特許第6579271号(P6579271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6579271ブロック共重合体とその製造方法、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物ならびに半導体封止材
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  • 特許6579271-ブロック共重合体とその製造方法、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物ならびに半導体封止材 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579271
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】ブロック共重合体とその製造方法、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物ならびに半導体封止材
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20190912BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20190912BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20190912BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20190912BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   C08G81/00
   C08L83/10
   C08L63/00 A
   H01L23/30 R
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-528810(P2018-528810)
(86)(22)【出願日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2018020011
(87)【国際公開番号】WO2018221373
(87)【国際公開日】20181206
【審査請求日】2018年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2017-108115(P2017-108115)
(32)【優先日】2017年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-188274(P2017-188274)
(32)【優先日】2017年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-250795(P2017-250795)
(32)【優先日】2017年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛子
(72)【発明者】
【氏名】井砂 友香
(72)【発明者】
【氏名】浅野 到
(72)【発明者】
【氏名】竹崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】御山 寿
(72)【発明者】
【氏名】本田 史郎
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−172496(JP,A)
【文献】 特開平07−126392(JP,A)
【文献】 特開平08−277322(JP,A)
【文献】 特開2001−181395(JP,A)
【文献】 特開2001−240674(JP,A)
【文献】 特開2008−174749(JP,A)
【文献】 特開2011−105809(JP,A)
【文献】 特開2012−036348(JP,A)
【文献】 特表2015−504468(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/166979(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00 − 81/02
C08L 83/00 − 83/16
C08L 63/00 − 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両末端にカルボン酸無水物基および水酸基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリシロキサン(A)、ならびに、両末端にカルボン酸無水物基および水酸基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリアルキレングリコール(B)を反応させて得られるポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体であって、前記ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつ前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基である、もしくは、前記ポリシロキサン(A)の官能基が水酸基であり、かつ前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基がカルボン酸無水物基である、または、前記ポリシロキサン(A)の官能基および前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基がいずれも水酸基であり、共重合成分(C’)として、両末端がカルボン酸無水物基である化合物を反応させることによって得られるポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体であり、ブロック共重合体を100質量%として、ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量が20質量%以上90質量%以下、官能基含有量が0.3mmol/g〜3.0mmol/g、かつ、重量平均分子量が10,000〜500,000であるポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体。
【請求項2】
前記ポリシロキサン(A)が一般式(1)で表される請求項記載のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体;
【化1】
式中Xはカルボン酸無水物基および水酸基ら選ばれるいずれかの官能基であり、それぞれ同一でも異なっていても良い;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基であり、それぞれ同一でも異なっていても良い;Rは単結合、または炭素数1〜10の2価の脂肪族または芳香族炭化水素基もしくは炭素数1〜10の2価の炭化水素エーテル基であり、それぞれ同一であっても異なっていても良い;nは5〜100の繰り返し単位数を表す。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコール(B)が一般式(2)で表される請求項1または2に記載のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体;
【化2】
式中Yはカルボン酸無水物基および水酸基ら選ばれるいずれかの官能基であり、それぞれ同一でも異なっていても良い;Rは直鎖または分岐を有する炭素数2〜10のアルキル基であり、それぞれ同一でも異なっていても良い;mは3〜300の繰り返し単位数を表す。
【請求項4】
ポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体がカルボキシル基有する請求項1〜のいずれかに記載のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体。
【請求項5】
前記ポリアルキレングリコール(B)がポリテトラメチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールである請求項1〜のいずれかに記載のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体。
【請求項6】
両末端にカルボン酸無水物基および水酸基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリシロキサン(A)、ならびに、両末端にカルボン酸無水物基および水酸基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリアルキレングリコール(B)、ならびに必要に応じて前記ポリシロキサン(A)の官能基および/または前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基に反応する共重合成分(C’)を反応させてポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体を製造する方法であって、前記ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつ前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基である、もしくは、前記ポリシロキサン(A)の官能基が水酸基であり、かつ前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基がカルボン酸無水物基である、または、前記ポリシロキサン(A)の官能基および前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基がいずれも水酸基であり、共重合成分(C’)として、両末端がカルボン酸無水物基である化合物を反応させる方法であり、前記ポリシロキサン(A)、前記ポリアルキレングリコール(B)および前記共重合成分(C’)の合計を100質量%として、前記ポリシロキサン(A)の量が20質量%以上90質量%以下、官能基含有量が0.3mmol/g〜3.0mmol/g、かつ、重量平均分子量が10,000〜500,000であるポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
反応促進剤である金属触媒を用いずに反応させる請求項に記載のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体およびエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項10】
請求項記載のエポキシ樹脂硬化物からなる半導体封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体とその製造方法、該ブロック共重合体を含むエポキシ樹脂組成物およびその硬化物ならびに半導体封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を熱や衝撃から保護する半導体封止材は、一般にエポキシ樹脂、硬化剤、フィラーおよび低応力化剤や難燃剤等の各種添加剤で構成される。近年、半導体は高集積化が進み、それに応じて半導体のチップサイズも大きくなっているが、その一方で、半導体のパッケージについては小型化や薄型化が進んでいる。従って、パッケージ成形時の熱衝撃によるクラックの発生や、リードフレームやチップと封止樹脂との剥離によるパッケージの破損等が起こりやすくなるという問題があった。このような背景から、今後益々増加する車載用半導体やパワー半導体など、作動温度がより高温となる半導体の封止材については、より一層の低応力性、流動性、耐熱性などの向上が求められている。そのような中、低応力化剤としてシリコーン粒子を使用した半導体封止材の低弾性率化技術が公開されている(特許文献1)。
【0003】
一方、低応力化剤のマトリックス樹脂への相溶性を向上させる技術として、シリコーンの両末端にポリアルキレングリコール鎖を修飾したABA型のトリブロック共重合体(特許文献2)や、官能基を持たないシリコーンとポリアルキレングリコールからなるマルチブロック共重合体の末端にグリシジル基を付与する方法が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−189490号公報
【特許文献2】特開平10−182831号公報
【特許文献3】特開平4−359023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体封止材に添加される低応力化剤の特性として、低弾性率化に加え、半導体封止材を製造する作業効率を改善するための流動性の向上、高強度化のためのマトリックス樹脂への微分散化など、さらなる付加価値が求められている。
【0006】
一方、シリコーンの両末端にポリアルキレングリコール鎖が修飾したABA型のトリブロック共重合体や官能基を持たないシリコーンとポリアルキレングリコールからなる共重合体は、マトリックス樹脂への粗大分散、エポキシ樹脂硬化物からのブリードアウトなどの課題があった。
【0007】
本発明は、耐熱性を損なうことなく、高いエポキシ樹脂への分散性を有し、エポキシ樹脂組成物に添加した場合に、流動性低下を抑制し、得られるエポキシ樹脂硬化物の低応力化および靭性向上を達成し、かつブロック共重合体が微分散されブリードアウトも抑制されるブロック共重合体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討をした結果、下記の発明に到達した。すなわち本発明は、
「<1>両末端にカルボン酸無水物基および水酸基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリシロキサン(A)、ならびに、両末端にカルボン酸無水物基および水酸基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリアルキレングリコール(B)を反応させて得られるポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体であって、前記ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつ前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基である、もしくは、前記ポリシロキサン(A)の官能基が水酸基であり、かつ前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基がカルボン酸無水物基である、または、前記ポリシロキサン(A)の官能基および前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基がいずれも水酸基であり、共重合成分(C’)として、両末端がカルボン酸無水物基である化合物を反応させることによって得られるポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体であり、ブロック共重合体を100質量%として、ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量が20質量%以上90質量%以下、官能基含有量が0.3mmol/g〜3.0mmol/g、かつ、重量平均分子量が10,000〜500,000であるポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体。
<2>両末端にカルボン酸無水物基および水酸基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリシロキサン(A)、ならびに、両末端にカルボン酸無水物基および水酸基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリアルキレングリコール(B)、ならびに必要に応じて前記ポリシロキサン(A)の官能基および/または前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基に反応する共重合成分(C’)を反応させてポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体を製造する方法であって、前記ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつ前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基である、もしくは、前記ポリシロキサン(A)の官能基が水酸基であり、かつ前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基がカルボン酸無水物基である、または、前記ポリシロキサン(A)の官能基および前記ポリアルキレングリコール(B)の官能基がいずれも水酸基であり、共重合成分(C’)として、両末端がカルボン酸無水物基である化合物を反応させる方法であり、前記ポリシロキサン(A)、前記ポリアルキレングリコール(B)および前記共重合成分(C’)の合計を100質量%として、前記ポリシロキサン(A)の量が20質量%以上90質量%以下、官能基含有量が0.3mmol/g〜3.0mmol/g、かつ、重量平均分子量が10,000〜500,000であるポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体の製造方法。
<3>上記のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体およびエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
<4>上記のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物。
<5>上記のエポキシ樹脂硬化物からなる半導体封止材。」である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体(以後、単にブロック共重合体と称することもある)は、官能基を有し、エポキシ樹脂に非相溶であるが柔軟性に優れたポリシロキサンブロックと、官能基を有し、エポキシ樹脂に相溶し柔軟性に優れたポリアルキレングリコールブロックを有するマルチブロック共重合体であり、耐熱性を損なうことなく、柔軟性とエポキシ樹脂への良分散性を両立する。本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂に配合した場合に、エポキシ樹脂中に均質に微分散し、得られるエポキシ樹脂硬化物からのブロック共重合体のブリードアウトを抑制でき、エポキシ樹脂硬化物の低応力化および靭性向上を図ることができる。また、ブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加することによる流動性の低下も抑制される。これらのことから、界面活性剤や樹脂改質剤などの各種添加剤としても有用であり、特に、半導体封止材用の低応力化剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例2で得られたエポキシ樹脂硬化物の断面TEM写真である。
図2】実施例7で得られたエポキシ樹脂硬化物の断面TEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体は、カルボン酸無水物基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリシロキサン(A)、ならびに、カルボン酸無水物基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、およびイソシアネート基から選ばれるいずれかの官能基を有するポリアルキレングリコール(B)を反応させて得られ、ブロック共重合体を100質量%として、ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量が20質量%以上90質量%以下のものである。
【0012】
ここで、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)を反応させるとは、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)とを直接反応させ、結合させてもよいし、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)を該成分(A)および該成分(B)の両方に反応する共重合成分(C)を介して結合させてもよい。
【0013】
共重合成分(C)を介して結合させる場合は、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)が直接反応しない場合においても、目的とするブロック共重合体を得ることができる。
【0014】
官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)が直接反応し、結合する場合の具体例としては、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれか一方の官能基がカルボン酸無水物基であり、もう一方の官能基が水酸基またはエポキシ基またはアミノ基である場合、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれか一方の官能基が水酸基であり、もう一方の官能基がカルボン酸無水物基またはカルボキシル基またはアミノ基またはエポキシ基またはイソシアネート基である場合、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれか一方の官能基がエポキシ基であり、もう一方の官能基がカルボン酸無水物基または水酸基またはカルボキシル基またはアミノ基またはチオール基である場合、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれか一方の官能基がカルボキシル基であり、もう一方の官能基が水酸基またはアミノ基またはエポキシ基またはチオール基またはイソシアネート基である場合、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれか一方の官能基がアミノ基であり、もう一方の官能基がカルボン酸無水物基または水酸基またはカルボキシル基またはエポキシ基またはチオール基またはイソシアネート基である場合、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれか一方の官能基がチオール基であり、もう一方の官能基がカルボキシル基またはアミノ基またはエポキシ基である場合、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれか一方の官能基がイソシアネート基であり、もう一方の官能基がカルボキシル基または水酸基またはアミノ基である場合等が挙げられる。
【0015】
ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)いずれか一方の官能基がカルボン酸無水物基であり、もう一方の官能基が水酸基である場合は、反応後に新たにカルボキシル基が生成する。ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれか一方の官能基がエポキシ基であり、もう一方の官能基が水酸基である場合は、反応後に新たに水酸基が生成される。これらの反応により新たに生成されるカルボキシル基または水酸基は、エポキシ樹脂への分散性向上と、耐熱性の向上に寄与する。なお、新たに生成される官能基としては、エポキシ樹脂に添加し、硬化物を得る際に、エポキシ樹脂に固定化されブリードアウトを抑制できる点から、カルボキシル基であることが最も好ましい。
【0016】
なお、異なる官能基を有する複数のポリシロキサン(A)および/または異なる官能基を有する複数のポリアルキレングリコール(B)を反応させても構わない。
【0017】
ポリシロキサン(A)の官能基は、カルボン酸無水物基および/または水酸基であることが好ましい。中でも、ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基である組み合わせ、または、ポリシロキサン(A)の官能基が水酸基であり、かつポリアルキレングリコール(B)の官能基がカルボン酸無水物基である組み合わせが好ましい。これによって、高分子量体のブロック共重合体中にカルボキシル基を多量に含有させることが可能になり、エポキシ樹脂への分散性が向上し、エポキシ樹脂硬化物とした後にブロック共重合体のブリードアウトを抑制できる。また、原料同士を混合するための有機溶媒、反応促進のための金属触媒などを使用することなく反応が進行するため、エポキシ樹脂硬化物などを作製する際の副反応を抑制できる。さらには、より温和な条件で反応が可能で、ゲル化など副反応が抑制できることから、ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基である組み合わせが、より好ましい。
【0018】
ポリシロキサン(A)の官能基およびポリアルキレングリコール(B)の官能基が直接反応し、結合する場合は、ポリシロキサン(A)とポリアルキレングリコール(B)の官能基が反応することにより、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合およびチオエステル結合から選ばれる結合が形成される。なお、得られるブロック共重合体の結合部には、ポリシロキサン(A)の官能基およびポリアルキレングリコール(B)の官能基の組み合わせ次第で、新たに生成するカルボキシル基および/または水酸基を含んでも良い。
【0019】
ここで、前記官能基を有するポリシロキサン(A)としては、一般式(1)で表されるポリシロキサンを用いることが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
なお、nは5〜100の繰り返し単位数を表す。Xはカルボン酸無水物基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれるいずれかの官能基である。ここでカルボン酸無水物基とは、無水マレイン酸や無水フタル酸や無水コハク酸などの環状であるものも含む。また、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基である。Rは、単結合、炭素数1〜10の2価の脂肪族または芳香族炭化水素基および炭素数1〜10の2価の炭化水素エーテル基から選ばれる基である。ここで、単結合とは、Rは存在せずケイ素とXが直接結合していることを意味する。また、エポキシ樹脂組成物への分散性が向上する観点から、Rはブチレン、プロピレンまたはエチレンであることが好ましく、プロピレンまたはエチレンであることが最も好ましい。さらにXが環状のカルボン酸無水物基である場合、XとRまたはケイ素原子との結合位置はいずれの位置でも構わない。また、2価の炭化水素エーテル基としては−(CH−O−(CH−で表され、1≦a+b≦10である基が好ましい。すべてのRおよびRおよびXは、それぞれ同一でも異なっていても良い。
【0022】
一般式(1)中のRは、水素原子、炭素数が1〜5のアルキル基またはフェニル基であり、X、Yおよび共重合成分(C)のいずれにも反応しない。RとX、Yおよび共重合成分(C)のいずれかが反応すると、XとYの反応を阻害したり、架橋反応が進行したりするため、好ましくない。また、Rの鎖長が長すぎる場合は、得られたブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加した際に流動性が低下するために、好ましくない。Rは、好ましくはプロピル基、エチル基およびメチル基のいずれかであり、より好ましくはエチル基またはメチル基であり、最も好ましくはメチル基である。また、すべてのRが異なっていても、同一であっても良い。
【0023】
官能基を有するポリシロキサン(A)としては、官能基を有するポリオルガノシロキサンが好ましく、特に、官能基を有するポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0024】
官能基を有するポリシロキサン(A)の重量平均分子量は、特に制限はないが、その下限値としては好ましくは500以上であり、より好ましくは800以上であり、さらに好ましくは1,000以上である。また重量平均分子量の上限値としては、8,000以下が好ましく、より好ましくは5,000以下であり、さらに好ましくは4,000以下であり、最も好ましくは3,000以下である。官能基を有するポリシロキサン(A)の重量平均分子量が小さい場合は、得られるブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加しても、低弾性率化効果が低い。また、官能基を有するポリシロキサン(A)の重量平均分子量が大きい場合は、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)が相分離し、均一状態での反応が進行しないため、官能基を有するポリアルキレングリコール(B)との反応性が悪くなる。また、得られるブロック共重合体の官能基含有量が低くなるため、後述するエポキシ樹脂への分散性向上効果が低くなる。なお、官能基を有するポリシロキサン(A)の重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、ポリメタクリル酸メチルで換算した重量平均分子量を指す。
【0025】
官能基を有するポリシロキサン(A)としては、信越化学工業株式会社から市販されている、X−22−168AS、KF−105、X−22−163A、X−22−163B、X−22−163C、KF−8010、X−22−161A、X−22−161B、KF−8012、X−22−169AS、X−22−169B、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−1821、X−22−162C、X−22−167B、X−22−167C、X−22−163、KF−6000、PAM−E、KF−8008、X−22−168A、X−22−168B、X−22−168−P5−B、X−22−1660B−3、X−22−9409、東レ・ダウコーニング株式会社から市販されている、BY16−871、BY16−853U、BY16−855、BY16−750、BY16−201等が挙げられる。
【0026】
また、前記官能基を有するポリアルキレングリコール(B)としては、一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールを用いることが好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
なお、mは3〜300の繰り返し単位数を表す。Yはカルボン酸無水物基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、およびイソシアネート基から選ばれるいずれかの官能基である。ここでカルボン酸無水物基とは、無水マレイン酸や無水フタル酸や無水コハク酸などの環状であるものも含む。Rは直鎖または分岐を有する炭素数2〜10のアルキル基である。Rの炭素数が10より大きい場合は、官能基を有するポリアルキレングリコール(B)がエポキシ樹脂に相溶せず、得られるブロック共重合体とエポキシ樹脂との分散性が悪いため、それらを混合し硬化させたエポキシ樹脂硬化物の破断点歪みが小さくなり、ブロック共重合体の添加による靭性向上効果が低くなる。またRの炭素数が小さい場合は、柔軟性が低下するため好ましくない。Rの好ましい炭素数は3または4である。全てのRおよびYは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。
【0029】
官能基を有するポリアルキレングリコール(B)としては、ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基である場合は、Yが水酸基であり、Rが直鎖のブチレン基であるポリテトラメチレングリコールおよび/またはRが分岐したプロピレン基であるポリプロピレングリコールが、官能基を有するポリシロキサン(A)との反応性に優れ、反応促進剤の金属触媒を使用せずに反応が進行し、かつ有機溶媒を使用しなくてもポリシロキサン(A)とポリアルキレングリコール(B)が反応し均質なブロック共重合体を得ることができるため好ましい。特に耐熱性が向上する観点から、ポリテトラメチレングリコールがより好ましい。
【0030】
官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の重量平均分子量は、特に制限はしないが、その下限値としては好ましくは300以上であり、より好ましくは500以上であり、さらに好ましくは1,000以上である。また重量平均分子量の上限値としては20,000以下が好ましく、より好ましくは10,000以下であり、さらに好ましくは5,000以下であり、最も好ましくは3,000以下である。官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の重量平均分子量が小さい場合は、得られるブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加した際の靭性向上効果が低い。また官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の重量平均分子量が大きい場合は、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)が相分離し、均一系での反応が進行しないため、官能基を有するポリシロキサン(A)との反応性が悪くなる。また、得られるブロック共重合体の官能基含有量が低くなるため、優れたエポキシ樹脂への分散性向上効果が低くなる。なお、官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、ポリメタクリル酸メチルで換算した重量平均分子量を指す。
【0031】
得られるブロック共重合体の柔軟性およびエポキシ樹脂への良接着性を損なわない範囲において、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)以外に、これらと反応可能な共重合成分(C)をさらに加えて反応させても構わない。
【0032】
ここで言う共重合成分(C)とは、ポリシロキサン(A)の官能基および/またはポリアルキレングリコール(B)の官能基と反応する官能基を1以上有する分子である。この場合、得られるブロック共重合体は、ポリシロキサン(A)由来の構造およびポリアルキレングリコール(B)由来の構造に加えて、該共重合成分(C)由来の構造を有することになる。
【0033】
この共重合成分(C)は、反応時にポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)のいずれにも溶解することが、反応が進行しやすいため好ましい。また共重合成分(C)は、複数種用いても良い。
【0034】
特に共重合成分(C)の官能基が2つ以上であって、分子量が2,000以下の場合、理由は未解明であるが、ポリシロキサン(A)とポリアルキレングリコール(B)のみを反応させるのに比べて、得られるブロック共重合体が高分子量化することがわかった。共重合成分(C)の官能基数は、2つ以上であれば構わないが、3つ以上であると3次元架橋反応が進行し、柔軟性の低下に繋がるため、ポリシロキサン(A)および/またはポリアルキレングリコール(B)と反応する官能基は2つであることが好ましい。また、反応中の粘度上昇が大きすぎると、反応性が低下することから、共重合成分(C)の分子量は小さいことが好ましく、好ましくは1,500以下、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは800以下、特に好ましくは600以下、最も好ましくは500以下である。
【0035】
一方で、共重合成分(C)の官能基が1つの場合は、添加量増加に伴い、得られるブロック共重合体の分子量は低下する。
【0036】
上記共重合成分(C)は、反応促進剤の金属触媒を使用しなくても反応が進行し、かつ反応系内が均一に混合するものが好ましい。例示するならば、ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基、ポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基の場合は、1価または2価のカルボン酸無水物、ジオール類、アルコール類、フェノール類等が挙げられる。
【0037】
2価のカルボン酸無水物としては、具体的には、ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ジメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホキシドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルメチレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−イソプロピリデンジフタル酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’−パラ−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’−メタ−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(トリメリット酸二無水物)、ヘキサングリコールビス(トリメリット酸二無水物)などのジオールビス(トリメリット酸二無水物)などの芳香族環を含むカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、メソ−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物、ジエチレントリアミンペンタ酢酸二無水物などの脂肪族鎖を含むカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0038】
ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつポリアルキレングリコール(B)がポリテトラメチレングリコールである場合や、ポリシロキサン(A)の官能基が水酸基であり、かつポリアルキレングリコール(B)がポリプロピレングリコールである場合は、ポリシロキサン(A)およびポリテトラメチレングリコールまたはポリプロピレングリコールに溶解し、低分子量であるため、反応性が上がることから、共重合成分(C)としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。中でも、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)に容易に溶解し系内が均一状態であり、かつ反応促進剤の金属触媒を使用しなくても反応が進行する点で、ピロメリット酸二無水物が好ましい。
【0039】
1価のカルボン酸無水物としては、具体的には、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シュウ酸、無水安息香酸などが挙げられる。ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつポリアルキレングリコール(B)がポリテトラメチレングリコールである場合は、ポリシロキサン(A)およびポリテトラメチレングリコールに溶解し、反応性が向上する点から、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。このような炭化水素系アルコールの場合は、得られるブロック共重合体の柔軟性を損なわないことから、分子鎖は長い方が好ましい。
【0041】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等が挙げられる。ポリシロキサン(A)の官能基がカルボン酸無水物基であり、かつポリアルキレングリコール(B)がポリテトラメチレングリコールである場合は、ポリシロキサン(A)およびポリテトラメチレングリコールに溶解し、反応性が向上する点から、オクタノール、ドデカノールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0042】
フェノール類としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、ジブチルヒドロキシトルエン、クレゾール、オイゲノール、グアイアコール、チモール、サリチル酸メチル、プロポフォール等が挙げられる。
【0043】
共重合成分(C)の添加量に特に制限は無いが、本発明のブロック共重合体の物性に影響を与えないために、少ないほうが好ましい。上限としては、ブロック共重合体を100質量%として、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。この範囲よりも添加量が多い場合は、得られるブロック共重合体の柔軟性が損なわれ、また未反応の共重合成分(C)が存在することでエポキシ樹脂との硬化反応が促進され、流動性が低下したり、靭性向上効果が低くなったりするため好ましくない。
【0044】
官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)が直接反応しない場合、ポリシロキサン(A)が有する官能基およびポリアルキレングリコール(B)が有する官能基の両方に反応する共重合成分(C)(以下、特に共重合成分(C’)と呼ぶ場合がある)を添加し、ポリシロキサン(A)、ポリアルキレングリコール(B)および共重合成分(C’)を反応させる方法を用いても構わない。すなわち、ポリシロキサン(A)とポリアルキレングリコール(B)が直接反応しなくても、共重合成分(C’)をポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)の両方と反応させることによって、ブロック共重合体を得ることができる。
【0045】
この場合、官能基を有するポリシロキサン(A)とポリアルキレングリコール(B)が原料のみで均一に混合でき、均質に共重合できることから、Rが分岐したプロピレン基であるポリプロピレングリコールをポリアルキレングリコール(B)として用いることが最も好ましい。また、得られるブロック共重合体のエポキシ樹脂への微分散化や低弾性率化効果がより良好になることからも、ポリアルキレングリコール(B)としては、ポリプロピレングリコールが好ましい。ブロック成分であるポリシロキサン(A)とポリプロピレングリコール同士が均質に混合できるため、得られたブロック共重合体において、エポキシ樹脂への相溶性に劣るポリシロキサン(A)の性質が、エポキシ樹脂への相溶性が良好なポリプロピレングリコールによって改善されることにより、エポキシ樹脂への微分散が可能になり、低弾性率化がより顕著に発現すると考えられる。ポリシロキサン(A)の官能基およびポリアルキレングリコール(B)の官能基がいずれも水酸基である場合は、共重合成分(C’)として、両末端がカルボン酸無水物基である化合物を用いることが、副反応の原因となる反応促進剤の金属触媒等を使用すること無く、カルボキシル基を含有した本発明のブロック共重合体を得られる点から好ましい。
【0046】
共重合成分(C’)としては、上記共重合成分(C)として例示したもののうち、官能基を有するポリシロキサン(A)および官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の両方と反応するものであれば特に制限はしないが、有機溶媒を使用することなく反応を進行させることができる点で、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれるいずれかのカルボン酸無水物であることが好ましい。得られるブロック共重合体に柔軟性を付与できる点や有機溶媒を使用することなく共重合が可能な点からピロメリット酸二無水物であることが最も好ましい。共重合成分(C’)は、2種以上を用いても良い。
【0047】
ブロック共重合体中の共重合成分(C’)由来の構造の含有量は、ブロック共重合体を100質量%として、30質量%以下が好ましい。共重合成分(C’)由来の構造の含有量が多いと、ブロック共重合体の低弾性率化効果が損なわれるため好ましくない。含有量が少ないと、微分散せずブリードアウトが発生するため好ましくない。含有量は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましく、10質量%以下が最も好ましい。
【0048】
本発明のポリシロキサン−ポリアルキレングリコールブロック共重合体は、好ましくは、一般式(3)で表される構造を含むマルチブロック共重合体である。
【0049】
【化3】
【0050】
ここで、nは5〜100、mは3〜300、pは5〜100の繰り返し単位数をそれぞれ表す。また、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基であり、それぞれ同一であっても異なっていても良い。Zは官能基を有するポリシロキサン(A)および官能基を有するポリアルキレングリコール(B)が反応することにより生成する結合部である。ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)が直接反応し、結合する場合は、ポリシロキサン(A)の前記Xとポリアルキレングリコール(B)の前記Yが反応した残基が結合部Zとなる。また、ポリシロキサン(A)とポリアルキレングリコール(B)が直接反応せず、共重合成分(C’)を介して結合する場合は、ポリシロキサン(A)の前記X、ポリアルキレングリコール(B)の前記Yおよび共重合成分(C’)が反応した残基が結合部Zとなる。結合部Zは、この反応の結果として、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合およびチオエステル結合から選ばれるいずれかの結合を有する。さらに、Zは、この反応の結果として新たにカルボキシル基および/または水酸基を生成する場合、そのカルボキシル基および/または水酸基も含む。またすべてのZは同じであっても異なっていても良い。Rは、単結合、炭素数1〜10の2価の脂肪族または芳香族炭化水素基および炭素数1〜10の2価の炭化水素エーテル基から選ばれる基である。Rはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。Rは、直鎖または分岐を有する炭素数2〜10のアルキル基であり、Rはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。好ましいR、RおよびRの例は、前記のとおりである。
【0051】
ここで言う、マルチブロック共重合体とは、繰り返し単位数であるpが2以上のものであり、好ましくはpが5以上である。pが1であるAB型ジブロック共重合体やABA型トリブロック共重合体は、マルチブロック共重合体とは呼ばない。
【0052】
本発明のブロック共重合体は、上記に記載したポリシロキサン(A)の官能基およびポリアルキレングリコール(B)の官能基共重合成分をブロック共重合体内に有し、さらに場合によっては、ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)が反応することにより新たに生成する官能基を有するため、両末端のみに官能基を有する共重合体に比べ、低分子量から高分子量のいずれの範囲においても、高い官能基含有量を有する。特にブロック共重合体を高分子量にした場合においても、多くの官能基を含有することができるため、エポキシ樹脂への分散性に優れ、エポキシ樹脂硬化物からのブロック共重合体のブリードアウトが抑制され、高い低応力化と高い靭性向上の効果が得られる。また下記の好ましい範囲の重量平均分子量と官能基量を有するブロック共重合体は、上記の特性に加えて、エポキシ樹脂組成物中の流動性維持やブロック共重合体の耐熱性の向上、ならびに得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度Tgの低下や線膨張係数の増加を抑制することができる。
【0053】
本発明のブロック共重合体の重量平均分子量(M)は、特に制限はないが、ブロック共重合体を添加したエポキシ樹脂硬化物の機械物性および流動性の観点から、その下限値は好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上であり、より好ましくは、15,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上であり、特に好ましくは30,000以上である。また、その上限は、好ましくは500,000以下であり、より好ましくは200,000以下であり、より好ましくは150,000以下であり、さらに好ましくは100,000以下であり、最も好ましくは80,000以下である。この範囲よりも重量平均分子量が小さい場合は、ブロック共重合体を添加したエポキシ樹脂硬化物の低弾性率化や靭性向上効果が低くなる。この範囲よりも重量平均分子量が大きい場合は、エポキシ樹脂に添加したエポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、封止材成形時に細部にまで浸透させることができず、クラックの原因となるため好ましくない。
【0054】
なお、ここで言うブロック共重合体の重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、ポリメタクリル酸メチルで換算した重量平均分子量を指す。
【0055】
テトラヒドロフラン(THF)で測定できない場合は、溶媒としてジメチルホルムアミドを用い、それでも測定できない場合は、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いる。
【0056】
また、本発明のブロック共重合体の分子量分布(M/M)は、5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。またその下限値は1である。なお、分子量分布(M/M)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて上記のとおり測定した重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)から算出する。
【0057】
本発明のブロック共重合体は、官能基含有量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下であることが好ましい。その下限値は、より好ましくは0.2mmol/g以上であり、さらに好ましくは0.3mmol/g以上である。またその上限値は、より好ましくは3.0mmol/g以下であり、さらに好ましくは2.8mmol/g以下であり、特に好ましくは2.5mmol/g以下である。
【0058】
官能基含有量がこの範囲より高い場合は、エポキシ樹脂組成物を作製する際に、エポキシ樹脂との副反応による流動性悪化や、官能基による耐熱性低下が生じるため好ましくない。官能基含有量がこの範囲より低い場合は、エポキシ樹脂への分散性が低下し、エポキシ樹脂組成物や硬化物中におけるブロック共重合体の粗大分散化やエポキシ樹脂硬化物からのブロック共重合体のブリードアウトが発生するため好ましくない。
【0059】
ここで、官能基含有量は、ブロック共重合体に含まれる、官能基を有するポリシロキサン(A)由来の官能基、官能基を有するポリアルキレングリコール(B)由来の官能基、共重合成分(C)由来の官能基、およびこれらが反応することにより新たに生成する官能基の全ての含有量の合計である。ブロック共重合体が、官能基として、カルボキシル基のみを含む場合は、カルボキシル基の含有量が官能基含有量となる。また、ブロック共重合体に、カルボキシル基と水酸基のように複数の官能基を含む場合は、それぞれの官能基含有量の合計をブロック共重合体に含まれる官能基含有量とする。ポリシロキサン(A)およびポリアルキレングリコール(B)の反応によって、新たにカルボキシル基または水酸基が生成する組み合わせを採用すると、官能基含有量を高くすることが容易であり、ブロック共重合体の分散性が良好になり、靭性が向上しブリードアウトが抑制されるので、好ましい。
【0060】
官能基含有量は、公知の滴定法により求めることができる。例えば、カルボキシル基を定量する場合は、ブロック共重合体をトルエンまたはテトラヒドロフランに溶解し、0.1mol/Lのアルコール性水酸化カリウムでフェノールフタレインを指示薬として滴定する。また、エポキシ基を定量する場合は、JIS K 7236に準ずる方法にて定量することができ、水酸基を定量する場合は、JIS K 0070に準ずる方法にて定量することができる。
【0061】
さらに目的とする用途に応じて、官能基の含有量を、ブロック共重合体を合成する前後に調整することが可能である。例えば原料となる官能基を有するポリシロキサン(A)および/または官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の重量平均分子量を調整することで、得られるブロック共重合体の官能基含有量を調整することが可能である。
【0062】
また、合成後のブロック共重合体の官能基の一部を公知の方法で保護することにより、官能基の含有量を調整することも可能である。例えば、ブロック共重合体中の官能基がカルボキシル基である場合は、1価のアルコールと酸触媒存在下で減圧しながら加熱し、エステル化反応させる方法や、特開2000−119520に挙げられているように、N,N−ジメチルホルムアミドジアルキルアセタールを用いて、カルボキシル基を保護する方法が挙げられる。中でも、金属触媒を使用せず温和な条件で処理することができるという点から、N,N−ジメチルホルムアミドジアルキルアセタールを用いて、カルボキシル基を保護する方法が最も有用である。
【0063】
本発明のブロック共重合体は、上述のとおりエポキシ樹脂硬化物からのブリードアウトが発生しないという効果を有する。エポキシ樹脂硬化物からのブロック共重合体のブリードアウトの発生の有無は、以下の方法にて判断できる。簡易的な確認方法としては、エポキシ樹脂硬化物の超薄切片を作製し、超薄切片をヘキサン中に15分間含浸させた後、走査型電子顕微鏡で観察する。ブリードアウトが発生している場合は、ブロック共重合体が存在していた部分がヘキサンにより抽出され、空洞となり真球状の凹凸が見られる。凹凸が観察された場合は、ブリードアウト有り、観察されない場合は、ブリードアウト無しと判断する。定量的な確認方法としては、エポキシ樹脂硬化物をクロロホルム中に1日浸漬した後に、クロロホルムに溶解したブロック共重合体の質量を測定し、組成から計算したエポキシ樹脂硬化物中のブロック共重合体の質量に対して、クロロホルム中に溶解したブロック共重合体の質量が5質量%以上の場合は、ブリードアウト有り、5質量%未満の場合は、ブリードアウト無しと判断する。ブリードアウトが少ない方が、エポキシ樹脂硬化物の弾性率の低下や靭性向上に加え、品質の向上の点から好ましい。ブリードアウトは、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0064】
本発明のブロック共重合体におけるポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は、ブロック共重合体全体を100質量%として、下限値は20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。また上限値としては、90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量が少なすぎる場合は、ブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加して硬化物を作製しても、ブロック共重合体添加による低弾性率化効果が十分に発揮されず、低応力化剤としての機能が十分でない。また、ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量が多すぎる場合は、ブロック共重合体をエポキシ樹脂に添加した際に、エポキシ樹脂への分散性が十分でなく、ブロック共重合体が微分散しないことにより、それを硬化させて硬化物を作製しても、ブロック共重合体添加による靭性向上効果が十分に発揮されない。あるいは、ブリードアウトを引き起こし、エポキシ樹脂硬化物を得ることができない。
【0065】
本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂への分散性を向上させつつ、耐熱性を損なわないという効果がある。ここで言う耐熱性は、ブロック共重合体の熱分解温度を測定することで評価できる。具体的には、熱重量測定装置(TGA)を用いて、ブロック共重合体を測定し、30℃における質量に対して5質量%減少したときの温度を、5%重量減少温度として評価する。この5%重量減少温度が高いほど耐熱性に優れている。5%重量減少温度は、好ましくは250℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上、著しく好ましくは400℃以上である。5%重量減少温度が250℃よりも低い場合は、低応力化剤として使用した際に、半導体の作動中、ポリマーが分解しパッケージの破損に繋がる場合があるため好ましくない。
【0066】
本発明のブロック共重合体は、前記官能基を有するポリシロキサン(A)および前記官能基を有するポリアルキレングリコール(B)を反応させることで製造できる。反応の方法としては、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)を混合し、加熱することで反応させる方法などを挙げることができ、必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また必要に応じて、窒素雰囲気下で反応させても良く、反応を促進させるために減圧下で行っても良い。
【0067】
また、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の混合比は、適宜調整は可能であるが、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)が直接反応し、結合する場合は、化学量論的な当量比が、0.1〜10の間になるような混合比であることが好ましい。ここで、化学量論的な当量比とは、ポリシロキサン(A)に含まれる官能基のモル数に対するポリアルキレングリコール(B)に含まれる官能基のモル数の比率を指す。特に、得られるブロック共重合体の重量平均分子量が増大する点で、当量比は0.2〜5であることがより好ましく、0.5〜3であることがさらに好ましく、0.8〜1.5であることが最も好ましく、1であることが著しく好ましい。
【0068】
一方、官能基を有するポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)が直接反応せず、共重合成分(C’)が官能基を有するポリシロキサン(A)および官能基を有するポリアルキレングリコール(B)と反応し、結合する場合は、ポリシロキサン(A)と官能基を有するポリアルキレングリコール(B)に含まれる官能基のモル数の合計に対する共重合成分(C’)に含まれる官能基のモル数の当量比が、0.2〜5であることがより好ましく、0.5〜3であることがさらに好ましく、0.8〜1.5であることが最も好ましく、1であることが著しく好ましい。
【0069】
なお、得られるブロック共重合体100質量%中に含まれる、ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量が20質量%以上90質量%以下にするために、前記ポリシロキサン(A)、前記ポリアルキレングリコール(B)および前記共重合成分(C)の合計を100質量%として、前記ポリシロキサン(A)の量が20質量%以上90質量%以下になるように、原料を混合し、反応させることが好ましい。
【0070】
反応に有機溶媒を用いる場合、有機溶媒としては、官能基を有するポリシロキサン(A)および官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の良溶媒であることが好ましい。例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、2−メチルナフタレン等の炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶媒;クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、プロピレンカーボネート、トリメチルリン酸、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等のカルボン酸溶媒;アニソール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ハイドロゲンスルフェート、1−エチル−3−イミダゾリウム アセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム チオシアネートなどのイオン性液体;あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0071】
中でも反応速度および反応後の溶媒除去のバランスから、トルエン、キシレンまたは酢酸エチルが好ましい。また、これら有機溶媒は、1種のみ用いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0072】
なお、有機溶媒中で反応させた際は、加熱、減圧、再沈殿等、公知の方法で有機溶媒を除去し、精製することができる。有機溶媒を除去するために複数の工程を組み合わせても良い。
【0073】
ただし、有機溶媒を使用しない方が、上記有機溶媒を除去するための精製工程を必要とせず、製造工程が簡略である点、および、反応温度の高温化が可能であり、反応促進剤の金属触媒を使用しない系においても反応速度を高速化することができる点から、生産性が向上するため好ましい。
【0074】
官能基を有するポリシロキサン(A)および官能基を有するポリアルキレングリコール(B)を反応させる温度は、それぞれが有する官能基の組み合わせに依るため特に制限はないが、副反応やポリマーの分解を抑制するために220℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また室温以下で反応が進行する場合は、室温で安定に保存することが困難であることから、室温では反応が進行しないことが好ましい。反応させる温度の下限値としては、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、さらに好ましくは100℃以上である。
【0075】
また、反応時に反応促進剤等を添加しても良いが、ポリシロキサン(A)の官能基およびポリアルキレングリコール(B)の官能基の組み合わせ次第で、反応促進剤を添加しなくても、容易に目的のブロック共重合体を得ることが可能である。
【0076】
なお、例示するならば、ポリシロキサン(A)の官能基がエポキシ基であって、ポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基の場合は、反応促進剤として、ナトリウムや水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化カリウム等が挙げられる。ポリシロキサン(A)の官能基がカルボキシル基であって、ポリアルキレングリコール(B)の官能基が水酸基の場合は、反応促進剤として、チタン、亜鉛などの酸性の金属触媒や、硫酸やリン酸、塩酸、アルミナ、ゼオライト等の触媒が挙げられる。このように、官能基共重合成分の組合せ次第では、ブロック共重合体を得るためには、反応促進剤として金属触媒を用いることが好ましい。ただし、反応促進剤としての金属触媒を使用した場合は、例えば得られたブロック共重合体を半導体封止材等の各種添加剤として使用した際に、金属触媒が残存していると、電気特性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。したがって、上記のとおり、反応促進剤である金属触媒を用いずに反応させることが好ましい。
【0077】
また反応時間は、ポリシロキサン(A)の官能基およびポリアルキレングリコール(B)の官能基の組み合わせによるが、生産性の観点から20時間以内であることが好ましく、より好ましくは15時間以内であり、さらに好ましくは10時間以内である。
【0078】
本発明のブロック共重合体は、柔軟な2種のポリマーを反応させて製造しているため、エポキシ樹脂に添加することにより、その硬化物に低弾性率化効果および靭性向上効果を発現させることができる。エポキシ樹脂に相溶または微細に分散することにより、材料物性にばらつきがなく、少量のブロック共重合体の添加で、エポキシ樹脂硬化物に効率的に弾性率の低下および靭性の向上を実現させ、内部応力を緩和することができる。さらに、本発明のブロック共重合体がエポキシ樹脂中に相溶または微細に分散しているため、得られるエポキシ樹脂組成物は流動性に優れており取扱い性が向上する。
【0079】
本発明のエポキシ樹脂組成物とは、後述のエポキシ樹脂と本発明のブロック共重合体を混合したものであり、硬化反応をさせる前の混合物を指す。
【0080】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる、ブロック共重合体の好ましい量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部であり、好ましくは0.1〜40質量部であり、より好ましくは0.5〜30質量部であり、さらに好ましくは0.5〜20質量部である。エポキシ樹脂組成物に、この範囲のブロック共重合体を含むことで、エポキシ樹脂組成物を硬化させたエポキシ樹脂硬化物において、効率よく内部応力を緩和させることができる。
【0081】
エポキシ樹脂としては、特に制限はされないが、例えば、分子内に水酸基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に二重結合を有する化合物を酸化することから得られる脂環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプの基が分子内に混在するエポキシ樹脂などが用いられる。
【0082】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、4,4’−ビフェノールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるビフェニル型エポキシ樹脂、レゾルシノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、およびこれらの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体が挙げられる。
【0083】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)825、“jER”(登録商標)826、“jER”(登録商標)827、“jER”(登録商標)828(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン”(登録商標)850(DIC(株)製)、“エポトート”(登録商標)YD−128(新日鉄住金化学(株)製)、D.E.R−331(商標)(ダウケミカル社製)、“Bakelite”(登録商標)EPR154、“Bakelite”(登録商標)EPR162、“Bakelite”(登録商標)EPR172、“Bakelite”(登録商標)EPR173、および“Bakelite”(登録商標)EPR174(以上、Bakelite AG社製)などが挙げられる。
【0084】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)806、“jER”(登録商標)807、“jER”(登録商標)1750(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン”(登録商標)830(DIC(株)製)、“エポトート”(登録商標)YD−170、“エポトート”(登録商標)YD−175(新日鉄住金化学(株)製)、“Bakelite”(登録商標)EPR169(Bakelite AG社製)、“アラルダイト”(登録商標)GY281、“アラルダイト”(登録商標)GY282、および“アラルダイト”(登録商標)GY285(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0085】
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)YX4000、“jER”(登録商標)YX4000K、“jER”(登録商標)YX4000H、“jER”(登録商標)YX4000HK、“jER”(登録商標)YL6121H、“jER”(登録商標)YL6121HN(以上、三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0086】
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール”(登録商標)EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0087】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)152、“jER”(登録商標)154(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン”(登録商標)740(DIC(株)製)、およびEPN179、EPN180(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0088】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類、アミノフェノールのグリシジル化合物類、グリシジルアニリン類、およびキシレンジアミンのグリシジル化合物などが挙げられる。
【0089】
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類の市販品としては、“スミエポキシ”(登録商標)ELM434(住友化学(株)製)、“アラルダイト”(登録商標)MY720、“アラルダイト”(登録商標)MY721、“アラルダイト”(登録商標)MY9512、“アラルダイト”(登録商標)MY9612、“アラルダイト”(登録商標)MY9634、“アラルダイト”(登録商標)MY9663(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“jER”(登録商標)604(三菱ケミカル(株)製)、“Bakelite”(登録商標)EPR494、“Bakelite”(登録商標)EPR495、“Bakelite”(登録商標)EPR496、および“Bakelite”(登録商標)EPR497(以上、Bakelite AG社製)などが挙げられる。
【0090】
アミノフェノールのグリシジル化合物類の市販品としては、“jER”(登録商標)630(三菱ケミカル(株)製)、“アラルダイト”(登録商標)MY0500、“アラルダイト”(登録商標)MY0510(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“スミエポキシ”(登録商標)ELM120、および“スミエポキシ”(登録商標)ELM100(以上住友化学(株)製)などが挙げられる。
【0091】
グリシジルアニリン類の市販品としては、GAN、GOT(以上、日本化薬(株)製)や“Bakelite”(登録商標)EPR493(Bakelite AG社製)などが挙げられる。
【0092】
キシレンジアミンのグリシジル化合物としては、TETRAD−X(三菱瓦斯化学(株)製)が挙げられる。
【0093】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂の具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステルや、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルやそれぞれの各種異性体が挙げられる。
【0094】
フタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、“エポミック”(登録商標)R508(三井化学(株)製)や“デナコール”(登録商標)EX−721(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0095】
ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、“エポミック”R540(三井化学(株)製)やAK−601(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0096】
ダイマー酸ジグリシジルエステルの市販品としては、“jER”(登録商標)871(三菱ケミカル(株)製)や“エポトート”(登録商標)YD−171(新日鉄住金化学(株)製)などが挙げられる。
【0097】
脂環式エポキシ樹脂の市販品としては、“セロキサイド”(登録商標)2021P((株)ダイセル製)、CY179(ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ社製)、“セロキサイド”(登録商標)2081((株)ダイセル製)、および“セロキサイド”(登録商標)3000((株)ダイセル製)などが挙げられる。
【0098】
エポキシ樹脂としては、耐熱性、靱性および低リフロー性の点からビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびビスフェノールS型エポキシ樹脂から選ばれた樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。上記エポキシ樹脂は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0099】
エポキシ樹脂組成物には、硬化剤および/または硬化促進剤を添加することができる。
【0100】
エポキシ樹脂硬化剤としては、ジエチレントリアミンやトリエチレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン系硬化剤;メンセンジアミンやイソホロンジアミンなどの脂環族ポリアミン系硬化剤;ジアミノジフェニルメタンやm−フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン系硬化剤;ポリアミド、変性ポリアミン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸や無水トリメリット酸などの酸無水物系硬化剤;フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂などのポリフェノール系硬化剤;ポリメルカプタン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−エチル−4−メチルイミダゾールや2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのアニオン型触媒;3フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体などのカチオン型触媒;ジシアンジアミド、芳香族ジアゾニウム塩やモレキュラーシーブなどの潜在型硬化剤などが挙げられる。
【0101】
特に機械物性に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるという面で、芳香族アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤およびポリフェノール系硬化剤から選ばれた硬化剤が好ましく用いられる。特に好ましくは、保存安定性に優れることからフェノールノボラック樹脂およびフェノールアラルキル樹脂から選ばれた硬化剤である。
【0102】
芳香族系アミン硬化剤の具体例を挙げると、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、ジフェニル−p−ジアニリンやこれらのアルキル置換体などの各種誘導体やアミノ基の位置の異なる異性体が挙げられる。
【0103】
酸無水物系硬化剤の具体例を挙げると、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0104】
ポリフェノール系硬化剤の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、1−ナフトールアラルキル樹脂、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ナフトールノボラック型樹脂などが挙げられる。
【0105】
硬化剤の添加量の最適値は、エポキシ樹脂、および硬化剤の種類により異なるが、化学量論的な当量比が、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基に対して0.5〜1.4の間にあることが好ましく、0.6〜1.4であることがより好ましい。当量比が、0.5よりも小さい場合、硬化反応が十分に起こらず、硬化不良が発生したり、硬化反応に長時間を要したりする場合がある。当量比が、1.4よりも大きい場合は、硬化時に消費されなかった硬化剤が欠陥となり、機械物性を低下させることがある。
【0106】
硬化剤はモノマーおよびオリゴマーのいずれの形でも使用でき、混合時は粉体、液体いずれの形態でも良い。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、硬化促進剤を併用しても良い。
【0107】
硬化促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7に代表されるアミン化合物系硬化促進剤;2−メチルイミダゾールや2−エチル−4−メチルイミダゾールに代表されるイミダゾール化合物系硬化促進剤;トリフェニルホスファイトに代表されるリン化合物系硬化促進剤等を用いることができる。なかでも、リン化合物系硬化促進剤が最も好ましい。
【0108】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、エポキシ樹脂およびブロック共重合体以外の難燃剤、充填剤、着色剤、離型剤等などの各種添加剤を加えてもよい。
【0109】
充填剤としては、特に制限はないが、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニアなどの粉末や微粒子が用いられる。これら充填剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、線膨張係数を下げることから、溶融シリカを用いることが好ましい。また充填剤の形状としては、成形時の流動性、磨耗性の観点から球状であることが好ましい。
【0110】
充填剤の配合量は、吸湿率の低下、線膨張係数の低減、強度向上の観点から、エポキシ樹脂100質量部に対し、好ましくは20質量部〜2000質量部、より好ましくは、50〜2000質量部、さらに好ましくは100〜2000質量部、特に好ましくは100〜1000質量部、最も好ましくは500〜800質量部である。
【0111】
その他の添加剤の例としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、ヒンダードアミン系劣化防止剤、ヒンダードフェノール系劣化防止剤などが挙げられる。
【0112】
これらの添加剤は、エポキシ樹脂組成物の硬化前の段階で加えることが好ましく、粉体、液体、スラリー体のいずれの形態で加えても良い。
【0113】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、流動性が良く、取扱い性に優れている。半導体封止材に用いる際、流動性が悪い場合は、細部にまでエポキシ樹脂組成物を充填することができず、ボイドの原因となりパッケージの破損に繋がるおそれがある。本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂に添加した際の、添加による粘度上昇が小さく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0114】
本発明における流動性は、レオメーターによる粘度測定により評価することができる。具体的には、半導体封止材の成形温度付近である175℃において、ブロック共重合体を含まないエポキシ樹脂組成物の粘度、およびエポキシ樹脂組成物100質量部に対し、ブロック共重合体を15質量部含んだエポキシ樹脂組成物の粘度を測定する。なお、エポキシ樹脂硬化剤を含む場合は、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤の合計100質量部に対し、ブロック共重合体を15質量部含んだエポキシ樹脂組成物の粘度を測定する。ブロック共重合体を含まない場合に対する、ブロック共重合体を15質量部含む場合の、組成物の粘度の上昇割合で流動性を評価する。粘度の具体的な上昇割合の上限としては、好ましくは15倍以下、より好ましくは13倍以下、さらに好ましくは10倍以下、最も好ましくは8倍以下である。下限は1倍以上であり、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上、最も好ましくは2.5倍以上である。粘度の上昇割合が大きい場合は、得られるエポキシ樹脂組成物の流動性が悪く、封止材成形時に細部にまで浸透させることができず、クラックの原因となるため好ましくない。また、粘度の上昇割合が小さい場合は、得られるエポキシ樹脂硬化物の弾性率低下効果や靭性向上効果が低くなるため、好ましくない。
【0115】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂および/または硬化剤中に上記ブロック共重合体を添加し、通常公知の混練機を用いて混練することにより作製することができる。混練機としては、3本ロール混練機、自公転式ミキサー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。
【0116】
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、上記のエポキシ樹脂組成物を硬化反応させてなるものである。
【0117】
エポキシ樹脂硬化物を得るための硬化反応を進めるためには、必要に応じて温度をかけてもよい。その際の温度としては、好ましくは室温〜250℃、より好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜190℃、特に好ましくは100〜180℃である。また必要に応じて、温度の昇温プログラムをかけてもよい。その際の昇温速度は、特に制限はされないが、好ましくは0.5〜20℃/分であり、より好ましくは0.5〜10℃/分であり、さらに好ましくは1.0〜5℃/分である。
【0118】
また硬化時の圧力は、好ましくは1〜100kg/cm、より好ましくは1〜50kg/cm、さらに好ましくは1〜20kg/cm、特に好ましくは1〜5kg/cmである。
【0119】
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、内部でブロック共重合体が均質に微分散している。均質かつ微細に分散しているかどうかは、硬化後の樹脂板を四酸化ルテニウムにて染色し、その断面を透過型電子顕微鏡で得た写真で確認することにより、判断できる。四酸化ルテニウムによる染色により、ポリシロキサンドメインが染色される。ポリシロキサンドメインの平均ドメイン径は、微細であるほど靭性向上効果が発現するために好ましい。ポリシロキサンドメインの平均ドメイン径は、上述の透過型電子顕微鏡(TEM)写真から任意100個のドメインの直径を特定し、下式に従い、算術平均を求めることにより算出することができる。ドメインが真球状でない場合は、ドメインの最大径をその直径とする。
【0120】
【数1】
【0121】
なお、Ri:ドメイン個々の直径、n:測定数100、Dn:平均ドメイン径とする。
【0122】
本手法により求められたポリシロキサンドメインの平均ドメイン径は、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下であり、特に好ましくは500nm以下であり、著しく好ましくは200nm以下であり、最も好ましくは100nm以下である。
【0123】
上述の方法を用いた分散状態の測定が困難である場合は、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いてブロック共重合体のエポキシ樹脂硬化物中での分散状態を確認することができる。具体的には、ブロック共重合体を添加したエポキシ樹脂硬化物の断面を、EDXを用いて観察し、ケイ素でマッピングをすることで、ブロック共重合体の分散状態を判断する。
【0124】
本発明の半導体封止材は、本発明のエポキシ樹脂硬化物からなる。本発明のエポキシ樹脂硬化物は、内部に分散したブロック共重合体が低応力化剤の働きをすることにより、半導体封止材に好適な材料として使用される。ここでいう半導体封止材とは、半導体素子などの電子部品を外部刺激から保護するために封止する材料をさす。
【0125】
以上、本発明のブロック共重合体は、柔軟性のある官能基を有するポリシロキサン(A)、および柔軟性があり、かつエポキシ樹脂に相溶する官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の反応によって得られ、高分子量にしても、分子内に豊富な官能基を存在させることが可能であることによって、エポキシ樹脂への分散性に非常に優れている。また、本発明のブロック共重合体とエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物は、優れた流動性を有し、ブロック共重合体添加による流動性の低下が小さく、取扱い性に優れる。さらに、このエポキシ樹脂組成物を硬化させたエポキシ樹脂硬化物は、添加したブロック共重合体が微分散され、ブリードアウトも抑制され、エポキシ樹脂硬化物の低弾性率化だけではなく、靭性向上効果も発現する。これらのことから、本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂の低応力化剤として極めて有用である。
【実施例】
【0126】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、用いる測定方法は下記のとおりである。
【0127】
(1)重量平均分子量の測定
ブロック共重合体および官能基を有するポリシロキサン(A)および官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法を用いて、下記条件にて測定し、ポリメタクリル酸メチルによる較正曲線と対比させて分子量を算出した。
【0128】
装置:株式会社島津製作所 LC−20ADシリーズ
カラム:昭和電工株式会社 KF−806L×2
流速:1.0mL/min
移動相:テトラヒドロフラン
検出:示差屈折率計
カラム温度:40℃。
【0129】
(2)官能基含有量の定量
ブロック共重合体0.5gをテトラヒドロフラン10gに溶解し、0.1mol/Lのアルコール性水酸化カリウムでフェノールフタレインを指示薬として滴定し、カルボン酸含有量を定量した。
【0130】
(3)5%重量減少温度の測定
ブロック共重合体および官能基を有するポリシロキサン(A)および官能基を有するポリアルキレングリコール(B)の5%重量減少温度は、熱重量測定装置(株式会社島津製作所製 島津自動示差・熱重量同時測定装置DTG−60)を用いて下記条件にて測定し、評価した。
【0131】
サンプル量:10mg
測定温度:20℃〜500℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素。
【0132】
(4)粘度測定
各実施例に示した混合比でエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤を混合した組成物の粘度を、レオメーター(Anton Paar社製 MCR501)を用いて下記条件にて測定し、175℃における粘度を求めた。次に同じエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤の合計100質量部に対して、ブロック共重合体を15質量部添加したエポキシ樹脂組成物の粘度を、同様に測定した。ブロック共重合体を含まない場合に対する、ブロック共重合体を15質量部含む場合の、組成物の粘度の上昇割合の倍率を求めた。
【0133】
治具:φ25mmパラレルプレート
周波数:0.5Hz
ひずみ:100%
ギャップ:1mm
測定温度:70℃〜220℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素。
【0134】
(5)曲げ弾性率および破断点歪みの測定
ブロック共重合体が分散したエポキシ樹脂硬化物を幅10mm、長さ80mm、厚さ4mmにカットし試験片を得た。テンシロン万能試験機(TENSIRON TRG−1250、エー・アンド・デイ社製)を用い、JIS K7171(2008)に従い、支点間距離64mm、試験速度2mm/分の条件で3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率および破断点歪みを測定した。測定温度は室温(23℃)、測定数はn=5とし、その平均値を求めた。
【0135】
(6)硬化物におけるポリシロキサンドメインの平均ドメイン径の測長
ブロック共重合体が分散したエポキシ樹脂硬化物を四酸化ルテニウムにて染色し、その断面を透過型電子顕微鏡で得た写真から、任意の100個のポリシロキサンドメインの直径を測長し、下式に従い、算出した。
【0136】
【数2】
【0137】
なお、Ri:ドメイン個々の直径、n:測定数100、Dn:平均ドメイン径とする。
【0138】
(7)ブリードアウト発生の有無の確認方法
ブロック共重合体が分散したエポキシ樹脂硬化物3gをクロロホルム5gに1日浸漬した後に、クロロホルムを分離し、溶媒を蒸発除去することで、クロロホルム中に溶解したブロック共重合体の質量を測定した。組成から計算したエポキシ樹脂硬化物中のブロック共重合体の質量に対して、クロロホルム中に溶解したブロック共重合体の質量が5質量%以上の場合、ブリードアウト有り、5質量%未満の場合はブリードアウト無しと評価した。
【0139】
[製造例1](ブロック共重合体の合成1)
100mLの2つ口フラスコ中に、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)を5.0g、ポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド1,000、重量平均分子量2700、5%重量減少温度275℃)を5.0g、およびトルエン40gを加え、窒素置換を行った。その後、120℃に加熱し8時間反応させ、無色透明液体を得た。エバポレータにて、トルエンを除去後、80℃の真空乾燥機にて18時間乾燥し、トルエンを完全に除去した。得られたブロック共重合体は無色透明な液体であり、ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は50質量%、重量平均分子量は46,000、5%重量減少温度は309℃、カルボン酸含有量は1.01mmol/gであった。
【0140】
[製造例2](ブロック共重合体の合成2)
100mLの2つ口フラスコ中に、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)を10.0g、およびポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド1,000、重量平均分子量2700、5%重量減少温度275℃)を10.0g加え、窒素置換を行った。その後、120℃に加熱し8時間反応させ、無色透明液体を得た。得られたブロック共重合体のポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は50質量%、重量平均分子量は49,000、5%重量減少温度は313℃、カルボン酸含有量は1.01mmol/gであった。
【0141】
[製造例3](ブロック共重合体の合成3)
100mLの2つ口フラスコ中に、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)を2.5g、およびポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド2,900、重量平均分子量12500、5%重量減少温度299℃)を7.5g加え、窒素置換を行った。その後、160℃に加熱し8時間反応させ、無色透明液体を得た。得られたブロック共重合体のポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は25質量%、重量平均分子量は30,000、5%重量減少温度は325℃、カルボン酸含有量は0.51mmol/gであった。
【0142】
[製造例4](ブロック共重合体の合成4)
100mLの2つ口フラスコ中に、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)を5.0g、ポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド2,000、重量平均分子量7300、5%重量減少温度293℃)を10.0g、およびトルエン60gを加え、窒素置換を行った。その後、120℃に加熱し8時間反応させ、無色透明液体を得た。エバポレータにて、トルエンを除去後、80℃の真空乾燥機にて18時間乾燥し、トルエンを完全に除去した。得られたブロック共重合体は無色透明な液体であり、ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は33質量%、重量平均分子量は53,000、5%重量減少温度は311℃、カルボン酸含有量は0.71mmol/gであった。
【0143】
[製造例5](ブロック共重合体の合成5)
100mLの2つ口フラスコ中に、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)を10.0g、ポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド650、重量平均分子量1600、5%重量減少温度263℃)を6.5g、およびトルエン66gを加え、窒素置換を行った。その後、120℃に加熱し8時間反応させ、無色透明液体を得た。エバポレータにて、トルエンを除去後、80℃の真空乾燥機にて18時間乾燥し、トルエンを完全に除去した。得られたブロック共重合体は無色透明な液体であり、ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は61質量%、重量平均分子量は49,000、5%重量減少温度は312℃、カルボン酸含有量は0.68mmol/gであった。
【0144】
[製造例6](ブロック共重合体の合成6)
100mLの2つ口フラスコ中に、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)を2.0g、ポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド1000、重量平均分子量2700、5%重量減少温度275℃)を6.93g、およびピロメリット酸二無水物(東京化成工業株式会社製)1.07gを加え、窒素置換を行った。その後、120℃に加熱し8時間反応させ、ブロック共重合体を得た。ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は20質量%、重量平均分子量は106,000、5%重量減少温度は285℃、カルボン酸含有量は0.98mmol/gであった。
【0145】
[製造例7](ブロック共重合体の合成7)
100mLの2つ口フラスコ中に、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)を2.0g、ポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド1000、重量平均分子量2700、5%重量減少温度275℃)を6.93g、およびピロメリット酸二無水物(東京化成工業株式会社製)1.07gを加え、窒素置換を行った。その後、160℃に加熱し3時間反応させ、ブロック共重合体を得た。ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は20質量%、重量平均分子量は182,000、5%重量減少温度は289℃、カルボン酸含有量は0.98mmol/gであった。
【0146】
[製造例8](ブロック共重合体の合成8)
100mLの2つ口フラスコ中に、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)を10.0g、ポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド1000、重量平均分子量2700、5%重量減少温度275℃)を10.0g、および無水コハク酸(東京化成工業株式会社製)0.2gを加え、窒素置換を行った。その後、120℃に加熱し8時間反応させ、ブロック共重合体を得た。ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は50質量%、重量平均分子量は33,000、5%重量減少温度は312℃、カルボン酸含有量は1.11mmol/gであった。
【0147】
[製造例9](ブロック共重合体の合成9)
100mLのセパラブルフラスコ中に、両末端水酸基変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−6001、重量平均分子量3000、5%重量減少温度298℃)を7.5g、およびポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリプロピレングリコール、ジオール型、2000、重量平均分子量3350、5%重量減少温度296℃)を6.0gを加え、均一溶液を得た。次に、ピロメリット酸二無水物(東京化成工業株式会社製)1.5gを加え、窒素置換を行った。その後、160℃に加熱し8時間反応させ、ブロック共重合体を得た。ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は50質量%、重量平均分子量は37,000、5%重量減少温度は289℃、カルボン酸含有量は0.95mmol/gであった。
【0148】
[製造例10](ブロック共重合体の合成10)
100mLのセパラブルフラスコ中に、両末端水酸基変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−6001、重量平均分子量3000、5%重量減少温度298℃)を7.5g、およびポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリプロピレングリコール、ジオール型、2000、重量平均分子量3350、5%重量減少温度296℃)を6.0gを加え、均一溶液を得た。次に、ピロメリット酸二無水物(東京化成工業社製)1.5g、n−オクタノール(和光純薬工業株式会社製)0.5gを加え、窒素置換を行った。その後、160℃に加熱し6時間反応させ、ブロック共重合体を得た。ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は48質量%、重量平均分子量は18,000、5%重量減少温度は274℃、カルボン酸含有量は0.80mmol/gであった。
【0149】
[製造例11](ブロック共重合体の合成11)
100mLのセパラブルフラスコ中に、両末端水酸基変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−6001、重量平均分子量3000、5%重量減少温度298℃)を6.0g、およびポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリプロピレングリコール、ジオール型、2000、重量平均分子量3350、5%重量減少温度296℃)を7.5g加え、均一溶液を得た。次に、ピロメリット酸二無水物(東京化成工業社製)を1.5g加え、窒素置換を行った。その後、160℃に加熱し8時間反応させ、ブロック共重合体を得た。ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は40質量%、重量平均分子量は28,000、5%重量減少温度は286℃、カルボン酸含有量は0.93mmol/gであった。
【0150】
[製造例12](ブロック共重合体の合成12)
100mLのセパラブルフラスコ中に、両末端水酸基変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−6001、重量平均分子量3000、5%重量減少温度298℃)を10.5g、およびポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリプロピレングリコール、ジオール型、2000、重量平均分子量3350、5%重量減少温度296℃)を2.9g加え、均一溶液を得た。次に、ピロメリット酸二無水物(東京化成工業社製)1.6gを加え、窒素置換を行った。その後、160℃に加熱し8時間反応させ、ブロック共重合体を得た。ポリシロキサン(A)由来の構造の含有量は70質量%、重量平均分子量は41,000、5%重量減少温度は276℃、カルボン酸含有量は1.01mmol/gであった。
【0151】
[実施例1](エポキシ樹脂硬化物の製造)
製造例1で得られたブロック共重合体9.0g、エポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、“jER”(登録商標)YX4000H)38.25g、および硬化剤としてフェノールノボラック型硬化剤(明和化成株式会社製、H−1)21.75gを150ccのステンレス製ビーカーに秤量し、120℃のオーブンにて溶解し、均一にした。その後、硬化促進剤としてテトラフェニルホスホニウム テトラ−p−トリルボレート0.3gを加え、撹拌棒により簡単に混ぜた後、自公転ミキサー「あわとり練太郎」(株式会社シンキー製)を用いて、2000rpm、80kPa、1.5分間の混合を1回、2000rpm、50kPa、1.5分間の撹拌を1回、2000rpm、0.2kPa、1.5分間の撹拌を2回行い、未硬化のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0152】
この未硬化エポキシ樹脂組成物を、4mm厚みの“テフロン”(登録商標)製スペーサー、離型フィルムをセットしたアルミ製モールド中に注型し、オーブンに入れた。オーブンの温度を80℃にセットし、5分間保持後、1.5℃/分の昇温速度で175℃まで昇温し、4時間硬化し、厚さ4mmのエポキシ樹脂硬化物を得た。
【0153】
得られたエポキシ樹脂硬化物を、幅10mm、長さ80mmにカットし、テンシロン万能試験機(TENSILON TRG−1250、エー・アンド・デイ社製)を用いて、JIS K7171(2008)に従い、3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.5GPa、破断点歪み13%であった。未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.125Pa・s、粘度の上昇割合は5.2倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は50nmであった。さらに、ブリードアウトの発生を確認した結果、凹凸は見られず、可溶分は0.7%でありブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
[実施例2](エポキシ樹脂硬化物2の製造)
ブロック共重合体を、製造例2で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.5GPa、破断点歪み11%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.139Pa・s、粘度の上昇割合は5.8倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は53nm(図1)、可溶分は0.2%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0156】
[実施例3](エポキシ樹脂硬化物3の製造)
ブロック共重合体を、製造例4で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.4GPa、破断点歪み15%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.106Pa・s、粘度の上昇割合は4.4倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は40nm、可溶分は0.5%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0157】
[実施例4](エポキシ樹脂硬化物4の製造)
ブロック共重合体を、製造例5で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.4GPa、破断点歪み11%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.064Pa・s、粘度の上昇割合は2.7倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は65nm、可溶分は1.2%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0158】
[実施例5](エポキシ樹脂硬化物5の製造)
ブロック共重合体を、製造例6で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率3.0GPa、破断点歪み12%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.356Pa・s、粘度の上昇割合は14.8倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は60nm、可溶分は0.2%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0159】
[実施例6](エポキシ樹脂硬化物6の製造)
ブロック共重合体を、製造例8で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.6GPa、破断点歪み15%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.06Pa・s、粘度の上昇割合は2.5倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は63nm、可溶分は0.5%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0160】
[実施例7](エポキシ樹脂硬化物7の製造)
ブロック共重合体を、製造例9で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.3GPa、破断点歪み10%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.104Pa・s、粘度の上昇割合は4.3倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は51nm(図2)、可溶分は0.2%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0161】
[実施例8](エポキシ樹脂硬化物8の製造)
ブロック共重合体を、製造例10で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.5GPa、破断点歪み12%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.072Pa・s、粘度の上昇割合は3.0倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は80nm、可溶分は0.8%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0162】
[実施例9](エポキシ樹脂硬化物9の製造)
ブロック共重合体を、製造例11で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.4GPa、破断点歪み10%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.087Pa・s、粘度の上昇割合は3.6倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は60nm、可溶分は1.0%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0163】
[実施例10](エポキシ樹脂硬化物10の製造)
ブロック共重合体を、製造例12で得られたブロック共重合体9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物を得た。ブリードアウトは発生しておらず、得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率および破断点歪みを測定したところ、曲げ弾性率2.0GPa、破断点歪み13%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.075Pa・s、粘度の上昇割合は3.1倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は163nm、可溶分は0.8%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0164】
[比較例1]
ブロック共重合体を、両末端無水マレイン酸変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、X−22−168AS、重量平均分子量1300、5%重量減少温度299℃)9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物を用いて、3点曲げ試験を実施したところ、曲げ弾性率は2.6GPa、破断点歪みは5.7%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は2相に分離しており、その粘度は0.032Pa・s、粘度の上昇割合は1.3倍であり、硬化物におけるポリシロキサンの平均ドメイン径は100μmと粗大であり、可溶分は0.3%でブリードアウトは発生していなかった。結果を表1に示す。
【0165】
[比較例2]
ブロック共重合体を、ポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレンオキシド1,000、重量平均分子量2700、5%重量減少温度275℃)9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製した。ブリードアウト発生の有無を確認した結果、可溶分は7%でブリードアウトは発生しており、得られたエポキシ樹脂硬化物を用いて、3点曲げ試験を実施したところ、曲げ弾性率は3.4GPa、破断点歪みは8.3%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は微分散しており、その粘度は0.021Pa・s、粘度の上昇割合は0.9倍であり、硬化物における可溶分は11.0%でブリードアウトが発生した。結果を表1に示す。
【0166】
[比較例3]
ブロック共重合体を、ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製、KF−96−200cs、重量平均分子量18000、カルボン酸含有量0mmol/g)9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製した。ブリードアウト発生の有無を確認した結果、真球状の凹凸が多数見られ、可溶分は46%でブリードアウトしていたため、曲げ試験は実施できなかった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は2相に分離しており、その粘度は0.029Pa・s、粘度の上昇割合は1.2倍であった。結果を表1に示す。
【0167】
[比較例4]
ブロック共重合体を、シリコーン粒子(東レ・ダウコーニング株式会社製 “トレフィル”(登録商標)EP2601)9.0gに代えたこと以外は実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物を用いて、3点曲げ試験を実施したところ、曲げ弾性率は2.3GPa、破断点歪みは7.2%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物は、シリコーン粒子とエポキシ組成物に分離しており、その粘度は0.49Pa・s、粘度の上昇割合は20.4倍であり、硬化物におけるシリコーン粒子の平均ドメイン径は10μmであった。結果を表1に示す。
【0168】
[比較例5]
ブロック共重合体を配合しないこと以外は実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物を用いて、3点曲げ試験を実施したところ、曲げ弾性率は2.9GPa、破断点歪みは9.5%であった。また未硬化のエポキシ樹脂組成物の粘度は0.024Pa・sであった。結果を表1に示す。
図1
図2