した本発明の樹脂成形体は、疎水性微粒子の表面分布により優れた滑水性表面を有しているため、その特性を活かして種々の用途、例えば防水性や撥水性が要求される用途に好適に使用でき、当該用途に適した形態(例えばフィルム、シート、トレーやカップなど)を有することができる。また、スパウト等の注出具やキャップの形態とすることもできる。
【0030】
フィルムの代表的な形態は、図1に示されている。
図1において、基材13の上に疎水性微粒子11を有し、基材13と疎水性微粒子11層との積層体10を示す。疎水性微粒子11層上に対象物が接触することで積層体10が滑水性の表面特性を有する。
【0031】
疎水性微粒子11層の成形方法としては、特に限定されないが、ドライラミネート、押出ラミネート、コーティング、吹き付け等の公知の方法を採用することができる。コーティングの場合、疎水性微粒子を揮発性溶媒に分散させてなる分散体を用いて基材上に疎水性微粒子層を形成した後に乾燥工程を経る方法により形成することができる。
【0032】
包装材料としてフィルムやボトルの形態を使用する場合、充填される内容物は、特に制限されるものではないが、一般的には、粘稠なペースト乃至スラリー状の流動性物質(例えば25℃での粘度が100mPa・s以上のもの)、具体的には、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、マスタード、ジャム、チョコレートシロップ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス、及びドレッシングのように固形分が分散された粘稠な液状物が好適であり、内容物の表面に水分が乳化せずに単独で存在しているケチャップのようなものにも適している。
【0033】
本発明の樹脂成形体は、フィルム、ボトル、袋状容器(パウチ)、トレー、カップ状、スパウトなどの注出具、ヒンジキャップなどのキャップとしても使用することができるし、また蓋材として使用することもできる。
【実施例】
【0034】
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、実施例2〜4は本発明例であるが、実施例1は、本発明の範囲外の参考例となっている。
また、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及びフィルムの作製に用いた樹脂等は次の通りである。
【0035】
<測定>
BET比表面積測定;
前処理として各種疎水性微粒子を真空乾燥し、流動式比表面積自動測定装置FlowSorbII2300(島津製作所(株)製)を用いてBET比表面積を測定した。
【0036】
フロータビリティ;
混合比が種々異なる純水とメタノールとの混合溶媒を用意し、各種混合溶媒に微粒子をゆっくりと加え、沈降するかどうか確認した。該微粒子が沈降したときの混合溶媒中のメタノール含有率(体積分率)をフロータビリティと定義した。
【0037】
水の転落角(WSA)測定;
後述の方法で作成したフィルムを、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)の試料台に測定面が上になるように固定した。23℃、50%RHの条件下で30mgの蒸留水をのせ、徐々に基材を傾けていき、水滴が転落した最終の傾斜角度を測定した。
【0038】
水の接触角(WCA)測定;
後述の方法で作成したフィルムを、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)の試料台に測定面が上になるように固定した。23℃、50%RHの条件下で3μLの蒸留水をのせ、該フィルムと水滴のなす角度(接触角)を測定した。
【0039】
(実施例1)
ポリエステル樹脂(vylon200;東洋紡(株)製)0.50g、メチルエチルケトン(和光純薬社製、以下MEKとする)10.0gをバイアル瓶に秤量し、スターラーで撹拌させながらポリエステル樹脂を溶解させた。さらに疎水性微粒子a(疎水性シリカ;BET比表面積 510m/g、表面官能基 ジメチルシリル基、フロータビリティ 40%)を0.20g添加し、スターラーで2時間撹拌した。作製した混合液を厚さ100μmのPETフィルム(ルミラー100T60;東レ社製)にバーコーター(#9)を用いて塗布した後、120℃に加熱したオーブン中で3分間乾燥させた。作製したフィルムを用いて、転落角(WSA)および接触角(WCA)測定を行った。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例2)
疎水性微粒子aを0.50gとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例3)
疎水性微粒子aを0.80gとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例4)
ポリエステル樹脂を使用しなかった以外は実施例2と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0043】
(参考例1)
疎水性微粒子aを0.15gとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
疎水性微粒子としてaの代わりに、疎水性微粒子b(RX300;日本アエロジル(株)製、BET比表面積 210m/g、表面官能基 トリメチルシリル基、フロータビリティ 65%)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
疎水性微粒子bを0.50gとした以外は比較例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(比較例3)
疎水性微粒子bを0.80gとした以外は比較例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0047】
(比較例4)
ポリエステル樹脂を使用しなかった以外は比較例2と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例5)
疎水性微粒子としてaの代わりに、疎水性微粒子c(R972;日本アエロジル(株)製、BET比表面積 110m/g、表面官能基 ジメチルシリル基、フロータビリティ 45%)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(比較例6)
疎水性微粒子cを0.50gとした以外は比較例5と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例7)
疎水性微粒子cを0.80gとした以外は比較例5と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0051】
(比較例8)
ポリエステル樹脂を使用しなかった以外は比較例6と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例9)
疎水性微粒子を使用しなかった以外は比較例1と同様にしてフィルムを作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
転落角および接触角測定の結果から、表面官能基がジメチルシリル基でBET比表面積が110m/gである疎水性微粒子を使用した比較例5〜8では、いずれも滑水性が低く、疎水性微粒子単体でも転落角が3°であったのに対し、表面官能基がジメチルシリル基でBET比表面積が520m/gである疎水性微粒子を使用した実施例1〜4では、いずれも高い滑水性を示した。
また表面官能基がトリメチルシリル基でBET比表面積が210m/gである疎水性微粒子を使用した比較例1〜4では、疎水性微粒子のフロータビリティが65%と比較的高い値であるにも関わらず、疎水性微粒子を樹脂100重量部当たり160重量部以上加えなければ、高い滑水性が得られなかった。一方で表面官能基がジメチルシリル基でBET比表面積が520m/gである疎水性微粒子を使用した実施例1〜4では、疎水性微粒子のフロータビリティが40%と低い値であるが、樹脂100重量部当たり40重量部の添加量で高い滑水性を示した。なお、樹脂100重量部当たり40重量部の添加量の実施例1は、樹脂100重量部当たり30重量部の参考例1に比べて、高い滑水性を発現していることがわかる。
【0055】
以上のことから、非常に高い滑水性を発現させるためには、疎水性の表面官能基の種類も一定の効果があるものの、BET比表面積がさらに重要な役割をしていることが明確になり、BET比表面積が大きい疎水性微粒子を使用することで、少量の使用であっても非常に高い滑水性を示すことが判明した。
【符号の説明】
【0056】
10:樹脂積層体
11:疎水性微粒子
13:基材
図1