特許第6579304号(P6579304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579304
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】漏水防止部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/02 20060101AFI20190912BHJP
   F24F 1/30 20110101ALI20190912BHJP
   F24F 1/36 20110101ALI20190912BHJP
【FI】
   F16L5/02 A
   F24F1/30
   F24F1/36
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-30379(P2015-30379)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-151341(P2016-151341A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100184321
【弁理士】
【氏名又は名称】森野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松原 慎弥
【審査官】 吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−195135(JP,A)
【文献】 特開平07−296660(JP,A)
【文献】 特開平07−021863(JP,A)
【文献】 特開2005−274079(JP,A)
【文献】 実開平02−143587(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/02
F24F 1/30
F24F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体に設けられた貫通孔と前記貫通孔に挿入された管状体との間に取り付けられる漏水防止部材であって、
前記貫通孔の孔形状に対応した外周形状の筒状部、及び、前記筒状部の外周面から突出した一対の環状突出部であって該一対の環状突出部の両先端が前記筒状部の軸線方向において前記板状体の厚さに対応した距離だけ離れた環状突出部、を有する第1シール部と、
前記管状体の外周形状に対応した孔形状の開口部を有する第2シール部と、
前記第1シール部と前記第2シール部とを隙間なく繋ぐ連結部であって、前記軸線が属する平面による切断面における厚さが前記第1シール部及び前記第2シール部の双方よりも小さい薄肉形状、並びに、前記切断面における形状が屈曲部を含まない形状であり、前記軸線方向に直交する方向への剪断力に対する剛性が前記第1シール部及び前記第2シール部の双方よりも小さい連結部と、を備えると共に、
前記第1シール部、前記第2シール部及び連結部は弾性体によって一体に形成され、
前記貫通孔と前記管状体との相対変位によって前記連結部が変形するように構成され
前記第2シール部が、前記開口部を画成する筒状の管状体支持部と、前記管状体支持部の内周面から突出する環状の凸部と、前記管状体支持部の上側端に接続されるとともに前記連結部の厚さよりも厚い円盤部を有し、
前記第1シール部は、前記第2シール部の下方に位置し、
前記連結部は、前記円盤部の外周に接続されるとともに前記軸線方向に平行な方向に沿って筒状に形成されている、
漏水防止部材。
【請求項2】
請求項1に記載の漏水防止部材において、
前記板状体が、エンジン駆動式空気調和装置の室外機における熱交換器室とエンジン室とを仕切るドレンパンであり、
前記貫通孔が、前記ドレンパンに形成された連通孔であり、
前記管状体が、前記連通孔に挿入された冷媒輸送管である、
漏水防止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体に設けられた貫通孔とその貫通孔に挿入された管状体との間に取り付けられる漏水防止部材に関し、特に、エンジン駆動式空気調和装置の室外機において上室(熱交換器室)から下室(エンジン室)への水漏れを防ぐための漏水防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動式空気調和装置(例えば、ガスヒートポンプエアコン)の室外機は、一般に、隔壁(ドレンパン)によって区分けされた上下2室構造を有する。具体的には、上室(熱交換器室)には、冷媒と空気との間の熱交換を行う熱交換器、及び、熱交換器に空気を供給する送風機などが格納される。一方、下室(エンジン室)には、冷媒を圧縮する圧縮機、及び、圧縮機を駆動するエンジン等が格納される。これら上下室を仕切る隔壁には上下室を連通する連通孔が設けられ、この連通孔を貫通する冷媒輸送管(冷媒パイプ)を通じ、冷媒が上下室の間を移動する(換言すると、冷媒回路を循環する)。
【0003】
上述した室外機の上室(熱交換器室)には、一般に、熱交換に用いる空気を導入または放出するための多くの開口部が設けられる。そのため、それら開口部を通じ、上室に雨水等が侵入する場合がある。雨水等の大部分は隔壁(ドレンパン)に設けられた専用の排水口に案内されて上室の外部に排出されるが、その一部が上述した連通孔に向かって流れる場合がある。連通孔から下室(エンジン室)への水漏れは、エンジン及び圧縮機などの劣化の原因となり、ひいては空気調和装置の耐用期間を縮める原因ともなり得る。そこで、一般に、このような水漏れを防ぐための漏水防止部材が連通孔に取り付けられる。
【0004】
例えば、従来の漏水防止部材の1つ(以下「従来部材」という。)は、ドレンパンの連通孔の孔形状に対応した外周形状を有する筒形状の第1部品、及び、冷媒パイプの外周形状に対応した孔形状の開口部を有する傘形状の第2部品、の2つの部品を備えている。従来部材は、第1部品の外周面を連通孔に密着させると共に、第2部品の開口部に冷媒パイプを挿入して密着させるように取り付けられる。これにより、従来部材は、第1部品によってドレンパンを伝って連通孔に向かう雨水等を遮断し、第2部品によって冷媒パイプを伝って連通孔に向かう雨水等を遮断するようになっている。更に、従来部材は、2つの独立した部品を備えるため、連通孔に対する冷媒パイプの位置が設計上の位置とは異なる場合であっても(例えば、製造ばらつきによる位置ずれ、及び、冷媒の温度変化に起因する冷媒パイプの変形による位置ずれ等)、連通孔に向かう雨水等を遮断できる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−274079号公報
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
従来部材は、第1部品と第2部品とが互いに独立して移動可能であることから、冷媒パイプ及び連通孔の位置ずれ(相対変位)に対応できるようになっている。しかし、その反面、上記位置ずれに起因して第1部品と第2部品との間に隙間が生じると、その隙間から水漏れが生じる虞がある。この水漏れは従来部材の周辺にシリコンコーキング等の封止処理を施すことによって防止できるものの、同処理は室外機の製造コストを高める原因となる。そこで、別途の封止処理を要することなく、連通孔からの水漏れを防止すると共に、冷媒パイプ及び連通孔の位置ずれへ対応することが望ましい。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、板状体に設けられた貫通孔とその貫通孔に挿入された管状体との間の位置ずれ(相対変位)に対応しつつ、それらの間の水漏れを防ぐことが可能な、漏水防止部材を提供することにある。
【0008】
(課題を解決するための手段)
上記課題を達成するための本発明の漏水防止部材は、
板状体に設けられた貫通孔と前記貫通孔に挿入された管状体との間に取り付けられる漏水防止部材であって、
前記貫通孔の孔形状に対応した外周形状の筒状部、及び、前記筒状部の外周面から突出した一対の環状突出部であって該一対の環状突出部の両先端が前記筒状部の軸線方向において前記板状体の厚さに対応した距離だけ離れた環状突出部、を有する「第1シール部」と、
前記管状体の外周形状に対応した孔形状の開口部を有する「第2シール部」と、
前記第1シール部と前記第2シール部とを隙間なく繋ぐ連結部であって、前記軸線が属する平面による切断面における厚さが前記第1シール部及び前記第2シール部の双方よりも小さい薄肉形状、並びに、前記切断面における形状が屈曲部を含まない形状であり、前記軸線方向に直交する方向への剪断力に対する剛性が前記第1シール部及び前記第2シール部の双方よりも小さい「連結部」と、を備える。
【0009】
更に、本発明の漏水防止部材において、
前記第1シール部、前記第2シール部及び連結部は、弾性体によって「一体に」形成されている。そして、本発明の漏水防止部材は、前記貫通孔と前記管状体との相対変位によって前記連結部が変形するように構成されている。
更に、本発明の漏水防止部材において
前記第2シール部が、前記開口部を画成する筒状の管状体支持部と、前記管状体支持部の内周面から突出する環状の凸部と、前記管状体支持部の上側端に接続されるとともに前記連結部の厚さよりも厚い円盤部を有し、
前記第1シール部は、前記第2シール部の下方に位置し、
前記連結部は、前記円盤部の外周に接続されるとともに前記軸線方向に平行な方向に沿って筒状に形成されている。
【0010】
上記構成によれば、第1シール部は、「貫通孔の孔形状に対応した外周形状の筒状部」を有するため、筒状部の外周面が貫通孔に密着するように、板状体へ取り付けられ得る。このとき、筒状部が有する「一対の環状突出部」の「両先端が前記筒状部の軸線方向において前記板状体の厚さに対応した距離だけ離れ」ているため、環状突出部が板状体を厚さ方向に挟み込むことにより、第1シール部が板状体に固定され得る。一方、第2シール部は、「管状体の外周形状に対応した孔形状の開口部」を有するため、開口部の内周面が管状体に密着するように、管状体に取り付けられ得る。更に、連結部が「前記第1シール部と前記第2シール部とを隙間なく繋ぐ」ため、第1シール部と第2シール部との間に水が通過可能な開口が存在しない。
【0011】
よって、「第1シール部」が板状体を伝って貫通孔に向かう水を遮断し、「第2シール部」が管状体を伝って貫通孔に向かう液体を遮断し、「連結部」が第1シール部と第2シール部との間を通って貫通孔に向かう水を遮断し得る。
【0012】
更に、上記構成によれば、連結部の「前記軸線方向に直交する方向への剪断力に対する剛性」が「前記第1シール部及び前記第2シール部の双方よりも小さい」ため、管状体および貫通孔の位置ずれ(一般に、この軸線方向に直交する方向における相対変位と見なし得る。)が生じた場合、第1シール部および第2シール部よりも先に連結部が変形し得る。換言すると、第1シール部および第2シール部の変形が抑制され、第1シール部および第2シール部による水の遮断効果が維持される。加えて、「前記第1シール部、前記第2シール部及び連結部は弾性体によって一体に形成され」ているため、そのような変形が生じた場合であっても、従来部材のような隙間が生じない。
【0013】
よって、管状体および貫通孔の位置ずれ(相対変位)が生じても、第1シール部および第2シール部の機能(水の遮断)に出来る限り影響を及ぼすことなく、連結部の変形によってその位置ずれに対応し得る。その結果、本発明の漏水防止部材は、従来部材のように別途の封止部材を要することなく、貫通孔からの水漏れを防止すると共に、管状体および貫通孔の位置ずれに対応できる。
【0014】
したがって、本発明の漏水防止部材は、板状体に設けられた貫通孔とその貫通孔に挿入された管状体との間の位置ずれ(相対変位)に対応しつつ、それらの間の水漏れを防ぐことができる。
【0015】
更に、本発明の漏水防止部材は、従来部材に比べて部品数が少なく(従来部材は2つの部材の複合体であるが、本発明の漏水防止部材は単一の連続体であり)、且つ、取り付け時に別途の封止部材を必要としない。その結果、本発明の漏水防止部材は、従来部材に比べて部材そのものの製造コストを低減できると共に、実際の使用時(例えば、空気調和装置の室外機に適用されたとき)のコストも低減できるという効果も有する。
【0016】
ところで、上記「貫通孔の孔形状に対応した外周形状の筒状部」における「対応した」は、貫通孔の孔側面と筒状部の外周面とが水漏れ防止の観点において十分な程度に密着可能である形状を表し、必ずしも両者が同一または相似な形状であることを表さない。例えば、貫通孔の孔形状に「対応した」外周形状として、貫通孔の孔形状と相似形状であり且つ孔形状よりも僅かに大きい形状(例えば、孔形状が円である場合にその円よりも径が大きい円形)、及び、貫通孔の孔形状と相似形状ではないものの孔形状を包含する形状(例えば、孔形状が円である場合にその円に外接する多角形)等が用いられ得る。
【0017】
更に、上記「両先端が前記筒状部の軸線方向において前記板状体の厚さに対応した距離だけ離れた環状突出部」及び「管状体の外周形状に対応した孔形状の開口部」における「対応した」についても、同様である。例えば、環状突出部の両先端は、筒状部の軸線方向(板状体の厚さ方向と実質的に同じ)において板状体の厚さと同一の距離だけ離れてもよく、板状体の厚さよりも僅かに短い距離だけ離れてもよい。また、第2シール部の開口部は、管状体の外周形状と相似形状であり且つ外周形状よりも僅かに小さい形状(例えば、外周形状が円である場合にその円よりも径が小さい円形)、及び、管状体の外周形状と相似形状ではないものの外周形状に包含される形状(例えば、外周形状が円である場合にその円に内接する多角形)等が用いられ得る。
【0018】
上記「隙間なく繋ぐ」は、第1シール部と第2シール部との間に水漏れの原因となる開口がないようにそれらを連結することを表し、連結部の具体的な形状などは特に制限されない。また、上記「一体に形成された」とは、第1シール部、第2シール部および連結部が単一の連続体であり、従来部材のように分離可能な複合体ではないことを表す。但し、必ずしも、漏水防止部材の全体が同一の材料によって形成される必要はなく、第1シール部、第2シール部および連結部の一部が他部と異なる材料によって形成されてもよい。
【0019】
上記「軸線方向に直交する方向への剪断力に対する剛性」は、第1シール部、第2シール部および連結部の各々に単位変形を生じさせるために必要な剪断力(剪断力/変形量)を表し、剪断剛性とも表現され得る。例えば、第1シール部の「剛性」は、第1シール部の軸線方向における下端を固定端とし且つ上端を自由端とすると共に、上端に「軸線方向に直交する方向」の力を及ぼす場合において、上端を単位量だけ変位させるために要する力の大きさとして取得(測定)され得る。なお、第2シール部および連結部の剛性についても、同様に取得(測定)され得る。
【0023】
なお、本発明の漏水防止部材は、必ずしも単一材料によって形成されなくてもよい。例えば、本例以外にも、第1シール部および第2シール部を構成する材料よりも弾性係数が小さい材料によって連結部を形成することにより、上述した剛性を有する連結部を形成し得る。
【0025】
また、前記第2シール部は、
前記開口部を画成する筒状の管状体支持部と、前記管状体支持部の内周面から突出する環状の凸部と、を有するように構成される
【0026】
上記構成により、第2シール部は、「筒状の管状体支持部」が画成する開口部(筒体の中空部分)に管状体を挿入すると共に、「内周面から突出する環状の凸部」を管状体に密着させるように、管状体に取り付けられ得る。なお、「環状の凸部」の突出高さ及び数などは、特に制限されず、第2シール部に要求される管状体への密着性(換言すると、水の遮断性)及び製造コスト等を考慮して定められればよい。
【0027】
ところで、本発明の漏水防止部材は、種々の板状体および管状体に対して用いることができ、具体的な適用対象は特に制限されない。例えば、風雨に曝される環境にあり且つ雨水等から隔離すべき機器を内蔵する点から、エンジン駆動式空気調和装置の室外機に好適に用いることができる。
【0028】
具体的には、本発明の漏水防止部材は、
前記板状体が、エンジン駆動式空気調和装置の室外機における熱交換器室とエンジン室とを仕切るドレンパンであり、
前記貫通孔が、前記ドレンパンに形成された連通孔であり、
前記管状体が、前記連通孔に挿入された冷媒輸送管である、
ように用いられ得る。
【0029】
上記構成により、ドレンパンの連通孔からエンジン室への水漏れを防ぐことができ、エンジン室内の機器(エンジン及び圧縮機など)の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る漏水防止部材が取り付けられるエンジン駆動式空気調和装置の室外機を示す模式図である。
図2図1の漏水防止部材の構造を説明する模式図である。
図3図1の漏水防止部材が貫通孔および管状体の位置ずれに対応して変形する様子を説明する模式図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る漏水防止部材を説明する模式図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る漏水防止部材を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<部材の概要>
以下、本発明の実施形態に係る漏水防止部材100(以下「実施部材100」という。)の概略構成を、図面を参照しながら説明する。
【0032】
実施部材100は、エンジン駆動式空気調和装置(以下「GHP」という。)の室外機200に取り付けられる。図1は、実施部材100が取り付けられた室外機200の概略構成を表している。以下、便宜上、実施部材100の構成について説明する前に、室外機200の構成について説明する。
【0033】
室外機200は、ドレンパン201によって区分けされた熱交換器室(上室)200aとエンジン室(下室)200bとを有している。熱交換器室200aはドレンパン201の上面と筐体202とに囲まれた空間であり、エンジン室200bはドレンパン201の下面と筐体202とに囲まれた空間である。
【0034】
熱交換器室200aには、冷媒と空気との間の熱交換を行う熱交換器203、及び、熱交換器203に空気を供給するための送風機204a,204bが格納されている。一方、エンジン室200bには、都市ガス及びプロパンガス等のガスを燃料とするガスエンジン205、ガスエンジン205から出力される駆動力を用いて冷媒を圧縮する圧縮機206、圧縮機206から吐出された冷媒をGHPの運転モード(冷房運転または暖房運転)に応じた方向に案内する四方切換弁207、圧縮機206に吸入される圧縮前の冷媒の気液分離を行うアキュムレータ208、及び、ガスエンジン205の排熱と冷媒との間の熱交換を行うサブ熱交換器209が格納されている。なお、サブ熱交換器209に流れる冷媒の流量は、流量調整弁210によって調整される。
【0035】
上述した各部材は、冷媒が通過する冷媒パイプ211によって繋がれ、冷媒回路を構成している。冷媒回路は、図中の右方向に伸び、GHPの室内機(図示省略)に接続されている。これにより、圧縮機206によって圧縮された冷媒が、冷媒回路を循環するようになっている。なお、ガスエンジン205とサブ熱交換器209とを繋ぐ冷却水管212は、ガスエンジン205の冷却水を輸送するパイプであり、冷媒回路には属さない。
【0036】
ドレンパン201には、熱交換器室200aとエンジン室200bとを連通する連通孔が設けられており、その連通孔を冷媒パイプ211が貫通している(詳細は後述される。)。実施部材100は、連通孔と冷媒パイプ211との間に取り付けられ、連通孔と冷媒パイプ211との間の水漏れを防ぐようになっている。なお、本例において、連通孔(及び実施部材100)は2箇所に設けられているが、連通孔(及び実施部材100)の数は室外機の構造に対応して定まり、必ずしも2箇所に限定されない。
【0037】
図2は、ドレンパン201に実施部材100が取り付けられた様子(図1のAの部分)を表す断面図である。本図に示すように、ドレンパン201は、実施部材100が取り付けられている位置に開口部201aを有すると共に、開口部201aの周辺において上方向(熱交換器室200aに向かう方向)に略直角に湾曲している。この湾曲したドレンパン201の内周面201bは、熱交換器室200aとエンジン室200bとを連通する連通孔を画成している。そこで、以下、内周面201bを「連通孔201b」と称呼する。
【0038】
実施部材100は、本図に示すように、全体として筒状の形状を有している。より具体的には、実施部材100は、第1シール部101、第2シール部102、及び、連結部103を有している。第1シール部101、第2シール部102及び連結部103は、弾性体(本例においては、エチレン・プロピレン・ジエンゴム。EPDM)により、一体に形成されている。換言すると、実施部材100は、第1シール部101、第2シール部102及び連結部103を含む単一の連続体である。
【0039】
第1シール部101は、連通孔201bの孔形状に対応した外周形状(外周面101a1)を有する筒状部101a、筒状部101aの外周面101a1から突出した一対の環状突出部101b,101cを有している。より具体的には、平面視において、連通孔201bは円形であり、取り付け前の筒状部101aの外周面101a1の形状(平面視における形状)は連通孔201bよりも僅かに直径が大きい円形である。これにより、取り付け後の筒状部101aの外周面101a1が連通孔201bの孔側面に密着し、ドレンパン201を伝って連通孔201bに向かう雨水等が遮断されることになる。
【0040】
更に、環状突出部101b,101cの先端は、筒状部101aの軸線方向AXにおいて、ドレンパン201の厚さに対応した距離だけ離れている。より具体的には、本断面図において、取り付け前の両先端部は、ドレンパン201の厚さよりも僅かに短い距離だけ離れている。これにより、取り付け後の環状突出部101b,101cがドレンパン201を上下方向から押圧するように挟み、ドレンパン201を伝って連通孔201bに向かう雨水等が遮断されると共に、第1シール部101が(ひいては実施部材100が)ドレンパン201に固定されることになる。
【0041】
なお、環状突出部101b及びドレンパン201は、断面が略三角形の空隙Bを画成している。よって、経年劣化等によってドレンパン201を伝う雨水等が環状突出部101bとドレンパン201との間を通過した場合であっても、その雨水等が空隙Bに一時的に貯留されることになる。これにより、ドレンパン201を伝って連通孔201bに向かう雨水等が更に確実に遮断されることになる。
【0042】
第2シール部102は、冷媒パイプ211の外周形状に対応した孔形状を有する筒状のパイプ支持部102a、及び、パイプ支持部102aが繋がる円盤部102bを有している。更に、第2シール部102は、パイプ支持部102aの内周面から突出する2つの環状の凸部102a1,102a2を有している。パイプ支持部102aの内周面および環状の凸部102a1,102a2は、冷媒パイプ211を挿入するための開口部を画成している。より具体的には、平面視において、冷媒パイプ211の外周面は円形であり、取り付け前のパイプ支持部102aの内周面(特に、環状の凸部102a1,102a2の先端)は冷媒パイプ211よりも僅かに直径が小さい円形である。これにより、取り付け後のパイプ支持部102aの内周面(特に、環状の凸部102a1,102a2)が冷媒パイプ211の外周面に密着し、冷媒パイプ211を伝って連通孔201bに向かう雨水等が遮断されることになる。
【0043】
連結部103は、軸線AXが属する平面による切断面(即ち、図2に示す切断面)における厚さが、第1シール部101及び第2シール部102の厚さの双方よりも小さい薄肉形状を有している。これにより、連結部103は、軸線AXに直交する方向(例えば、図3の紙面における左右方向)への剪断力に対する剛性が、第1シール部101及び第2シール部102の双方よりも小さくなっている。
【0044】
なお、本例において、第1シール部101の厚さとして、連結部103の上端部が繋がる円盤部102bの厚さを用い、第2シール部102の厚さとして、連結部103の下端部が繋がる筒状部101aの厚さを用いた。また、連結部103の剛性を測定する場合、例えば、“連結部103の軸線方向AXにおける下端(第1シール部101との接続位置)を固定端とし且つ上端(第2シール部102との接続位置)を自由端とすると共に、その上端に軸線方向AXに直交する方向の力を及ぼす場合において、上端を所定の単位量だけ変位させるために要する力の大きさ”を剛性として用い得る。第1シール部101及び第2シール部102の剛性についても、同様に、“図中の下端を固定端とし且つ上端と自由端とした場合において単位変形を生じさせるための剪断力”を剛性として用い得る。
【0045】
以上が、実施部材100の概要である。
【0046】
<位置ずれへの対応>
図3を参照しながら、連通孔201b及び冷媒パイプ211の位置ずれ(相対変位)に実施部材100が対応する様子を説明する。
【0047】
例えば、本図に示すように、冷媒パイプ211が連通孔201bに対して右方向に相対変位した場合(図中の実線矢印を参照。)、連結部103の上記剛性が第1シール部101及び第2シール部102の双方よりも小さいため、第1シール部101および第2シール部102よりも先に連結部103が変形することになる(図中の破線矢印を参照)。更に、第1シール部101、第2シール部102及び連結部103が弾性体によって一体に形成されているため、そのような変形が生じた場合であっても、部材間に隙間が生じることがない。
【0048】
その結果、第1シール部101及び第2シール部102の機能(雨水等の遮断)に実質的な影響を及ぼすことなく、この相対変位に対応することができる。冷媒パイプ211が連通孔201bに対して左方向に相対変位した場合も、同様である。
【0049】
以上に説明したように、実施部材100は、ドレンパン201に設けられた連通孔201bと連通孔201bに挿入された冷媒パイプ211との間の相対変位に対応しつつ、それらの間の水漏れを防ぐことができる。
【0050】
<他の態様>
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。
【0051】
例えば、本発明の漏水防止部材は、図に示すように、連結部103が第1シール部101及び第2シール部102を構成する材料よりも弾性係数が小さい材料によって形成されるように、構成されてもよい。この構成により、連結部103は、第1シール部101及び第2シール部102と同程度の厚さを有しながら、第1シール部101及び第2シール部102の双方よりも小さい剛性(軸線AXに直交する方向への剪断力に対する剛性)を有することになる。
【0052】
更に、実施部材100の第2シール部102は、パイプ支持部102aが実施部材100の内側に位置するように(円盤部102bよりも下に位置するように)形成されている。しかし、本発明の漏水防止部材は、図に示すように、パイプ支持部102aが実施部材100の外側に位置するように(円盤部102bよりも上に位置するように)形成されてもよい。
【0053】
更に、実施部材100は、エンジン駆動式空気調和装置の室外機200のドレンパン201に取り付けられている。しかし、本発明の漏水防止部材は、貫通孔を有する板状体と、その貫通孔に挿入された管状体と、の間であれば、他の装置等に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
100…漏水防止部材、101…第1シール部、101a…筒状部、101a1…筒状部の外周面、101b,101c…環状突出部、102…第2シール部、102a…パイプ支持部、102a1,102a2…環状の凸部、103…連結部、200…エンジン駆動式空気調和装置の室外機、201…ドレンパン、201b…連通孔、211…冷媒パイプ
図1
図2
図3
図4
図5