特許第6579197号(P6579197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579197
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】往復動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/24 20060101AFI20190912BHJP
   B25D 17/04 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B25D17/24
   B25D17/04
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-552325(P2017-552325)
(86)(22)【出願日】2016年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2016082059
(87)【国際公開番号】WO2017090375
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2018年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-230281(P2015-230281)
(32)【優先日】2015年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-168064(P2016-168064)
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 大治郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 剛也
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−000567(JP,A)
【文献】 実開昭51−092775(JP,U)
【文献】 特開2006−272511(JP,A)
【文献】 特開2014−009791(JP,A)
【文献】 特開2005−156778(JP,A)
【文献】 実開昭62−031342(JP,U)
【文献】 特開2006−051593(JP,A)
【文献】 実開昭61−081888(JP,U)
【文献】 実開昭60−103738(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D17/04;17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの動力で往復動し、かつ、工具を打撃する打撃機構と、
前記モータ及び前記打撃機構を収容するハウジングと、
を有する往復動作業機であって、
前記ハウジングに対して動作可能に接続された樹脂製のハンドルと、
前記ハウジングと前記ハンドルとの間に設けられ、前記ハンドルが前記ハウジングに対して動作すると、前記打撃機構の往復動方向に伸縮する弾性体と、
前記ハンドルに設けられ、かつ、前記ハンドルを構成する材料の比重及び前記ハウジングを構成する材料の比重のそれぞれよりも比重が高い材料で構成されたウェイトと、
を有し、
前記弾性体は、前記ハウジングと前記ハンドルとで挟持されたスプリングであり、
前記ウェイト及び前記スプリングは、共に金属製であり、
前記ウェイトは、
前記スプリングの端部を支持する基部と、
前記基部から前記スプリングの伸縮方向に延びる一対の腕部と、
前記一対の腕部の間に形成された凹部と、
を有し、
前記スプリングは、前記凹部に配置されている、往復動作業機。
【請求項2】
前記往復動方向に対して直交する方向に沿って配置した支持軸が設けられ、
前記ハンドルは、前記支持軸を中心として回動可能に前記ハウジングに接続されている、請求項1記載の往復動作業機。
【請求項3】
前記ハンドルは、
前記往復動方向に直交する方向に沿って配置した把持部を有し、
前記把持部は、前記往復動方向に対して交差する所定方向で両端に配置された第1端部及び第2端部を有し、
前記弾性体は、前記第1端部と前記ハウジングとの間に配置され、
前記支持軸は、前記第2端部と前記ハウジングとを接続し、
前記ウェイトは、前記第1端部に設けられている、請求項2記載の往復動作業機。
【請求項4】
前記ハンドルに前記ウェイトが設けられ、かつ、前記モータが最高回転数で回転した際に前記ハウジングから前記ハンドルに伝達される前記往復動方向の振動伝達率が、前記ハンドルに前記ウェイトが無く、かつ、前記モータを最高回転数が回転した際に前記ハウジングから前記ハンドルに伝達される前記往復動方向の振動伝達率よりも小さくなるように、前記ウェイトの質量が設定されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の往復動作業機。
【請求項5】
前記ハンドルに前記ウェイトが無い場合の前記振動伝達率は、100%以上であり、
前記ハンドルに前記ウェイトがある場合の前記振動伝達率は、100%未満である、請求項4記載の往復動作業機。
【請求項6】
前記ハンドルは、前記支持軸を中心として回動可能に前記ハウジングに接続され、
前記ウェイトは、前記支持軸の中心線方向に間隔をおいて配置した、前記一対の腕部の一方の外面である第1側面、及び、前記一対の腕部の他方の外面である第2側面を有し、
前記ハウジングは、ガイド部を有し、
前記ガイド部は、前記往復動方向に沿って配置された一対の脚部を有し、
前記ハンドルが前記支持軸を中心として回動すると、前記一対の脚部が前記第1側面及び前記第2側面に対して摺動する、請求項2または3記載の往復動作業機。
【請求項7】
前記ウェイトは、前記ハウジングに当接することで前記ハンドルが前記ハウジングに対して動作する範囲を規制する、請求項1〜6のいずれか1項記載の往復動作業機。
【請求項8】
前記スプリングに接触するダンパを有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の往復動作業機。
【請求項9】
前記スプリングは、円筒状のコイルスプリングであり、
前記ダンパは、前記スプリングの内側に配置されている、請求項8記載の往復動作業機。
【請求項10】
前記ダンパは、前記スプリングの内径よりも小さく形成され、かつ、前記スプリング内部で遊動可能である、請求項9記載の往復動作業機。
【請求項11】
前記ダンパは、ゴムで形成され、かつ、円柱の両端面の縁部が面取りされた略円柱状であり、
前記ダンパの外径は、前記スプリングの内径よりも小さい、請求項9または10記載の往復動作業機。
【請求項12】
前記ダンパの軸方向の長さは、前記ハウジングに設けられたスプリング支持部と前記ウェイトとが最も近いときの距離よりも短い、請求項11記載の往復動作業機。
【請求項13】
前記スプリングの伸縮方向に並ぶ複数の前記ダンパを備える、請求項8〜12のいずれか1項記載の往復動作業機。
【請求項14】
前記ウェイトは、前記打撃機構の往復動方向で前記ハウジングと前記ハンドルとの間に配置されている、請求項1〜13のいずれか1項記載の往復動作業機。
【請求項15】
前記ウェイトは、前記ハウジングの内部及び前記ハンドルの内部に亘って配置されている、請求項1〜13のいずれか1項記載の往復動作業機。
【請求項16】
前記ウェイト及び前記スプリングは、前記打撃機構の往復動方向における配置領域が重なっている、請求項1〜15のいずれか1項記載の往復動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動する打撃機構を有する、往復動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
往復動する打撃機構を有する往復動作業機が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された往復動作業機は、モータを収容したハウジングと、モータの回転力を往復動力に変換する運動変換機構と、ハウジングに接続したハンドルと、ハウジング内に設けたシリンダと、シリンダ内で往復動するピストンと、シリンダ内に移動可能に配置された打撃子と、シリンダ内で打撃子とピストンとの間に形成された空気室と、ハウジングにより支持され、打撃子の打撃力を工具に伝達する中間子と、を有する。
【0003】
ハンドルの第1端部は、弾性手段を介してハウジングに接続され、ハンドルの第2端部は、支持軸を介してハウジングに回動可能に接続されている。特許文献1に記載された往復動作業機は、ピストンが往復動作して打撃子が工具を打撃する。ハウジングは、打撃時の反力で、ピストンの往復動方向に振動する。弾性手段は、ハウジングからハンドルに伝達される振動を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4626574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された往復動作業機は、ハウジングからハンドルに伝達される振動を十分に低減できず、ハンドルの振動をさらに低減することが望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、ハンドルの振動をより低減し、作業性の良い往復動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の往復動作業機は、モータと、前記モータの動力で往復動し、かつ、工具を打撃する打撃機構と、前記モータ及び前記打撃機構を収容するハウジングと、を有する往復動作業機であって、前記ハウジングに対して動作可能に接続された樹脂製のハンドルと、前記ハウジングと前記ハンドルとの間に設けられ、前記ハンドルが前記ハウジングに対して動作すると、前記打撃機構の往復動方向に伸縮する弾性体と、前記ハンドルに設けられ、かつ、前記ハンドルを構成する材料の比重及び前記ハウジングを構成する材料の比重のそれぞれよりも比重が高い材料で構成されたウェイトと、を有し、前記弾性体は、前記ハウジングと前記ハンドルとで挟持されたスプリングであり、前記ウェイト及び前記スプリングは、共に金属製であり、前記ウェイトは、前記スプリングの端部を支持する基部と、前記基部から前記スプリングの伸縮方向に延びる一対の腕部と、前記一対の腕部の間に形成された凹部と、を有し、前記スプリングは、前記凹部に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
往復動作業機によれば、ハンドルの振動をより低減でき、作業性が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】往復動作業機の正面図である。
図2】往復動作業機を平面視した一部断面図である。
図3】往復動作業機の打撃ケースを正面視した断面図である。
図4】往復動作業機のモータケース及びギヤケースを正面視した断面図である。
図5】往復動作業機のハンドルを正面視した断面図である。
図6】往復動作業機のハンドルを正面視した断面図である。
図7】往復動作業機の振動低減機構を平面視した一部断面図である。
図8】往復動作業機の振動低減機構を平面視した一部断面図である。
図9】往復動作業機の制御系を示すブロック図である。
図10】往復動作業機の実施形態における特性を示す図である。
図11】往復動作業機の比較例における特性を示す図である。
図12】往復動作業機の比較例における特性を示す図である。
図13】往復動作業機のハンドルの他の例を正面視した断面図である。
図14図13からハンドルとハウジングとが接近した状態を示す断面図である。
図15】往復動作業機の振動低減機構の他の例を平面視した一部断面図である。
図16図15からハンドルとハウジングとが接近した状態を示す断面図である。
図17】往復動作業機の振動低減機構の他の例をD−D面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、往復動作業機の実施形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1及び図2に示す往復動作業機10は、ハンマドリルとも呼ばれ、往復動作業機10は工具11を打撃する。往復動作業機10は、対象物の穴あけ作業、対象物の斫作業、対象物の破砕作業で用いられる。対象物は、コンクリート、石材を含む。
【0012】
往復動作業機10はハウジング12を備え、ハウジング12は、打撃ケース13、モータケース14及びギヤケース15を、ねじ部材16で互いに固定したものである。また、ハンドル50がハウジング12に接続されている。打撃ケース13は、図3のように筒形状であり、打撃子17が打撃ケース13内に設けられている。打撃ケース13にガイド部18が設けられ、打撃子17はガイド部18に沿って軸線A1方向に動作可能である。打撃子17は、円筒部19と、円筒部19の軸線A1方向における第1端部に連続した底部20と、を有する。円筒部19の軸線A1方向における第2端部は開口されている。
【0013】
ホルダ21が打撃ケース13の外に設けられ、ホルダ21は、打撃ケース13の軸線A1方向の第1端部にねじ部材22で固定されている。ホルダ21は筒形状であり、ホルダ21は支持孔23を有する。ホルダ21は、支持孔23に挿入された工具11を支持する。セカンドハンマ24が、支持孔23から打撃ケース13内に亘って配置されている。セカンドハンマ24は、軸線A1方向に移動可能である。セカンドハンマ24は、円柱状であり、セカンドハンマ24は大径部25を有する。環状のストッパ26が支持孔23内に設けられ、環状のストッパ27が打撃ケース内13に設けられている。大径部25がストッパ26またはストッパ27に接触することで、セカンドハンマ24は軸線A1方向の移動範囲が規制される。
【0014】
ピストン28が打撃子17の円筒部19内に配置されている。ピストン28は、打撃子17に対して軸線A1方向に移動可能である。円筒部19内で底部20とピストン28との間にエアダンパ室29が形成されている。環状のシール部材30がピストン28の外周面に取り付けられている。シール部材30は合成ゴム製であり、シール部材30は円筒部の内周面に接触してシール面を形成する。シール部材30はエアダンパ室29をシールする。グリップ31が締結要素32により打撃ケース13に固定されている。締結要素32は、ボルト及びナットを含む。グリップ31は、打撃ケース13の外に配置され、作業者はグリップ31を掴むことができる。
【0015】
図1のように、モータケース14は、軸線A1方向で打撃ケース13とハンドル50との間に配置され、図4のように、電動モータ33はモータケース14内に配置されている。電動モータ33は、ステータ34、ロータ35及び回転軸36を有する。ステータ34はモータケース14内に固定して配置され、ロータ35は回転軸36に固定されている。回転軸36は、モータケース14内に回転可能に配置されている。モータケース14内とギヤケース15内とを区画する隔壁37が設けられている。モータケース14は軸受38を支持し、隔壁37は軸受39を支持している。
【0016】
2個の軸受38,39は、回転軸36を軸線A2を中心として回転可能に支持する。往復動作業機10の正面視で、軸線A1と軸線A2とが直交する。駆動ギヤ40が回転軸36の外周面に設けられている。駆動ギヤ40はギヤケース15内に配置されている。中間ギヤ41がギヤケース15内に配置されている。ギヤケース15は軸受42を支持し、隔壁37は軸受43を支持している。2個の軸受42,43は、中間ギヤ41を回転可能に支持する。中間ギヤ41は駆動ギヤ40に噛み合っている。
【0017】
クランクシャフト44が、ギヤケース15内からモータケース14内に亘って配置されている。従動ギヤ45がクランクシャフト44に固定されている。ギヤケース15は軸受46を支持し、隔壁37は軸受47を支持する。2個の軸受46,47はクランクシャフト44を回転可能に支持する。従動ギヤ45は中間ギヤ41に噛み合っている。
【0018】
クランクシャフト44はクランクピン48を有し、クランクピン48は、クランクシャフト44に対して径方向に偏心した位置にある。コンロッド49がモータケース14内から打撃ケース13内に亘って配置され、コンロッド49は、クランクピン48及びピストン28に連結されている。クランクシャフト44が回転すると、コンロッド49は、クランクシャフト44の回転力をピストン28の往復動作力に変換する。
【0019】
図5及び図6のように、ハンドル50は、筒形状の把持部51と、把持部51の中心線B1方向の両端に設けた第1端部52及び第2端部53と、を有する。ハンドル50は、図2に示す往復動作業機10の平面視で、軸線A1を隔てて配置した2個の構成片50A,50Bを有する。2個の構成片50A,50Bは、ねじ部材60で相互に固定されている。
【0020】
図5及び図6のように、モータケース14にマウント54が設けられ、マウント54はモータケース14の外に露出している。第2端部53は、支持軸55を介してマウント54に接続されており、ハンドル50は支持軸55を中心として所定角度の範囲内で回動可能である。支持軸55は、マウント54に固定されているか、または、第2端部53に固定されている。
【0021】
ハンドル50に電源コード56の端部が取り付けられ、トリガ57及びトリガスイッチ58が把持部51に設けられている。リード線59が把持部51内及び第2端部53内に設けられ、リード線59は、トリガスイッチ58、電動モータ33に接続されている。電源コード56は、電源、例えば、直流電源または交流電源に接続される。
【0022】
ウェイト61が第1端部52に設けられている。ウェイト61は、金属材料で形成されている。ウェイト61は、図2図7及び図8のように、基部62と、基部62から延ばされた一対の腕部63と、を有する。一対の腕部63は軸線A1方向に沿って配置され、一対の腕部63は、往復動作業機10の平面視で軸線A1を隔てて配置されている。一対の腕部63の間に凹部64が形成されている。ウェイト61は、往復動作業機10の平面視でU字形である。一対の腕部63は、それぞれ突出部65を有する。腕部63は外面66Aを有し、腕部63は外面66Bを有する。外面66A,66Bは、図7のように、支持軸55の中心線D1方向に間隔をおいて配置されている。突出部65は、軸線A1に対して直交する方向に、外面66A,66Bから突出している。ウェイト61は、ねじ部材67により第1端部52に固定されている。
【0023】
ガイド部68がギヤケース15に設けられている。ガイド部68は、ねじ部材69によりギヤケース15に固定されている。ガイド部68は、金属材料で形成されている。ガイド部68は、基部70と、基部70に連続した一対の脚部71と、を有する。一対の脚部71は、軸線A1方向に沿って配置されている。一対の脚部71は、往復動作業機10の平面視で、図8のように軸線A1を隔てて配置され、かつ、互いに平行である。基部70がギヤケース15に接触し、一対の脚部71は、基部70から第1端部52に向けて突出している。
【0024】
往復動作業機10を平面視すると、ウェイト61は、軸線A1に対して直交する方向で、一対の脚部71の間に配置されている。突出部65の配置領域は、一対の脚部71の配置領域と重なっている。一対の脚部71から突出した係合部72が設けられている。係合部72が一対の脚部71から突出する方向は、電動モータ33が配置されている箇所とは反対方向である。突出部65は、軸線A1方向で係合部72と基部70との間に配置されている。ハンドル50が図6で支持軸55を中心として時計回りに回動すると、突出部65が係合部72に接触し、ハンドル50の回動範囲が規制される。
【0025】
図7のように、ダンパ73がギヤケース15に設けられている。ダンパ73は合成ゴム製であり、ダンパ73はねじ部材79でギヤケース15に固定されている。ハンドル50が、図5及び図6で支持軸55を中心として反時計回りに回動すると、一対の腕部63の先端がダンパ73に当接し、ダンパ73は、ハンドル50が支持軸55を中心として回動する角度範囲を規制する。
【0026】
スプリング74,78が、ギヤケース15と第1端部52との間に配置されている。スプリング74,78は、金属製のコイルスプリングであり、圧縮荷重を受けて反発力を生じる。スプリング74のばね定数は、スプリング78のばね定数よりも大きい。スプリング78の外径は、スプリング74の内径よりも小さく、スプリング78はスプリング74の内側に配置されている。ギヤケース15は支持部75を有する。支持部75は、ギヤケース15の壁15Aから突出している。スプリング74,78は、凹部64に配置され、かつ、支持部75によって支持されている。つまり、ウェイト61は、スプリング74,78の伸縮方向の端部を支持する。スプリング74,78は、ギヤケース15と基部62とにより挟持されており、スプリング74,78は、軸線A1方向の圧縮荷重を常に受ける。
【0027】
往復動作業機10は、図9に示す制御部76を有する。制御部76は、ハンドル50内またはモータケース14内に設けられている。制御部76は入力ポート及び出力ポートを有するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータに接続された記憶部及び演算部と、を有する。また、往復動作業機10は、回転数設定部77を有する。回転数設定部77は、ハウジング12に設けるレバー、スイッチ、パネル等を含む。トリガスイッチ58から出力された信号、及び回転数設定部77から出力された信号は、制御部76に入力される。作業者が回転数設定部77を操作して、電動モータ33の目標回転数を設定可能である。目標回転数は、段階的または無段階で設定可能である。制御部76は、トリガスイッチ58がオンされると電動モータ33を回転させ、トリガスイッチ58がオフされると電動モータ33を停止する。制御部76は、電動モータ33の実回転数を目標回転数に近づける制御を行う。
【0028】
往復動作業機10を構成する要素の材料、質量及び比重は、例えば次の通りにすることができる。ハウジング12を構成する打撃ケース13、モータケース14及びギヤケース15は、それぞれ金属材料、例えば、鋳造用アルミ合金で形成されている。また、ホルダ21は、金属材料、例えば、鋳造用アルミ合金よりも硬度な材料で形成されている。ハウジング12を構成する鋳造用アルミ合金、及びホルダ21を構成する材料の比重は、共に2.68[g/cm∧3]である。
【0029】
ハンドル50は、合成樹脂、例えば、ポリアミド樹脂で形成されている。ポリアミド樹脂は、ナイロン(インビスタ社の商品名)を含む。ハンドル50の具体例は次の通りである。構成片50A,50Bの質量は、それぞれ200gとし、ハンドル50の質量を400gとする。ハンドル50を構成するポリアミド樹脂の比重は、1.2[g/cm∧3]である。
【0030】
ウェイト61を構成する金属材料は、例えば、普通鋼または機械構造用炭素鋼を用いる。ウェイト61は質量250gとする。ウェイト61を構成する金属材料の比重は、7.86[g/cm∧3]である。
【0031】
ガイド部68を構成する金属材料は、例えば、特殊鋼または機械構造用合金鋼または工具鋼を用いる。ガイド部68は質量66gとすることができる。ガイド部68を構成する金属材料の比重は、7.85[g/cm∧3]である。
【0032】
往復動作業機10の使用例を説明する。作業者は、例えば、左手でグリップ31を掴み、右手でハンドル50の把持部51を掴み、工具11を対象物に押し付ける。すると、大径部25がストッパ27に接触してセカンドハンマ24が停止する。そして、作業者がトリガ57を操作して、トリガスイッチ58がオンされると、制御部76は電動モータ33に電力を供給し、回転軸36が回転する。制御部76は、回転数設定部77で設定された目標回転数に基づいて、回転軸36の実回転数を制御する。
【0033】
回転軸36の回転力が、中間ギヤ41及び従動ギヤ45を介してクランクシャフト44に伝達され、クランクシャフト44が回転する。クランクシャフト44が回転すると、ピストン28が軸線A1方向に往復動作し、打撃子17がセカンドハンマ24を打撃する。ピストン28及び打撃子17は、電動モータ33の動力で往復動する打撃機構である。セカンドハンマ24が受けた打撃力は工具11に伝達され、対象物が破砕される。トリガ57が操作されてトリガスイッチ58がオフされると、制御部76は電動モータ33を停止する。
【0034】
打撃作業中、ピストン28及びコンロッド49が軸線A1方向に動作するとともに、工具11に加えた打撃力の反力が打撃子17、ピストン28を介してコンロッド49に伝達されると、その荷重はクランクシャフト44及び軸受46,47を介してハウジング12に伝達される。ハウジング12が軸線A1方向に振動すると、ハンドル50が支持軸55を中心としてハウジング12に対して回動し、かつ、スプリング74,78が伸縮する。スプリング74,78は、ハウジング12からハンドル50に伝達される振動を低減する。したがって、往復動作業機10を使用する際の作業性が向上する。
【0035】
さらに、ハンドル50が支持軸55を中心とし、かつ、ハウジング12に対して回動すると、一対の脚部71が、一対の腕部63の外面66A,66Bに対して摺動する。つまり、ウェイト61は、ハウジング12からハンドル50に伝達される運動エネルギの一部を摩擦抵抗で低減し、ハンドル50の振動を抑制する。さらに、ガイド部68及びウェイト61は、ハンドル50がハウジング12に対して中心線D1方向に移動することを規制し、ハンドル50が軸線A1方向に移動する際のガイドとして機能する。
【0036】
また、ウェイト61がハンドル50に取り付けられており、ウェイト61を固定したハンドル50の固有振動数は、ハンドル50単体の固有振動数よりも小さい。したがって、ハウジング12からハンドル50に伝達される振動を、より低減できる。
【0037】
さらに、ウェイト61及びスプリング74,78は、軸線A1方向の配置領域が重なり、中心線D1方向の配置領域が重なり、中心線B1方向の配置領域が重なっている。したがって、ウェイト61の配置スペースを専用で設けずに済み、往復動作業機10の大型化を抑制できる。
【0038】
図10は、往復動作業機10の実施形態の特性を示す。横軸に1秒間あたりの打撃数[Hz]、縦軸に振動伝達率[%]を示す。振動伝達率は、ハウジング12の打撃軸方向の振動がハンドル50に伝達される割り合いである。打撃軸方向は、軸線A1方向である。振動伝達率100%は、ハウジング12の振動幅と、ハンドル50の振動幅とが同じであることを意味する。振動伝達率100%未満は、ハンドル50の振動幅が、ハウジング12の振動幅よりも小さいことを意味する。振動伝達率100%超えは、共振等の理由により、ハンドル50の振動幅がハウジング12の振動幅よりも大きいことを意味する。直線C1は、電動モータ33の最高回転数に相当する打撃数を表す。電動モータ33の最高回転数は、回転数設定部77で設定する目標回転数の最大値である。直線C2は、電動モータ33の最高回転数に対応する振動伝達率を表す。
【0039】
往復動作業機10の実施形態では、ウェイト61が質量250gの鋼材であり、電動モータ33の最大回転数に相当する1秒あたりの打撃数が23.3回であると、振動伝達率68%未満である。
【0040】
往復動作業機10の実施形態では、電動モータ33の最大回転数に相当する1秒あたりの打撃数を用途または体格毎に、15.7〜27.5回、16.6回、16.7〜36.6回、20〜41.7回、23.3回、30回、50回等に設定可能である。電動モータ33の最大回転数を増加するほど、1秒あたりの打撃数が多くなる。
【0041】
図11は、往復動作業機の比較例1の特性を示す。往復動作業機の比較例1では、ウェイトが質量87gのアルミ材であり、電動モータの最大回転数に相当する1秒あたりの打撃数が23.3回であると、振動伝達率171%である。
【0042】
図12は、往復動作業機の比較例2の特性を示す。往復動作業機の比較例2は、ウェイトが質量39gの樹脂材であり、電動モータの最大回転数に相当する1秒あたりの打撃数が23.3回であると、振動伝達率300%である。
【0043】
なお、ウェイトの無い往復動作業機の比較例2は、振動伝達率100%以上である。そして、往復動作業機10の実施形態における振動伝達率が、ウェイトの無い往復動作業機の比較例2の振動伝達率よりも小さいことは明らかである。
【0044】
図13〜17は、往復動作業機のハンドル及び振動低減機構の他の例を示す。この他の例が図1〜8に示される実施形態と異なる点は、ダンパ80が設けられる点である。
【0045】
スプリング74、78にハウジング12の振動やハンドル50をハウジング12側へ押し付ける荷重等が伝達すると、スプリング74、78は伸縮しながら互いに接触したり支持部75やウェイト61との摩擦が生じたりすることで、異音を発生することがある。特にスプリング78はスプリング74よりもばね定数が小さいため、異音を発生する振動がスプリング78の固有振動数と一致することで持続しやすく、またスプリング78はスプリング74に接触するダンパ73のように振動を減衰する部材を挟持面に有さないため、異音を発生する振動が減衰されにくい。このため、作業終了後やハンドル50の押付け動作後に長時間にわたってスプリング78から異音が発生し続けることがあり、これが作業者に聞こえると耳障りであったり、何らかの故障との誤解を与える可能性が有るため、好ましくない。
【0046】
2つのダンパ80が、円筒状のコイルスプリングであるスプリング78の内部に収容されている。スプリング78の内周面と、支持部75においてスプリング78の径方向内側に位置する範囲の後端面75aと、ウェイト61においてスプリング78の径方向内側に位置する範囲の前端面61aとによって内部空間83が形成され、ダンパ80はこの内部空間83内部に収容されている。
【0047】
ダンパ80は略円柱状の形状を有しており、両側の端面81は縁部が面取りされた面取り部82を有する形状をしている。図17は、振動低減機構を図15におけるD−D面で切断した際の断面図を示す。ダンパ80の外径R1はスプリング78の内径R2よりも小さい。このため、ダンパ80はスプリング78内部を全方向に自由に移動(遊動)可能な状態で設けられており、スプリング78の内面への接触とスプリング78内部の遊動とを繰り返す。ダンパ80がスプリング78の内面に接触すると、スプリング78の異音を発生する振動がダンパ80によって減衰され、振動が停止される。このため、異音を短時間で止めることができ、異音の発生自体を抑制することもできる。
【0048】
ダンパ80がスプリング78内部に収容されるように構成したため、ダンパ80の形状に特段の工夫をすることなく、ダンパ80とスプリング78と接触する構造を容易に実現可能となっている。ダンパ80がスプリング78の内径よりも小さい外径を有し、スプリング78内部を自由に移動可能な状態で設けられるように構成したため、ダンパ80がスプリング78に密着しスプリング78の伸縮を妨げることが防止される。ダンパ80は円柱の両端面の縁部が面取りされた形状を有するように構成したため、ダンパ80がスプリング78の伸縮時に引っかかり伸縮を妨げることが防止されるとともに、ダンパ80が早期に摩耗することも防ぐことができる。なお、上記構成以外にも、ダンパ80がスプリング78とスプリング74との間に設けられスプリング78の外周を覆う円筒状に形成するなど、ダンパ80がスプリング78と接触可能な他の構造であっても異音の発生を抑制することができる。
【0049】
ダンパ80の質量を大きくし、ダンパ80がスプリング78に接触する荷重を大きくするほど、ダンパ80がスプリング78の振動を抑制する効果は高くなる。一方でダンパ80の質量を大きくするためにダンパ80の外径を大きくすると、スプリング78の内周がダンパ80の外周を摺動することになりスプリング78の伸縮の妨げになる。また、ダンパ80の軸方向の長さLを長くすると、スプリング78が伸縮しながら湾曲した場合にダンパ80と接触し伸縮の妨げになる。図13〜17に示す構成では、ダンパ80が複数設けられるため、ダンパ80の外径や軸方向の長さを大きくすることなくダンパ80合計の質量を大きくすることができる。このため、ダンパ80がスプリング78の湾曲及び伸縮動作に対して干渉しにくくしながら、ダンパ80の合計の質量を増加させることができる。
【0050】
図14及び16は、ハウジング12に対してハンドル50が接近し、スプリング74、78が圧縮され、ハウジング12のギヤケース15に設けられた支持部75と、ハンドル50に設けられたウェイト61とが最も近づいている状態を示す。この状態における、ダンパ80の軸方向の長さをL1とし、支持部75の後端面7aとウェイト61の前端面61aとの距離をL2とする。ここで、L1はL2よりも小さくなるように構成されているため、ダンパ80は支持部75とウェイト61と両方に同時に接触し挟まれることが無く、ハウジング12からハンドル50に伝達される振動を低減するスプリング78の作用が妨げられることが抑制される。尚、ダンパ80単体の軸方向の長さL1は支持部75とウェイト61とが最も近いときの距離L2よりも短いことが望ましいのはもちろんのこと、スプリング78内部に設けられる全てのダンパ80の軸方向の長さL1の合計も支持部75とウェイト61とが最も近いときの距離L2よりも短いと、なお効果的にハンドル50の振動を低減するスプリング78の効果が得られる。
【0051】
なお、ダンパ80は、スプリング78の振動を効果的に抑制する効果と、スプリング78よりも硬度の低い材質で形成することでダンパ80とスプリング78との接触により、スプリング78が摩耗することを防止する効果と、ダンパ80とスプリング78との接触時に異音を発生することを抑制する効果とを達成するために、ゴム等の弾性体で構成されることが最適である。しかしながら、ゴム以外にもスプリング78よりも硬度の低い樹脂等で構成すれば、異音の抑制やスプリング78の摩耗の防止を実現することができる。
【0052】
実施の形態で説明した電動モータ33はモータに相当し、ピストン28及び打撃子17は打撃機構に相当し、スプリング74,78は弾性体に相当し、外面66Aは第1側面に相当し、外面66Bは第2側面に相当し、ダンパ80は樹脂部材に相当し、支持部75はスプリング支持部に相当し、軸線A1方向が、往復動方向に相当し、中心線B1方向が所定方向である。中心線B1方向は、軸線A1方向に対して交差する。
【0053】
往復動作業機は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、弾性体として用いる金属製のスプリングは、コイルスプリングの他、ねじりスプリング、リーフスプリングでもよい。弾性体は、金属製のスプリングに代えて、合成ゴムを用いることも可能である。電動モータに電力を供給する電源は、交流電源および直流電源を含む。直流電源は、ハンドルに着脱されるバッテリを含む。
【0054】
モータの回転力をピストンの往復動作力に変換する変換機構は、クランク機構の他、カム機構を含む。モータは、電動モータの他、油圧モータ、空気圧モータ、内燃機関を含む。ハンドルを構成する樹脂は、ポリアミド樹脂の他、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂でもよい。ハウジングは、打撃機構を収容する中空の容器であり、内部が密閉されているか否かを問わない。
【0055】
往復動作業機のハンドルがハウジングに対して動作可能とは、ハンドルとが、相対移動可能であることを意味する。このため、往復動作業機は、ハンドルがハウジングに対して支持軸を中心として回動可能なものの他、ハンドルがハウジングに対してレール部材を介してスライド可能なものであってもよい。この場合、ハンドルは、ハウジングに対して打撃機構の往復動方向にスライドする。
【符号の説明】
【0056】
10…往復動作業機、11…工具、12…ハウジング、13…打撃ケース、14…モータケース、15…ギヤケース、15A…壁、16,22,60,67,69,79…ねじ部材、17…打撃子、18…ガイド部、19…円筒部、20…底部、21…ホルダ、23…支持孔、24…セカンドハンマ、25…大径部、26,27…ストッパ、28…ピストン、29…エアダンパ室、30…シール部材、31…グリップ、32…締結要素、33…電動モータ、34…ステータ、35…ロータ、36…回転軸、37…隔壁、38,39,42,43,46,47…軸受、40…駆動ギヤ、41…中間ギヤ、44…クランクシャフト、45…従動ギヤ、48…クランクピン、49…コンロッド、50…ハンドル、50A,50B…構成片、51…把持部、52…第1端部、53…第2端部、54…マウント、55…支持軸、56…電源コード、57…トリガ、58…トリガスイッチ、59…リード線、61…ウェイト、61a…前端面62,70…基部、63…腕部、64…凹部、65…突出部、66A,66B…外面、68…ガイド部、71…脚部、72…係合部、73…ダンパ、74,78…スプリング、75…支持部、75a…後端面、76…制御部、77…回転数設定部、80…ダンパ、81…端面、82…面取り部、83…内部空間、A1,A2…軸線、B1,D1…中心線、C1,C2…直線。
図1
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