(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2電流抑制層が、前記半導体基板の前記下面に平行に前記半導体基板の全面に亘って設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体集積回路。
前記第1及び第2電流抑制層の少なくとも一方が、前記第1ウエル領域直下の前記半導体基板に局所的に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体集積回路。
前記半導体基板の上部に前記第1ウエル領域から離間して設けられ、且つ基準電位が印加される第2導電型の分離領域を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体集積回路。
前記半導体層の上部から前記半導体基板に亘って設けられ、且つ基準電位が印加される第2導電型の分離領域を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の半導体集積回路。
前記第1ウエル領域には第1電位が印加され、前記第2ウエル領域には前記第1電位とは異なる第2電位が印加されることを特徴とする請求項6又は請求項8に記載の半導体集積回路。
前記第1電位及び前記第2電位は、前記第1ウエル領域と前記第2ウエル領域との間のpn接合界面部が通常動作で逆バイアスされる電位であることを特徴とする請求項9に記載の半導体集積回路。
前記第1ウエル領域と前記第1電流抑制層との間の距離は、前記第1ウエル領域に第1電位を印加し、前記第2ウエル領域に前記第1電位とは異なる第2電位を印加したときに、前記半導体基板と前記第1ウエル領域とのpn接合界面部から広がる空乏層が前記第1電流抑制層から離間する距離になっていることを特徴とする請求項6に記載の半導体集積回路。
前記第1能動素子と前記第2能動素子とが直列に接続されてゲート駆動回路を構成し、前記第1能動素子と前記第2能動素子との接続点には、前記ゲート駆動回路の駆動対象となる電力用スイッチング素子のゲートが接続されることを特徴とする請求項12に記載の半導体集積回路。
前記第1能動素子と前記第2能動素子とが直列に接続されてゲート駆動回路を構成し、前記第1能動素子と前記第2能動素子との接続点が、高圧側の電力用スイッチング素子と低圧側の電力用スイッチング素子とが直列に接続された出力回路の前記高圧側の電力用スイッチング素子のゲートに接続されることを特徴とする請求項12に記載の半導体集積回路。
前記第1及び第3主電極領域が接続されており、前記第1主電極領域に前記第1電位が印加され、前記第3主電極領域に前記第2電位が印加されることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の半導体集積回路。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の第1〜第4の実施形態を図面を参照して説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
本明細書において、「第1主電極領域」「第3主電極領域」とは、電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)においてソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)においてはエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる半導体領域を、静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)やゲートターンオフサイリスタ(GTO)においてはアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。「第2主電極領域」「第4主電極領域」とは、FETやSITにおいては上記第1主電極領域とはならないソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を、IGBTにおいては上記第1主電極領域とはならないエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる領域を、SIサイリスタやGTOにおいては上記第1主電極領域とはならないアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる領域を意味する。
【0013】
即ち、「第1主電極領域」「第3主電極領域」がソース領域であれば、「第2主電極領域」「第4主電極領域」はドレイン領域を意味する。「第1主電極領域」「第3主電極領域」がエミッタ領域であれば、「第2主電極領域」「第4主電極領域」はコレクタ領域を意味する。「第1主電極領域」「第3主電極領域」がアノード領域であれば、「第2主電極領域」「第4主電極領域」はカソード領域を意味する。以下の第1乃至第4の実施形態では、絶縁ゲート型トランジスタを集積化したパワーICに着目して説明するので、便宜上、ソース領域を「第1主電極領域」「第3主電極領域」、ドレイン領域を「第2主電極領域」「第4主電極領域」と呼ぶが、選択の問題であり、ソース領域が「第2主電極領域」「第4主電極領域」等であっても構わない。
【0014】
以下の第1乃至第4の実施形態の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明するが、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。また、本明細書及び添付図面においては、nやpに上付き文字で付す+及びは、+及びの付記されていない半導体領域に比してそれぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。更に、以下の説明で「第1導電型」及び「第2導電型」の限定を加えた部材や領域は、特に明示の限定がなくても半導体材料からなる部材や領域を意味していることは、技術的にも論理的にも自明である。
【0015】
更に、以下の説明において「上面」「下面」等の「上」「下」の定義は、図示した断面図上の単なる表現上の問題であって、例えば、半導体集積回路の方位を90°変えて観察すれば「上」「下」の呼称は、「左」「右」になり、180°変えて観察すれば「上」「下」の呼称の関係は逆になることは勿論である。
【0016】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路40は、制御回路31、レベルシフト回路32、ハイサイド駆動回路33及びローサイド駆動回路(図示せず)等を備えたパワーICである。第1の実施形態に係る半導体集積回路40は、駆動対象として、例えば電力変換用ブリッジ回路の一相分である電力変換部50を駆動する高耐圧のパワーICである。第1の実施形態に係る半導体集積回路40は、入力端子41から入力された信号に応じて、電力変換部50を構成する電力用スイッチング素子のゲートをオン・オフして駆動する駆動信号を出力端子42から出力する。
【0017】
図1に示すように、電力変換部50は、高圧側電力用スイッチング素子(以下において「高圧側スイッチング素子」と略記する。)S1と、低圧側電力用スイッチング素子(以下において「低圧側スイッチング素子」と略記する。)S2とを直列に接続して出力回路を構成している。
図1においては、高圧側スイッチング素子S1及び低圧側スイッチング素子S2がそれぞれIGBTである場合を例示しているが、高圧側スイッチング素子S1及び低圧側スイッチング素子S2はIGBTに限定されるものではなく、他の電力用スイッチング素子でも構わない。高圧側スイッチング素子S1には還流ダイオードFWD1が並列に逆接続され、低圧側スイッチング素子S2には、還流ダイオードFWD2が並列に逆接続されている。
【0018】
高圧側スイッチング素子S1及び低圧側スイッチング素子S2は、正極側である高圧の主電源HVと、主電源HVの負極側であるグランド(GND)電位との間に直列で接続されている。第2電位としてのVS電位が印加されるVS端子43は、高圧側スイッチング素子S1と低圧側スイッチング素子S2との接続点51に接続される。接続点51は、電力変換用ブリッジ回路の一相分である電力変換部50の出力点である。接続点51とGND電位との間には、低圧側スイッチング素子S2が接続される。接続点51には負荷57として例えばモータ等が接続される。
【0019】
半導体集積回路40の動作中、VS端子43に印加されるVS電位は、出力回路を構成する高圧側スイッチング素子S1と低圧側スイッチング素子S2とが相補にオン・オフされることによって、主電源HVの高電位側電位(例えば400V程度)と低電位側電位(GND電位)との間で上昇及び下降を繰り返し、0Vから数百Vまでの間で変動する。
【0020】
ハイサイド駆動回路33は、ゲート駆動回路34を備えている。ゲート駆動回路34は、第1能動素子として例えばnMOSトランジスタ(以下において「nMOS」と略記する。)36と、第2能動素子として例えばpMOSトランジスタ(以下において「pMOS」と略記する。)35とのCMOS回路で構成されている。具体的には、pMOS35のソースはVB端子44に接続され、pMOS35のドレインはnMOS36のドレインに接続されている。nMOS36のソースはVS端子43に接続されている。
【0021】
ゲート駆動回路34は、VS端子43に印加されるVS電位を基準電位とし、VB端子44に印加される第1電位としてのVB電位を電源電位として動作し、レベルシフト回路32から受け取った信号を元に出力端子42から駆動信号を出力して高圧側スイッチング素子S1を駆動する。
【0022】
制御回路31は、GND(グランド)端子46に印加されるGND電位を基準電位とし、VCC端子45に印加されるVCC電位を電源電位として動作し、高圧側スイッチング素子S1をオン・オフするためのハイサイド側のオン・オフ信号、及び低圧側スイッチング素子をオン・オフするためのローサイド側のオン・オフ信号を生成する。GND電位は共通電位である。
【0023】
レベルシフト回路32は、制御回路31によって生成されたローサイドレベルのオン・オフ信号を、ハイサイド側で用いるハイサイドレベルのオン・オフ信号に変換する。
【0024】
第1の実施形態に係る半導体集積回路40では、高圧側スイッチング素子S1を駆動する場合、制御回路31によって高圧側スイッチング素子S1をオン・オフするためのローサイドレベルのオン・オフ信号が生成される。このローサイドレベルのオン・オフ信号は、レベルシフト回路32によりハイサイドレベルのオン・オフ信号に変換された後、ハイサイド駆動回路33に入力される。
【0025】
制御回路31からハイサイド駆動回路33に入力されたオン・オフ信号は、ゲート駆動回路34を介して高圧側スイッチング素子S1のゲートに入力される。高圧側スイッチング素子S1は、制御回路31からのオン・オフ信号に基づいてオン・オフされる。
【0026】
VCC端子45とVB端子44との間には外付け素子としてのブートストラップダイオード55が接続される。VB端子44とVS端子43との間には外付け素子としてのブートストラップコンデンサ56が接続される。これらのブートストラップダイオード55及びブートストラップコンデンサ56は、高圧側スイッチング素子S1の駆動電源を生成する。
【0027】
VB電位は半導体集積回路40に印加される最高電位であり、ノイズの影響を受けていない通常状態では、ブートストラップコンデンサ56でVS電位よりも15V程度高く保たれている。VS電位は、電力変換用ブリッジ回路の高圧側スイッチング素子S1と低圧側スイッチング素子S2との接続点(出力ノード部)51の電位であり、電力変換の過程で0Vから数百Vの間で変化し、マイナスの電位になる場合もある。
【0028】
次に、第1の実施形態に係る半導体集積回路40の具体的な構造について説明する。
図2及び
図3に示すように、第1の実施形態に係る半導体集積回路40は、第2導電型(p
−型)の半導体基板1に自己分離型ICプロセスによって作製された素子分離構造によってパワーICを構成している。半導体基板1は例えば比抵抗が100Ωcm程度以上の単結晶シリコン基板で構成されている。
【0029】
図3に示すように、半導体基板1の主面側である上面側の上部(表層部)には第1導電型(n型)の第1ウエル領域2が選択的に設けられ、第1ウエル領域2の上部には第2導電型(p
−型)の第2ウエル領域3が選択的に埋め込まれている。半導体基板1の上部には第1導電型(n
−型)の耐圧領域4及び第2導電型(p
−型)の分離領域5が選択的に設けられている。第1及び第2ウエル領域2,3の各々は、半導体基板1のハイサイド回路領域1Aに設けられている。第1ウエル領域2は、例えば1×10
14〜1×10
17/cm
3程度の不純物濃度で形成されている。第2ウエル領域3は、例えば1×10
14〜1×10
18/cm
3程度の不純物濃度で形成されている。
【0030】
図2及び
図3に示すように、第1ウエル領域2は、耐圧領域4で周囲を囲まれ、且つ耐圧領域4と接している。耐圧領域4は、分離領域5で周囲を囲まれ、且つ分離領域5と接している。即ち、耐圧領域4は、第1ウエル領域2と分離領域5との間に設けられ、第1ウエル領域2及び分離領域5の各々と接している。耐圧領域4は、第1ウエル領域2よりも低い不純物濃度で形成されている。分離領域5は、半導体基板1よりも高い不純物濃度で形成されている。
【0031】
図3に示すように、pMOS35は、n型の第1ウエル領域2の上部に構成された能動素子である。nMOS36は、p型の第2ウエル領域3の上部に構成された能動素子である。第1ウエル領域2は半導体基板1からpMOS35を電気的に分離する分離領域であり、第2ウエル領域3は第1ウエル領域2からnMOS36を電気的に分離する分離領域である。
【0032】
pMOS35は、第1ウエル領域2の上部に選択的に設けられたp型の第1主電極領域(ソース領域)12と、第1ウエル領域2の上部に第1ウエル領域2からなるチャネル形成領域を挟んで第1主電極領域12から離間するように選択的に設けられたp型の第2主電極領域(ドレイン領域)13とを有している。pMOS35は、更に、チャネル形成領域の表面に選択的に設けられたゲート絶縁膜16と、チャネル形成領域上にゲート絶縁膜16を介して設けられたゲート電極18とを有している。
【0033】
nMOS36は、第2ウエル領域3の上部に選択的に設けられたn型の第3主電極領域(ソース領域)6と、第2ウエル領域3の上部にチャネル形成領域を挟んで第3主電極領域6から離間するように選択的に設けられたn型の第4主電極領域(ドレイン領域)7とを有している。nMOS36は、更に、第2ウエル領域3の表面に選択的に設けられたゲート絶縁膜15と、チャネル形成領域上にゲート絶縁膜15を介して設けられたゲート電極17とを有している。
【0034】
ゲート絶縁膜15及び16の各々は、例えば二酸化シリコン膜(SiO
2膜)で形成することが可能である。ゲート電極17及び18の各々は、例えば抵抗値を低減する不純物が導入された多結晶シリコン膜で形成されている。pMOS35の第1主電極領域12及び第2主電極領域13の各々は、第1ウエル領域2よりも高い不純物濃度で形成されている。nMOS36の第3主電極領域6及び第4主電極領域7の各々は、第2ウエル領域3よりも高い不純物濃度で形成されている。
【0035】
なお、二酸化シリコン膜としては、熱酸化法で形成する熱酸化膜や化学的気相成長(CVD)法で形成する堆積酸化膜があるが、MOSトランジスタにおいては緻密性に優れた熱酸化膜をゲート絶縁膜15,16として用いることが好ましい。第1の実施形態では、ゲート絶縁膜15,16が二酸化シリコン膜からなるMOSトランジスタを用いた場合で説明しているが、トランジスタとしては、ゲート絶縁膜が窒化シリコン膜(Si
3N
4膜)、或いは窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜等の積層膜で形成されたMISFETでも構わない。
【0036】
図3に示すように、第1ウエル領域2の上部には、第1ウエル領域2よりも不純物濃度が高いn
+型の第1コンタクト領域8が選択的に設けられている。第1ウエル領域2及び耐圧領域4の上部には、第1ウエル領域2及び耐圧領域4に亘ってn
+型の第3コンタクト領域9が選択的に設けられている。第3コンタクト領域9は第1ウエル領域2及び耐圧領域4よりも高い不純物濃度で形成されている。第2ウエル領域3の上部には、第2ウエル領域3よりも不純物濃度が高いp
+型の第2コンタクト領域14が選択的に設けられている。
【0037】
図3に示すように、半導体基板1の上面上には、ゲート電極17及び18を覆うようにして層間絶縁膜20が設けられている。層間絶縁膜20上には、接地電極5a,第3主電極6a,第4主電極7a,第1コンタクト電極8a,第3コンタクト電極9a,第1主電極12a,第2主電極13a,第2コンタクト電極14aの各々が設けられている。これらの電極5a,6a,7a,8a,9a,12a,13a及び14aは、例えばアルミニウム膜やアルミニウム合金膜等で形成されている。
【0038】
図3に示すように、接地電極5aは、層間絶縁膜20に埋め込まれた導電性プラグ5bを介して分離領域5と電気的に接続されている。第3主電極6aは、層間絶縁膜20に埋め込まれた導電性プラグ6bを介して半導体領域である第3主電極領域6と電気的に接続されている。第4主電極7aは、層間絶縁膜20に埋め込まれた導電性プラグ7bを介して半導体領域である第4主電極領域7と電気的に接続されている。
【0039】
図3に示すように、第1コンタクト電極8aは、層間絶縁膜20に埋め込まれた導電性プラグ8bを介して第1コンタクト領域8と電気的に接続されている。第3コンタクト電極9aは、層間絶縁膜20に埋め込まれた導電性プラグ9bを介して第3コンタクト領域9と電気的に接続されている。
【0040】
図3に示すように、第1主電極12aは、層間絶縁膜20に埋め込まれた導電性プラグ12bを介して半導体領域である第1主電極領域12と電気的に接続されている。第2主電極13aは、層間絶縁膜20に埋め込まれた導電性プラグ13bを介して半導体領域である第2主電極領域13と電気的に接続されている。第2コンタクト電極14aは、層間絶縁膜20に埋め込まれた導電性プラグ14bを介して第2コンタクト領域14と電気的に接続されている。
【0041】
図1及び
図3から分かるように、接地電極5aは、
図1に示すGND端子46と電気的に接続され、このGND端子46を介してGND電位が印加される。第3主電極6a及び第2コンタクト電極14aは、
図1に示すVS端子43と電気的に接続され、このVS端子43を介してVS電位が印加される。第1コンタクト電極8a、第3コンタクト電極9a、第1主電極12aは、
図1に示すVB端子44と電気的に接続され、このVB端子44を介してVB電位が印加される。
【0042】
即ち、分離領域5には基準電位としてのGND電位が印加される。第1ウエル領域2及び耐圧領域4には、第1ウエル領域2及び耐圧領域4に亘って設けられた第3コンタクト領域9、及び第1ウエル領域2の内部に設けられた第1コンタクト領域8を介して、GND電位とは異なる第1電位としてのVB電位が印加される。第2ウエル領域3には、第2コンタクト領域14を介して、GND電位及びVB電位とは異なる第2電位としてのVS電位が印加される。pMOS35の第1主電極領域12にはVB電位が印加され、nMOS36の第3主電極領域6にはVS電位が印加される。
【0043】
図2に示すように、第1コンタクト領域8は、平面形状がL字形で形成され、pMOS35のゲート幅方向(ゲート電極18の長手方向)に沿って伸びる第1部分がpMOS35の第1主電極領域12と接触し、第1部分からpMOS35のゲート長方向(ゲート電極18の幅方向)に沿って伸びる第2部分がpMOS35の第1主電極領域12及び第2主電極領域13から離間するようにして配置されている。
【0044】
図2に示すように、第2コンタクト領域14は、平面形状がコの字形で形成され、nMOS36を囲むようにして配置されている。第2コンタクト領域14は、nMOS36のゲート幅方向(ゲート電極17の長手方向)に沿って伸びる第1部分がnMOS36の第3主電極領域6と接触し、この第1部分からnMOS36のゲート長方向(ゲート電極17の幅方向)に沿って伸びる第2部分及びこの第2部分からnMOS36のゲート幅方向に沿って伸びる第3部分がnMOS36の第3主電極領域6及び第4主電極領域7から離間するようにして配置されている。
【0045】
第3コンタクト領域9は、pMOS35及びnMOS36の周囲を囲むようにして環状に延伸するリング状平面パターンで構成されている。
【0046】
図3に示すように、半導体基板1の下部には、第1ウエル領域2から離間して、第2導電型(p
+型)の第1電流抑制層21が設けられている。第1電流抑制層21は、詳細に図示していないが、半導体基板1の下面の全面に、半導体基板1の下面に平行に設けられており、第1ウエル領域2の底面全体と対向している。第1電流抑制層21は、半導体基板1よりも高い不純物濃度で形成され、例えば1×10
14〜1×10
21/cm
3程度の不純物濃度で形成されている。第1電流抑制層21は、耐圧領域4及び分離領域5からも離間している。
【0047】
更に、第1電流抑制層21の下には、第1導電型(n
+型)の第2電流抑制層22が設けられている。第2電流抑制層22の上面は第1電流抑制層21と接しており、第2電流抑制層22の下面は、半導体基板1の下面から露出している。第2電流抑制層22は、詳細に図示していないが、半導体基板1の下面の全面に設けられており、第1ウエル領域2の底面全体と対向している。第2電流抑制層22は、半導体基板1よりも高い不純物濃度で形成され、例えば1×10
14〜1×10
21/cm
3程度の不純物濃度で形成されている。第2電流抑制層22は、耐圧領域4及び分離領域5からも離間している。例えば、第1電流抑制層21の厚さT1は、第2電流抑制層22の厚さT2と同程度である。
【0048】
第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22の形成方法の一例としては、半導体基板1の裏面全面に、ホウ素(B)等のp型不純物イオンを高エネルギで注入する。その後、熱処理を行うことにより注入されたイオンを活性化させ、更に活性化されたp型不純物元素を所望の深さまで熱拡散し、第1電流抑制層21を形成する。そして、半導体基板1の裏面全面に、砒素(As)や燐(P)等のn型不純物イオンを、半導体基板1の裏面から見て第1電流抑制層21よりも浅い射影飛程でイオン注入する。その後、熱処理を行うことにより注入されたイオンを活性化させ、第2電流抑制層22を形成する。
【0049】
即ち、第1の実施形態に係る半導体集積回路40は、第1ウエル領域2の直下の半導体基板1の下部に第1ウエル領域2から離間して設けられた第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22を備えている。したがって、第1ウエル領域2と半導体基板1の下面との間には第1電流抑制層21と第2電流抑制層22とのpn接合界面部の拡散電位が存在し、電位差による電位障壁が存在する。
【0050】
半導体集積回路40の通常動作では、
図4に示すように、p
−型の半導体基板1及びp
−型の分離領域5と、n型の第1ウエル領域2及びn
−型の耐圧領域4とのpn接合界面部で空乏層10が生じる。空乏層10が第1電流抑制層21に接触すると耐圧劣化の要因となる。したがって、第1の実施形態に係る半導体集積回路40において、半導体基板1の厚さd
subは、空乏層10が第1電流抑制層21に接触しない厚さ、換言すれば空乏層10が第1電流抑制層21から離間する厚さになっている。なお、空乏層10が第2電流抑制層22に接触しなければ電流抑制の効果は得られるため、耐圧劣化を許容できる場合は空乏層10が第1電流抑制層21に接触する構造とすることもできる。
【0051】
半導体集積回路40では、耐圧仕様として主に600V仕様と1200V仕様とがある。VS電位が600Vでの空乏層10の長さd
depは約150μm程度であり、VS電位が1200Vでの空乏層10の長さd
depは約200μm程度である。第1電流抑制層21の厚さT1及び第2電流抑制層22の厚さT2のそれぞれは約0.5μm程度から約20μm程度である。第1ウエル領域2の深さは約10μm程度であるので、第1ウエル領域2の深さを考慮し、空乏層10が第1電流抑制層21から離間するように半導体基板1の上面から第1電流抑制層21までの厚さd
subを設定する。
【0052】
600V仕様の場合は半導体基板1の厚さd
subを160μm程度以上とすることが好ましい。1200V仕様の場合は半導体基板1の厚さd
subを210μm程度以上とすることが好ましい。また、別な表現をすると、第1ウエル領域2の底面と第1電流抑制層21との間の距離L1を、600V仕様の場合は約150μm程度以上とし、1200V仕様の場合は約200μm程度以上とすることが好ましい。
【0053】
第1の実施形態に係る半導体集積回路40は、
図5に示すように、半導体チップ30として配線基板70に実装される。配線基板70は、例えばセラミックス等の絶縁性材料からなるコア材71の上面に導電性の金属材料からなるダイパッド72及びワイヤ接続部73が配置されている。ダイパッド72及びワイヤ接続部73は互いに一体に形成され、電気的に接続されている。コア材71の上面には絶縁性の材料からなる保護膜74が設けられており、保護膜74に設けられた開口部からダイパッド72及びワイヤ接続部73がそれぞれ露出している。
【0054】
半導体チップ30は、半導体基板1の下面とダイパッド72の上面との間に例えば導電性の銀ペーストからなる接着材80を介してダイパッド72に接着固定される。半導体チップ30の上面にはGND端子46が設けられており、GND端子46はボンディングワイヤ81を介してワイヤ接続部73と電気的に接続される。
【0055】
図5には図示していないが、ダイパッド72及びワイヤ接続部73にはGND電位が印加される。この場合、半導体基板1の下面にはGND電位が印加されるので、第2電流抑制層22もGND電位が印加される。半導体基板1の下面のGND電位印加は、配線基板70に半導体チップ30を実装した後、半導体チップ30が浮遊容量として他の半導体チップや回路に影響しないようにすることや、半導体チップ30での電源電位を安定化させる等の目的で実施される。
【0056】
第1電位であるVB電位及び第2電位であるVS電位は、第1ウエル領域2と第2ウエル領域3との間のpn接合界面部が半導体集積回路40の通常動作で逆方向にバイアスされる電位である。
【0057】
第1の実施形態に係る半導体集積回路40は、自己分離型ICプロセスが用いられている。自己分離型ICプロセスによって作製された半導体集積回路40では、
図3に示すように、ハイサイド回路領域1Aに、p
−型の第2ウエル領域3、n型の第1ウエル領域2、p
−型の半導体基板1からなる寄生pnpバイポーラトランジスタ29が形成される。寄生pnpバイポーラトランジスタ29のベース、エミッタ、コレクタは、VB端子44、VS端子43、GND端子46に夫々接続された状態となる。
【0058】
半導体集積回路40の通常動作では、電源電位であるVB電位は中間電位であるVS電位よりも高いため、寄生pnpバイポーラトランジスタ29は動作しない。しかしながら、サージによりVB電位がVS電位よりもシリコンのpn接合界面部の拡散電位である0.6V以上低下した場合、即ちVB電位<(VS電位−0.6[V])の電位関係になった場合、寄生pnpバイポーラトランジスタ29がオン状態となる。
【0059】
ここで、VB電位<(VS電位−0.6[V])の電位関係になる理由を詳しく説明すると、
図1に示すように、半導体集積回路40で電力変換部50を駆動する場合、例えばVB端子44とVS端子43との間に外付素子としてのブートストラップコンデンサ56が接続される。ブートストラップコンデンサ56に充電された電荷でVB端子44に印加されるVB電位とVS端子43に印加されるVS電位との電位差(VB−VS間電圧)を保っている。VB端子44には、ブートストラップダイオード55、その他の配線等が接続される。VS端子43には、負荷57、その他の配線等が接続される。
【0060】
VB端子44とVS端子43とでは接続される物が異なり、VB端子44とVS端子43とでは付加される寄生容量が異なるため、VS電位が変動した場合にVB電位が十分に追従できない場合がある。そのため、サージによりVS電位が変動した際、VB電位とVS電位との電位差を保持できない場合がある。したがって、VB電位とVS電位の変動の違いが大きい場合にVB電位<(VS電位−0.6[V])となることがある。
【0061】
ここで、従来の半導体集積回路(HVIC)において、サージによりVB電位がVS電位よりも0.6V以上低下し、寄生pnpバイポーラトランジスタ29がオン状態となる場合について、
図3を参照して説明する。従来の半導体集積回路(HVIC)では、
図3に示した第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22が無い構造であるため、半導体基板1の下面がGND電位の印加により電位固定された場合、ハイサイド回路側の高電圧(HVの高電位側電位)が印加されたVS端子43とGND端子46との間、即ち第2ウエル領域3から半導体基板1の下面に至る電流経路が形成される。この際、基板縦方向の寄生pnpバイポーラトランジスタ29は面積が大きく、第2ウエル領域3から半導体基板1の下面に至る電流経路の面積も大きいため大電流が流れる。このため、大電流による発熱によって半導体集積回路40に誤動作や動作不良が生じ、信頼性低下の要因となる。
【0062】
これに対して、
図15に比較例として示すように、半導体基板1の下部にn
+型の電流抑制層22xを設けた構造の半導体集積回路を考える。比較例に係る半導体集積回路では、第1ウエル領域2と半導体基板1の下面との間には半導体基板1と電流抑制層22xとのpn接合界面部の電位差による電位障壁が存在している。このpn接合界面部には拡散電位があり、バイアスを印加していない状態でも電流抑制層22xが第1ウエル領域2と電流抑制層22xとの間の領域(半導体基板1)の基板電位よりも0.6V(シリコンのpn接合界面の拡散電位)程度高い電位になっている。
【0063】
したがって、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の基板縦方向の電流経路(第2ウエル領域3から半導体基板1の下面に至る電流経路)に電流抑制層22xによる電位障壁が存在し、寄生pnpバイポーラトランジスタ29のコレクタが半導体基板1の下面に直接つながらないので、基板縦方向の電流経路を流れる電流、換言すればキャリアの移動を抑制することができる。
【0064】
このため、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の電流増幅率H
FEを下げることができるので、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を抑制することができる。この結果、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作に起因して大電流が流れることによる発熱によって半導体集積回路40に生じる誤動作や動作不良を防止することができるので、信頼性向上を図ることができる。
【0065】
また、サージによりVB電位がVS電位よりも0.6V以上低下した場合、寄生pnpバイポーラトランジスタ29のコレクタ電流は、
図15中に破線の矢印で示すように、第1ウエル領域2の底面から半導体基板1を介して分離領域5に至る電流経路を流れ、GND電位が印加される接地電極5aに引き抜かれる。この電流経路は、第1ウエル領域2と分離領域5との間の耐圧領域4の幅W
nを広くすることで抵抗成分を高くすることができるので、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の電流増幅率H
FEを下げることが可能となり、寄生pnpバイポーラトランジスタの動作を抑制することができる。耐圧領域4の幅W
nは、耐圧を確保するため、通常、600V仕様で約100μm程度、1200V仕様で約200μm程度になっている。この耐圧領域4の幅W
nであれば、第1ウエル領域2の底面から半導体基板1を介して耐圧領域4に至る電流経路の抵抗成分が高いため、接地電極5aに寄生pnpバイポーラトランジスタ29のコレクタ電流が大電流となって流れることはない。
【0066】
ここで、
図15に示した比較例に係る半導体集積回路では、半導体基板1の下部に電流抑制層22xを設けているが、サージによりVB電位がVS電位よりも0.6V以上低下した場合に、電流抑制層22xの上部の電位が上がると、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作に起因して縦方向に電流が流れてしまう恐れがある。これに対して、第1の実施形態に係る半導体集積回路によれば、
図3に示すように、n
+型の第2電流抑制層22の上方(上段)にp
+型の第1電流抑制層21を設けることにより、
図15に示した比較例に係る半導体集積回路と比較して、第2電流抑制層22の上部の電位障壁を大きくすることができる。p
+型の第1電流抑制層21では、p
−型の半導体基板1よりもアクセプタ準位が価電子帯に近く、ドナー準位とアクセプタ準位の差が大きくなるためである。
【0067】
更に、
図15に示した比較例に係る半導体集積回路においては、
図15中の破線の矢印で示すように、サージによりVB電位がVS電位よりも0.6V以上低下した場合、寄生pnpバイポーラトランジスタ29のコレクタ電流が、第1ウエル領域2の底面から半導体基板1を介して分離領域5に至る電流経路を流れる際に、半導体基板1の抵抗R2で横方向に電位差が発生する。この電位差に起因して電流抑制層22xの上部の電位が上がると、p
−型の半導体基板1とn
+型の電流抑制層22xがなすpn接合が順バイアスされ、裏面のGND電極に電流が流れる恐れがある。これに対して、第1の実施形態に係る半導体集積回路によれば、
図3に示すように、n
+型の第2電流抑制層22の上方(上段)にp
+型の第1電流抑制層21が設けられており、第1電流抑制層21の抵抗R1は半導体基板1の抵抗よりも小さい。このため、
図3中に破線の矢印で示すように、寄生pnpバイポーラトランジスタ29のコレクタ電流が、第1ウエル領域2の底面から半導体基板1又は第1電流抑制層21を介して分離領域5に至る電流経路を流れる際に、電流経路の抵抗による横方向の電位差を低減することができる。したがって、この電位差に起因して電流抑制層22xの上部の電位が上昇することを抑制でき、縦方向にキャリア(ホール)が流れて裏面に到達することを防止することができる。
【0068】
以上説明したように、第1の実施形態に係る半導体集積回路によれば、半導体基板1の下面にn
+型の第2電流抑制層22を設け、更に第2電流抑制層22の上段にp
+型の第1電流抑制層21を設けることにより、
図15に示した比較例のn
+型の電流抑制層22xのみを形成した構造と比較して、第2電流抑制層22の上部の電位障壁を形成することができる。更に、横方向にキャリア(ホール)が流れて第2電流抑制層22の上部の電位が上がった場合にも、半導体基板1の下面のGND電極への電流を流れ難くすることができる。したがって、複雑な工程を必要とせずに、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を抑制することができ、ノイズ耐量が大きいHVICを実現可能となる。
【0069】
<第1の変形例>
第1の実施形態では、半導体基板1の下面の全面に第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22を設けた場合について説明したが、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22は、半導体基板1の下面に、少なくとも第1ウエル領域2と対向するようにして選択的(局所的)に設けてもよい。
【0070】
例えば、
図6に示すように、第1電流抑制層21が、第1ウエル領域2と対向するように、半導体基板1の下面の一部に局所的(選択的)に形成されていてもよい。
図6に示した第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22の形成方法の一例としては、フォトリソグラフィ技術により半導体基板1の下面の第1ウエル領域2以外の部分にフォトレジスト膜をパターニングし、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、B等のp型不純物イオンを高エネルギで注入する。残存したフォトレジスト膜を除去した後、熱処理を行うことにより注入されたイオンを活性化させ、更に活性化されたp型不純物元素を所望の深さまで熱拡散し、第1電流抑制層21を選択的に形成する。引き続き、半導体基板1の裏面全面に、AsやP等のn型不純物イオンを、半導体基板1の裏面から見て第1電流抑制層21よりも浅い射影飛程でイオン注入する。その後、熱処理を行うことにより注入されたイオンを活性化させ、第2電流抑制層22を形成する。
【0071】
また、
図7に示すように、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22が、第1ウエル領域2と対向するように、半導体基板1の下面の一部に局所的(選択的)にそれぞれ設けられていてもよい。
図7に示した第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22の形成方法の一例としては、フォトリソグラフィ技術により半導体基板1の下面の第1ウエル領域2以外の部分にフォトレジスト膜をパターニングし、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、B等のp型不純物イオンを高エネルギで注入する。引き続き、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、AsやP等のn型不純物イオンを、半導体基板1の裏面から見て第1電流抑制層21よりも浅い射影飛程でイオン注入する。残存したフォトレジスト膜を除去した後、熱処理を行うことにより注入されたイオンを活性化させ、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22を選択的に形成する。
【0072】
また、
図8に示すように、第2電流抑制層22が、第1ウエル領域2と対向するように、半導体基板1の下面の一部に局所的(選択的)に形成されていてもよい。
図8に示した第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22の形成方法の一例としては、半導体基板1の下面全面にB等のp型不純物イオンを高エネルギで注入する。その後、熱処理を行うことにより注入されたイオンを活性化させ、第1電流抑制層21を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術により半導体基板1の下面の第1ウエル領域2以外の部分にフォトレジスト膜をパターニングし、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、AsやP等のn型不純物イオンを、半導体基板1の裏面から見て第1電流抑制層21よりも浅い射影飛程でイオン注入する。残存したフォトレジスト膜を除去した後、熱処理を行うことにより注入されたイオンを活性化させ、第2電流抑制層22を選択的に形成する。
【0073】
第1の変形例によれば、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22の少なくとも一方を、半導体基板1の下面に、少なくとも第1ウエル領域2と対向するようにして選択的(局所的)に設けた場合でも、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を抑制することができる。
【0074】
<第2の変形例>
第1の実施形態では、第1電流抑制層21の厚さT1及び第2電流抑制層22の厚さT2が互いに同一である構造を例示したが、第1電流抑制層21の厚さT1と第2電流抑制層22の厚さT2が互いに異なっていてもよい。例えば、
図9に示すように、第1電流抑制層21の厚さT1が、第2電流抑制層22の厚さT2よりも厚くてもよい。なお、図示を省略するが、第1電流抑制層21の厚さT1が、第2電流抑制層22の厚さT2よりも薄くてもよい。
【0075】
第1電流抑制層21の厚さT1及び第2電流抑制層22の厚さT2は、例えば、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22を形成するためのイオン注入時の加速電圧及び射影飛程等を調整することにより適宜調整可能である。
【0076】
<第3の変形例>
第1の実施形態では、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22が接している構造を例示したが、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22が必ずしも接していなくてもよい。即ち、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22が互いに離間していてもよく、第1電流抑制層21が、第2電流抑制層22の上方(上段)に設けられていればよい。例えば、
図10に示すように、第2電流抑制層22と第1電流抑制層21の間にp
−型の半導体層26が設けられていてもよい。
【0077】
図10に示した構造は、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22を形成するためのイオン注入時の加速電圧及び射影飛程等を調整することにより、第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22を離間して形成する。この結果、第2電流抑制層22と第1電流抑制層21の半導体基板1の一部がp
−型の半導体層26となる。或いは、第2電流抑制層22の不純物元素と第1電流抑制層21の不純物元素とを互いに補償させて、p
−−型の半導体層又はi型(真性半導体)等の高抵抗層を構成してもよい。
【0078】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路40Aは、第1の実施形態に係る半導体集積回路40とほぼ同様の構成になっているが、半導体基板の構成が異なっている。即ち、第1の実施形態に係る半導体集積回路40では、
図3に示すように、p
−型の半導体基板1を用いた。これに対し、第2の実施形態に係る半導体集積回路40Aでは、
図11に示すように、第2導電型(p
−型)の半導体基板1a上に例えばエピタキシャル成長により第1導電型(n
−型)の半導体層1bが設けられた半導体基体23を用いている。この半導体基体23のハイサイド回路領域1Aにおいて、半導体基板1aと半導体層1bとの間には、半導体基板1a及び半導体層1bよりも不純物濃度が高いn
+型の埋込領域27が設けられている。
【0079】
第1ウエル領域2及び分離領域5は、半導体層1bに設けられている。第1ウエル領域2は、埋込領域27上の半導体層1bに埋込領域27と接するようにして設けられている。分離領域5は半導体基板1aに到達する深さで形成されている。第2電流抑制層22は、第1ウエル領域2の直下の半導体基板1aの下部に、第1ウエル領域2及び埋込領域27から離間して設けられている。第1の実施形態では、
図3に示すように、第1ウエル領域2と分離領域5との間に耐圧領域4を設けた構成になっているが、第2の実施形態では、
図11に示すように、第1ウエル領域2と分離領域5との間に
図3の耐圧領域4に代えて半導体層1bを設けた構成になっている。したがって、n
+型の第3コンタクト領域9は、第1ウエル領域2及び半導体層1bの各々の上部に、第1ウエル領域2及び半導体層1bに亘って設けられている。他の構成は、第1の実施形態と同様になっている。
【0080】
第2の実施形態に係る半導体集積回路40Aは、ハイサイド回路領域1Aにおいて、第1ウエル領域2と接するようにして半導体基板1aと半導体層1bとの間に設けられた高濃度の埋込領域27を備えている。したがって、寄生pnpバイポーラトランジスタ29のベース濃度が高くなり、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の電流増幅率H
FEを下げることができるので、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を抑制することができる。
【0081】
更に、第2の実施形態に係る半導体集積回路40Aは、第1の実施形態と同様に、ハイサイド回路領域1Aにおいて、第1ウエル領域2の直下の半導体基板1aの下部に第1ウエル領域2及び埋込領域27から離間して設けられた第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22を備えている。したがって、第1の実施形態と同様に、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を抑制することができる。この結果、第2の実施形態に係る半導体集積回路40Aは、第1の実施形態と比較して、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を更に抑制することができる。
【0082】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る半導体集積回路40Bは、第2の実施形態に係る半導体集積回路40Aとほぼ同様の構成になっているが、半導体基体の構成が異なっている。即ち、第2の実施形態に係る半導体集積回路40Aでは、
図11に示すように、p
−型の半導体基板1a上にn
−型の半導体層1bが設けられた半導体基体23を用いた。これに対し、第3の実施形態に係る半導体集積回路40Bでは、
図12に示すように、第2導電型(p
−型)の半導体基板1a上に第2導電型(p
−型)の半導体層1cが設けられた半導体基体24を用いている。半導体基体24のハイサイド回路領域1Aにおいて、半導体基板1aと半導体層1cとの間には、半導体基板1a及び半導体層1cよりも不純物濃度が高いn
+型の埋込領域27が設けられている。
【0083】
分離領域5は半導体基板1aに到達する深さで半導体層1cに設けられている。半導体層1cには第1導電型(n
−型)の第3ウエル領域25が設けられている。第1ウエル領域2は、第3ウエル領域25の内部に設けられている。第1ウエル領域2は、第3ウエル領域25の内部において、埋込領域27上にこの埋込領域27と接するようにして設けられている。第2の実施形態では、
図11に示すように、第1ウエル領域2と分離領域5との間に半導体層1bを設けた構成になっているが、第3の実施形態では、
図12に示すように、第1ウエル領域2と分離領域5との間に
図11に示す半導体層1bに代えて第3ウエル領域25を設けた構成になっている。したがって、n
+型の第3コンタクト領域9は、第1ウエル領域2及び第3ウエル領域25の各々の上部にこの第1ウエル領域2及び第3ウエル領域25に亘って設けられている。他の構成は、第2の実施形態と同様になっている。
【0084】
第3の実施形態に係る半導体集積回路40Bは、ハイサイド回路領域1Aにおいて、第1ウエル領域2と接するようにして半導体基板1aと半導体層1cとの間に設けられた高濃度の埋込領域27を備えている。したがって、寄生pnpバイポーラトランジスタ29のベース濃度が高くなり、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の電流増幅率H
FEを下げることができるので、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を抑制することができる。
【0085】
更に、第3の実施形態に係る半導体集積回路40Bは、第1の実施形態と同様に、ハイサイド回路領域1Aにおいて、第1ウエル領域2の直下の半導体基板1aの下部に第1ウエル領域2及び埋込領域27から離間して設けられた第1電流抑制層21及び第2電流抑制層22を備えている。したがって、第1の実施形態と同様に、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を抑制することができる。この結果、第3の実施形態に係る半導体集積回路40Bは、第2実施形態と同様に第1の実施形態と比較して、寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を更に抑制することができる。
【0086】
(第4の実施形態)
図13に示すように、本発明の第4の実施形態に係る半導体集積回路40Cは、制御回路31、レベルシフト回路32、駆動回路33a等を備えたパワーICである。半導体集積回路40Cは、
図13に示すように、駆動対象として、例えば降圧コンバータ60の電力用スイッチング素子S3を駆動する。降圧コンバータ60は、
図14に示すように、ダイオード61、キャパシタ62、コイル63及び電力用スイッチング素子S3等で構成されている。電力用スイッチング素子S3は例えばIGBT等の能動素子で構成されている。
【0087】
駆動回路33aは、ゲート駆動回路34aを備えている。ゲート駆動回路34aは、第1の実施形態のゲート駆動回路34と同様の構成になっている。具体的には、pMOS35のソースはVB端子44に接続され、pMOS35のドレインはnMOS36のドレインに接続されている。nMOS36のソースはVS端子43に接続されている。pMOS35とnMOS36との接続点には、降圧コンバータ60を構成する電力用スイッチング素子S3のゲートが接続される。
【0088】
ゲート駆動回路34aは、VS端子43に印加される第2電位としてのVS電位を基準電位とし、VB端子44に印加される第1電位としてのVB電位を電源電位として動作し、レベルシフト回路32から受け取った信号を元に出力端子42から駆動信号を出力して降圧コンバータ60の電力用スイッチング素子S3を駆動する。
【0089】
このように降圧コンバータ60の電力用スイッチング素子S3を駆動する第4の実施形態に係る半導体集積回路40Cにおいても、第1の実施形態と同様に、
図3を参照して説明すれば、p
−型の第2ウエル領域3、n
−型の第1ウエル領域2、p
−型の半導体基板1からなる寄生pnpバイポーラトランジスタ29の動作を抑制することができる。
【0090】
なお、第4の実施形態では、降圧コンバータ60の電力用スイッチング素子S3を駆動する半導体集積回路について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、昇降コンバータ、フライバックコンバータ、フォワードコンバータ等の電力用スイッチング素子を駆動する半導体集積回路に適用できる。
【0091】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。また、本発明に係る半導体集積回路は、信頼性向上を図ることができ、電力用スイッチング素子を駆動する駆動回路を備
えた電力用集積回路(パワーIC)に有用である。