特許第6579287号(P6579287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6579287劣化推定装置、コンピュータプログラム及び劣化推定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6579287
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】劣化推定装置、コンピュータプログラム及び劣化推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20190912BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190912BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190912BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20190912BHJP
【FI】
   G01R31/392
   H01M10/48 301
   H01M10/48 P
   H02J7/00 Y
   H02J7/00 X
   G01R31/367
【請求項の数】21
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-50400(P2019-50400)
(22)【出願日】2019年3月18日
【審査請求日】2019年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2018-53016(P2018-53016)
(32)【優先日】2018年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】鵜久森 南
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/002292(WO,A1)
【文献】 特開2016−223964(JP,A)
【文献】 特開平09−243716(JP,A)
【文献】 特開2006−220616(JP,A)
【文献】 特開2001−325582(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/092811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
G01R 31/367
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置であって、
蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得するSOH取得部と、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する代表値取得部と、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値を入力データとし、前記第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる学習処理部と
を備える劣化推定装置。
【請求項2】
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの推移を推定するSOC推定部を備え、
前記代表値取得部は、
前記SOCの推移に基づいて前記第1時点から第2時点までの間の、SOCの平均、SOCの総変動量、及びSOCの変動幅の少なくともいずれか一つを取得する請求項1に記載の劣化推定装置。
【請求項3】
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの推移を推定するSOC推定部を備え、
前記代表値取得部は、
前記SOCの推移を前記代表値として取得する請求項1に記載の劣化推定装置。
【請求項4】
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子の温度の推移を取得する温度取得部を備え、
前記学習処理部は、
前記温度の推移をさらなる入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の劣化推定装置。
【請求項5】
前記温度取得部は、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子の温度の代表値を取得し、
前記学習処理部は、
前記温度の代表値をさらなる入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる請求項4に記載の劣化推定装置。
【請求項6】
前記学習処理部は、
前記蓄電素子の製造時点から前記第1時点までの経過期間をさらなる入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の劣化推定装置。
【請求項7】
前記学習処理部は、
前記蓄電素子の製造時点から前記第1時点までの充放電回数をさらなる入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の劣化推定装置。
【請求項8】
前記学習処理部は、
前記第1時点から第2時点までの学習期間を前記蓄電素子の使用期間に亘って複数設けて学習データに基づいて学習モデルを学習させる請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の劣化推定装置。
【請求項9】
前記学習処理部が学習させた学習済の学習モデルを用いて前記蓄電素子の劣化を推定する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の劣化推定装置。
【請求項10】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置であって、
蓄電素子の第1時点でのSOHを取得するSOH取得部と、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの総変動量及びSOCの変動幅の少なくとも一つを含むSOCの代表値を取得する代表値取得部と、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値を入力データとし、前記第2時点でのSOHを推定する学習済の学習モデルと
を備える劣化推定装置。
【請求項11】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置であって、
蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに、SOCの代表値を入力し、前記劣化シミュレータが出力するSOHを取得する出力値取得部と、
前記劣化シミュレータに入力したSOCの代表値を取得する入力値取得部と、
前記入力値取得部で取得したSOCの代表値及び前記出力値取得部で取得したSOHを学習データとして用いて学習モデルを学習させる学習処理部と、
蓄電素子のSOCの代表値を取得する代表値取得部と、
前記蓄電素子のSOHを取得するSOH取得部と、
前記代表値取得部で取得したSOCの代表値及び前記SOH取得部で取得したSOHを学習データとして用いて前記学習処理部で学習させた前記学習モデルを再学習させる再学習処理部と
を備える劣化推定装置。
【請求項12】
前記SOH取得部は、
蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得し、
前記代表値取得部は、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する請求項11に記載の劣化推定装置。
【請求項13】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置であって、
蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに入力するSOCの代表値、及び前記SOCの代表値を前記劣化シミュレータに入力したときに前記劣化シミュレータが出力するSOHを学習データとして学習させた学習モデルを備え、
前記学習モデルは、さらに、蓄電素子のSOCの代表値及び前記蓄電素子のSOHを学習データとして再学習してあり、
蓄電素子の第1時点でのSOHを取得するSOH取得部と、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する代表値取得部と
を備え、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値取得部で取得した代表値を前記学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する劣化推定装置。
【請求項14】
コンピュータに、蓄電素子の劣化を推定させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得する処理と、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する処理と、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値を入力データとし、前記第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項15】
コンピュータに、蓄電素子の劣化を推定させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
蓄電素子の第1時点でのSOHを取得する処理と、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの総変動量及びSOCの変動幅の少なくとも一つを含むSOCの代表値を取得する処理と、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値を学習済の学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項16】
コンピュータに、蓄電素子の劣化を推定させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに、SOCの代表値が入力されて、前記劣化シミュレータが出力するSOHを取得する処理と、
前記劣化シミュレータに入力したSOCの代表値を取得する処理と、
取得したSOCの代表値及び取得したSOHを学習データとして用いて学習モデルを学習させる処理と、
蓄電素子のSOCの代表値を取得する処理と、
前記蓄電素子のSOHを取得する処理と、
取得したSOCの代表値及び取得したSOHを学習データとして用いて、学習させた前記学習モデルを再学習させる処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項17】
コンピュータに、蓄電素子の劣化を推定させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
蓄電素子の第1時点でのSOHを取得する処理と、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する処理と、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値を、蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに入力するSOCの代表値、及び前記SOCの代表値を前記劣化シミュレータに入力したときに前記劣化シミュレータが出力するSOHを学習データとして学習させ、さらに、蓄電素子のSOCの代表値及び前記蓄電素子のSOHを学習データとして再学習させた学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項18】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定方法であって、
蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得し、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得し、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値を入力データとし、前記第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる劣化推定方法。
【請求項19】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定方法であって、
蓄電素子の第1時点でのSOHを取得し、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの総変動量及びSOCの変動幅の少なくとも一つを含むSOCの代表値を取得し、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値を学習済の学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する劣化推定方法。
【請求項20】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定方法であって、
蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに、SOCの代表値を入力し、前記劣化シミュレータが出力するSOHを取得し、
前記劣化シミュレータに入力したSOCの代表値を取得し、
取得されたSOCの代表値及び取得されたSOHを学習データとして用いて学習モデルを学習させ、
蓄電素子のSOCの代表値を取得し、
前記蓄電素子のSOHを取得し、
取得されたSOCの代表値及び取得されたSOHを学習データとして用いて、学習させた前記学習モデルを再学習させる劣化推定方法。
【請求項21】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定方法であって、
蓄電素子の第1時点でのSOHを取得し、
前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得し、
前記第1時点でのSOH及び前記代表値を、蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに入力するSOCの代表値、及び前記SOCの代表値を前記劣化シミュレータに入力したときに前記劣化シミュレータが出力するSOHを学習データとして学習させ、さらに、蓄電素子のSOCの代表値及び前記蓄電素子のSOHを学習データとして再学習させた学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する劣化推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化推定装置、コンピュータプログラム及び劣化推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子(Energy Storage Device)は、無停電電源装置、安定化電源に含まれる直流
又は交流電源装置等に広く使用されている。また、再生可能エネルギー又は既存の発電システムにて発電された電力を蓄電しておく大規模なシステムでの蓄電素子の利用が拡大している。
【0003】
蓄電モジュールは、蓄電セルが直列に接続された構成となっている。蓄電セルは、充放電を繰り返すことで劣化が進行することが知られている。特許文献1には、車両用の二次電池について、容量管理や安全管理の必要性から学習済みのニューラルネットワーク部に温度センサで検出した電池電圧を入力して二次電池のSOC(充電状態)などを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−232758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SOCの算出には、例えば、電流積算法などの手法が用いられる。比較的短時間の電流データでSOCを算出することが可能である。このため、ニューラルネットワーク部を学習させるための学習用データは収集しやすい。しかし、蓄電素子のSOH(State Of Health)の変化は、SOCの変化に比べて時間がかかるため、SOHの推定は容易ではない。
【0006】
本発明は、AIを用いた蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置、コンピュータプログラム及び劣化推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置は、蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得するSOH取得部と、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する代表値取得部と、前記第1時点でのSOH及び前記代表値を入力データとし、前記第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる学習処理部とを備える。
【0008】
コンピュータに、蓄電素子の劣化を推定させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得する処理と、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する処理と、前記第1時点でのSOH及び前記代表値を入力データとし、前記第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる処理とを実行させる。
【0009】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定方法は、蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得し、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得し、前記第1時点でのSOH及び前記代表値を入力データとし、前記第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。
【0010】
SOH取得部は、蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得する。蓄電素子は、例えば、移動体や施設において稼働している蓄電素子であってもよい。監視装置などによって、蓄電素子からセンサ情報(例えば、電流、電圧、及び温度)を収集することができる。SOHは、センサ情報に基づいて公知の手法により推定することができる。代替的に、日本特許出願第2017−065532号(引用によりその内容全体がここに取り込まれる)に記載の手法を用いてSOHを推定してもよい。第1時点と第2時点との間の期間は、適宜設定することができ、例えば、1か月、3か月としてもよい。センサ情報に周期性がある場合は、第1時点と第2時点との間の期間を、センサ情報の周期で区切ってもよい。その際、SOHは、第1時点と第2時点の内挿値を用いてもよい。
【0011】
代表値取得部は、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの代表値を取得する。リチウムイオン電池は、充放電や放置により電極と電解液の界面に固体電解質界面層(SEI層)が生成され、SEI層が成長するにつれてSOHが低下する。本願発明者は、SEI層の成長はSOCに依存するという仮説に基づき、蓄電素子のSOHの低下に影響を与えるSOCの代表値を取得してAIの学習に使用することを発案した。SOCの代表値は、稼働中の蓄電素子の詳細な挙動を抽象化した情報ということができる。
【0012】
学習処理部は、第1時点でのSOH及び代表値を入力データとし、第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。例えば、第1時点でのSOHをSOH(N)で表し、第2時点でのSOHをSOH(N+1)で表すとする。学習モデルは、第1時点でのSOHがSOH(N)であり、第1時点から第2時点までの蓄電素子のSOCの代表値に応じて、第2時点でのSOHがSOH(N+1)になるということを学習する。
【0013】
このような学習データは、第1時点のSOH、第2時点のSOH、及び第1時点と第2時点との間のSOCの代表値を含む。SOCの代表値は、学習モデルを学習させるための情報を抽象化、あるいは加工した統計量と言える。これにより、比較的少ない情報量で学習モデルを学習させることができ、蓄電素子の大量のデータを必要としない。
【0014】
ある時点(例えば、現在)のSOH、及び当該時点から予測対象時点までのSOCの代表値を学習済の学習モデルに入力すれば、予測対象時点でのSOHを推定することができる。これにより、AIを用いて蓄電素子の劣化を推定することができる。
【0015】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置は、蓄電素子の第1時点でのSOHを取得するSOH取得部と、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する代表値取得部と、前記第1時点でのSOH及び前記代表値を入力データとし、前記第2時点でのSOHを推定する学習済の学習モデルとを備える。
【0016】
コンピュータに、蓄電素子の劣化を推定させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子の第1時点でのSOHを取得する処理と、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する処理と、前記第1時点でのSOH及び前記代表値を学習済の学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する処理とを実行させる。
【0017】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定方法は、蓄電素子の第1時点でのSOHを取得し、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得し、前記第1時点でのSOH及び前記代表値を学習済の学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する。
【0018】
SOH取得部は、蓄電素子の第1時点でのSOHを取得する。監視装置などによって、蓄電素子からセンサ情報(例えば、電流、電圧、及び温度)を収集することができる。SOHは、センサ情報に基づいて公知の手法により推定することができる。代替的に、日本特許出願第2017−065532号(引用によりその内容全体がここに取り込まれる)に記載の手法を用いてSOHを推定してもよい。また、第1時点でのSOHは、第1時点よりも前の時点でのSOHに基づいて、学習済の学習モデルにより推定した値を用いることもできる。これにより、任意の期間において、連続的にSOHを推定することが可能となる。
【0019】
代表値取得部は、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの代表値を取得する。第2時点は、SOHを推定する予測対象時点である。蓄電素子のSOCの代表値は、稼働中の蓄電素子の第1時点から第2時点までの間における詳細な挙動を抽象化することにより求めることができる。
【0020】
学習済の学習モデルは、第1時点でのSOH及びSOCの代表値を入力データとして、第2時点でのSOHを推定する。これにより、第1時点(例えば、現在)のSOH、及び第1時点から第2時点(予測対象時点)までの蓄電素子のSOCの代表値が分かれば、第2時点でのSOHを推定することができる。また、第1時点から第2時点までの蓄電素子のSOCの代表値をどのように設定すれば、第2時点でのSOHをより大きく(SOHの低下を抑制)することができるかを判定することもできる。
【0021】
劣化推定装置は、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの推移を推定するSOC推定部を備え、前記代表値取得部は、前記SOCの推移に基づいて前記第1時点から第2時点までの間の、SOCの総変動量、及びSOCの変動幅の少なくともいずれか一つを取得してもよい。
【0022】
SOC推定部は、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの推移を推定する。例えば、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの時系列のデータ量が十分でなく、SOCの値が不明な時間又は時間帯が存在するような場合、得られているSOCのデータに基づいて、データが存在した箇所のSOC値を補間することにより、SOCの推移のパターンを推定することができる。これにより、大量のセンサ情報を必要としない。
【0023】
代表値取得部は、SOCの推移に基づいて第1時点から第2時点までの間のSOCの平均を取得する。SOCの平均は、第1時点から第2時点までの間のSOCの値をサンプリングして合計した値をサンプリング数で除算した値であり、中心SOCである。蓄電素子のSOCが変動する場合、SOCの平均に応じてSOHの低下の度合いが異なる。そこで、第1時点から第2時点までの間のSOCの平均を学習モデルに学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデルを生成することができる。
【0024】
代表値取得部は、SOCの推移に基づいて第1時点から第2時点までの間のSOCの総変動量を取得する。SOCの総変動量は、第1時点から第2時点までのSOCがどのように変動したかの経路に沿った変動量の積算である。蓄電素子のSOCが変動する場合、SOCの総変動量に応じてSOHの低下の度合いが異なる。そこで、第1時点から第2時点までの間のSOCの総変動量を学習モデルに学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデルを生成することができる。
【0025】
代表値取得部は、SOCの推移に基づいて第1時点から第2時点までの間のSOCの変動幅を取得する。SOCの変動幅は、第1時点から第2時点までの間のSOCの最大値と最小値との差である。蓄電素子のSOCが変動する場合、SOCの変動幅に応じてSOHの低下の度合いが異なる。そこで、第1時点から第2時点までの間のSOCの変動幅を学習モデルに学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデルを生成することができる。
【0026】
劣化推定装置は、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの推移を推定するSOC推定部を備え、前記代表値取得部は、前記SOCの推移を前記代表値として取得してもよい。
【0027】
SOC推定部は、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの推移を推定する。例えば、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの時系列のデータ量が十分でなく、SOCの値が不明な時間又は時間帯が存在するような場合、得られているSOCのデータに基づいて、データが存在した箇所のSOC値を補間することにより、SOCの推移のパターンを推定することができる。これにより、大量のセンサ情報を必要としない。
【0028】
代表値取得部は、SOCの推移を代表値として取得する。第1時点から第2時点までの間のSOCの推移のパターンに応じてSOHの低下の度合いが異なる。そこで、第1時点から第2時点までの間のSOCの推移のパターンを学習モデルに学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデルを生成することができる。
【0029】
劣化推定装置は、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子の温度の推移を取得する温度取得部を備え、前記学習処理部は、前記温度の推移をさらなる入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させてもよい。
【0030】
温度取得部は、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子の温度の推移を取得する。取得する温度の推移は、実測値でもよく、推定値でもよい。例えば、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子の温度の時系列のデータ量が十分でなく、温度の値が不明な時間又は時間帯が存在するような場合、得られている温度のデータに基づいて、データが存在した箇所の温度を補間することにより、温度の推移のパターンを推定することができる。これにより、大量のセンサ情報を必要としない。
【0031】
学習処理部は、温度の推移を入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。第1時点から第2時点までの間の温度の推移のパターンに応じてSOHの低下の度合いが異なる。そこで、第1時点から第2時点までの間の温度の推移のパターンを学習モデルに学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデルを生成することができる。
【0032】
劣化推定装置において、前記温度取得部は、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子の温度の代表値を取得し、前記学習処理部は、前記温度の代表値をさらなる入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させてもよい。
【0033】
温度の代表値は、学習モデルを学習させるための情報を抽象化、あるいは加工した統計量と言える。学習処理部は、温度の代表値を入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。第1時点から第2時点までの間の温度の代表値に応じてSOHの低下の度合いが異なる。そこで、第1時点から第2時点までの間の温度の代表値を学習モデルに学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデルを生成することができる。
【0034】
劣化推定装置において、前記学習処理部は、前記蓄電素子の製造時点から前記第1時点までの経過期間をさらなる入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させてもよい。
【0035】
学習処理部は、蓄電素子の製造時点から第1時点までの経過期間を入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。蓄電素子は、放置時間にともないSOHが低下する(カレンダー劣化)。第1時点以降のSOHの低下は、製造時点(例えば、製造完了時点)から第1時点までの経過時間の長短に依存すると考えられる。そこで、蓄電素子の製造時点から第1時点までの経過期間を入力データとする学習データをさらに生成することにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデルを生成することができる。
【0036】
劣化推定装置において、前記学習処理部は、前記蓄電素子の製造時点から前記第1時点までの充放電回数をさらなる入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させてもよい。
【0037】
学習処理部は、蓄電素子の製造時点から第1時点までの総通電電気量(例えば、充放電回数を特定することができる場合には充放電回数でもよい)を入力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる。蓄電素子は、充放電回数にともないSOHが低下する(サイクル劣化)。第1時点以降のSOHの低下は、製造時点(例えば、製造完了時点)から第1時点までの充放電回数の多少に依存すると考えられる。
【0038】
そこで、充放電回数を特定することができる場合、蓄電素子の製造時点から第1時点までの充放電回数を入力データとする学習データをさらに生成することにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデルを生成することができる。なお、充放電回数を特定することができない場合には、充放電回数に代えて総通電電気量を用いてもよい。
【0039】
劣化推定装置において、前記学習処理部は、前記第1時点から第2時点までの学習期間を前記蓄電素子の使用期間に亘って複数設けて学習データに基づいて学習モデルを学習させてもよい。
【0040】
学習処理部は、第1時点から第2時点までの学習期間を蓄電素子の使用期間に亘って複数設けて学習データに基づいて学習モデルを学習させる。第1時点から第2時点までの学習期間をΔNとすると、例えば、蓄電素子の製造時点から寿命までの使用期間に亘って、複数の学習期間ΔNそれぞれの学習用データを用いて学習モデルを学習させることにより、蓄電素子の製造後、寿命に達するまでの所要の時点でのSOHを推定することが可能となる。
【0041】
劣化推定装置は、学習処理部が学習させた学習済の学習モデルを用いて蓄電素子の劣化を推定する。これにより、第1時点(例えば、現在)のSOH、及び第1時点から第2時点(予測対象時点)までの蓄電素子のSOCの代表値が分かれば、第2時点でのSOHを推定することができる。また、第1時点から第2時点までの蓄電素子のSOCの代表値をどのように設定すれば、第2時点でのSOHをより大きく(SOHの低下を抑制)することができるかを判定することもできる。
【0042】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置は、蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに、SOCの代表値を入力し、前記劣化シミュレータが出力するSOHを取得する出力値取得部と、前記劣化シミュレータに入力したSOCの代表値を取得する入力値取得部と、前記入力値取得部で取得したSOCの代表値及び前記出力値取得部で取得したSOHを学習データとして用いて学習モデルを学習させる学習処理部と、蓄電素子のSOCの代表値を取得する代表値取得部と、前記蓄電素子のSOHを取得するSOH取得部と、前記代表値取得部で取得したSOCの代表値及び前記SOH取得部で取得したSOHを学習データとして用いて前記学習処理部で学習させた前記学習モデルを再学習させる再学習処理部とを備える。
【0043】
コンピュータに、蓄電素子の劣化を推定させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに、SOCの代表値が入力されて、前記劣化シミュレータが出力するSOHを取得する処理と、前記劣化シミュレータに入力したSOCの代表値を取得する処理と、取得したSOCの代表値及び取得したSOHを学習データとして用いて学習モデルを学習させる処理と、蓄電素子のSOCの代表値を取得する処理と、前記蓄電素子のSOHを取得する処理と、取得したSOCの代表値及び取得したSOHを学習データとして用いて、学習させた前記学習モデルを再学習させる処理とを実行させる。
【0044】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定方法は、蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに、SOCの代表値を入力し、前記劣化シミュレータが出力するSOHを取得し、前記劣化シミュレータに入力したSOCの代表値を取得し、取得されたSOCの代表値及び取得されたSOHを学習データとして用いて学習モデルを学習させ、蓄電素子のSOCの代表値を取得し、前記蓄電素子のSOHを取得し、取得されたSOCの代表値及び取得されたSOHを学習データとして用いて、学習させた前記学習モデルを再学習させる。
【0045】
出力値取得部は、蓄電素子のSOCの変動に基づいて当該蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに、SOCの代表値を入力して劣化シミュレータが出力するSOHを取得する。
【0046】
劣化シミュレータは、SOCの代表値に基づくSOCの推移及び蓄電素子の温度に基づいて蓄電素子のSOHの劣化値を推定することができる。蓄電素子の劣化予測対象期間(例えば、時点tから時点t+1まで)経過後の劣化値Qdegは、Qdeg=Qcnd+Qcurという式で算出できる。ここで、Qcndは非通電劣化値であり、Qcurは通電劣化値である。非通電劣化値Qcndは、例えば、Qcnd=K1×√(t)で求めることができる。ここで、係数K1は、SOC及び温度Tの関数である。tは経過時間であり、例えば、時点tから時点t+1までの時間である。また、通電劣化値Qcurは、例えば、Qcur=K2×√(t)で求めることができる。ここで、係数K2は、SOC及び温度Tの関数である。時点tでのSOHをSOHとし、時点t+1でのSOHをSOHt+1 とすると、SOHt+1=SOH−QdegによりSOHを推定することができる。係数K1は、劣化係数であり、SOC及び温度Tと係数K1との対応関係を演算で求めてもよく、あるいはテーブル形式で記憶しておくことができる。ここで、SOCは、例えば、中心SOC、SOC変動幅などの代表値とすることができる。係数K2についても、係数K1と同様である。
【0047】
入力値取得部は、劣化シミュレータに入力したSOCの代表値を取得する。
【0048】
学習処理部は、入力値取得部で取得したSOCの代表値及び出力値取得部で取得したSOHを学習データとして用いて学習モデルを学習させる。劣化シミュレータに様々なパターンのSOCの代表値を入力すると、劣化シミュレータは、入力したSOCの代表値に対する精度の高い劣化値(すなわち、SOH)を出力する。様々なSOCの代表値は、シミュレーション用に比較的容易に生成できるので、学習モデルの学習用データを容易に生成することができ、学習モデルの推定精度(正答率)を容易に高めることができる。
【0049】
代表値取得部は、蓄電素子のSOCの代表値を取得する。SOCの代表値は、稼働中の蓄電素子の詳細な挙動を抽象化した情報ということができ、センサ情報から得られたSOCの推移から求めることができ、例えば、SOCの平均、SOCの総変動量、SOCの変動幅などを含む。なお、SOCの代表値は、SOCの推移の実測値に基づいて求めることができるが、実測値の他に計算値を用いてもよい。
【0050】
SOH取得部は、当該蓄電素子のSOHを取得する。蓄電素子からセンサ情報(例えば、電流、電圧、及び温度)を収集することができる。SOHは、センサ情報に基づいて公知の手法により推定することができる。代替的に、日本特許出願第2017−065532号(引用によりその内容全体がここに取り込まれる)に記載の手法を用いてSOHを推定してもよい。
【0051】
再学習処理部は、代表値取得部で取得したSOCの代表値及びSOH取得部で取得したSOHを学習データとして用いて学習処理部で学習させた学習モデルを再学習させる。センサ情報を収集して得られたSOCの代表値やSOHは、例えば、推移のパターンが複雑となり、これらのデータを学習用データとして用いて未学習の学習モデルを学習させる場合、学習モデルの推定精度(正答率)を高めるのに大量の学習用データを必要とする傾向がある。予め、劣化シミュレータを用いることにより、比較的容易に学習データを得ることができ、未学習の学習モデルの推定精度を高めておくことができるので、再学習処理によって、大量の学習用データが無くても学習モデルの精度をさらに高めることができ、蓄電素子の劣化推定の精度を高くすることができる。
【0052】
劣化推定装置において、前記SOH取得部は、蓄電素子の第1時点でのSOH及び前記第1時点より後の第2時点でのSOHを取得し、前記代表値取得部は、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する。
【0053】
SOH取得部は、蓄電素子の第1時点でのSOH及び第1時点より後の第2時点でのSOHを取得する。蓄電素子は、例えば、移動体や施設において稼働している蓄電素子であってもよい。監視装置などによって、蓄電素子からセンサ情報(例えば、電流、電圧、及び温度)を収集することができる。SOHは、センサ情報に基づいて公知の手法により推定することができる。代替的に、日本特許出願第2017−065532号(引用によりその内容全体がここに取り込まれる)に記載の手法を用いてSOHを推定してもよい。第1時点と第2時点との間の期間は、適宜設定することができ、例えば、1か月、3か月としてもよい。センサ情報に周期性がある場合は、第1時点と第2時点との間の期間を、センサ情報の周期で区切ってもよい。その際、SOHは、第1時点と第2時点の内挿値を用いてもよい。
【0054】
代表値取得部は、第1時点から第2時点までの間の当該蓄電素子のSOCの代表値を取得する。リチウムイオン電池は、充放電や放置により電極と電解液の界面に固体電解質界面層(SEI層)が生成され、SEI層が成長するにつれてSOHが低下する。本願発明者は、SEI層の成長はSOCに依存するという仮説に基づき、蓄電素子のSOHの低下に影響を与えるSOCの代表値を取得してAIの学習に使用することを発案した。SOCの代表値は、稼働中の蓄電素子の詳細な挙動を抽象化した情報ということができ、例えば、SOCの平均、SOCの総変動量、SOCの変動幅を含む。
【0055】
再学習処理部は、第1時点でのSOH及び代表値を入力データとし、第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習処理部で学習済の学習モデルを再学習させる。例えば、第1時点でのSOHをSOH(N)で表し、第2時点でのSOHをSOH(N+1)で表すとする。学習モデルは、第1時点でのSOHがSOH(N)であり、第1時点から第2時点までの蓄電素子のSOCの代表値に応じて、第2時点でのSOHがSOH(N+1)になるということを再学習する。
【0056】
このような学習データは、第1時点のSOH、第2時点のSOH、及び第1時点と第2時点との間のSOCの代表値を含む。SOCの代表値は、学習済の学習モデルを再学習させるための情報を抽象化、あるいは加工した統計量と言える。これにより、比較的少ない情報量で学習済の学習モデルを再学習させることができ、蓄電素子の大量のデータを必要としない。
【0057】
ある時点(例えば、現在)のSOH、及び当該時点から予測対象時点までのSOCの代表値を学習済又は再学習済の学習モデルに入力すれば、予測対象時点でのSOHを推定することができる。これにより、AIを用いて蓄電素子の劣化を推定することができる。
【0058】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置は、蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに入力するSOCの代表値、及び前記SOCの代表値を前記劣化シミュレータに入力したときに前記劣化シミュレータが出力するSOHを学習データとして学習させた学習モデルを備え、前記学習モデルは、さらに、蓄電素子のSOCの代表値及び前記蓄電素子のSOHを学習データとして再学習してあり、蓄電素子の第1時点でのSOHを取得するSOH取得部と、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得する代表値取得部とを備え、前記第1時点でのSOH及び前記代表値取得部で取得した代表値を前記学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する。
【0059】
コンピュータに、蓄電素子の劣化を推定させるためのコンピュータプログラムは、請求項18
【0060】
蓄電素子の劣化を推定する劣化推定方法は、蓄電素子の第1時点でのSOHを取得し、前記第1時点から第2時点までの間の前記蓄電素子のSOCの代表値を取得し、前記第1時点でのSOH及び前記代表値を、蓄電素子のSOCの変動に基づいて前記蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに入力するSOCの代表値、及び前記SOCの代表値を前記劣化シミュレータに入力したときに前記劣化シミュレータが出力するSOHを学習データとして学習させ、さらに、蓄電素子のSOCの代表値及び前記蓄電素子のSOHを学習データとして再学習させた学習モデルに入力して前記第2時点でのSOHを推定する。
【0061】
学習モデルは、蓄電素子のSOCの変動に基づいて当該蓄電素子のSOHを推定する劣化シミュレータに入力するSOCの代表値、及びSOCの代表値を劣化シミュレータに入力したときに劣化シミュレータが出力するSOHを学習データとして学習させてある。学習モデルは、さらに、蓄電素子のSOCの代表値及び当該蓄電素子のSOHを学習データとして再学習してある。
【0062】
予め、劣化シミュレータを用いることにより、比較的容易に学習データを得ることができ、未学習の学習モデルの推定精度を高めておくことができる。さらに、再学習することにより、大量の学習用データが無くても学習モデルの精度をさらに高めることができ、蓄電素子の劣化推定の精度を高くすることができる。
【0063】
SOH取得部は、蓄電素子の第1時点でのSOHを取得する。代表値取得部は、第1時点から第2時点までの間の当該蓄電素子のSOCの代表値を取得する。第1時点でのSOH及び代表値取得部で取得した代表値を学習モデルに入力して第2時点でのSOHを推定する。
【0064】
ある時点(例えば、現在)のSOH、及び当該時点から予測対象時点までのSOCの代表値を学習済又は再学習済の学習モデルに入力すれば、予測対象時点でのSOHを推定することができる。これにより、AIを用いて蓄電素子の劣化を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本実施の形態の遠隔監視システムの概要を示す図である。
図2】遠隔監視システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3】通信デバイスの接続形態の一例を示す図である。
図4】サーバ装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5】学習モデルの構成の一例を示す模式図である。
図6】蓄電素子の使用時間に応じたSOHの低下の一例を示す模式図である。
図7】一定SOCにおける放置試験での温度とSOH低下との関係の一例を示す模式図である。
図8】一定温度における放置試験でのSOCの平均とSOH低下との関係の一例を示す模式図である。
図9】一定温度、一定SOC平均におけるサイクル試験でのSOCの変動幅とSOH低下との関係の一例を示す模式図である。
図10】一定温度、一定SOC変動幅におけるサイクル試験でのSOC総変動量とSOH低下との関係の一例を示す模式図である。
図11】第1時点及び第2時点での蓄電素子のSOHの低下の一例を示す模式図である。
図12】第1時点から第2時点までの温度データの一例を示す模式図である。
図13】第1時点から第2時点までのSOC推移のパターンの一例を示す模式図である。
図14】第1時点と第2時点との間のSOCの代表値の一例を示す模式図である。
図15】学習用データの一例を示す構成図である。
図16】学習用データの他の例を示す構成図である。
図17】複数の学習期間を設定した一例を示す模式図である。
図18】寿命推定のための入力データの一例を示す構成図である。
図19】寿命推定のための入力データの他の例を示す構成図である。
図20】蓄電素子の劣化推定結果の一例を示す模式図である。
図21】学習モードでの処理部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図22】推定モードでの処理部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図23】第1時点から第2時点までの蓄電素子のSOC推移パターンの一例を示す模式図である。
図24】第1時点から第2時点までの蓄電素子の温度推移パターンの一例を示す模式図である。
図25】第3実施形態の劣化シミュレータの動作を示す模式図である。
図26】劣化シミュレータによるSOHの推定の一例を示す模式図である。
図27】劣化シミュレータの推定値に基づく学習用データの一例を示す構成図である。
図28】学習モデルの学習データセットと推定精度との関係の一例を示す模式図である。
図29】第3実施形態の学習モードでの処理部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
(第1実施形態)
以下、本実施の形態に係る劣化推定装置を図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の遠隔監視システム100の概要を示す図である。図1に示すように、公衆通信網(例えば、インターネットなど)N1及び移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークN2などを含むネットワークNには、火力発電システムF、メガソーラー発電システムS、風力発電システムW、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)U及び鉄道用の安定化電源システム等に配設される整流器(直流電源装置、又は交流電源装置)Dなどが接続されている。また、ネットワークNには、後述の通信デバイス1、通信デバイス1から情報を収集し、劣化推定装置としてのサーバ装置2、及び収集された情報を取得するクライアント装置3などが接続されている。本実施の形態において、劣化推定装置は、寿命シミュレータであってもよい。
【0067】
より具体的には、キャリアネットワークN2には基地局BSが含まれ、クライアント装置3は、基地局BSからネットワークNを経由してサーバ装置2と通信することができる。また、公衆通信網N1にはアクセスポイントAPが接続されており、クライアント装置3は、アクセスポイントAPからネットワークNを経由してサーバ装置2との間で情報を送受信することができる。
【0068】
メガソーラー発電システムS、火力発電システムF及び風力発電システムWには、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)P、及び蓄電システム101が併設されている。蓄電システム101は、蓄電モジュール群Lを収容したコンテナCを複数並設して構成されている。蓄電モジュール群Lは、例えば、蓄電セル(セルとも称する)を複数直列に接続した蓄電モジュール(モジュールとも称する)と、蓄電モジュールを複数直列に接続したバンクと、バンクを複数並列に接続したドメインとの階層構造にて構成されている。蓄電素子は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池のような二次電池や、キャパシタのような、再充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子の一部が、再充電不可能な一次電池であってもよい。
【0069】
図2は遠隔監視システム100の構成の一例を示すブロック図である。遠隔監視システム100は、通信デバイス1、サーバ装置2、クライアント装置3などを備える。
【0070】
図2に示すように、通信デバイス1は、ネットワークNに接続されるとともに、対象装置P、U、D、Mにも接続されている。対象装置P、U、D、Mは、パワーコンディショナP、無停電電源装置U、整流器D、後述する管理装置Mを含む。
【0071】
遠隔監視システム100では、各対象装置P、U、D、Mに接続した通信デバイス1を用いて、蓄電システム101における蓄電モジュール(蓄電セル)の状態(例えば、電圧、電流、温度、充電状態(SOC)を監視するとともに収集する。遠隔監視システム100は、検知された蓄電セルの状態(劣化状態、異常状態などを含む)をユーザ又はオペレータ(保守担当者)が確認できるように提示する。
【0072】
通信デバイス1は、制御部10、記憶部11、第1通信部12及び第2通信部13を備える。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などで構成され、内蔵するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、通信デバイス1全体を制御する。
【0073】
記憶部11は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることができる。記憶部11には、制御部10が読み出して実行するデバイスプログラム1Pが記憶されている。記憶部11には、制御部10の処理によって収集された情報、イベントログ等の情報が記憶される。
【0074】
第1通信部12は、対象装置P、U、D、Mとの通信を実現する通信インタフェースであり、例えば、RS−232C又はRS−485等のシリアル通信インタフェースを用いることができる。
【0075】
第2通信部13は、ネットワークNを経由して通信を実現するインタフェースであり、例えば、Ethernet(登録商標)、又は無線通信用アンテナ等の通信インタフェースを用いる。制御部10は、第2通信部13を介してサーバ装置2と通信が可能である。
【0076】
クライアント装置3は、発電システムS、Fの蓄電システム101の管理者、対象装置P、U、D、Mの保守担当者等のオペレータが使用するコンピュータであってもよい。クライアント装置3は、デスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。クライアント装置3は、制御部30、記憶部31、通信部32、表示部33、及び操作部34を備える。
【0077】
制御部30は、CPUを用いたプロセッサである。制御部30は、記憶部31に記憶されているWebブラウザプログラムに基づき、サーバ装置2又は通信デバイス1により提供されるWebページを表示部33に表示させる。
【0078】
記憶部31は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部31には、Webブラウザプログラムを含む各種プログラムが記憶されている。
【0079】
通信部32は、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイス、基地局BS(図1参照)に接続する移動通信用の無線通信デバイス、又はアクセスポイントAPへの接続に対応する無線通信デバイスを用いることができる。制御部30は、通信部32により、ネットワークNを介してサーバ装置2又は通信デバイス1との間で通信接続又は情報の送受信が可能である。
【0080】
表示部33は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを用いることができる。表示部33は、制御部30のWebブラウザプログラムに基づく処理により、サーバ装置2で提供されるWebページのイメージを表示することができる。
【0081】
操作部34は、制御部30との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイス、若しくは音声入力部等のユーザインタフェースである。操作部34は、表示部33のタッチパネル、又は筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部34は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
【0082】
サーバ装置2の構成については後述する。
【0083】
図3は通信デバイス1の接続形態の一例を示す図である。図3に示すように、通信デバイス1は、管理装置Mに接続される。管理装置Mには、さらに、バンク#1〜#Nそれぞれに設けられた管理装置Mが接続されている。なお、通信デバイス1は、バンク#1〜#Nそれぞれに設けられた管理装置Mと通信して蓄電素子の情報を受信する端末装置(計測モニタ)であってもよいし、電源関連装置に接続可能なネットワークカード型の通信デバイスであってもよい。
【0084】
各バンク#1〜#Nは、複数の蓄電モジュール60を備え、各蓄電モジュール60は、制御基板(CMU:Cell Monitoring Unit)70を備える。バンク毎に設けられている管理装置Mは、蓄電モジュール60に夫々内蔵されている通信機能付きの制御基板70とシリアル通信によって通信を行うことができるとともに、通信デバイス1に接続された管理装置Mとの間で情報の送受信を行うことができる。通信デバイス1に接続された管理装置Mは、ドメインに所属するバンクの管理装置Mからの情報を集約し、通信デバイス1へ出力する。
【0085】
図4はサーバ装置2の構成の一例を示すブロック図である。サーバ装置2は、制御部20、通信部21、記憶部22、及び処理部23を備える。処理部23は、SOC推定部24、SOC代表値取得部25、学習データ生成部26、学習モデル27、学習処理部28、及び入力データ生成部29を備える。サーバ装置2は、1台のサーバコンピュータでもよいが、これに限定されるものではなく、複数台のサーバコンピュータで構成してもよい。なお、サーバ装置2は、シミュレータであってもよい。
【0086】
制御部20は、例えば、CPUで構成することができ、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、サーバ装置2全体を制御する。制御部20は、記憶部22に記憶されているサーバプログラム2Pに基づく情報処理を実行する。サーバプログラム2PにはWebサーバプログラムが含まれ、制御部20は、クライアント装置3へのWebページの提供、Webサービスへのログインの受け付け等を実行するWebサーバとして機能する。制御部20は、サーバプログラム2Pに基づき、SNMP(Simple Network Management Protocol)用サーバとして通信デバイス1から情報を収集することも可能である。
【0087】
通信部21は、ネットワークNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には、通信部21は、ネットワークNに対応したネットワークカードである。
【0088】
記憶部22は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることができる。記憶部22には、制御部20の処理によって収集される監視対象となる対象装置P、U、D、Mの状態を含むセンサ情報(例えば、蓄電素子の電圧データ、電流データ、温度データ)を記憶する。
【0089】
処理部23は、記憶部22のデータベースに収集された蓄電素子(蓄電モジュール、蓄電セル)のセンサ情報(時系列の電圧データ、時系列の電流データ、時系列の温度データ)を、蓄電素子毎に区分して取得することができる。
【0090】
処理部23は、学習モデル27を学習させる学習モードと、学習済の学習モデル27を用いて蓄電素子のSOH(State Of Health)を推定(劣化を推定)する推定モードで動
作する。SOHは、現在の満充電容量を、新品で所定温度のときの満充電容量を基準に比較した指標である。例えば、SOHが80%は、新品の80%しか容量がないことを意味する。また、容量の代わりに、充放電可能な電力量を基準としてもよい。一般的には、SOHが閾値より小さくなると寿命に達し、蓄電素子は使用できないと判断される。
【0091】
図5は学習モデル27の構成の一例を示す模式図である。学習モデル27は、深層学習(ディープラーニング)を含むニューラルネットワークモデルであり、入力層、出力層及び複数の中間層から構成されている。なお、図5では、便宜上、2つ中間層を図示しているが、中間層の層数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0092】
入力層、出力層及び中間層には、1つ又は複数のノード(ニューロン)が存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みで結合されている。入力層のノードの数と同数の成分を有するベクトルが、学習モデル27の入力データ(学習用の入力データ及びSOH推定用の入力データ)として与えられる。入力データには、蓄電素子情報、時間情報、SOCの平均、SOCの総変動量、SOCの変動幅、温度の平均、SOH情報などが含まれる。出力データには、SOH情報が含まれる。これらの情報の詳細は後述する。また、特にSOCに関する情報と温度情報とは互いに関連し、かつ、SOCに関する情報及び温度情報の局所的な変動がSOHの変化に関連するため、それらを反映する、畳み込み層やプーリング層を中間層に加えた畳み込みニューラルネットワークを用いることが望ましい。
【0093】
入力層の各ノードに与えられたデータは、最初の中間層に入力して与えられると、重み及び活性化関数を用いて中間層の出力が算出され、算出された値が次の中間層に与えられ、以下同様にして出力層の出力が求められるまで次々と後の層(下層)に伝達される。なお、ノードを結合する重みのすべては、学習アルゴリズムによって計算される。
【0094】
学習モデル27の出力層は、出力データとしてSOH情報を生成する。出力データは、出力層のノードの数(出力層のサイズ)と同じサイズの成分を有するベクトル形式のデータとすることができる。例えば、蓄電素子のSOHを、0%から100%まで1%毎に出力する場合、出力層のノード数を101とすることができる。なお、実用的なSOH情報として、例えば、60%から100%の間で1%毎にSOHを推定した場合には、出力層のノード数を41とすればよい。また、SOHの値を数%毎に区切り、数%の区切り毎に出力データを出力してもよい。なお、出力層からの出力値は、SOHの各区分に分類される確率と解釈することができる。
【0095】
学習モデル27及び学習処理部28は、例えば、CPU(例えば、複数のプロセッサコアを実装したマルチ・プロセッサなど)、GPU(Graphics Processing Units)、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)などのハードウェアを組み合わせることによって構成することができる。また、量子プロセッサを組み合わせることもできる。学習モデル27は、ニューラルネットワークモデルに限定されるものではなく、他の機械学習モデルでもよい。
【0096】
図6は蓄電素子の使用時間に応じたSOHの低下の一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOH(%)を示し、横軸は時間を示す。蓄電素子は、使用時間(放置時間も含む)によりSOHが低下する。図6に示すように、時点ta、tb、tc、tdとし、時点tbと時点taとの時間は、時点tdと時点tcとの時間と同じとする。この場合、時点taから時点tbまでの間のSOHの低下ΔSOH(tb)と、時点tcから時点tdまでの間のSOHの低下ΔSOH(td)とで異なる。このように、同じ使用期間でも、蓄電素子の使用状態によって、SOHの低下度合いは異なる。そこで、蓄電素子の様々な使用状態を特定するために、異なる二つの時点間の蓄電素子の使用状態を把握することが、蓄電素子のSOHを推定するために重要な因子となる。
【0097】
図7は一定SOCにおける放置試験での温度とSOH低下との関係の一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOHを示し、横軸は時間を示す。図7に示すように、蓄電素子の温度が高い方がSOHの低下の度合いが大きいことが分かる。すなわち、SOHの低下(減少)と温度(平均温度)との間には相関があり、SOHを推定(予測)する場合に、温度(平均温度)は重要な情報となる。
【0098】
図8は一定温度における放置試験でのSOCの平均とSOH低下との関係の一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOHを示し、横軸は時間を示す。SOCの平均とは、ある期間内でのSOCの値をサンプリングして合計した値をサンプリング数で除算した値であり、中心SOCである。図8に示すように、SOCの平均が異なれば、SOHの低下の度合いが異なることが分かる。すなわち、SOHの低下(減少)とSOCの平均との間には相関があり、SOHを推定(予測)する場合に、SOCの平均は重要な代表値となる。
【0099】
図9は一定温度、一定SOC平均におけるサイクル試験でのSOCの変動幅とSOH低下との関係の一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOHを示し、横軸は時間を示す。SOCの変動幅とは、ある期間内でSOCが変動した場合、当該期間のSOCの最大値と最小値との差である。図9に示すように、SOCの変動幅が大きいほど、SOHの低下の度合いが大きくなることが分かる。すなわち、SOHの低下(減少)とSOCの変動幅との間には相関があり、SOHを推定(予測)する場合に、SOCの変動幅は重要な代表値となる。
【0100】
図10は一定温度、一定SOC変動幅におけるサイクル試験でのSOC総変動量とSOH低下との関係の一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOHを示し、横軸は時間を示す。SOC総変動量とは、ある期間においてSOCがどのように変動したかの経路に沿った変動量の積算である。図10に示すように、SOC総変動量が大きいほど、SOHの低下の度合いが大きくなることが分かる。すなわち、SOHの低下(減少)とSOC総変動量との間には相関があり、SOHを推定(予測)する場合に、SOC総変動量は重要な代表値となる。
【0101】
図11は第1時点及び第2時点での蓄電素子のSOHの低下の一例を示す模式図である。第1時点でのSOHをSOH(N)で表し、第2時点でのSOHをSOH(N+1)で表す。第2時点でのSOHの低下{SOH(N)−SOH(N+1)}は、第1時点でのSOH(N)だけでなく、第1時点から第2時点まで、当該蓄電素子がどのような使用状態であったかに応じて異なる。別言すれば、蓄電素子の第1時点でのSOH(N)を特定することにより、第1時点から第2時点までの蓄電素子の使用状態が分かれば、蓄電素子の第2時点でのSOH(N+1)を推定することが可能となる。また、前述のとおり、蓄電素子の温度(平均温度)、SOCに係る代表値によって、第1時点から第2時点までの使用状態を特徴付けることができる。
【0102】
以下では、まず学習モデル27の学習モードについて説明する。
【0103】
処理部23は、SOH取得部としての機能を有し、蓄電素子の第1時点でのSOH及び第1時点より後の第2時点でのSOHを取得する。蓄電素子は、例えば、実際に移動体や施設において稼働している蓄電素子とすることができる。SOHは、センサ情報に基づいて公知の手法により推定することができる。代替的に、日本特許出願第2017−065532号(引用によりその内容全体がここに取り込まれる)に記載の手法を用いてSOHを推定してもよい。第1時点と第2時点との間の期間は、適宜設定することができ、例えば、1か月、3か月としてもよい。センサ情報に周期性がある場合は、第1時点と第2時点との間の期間を、センサ情報の周期で区切ってもよい。その際、SOHは、第1時点と第2時点の内挿値を用いてもよい。また、第1時点でのSOHは、第1時点よりも前の時点でのSOHに基づいて、学習済の学習モデル27により推定した値を用いることもできる。これにより、任意の期間において、蓄電素子の製造後の使用期間(放置期間も含む)において、連続的に蓄電素子のSOHを推定することが可能となる。
【0104】
SOC代表値取得部25は、代表値取得部としての機能を有し、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの代表値を取得する。蓄電素子(例えば、リチウムイオン電池)は、充放電や放置により電極と電解液の界面に固体電解質界面層(SEI層)が生成され、SEI層が成長するにつれてSOHが低下する。本願発明者は、SEI層の成長はSOCに依存するという仮説に基づき、蓄電素子のSOHの低下に影響を与えるSOCの代表値を取得してAIの学習に使用することを発案した。SOCの代表値は、稼働中の蓄電素子の詳細な挙動を抽象化した情報ということができる。なお、SOCの代表値を外部のサーバ装置などから取得するようにしてもよい。
【0105】
学習データ生成部26は、第1時点でのSOH及び第1時点と第2時点との間のSOCの代表値を入力データとし、第2時点でのSOHを出力データとする学習データを生成する。
【0106】
学習処理部28は、学習データ生成部26で生成した学習データに基づいて学習モデル27を学習させる。
【0107】
なお、上述の学習データ生成部26は、サーバ装置2内に具備する必要はなく、他のサーバ装置に具備するようにし、当該サーバ装置で生成された学習データを取得し、学習処理部28が、取得した学習データに基づいて学習モデル27を学習させる構成でもよい。本明細書の以下の説明においても同様である。
【0108】
第1時点でのSOHをSOH(N)で表し、第2時点でのSOHをSOH(N+1)で表すとする。学習モデル27は、第1時点でのSOHがSOH(N)であり、第1時点から第2時点までの蓄電素子のSOCの代表値に応じて、第2時点でのSOHがSOH(N+1)になるということを学習する。
【0109】
このような学習データは、第1時点のSOH、第2時点のSOH、及び第1時点と第2時点との間のSOCの代表値を含む。SOCの代表値は、学習モデル27を学習させるための情報を抽象化、あるいは加工した統計量と言える。これにより、比較的少ない情報量で学習モデル27を学習させることができ、蓄電素子の大量のデータを必要としない。
【0110】
ある時点(例えば、現在)のSOH、及び当該時点から予測対象時点までのSOCの代表値の学習済の学習モデル27に入力すれば、予測対象時点でのSOHを推定することができる。これにより、AIを用いて蓄電素子の劣化を推定することができる。
【0111】
次に、第1時点と第2時点との間の蓄電素子の使用状態を特徴付ける平均温度、及びSOCの代表値について説明する。
【0112】
図12は第1時点から第2時点までの温度データの一例を示す模式図である。図中、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。処理部23は、第1時点と第2時点との間で温度データに基づいて、第1時点と第2時点との間の平均温度を算出する。なお、図12の例では、第1時点と第2時点との間で温度データが詳細に得られているが、データ数が少ない場合でも、第1時点と第2時点との間の平均温度を求めることができる。
【0113】
図13は第1時点から第2時点までのSOC推移のパターンの一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOCを示し、横軸は時間を示す。SOC推定部24は、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの推移を推定する。なお、図13の例では、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの時系列のデータが詳細に得られているが、データ数が少ない場合でも、第1時点と第2時点との間のSOC推移のパターンを求めることができる。例えば、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの時系列のデータ量が十分でなく、SOCの値が不明な時間又は時間帯が存在するような場合、得られているSOCのデータに基づいて、データが存在した箇所のSOC値を補間することにより、SOCの推移のパターンを推定することができる。これにより、大量のセンサ情報を必要としない。
【0114】
図14は第1時点と第2時点との間のSOCの代表値の一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOCを示し、横軸は時間を示す。SOC代表値取得部25は、SOC推移パターンに基づいて第1時点から第2時点までの間のSOCの平均を取得する。SOCの平均は、第1時点から第2時点までの間のSOCの値をサンプリングして合計した値をサンプリング数で除算した値であり、中心SOCである。蓄電素子のSOCが変動する場合、SOCの平均に応じてSOHの低下の度合いが異なる。学習データ生成部26は、第1時点から第2時点までの間のSOCの平均を入力データとする学習用データを生成する。第1時点から第2時点までの間のSOCの平均を学習モデル27に学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデル27を生成することができる。
【0115】
SOC代表値取得部25は、SOC推移パターンに基づいて第1時点から第2時点までの間のSOCの総変動量を取得する。SOCの総変動量は、第1時点から第2時点までのSOCがどのように変動したかの経路に沿った変動量の積算である。蓄電素子のSOCが変動する場合、SOCの総変動量に応じてSOHの低下の度合いが異なる。学習データ生成部26は、第1時点から第2時点までの間のSOCの総変動量を入力データとする学習用データを生成する。第1時点から第2時点までの間のSOCの総変動量を学習モデル27に学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデル27を生成することができる。
【0116】
SOC代表値取得部25は、SOC推移パターンに基づいて第1時点から第2時点までの間のSOCの変動幅を取得する。SOCの変動幅は、第1時点から第2時点までの間のSOCの最大値と最小値との差である。蓄電素子のSOCが変動する場合、SOCの変動幅に応じてSOHの低下の度合いが異なる。学習データ生成部26は、第1時点から第2時点までの間のSOCの変動幅を入力データとする学習用データを生成する。第1時点から第2時点までの間のSOCの変動幅を学習モデル27に学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデル27を生成することができる。上述のように、第1実施形態においては、SOCの代表値は、第1時点から第2時点までの間のSOCの平均、第1時点から第2時点までの間のSOCの総変動量、第1時点から第2時点までの間のSOCの変動幅とすることができる。
【0117】
学習データ生成部26は、第1時点と第2時点との間の平均温度を入力データとする学習用データを生成する。なお、平均温度も第1時点と第2時点との間の温度の推移ということができる。
【0118】
図15は学習用データの一例を示す構成図である。図15の例では、第1時点から第2時点までの時間幅をΔtで表している。図15に示すように、学習用入力データは、第1時点から第2時点までの時間幅Δt、時間幅Δtでの平均温度、時間幅ΔtでのSOCの平均、時間幅ΔtでのSOCの総変動量、時間幅ΔtでのSOCの変動幅、第1時点でのSOH(N)とすることができる。学習用出力データは、第2時点でのSOH(N+1)とすることができる。なお、学習用入力データは、図15に示すデータを全て含む必要はなく、例えば、SOCの総変動量又はSOCの変動幅のいずれか、あるいは両方を省略してもよい。ただし、SOCの総変動量、SOCの変動幅を学習させることにより、SOHの推定精度の向上が期待できる。
【0119】
図16は学習用データの他の例を示す構成図である。図15の例との違いは、学習用入力データに、さらに、製造時点(例えば、製造完了時点)から第1時点までの経過時間Dt1、及び製造時点(例えば、製造完了時点)から第1時点までの充放電回数Ct1を含めることができる。
【0120】
学習データ生成部26は、蓄電素子の製造時点から第1時点までの経過期間を入力データとする学習データを生成することができる。蓄電素子は、放置時間にともないSOHが低下する(カレンダー劣化)。第1時点以降のSOHの低下は、製造時点(例えば、製造完了時点)から第1時点までの経過時間の長短に依存すると考えられる。そこで、蓄電素子の製造時点から第1時点までの経過期間を入力データとする学習データをさらに生成することにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデル27を生成することができる。
【0121】
学習データ生成部26は、蓄電素子の製造時点から第1時点までの総通電電気量(例えば、充放電回数を特定することができる場合には充放電回数でもよい)を入力データとする学習データを生成することができる。蓄電素子は、充放電回数にともないSOHが低下する(サイクル劣化)。第1時点以降のSOHの低下は、製造時点(例えば、製造完了時点)から第1時点までの充放電回数の多少に依存すると考えられる。そこで、充放電回数を特定することができる場合、蓄電素子の製造時点から第1時点までの充放電回数を入力データとする学習データをさらに生成することにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデル27を生成することができる。なお、経過時間Dt1又は充放電回数Ct1のいずれか一方だけを用いて学習データを生成してもよい。また、充放電回数を特定することができない場合には、充放電回数に代えて総通電電気量を用いてもよい。
【0122】
上述の例では、第1時点から第2時点までの学習期間を一つだけ設定する例について説明したが、これに限定されるものではない。
【0123】
図17は複数の学習期間を設定した一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOHを示し、横軸は時間を示す。図17に示すように、時点N1、時点N2、時点N3、時点N4、時点N5、時点N6、時点N7、及び時点N8を設定する。隣り合う時点間の時間は異なっていてもよい。時点N1を第1時点とし、時点N2を第2時点とする学習期間を設定することができる。また、時点N2を第1時点とし、時点N3を第2時点とする学習期間
を設定することができる。以下、同様である。
【0124】
図17に示すように、学習データ生成部26は、第1時点から第2時点までの学習期間を蓄電素子の使用期間に亘って複数設けて学習データを生成することができる。第1時点から第2時点までの学習期間をΔNとすると、例えば、蓄電素子の製造時点から寿命までの使用期間に亘って、複数の学習期間ΔNそれぞれの学習用データを用いて学習モデル27を学習させることにより、蓄電素子の製造後、寿命に達するまでの所要の時点でのSOHを推定することが可能となる。すなわち、蓄電素子の寿命予測が可能となる。
【0125】
次に、SOHを推定する推定モードについて説明する。
【0126】
図18は寿命推定のための入力データの一例を示す構成図である。図18に示すように、寿命推定のための入力データは、予測期間の時間幅Δte、時間幅Δteでの平均温度、時間幅ΔteでのSOCの平均、時間幅ΔteでのSOCの総変動量、時間幅ΔteでのSOCの変動幅、予測期間の始点(第1時点)でのSOHeとすることができる。時間幅Δteは、学習用データで用いられた、第1時点から第2時点までの時間幅と同じとすることができる。なお、寿命推定のための入力データは、図18に示すデータを全て含む必要はなく、例えば、SOCの総変動量又はSOCの変動幅のいずれか、あるいは両方を省略してもよい。ただし、SOCの総変動量、SOCの変動幅を入力データに加えることにより、SOHの推定精度の向上が期待できる。
【0127】
入力データ生成部29は、第1時点でのSOH及び第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの代表値に基づいて寿命推定のための入力データを生成する。具体的には、入力データ生成部29は、図18に例示したような、予測期間の時間幅Δte、時間幅Δteでの平均温度、時間幅ΔteでのSOCの平均、時間幅ΔteでのSOCの総変動量、時間幅ΔteでのSOCの変動幅、予測期間の始点(第1時点)SOHeに係る入力データを生成する。例えば、第1時点でのSOHeは、第1時点よりも前の時点でのSOHに基づいて、学習済の学習モデル27により推定した値を用いることもできる。これにより、任意の期間において、連続的にSOHを推定することが可能となる。
【0128】
学習済の学習モデル27は、入力データ生成部29が生成した入力データに基づいて、予測対象時点(予測期間の終点、すなわち第2時点)でのSOHを推定する。これにより、第1時点(例えば、現在)のSOH、及び予測期間での蓄電素子のSOCの代表値が分かれば、予測対象時点でのSOHを推定することができる。また、第1時点のSOHを用いることにより、第1時点を基準にして、予測期間での蓄電素子のSOCの代表値をどのように設定すれば、予測対象時点でのSOHをより大きく(SOHの低下を抑制)することができるかを判定することもできる。
【0129】
図19は寿命推定のための入力データの他の例を示す構成図である。図18の例との違いとして、入力データに、さらに、製造時点(例えば、製造完了時点)から予測期間の始点までの経過時間Dte、及び製造時点(例えば、製造完了時点)から予測期間の始点までの充放電回数Cteを含んでいる。
【0130】
図20は蓄電素子の劣化推定結果の一例を示す模式図である。図中、縦軸はSOHを示し、横軸は時間を示す。学習済の学習モデル27は、予測期間の始点(例えば、現在)において、将来の予測対象時点でのSOHを推定する。図20において、破線で示す曲線は、蓄電素子の現在から予測対象時点までの予定使用条件(例えば、ユーザが予定している使用状態)におけるSOHの推移を示す。本実施の形態のサーバ装置2によれば、蓄電素子の現在から予測対象時点までの使用条件を変えてSOHを推定することができる。例えば、実線で示す曲線のように、予測対象時点でのSOHの低下を抑制することができる使用条件(推奨使用条件)を見つけることができる。現在(始点)のSOH、すなわち第1時点のSOHを用いることにより、第1時点を基準にして、始点から予測対象時点までの蓄電素子の使用条件をどのように設定すれば、SOHの低下を抑制することができるかの情報をユーザに提供することができる。
【0131】
図21は学習モードでの処理部23の処理手順の一例を示すフローチャートである。処理部23は、第1時点及び第2時点を設定し(S11)、第1時点及び第2時点のSOHを取得する(S12)。処理部23は、第1時点から第2時点までのセンサ情報(時系列の電流データ、時系列の温度データ、時系列の電圧データ)を取得する(S13)。
【0132】
処理部23は、取得したセンサ情報に基づいて第1時点から第2時点までの時間幅ΔtでのSOC推移パターンを生成し(S14)、時間幅ΔtでのSOCの代表値を取得する(S15)。処理部23は、時間幅Δt、SOCの代表値、時間幅Δtでの平均温度及び第1時点のSOHを入力データとし、第2時点でのSOHを出力データとする学習用データを生成する(S16)。
【0133】
処理部23は、生成した学習用データに基づいて、学習モデル27の学習及び更新を行い(S17)、処理を終了するか否かを判定する(S18)。処理を終了しないと判定した場合(S18でNO)、処理部23は、ステップS12以降の処理を続け、処理を終了すると判定した場合(S18でYES)、処理を終了する。
【0134】
図22は推定モードでの処理部23の処理手順の一例を示すフローチャートである。処理部23は、予測期間を設定し(S31)、予測期間の始点(第1時点)でのSOHを取得する(S32)。処理部23は、予測期間のセンサ情報を取得し(S33)、取得したセンサ情報に基づいて、予測期間のSOC推移パターンを生成する(S34)。
【0135】
処理部23は、予測期間のSOCの代表値を取得し(S35)、予測期間の時間幅、SOCの代表値、平均温度、予測期間の始点でのSOHに基づいて予測用入力データを生成する(S36)。処理部23は、予測対象時点でのSOHを推定し(S37)、処理を終了する。
【0136】
上述のように、本実施の形態のサーバ装置2によれば、学習モデル27を学習させる際に、大量のデータを必要としない。蓄電素子の使用状態を特徴付けるSOCについての代表値を取得し、取得した代表値に基づいて学習モデル27を学習させることができるので、少ないデータ量でも学習させることが可能となる。特に、蓄電素子の開発フェーズや製造フェ−ズの初期段階のように、蓄電素子の実稼働時におけるセンサ情報の大量取得が困難な段階においても、蓄電素子の劣化予測が可能となる。また、センサ情報をそのまま学習用のデータとして使用しないので、センサ情報に含まれる誤差の影響を抑制することができる。また、学習モデル27は、畳み込み層やプーリング層を中間層に加えた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いてもよい。これにより、SOC情報と温度情報との関連性、及びSOC情報及び温度情報の局所的な変動とSOHの変化との関連性を反映させて学習することができる。
【0137】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、SOCの代表値という抽象化されたデータを用いる構成であったが、これに限定されるものではない。第2実施形態では、抽象化の度合いを小さくして、よりセンサ情報などの時系列データに近い態様で学習用データを生成することができる。
【0138】
図23は第1時点から第2時点までの蓄電素子のSOC推移パターンの一例を示す模式図である。図23に示すSOC推移パターンは、図13に示したものと同様である。SOC推定部24は、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOC推移パターンを生成する。例えば、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの時系列のデータ量が十分でなく、SOCの値が不明な時間又は時間帯が存在するような場合、得られているSOCのデータに基づいて、データが存在した箇所のSOC値を補間することにより、SOC推移パターンを生成することができる。これにより、大量のセンサ情報を必要としない。
【0139】
SOC代表値取得部25は、SOC推定部24が生成したSOC推移パターンを代表値として取得する。第1時点から第2時点までの間のSOC推移のパターンに応じてSOHの低下の度合いが異なる。上述のように、第2実施形態においては、SOCの代表値は、第1時点から第2時点までの間のSOCの推移のパターンとすることができる。
【0140】
図24は第1時点から第2時点までの蓄電素子の温度推移パターンの一例を示す模式図である。図中、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。処理部23は、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子の温度推移パターンを生成する。例えば、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子の温度の時系列のデータ量が十分でなく、温度の値が不明な時間又は時間帯が存在するような場合、得られている温度のデータに基づいて、データが存在した箇所の温度を補間することにより、温度の推移のパターンを推定することができる。これにより、大量のセンサ情報を必要としない。なお、処理部23は、温度の推移を取得する取得部としての機能を有し、温度推移パターンを取得してもよく、あるいは蓄電素子の温度推移の実測値を取得してもよい。また、処理部23は、温度の代表値を取得してもよい。温度の代表値は、学習モデル27を学習させるための情報を抽象化、あるいは加工した統計量とすることができる。温度の代表値は、例えば、図14に示すSOCの代表値と同様であって、温度平均、温度変動幅、温度総変動量などを含めることができる。
【0141】
学習データ生成部26は、SOC推移パターン及び温度推移パターンを入力データとする学習データを生成することができる。第1時点から第2時点までの間の温度の推移のパターンに応じてSOHの低下の度合いが異なる。そこで、第1時点から第2時点までの間のSOC推移のパターン及び温度推移のパターンを学習モデル27に学習させることにより、精度良くSOHを推定できる学習済の学習モデル27を生成することができる。なお、学習データとしては、第1時点と第2時点との間を複数の時間幅で区切り、SOC推移のパターン及び温度推移のパターンの時系列の時間幅毎の値を使用すればよい。また、第2実施形態においても、学習データには、第1時点のSOHを入力データとし、第2時点のSOHを出力データとする点は、第1実施形態と同様である。なお、学習データ生成部26は、SOC推移パターン及び、温度推移の実測値や代表値を入力データとする学習データを生成することができる。
【0142】
第2実施形態によれば、第1実施形態の場合よりもセンサ情報がより多く収集することができる段階では、センサ情報自体の特徴を反映した劣化予測が可能となる。
【0143】
(第3実施形態)
上述の第1実施形態及び第2実施形態では、学習処理部28(処理部23)が、学習モデル27を学習及び更新する構成であったが、第3実施形態では、学習処理部28(処理部23)は、後述の劣化シミュレータが出力する蓄電素子の劣化値(SOH)を学習データとして用いて学習モデル27を学習させ、第1実施形態及び第2実施形態と同様の処理を用いて学習済の学習モデル27を再学習させることができる。以下、第3実施形態について説明する。
【0144】
図25は第3実施形態の劣化シミュレータ50の動作を示す模式図である。劣化シミュレータ50は、SOCパターン及び温度パターンを入力データとして取得すると、蓄電素子の劣化値を推定(算出)する。SOCパターンは、SOCの代表値によって特定できる。SOCの代表値は、蓄電素子の劣化に影響を与えるものであり、例えば、SOC平均(中心SOCとも称する)、SOC変動幅、SOCの総変動量などを含む。
【0145】
すなわち、劣化シミュレータ50は、SOCの代表値に基づくSOCの推移及び蓄電素子の温度に基づいて蓄電素子のSOHの劣化値を推定することができる。時点tでのSOH(健康度ともいう)をSOHt とし、時点t+1でのSOHをSOHt+1 とすると、劣化値は(SOHt −SOHt+1 )となる。すなわち、時点tでのSOHが分かっていると、劣化値に基づいて時点t+1でのSOHを求めることができる。ここで、時点は、現在又は将来のある時点とすることができ、時点t+1は、時点tから将来に向かって所要の時間が経過した時点とすることができる。時点tと時点t+1との時間差は、劣化シミュレータ50の劣化予測対象期間であり、どの程度の将来に対して劣化値を予測するかに応じて適宜設定することができる。時点tと時点t+1との時間差は、例えば、1か月、半年、1年、2年などの所要の時間とすることができる。
【0146】
なお、図25の例では、温度パターンを入力する構成であるが、温度パターンに代えて、所要温度(例えば、時点tから時点t+1までの平均温度)を入力してもよい。
【0147】
蓄電素子の劣化予測対象期間(例えば、時点tから時点t+1まで)経過後の劣化値Qdegは、Qdeg=Qcnd+Qcurという式で算出できる。ここで、Qcndは非通電劣化値であり、Qcurは通電劣化値である。非通電劣化値Qcndは、例えば、Qcnd=K1×√(t)で求めることができる。ここで、係数K1は、SOC及び温度Tの関数である。tは経過時間であり、例えば、時点tから時点t+1までの時間である。また、通電劣化値Qcurは、例えば、Qcur=K2×√(t)で求めることができる。ここで、係数K2は、SOC及び温度Tの関数である。時点tでのSOHをSOHとし、時点t+1でのSOHをSOHt+1 とすると、SOHt+1=SOH−QdegによりSOHを推定することができる。係数K1は、劣化係数であり、SOC及び温度Tと係数K1との対応関係を演算で求めてもよく、あるいはテーブル形式で記憶しておくことができる。ここで、SOCは、例えば、中心SOC、SOC変動幅などの代表値とすることができる。係数K2についても、係数K1と同様である。
【0148】
図26は劣化シミュレータ50によるSOHの推定の一例を示す模式図である。図26に示すように、符号A、B、Cで示す3つのSOCの代表値(SOCパターン)を劣化シミュレータ50に入力したとする。なお、温度は時点tから時点t+1までの平均温度を入力する。符号Aで示すSOCパターンは、SOCの変動幅が比較的小さい。一方、符号Cで示すSOCパターンは、SOCの変動幅が比較的大きい。符号Bで示すSOCパターンは、SOCの変動幅が両者の中間程度である。図26に示すように、劣化シミュレータ50によるSOHの推定を符号A、B、Cで示す。符号AのSOHの推移は、符号AのSOCパターンに対応し、符号BのSOHの推移は、符号BのSOCパターンに対応し、符号CのSOHの推移は、符号CのSOCパターンに対応している。このように、SOCの変動幅が大きいほど劣化値が大きくなる傾向が見られる。
【0149】
図26では、便宜上、3つの比較的単純なSOCパターンを例示したが、様々なSOCパターンを劣化シミュレータ50に入力することにより、様々なSOCパターンに対応した劣化値(SOH)を推定することができ、SOCパターンに対応するSOHの推定結果のデータの組を大量かつ容易に生成することができる。
【0150】
処理部23は、入力値取得部としての機能を有し、劣化シミュレータ50に入力したSOCの代表値を取得することができる。また、処理部23は、出力値取得部としての機能を有し、劣化シミュレータ50にSOCの代表値が入力されたときに劣化シミュレータ50が出力するSOHを取得することができる。すなわち、処理部23は、劣化シミュレータ50に入力されたSOCの代表値と、そのときに劣化シミュレータ50が出力するSOH(劣化値により求められる)を取得する。
【0151】
学習処理部28は、取得したSOCの代表値及び取得したSOHを学習データとして用いて学習モデル27を学習させる。
【0152】
図27は劣化シミュレータ50の推定値に基づく学習用データの一例を示す構成図である。図27の例では、時点tから時点t+1までの時間幅をΔtで表している。図27に示すように、学習用入力データは、時点tから時点t+1までの時間幅Δt、時間幅Δtでの平均温度、時間幅ΔtでのSOCの平均、時間幅ΔtでのSOCの総変動量、時間幅ΔtでのSOCの変動幅、時点tでのSOH(N)とすることができる。学習用出力データは、時点t+1でのSOH(N+1)とすることができる。なお、学習用入力データは、図27に示すデータを全て含む必要はなく、例えば、SOCの総変動量又はSOCの変動幅のいずれか、あるいは両方を省略してもよい。ただし、SOCの総変動量、SOCの変動幅を学習させることにより、SOHの推定精度の向上が期待できる。
【0153】
劣化シミュレータ50に様々なパターンのSOCの代表値を入力すると、劣化シミュレータ50は、入力したSOCの代表値に対する精度の高い劣化値(すなわち、SOH)を出力するので、学習モデル27の学習用データを容易に生成することができ、学習モデル27の推定精度(正答率)を容易に高めることができる。
【0154】
次に、劣化シミュレータ50のデータに基づく学習用データを用いて学習させた学習モデル27に対して、学習処理部28による再学習処理について説明する。学習処理部28による再学習処理は、第1実施形態及び第2実施形態における学習処理と同様である。
【0155】
SOC代表値取得部25は、代表値取得部としての機能を有し、蓄電素子のSOCの代表値を取得する。SOCの代表値は、稼働中の蓄電素子の詳細な挙動を抽象化した情報ということができ、センサ情報から得られたSOCの推移から求めることができ、例えば、SOCの平均、SOCの総変動量、SOCの変動幅などを含む。なお、SOCの代表値は、SOCの推移の実測値に基づいて求めることができるが、実測値の他に計算値を用いてもよい。
【0156】
より具体的には、SOC代表値取得部25は、第1時点から第2時点までの間の当該蓄電素子のSOCの代表値を取得する。リチウムイオン電池は、充放電や放置により電極と電解液の界面に固体電解質界面層(SEI層)が生成され、SEI層が成長するにつれてSOHが低下する。本願発明者は、SEI層の成長はSOCに依存するという仮説に基づき、蓄電素子のSOHの低下に影響を与えるSOCの代表値を取得してAIの学習に使用することを発案した。SOCの代表値は、稼働中の蓄電素子の詳細な挙動を抽象化した情報ということができ、例えば、SOCの平均、SOCの総変動量、SOCの変動幅を含む。
【0157】
処理部23は、SOH取得部としての機能を有し、当該蓄電素子のSOHを取得する。蓄電素子からセンサ情報(例えば、電流、電圧、及び温度)を収集することができる。SOHは、センサ情報に基づいて公知の手法により推定することができる。代替的に、日本特許出願第2017−065532号(引用によりその内容全体がここに取り込まれる)に記載の手法を用いてSOHを推定してもよい。
【0158】
より具体的には、処理部23は、蓄電素子の第1時点でのSOH及び第1時点より後の第2時点でのSOHを取得する。蓄電素子は、例えば、移動体や施設において稼働している蓄電素子であってもよい。監視装置などによって、蓄電素子からセンサ情報(例えば、電流、電圧、及び温度)を収集することができる。SOHは、センサ情報に基づいて公知の手法により推定することができる。代替的に、日本特許出願第2017−065532号(引用によりその内容全体がここに取り込まれる)に記載の手法を用いてSOHを推定してもよい。第1時点と第2時点との間の期間は、適宜設定することができ、例えば、1か月、3か月としてもよい。センサ情報に周期性がある場合は、第1時点と第2時点との間の期間を、センサ情報の周期で区切ってもよい。その際、SOHは、第1時点と第2時点の内挿値を用いてもよい。
【0159】
学習処理部28は、再学習処理部としての機能を有し、取得したSOCの代表値及び取得したSOHを学習データとして用いて学習モデル27を再学習させる。
【0160】
より具体的には、学習処理部28は、第1時点でのSOH及び代表値を入力データとし、第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習済の学習モデル27を再学習させる。例えば、第1時点でのSOHをSOH(N)で表し、第2時点でのSOHをSOH(N+1)で表すとする。学習モデルは、第1時点でのSOHがSOH(N)であり、第1時点から第2時点までの蓄電素子のSOCの代表値に応じて、第2時点でのSOHがSOH(N+1)になるということを再学習する。
【0161】
このような学習データは、第1時点のSOH、第2時点のSOH、及び第1時点と第2時点との間のSOCの代表値を含む。SOCの代表値は、学習済の学習モデル27を再学習させるための情報を抽象化、あるいは加工した統計量と言える。これにより、比較的少ない情報量で学習済の学習モデルを再学習させることができ、蓄電素子の大量のデータを必要としない。
【0162】
ある時点(例えば、現在)のSOH、及び当該時点から予測対象時点までのSOCの代表値を学習済又は再学習済の学習モデル27に入力すれば、予測対象時点でのSOHを推定することができる。これにより、AIを用いて蓄電素子の劣化を推定することができる。
【0163】
図28は学習モデル27の学習データセットと推定精度との関係の一例を示す模式図である。図28において、縦軸は学習モデル27の推定精度(正答率)を示し、横軸は学習データセット(学習に要したデータ量)を示す。符号R′で示す曲線は、実測値(例えば、市場のデータ)のみによる学習の場合を示す。符号R′で示す曲線のように、センサ情報を収集して得られたSOCの代表値やSOHは、例えば、推移のパターンが複雑となり、これらのデータを学習用データとして用いて未学習の学習モデル27を学習させる場合、学習モデル27の推定精度(正答率)を高めるのに大量の学習用データを必要とする傾向がある。
【0164】
符号Saで示す曲線は、劣化シミュレータ50のデータを学習用データとして用いて学習させた場合を示す。劣化シミュレータ50に様々なパターンのSOCの代表値を入力すると、劣化シミュレータ50は、入力したSOCの代表値に対する精度の高い劣化値(すなわち、SOH)を出力するので、学習モデル27の学習用データを容易に生成することができ、学習モデル27の推定精度(正答率)を容易に高めることができる。符号Saで示す曲線のように、予め、劣化シミュレータを用いることにより、比較的容易に学習データを得ることができ、未学習の学習モデルの推定精度を高めておくことができる。ただし、符号Sbの曲線で示すように、劣化シミュレータ50のパラメータを決定する場合、多量なデータを反映しにくいという傾向があり、推定精度がデータ量の割に向上しにくくなるという傾向がある。
【0165】
符号Rで示す曲線は、劣化シミュレータ50の推定値を用いた学習の後で実測値による再学習を行った場合を示す。符号Rで示す曲線のように、大量の学習用データが無くても学習モデル27の精度をさらに高めることができ、蓄電素子の劣化推定の精度を高くすることができる。
【0166】
上述のように、学習モデル27は、劣化シミュレータ50に入力するSOCの代表値、及びSOCの代表値を劣化シミュレータ50に入力したときに劣化シミュレータ50が出力するSOHを学習データとして学習させてある。学習モデル27は、さらに、蓄電素子のSOCの代表値及び当該蓄電素子のSOHを学習データとして再学習してある。
【0167】
学習モデル27の学習において、予め、劣化シミュレータ50を用いることにより、比較的容易に学習データを得ることができ、未学習の学習モデル27の推定精度を高めておくことができるので、再学習処理にとって大量の学習用データが無くても学習モデル27の精度をさらに高めることができ、蓄電素子の劣化推定の精度を高くすることができる。
【0168】
サーバ装置2は、蓄電素子の第1時点でのSOHを取得する。サーバ装置2は第1時点から第2時点までの間の当該蓄電素子のSOCの代表値を取得する。サーバ装置2は、第1時点でのSOH及び取得したSOCの代表値を学習モデル27に入力して第2時点でのSOHを推定することができる。
【0169】
ある時点(例えば、現在)のSOH、及び当該時点から予測対象時点までのSOCの代表値を学習済又は再学習済の学習モデル27に入力すれば、サーバ装置2は、予測対象時点でのSOHを推定することができる。これにより、AIを用いて蓄電素子の劣化を推定することができる。
【0170】
図29は第3実施形態の学習モードでの処理部23の処理手順の一例を示すフローチャートである。処理部23は、劣化シミュレータにSOCの代表値及び温度パターンを入力し(S41)、劣化シミュレータが出力するSOH(劣化値)を取得し(S42)、劣化シミュレータ50に入力したSOCの代表値、温度パターンを取得する(S43)。なお、ステップS41の処理は、処理部23で行わず、予め別の装置で行っておくことができる。
【0171】
処理部23は、SOCの代表値、温度パターン、時点tでのSOHを入力データとし、時点t+1のSOHを出力データとする学習用データを生成し(S44)、生成した学習用データを用いて学習モデル27を学習させる(S45)。
【0172】
処理部23は、劣化シミュレータ50のデータの有無を判定し(S46)、データがある場合(S46でYES)、ステップS41以降の処理を続ける。データがない場合(S46でNO)、処理部23は、実測値データを用いて学習モデル27を再学習し(S47)、処理を終了する。ステップS47の処理は、図21に例示した処理と同様の処理とすることができる。
【0173】
上述の実施の形態では、サーバ装置2が、学習モデル27及び学習処理部28を備える構成であったが、これに限定されない。例えば、学習モデル27及び学習処理部28を別の1又は複数のサーバに設けるようにしてもよい。劣化推定装置は、サーバ装置2に限定されない。例えば、寿命推定シミュレータのような装置であってもよい。劣化シミュレータ50は、サーバ装置2に組み込むこともできるが、サーバ装置2とは別個の装置として構成することもできる。
【0174】
本実施の形態の制御部20及び処理部23は、CPU(プロセッサ)、GPU、RAM(メモリ)などを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図21図22及び図29に示すような、各処理の手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAM(メモリ)にロードし、コンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)で実行することにより、コンピュータ上で制御部20及び処理部23を実現することができる。コンピュータプログラムは記録媒体に記録され流通されてもよい。サーバ装置2で学習させた学習モデル27及びそれに基づくコンピュータプログラムが、ネットワークN及び通信デバイス1経由で遠隔監視の対象装置P、U、D、Mや端末装置に配信されインストールされてもよい。
【0175】
上述の実施の形態において、例えば、過学習を避けるため、学習の初期の段階では、代表値を用いて学習モデル27を学習させ、その後、実測値を用いて学習させてもよい。また、代表値と実測値のデータ量を学習段階に応じて適宜変更、あるいは両者の比率を変えるようにしてもよい。また、学習用データを、いわゆる訓練データとテストデータとを分けて、まず、訓練データを用いて学習モデル27を学習させ、その後、テストデータを用いて学習モデル27の評価を行うこともできる。
【0176】
実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0177】
2 サーバ装置
20 制御部
21 通信部
22 記憶部
23 処理部
24 SOC推定部
25 SOC代表値取得部
26 学習データ生成部
27 学習モデル
28 学習処理部
29 入力データ生成部
50 劣化シミュレータ
【要約】
【課題】AIを用いた蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置、コンピュータプログラム及び劣化推定方法を提供する。
【解決手段】劣化推定装置は、蓄電素子の第1時点でのSOH及び第1時点より後の第2時点でのSOHを取得するSOH取得部と、第1時点から第2時点までの間の蓄電素子のSOCの代表値を取得する代表値取得部と、第1時点でのSOH及び代表値を入力データとし、第2時点でのSOHを出力データとする学習データに基づいて学習モデルを学習させる学習処理部とを備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
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図5
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図29