【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、本発明者らが先に提案した特許文献2の
図1に記載されるヘッドアップディスプレイ装置に、次に述べる改良を試みた。改良した装置100を
図1に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置100は、一次改良型装置であり、特許文献2に記載された装置に対して、凹面鏡101と平面鏡102との間において、光路103のごく近傍まで遮蔽板104及び遮蔽板105を延ばした。太陽光106は、凹面鏡101で反射され、遮蔽板104に当たって止まり、表示器107に到達する心配はない。
【0013】
ところで、近年、表示像の大型化が求められ、結果、ケース108の上部に開けた開口109が大きくなり、凹面鏡101が大型化し、光路103の幅が増大する。表示像が大型化するほど、太陽光が侵入し易くなり、その対策が求められる。
【0014】
本発明者らは、さらに改良を進め、二次改良型装置を完成し、良好な太陽光対策を講じることに成功した。すなわち、
図2に示すヘッドアップディスプレイ装置10が、二次改良装置の基本構成図である。
【0015】
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置10は、光源11の上に配置され表示光12を出射する表示器13と、この表示器13で出射された表示光12を反射する第1ミラーとしての第1凹面鏡14と、この第1凹面鏡14で反射された表示光15を反射する第2ミラーとしての第2凹面鏡16と、光源11、表示器13、第1・第2凹面鏡14、16を収納するケース20と、を備えている。
【0016】
さらには、第1凹面鏡14は、反射された表示光15を第2凹面鏡16に到達する前に上下でクロスさせる曲率(半径の逆数)を有し、第2凹面鏡16は、受けた表示光を反射する役割を果たす。即ち、第1凹面鏡14は、第1凹面鏡14と第2凹面鏡16との間に第1凹面鏡14の焦点が位置するような曲率を有する。さらに換言すれば、第1凹面鏡14から第2凹面鏡16までの距離は、第1凹面鏡14の焦点距離よりも長く設定されている。
【0017】
ケース20は、第1・第2凹面鏡14、16間の光路21を挟むように、且つクロスするクロス点22の近傍まで延びる第1遮蔽部23及び第2遮蔽部24を備えている。ケース20外からケース20内に侵入し第2凹面鏡16で反射され第1凹面鏡14に向かう外光25を、第1・第2遮蔽部23、24で遮蔽することができる。
【0018】
第1遮蔽部23の下端(先端部)は、少なくとも、第1凹面鏡14における表示光12の反射領域の上端部P1、及び、第2凹面鏡16における表示光15の反射領域の上端部P2を結んだ線分L1よりもクロス点22側(下側)に位置している。
【0019】
第2遮蔽部24の上端(先端部)は、少なくとも、第1凹面鏡14における表示光12の反射領域の下端部P3、及び、第2凹面鏡16における表示光15の反射領域の下端部P4を結んだ線分L2よりもクロス点22側(上側)に位置している。
【0020】
なお、第1・第2遮蔽部23、24は、その先端が互いに近づくように延びている。その先端が互いに近いほど外光25の遮蔽性が高く、望ましい。即ち、互いの先端がクロス点22(焦点)に近接していることが望ましい。
【0021】
一般に、反射領域の端部とは、凹状に形成された鏡面の端部に一致する。仮に、鏡面上にマスキングテープ等が設けられている場合には、鏡面のうち、露出している部位の端部が反射領域の端部ということができる。
【0022】
第1・第2遮蔽部23、24は外光を遮断する役割を果たすため、ケース20の他の部位(遮蔽部23、24から離れた部位、例えば底部。以下、一般部26と記す。)より、高温になる。そのため、ケース20の一般部26よりも第1・第2遮蔽部23、24は、耐熱性を高めることが望まれる。
【0023】
【表1】
【0024】
一般に耐熱温度と溶融温度との間には、相関関係が存在する。即ち、溶融温度が高ければ、耐熱温度が高く、溶融温度が低ければ、耐熱温度が低いという傾向がある。表1には、耐熱温度の参考値として、溶融温度が記載されている。熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂についてのみ、耐熱温度が示されている。
【0025】
組合せ例1と組合せ例2は、樹脂同士を組合せた。組合せ例3は、樹脂と軽金属を組合わせた。
【0026】
組合せ例3では、第1・第2遮蔽部23、24をアルミニウムダイカスト品とするが、アルミニウムダイカスト品は、ケース20の一般部26にインサート成形、接着、ビス止め又は同等の接着法により一体化する。
【0027】
耐熱性を高める代わりに、熱伝導率を高めてもよい。熱伝導率を高めると、熱の移動が促され、結果として、第1・第2遮蔽部23、24の温度が低下する。第1・第2遮蔽部23、24の熱に対する強度を高めることができる。
【0028】
第1・第2遮蔽部23、24の面が反射面であると、反射光が発生し、この反射光が第2凹面鏡16に戻り、反射され、第1・第2遮蔽部23、24に当たることなく第1凹面鏡14に向かうことが心配される。
【0029】
対策として、第1・第2遮蔽部23、24には、少なくとも外光25が当たる部位に、外光の反射を弱める又は阻止する反射防止処理膜27、27を形成する。反射防止処理膜27は、黒色塗料、母材がアルミニウムであれば黒色アルマイトが適当である。又は、反射防止処理は、平滑面にサンドブラストを打って粗面化する処理であってもよい。
【0030】
以上の知見から、請求項1に係る発明は、表示光12を出射する表示器13と、この表示器13で出射された表示光12を反射する第1ミラー14と、この第1ミラー14で反射された表示光15を反射する第2ミラー16と、前記表示器13、前記第1・第2ミラー14、16を収納するケース20とを備えるヘッドアップディスプレイ装置10において、前記第1ミラー14は、反射された表示光15を前記第2ミラー16に到達する前に上下でクロスさせる曲率を有した第1凹面鏡であり、前記第2ミラー16は、受けた表示光を反射する第2凹面鏡であり、前記ケース20は、前記第1・第2凹面鏡間の光路21を挟むように、且つ前記クロスするクロス点2の近傍まで延びる第1遮蔽部23及び第2遮蔽部24を備えており、前記ケース20外からケース20内に侵入し前記第2凹面鏡で反射され前記第1凹面鏡に向かう外光25を、前記第1・第2遮蔽部23、24で遮蔽するようにしたことを特徴とする。
【0031】
請求項2に係る発明では、第1・第2遮蔽部23、24は、ケース20の一般部26よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。
【0032】
請求項3に係る発明では、第1・第2遮蔽部23、24は、ケース20の一般部26よりも耐熱温度が高い材料で形成されている。
【0033】
請求項4に係る発明では、第1・第2遮蔽部23、24には、少なくとも外光が当たる部位に、外光の反射を弱める又は阻止する反射防止処理が施されている。
【0034】
請求項5に係る発明では、ケース20は、第1・第2凹面鏡14、16を支えると共に第2遮蔽部24を備えるセンターフレームと、このセンターフレームの上に取付けられ第1遮蔽部23を備える上カバーと、センターフレームの下に取付けられる下カバーと、からなる。
【0035】
請求項6に係る発明では、センターフレームは金属成形品であり、下カバーは樹脂成形品であり、上カバーは樹脂成形品又は金属成形品である。
【0036】
請求項7に係る発明では、金属成形品は、アルミニウムダイカスト品である。
【0037】
請求項8に係る発明では、ケースは、第1・第2凹面鏡を支えると共に第2遮蔽部を備えるセンターフレームと、このセンターフレームの上に取付けられ第1遮蔽部を備える上カバーと、を有し、
上カバーは、樹脂成形品であり、
少なくとも第1遮蔽部の上面には、金属板が配置され、
樹脂成形品の素材に用いられる樹脂の密度は、金属板の密度よりも小さく、
金属板の耐熱温度は、樹脂の耐熱温度よりも高い。
【発明の効果】
【0038】
請求項1に係る発明では、第1ミラーは、反射された表示光を前記第2ミラーに到達する前に上下でクロスさせる曲率を有した第1凹面鏡である。クロスするクロス点では、光路の幅は小さくなる。このクロス点の近傍へ第1遮蔽部及び第2遮蔽部を延ばし、これらの第1遮蔽部及び第2遮蔽部で太陽光などの外光を遮蔽するようにした。外光の殆どが第1・第2遮蔽部で遮蔽され、第1凹面鏡や表示部に到達し得ない。
よって、本発明によれば、シャッタや反射型偏光フィルムを用いないで、太陽光対策を講じることができるヘッドアップディスプレイ装置が提供される。
【0039】
請求項2に係る発明では、第1・第2遮蔽部は、ケースの一般部よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。熱伝導率が高いため、第1・第2遮蔽部内での熱移動を促すことができ、第1・第2遮蔽部の温度を下げることができる。即ち、高温になりやすい第1・第2遮蔽部に熱が留まることを抑制することができる。
【0040】
請求項3に係る発明では、第1・第2遮蔽部は、ケースの一般部よりも耐熱温度が高い材料で形成されている。高温になりやすい第1・第2遮蔽部に、耐熱温度が高い材料を用いることにより、熱に対する強度を高めることができる。
【0041】
請求項4に係る発明では、第1・第2遮蔽部には、少なくとも外光が当たる部位に、外光の反射を弱める又は阻止する反射防止処理が施されている。第1・第2遮蔽部に当たった外光が第2凹面鏡へ戻る心配がなくなる。
【0042】
請求項5に係る発明では、ケースは、第1・第2凹面鏡を支えると共に第2遮蔽部を備えるセンターフレームと、このセンターフレームの上に取付けられ第1遮蔽部を備える上カバーと、センターフレームの下に取付けられる下カバーと、からなる。仮に、別々のカバーに第1凹面鏡と第2凹面鏡を取付けると、カバー個々の寸法誤差を見込んで光軸を調整する必要があり、この調整が面倒になる。本発明では、共通のセンターフレームに、第1凹面鏡と第2凹面鏡を取付けるため、第1凹面鏡と第2凹面鏡の光軸調整が容易になる。
【0043】
請求項6に係る発明では、センターフレームは金属成形品であり、下カバーは樹脂成形品であり、上カバーは樹脂成形品又は金属成形品である。金属成形品であれば剛性に富む。剛性に富むセンターフレームに第1・第2凹面鏡を取付けるため、光軸が良好に維持される。その上、金属成形品であれば、一般に樹脂成形品より耐熱温度が高く、熱伝導率も高い。
【0044】
請求項7に係る発明では、金属成形品は、アルミニウムダイカスト品である。金属成形品は金属プレス品でもよいが、プレス品は形状を複雑にはできない。鋳造品であれば、複雑な形状にすることができるが、薄肉化が難しい。この点、ダイカスト品であれば、組織が緻密になり薄肉化が可能で、複雑な形状にも適している。その上、アルミニウムであれば、軽量であり、装置の軽量化が達成できる。
【0045】
請求項8に係る発明では、樹脂成形品である第1遮蔽部の上面には、金属板が配置されている。第1遮蔽部は、ケース内へ向かう外光を遮断するための部位である。即ち、第1遮蔽部の上面には、外光が当たる。第1遮蔽部に当たる外光の一例として、太陽光が挙げられる。太陽光が当たる第1遮蔽部には、高い耐熱性が求められる。一方、ヘッドアップディスプレイ装置全体としては、軽量であることが望まれる。上カバーに用いられる樹脂は、金属板よりも密度が小さい(低い)。このため、上カバーを樹脂成形品とすることにより、ヘッドアップディスプレイ装置の軽量化を図ることができる。一方、金属板は上カバーに用いられる樹脂よりも耐熱温度(耐熱性)が高い。このため、太陽光が当たる第1遮蔽部の上面に金属板を配置することにより、耐熱性を高めることができる。即ち、ヘッドアップディスプレイ装置の軽量化を図りつつ、第1遮蔽部の耐熱性を高めることができる。