(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記前後方向溝の前方に、上記係合突起を収容する収容部を形成するとともに、当該収容部をバックカバーの内部から外部に貫通するように形成して、上記係合突起が収容部に形成された際に当該係合突起を外部より視認可能とすることを特徴とする請求項5に記載の針組立体。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、
図1、2に示す針組立体1は歯科治療の際に麻酔薬を収容したシリンジ等の図示しない液体供給手段に装着されて使用されるものであり、
図1は当該針組立体1の使用状態を、
図2は使用後状態をそれぞれ示している。
ここで、
図1の(a)(b)はそれぞれ異なる角度から見た使用状態の針組立体1を示し、また
図3〜
図6は、
図1、2における各部の断面図をそれぞれ示し、各図において、図示右方を前方または先端側、図示左方を後方または後端側と呼ぶこととする。
上記針組立体1は、前方に突出するフロントカヌラ2と、後方に突出するバックカヌラ3と、これらフロントカヌラ2およびバックカヌラ3を保持するハブ4と、当該ハブ4の前方に進退動可能に設けられたフロントカバー5(
図2参照)と、上記ハブ4に設けられて上記フロントカバー5を覆うカバーガイド6と、上記ハブ4の後方に進退動可能に設けられたバックカバー7とを備えている。
さらに
図1に示す針組立体1の使用状態においては、上記フロントカバー5が第1位置としての後退位置に位置するとともに、バックカバー7が第1位置としての前進位置に位置しており、上記フロントカヌラ2とバックカヌラ3が外部に露出した穿刺可能状態となっている。
一方、
図2に示す針組立体1の使用後状態においては、上記フロントカバー5が第2位置としての前進位置に位置するとともに、バックカバー7が第2位置としての後退位置に位置しており上記フロントカヌラ2とバックカヌラ3がこれらの内部に収容されて誤穿刺が防止された状態となっている。
【0009】
上記フロントカヌラ2およびバックカヌラ3は、それぞれステンレス等からなる針管によって構成され、フロントカヌラ2の先端およびバックカヌラ3の後端にはそれぞれ穿刺部2a、3aが形成されている。
そして上記ハブ4は略円柱状の部材となっており、その内部には前後に貫通する貫通孔4aが穿設され(
図3参照)、当該貫通孔4aに上記フロントカヌラ2とバックカヌラ3とが接着保持されている。また上記貫通孔4aにおいてフロントカヌラ2の後端部とバックカヌラ3の先端部との間には若干の隙間が形成されている。
ここで、歯科用の針組立体1におけるフロントカヌラ2は、穿刺痛を低減するためにその直径は極力小径に設定され、かつ口腔内のいずれの位置にも穿刺できるよう、全長は極力長く設定されている。
このため、フロントカヌラ2の内部通路は小径となっており、流路抵抗が大きいことから、上記液体供給手段は高い供給圧力によって麻酔薬を送液しなければならない。
これに対し、上記バックカヌラ3は上記液体供給手段の先端部分に設けられた樹脂製の蓋部を貫通する目的で設けられていることから、その直径を小径とする必要はなく、流路抵抗を小さくすることができる。
【0010】
以下、
図3、
図4を用いて、上記フロントカバー5およびカバーガイド6の構成およびその動作について説明する。
図3はフロントカバー5が後退位置に位置した使用状態を、
図4はフロントカバー5が前進位置に移動した使用後状態をそれぞれ示している。
上記ハブ4の先端には、上記フロントカヌラ2を保持する円柱状のフロント側内筒部11と、当該フロント側内筒部11を囲繞する円筒状のフロント側外筒部12とが形成され、これらフロント側内筒部11およびフロント側外筒部12の後方には略円盤状のフランジ部13が形成されている。
上記フロント側内筒部11とフロント側外筒部12との先端は略同じ位置に形成され、またフロント側内筒部11とフロント側外筒部12との間には所要の隙間が形成されている。
上記フロント側内筒部11の先端部には上記フロントカバー5との間に弾装される付勢手段としてのばね14の後端部が弾接し、また
図3(b)に示すように、フロント側内筒部11の側面におけるフロントカヌラ2を挟んで対向する位置には、前後方向に向けてキー溝11aが形成されている。
上記フロント側外筒部12は上記フランジ部13の直径よりも小径に形成され、また外周面には、フロントカヌラ2を挟んで対向する位置には、外方に向けてカバーガイド保持突起12aが突出している。
【0011】
上記フロントカバー5は略円筒状に形成され、
図2に示すように前進位置に位置すると、その先端がフロントカヌラ2の穿刺部2aよりも前方に突出し、これを覆うようになっている。
フロントカバー5は、
図1に示すように後退位置に位置する際も上記カバーガイド6より若干突出し、かつ先端部がテーパ状に形成されている。これにより針組立体1を口腔内で使用した際において患者を傷つけないようになっている。
またフロントカバー5の内面の先端部もテーパ状に形成されており、当該テーパ形状の後端部には上記ばね14が後方から弾接している。これにより、フロントカバー5はばね14によって常時前方に付勢されるようになっている。
そしてフロントカバー5の後端部には、外周側に突出するフロント側係合突起5aと、後方に突出するキー5bとがそれぞれフロントカヌラ2を挟んで対向する位置に一対ずつ形成され、これらはフロントカヌラ2の軸方向を中心に所定角度だけ偏倚した位置に形成されている。
上記キー5bは上記ハブ4のキー溝11aに係合することでフロントカバー5の回転防止手段を構成しており、
図3(b)に示すように、フロントカバー5が後退位置に位置した状態では、上記キー5bが上記ハブ4のキー溝11aに嵌合することにより、フロントカバー5とハブ4との回転を防止するようになっている。
【0012】
上記カバーガイド6は略円筒状の部材となっており、その後端から順に、上記ハブ4のフロント側外筒部12と嵌合する大径部21と、上記フロントカバー5を収容する中径部22と、先端に形成された小径部23とが形成されている。
上記大径部21は、上記フロント側外筒部12に対して周方向に回転可能に嵌合しており、外周面には治療の際に使用者が保持するための複数の操作用突起21aが形成されている(
図1、
図2参照)。
また上記大径部21には、上記ハブ4に形成されたカバーガイド保持突起12aと係合するカバーガイド保持溝21bが、大径部21の周方向にむけて形成されている。
上記カバーガイド保持突起12aがカバーガイド保持溝21bに収容されると、カバーガイド6はハブ4に対して前後方向への移動が阻止され、一方カバーガイド6の周方向への回転を許容するようになっている。
具体的には、
図1に示す使用状態では、
図1(a)に示すようにカバーガイド保持突起12aはカバーガイド保持溝21bの図示下方側に位置しており、この状態からカバーガイド6を時計回りに回転させることが可能となっている。
また上記カバーガイド保持溝21bには微小な突起21cが形成されており、使用者がカバーガイド6を回転させる際には、この突起21cを超えてカバーガイド保持突起12aを移動させるようになっている。
【0013】
上記カバーガイド6の内面には、前後方向に向けて形成されたフロント側前後方向溝24と、当該フロント側前後方向溝24の後端部より周方向に連続して形成されたフロント側周方向係止部25とが形成され、上記フロント側前後方向溝24の前方にはフロントカバー5の後退を阻止するためのフロントカバー後退阻止部26が設けられている。そしてこれらはそれぞれフロントカヌラ2を挟んでそれぞれ一対ずつ設けられている。
上記フロント側前後方向溝24は、上記フロントカバー5のフロント側係合突起5aが通過可能な深さに形成されており、外面には貫通しないように形成されている。
このようにフロント側前後方向溝24を外面に貫通しないようにすることで、カバーガイド6を患者の口腔内に進入させた際に、貫通した溝によって形成された突起やエッジなどによって患者を傷つけないようにしている。
上記フロント側周方向係止部25は、カバーガイド6の上記大径部21と中径部22との境界に形成された段差によって構成され、
図3(b)に示すように上記フロント側前後方向溝24の後端部と連続するように形成されている。
また上記フロント側周方向係止部25と上記ハブ4のフロント側外筒部12との間には、上記フロント側係合突起5aが位置可能な程度の隙間が形成されている。
【0014】
上記小径部23の内径は上記フロントカバー5のフロント側係合突起5aが通過できないような径に設定され、
図4に示すようにフロントカバー5が前進位置に位置した際には、上記フロント側係合突起5aが小径部23の後方の面に当接して、フロントカバー5のこれ以上の前進を阻止するようになっている。
また小径部23の外面はテーパ状に形成され、またフロントカバー5は後退位置において上記テーパ形状の部分が小径部23よりも若干前方に突出するようになっており、小径部23およびフロントカバー5の先端部によって一体的なテーパ形状を形成して、患者への傷を防止するようになっている。
【0015】
上記フロントカバー後退阻止部26は、上記小径部23とフロント側前後方向溝24との間に位置し、略長方形に形成された貫通孔26aと、当該貫通孔26aの内部に突出する後退阻止突起26bとから構成されている。
上記貫通孔26aにおける前方の面は、上記小径部23の後端の面を構成しており、上述したように上記フロントカバー5のフロント側係合突起5aが後方から当接して、当該フロントカバー5の前進を阻止するものとなっている。
上記後退阻止突起26bは、上記貫通孔26aの後方の面より前方に向けて突出するように形成され、当該後退阻止突起26bの先端部と上記貫通孔26aの前方の面との間には、
図4に示すように上記フロント側係合突起5aが収容されるようになっている。
また後退阻止突起26bはその後端側の基部を起点に弾性変形するようになっており、かつその内面には、後方から前方に向けて傾斜する傾斜面26cが形成されている。
上記傾斜面26cには上記フロント側係合突起5aが当接するようになっており、フロント側係合突起5aが通過する間、上記後退阻止突起26bが外方に移動するようになっている。
一方、後退阻止突起26bの外面側は、カバーガイド6の外面と面一もしくはそれよりも内面側に位置しており、針組立体1を口腔内で操作した際における患者への傷を防止するようになっている。
【0016】
以下、上記構成について、フロントカバー5を後退位置から前進位置に位置させる際の動作について説明する。
まず使用状態において、フロントカバー5が後退位置に位置する際、
図3に示すようにフロントカバー5の後端部に形成したフロント側係合突起5aは、上記カバーガイド6に形成したフロント側周方向係止部25に後方から当接しており、上記ばね14の付勢力にもかかわらずフロントカバー5の前進が阻止されている。
この状態から、上記カバーガイド6を
図1の状態から時計回りに回転させると、フロント側係合突起5aが上記フロント側周方向係止部25に沿って相対的に移動するようになる。
このとき、後退位置に位置するフロントカバー5のキー5bがハブ4のキー溝11aに係合しているため、フロントカバー5の回転は阻止されており、フロントカバー5のフロント側係合突起5aがフロント側周方向係止部25に対して相対的に移動することとなる。
【0017】
次に、上記カバーガイド6の回転量は、上記カバーガイド6に形成したカバーガイド保持溝21bの周方向の長さ、すなわち上記ハブ4に形成したカバーガイド保持突起12aの移動量によって規定されている。
そしてカバーガイド保持突起12aが
図1の状態からカバーガイド保持溝21bにおける他方の端部まで移動すると、カバーガイド6の上記フロント側前後方向溝24がフロント側係合突起5aと重合する位置まで移動する。
このようにしてフロント側前後方向溝24がフロント側係合突起5aの位置まで移動すると、当該フロント側係合突起5aはフロント側前後方向溝24に沿って前進可能となり、フロントカバー5は上記ばね14の付勢力によって前進位置へと前進する。
【0018】
上記ばね14の付勢力によってフロントカバー5が前進すると、上記フロント側係合突起5aが上記フロント側前後方向溝24に沿って前進し、上記フロントカバー後退阻止部26における後退阻止突起26bの内面に形成された傾斜面26cに後方から当接する。
すると、フロント側係合突起5aによって後退阻止突起26bが外方に押圧され、これにより後退阻止突起26bの後端部側の基部が弾性変形して外方に移動し、上記フロント側係合突起5aの通過を許容する。
またフロント側係合突起5aは、後退阻止突起26bを通過した上記貫通孔26aの前方の面に当接して
図4に示す前進位置に位置し、これによりこれ以上のフロントカバー5の前進が阻止される。
一方、フロント側係合突起5aが後退阻止突起26bを通過すると、当該後退阻止突起26bは弾性変形から復帰して再度内方に移動し、後退阻止突起26bの先端部が上記通過したフロント側係合突起5aの後方から当接可能な状態となることから、フロントカバー5の後退が阻止されることとなる。
【0019】
次に、
図4、
図6を用いて上記バックカバー7の構成及びその動作について説明する。
上記ハブ4における上記フランジ部13の後方には、上記バックカヌラ3を保持する断面略十字型に形成されたバックカヌラ保持部31と、当該バックカヌラ保持部31より後方に突出する円柱状のバック側内筒部32と、当該バック側内筒部32を囲繞する円筒状のバック側外筒部33とが形成されている。
上記バックカヌラ保持部31およびバック側内筒部32の中央には上記貫通孔4aが形成されており、また上記バック側内筒部32およびバック側外筒部33はその後端部が略同じ位置に形成され、これらの間には所要の隙間が形成されている。
そして上記バック側外筒部33には、上記バックカヌラ3を挟んで対向する位置に一対のバック側係合突起33aが設けられており、バック側外筒部33の外周側に突出するように形成されている。
当該バック側係合突起33aは上記バックカヌラ保持部31の後端部より後方に突出する腕部のさらに後端部に設けられており、上記腕部が弾性変形することで、上記バック側係合突起33aは内周側に移動するようになっている。
【0020】
上記バックカバー7は筒状の部材となっており、上記ハブ4のバックカヌラ保持部31およびバック側外筒部33に沿って前後方向に摺動するとともに、周方向に回転可能となっている。そして
図2に示すように後退位置に位置した際には、その後端がバックカヌラ3の穿刺部3aよりも後方に突出してこれを覆うようになっている。
バックカバー7の後端部には、図示しない液体供給手段に設けられた被連結部と連結される連結部41が形成されており、内面に形成された雌ねじ部41aと、外面に形成されたロック部41bとから構成されている。これに対し、図示しない液体供給手段の被連結部には、上記雌ねじ部41aに螺合する雄ねじ部と、上記ロック部41bに係合するロック部が設けられている。
上記連結部41に液体供給手段の被連結部を連結するためには、液体供給手段を回転させる。これにより、上記雌ねじ部41aに雄ねじ部が螺合し、また上記ロック部41bが係合するようになっている。
一方、針組立体1から液体供給手段を離脱させるため、連結部41より液体供給手段の被連結部を離脱させるには、液体供給手段を反対方向に回転させてバックカバー7の雌ねじ部41aより雄ねじ部を離脱させればよい。
なお、このような連結部41は従来公知であり、本実施例の連結部41をその他の形状を有する被連結部を有する液体供給手段に対応した連結部としてもよい。
【0021】
そしてバックカバー7には、前後方向に向けて形成されたバック側前後方向溝42と、当該バック側前後方向溝42の後端部に連続して形成されたバック側周方向係止部43と、バック側前後方向溝42の前方に設けられたバックカバー前進阻止部44とが設けられている。そしてこれらは上記バックカヌラ3を挟んだ位置にそれぞれ一対設けられている。
上記バック側前後方向溝42には上記ハブ4に形成されたバック側係合突起33aが移動するようになっており、また上記カバーガイド6に形成したフロント側前後方向溝24とは異なり、バックカバー7の内面から外面に貫通していてもよい。
上記バック側周方向係止部43は、
図1(b)に示すように上記バック側前後方向溝42の後端部より周方向に連続して形成され、バック側係合突起33aの幅に合わせて溝状に形成されている。
また
図1(b)においてバック側周方向係止部43はバック側前後方向溝42の後端部より図示上方に向けて形成され、バックカバー7を反時計回りに回転させると、バック側係合突起33aが上記バック側周方向係止部43に沿って相対的に移動するようになっている。
さらに上記バック側周方向係止部43には、バック側係合突起33aに隣接した位置に突起43aが形成されており、意図せずにバックカバー7が回転するのを阻止するようになっている。
【0022】
上記バックカバー前進阻止部44は、上記バック側前後方向溝42に対して前方に所定距離だけ離隔した位置に形成されたバックカバー7を貫通する貫通孔44aと、当該貫通孔と上記バック側前後方向溝42との間に形成された前進阻止部44bとから構成されている。
上記貫通孔44aは上記バック側係合突起33aがほぼ隙間なく嵌合するような形状に形成され、その前方の面にバック側係合突起33aが後方から当接することで、バックカバー7のこれ以上の後退を阻止するようになっている。
また上記貫通孔44aによれば、上記バック側係合突起33aが収容されることにより、当該バック側係合突起33aが外部より視認できるようになっている(
図2参照)。
上記前進阻止部44bは上記貫通孔44aの後方の面を構成し、バック側係合突起33aが前方から当接することにより、バックカバー7の前進を阻止するようになっている。
さらに、前進阻止部44bの内周面には、後方から前方に向けて内面側に突出する傾斜面44cが形成され、この傾斜面44cには上記バックカバー7が後退する際に上記ハブ4のバック側係合突起33aが当接するようになっている。
【0023】
以下、上記構成について、バックカバー7を前進位置から後退位置に位置させる際の動作について説明する。
図1に示す使用状態において、バックカバー7が前進位置に位置した状態では、
図5に示すように上記バック側係合突起33aは上記バック側周方向係止部43に収容され、バックカバー7の後退が阻止されている。
このようにバック側係合突起33aがバック側周方向係止部43に収容された状態から、上記バックカバー7を
図1の状態から反時計回りに回転させると、バック側係合突起33aが上記バック側周方向係止部43に沿ってバック側前後方向溝42の後端部まで相対的に移動する。
【0024】
その状態から使用者がバックカバー7を後退させると、バック側係合突起33aはバック側前後方向溝42に対して相対的に前進し、当該バック側係合突起33aは上記バックカバー前進阻止部44の傾斜面44cに後方から当接する。
すると、バック側係合突起33aがその先端側の基部より弾性変形して上記バック側内筒部32に向けて内方に移動し、上記傾斜面44cを通過する。傾斜面44cを通過すると、バック側係合突起33aが外方に再度移動し、上記貫通孔44aに収容される。
上記貫通孔44aにバック側係合突起33aが収容されると、当該貫通孔44aの前方の面によってバックカバー7のこれ以上の後退が阻止され、バックカバー7が後退位置に位置し、また上記前進阻止部44bによってバックカバー7の再度の前進が阻止される。
【0025】
以下、上記構成を有する針組立体1の使用方法について説明する。
最初に、上記針組立体1は図示しないケーシングの内部に収容された状態で搬送され、当該ケーシングは上記カバーガイド6およびフロントカヌラ2を覆うフロント側ケーシングと、上記バックカバー7およびバックカヌラ3を覆うバック側ケーシングとから構成されている。
使用者は上記ケーシングのうちバック側ケーシングを取り外し、上記バックカバー7およびバックカヌラ3を露出させる。この際、針組立体1は
図1に示す使用状態となっており、バックカバー7は前進位置に保持されている。
この状態で、使用者は上記バックカバー7に形成された連結部41に液体供給手段の被連結部を連結する。これにより、バックカヌラ3が液体供給手段の蓋部を貫通して、液体供給手段からバックカヌラ3に麻酔薬が供給可能な状態となる。
【0026】
続いて、使用者は上記ケーシングのうちフロント側ケーシングを取り除いて、カバーガイド6およびフロントカヌラ2を露出させる。このときフロントカバー5は後退位置に保持されている。
使用者は上記ハブ4のフランジ部13やカバーガイド6の操作用突起21aを把持して、上記フロントカヌラ2を患者の口腔内に穿刺し、上記液体供給手段を操作して麻酔薬の投与を行う。
その際、患者の口腔内に進入する部分、すなわちカバーガイド6の外周面には突起が極力形成されていないため、これらの突起によって患者が傷ついてしまうのを防止することができる。
また、上記フロントカバー5のフロント側係合突起5aは外部に露出していないことから、針組立体1を把持する使用者が誤ってフロント側係合突起5aに触れ、フロントカバー5を誤作動させることがないようになっている。
【0027】
使用者が患者に対して麻酔薬の投与を終了したら、使用者は上記カバーガイド6をハブ4に対して時計方向に回転させ、これによりフロントカバー6が後退位置より前進位置に移動し、使用状態から使用後状態となる。
カバーガイド6を回転させる際、上記カバーガイド保持突起12aによってカバーガイド保持溝21bに形成した突起21cを乗り越えさせなければならず、それまでの間に意図せずカバーガイド6が回転してフロントカバー5が誤作動してしまうのが防止されている。
使用後状態となることで、フロントカバー6の先端がフロントカヌラ2の穿刺部2aよりも前方に突出することとなり、フロントカヌラ2による誤穿刺が防止されることとなる。
またフロントカバー5が前進位置に位置すると、上記フロント側係合突起5aがフロント側前後方向溝24の前方に設けられたフロントカバー後退阻止部26に収容され、フロントカバー5は上記前進位置に位置するとともに、再度の後退が阻止されることとなる。
【0028】
このようにしてフロントカバー5が前進位置に位置したら、続いて使用者は液体供給手段が接続されたままの状態で、バックカバー7を前進位置から後退位置へと後退させ、使用状態から使用後状態とする。
具体的には、使用者は
図1の状態からバックカバー7を反時計回りに回転させ、バック側係合突起33aがバック側前後方向溝42の後端部に位置したら、バックカバー7を後方に移動させる。
バックカバー7を回転させる際、使用者は上記バック側係合突起33aによってバック側周方向係止部43に形成した突起21cを乗り越えさせなければならず、それまでの間に意図せずバックカバー7が回転して後退してしまうことが防止されている。
またバックカバー7が後退位置に位置すると、上記バック側係合突起33aが貫通孔44aに収容されることとなり、使用者は当該バック側係合突起33aを外部より視認することでバックカバー7が確実に後退位置に位置していることを確認することができる。
【0029】
このようにしてバックカバー7が後退位置に位置したら、使用者はバックカバー7の連結部41に連結されている液体供給手段を反時計回りに回転させ、これにより連結部41のロック部41bおよび雌ねじ部41aから、被連結部のロック部および雄ねじ部を離脱させることができる。
このようにして液体供給手段が離脱すると、すでにバックカバー7は後退位置に位置して
図2に示す使用後状態となっていることから、上記バックカヌラ3は上記バックカバー7に収容されており、その後のバックカヌラ3による誤穿刺を防止することが可能となっている。
その後、本実施例の針組立体1は廃棄されるが、上述したようにフロントカバー5は前進位置が維持され、またバックカバー7も後退位置が維持されているため、廃棄された針組立体1からフロントカヌラ2やバックカヌラ3が露出するという事故も防止できる。
【0030】
図7は第2実施例にかかる針組立体1の上記フロントカバー5側の一部断面図(a)と、先端側から見た図(b)とを示し、具体的にはハブ4とフロントカバー5との回転を阻止する回転防止手段についての他の実施例を説明するものである。本実施例において、上記第1実施例と共通する要素については説明を省略し、また同じ符号を用いるものとする。
本実施例のカバーガイド6は上記第1実施例におけるカバーガイド6と同じものを使用することが可能であり、フロント側前後方向溝24およびフロント側周方向係止部25が形成されている。
そして本実施例のフロントカバー5の回転防止手段は、上記フロントカバー5の後端部に形成されて上記フロント側係合突起5aに隣接した位置に形成された係合凹部5cと、上記ハブのフロント側外筒部12の先端部に形成されて、上記係合凹部5cに係合する係合凸部12bとから構成されている。
【0031】
以下、上記構成を有する針組立体1について、フロントカバー5を後退位置から前進位置に位置させる際の動作について説明する。
第1実施例と同様、上記フロントカバー5が後退位置に位置した状態において、フロントカバー5の後端部に形成したフロント側係合突起5aは、上記カバーガイド6に形成したフロント側周方向係止部25に後方から当接し、上記ばね14の付勢力に抗してフロントカバー5の前進を阻止している。
この状態から、上記カバーガイド6をハブに対して
図7(b)の状態から反時計回りに回転させると、カバーガイド6の内部に位置するフロントカバー5も摩擦等によって回転しようとする。
しかしながら、上記フロント側係合突起5aは係合凹部5cに位置する上記ハブ4の係合凸部12bに当接しており、これによりフロントカバー5の回転が防止されるようになっている。
その結果、カバーガイド6とフロントカバー5とが相対的に回転することとなり、上記フロント側係合突起5aは上記フロント側周方向係止部25に沿って相対的に移動し、上記フロント側前後方向溝24と重合する位置まで移動する。
そしてフロント側前後方向溝24がフロント側係合突起5aの位置まで移動することで、当該フロント側係合突起5aはフロント側前後方向溝24に沿って前進可能となり、フロントカバー5は上記ばね14の付勢力によって前進位置へと前進する。
フロントカバー5が前進位置に位置すると、第1実施例と同様、上記フロント側係合突起5aが上記フロント側前後方向溝24の先端側に形成されたフロントカバー後退阻止部26に位置し、フロントカバー5の前進および後退が阻止されることとなる。
なお、上記第1、第2実施例に記載したハブ4とフロントカバー5との回転を防止する回転防止手段としては、そのほかにも、上記ハブ4とフロントカバー5とを上記ばね14によって連結固定し、当該ばね15によってハブ4とフロントカバー5との回転を防止するようにすることもでき、さらには上記ハブ4とフロントカバー5とばね14とを樹脂によって一体的形成することも考えられる。
【0032】
図8は第3実施例にかかる針組立体1を示し(a)はフロントカバー5が後退位置に位置した状態を、(b)は前進位置に位置した状態をそれぞれ示している。
本実施例の針組立体1は、上記フロントカバー5が外周側に位置しており、当該フロントカバー5の内部にカバーガイド6が収容されている構成となっている。
上記カバーガイド6は、その後端部が上記ハブ4のフロント側内筒部11とフロント側外筒部12との間に挿入されており、ハブ4に対して回転できないように連結固定されている。
また、カバーガイド6の内部には上記ばね14が収容されており、かつカバーガイド6の先端部開口を上記ばね14と同径とすることで、ばね14はこの開口部より前方へと突出するようになっている。
【0033】
そして本実施例では、上記カバーガイド6の外周面に、(b)に示すようにフロント側前後方向溝24、フロント側周方向係止部25、フロントカバー後退阻止部26を形成したものとなっている。
具体的に説明すると、フロント側前後方向溝24はカバーガイド6の外周面に前後方向に向けて形成され、上記フロントカバー5の内周面に形成したフロント側係合突起5aを収容するようになっている。
上記フロント側周方向係止部25は、フロント側前後方向溝24の後端部より周方向に連続して形成された溝であり、このフロント側周方向係止部25の途中には、フロント側係合突起5aの移動を阻止するための突起25aが形成されている。
上記フロントカバー後退阻止部26は、フロント側前後方向溝24の先端部近傍に形成された後退阻止突起26bを備え、上記フロント側係合突起5aがフロント側前後方向溝24の先端に位置した際に、当該フロント側係合突起5aの後方から係合して、フロントカバー5の後退を阻止するものとなっている。
さらに本実施例のフロント側前後方向溝24における上記フロントカバー後退阻止部26の後方に隣接した位置には、フロント側前後方向溝24より分岐する組み立て用溝24aが形成されている。
この組み立て用溝24aはカバーガイド6の先端まで形成されており、針組立体1を組み立てる際に、この組み立て用溝24aに上記フロントカバー5のフロント側係合突起5aを侵入させ、これを上記フロント側前後方向溝24を介して上記フロント側周方向係止部25に進入させるようになっている。
【0034】
上記フロントカバー5は、筒状を有するとともに上記カバーガイド6および上記ハブ4のフロント側外筒部12を囲繞するように形成され、上記ハブ4およびカバーガイド6に対して相対的に回転可能に設けられている。
またフロントカバー5の先端部は上記カバーガイド6の先端部よりも前方に位置するとともに、開口部がカバーガイド6の先端開口部よりも小径に形成されている。
そして上記フロントカバー5の先端開口部の後方側には上記ばね14が後方から弾接し、フロントカバー5を常時前進位置に向けて付勢するようになっている。
そしてフロントカバー5の内周面には、上記カバーガイド6の外周面に形成した上記フロント側前後方向溝24やフロント側周方向係止部25に係合するフロント側係合突起5aが設けられている。
そしてこのフロント側係合突起5aがフロント側周方向係合部25に収容された状態では、フロントカバー5は前方への移動が規制されて後退位置に保持されるようになっており、またフロント側係合突起5aがフロント側周方向係合部25の形成された範囲内で移動する範囲において、フロントカバー5とカバーガイド6とが相対的に回転可能となっている。
【0035】
以下、上記構成を有する針組立体1について、フロントカバー5を後退位置から前進位置に位置させる際の動作について説明する。
上記フロントカバー5が後退位置に位置する際、フロントカバー5の内周面に形成したフロント側係合突起5aは、上記カバーガイド6の外周面に形成されたフロント側周方向係止部25に収容されており、上記ばね14の付勢力に抗してフロントカバー5の前進を阻止している。
この状態から、上記フロントカバー5を上記ハブ4およびカバーガイド6に対して回転させると、上記フロント側係合突起5aは上記フロント側周方向係止部25に沿って相対的に移動し、カバーガイド6の上記フロント側前後方向溝24と重合する位置まで移動する。
そしてフロント側前後方向溝24がフロント側係合突起5aの位置まで移動することで、当該フロント側係合突起5aはフロント側前後方向溝24に沿って前進可能となり、フロントカバー5は上記ばね14の付勢力によって前進位置へと前進する。
フロントカバー5が前進位置に位置すると、上記フロント側係合突起5aが上記フロント側前後方向溝24の先端側に形成されたフロントカバー後退阻止部26に位置し、フロントカバー5の前進および後退が阻止される。
【0036】
なお、上記各実施例では、上記フロントカバー5を付勢手段としてのばね14によって付勢しているが、当該付勢手段としてその他の構成を採用することも可能である。
例えば、上記付勢手段を蛇腹状を有した部材として、フロントカバー5が後退位置に位置する際には収縮した状態を維持し、その後前進位置に位置させる際には、当該蛇腹状の部材が元の伸長状態に復帰する際の付勢力を用いて、フロントカバー5を前進させるようにすることもできる。