(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6579248
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】リフト座面保護装置
(51)【国際特許分類】
B61B 11/00 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
B61B11/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-186227(P2018-186227)
(22)【出願日】2018年9月29日
【審査請求日】2019年4月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393002623
【氏名又は名称】島崎 健児
(73)【特許権者】
【識別番号】510168874
【氏名又は名称】島崎 康正
(73)【特許権者】
【識別番号】517372003
【氏名又は名称】島崎 哲伸
(74)【代理人】
【識別番号】100154195
【弁理士】
【氏名又は名称】丸林 敬子
(74)【代理人】
【識別番号】100171826
【弁理士】
【氏名又は名称】丸林 啓介
(72)【発明者】
【氏名】島崎 健児
(72)【発明者】
【氏名】島崎 康正
(72)【発明者】
【氏名】島崎 哲伸
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−040257(JP,A)
【文献】
特開平10−119761(JP,A)
【文献】
特開平08−072706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフトのワイヤーロープに固着されて吊り下げられたリフトフレームの座席フレームには座席部が軸部材を回転中心として前記ワイヤーロープの移動する方向に平行する方向に回転可能に連結され、前記ワイヤーロープより下方にはガイドレールが前記ワイヤーロープから離れて静止状態で設けられ、前記リフトフレームには前記座席部にピンで連結されたリンク機構が設けられ、前記ガイドレールが前記ワイヤーロープの移動に伴い前記座席部の座面を裏返した状態から表に向けて着座可能な状態に前記座席部を回転するように前記リンク機構に設けられた被ガイド部材を誘導する上昇スロープ部と前記ワイヤーロープの移動に伴い前記座席部の座面を表に向けた着座可能な状態を維持するように前記被ガイド部材を誘導する高位置部と、前記ワイヤーロープの移動に伴い前記座席部の座面を表に出した状態から裏返した状態に前記座席部を回転するように被ガイド部材を誘導する下降スロープ部とを備えたことを特徴とするリフト座面保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフトのワイヤーロープの動きを利用して座席部の座面を雨や雪或いは太陽光から保護するリフト座面保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示されたリフト座面保護装置は、リフトの座席部に複数の板をブラインド状に連結してなる座席部を取り付け、リフトの利用者が座席部に着座していない場合には複数の板からなる座席部の座面が裏返しになっている。そして、リフトの利用者がリフトに乗ろうとして当該リフトの前に立つと、リフトの前進に伴い、複数の板からなる座席部の前部が前記利用者の脚部で後方に押されることで、座席部における複数の板が回転して座面が表を向き、利用者が座面に座れるようになっている。しかしながら、特許文献1で開示されたリフト座面保護装置は、座席部の前部が利用者の脚部で後方に押されてから座面が表を向くまでに時間がかかり、利用者がリフトに乗ろうとしてリフトの前に立つてから座るまでの動作に慣れが必要で、安全性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−72706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、リフトの移動でリフトの座席部を裏返して前記座席部の座面を保護するリフト座面保護装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、リフトのワイヤーロープに固着されて吊り下げられたリフトフレームの座席フレームには座席部が軸部材を回転中心として前記ワイヤーロープの移動する方向に平行する方向に回転可能に連結され、前記ワイヤーロープより下方にはガイドレールが前記ワイヤーロープから離れて静止状態で設けられ、前記リフトフレームには前記座席部にピンで連結されたリンク機構が設けられ、前記ガイドレールが前記ワイヤーロープの移動に伴い前記座席部の座面を裏返した状態から表に向けて着座可能な状態に前記座席部を回転するように前記リンク機構に設けられた被ガイド部材を誘導する上昇スロープ部と前記ワイヤーロープの移動に伴い前記座席部の座面を表に向けた着座可能な状態を維持するように前記被ガイド部材を誘導する高位置部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、利用者は座面が表に出て着座可能になっていることを認識して着座すればよいので、利用者がリフトに乗ろうとしてリフトの前に立つてから座るまでの動作に慣れが不要で、安全であるという効果を奏する。本発明において、ガイドレールがワイヤーロープの移動に伴い座席部の座面を表に出した状態から裏返した状態に座席部を回転するように被ガイド部材を誘導する下降スロープ部を備えれば、被ガイド部材が高位置部から下降スロープ部を下る過程でゆっくりと裏返るので、リフトに衝撃が加わらないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】発明を実施するための形態に係るリフトの始発駅又は終点駅におけるリフト座面保護装置を示した側面図。
【
図2】発明を実施するための形態に係るリフトの始発駅又は終点駅でのガイドレールを示した平面図。
【
図3】発明を実施するための形態に係るリフト座面保護装置を
図1に示した矢印S方向から見た正面図。
【
図4】発明を実施するための形態に係るリフトの中間駅でのガイドレールを示した側面図。
【
図5】発明を実施するための形態に係るリフトの中間駅でのガイドレールを示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示した発明を実施するための形態に係るリフト座面保護装置では、リフト1のワイヤーロープ2に固着されて吊り下げられたリフトフレーム3の下部から前方に突出した座席フレーム4には、リフト1の座席部5が左右方向(
図1の紙面の表裏の側に向く方向)に延びる軸心を有する軸部材7を回転中心として前後方向に回転可能に連結されている。前記座席部5が回転する前後方向は、ワイヤーロープ2の移動する方向に平行する方向である。
【0009】
具体的には、座席部5の軸部材7よりも後部は、座席部5が回転する場合に、座席フレーム4と干渉しないようになっている。座席部5の軸部材7よりも前部は、仮想線で示した位置から実線で示した位置となるように後方に回転して座席フレーム4の背凭れに受け止められ、座面6が裏返しになって雨や雪或いは太陽光から保護される。又、座席部5の軸部材7よりも前部は、実線で示した位置から仮想線で示した位置となるように前方に回転し、座面6が表に向くと、座席部5がそれよりも下方に回転しないように、座席フレーム4で下方より支えられ、座席部5の座面6に着座した利用者の体重を座席フレーム4が負担する。
【0010】
座席部5の軸部材7よりも前部及び後部が実線で示した位置から仮想線で示した位置となるように回転する方向は、座席部5が座面6を表に出す方向に回転する方向である。これとは逆に、座席部5の軸部材7よりも前部及び後部が仮想線で示した位置から実線で示した位置となるように回転する方向は、座席部5が座面6を裏返す方向に回転する方向である。
【0011】
又、リフト1の始発駅又は終点駅では、設置面10に設置された支柱11で支持されたガイドレール12がワイヤーロープ2及びホイール8から下方に離れて静止状態で設けられる。ガイドレール12は上昇スロープ部13と高位置部14とを備える。上昇スロープ部13は、ワイヤーロープ2の移動に伴い座席部5の座面6を裏返した状態から表に向けて着座可能な状態に座席部5を回転するようにリンク機構16に設けられた被ガイド部材17を誘導する部分であって、ワイヤーロープ2のホイール8の側に入って来る方向から高位置部14の側に行くに従って徐々に上昇する勾配を有する。高位置部14は、座席部5の座面6を表に向けた着座可能な状態を維持するように被ガイド部材17を誘導する部分である。上昇スロープ部13の上位端部と高位置部14におけるワイヤーロープ2のホイール8の側に入って来る一端部とが、互いに滑らかに連続している。
【0012】
リフトフレーム3にはリンク機構16が設けられている。リンク機構16の上部には被ガイド部材17が横方向に突出して設けられ、リンク機構16の下部が座席部5にピン18で回転可能に連結され、被ガイド部材17がガイドレール12から外れた状態では、リンク機構16の自重又は図示のされていない弾性部材の弾性が座席部5の軸部材7よりも後部に与えられ、座席部5の軸部材7よりも前部が軸部材7を回転中心として前側から上方を経由して後側へと回転し、それと同時に、座席部5の軸部材7よりも後部が軸部材7を回転中心として後側から下方を経由して前側へと回転し、座席部5が仮想線で示した位置から実線で示した位置となって座席フレーム4の背凭れに受け止められ、座席部5の座面6が裏返されて保護されるようになっている。
【0013】
具体的には、リンク機構16は、被ガイド部材17と昇降部材19と連結部材20とスイング部材21と昇降ガイド部材22とを備える。被ガイド部材17は、ガイドレール12の上を滑動するように、昇降部材19の上部から横に突出する。連結部材20の一端部が昇降部材19の下部にピン23で連結され、連結部材20の他端部がスイング部材21の一端部にピン18で回転可能に連結される。スイング部材21の他端部は座席部5の後端部に固定されている。
【0014】
昇降部材19は、リフト1の利用者に邪魔にならいようにリフトフレーム3より進行方向の後側に位置している。昇降部材19は、リフトフレーム3と平行になっており、第1昇降部材191と第2昇降部材192とがジョイント193で前後方向に可動するように連結された態様を図示した。昇降部材19の個数は第1昇降部材191と第2昇降部材192と2個に限定されるものではなく単数又は3個以上であってよい。昇降ガイド部材22は、リフトフレーム3に固定され、昇降部材19を上下方向に誘導するものである。
【0015】
又、
図1に実線で示したように、被ガイド部材17がガイドレール12から外れ、座席部5が座席フレーム4の背凭れに受け止められ、座席部5の座面6が裏返されている状態から、ワイヤーロープ2がホイール8の回転により矢印Aで示した方向に移動し、リフトフレーム3が実線で示した位置から矢印Aで示した方向に移動するのに伴い、被ガイド部材17がガイドレール12の上昇スロープ部13で高位置部14の側に引き上げられる。このように被ガイド部材17が上昇スロープ部13で引き上げられる過程において、リンク機構16が軸部材7を回転中心として座席部5を実線で示した位置から仮想線で示した位置に回転して座面6を表に出し、この座面6を表に出した座席部5が着座可能になる。
【0016】
よって、リフト1の利用者がリフト1に乗る場合、利用者は座面6が表に出て着座可能になっていることを認識して着座すればよいので、利用者がリフト1に乗ろうとしてリフト1の前に立つてから座るまでの動作に慣れが不要で、安全である。又、利用者が表に出た座面6に着座した場合、座席部5の軸部材7よりも前部が座席フレーム4で下部より支えられ、座席部5の座面6に着座した利用者の体重を座席フレーム4が負担する。
【0017】
図2に示した発明を実施するための形態に係るガイドレール12は、下降スロープ部15を備えていなくても適用可能であるが、下降スロープ部15を備える。下降スロープ部15は、
図1に示した座席部5の座面6を表に出した状態から裏返した状態に座席部5を仮想線で示した位置から実線で示した位置に回転するように被ガイド部材を誘導する部分であって、高位置部14からワイヤーロープ2のホイール8の側から出て行く方向に行くに従って徐々に下降する勾配を有する。高位置部14におけるワイヤーロープ2のホイール8の側にから出て行く他端部と下降スロープ部15の上位端部とが、互いに滑らかに連続している。高位置部14は、ホイール8の回転中心9を中心とした半円状になっているので、座面6が表に向けられた座席部5の状態を維持するように被ガイド部材17を長く誘導することができる。
【0018】
図3に示した発明を実施するための形態に係るリフト座面保護装置では、ホイール8の回転でワイヤーロープ2が左方向に移動するのに伴い、被ガイド部材17が右に位置する上昇スロープ部13の上を滑って実線で示した位置から仮想線で示した位置へと上り、高位置部14の右端部の上に到達する。このように被ガイド部材17が上昇スロープ部13から高位置部14に到達するまでの間において、
図1に示したように、リンク機構16が座席部5を実線で示した位置から仮想線で示した位置に回転し、座面6が表に出て着座可能になり、利用者は座面6が表に出て着座可能になったことを認識して着座すればよい。
【0019】
次に、
図3に示したように、高位置部14の右端部に到達したリンク機構16の被ガイド部材17は、ホイール8のさらなる回転によるワイヤーロープ2の矢印A方向への移動に伴い、仮想線で示した位置から点線で示した位置へと高位置部14の上を滑って
図3における左端部の上に到達する。このように被ガイド部材17が高位置部14の右端部から左端部に到達するまでの間は、
図1に示したように、リンク機構16が座席部5を仮想線で示した位置に保持し、座面6が表に出て着座可能な状態を維持する。
【0020】
更に、
図3に示したように、被ガイド部材17が高位置部14から下降スロープ部15に到達する場合において、利用者が座席部5に着座していれば、利用者の体重により被ガイド部材17が下がることなく下降スロープ部15から遊離して高位置部14から水平に外れて行く。
【0021】
又、被ガイド部材17が高位置部14から下降スロープ部15に到達する場合において、利用者が座席部5に着座していなければ、リンク機構16の自重又は図示のされていない弾性部材の弾性により、被ガイド部材17が
図3における高位置部14の左端部から下降スロープ部15を下って下降スロープ部15から外れるまでの間において、
図1に示したように、リンク機構16が座席部5を仮想線で示した位置から実線で示した位置に回転し、座面6が裏返されて保護される。
【0022】
下降スロープ部15が設けられなくても適用可能であるが、下降スロープ部15が設けられていれば、被ガイド部材17が下降スロープ部15を下る過程でゆっくりと裏返るので、リフト1に衝撃が加わることはない。
【0023】
ガイドレール12は始発駅の側に設けられれば利用者の利用に役立つが、ガイドレール12は始発駅及び終点駅の両方に設けられていてもよい。
【0024】
図4及び5に示したように、上昇スロープ部13と高位置部14と下降スロープ部15とを備えたガイドレール12が中間駅に設けられてもよい。ガイドレール12としては下降スロープ部15の無い態様でも適用可能である。
【0025】
ガイドレール12が中間駅に設けられた場合、2本のガイドレール12がワイヤーロープ2の上り側と下り側との一方に設けられてもよいが、
図5に示したように、2本のガイドレール12がワイヤーロープ2の上り側と下り側とに設けられることにより、中間駅において中間駅から終点駅に向かう上り側の座席部5及び中間駅から始発駅に向かう下り側の座席部5に対する利便性が高い。
【0026】
例えば、ワイヤーロープ2が
図5に矢印Aで示す方向に移動する側をワイヤーロープ2の上り側とすると、ワイヤーロープ2が
図5に矢印Bで示す方向に移動する側がワイヤーロープ2の下り側となり、ワイヤーロープ2が
図5に矢印Bで示す方向に移動する側をワイヤーロープ2の上り側とすると、ワイヤーロープ2が
図5に矢印Aで示す方向に移動する側がワイヤーロープ2の下り側となるというように、ワイヤーロープ2の上り側と下り側とではワイヤーロープ2の移動する方向が逆向きである。
【符号の説明】
【0027】
1 リフト
2 リフト1のワイヤーロープ
3 リフト1のリフトフレーム
4 リフト1の座席フレーム
5 リフト1の座席部
6 座席部5の座面
7 座席フレーム4と座席部5とを連結した軸部材
8 ホイール
9 ホイール8の回転中心
10 設置面
11 支柱
12 ガイドレール
13 ガイドレール12の高位置部
14 ガイドレール12の上昇スロープ部
15 ガイドレール12の下降スロープ部
16 リンク機構
17 リンク機構16の被ガイド部材
18 座席部5とリンク機構16の下部とを連結したピン
19 リンク機構16の昇降部材
20 リンク機構16の連結部材
21 リンク機構16のスイング部材
22 リンク機構16の昇降ガイド部材
23 昇降部材19の下部と連結部材20の一端部とを連結したピン
191 第1昇降部材
192 第2昇降部材
193 第1昇降部材191と第2昇降部材192とを連結したジョイント
【要約】
【課題】リフトの移動でリフトの座席部を裏返して座席部の座面を保護するリフト座面保護装置を提供する。
【解決手段】被ガイド部材17がガイドレール12から外れた状態ではリンク機構16の自重又は弾性部材の弾性により座面6が裏を向くように座席部5が実線で示した位置に裏返され、ワイヤーロープ2の移動に伴い被ガイド部材17がガイドレール12の上昇スロープ部13から高位置部14に引き上げられるまでの過程において、リンク機構16が座席部5を実線で示した位置から仮想線で示した位置に回転して座面6が表に出る。そして、被ガイド部材17が高位置部14の上を滑って通過する間は、リンク機構16が座席部5を仮想線で示した位置に保持し、座面6が表に出て着座可能な状態を維持され、座席部5の軸部材7よりも前部が座席フレーム4で下部より支えられ、座席部5の座面6に着座した利用者の体重は座席フレーム4が負担する。
【選択図】
図1