【実施例】
【0045】
<実施例1>
本州製紙法のエアレイ法不織布マシンにより以下の通り乾式不織布を製造した。
【0046】
走行するメッシュ状コンベア上に、レーヨン繊維(ダイワボウレーヨン株式会社製、1.7dtex(繊維径12μm×繊維長29mm)[表面繊維層1用の繊維]、市販の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)であるパルプを乾式解繊装置で解繊して得たパルプ繊維[中間繊維層1用の繊維]、および表面繊維層1で使用したものと同じレーヨン繊維[表面繊維層2用の繊維]をこの順で空気流と共に落下堆積させて、表面繊維層1(目標坪量2.0g/m
2)、中間繊維層1(目標坪量28.6g/m
2)、および表面繊維層2(目標坪量2.0g/m
2)をこの順に含む繊維ウェブを形成した。
【0047】
該繊維ウェブ上に、水性バインダーと親水化剤との混合液である水性バインダー液をスプレー散布した。次いで、該繊維ウェブを熱風乾燥機(雰囲気温度170℃)の中を通過させて、繊維相互間を結合させた。次いで、該繊維ウェブを反転させ、最初にバインダー液を散布した面の反対面から、水性バインダー液を散布した。このとき、両面それぞれに対して等量の水性バインダー液を散布し、両面合計のバインダー固形分が9.8g/m
2となるようにした。次いで、該ウェブを再度熱風乾燥機(雰囲気温度170℃)を通過させることによって、坪量42.5g/m
2(目標坪量43.0g/m
2)の乾式不織布を得た。次いで、得られた乾式不織布に対して、最終的に得られる皮膚貼着用不織布の厚さが0.23mmとなるように圧縮処理を行うことにより、1mm以下(0.23mm)の厚さを有する皮膚貼着用不織布を得た。
【0048】
ここで、水性バインダー液において、水性バインダーとしては、販売品Aのエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(ガラス転移点(Tg)−17℃)を使用し、親水化剤としては、ジオクチルスルホサクシネートNa塩を、得られた皮膚貼着用不織布に対して0.12質量%となる量で使用した。
【0049】
<実施例2>
各繊維層の目標坪量を、表面繊維層1(2.0g/m
2)、中間繊維層1(29.7g/m
2)、および表面繊維層2(2.0g/m
2)とし、 水性バインダーとして、販売品Bのエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(ガラス転移点(Tg)−19℃)を使用し、水性バインダーの両面合計のバインダー固形分が10.1g/m
2となるようにした以外は実施例1と同様にして、坪量43.9/m
2の乾式不織布を得た。次いで、得られた乾式不織布に対して、最終的に得られる皮膚貼着用不織布の厚さが0.74mmとなるように圧縮処理を行うことにより、1mm以下(0.74mm)の厚さを有する皮膚貼着用不織布を得た。
【0050】
<実施例3>
各繊維層の目標坪量を、表面繊維層1(2.0g/m
2)、中間繊維層1(27.9g/m
2)、および表面繊維層2(2.0g/m
2)とし、水性バインダーとして、販売品Cのエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(ガラス転移点(Tg)4℃)を使用し、親水化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルを、得られた皮膚貼着用不織布に対して0.44質量%となる量で使用し、水性バインダーの両面合計の固形分が7.7g/m
2となるようにした以外は、実施例1と同様にして、坪量40.1g/m
2の乾式不織布を得た。次いで、得られた乾式不織布に対して、最終的に得られる皮膚貼着用不織布の厚さが0.34mmとなるように圧縮処理を行うことにより、1mm以下(0.34mm)の厚さを有する皮膚貼着用不織布を得た。
【0051】
<実施例4>
各繊維層の目標坪量を、表面繊維層1(2.0g/m
2)、中間繊維層1(27.6g/m
2)、および表面繊維層2(2.0g/m
2)とし、水性バインダーとして、販売品Dのスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)(ガラス転移点(Tg)−19℃)を使用し、親水化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルを、得られた皮膚貼着用不織布に対して0.56質量%となる量で使用し、水性バインダーの両面合計の固形分が10.5g/m
2となるようにした以外は、実施例3と同様にして、坪量42.7/m
2の乾式不織布を得た。次いで、得られた乾式不織布に対して、最終的に得られる皮膚貼着用不織布の厚さが0.35mmとなるように圧縮処理を行うことにより、1mm以下(0.35mm)の厚さを有する皮膚貼着用不織布を得た。
【0052】
<比較例1>
各繊維層の目標坪量を、表面繊維層1(2.0g/m
2)、中間繊維層1(27.2g/m
2)、および表面繊維層2(2.0g/m
2)とし、水性バインダーとして、販売品Eのエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(ガラス転移点(Tg)14℃)を使用し、親水化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルを、得られた皮膚貼着用不織布に対して0.40質量%となる量で使用し、水性バインダーの両面合計の固形分が11.1g/m
2となるようにした以外は実施例3と同様にして、坪量42.7/m
2の乾式不織布を得た。次いで、得られた乾式不織布に対して、最終的に得られる皮膚貼着用不織布の厚さが0.78mmとなるように圧縮処理を行うことにより、1mm以下(0.78mm)の厚さを有する皮膚貼着用不織布を得た。
【0053】
<比較例2>
各繊維層の目標坪量を、表面繊維層1(2.0g/m
2)、中間繊維層1(27.6g/m
2)、および表面繊維層2(2.0g/m
2)とし、水性バインダーとして、販売品Fのエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(ガラス転移点(Tg)20℃)を使用し、親水化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルを、得られた皮膚貼着用不織布に対して0.43質量%となる量で使用し、水性バインダーの両面合計の固形分が7.5g/m
2となるようにした以外は実施例3と同様にして、坪量39.5/m
2の乾式不織布を得た。次いで、得られた乾式不織布に対して、最終的に得られる皮膚貼着用不織布の厚さが0.33mmとなるように圧縮処理を行うことにより、1mm以下(0.33mm)の厚さを有する皮膚貼着用不織布を得た。
【0054】
<比較例3>
まず、実施例1に記載された方法と同様の方法により、坪量44.2g/m
2の乾式不織布を得た。次いで、得られた乾式不織布に対して、最終的に得られる皮膚貼着用不織布の厚さが1.02mmとなるように圧縮処理を行うことにより、1mm超え(1.02mm)の厚さを有する皮膚貼着用不織布を得た。
【0055】
以上のようにして得られた実施例および比較例の皮膚貼着用不織布について、以下の測定および評価試験を行った。
図1および
図2に、実施例および比較例に係る皮膚貼着用不織布の構成および試験結果を示す。
【0056】
<測定および評価試験項目>
I.坪量
日本工業規格JIS P8124「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して坪量を測定した。
【0057】
II.厚さ
日本工業規格JIS P8118「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して厚さを測定した。
【0058】
III.湿潤引張強度
日本工業規格JIS P8135「紙及び板紙−湿潤引張強さ試験方法」に準拠して縦方向(MD)の湿潤引張強度を測定した。
【0059】
皮膚貼着用不織布は、薬液や化粧水などが付与されて使用されるため、用途に関連した要求品質の1つとして、湿潤引張強度がある。湿潤引張強度は、貼り付き性に悪影響が出ない範囲では、大きいほど好ましい。本実施例においては、湿潤引張強度のスペックを12.0N/100mm以上とし、これを満たす試料を評価試験に供した。なお、湿潤引張強度は、水性バインダーの散布量を調整することにより担保した。
【0060】
IV.剛度 (剛性)
日本工業規格JIS L1096「織物及び織物の生地試験方法」のハンドルオメーター法に準拠して剛度を測定した。剛度が大きいほど、剛性が高いことを示す。
【0061】
皮膚貼着用不織布は、薬液や化粧水などが付与されて使用され、また肌に貼り付けて使用されるため、用途に関連した要求品質の1つとして、適度な剛性がある。取り扱いが容易な範囲であることを前提として、剛度(剛性)は、貼着部位の起伏への追従性の観点から、小さいほど(低いほど)良好であると評価した。
【0062】
V.吸水時間(保液性)
厚生労働省「医療ガーゼ・医療脱脂綿基準」(平成17年6月30日付け薬食機発第0630001号の別紙参照)の項目6(1)カに示される沈降速度の測定法に準拠して、試料を入れたかごを水の中に落として水面下に沈むまでの時間を測定し、これを吸水時間とした。吸水時間5秒以下を、皮膚貼着用不織布の用途に関連した要求品質とした。吸水時間が短いほど、吸水性が高く、保液性が良好であると評価した。
【0063】
VI.貼り付き性
皮膚貼着用不織布の貼り付き性として、皮膚貼着用不織布を貼り付けた際の肌の感覚および外観(フィット感)を、5人のユーザーによる官能試験にて5段階評価した。
【0064】
具体的には、まず、100×100mmのサイズの試料を八つ折りにし、市販の美容液10gを添加して均一に浸透させた。次いで、浸透後に折を開いた試料を腕の付け根の肌に貼り付けて、肌の感覚および外観(フィット感)から、密着度合いを判断した。密着度合いが大きいほど、貼り付き性が良好であると評価した。最も優れているものを5とし、最も劣っているものを1として、5人のユーザーによる評価点の平均を計算して、評価を5から1の整数で示した。
【0065】
<評価>
実施例および比較例において、吸水時間はいずれも5秒以下で略横並びであり、設定した要求品質を満たしていた。一方、貼り付き性については、比較例が評価3または評価2であったのに対し、全ての実施例で、それよりも良好な評価4または評価5が得られた。
【0066】
水性バインダーのガラス転移温度(Tg)および坪量が同等であり、液体を含ませる前の厚さが異なる試料として、実施例1(0.23mm)、実施例2(0.74mm)、および比較例3(1.02mm)を比較した。厚さが1mmを超える比較例3は、剛度が高く貼り付き性は劣っていた。実施例1および実施例2では、液体を含ませる前の厚さが薄いほど、剛度は小さく、貼り付き性は良好であった。
【0067】
水性バインダーのガラス転移温度(Tg)が異なり、坪量および液体を含ませる前の厚さが同等である試料として、実施例3(Tg4℃)および比較例2(Tg20℃)を比較した。剛度は同程度であったが、官能評価による貼り付き性は、比較例2の評価3に対し、実施例3はそれよりも良好な評価4であった。
【0068】
同様に、水性バインダーのガラス転移温度(Tg)が異なり、坪量および液体を含ませる前の厚さが同等である試料として、実施例2(Tg−19℃)および比較例1(Tg14℃)を比較した。実施例2は、比較例1と比べて、剛度が小さく、官能評価による貼り付き性が良好であった(比較例1は評価3であったのに対し、実施例2はそれよりも良好な評価4であった)。