特許第6579305号(P6579305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579305
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】オキサゾール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 263/32 20060101AFI20190912BHJP
   C07D 413/10 20060101ALI20190912BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20190912BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190912BHJP
【FI】
   C07D263/32
   C07D413/10
   B01J31/02 103Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-40239(P2015-40239)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-160214(P2016-160214A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】392000888
【氏名又は名称】株式会社合同資源
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】東郷 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 奨
(72)【発明者】
【氏名】森山 克彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 充彦
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 SAITO, Akio et al.,Molecules,2012年,17,p.11046-11055,doi:10.3390/molecules170911046
【文献】 ISHIWATA, YOSHIHIDE et al.,Iodoarene-mediated one-pot preparation of 2,5-disubstituted and 2,4,5-trisubstituted oxazoles from alkyl aryl ketones with oxone in nitriles,Tetrahedron,2009年,65(51),10720-10724
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトン化合物、ニトリル化合物、ヨウ素化剤、酸化剤及び酸触媒を混合し反応させることでオキサゾール化合物を得る工程を含み、
前記酸触媒は、アルカンスルホン酸、パーフルオロアルカンスルホン酸、芳香族スルホン酸類、脂肪族カルボン酸類、芳香族カルボン酸類、無機酸、強酸性イオン交換樹脂から選ばれ、
前記ヨウ素化剤は、ヨウ素、一塩化ヨウ素、N−ヨードコハク酸イミド、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインから選ばれ、
前記酸化剤は、過酸化水素水、ペルオキシ硫酸塩類、オキソン(登録商標)、m−クロロ過安息香酸、過安息香酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、二酸化マンガンから選ばれること
を特徴とするオキサゾール化合物の製造方法。
【請求項2】
前記酸触媒がパーフルオロアルカンスルホン酸であることを特徴とする請求項1記載のオキサゾール化合物の製造方法。
【請求項3】
前記ケトン化合物が芳香族ケトン化合物であることを特徴とする請求項1又は2項記載のオキサゾール化合物の製造方法。
【請求項4】
前記ケトン化合物が脂肪族ケトン化合物であることを特徴とする請求項1又は2項記載のオキサゾール化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ヨウ素化剤は、前記ケトン化合物に対して0.1〜2当量添加されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のオキサゾール化合物の製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤は、前記ケトン化合物に対して1〜3当量添加されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載のオキサゾール化合物の製造方法。
【請求項7】
前記酸触媒は、前記ケトン化合物に対して0.1〜10当量添加されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載のオキサゾール化合物の製造方法。
【請求項8】
反応温度が20〜100℃であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載のオキサゾール化合物の製造方法。
【請求項9】
反応時間が15分〜24時間であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載のオキサゾール化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価かつ安全にオキサゾール化合物を得ることのできるオキサゾール化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オキサゾール化合物は、オキサゾール環を有する芳香族系化合物であり、医薬や農薬等の骨格として利用されている重要な化合物である。
【0003】
従来のオキサゾール化合物の製造方法として、引用文献1には、ヨウ化アリールを触媒として用いて、ニトリル化合物中で、アルキルアリールケトン類、メタクロロ過安息香酸及びトリフルオロメタンスルホン酸から2,4,5−三置換オキサゾールを得る方法が開示されている。
【0004】
また、引用文献2には、ヨウ化アリールとオキソン(登録商標)を用いて、ニトリル化合物とアルキルアリールケトン類から2,5−二置換オキサゾール及び2,4,5−三置換オキサゾールを得る方法が開示されている。
【0005】
また、引用文献3には、金属触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸銅(II)を用いて、ケトン類とニトリル類からオキサゾールを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tetrahedron 65 (2009) 6251-6256
【非特許文献2】Tetrahedron 65 (2009) 10720-10724
【非特許文献3】Chemistry Letters, pp. 1355-1356, 1983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した引用文献1及び2に開示されている方法において使用されているヨウ化アリールは高価な試薬であるため、こうした試薬を用いずにより安価に行える方法でオキサゾール化合物を得ることができれば好ましい。
【0008】
また、上述した引用文献3に開示されている方法において使用されている金属触媒であるトリフルオロメタンスルホン酸銅(II)は毒性の高い物質である。一般的に遷移金属触媒は毒性の高いものが多いため、遷移金属触媒を用いずにより安全性の高い方法でオキサゾール化合物を得ることができれば好ましい。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、安価かつ安全にオキサゾール化合物を得ることのできるオキサゾール化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、ケトン化合物、ニトリル化合物、ヨウ素化剤、酸化剤及び酸触媒を混合し反応させることでオキサゾール化合物を得る工程を含み、前記酸触媒は、アルカンスルホン酸、パーフルオロアルカンスルホン酸、芳香族スルホン酸類、脂肪族カルボン酸類、芳香族カルボン酸類、無機酸、強酸性イオン交換樹脂から選ばれ、前記ヨウ素化剤は、ヨウ素、一塩化ヨウ素、N−ヨードコハク酸イミド、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインから選ばれ、前記酸化剤は、過酸化水素水、ペルオキシ硫酸塩類、オキソン(登録商標)、m−クロロ過安息香酸、過安息香酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、二酸化マンガンから選ばれることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、第1発明において、前記酸触媒がパーフルオロアルカンスルホン酸であることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、第1発明又は第2発明において、前記ケトン化合物が芳香族ケトン化合物であることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、第1発明又は第2発明において、前記ケトン化合物が脂肪族ケトン化合物であることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、第1発明〜第4発明の何れかにおいて、前記ヨウ素化剤は、前記ケトン化合物に対して0.1〜2当量添加されることを特徴とする。
【0015】
第6発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、第1発明〜第5発明の何れかにおいて、前記酸化剤は、前記ケトン化合物に対して1〜3当量添加されることを特徴とする。
【0016】
第7発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、第1発明〜第6発明の何れかにおいて、前記酸触媒は、前記ケトン化合物に対して0.1〜10当量添加されることを特徴とする
【0017】
第8発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、第1発明〜第7発明の何れかにおいて、反応温度が20〜100℃であることを特徴とする。
【0018】
第9発明に係るオキサゾール化合物の製造方法は、第1発明〜第8発明の何れかにおいて、反応時間が15分〜24時間であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上述した構成からなる本発明によれば、高価な試薬や毒性の高い遷移金属触媒を用いることなく反応を行うことができるため、安価かつ安全にオキサゾール化合物を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るオキサゾール化合物の製造方法を示す化学式である。
図2】本発明の実施例に係るオキサゾール化合物の製造方法を示す化学式である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るオキサゾール化合物の製造方法について詳細に説明する。
【0025】
本発明を適用したオキサゾール化合物の製造方法は、出発原料としてのケトン化合物とニトリル化合物からオキサゾール化合物を製造するものである。
【0026】
具体的には、出発原料となるケトン化合物として、以下の一般式(1)で表されるものが用いられる。
【0027】
【化1】
【0028】
もう1つの出発原料となるニトリル化合物として、以下の一般式(2)で表されるものが用いられる。
【0029】
【化2】
【0030】
式(1)及び式(2)中、R1、R2及びR3は、芳香族基又は脂肪族基を表している。
【0031】
1、R2及びR3が芳香族基である場合、こうした芳香族基として、置換されていてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が挙げられる。
【0032】
具体的には、こうした芳香族基として、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、ビナフチリル基、アズレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フラレニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0033】
置換されていてもよい芳香族基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限なく、1又は複数であり、置換してもよい基としてはハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。
【0034】
1、R2及びR3が脂肪族基である場合、こうした脂肪族基として、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0035】
こうした脂肪族基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限は無く、1又は複数である。
【0036】
置換してもよい基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。
【0037】
こうして一般式(1)及び(2)に示されるケトン化合物とニトリル化合物について、図1に示すように、ヨウ素化剤、酸化剤及び酸触媒を混合し反応させることにより、一般式(3)で示されるオキサゾール化合物が得られる。
【0038】
【化3】
【0039】
1、R2及びR3は上述した一般式(1)及び(2)と同じものである。
【0040】
ヨウ素化剤としては、ヨウ素、一塩化ヨウ素、N−ヨードコハク酸イミド、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン等が用いられる。
【0041】
こうしたヨウ素化剤は、ケトン化合物に対して0.1〜2当量添加される。
【0042】
酸化剤としては、過酸化水素水、ペルオキシ硫酸塩類、オキソン(登録商標)、m−クロロ過安息香酸、過安息香酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、二酸化マンガン等が用いられる。
【0043】
こうした酸化剤は、ケトン化合物に対して1〜3当量添加される。
【0044】
酸触媒としては、アルカンスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸等)、パーフルオロアルカンスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸等)、芳香族スルホン酸類(例えばベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等)、脂肪族カルボン酸類(例えば酢酸、プロピオン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等)、芳香族カルボン酸類(例えば安息香酸、トリメリット酸、2−ピリジンカルボン酸等)、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸)、強酸性イオン交換樹脂(商品名:ナフィオン(登録商標)、アンバーリスト(登録商標)などのスルホン酸系等のイオン交換樹脂)等が用いられる。
【0045】
こうした酸触媒は、ケトン化合物に対して0.1〜10当量添加される。
【0046】
図1に示す反応の反応温度は、通常、20℃〜還流温度であり、好適には20℃〜100℃である。反応時間は、使用する原料物質や反応温度により異なるが、通常15分〜24時間である。
【0047】
なお、本実施形態に係るオキサゾール化合物の製造方法では、ケトン化合物、ニトリル化合物、ヨウ素化剤、酸化剤及び酸触媒の各添加物を加える順番について特に制限は無く、任意の順番で添加することができる。
【0048】
次に、本実施形態に係るオキサゾール化合物の製造方法についての実施例を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
<実施例1〜44>
図2は、本発明の実施例に係るオキサゾール化合物の製造方法を示す化学式である。図2に示すように、一般式(4)で表されるケトン化合物を1.0mmol、ニトリル化合物としてR3CNを6ml、ヨウ素化剤としてヨウ素をケトン化合物に対して0.7当量、酸化剤としてオキソン(登録商標)をケトン化合物に対して1.1当量、及び酸触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)をケトン化合物に対して8.0当量加え、100℃で5時間反応を行い、一般式(5)で示すオキサゾール化合物を得た。
【0050】
【化4】
【0051】
【化5】
【0052】
上述した図2に示す化学式に基づき、R1、R2及びR3をそれぞれ異なるものとした実施例1〜44について、それぞれR1、R2及びR3と、反応の結果得られた化合物の収率を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
上述した本発明の実施形態に係るオキサゾール化合物の製造方法によると、高価な試薬や毒性の高い金属触媒を用いることなく反応を行うことができるため、安価かつ安全にオキサゾール化合物を得ることが可能となる。
図1
図2