(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出発物質として使用するフルオロスルホン酸は調達が困難であって、さらに、空気中の水分と容易に反応してフッ化水素を生成するという点で非常に取り扱いが困難である。また生成したフッ化水素により反応容器が腐食する可能性もあり、ハステロイ等の特殊な反応容器が必要となるという課題があった。本発明は、入手や取り扱いが容易な原料を使用したフルオロスルホン酸リチウムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、フルオロスルホン酸を使用しないフルオロスルホン酸リチウムの製造方法について検討したところ、従来は、フルオロスルホン酸や三酸化硫黄とリチウム源のみを反応させていたが、スルホン酸源であるXSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)をリチウム源とフッ素源とともに反応させると、スルホン酸源にリチウムとフッ素を簡便に導入できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)と、リチウム源およびフッ素源を反応させる工程を有するフルオロスルホン酸リチウムの製造方法に関する。
【0007】
脱離基Xが、塩素、臭素、または、ヨウ素であることが好ましく、入手が容易という点で塩素がより好ましい。
【0008】
XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)がクロロスルホン酸であることが好ましい。
【0009】
リチウム源およびフッ素源としてフッ化リチウムを用いた場合は、リチウム源とフッ素源とを同時に兼ねることができ、2つの原料を使用する必要がないためより好ましい。
【0010】
XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)がクロロスルホン酸であり、リチウム源およびフッ素源がフッ化リチウムであることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)、および、フルオロスルホン酸リチウムを含む組成物に関する。
【0012】
XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)がクロロスルホン酸であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法によれば、取り扱いが困難なフルオロスルホン酸を使用しないため、比較的容易にフルオロスルホン酸リチウムを製造することができる。また、反応は、溶媒の非存在下でも進行し、収率も高いという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法は、XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)と、リチウム源およびフッ素源を反応させる工程を有することを特徴とする。強酸であるXSO
3HのHがリチウムと置換して塩になるとともに、Xがフッ素に置換する。
【0015】
前記スルホン酸源であるXSO
3HにおけるXは、フッ素以外の脱離基であれば特に限定されないが、例えばハロゲン基(フッ素を除く)や有機酸エステル基、無機酸エステル基、アンモニウム等のオニウム基、ヒドロキシ基、エーテル基等が挙げられる。前記ハロゲン基としては塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。前記有機酸エステル基としては、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。前記無機酸エステル基としては、硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル、ホウ酸エステル等が挙げられる。
【0016】
前記脱離基を含むスルホン酸源であるXSO
3Hはフルオロスルホン酸と比較して容易に入手または合成することができる。なかでも、容易に入手可能であるという観点でハロゲン基がより好ましく、そのなかでも安価に入手できるという観点で塩素がさらに好ましい。すなわち、XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)は、クロロスルホン酸であることが好ましい。
【0017】
前記リチウム源は特に限定されないが、たとえばハロゲン化リチウム、有機酸リチウム、無機酸リチウム、金属リチウム、リチウム水素化物等が挙げられる。なかでも、入手や取り扱いが容易であることから、ハロゲン化リチウムが好ましい。前記ハロゲン化リチウムとしては、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。なかでもフッ素源を兼ねるという点から、フッ化リチウムが最も好ましい。これらのリチウム源は単一で使用しても良いが、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0018】
リチウム源のXSO
3Hに対する使用量は特に限定されないが、リチウム源1モル中に含まれるリチウム原子の物質量をnモルと規定したとき、XSO
3H1モルに対するリチウム源のモル比は、0.75×1/n〜1.5×1/nモルが好ましく、0.9×1/n〜1.1×1/nモルがより好ましい。1.1×1/nモルを超えると、未反応のリチウム源が残存してフルオロスルホン酸リチウムの純度が低下する傾向となり、0.9×1/nモル未満では、未反応のXSO
3Hが残存し洗浄のための有機溶媒量が増加してコストが増加する傾向にある。
【0019】
フッ素源は特に限定されないが、求核性のフッ素化剤を用いることが好ましい。求核性のフッ素化剤としては、たとえばフッ素分子、フッ化水素、金属フッ素化物、有機フッ素化試薬などが挙げられる。
【0020】
前記金属フッ素化物としては、例えばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属フッ化物塩、ならびにこれらのフッ化水素塩である、LiF(HF)
n’、NaF(HF)
n’、KF(HF)
n’、RbF(HF)
n’、CsF(HF)
n’等(ただしn’は0より大きい混数である);BeF
2、BeFCl、MgF
2、MgFCl、CaF
2、SrF
2、BaF
2等のアルカリ土類金属フッ化物塩等が挙げられる。
【0021】
前記有機フッ素化試薬としては、アンモニウムフロリド、メチルアンモニウムフロリド、ジメチルアンモニウムフロリド、トリメチルアンモニウムフロリド、テトラメチルアンモニウムフロリド、エチルアンモニウムフロリド、ジエチルアンモニウムフロリド、トリエチルアンモニウムフロリド、テトラエチルアンモニウムフロリド、トリプロピルアンモニウムフロリド、トリブチルアンモニウムフロリド、テトラブチルアンモニウムフロリド、ベンジルジメチルアンモニウムフロリド、ピリジニウムフロリド、メチルピリジニウムフロリド、ジメチルピリジニウムフロリド、トリメチルピリジニウムフロリド等のアンモニウムフッ化物塩、ならびにこれらのフッ化水素塩である、NH
4F(HF)
n’、CH
3NH
3F(HF)
n’、(CH
3)
2NH
2F(HF)
n’、(CH
3)
3NHF(HF)
n’、(CH
3)
4NF(HF)
n’、(C
2H
5)
3NHF(HF)
n’、(C
2H
5)
4NF(HF)
n’、(C
3H
7)
4NF(HF)
n’、(C
4H
9)
4NF(HF)
n’、ピリジン・HF(HF)
n’等(ただし、n’は0より大きい混数である);テトラメチルホスホニウムフロリド、テトラエチルホスホニウムフロリド、テトラプロピルホスホニウムフロリド、テトラブチルホスホニウムフロリド、テトラフェニルホスホニウムフロリド等のホスホニウムフッ化物塩、およびこれらの(HF)
n’塩(ただし、n’は0より大きい混数である);三フッ化N,N−ジエチルアミノ硫黄、IF
5−ピリジン−HF、等の市販の求核的フッ素化剤が挙げられる。ここで混数とは、すべての数および端数、例えば0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.75、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.25、1.3、1.5、1.75、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5等を意味する。なかでも、入手容易性や取り扱い容易性の点で、金属フッ化物が好ましく、リチウム源とフッ素源を兼ねるという点で、フッ化リチウムがより好ましい。これらのフッ素源は単一で使用しても良いが、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0022】
本発明のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法では、リチウム源およびフッ素源が、フッ化リチウムであることが好ましい。また、本発明のフルオロスルホン酸リチウムの製造方法では、XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)がクロロスルホン酸であり、リチウム源およびフッ素源がフッ化リチウムであることが好ましい。
【0023】
フッ素源のXSO
3Hに対する使用量は特に限定されないが、フッ素源1モル中に含まれるフッ素原子の物質量をmモルと規定したとき、XSO
3H1モルに対するフッ素源のモル比は、0.75×1/m〜1.5×1/mモルが好ましく、0.9×1/m〜1.1×1/mモルがより好ましい。1.1×1/mモルを超えると、未反応のフッ素源が残存してフルオロスルホン酸リチウムの純度が低下する傾向となり、0.9×1/mモル未満では、未反応のXSO
3Hが残存し洗浄のための有機溶媒量が増加してコストが増加する傾向にある。
【0024】
フッ素源のリチウム源に対する使用量も特に限定されないが、リチウム源1モル中に含まれるリチウム原子の物質量をnモル、フッ素源1モル中に含まれるフッ素原子の物質量をmモルと規定したとき、リチウム源1/nモルに対するフッ素源のモル比は、0.75×1/m〜1.5×1/mモルが好ましく、1.0×1/m〜1.2×1/mモルがより好ましい。1.0×1/mモル未満では、XSO
3Liが生成し純度が低下する傾向にある。
【0025】
XSO
3Hと、リチウム源およびフッ素源の反応は、反応容器内で行うが、反応系への各原料の投入方法は、各原料を一度に投入しても、滴下しても良い。また、投入順序も特に限定されず、スルホン酸源であるXSO
3Hを投入した後に、リチウム源とフッ素源を同時に滴下しても、リチウム源の滴下後にフッ素源を滴下しても、フッ素源の滴下後にリチウム源を滴下しても良い。なかでも、滴下量の調整が容易で反応温度を調整しやすいという点で、リチウム源およびフッ素源を投入した反応容器へXSO
3Hを滴下することが好ましい。
【0026】
また、たとえばクロロスルホン酸およびフッ化リチウムを使用した場合、塩化水素が副生するため、塩化水素を取り除き、より早く反応が進行させるように、反応系内を減圧にすることが好ましい。
【0027】
XSO
3H、リチウム源およびフッ素源の反応は、溶媒の非存在下でも行うことが可能であるが、溶媒の存在下で行うこともできる。用いる溶媒としては非水系溶媒であれば特に限定されず、さらに非プロトン性溶媒であることがより好ましい。
【0028】
前記非プロトン性溶媒は特に限定されないが、たとえばジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、酢酸メチル、酢酸エチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル等の鎖状エステル類、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類や、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、さらに、ラクトン類、ケトン類、アルデヒド類、アミド類、炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。なかでも、フルオロスルホン酸リチウムを溶解するという点で極性溶媒が好ましく、入手容易性や取り扱いの容易性、溶媒が残存した場合に乾燥させやすいという点でジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類がさらに好ましい。また、プロトン性溶媒であっても、フルオロスルホン酸リチウムと反応しない高級アルコール類であれば用いることができる。
【0029】
反応時の雰囲気は特に制限されないが、原料が水により分解しないように、外気を遮断した雰囲気下で混合を行うことが好ましく、たとえば、乾燥空気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガスの雰囲気下で反応させることがより好ましい。これら気体は反応開始前に導入しても、連続的に供給してもよい。
【0030】
反応温度は特に限定されないが、0〜150℃が好ましく、30〜120℃がより好ましく、50〜100℃がさらにより好ましい。100℃を超えると原料のXSO
3Hが蒸発しやすくなり、収率が低下する傾向にある。50℃未満では反応速度が低下し、収率が低下する傾向にある。
【0031】
反応後、常法によって、副生物や溶媒の留去のための後処理を行う。たとえば、スルホン酸源としてクロロスルホン酸、フッ素源およびリチウム源としてフッ化リチウムを使用し、溶媒を使用しない場合には、未反応のフッ化リチウムを除去するため再結晶操作を行う。このとき再結晶溶媒は特に限定されず、フルオロスルホン酸リチウムを溶解しフッ化リチウムを溶解しない溶媒が好ましい。前記再結晶溶媒としてはたとえばジメチルカーボネート等のカーボネート類が使用できる。前記再結晶溶媒の量は特に限定されないが、反応後の粗フルオロスルホン酸リチウムを少なくとも一度溶解させるだけの量が必要となる。再結晶温度は再結晶溶媒の沸点以下であれば特に限定されず、温度が高すぎる場合にはフルオロスルホン酸リチウムの分解が懸念されるため、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。粗フルオロスルホン酸リチウムが溶解した後、未反応のフッ化リチウム等の不溶解分を除去するため、適宜ろ過等の操作を行うことが好ましい。再結晶時の温度としては溶解温度よりも低い温度であれば特に限定されないが、使用した溶媒の融点以上で行うことが好ましい。たとえばジメチルカーボネートを使用した場合には4〜10℃が好ましい。
【0032】
溶媒存在下で反応を行った場合、たとえば溶媒としてジメチルカーボネートを使用した場合には、反応生成物のフルオロスルホン酸リチウムが前記溶媒に溶解するため、未反応のフッ化リチウムをろ過等で除去した後、反応溶液を冷却することでフルオロスルホン酸リチウムを結晶として得ることができる。このとき使用する溶媒量や冷却温度は、前記再結晶操作と同様であることが好ましい。
【0033】
また、本発明の組成物は、XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)、および、フルオロスルホン酸リチウムを含むことを特徴とする。上記組成物におけるXSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)の含有量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。下限値は、0.1ppmであってよい。XSO
3H(Xはフッ素以外の脱離基)は、クロロスルホン酸であることが好ましい。
【0034】
ここで、残存するXSO
3Hは、液体クロマトグラフィー等によって測定することができる。
【実施例】
【0035】
つぎに本発明を、実施例をもとに説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
反応容器中にスルホン酸源としてクロロスルホン酸;13.4g(115.0ミリモル)と、リチウム源およびフッ素源としてフッ化リチウム;3.0g(115.7ミリモル)を加え、溶媒の非存在下100℃で反応させた。反応後、室温まで冷却してDMC(ジメチルカーボネート)を50mL加えた後、60℃まで加熱して粗フルオロスルホン酸リチウムを完全に溶解させた。この溶液をろ過して残渣を除去した後、溶液を5℃まで冷却してジメチルカーボネートを含むフルオロスルホン酸リチウムを12.4g得た。ここからジメチルカーボネートを留去し、フルオロスルホン酸リチウム6.7g(63.2ミリモル、収率54%、クロロスルホン酸残量79ppm)を得た。
【0037】
実施例2
反応容器中にリチウム源およびフッ素源としてフッ化リチウム;3.0g(115.7ミリモル)、溶媒としてジメチルカーボネート;60mLを加え、そこにスルホン酸源としてクロロスルホン酸;13.4g(115.0ミリモル)を滴下した後70℃で反応させた。反応後、反応液をろ過して残渣を除去した後、溶液を5℃まで冷却してジメチルカーボネートを含むフルオロスルホン酸リチウムを15.5g得た。ここからジメチルカーボネートを留去し、フルオロスルホン酸リチウム10.6g(99.7ミリモル、収率86%、クロロスルホン酸残量60ppm)を得た。
【0038】
実施例3
反応容器中にリチウム源としてヨウ化リチウム;0.50g(3.7ミリモル)、溶媒としてジメチルカーボネート;10mLを加え、そこにスルホン酸源としてクロロスルホン酸;0.44g(3.8ミリモル)を滴下し、さらにフッ素源としてテトラブチルアンモニウムフルオライド;0.97g(3.7ミリモル)を滴下し70℃で反応させた。反応後、反応液をろ過して残渣を除去した後、溶液を5℃まで冷却してジメチルカーボネートを含むフルオロスルホン酸リチウムを0.5g得た。ここからジメチルカーボネートを留去し、フルオロスルホン酸リチウム0.3g(2.8ミリモル、収率74%、クロロスルホン酸残量103ppm)を得た。
【0039】
参考例1
窒素置換した反応容器に、リチウム源として塩化リチウム;1.0g(23.6ミリモル)と、溶媒としてジメチルカーボネート;60mLを入れ、スルホン酸源およびフッ素源としてフルオロスルホン酸;2.8g(28.0ミリモル)を滴下した後、氷浴下で2時間、室温に戻して1時間反応させた。反応後、一旦溶媒を留去し、新たに再結晶溶媒としてジメチルカーボネートを60mL加え、60℃まで加熱して粗フルオロスルホン酸リチウムを完全に溶解させた。前記溶液をろ過して残渣を除去した後、5℃まで冷却してジメチルカーボネートを含むフルオロスルホン酸リチウムを5.30g得た。ここからジメチルカーボネートを留去し、フルオロスルホン酸リチウム2.50g(23.6ミリモル、収率83%)を得た。
【0040】
参考例2
窒素置換した反応容器に、リチウム源として金属リチウム;1.00g(144.1ミリモル)と、溶媒としてジエチルエーテル;120mLを入れ、スルホン酸源およびフッ素源としてフルオロスルホン酸;12.0g(119.9ミリモル)を滴下した後、氷浴下で2時間、室温に戻して1時間反応させた。反応後、溶媒を留去しようとしたが、高粘性の液体となり目的物は得られなかった。