特許第6579243号(P6579243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6579243分注装置およびそれを備えた自動分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579243
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】分注装置およびそれを備えた自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20190912BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   G01N35/02 B
   G01N35/02 G
   G01N35/10 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-158008(P2018-158008)
(22)【出願日】2018年8月27日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3200940号
【原出願日】2015年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-185345(P2018-185345A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】関 克彦
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 隆文
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−134484(JP,A)
【文献】 特開2009−145291(JP,A)
【文献】 特開平08−304407(JP,A)
【文献】 特開2014−119328(JP,A)
【文献】 特開2010−230560(JP,A)
【文献】 特開2006−242772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 1/00− 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注対象液を収容した容器をそれぞれに複数個保持するラックの複数個を、底部に配したターンテーブル上に搭載した状態で収容する保冷庫と、そのターンテーブルを駆動制御して上記各容器を順次規定の吸引位置に位置決めするテーブル制御部と、その吸引位置に位置決めされた容器内の液体を吸引して規定の分注位置に吐出する分注機構を備えるとともに、上記保冷庫の上面は蓋で覆われ、その蓋に上記吸引位置に対応して吸引用孔が形成され、上記分注機構はその吸引用孔を介して上記吸引位置に位置決めされた容器内の液を吸引するように構成された分注装置において、
上記保冷庫内の1つのラックの配設位置に、上記蓋の下面に近接するとともに上記吸引用孔の直下に位置した状態で、当該吸引用孔を閉鎖するための孔閉鎖部を有してなる孔閉鎖用部材がラックに代えて配置され、上記テーブル制御部は、上記保冷庫内の各容器内の液を吸引するとき以外は、上記孔閉鎖用部材の孔閉鎖部が上記吸引用孔の直下に位置するように上記ターンテーブルを駆動制御することを特徴とする分注装置。
【請求項2】
上記孔閉鎖部の上記吸引用孔に対向する面が、当該吸引用孔の大きさよりも大きい平坦面であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
上記孔閉鎖用部材は、上記ラックの上記容器を保持する部位に、上記孔閉鎖部を形成する部材を保持する構成となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の分注装置。
【請求項4】
複数の検体容器内に収容された検体を順次反応容器内に分注する検体分注装置と、試薬容器内に収容された試薬を上記反応容器内に分注する試薬分注装置と、上記反応容器内で反応した液体の光学的特性を測定する測光部を少なくとも備えた分析装置において、
上記検体分注装置および/または上記試薬分注装置として請求項1〜3に記載の分注装置が用いられていることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分注装置とそれを備えた自動分析装置に関し、さらに詳しくは、分注すべき液が冷却を必要とする場合に用いられる分注装置と、冷却を必要とする検体(試料)や試薬を取り扱う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿など、生体から採取した検体を分析する分析装置、例えば血液凝固分析装置や生化学分析装置等においては、検体を所要位置に分注する分注装置として、保冷庫を備えたものが用いられることが多い。また、検体以外のある種の試薬等においても冷却を必要とするものがあり、その場合にも保冷機能付きの分注装置が用いられることもある。
【0003】
このような保冷庫付きの分注装置では、検体あるいは試薬等(本明細書においてこれらを総称して「分注対象液」という)を容器に収容し、保冷庫の底部にターンテーブルを配して、その上に複数の分注対象液を収容した容器を保持するラックを複数個搭載し、ターンテーブルの駆動によって各容器を順次分注機構による吸引位置に位置決めしていく構成が一般に採用されている。
【0004】
保冷庫にはその上面を覆う蓋が設けられ、その蓋には分注機構による吸引位置に対応する吸引用孔が形成され、分注機構は、その吸引用孔を介して保冷庫内の容器から分注対象液を吸引する(例えば特許文献1参照)。
【0005】
このような吸引用孔は、通常、構造の複雑化を避けるため、開閉機構等を設けず常時開放されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−316235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、以上のような従来の保冷庫付きの分注装置では、保冷庫の蓋に吸引用孔が設けられていることから、外気温の影響を受けやすいという問題がある。すなわち、血液凝固分析装置等においては、検体容器を収容する保冷庫は4〜8℃に制御されるが、外気温が23℃を越えると庫内温度が上昇することが確かめられている。
【0008】
また、吸引用孔から外気が保冷庫内に入り込むことにより、装置内に結露が生じやすくなり、この水滴が容器内に落下して検体濃度が薄まるリスクが高くなる。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、蓋を備えた保冷庫に分注対象液の容器を収容し、蓋に形成された吸引用孔から分注対象液を吸引するタイプの分注装置において、吸引用孔の開閉機構を設けることなく、簡単な構成のもとにその吸引用孔を実質的に閉鎖することができ、もって外気温による保冷庫内の温度上昇を抑制し、また、外気の侵入を抑制することのできる分注装置と、その分注装置を備えた自動分析装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の分注装置は、分注対象液を収容した容器をそれぞれに複数個保持するラックの複数個を、底部に配したターンテーブル上に搭載した状態で収容する保冷庫と、そのターンテーブルを駆動制御して上記各容器を順次規定の吸引位置に位置決めするテーブル制御部と、その吸引位置に位置決めされた容器内の液体を吸引して規定の分注位置に吐出する分注機構を備えるとともに、上記保冷庫の上面は蓋で覆われ、その蓋に上記吸引位置に対応して吸引用孔が形成され、上記分注機構はその吸引用孔を介して上記吸引位置に位置決めされた容器内の液を吸引するように構成された分注装置において、上記保冷庫内の1つのラックの配設位置に、上記蓋の下面に近接するとともに上記吸引用孔の直下に位置した状態で、当該吸引用孔を閉鎖するための孔閉鎖部を有してなる孔閉鎖用部材がラックに代えて配置され、上記テーブル制御部は、上記保冷庫内の各容器内の液を吸引するとき以外は、上記孔閉鎖用部材の孔閉鎖部が上記吸引用孔の直下に位置するように上記ターンテーブルを駆動制御することによって特徴づけられる(請求項1)。
【0011】
ここで、本発明の分注装置においては、上記孔閉鎖部の上記吸引用孔に対向する面を、当該吸引用孔の大きさよりも大きい平坦面とすることができる(請求項2)。
【0012】
また、本発明の分注装置において、上記孔閉鎖用部材としては、上記ラックの上記容器を保持する部位に、上記孔閉鎖部を形成する部材を保持する構成としたものを用いることができる(請求項3)。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、複数の検体容器内に収容された検体を順次反応容器内に分注する検体分注装置と、試薬容器内に収容された試薬を上記反応容器内に分注する試薬分注装置と、上記反応容器内で反応した液体の光学的特性を測定する測光部を少なくとも備えた分析装置において、上記検体分注装置および/または上記試薬分注装置として請求項1〜3に記載の分注装置が用いられていることによって特徴づけられる(請求項4)。
【0014】
本発明は、保冷庫の内部に、吸引用孔を塞ぐための部材を設け、分注機構の非作動時には、ターンテールの駆動によって閉塞部材を吸引用孔の直下に位置決めすることで、実質的に吸引用孔を塞ぎ、課題を解決しようとするものである。
【0015】
すなわち、保冷庫内のターンテーブル上に複数個配置されるラックのうちの1つを外して、代わりに孔閉鎖用部材を配置する。この孔閉鎖用部材には、保冷庫の蓋の下面に近接する孔閉鎖部が形成されており、この孔閉鎖部を吸引用孔の直下に位置決めすることにより、吸引用孔を実質的に閉鎖するように構成する。また、ターンテーブルの駆動を制御する制御部は、分注機構による分注対象液の吸引時以外は常に孔閉鎖部を吸引用孔の直下に位置決めするように動作することで、分注機構の非アクセス時には常に吸引用孔を閉鎖した状態とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分注機構のアクセス時を除き、保冷庫の蓋に形成した吸引用孔の実質的な閉鎖を簡単な構成で実現することができる。これにより、保冷能力を向上させることができるとともに分析安定性および試薬安定性の向上を図ることができる。
【0017】
また、分注機構のアクセス時以外は吸引用孔の閉鎖が可能となるため、結露の発生を抑制して分注対象液の希釈を阻止することにより、分析データの異常の発生を防止することができる。
【0018】
さらに、吸引用孔がほぼ常時閉鎖されるため、分注対象液の蒸発防止を達成できるとともに、外部への冷気の流出を阻止して装置の消費電力を低減する効果をも期することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態を示す概略構成図。
図2図1の検体分注装置において保冷庫の蓋を外した状態を示す平面図。
図3】吸引用孔直下に位置決め後の検体容器と検体ラックを示す拡大縦断面図。
図4】孔閉鎖要部材を示す図3同様の拡大縦断面図。
図5】本発明の他の実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る分注装置を、例えば血液凝固反応や免疫反応などの分析を行う自動分析装置に適用した場合の実施の形態を示す概略構成図である。
【0021】
図1に示す自動分析装置は、検体分注装置1と試薬分注装置2、反応ディスク3および測光部4を主たる構成要素としている。検体分注装置1は、検体用保冷庫11と、その内部の検体を吸引して反応ディスク3上の反応容器31内に吐出する検体分注機構12を備えている。また、試薬分注装置2は、試薬用保冷庫21と、その内部の試薬を吸引して反応ディスク3上の反応容器31内に吐出する試薬分注機構22を備えている。
【0022】
検体用保冷庫11および試薬用保冷庫21は、それぞれ蓋13,23によってその上面が塞がれており、これらの蓋13,23には、検体分注機構12または試薬分注機構22により内部の分注対象液を吸引するための吸引用孔13a,23aが複数形成されている。
【0023】
検体用保冷庫11および試薬用保冷庫21は、基本的には互いに同等の構造を有しているため、ここでは検体用保冷庫11の構造について以下に説明する。図2は、検体用保冷庫11の蓋13を外した状態を示す平面図である。
検体用保冷庫11内には、各々複数の検体容器14を保持する検体ラック15が複数個収容され、これらは検体用保冷庫11の底部に設けられたターンテーブル16上に搭載される。なお、図2では、検体容器14がターンテーブル16の回転軸を中心とする大小2つの円周に沿って2列に並ぶように検体ラック15に保持され、蓋13の吸引用孔13aもこれに対応して2個形成されたものを例示している。
【0024】
図3の拡大図に示すように、各検体容器14がターンテーブル16の駆動により順次吸引用孔13aの直下に位置決めされた状態で、検体分注機構12先端のプローブが吸引用孔13aを介して検体用保冷庫11内に入り込み、位置決めされた検体容器14内の検体を吸引した後、反応ディスク3の駆動によって、検体吐出位置に位置決めされている反応容器31の直上に移動して検体を吐出する。また、試薬分注装置2についても、上記と同様にしてターンテーブルの駆動により吸引用孔23aの直下に位置決めされた試薬容器内の試薬を試薬分注機構22により吸引し、反応ディスク3上で試薬吐出位置に位置決めされた反応容器31内に吐出することになる。
【0025】
このようにして反応ディスク3上の各反応容器31内に検体と試薬とが順次分注され、これらの各反応容器31は、容器内の溶液が反応ディスク3の駆動により反応した後に順次測光部4に送られる。測光部4は例えば分光光度計等からなり、反応後の分注対象液の光学的特性を測定した測定結果が分析に供される。
【0026】
以上の検体用保冷庫11と試薬用保冷庫21内のターンテーブルと反応ディスク3、および検体分注機構12と試薬分注機構22は、駆動制御部5から供給される信号によって駆動制御され、これらの各部が連動して「分注→反応→測光」が行われるように構成されている。
【0027】
さて、上述した実施の形態の特徴は、検体用保冷庫11のターンテーブル16上に配設される検体ラック15のうちの1つが孔閉鎖用部材17に置換されている点であり、この孔閉鎖用部材17によって吸引用孔13aが実質的に閉鎖されることである。
【0028】
すなわち、孔閉鎖用部材17は、図4の拡大図に示すように、外形は検体ラック15と同等であるが、その上面に孔閉鎖部17aが突出形成されており、この孔閉鎖部17aの上面は平坦面であって蓋13の下面に近接する高さとなっている。この場合、検体分注機構12の非アクセス時には、この孔閉鎖部17aが常に吸引用孔13aの直下に位置するように駆動制御部5がターンテーブル16を駆動制御する。この状態では、図4に示すように、吸引用孔13aは孔閉鎖部17aの上面によって実質的に塞がれた状態となり、外気の侵入や冷気の流出を有効に抑制することができる。また、孔閉鎖部17aの上面の大きさを吸引用孔13aに比して広くすることにより、ラビリンス効果によって空気の流出や流入をより効果的に抑制することができる。
【0029】
以上の構成により、保冷力が向上して消費電力を低減させることができる。通常、この種の分析装置において、保冷庫は24時間体制で通電することが多く、その消費電力の低減はランニングコストの低減に寄与するところが大きい。また、本発明に係る分注装置によれば、結露を防止できるとともに、保冷庫内の分注対象液の蒸発を防止して分析結果の信頼性の向上にも寄与することができる。
【0030】
ここで、以上の実施の形態では、専用の孔閉鎖用部材17を用いた例を示したが、図5に示すように、通常の検体ラック15をそのまま用いて、検体容器14に代えて頂部が孔閉鎖部17aと同等の形状を有する孔閉鎖用具17bを保持するようにしてもよい。
【0031】
以上の構成は、図1における試薬用保冷庫21にも等しく適用することができる。また、上記の実施の形態では検体用保冷庫11と試薬用保冷庫21を備えた分析装置について述べたが、検体と試薬を共通の保冷庫内に収容する場合でも上記の構成をそのまま採用することができる。
要は、保冷庫の蓋に形成された吸引用孔に対応して、上記のような孔閉鎖部を備えた部材を保冷庫内に配置し、その孔閉鎖部を、分注機構の非アクセス時に吸引用孔の直下に位置決めする構成とすればよい。
【0032】
また、以上は本発明を血液凝固反応などの分析を行う自動分析装置に適用した例を示したが、これに代えて任意の分注装置に適用し得ることは勿論である。例えば、分注対象液を液体クロマトグラフィで分析する場合に、その試料液注入部に対して自動的に分注対象液を供給する分注器にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 検体分注装置
11 検体用保冷庫
12 検体分注機構
13 蓋
13a 吸引用孔
14 検体容器
15 検体ラック
16 ターンテーブル
17 孔閉鎖用部材
17a 孔閉鎖部
17b 孔閉鎖具
2 試薬分注装置
21 試薬用保冷庫
22 試薬分注機構
23 蓋
23a 吸引用孔
3 反応ディスク
31 反応容器
4 測光部
5 駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5