(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
溶融はんだを利用したはんだバンプ形成装置や接着剤の塗布装置などの流体吐出装置では、一般的に、
図1で示されるように、吐出ヘッドのサイズは、シリコンウエハやプリント基板等のワークと同じサイズであり、吐出ヘッドは、一定の方向に移動する。これにより、少ない走査回数で、スキージを動かすことによるマスクの撓みを防止、することができる。
【0008】
しかし、シリコンウエハやプリント基板等が小型の場合ではこれでも問題がないが、300mmのシリコンウエハ等の大きなサイズのワークに使用する場合、それに対応して吐出ヘッドの長さを長くする必要がある。吐出ヘッドを長くすると、吐出ヘッドからワークに加わる圧力が必ずしも均等に分散せず、バラ付いてしまう。このため、ストロークにより発生する撓みによって、マスクが変形してしまい、吐出ヘッドから同じ量の流体を吐出できなかった。また、小さいヘッドを用いて複数回で流体を吐出すると、微細な吐出パターンでは隣接する吐出箇所が近いため、重複して吐出してしまい、吐出量が安定しなかった。
【0009】
このようなことから、300mmのシリコンウエハ等の大きなサイズのワークに対して流体を吐出する場合であっても、安定した吐出量で流体を塗布できる流体塗布装置を提供することが求められる。また、ワークの極力広い領域に対して流体を塗布できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の問題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現可能である。
【0011】
本発明の第1の形態によれば、電子部品のワーク上のマスク中に流体を塗布するための流体吐出方法が提供される。この方法では、流体を収容可能なタンクと吐出ヘッドからなる、ワークの長さより短い幅のヘッド部を有し、前記吐出ヘッドには、ワーク上のマスクの内容物を吸引するための吸引口とその近傍には流体を吐出するための吐出ノズルが形成されており、かつ吸引口は、吐出ヘッドの進行方向の前方に設置されている流体吐出装置を用い、ワークに対して吐出ヘッドを往復することで吐出を行う。
【0012】
第1の形態によれば、
図2のように吐出ヘッドをワークに対して往復させることで、マスクの変形を低減することが可能となる。具体的には、吐出ヘッドが第1の方向に移動するときに発生していたマスクの変形が、第1の方向と逆方向である第2の方向に再度移動させることにより、一度変形したマスクが元に戻るため、マスクの変形を低減することが可能となる。
【0013】
本発明の第2の形態によれば、電子部品のワーク上のマスク中に流体を塗布するための流体吐出装置が提供される。この流体吐出装置は、流体を収容可能なタンクと吐出ヘッドからなる、ワークの長さより短い幅のヘッド部であって、前記吐出ヘッドには、流体を吐出するための吐出ノズルの近傍に、ワーク上のマスクの内容物を吸引するためのスリット状の開口部を有する吸引口が、吐出ノズルを挟んで吸引口を両側に配置している。
【0014】
第2の形態によれば、往復吐出を行うことでマスクの変形が一方向に偏らず、マスクの変形が低減されるので、吐出量がバラ付いてしまうこともなく、安定した吐出量の流体を吐出することが可能である。したがって、従来のワーク中の微細なマスク中への流体塗布で発生していた膨大な修正は無くなり、生産性が飛躍的に向上する。
【0015】
本発明の第3の形態によれば、電子部品のワーク上のマスク中に流体を塗布するための流体吐出装置が提供される。この流体吐出装置は、流体を収容可能なタンクと吐出ヘッドからなる、ワークより小さな複数のヘッド部を有し、前記ヘッド部はお互いに同期してワーク上の水平方向に移動し、前記吐出ヘッドには、ワーク上のマスクの内容物を吸引するための吸引口とその近傍には流体を吐出するための吐出ノズルが形成されており、かつ吸引口は、吐出ヘッドの進行方向の前方に設置されており、流体吐出前のワーク上のマスク中の空気を脱気、減圧することで、安定した同じ量の流体を吐出することができる。
【0016】
本発明の第4の形態によれば、電子部品のワーク上のマスク中に流体を塗布するための流体吐出方法が提供される。この流体吐出方法は、流体を収容可能なタンクと吐出ヘッドからなる、ワークより小さく、角度が可変可能な複数のヘッド部を有し、前記ヘッド部はお互いに同期してワーク上の水平方向に移動し、前記吐出ヘッドには、ワーク上のマスクの内容物を吸引するための吸引口とその近傍には流体を吐出するための吐出ノズルが形成されており、かつ吸引口は、吐出ヘッドの進行方向の前方に設置されており、流体吐出前のワーク上のマスク中の空気を脱気、減圧することで、安定した同じ量の流体を吐出する。
【0017】
複数の分割されたヘッド部は、ヘッド部に加えられた垂直方向からの圧力が均等に加えられるサイズであれば良い。具体的には、ワークの左右の長さの1/2〜1/4が好ましい。また、本願に用いられる複数のヘッド部の数は、ワークのサイズに応じて決定することが可能であるが、扱い易いのは2〜4個が適当である。ワークがシリコンウエハのように円形のものに吐出する場合は、3個のヘッド部を用いるのが最適である。
図6のように、円形のワークへの吐出では、ヘッド部は前後に水平に移動させるだけでなく、左右に配置されたヘッド部を円周に沿って角度を変えることで、角形に比べて吐出が難しい円形のワークでも、均一な吐出量を得ることができる。
【0018】
第4の形態によれば、ヘッド部がワークよりも長さが短いために、吐出ヘッドからワークに加わる圧力が必ずしも均等に分散せず、吐出量がバラ付いてしまうこともなく、均一の圧力がワークに加えることが可能である。また、ヘッド部はお互いに同期してワーク上の水平方向を移動するため、吐出漏れもなく、安定した吐出量の流体を吐出することが可能である。したがって、従来のワーク中の微細なマスク中への流体塗布で発生していた膨大な修正は無くなり、生産性が飛躍的に向上する。
【0019】
本発明の第5の形態によれば、電子部品のワーク上に流体を塗布するための流体吐出装置が提供される。この流体吐出装置は、ワークを支持するための第1のステージと、ワークの上方を水平方向に直線的に移動しながら流体を吐出するように構成された第1の吐出ヘッドであって、第1のステージの外部の初期位置から、第1のステージの上方を経由して、第1のステージの外部の最終位置まで移動するように構成された第1の吐出ヘッドと、配置角度を変えつつ第1のステージの上方を水平方向に移動しながら流体を吐出するように構成された第2の吐出ヘッドと、第1の吐出ヘッドの移動経路上において、初期位置から第1のステージの外縁まで、および、第1のステージの外縁から最終位置まで配置された第2のステージであって、吐出ヘッドが第2のステージ上を摺動可能に配置された第2のステージと、を備えている。第1の吐出ヘッドおよび第2の吐出ヘッドにおける流体を吐出可能な範囲は、第1のステージ上のワークを配置する領域の幅よりも小さい。
【0020】
かかる流体吐出装置によれば、ワークのサイズより小さな複数の吐出ヘッドを用いて流体を吐出するので、大型のワークを処理する場合であっても、吐出ヘッドからワークに加わる圧力がほぼ均等に分散する。したがって、吐出ヘッドの吐出量が安定する。また、第1のステージの外部において、第1の吐出ヘッドの移動経路上に第2の移動ステージが配置されているので、第1の吐出ヘッドは、ワークの外縁から外縁まで塗布を行うことができる。さらに、第2の吐出ヘッドは、配置角度を変えながら移動するので、ワーク上の位置から塗布を開始した場合であっても、広範囲に流体を吐出できる。
【0021】
本発明の第6の形態によれば、第5の形態において、第2の吐出ヘッドは、2つの吐出ヘッドを備えている。2つの吐出ヘッドは、第1の吐出ヘッドの両側に1つずつ配置されている。かかる形態によれば、円形のワークのほぼ全領域に対して流体を効率的に塗布することができる。
【0022】
本発明の第7の形態によれば、第5または第6の形態において、第1の吐出ヘッドおよび第2の吐出ヘッドは、同期して同時に移動するように構成される。かかる形態によれば、処理時間を短縮化することができる。
【0023】
本発明の第8の形態によれば、第5ないし第7のいずれかの形態において、第1の吐出ヘッドおよび第2の吐出ヘッドは、互いに協働して、ワーク上の被吐出領域を実質的に重複することなくカバーするように構成される。かかる形態によれば、効率的に流体を塗布することができる。また、同一箇所に複数回にわたって流体が塗布されることがないので、塗布量のバラツキを抑制することができる。
【0024】
本発明の第9の形態によれば、第5ないし第8のいずれかの形態において、第1の吐出ヘッドおよび第2の吐出ヘッドにおける流体を吐出可能な範囲は、第1のステージ上のワークを配置する領域の幅の1/4以上、1/2以下である。かかる形態によれば、装置構成を過剰に複雑化することなく、第5の形態の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
A.第1実施形態:
まず、流体塗布装置のヘッド部1の構成を説明する。
図3が本発明によるヘッド部1の詳細を示す図である。ヘッド部1は、溶融はんだ等を収容可能な流体タンク2と、下端に設けた吐出ヘッド3と、を備える。溶融はんだなど温度コントロールが必要な流体に用いるときは、流体タンク2の腹部にヒータ4を巻き付けるなど、加熱手段を取り付けることもできる。吐出ヘッド3には、ヘッド下端に設けた流体吐出ノズル5と吸引口6とを有し、吸引口6は流体吐出ノズル5よりも進行方向に向かって先に吸引工程が実施できるように取り付けられている。流体吐出ノズル5及び吸引口6にも温度コントロールが必要な流体に用いるときは、吐出ヘッド3下端にもヒータ4を取り付けることが可能となる。
【0027】
吐出ヘッド3のノズル開口の形状としては、丸状、スリット状およびその他の公知のものを採用することができる。特に、ノズル開口の形状としてスリット状を用いると、複数のワーク7上の吐出対象に同時に流体を吐出することが可能となる。また、吐出ヘッド3に取り付けられた吸引口6の形状も丸状、スリット状およびその他の公知のものを採用することができるが、開口の形状としてスリット状を用いることで、シリコンウエハやプリント基板等のワーク7に対して複数の箇所を同時にマスク8内の空気や既に吐出した流体を除去することが可能となる。さらに、本願では
図4のように、吸引口6を吐出ヘッド3の前後に取り付けることで、マスクの変形を均一化することが可能となり、安定した往復での吐出が可能となる。
【0028】
次に、全体の構成を説明する。
図3に示すように本発明の流体塗布装置は、全体として流体を塗布させるべき電子部品のワーク7に対して接近および離反するように上下方向(Y)に移動可能であるとともに、水平方向(X)にも移動可能である。ワーク7の上部には、ポリイミドやレジストによって形成されたマスク8が置かれている。吐出ヘッド3は、流体吐出時には、流体吐出ノズル5がワーク7に接触する位置まで下降する。流体吐出ノズル5とワーク7との接触状態が維持されたまま液体吐出ヘッド3は水平に移動する。吐出ヘッド3が水平に移動すると、まず進行方向に向かって先に吸引工程が実施できるように取り付けられた吸引口6より、ワーク7上に設置されたマスク8内の空気を吸引させる。複数回目の吐出で、マスク8内に吐出した流体もこの段階で吸引することが可能となる。加熱手段が必要な流体は、吐出ヘッド3下部に設置されたヒータ4で加熱されることで、吸引可能となる。その後、液体吐出ヘッド3が水平移動すると、流体吐出ノズル5の開口から流体が吐出され、ワーク7上のマスク8中には流体が塗布される。流体の塗布が終了すると、液体吐出ヘッド3はワーク7から離れるように持ち上げられる。マスク8を使用しない場合でも、同じ工程が可能である。
【0029】
流体吐出装置1は、タンク2内の流体を所望の温度に保つためのヒータ4を備える。ヒータ4は、タンク2の壁部に内蔵されたものとすることができる。ヒータ4は、タンク2内の溶融はんだ等の流体9の塗布条件に最適な粘度を保つのに適切な温度に加熱されるよう、管理制御されている。
【0030】
図示はしないが、流体吐出装置1は、タンク2から延長管路10を通して、流体連通可能な圧力供給手段11とつながっており、吸引口6から続く吸引管延長管路12を通して、流体連通可能な減圧供給手段13とつながっている。圧力供給手段11は、例えば0.06ないし0.1MPa(これに限定されない)の圧力の窒素ガスを発生させる圧力発生源14を有している。圧力発生源14は、ゲート弁15および3方弁16を介してタンク2内へ圧力を供給する。タンク2内に保持されていた溶融はんだは、圧力発生源14からの圧力を受けて流体吐出ノズル5の開口から射出される。
【0031】
減圧供給手段13は、減圧発生装置であるマイクロエジェクタ16を有している。減圧発生装置16は、例えばレギュレータ17および絞り弁18を介して、0.4MPa(これに限定されない)の圧力の窒素ガスを発生させる圧力発生源19と連結され、吸引管延長管路12を介して吸引口6へ負圧を供給する。
【0032】
流体吐出装置は、圧力センサ20と制御装置21とを有する。圧力センサ20は、タンク2内と流体連通する延長管路17に設けられた3方弁18に連結し、タンク2内の圧力を監視する。タンク2内の圧力を示す信号は、圧力センサ20から制御装置21に送られる。制御装置21は、作業工程の進捗に合わせて圧力発生源14、減圧発生装置16,レギュレータ17,圧力発生源19および各弁を操作し、タンク2内に圧力を供給する。供給すべき適切な圧力値は、圧力センサ20からの信号に基づいて決定される。タンク2内の溶融はんだを流体吐出ノズル5の開口から射出する場合、タンク2内と圧力センサ20とが流体連通するように操作される。タンク2内に供給される正圧の大きさは、例えば圧力発生源14にて発生される圧力値を制御装置21によって調整することによって変化させることができる。あるいは、圧力供給手段11に設けた調整弁(図示せず)を制御装置21が調整することによって圧力値を変化させてもよい。
【0033】
溶融はんだ等の流体を流体吐出ノズル5の開口から射出させたりタンク2内に保持したりするためにタンク2内に供給されるべき適切な圧力値は、タンク2内に収容されている溶融はんだの量(重量)によっても左右される。したがって、制御装置21は、タンク2内の流体量に関するデータを入力されるようにしてもよい。この場合、制御装置21は、タンク2内の流体量のデータから、流体の射出またはタンク内保持のために適切なタンク内圧力値を計算することができる。さらに、制御装置21は、該適切なタンク内圧力値と圧力センサ20からの信号が示す実際のタンク内圧力値とを比較し、適切なタンク内圧力が得られるよう、圧力発生源14および各弁を調整することができる。
【0034】
また、タンク2内の流体量の変動による、上記適切なタンク内圧力値の変動をできるだけ少なくするため、流体供給装置22をタンク2に連結させて設けてもよい。流体供給装置22は、流体吐出装置の稼働中にタンク2内の溶融はんだが消費されたとき、タンク2内の流体量が常にほぼ一定となるように追加の流体を自動供給することができる。タンク2内の流体の量を知るためには、公知のいかなる手法を利用することも可能である。処理した製品数などから、タンク2内の溶融はんだの量を推測することができ、該タンク内の流体量に対応する上記適切なタンク内圧力値を経験により知ることができる場合には、制御装置21は圧力センサ20からの信号のみに基づいてタンク2内に供給されるべき圧力を制御することができる。
【0035】
最後に、第1実施形態の流体吐出装置の動作を説明する。第1実施形態の吐出ヘッド3は、ワーク7から離れた定位置に固定されているが、流体吐出時には、吐出ヘッド3が上下方向、水平方向にも移動して、吐出ヘッド3はワーク7上のマスク8の吐出部分に接触する位置まで下降する。圧力発生源14から供給された圧力は、ゲート弁15を介してタンク2内へ圧力を供給する。タンク2内に保持されていた流体9は、圧力発生源14からの圧力を受けて吐出ノズル5の開口から射出される。必ず流体9を吐出中の吐出ヘッド3が、吸引ノズル5が設置されている方から先に水平に移動し、ワーク7上のマスク8の開口部の空気を減圧してから、吐出ノズル5で流体を吐出するように、吐出ヘッド3は移動する。一方向へのワーク7上のマスク8の開口部への流体の吐出が終了すると、今度は折り返しの吐出ヘッド3の移動を行い、吐出ヘッド3は往復の移動が完了する。かかる動作によれば、吐出ヘッド3がワーク7に対して往復動作を行いつつ、流体を吐出することにより、マスクの変形が一方向に偏らず、マスクの変形が低減される。
【0036】
B.第2実施形態:
以下、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。第2の実施形態の構成のうち、特に断らない点については、第1実施形態と同じである。
【0037】
第2実施形態の流体吐出装置の動作を説明する。第2実施形態のヘッド部1は、ワーク7から離れた定位置に固定されているが、流体吐出時には、ヘッド部1が上下方向、水平方向にも移動して、吐出ヘッド3はワーク7上のマスク8の吐出部分に接触する位置まで下降する。
図7Aは、シリコンウエハに流体を吐出するときの複数のヘッド部1が下降した状態を示す一例である。3個のヘッド部1を有しており、中央のヘッド部は進行方向に対して平行であり、左右のヘッド部は、円形のワークに沿って配置されており、進行方向に対して非平行である。初期ポジションから下降した状態では、左のヘッド部が時計回りに10〜60度回転しており、中央のヘッド部がワークに対して平行、右のヘッド部が反時計回りに10〜60度回転した状態で保持されている。左右のヘッド部のワークの中央側の先端は、中央に配置されたヘッド部1より進行方向に向かって、前方に配置されており、ヘッドが進行報告に向かって水平移動するときに、左のヘッド部は、反時計回りに旋回し、右のヘッド部は、時計回りに旋回して、進行方向に対して平行に近づいている。
【0038】
図7Bは、3個のヘッド部1がシリコンウエハの中央部付近の状態を示した一例である。中央および左右のヘッド部1は、全て進行方向に向かって平行となっている。シリコンウエハの中央部を過ぎて3個のヘッド部1が移動すると、左のヘッド部は反時計回りに旋回し、右のヘッド部は時計回りに旋回する。そして最終ポジションに到達した状態を示すのが
図8Cである。最終ポジションでは、左のヘッド部が反時計回りに10〜60度回転しており、中央のヘッド部がワークに対して平行、右のヘッド部が時計回りに10〜60度回転した状態で保持されている。この状態では、初期ポジションとは対称的に、中央のヘッド部1は進行方向に対して平行であり、左右のヘッド部は、円形のワークに沿って配置されており、進行方向に対して非平行である。左右のヘッド部のワークの中央側の先端は、中央に配置されたヘッド部より進行方向に向かって、前方に配置されている。さらに、
図8Dはマスクを取り外すために3個のヘッド部が、シリコンウエハの外側に移動している状態を示している。このポジションでは、
図8Cと同様に中央のヘッド部は進行方向に対して平行であり、左右のヘッド部は、円形のワークに沿って配置されており、進行方向に対して非平行である。左右のヘッド部のワークの中央側の先端は、中央に配置されたヘッド部より進行方向に向かって、前方に配置されている。本願の流体吐出装置の左右のヘッド部は初期ポジションから最終ポジションへの移動で、10〜60度ワーク上で外周に向かって旋回することが可能となっている。
【0039】
本実施形態では、流体9を吐出中の吐出ヘッド3が、吸引ノズル5が設置されている方から先に水平に移動し、ワーク7上のマスク8の開口部の空気を減圧してから、吐出ノズル5で流体を吐出するように、吐出ヘッド3は移動する。圧力発生源14から供給された圧力は、ゲート弁15を介してタンク2内へ圧力を供給する。タンク2内に保持されていた流体9は、圧力発生源14からの圧力を受けて吐出ノズル5の開口から射出される。吐出ヘッド3は、ワーク7のマスク8の上をなぞって、水平に移動して、決められた範囲の流体の塗布を完了する。かかる動作によれば、ワーク7のサイズよりも小さな複数の吐出ヘッド3を用いて流体の吐出を行うことにより、吐出量のバラツキを抑制し、吐出量を安定化させることができる。
【0040】
図9〜11は、吐出ヘッド3a〜3cの移動経路の具体例を示している。
図9は、吐出ヘッド3a〜3cの走査前の初期位置を示している。第1の吐出ヘッド3aは、ワーク7の外部に配置されている。第1の吐出ヘッド3aの長手方向は、第1の吐出ヘッド3aの進行方向(紙面の上方に向かう方向)に対して垂直である。第2の吐出ヘッド3b,3cは、円形のワーク7の内周に接するように配置されている。換言すれば、第2の吐出ヘッド3b,3cは、第1の吐出ヘッド3aよりも進行方向の前方に配置されている。第2の吐出ヘッド3b,3cの長手方向は、吐出ヘッド3a〜3cの進行方向(紙面の上方に向かう方向)に対して傾いている。この傾きは、例えば、進行方向に対して10〜60度の角度であってもよい。第2の吐出ヘッド3bは、進行方向に進むに従って、反時計回りに旋回し、第2の吐出ヘッド3cは、進行方向に進むに従って、時計回りに旋回する。第2の吐出ヘッド3b,3cのこの旋回しながら進行方向に進む動作は、例えば、ロボットアームによって実現できる。
【0041】
図10は、吐出ヘッド3a〜3cの走査中の中間位置を示している。第1の吐出ヘッド3aは、
図9に示した初期位置から、ワーク7の中央まで直線的に移動している。第1の吐出ヘッド3aの基準点RPaは、直線L1に沿って移動する。第2の吐出ヘッド3b,3cは、
図9に示した初期位置から、旋回しながら進行方向に進むことによって、第1の吐出ヘッド3aと同じ配置角度で配置されている。つまり、第1の吐出ヘッド3aの長手方向は、第2の吐出ヘッド3b,3cの長手方向と平行である。この旋回移動において、第2の吐出ヘッド3b,3cの基準点RPb,RPcは、それぞれ、直線L1,L2に沿って移動する。なお、基準点RPb,RPcは、吐出ノズル5の第1の吐出ヘッド3a側の端部に設定されている。
【0042】
図11は、吐出ヘッド3a〜3cの走査終了後の最終位置を示している。第1の吐出ヘッド3aは、
図10に示した中間位置から、ワーク7の外部(初期位置とは反対側の外部)の位置まで移動している。第2の吐出ヘッド3b,3cは、
図10に示した中間位置から、旋回しながら進行方向に進むことによって、吐出ヘッド3a〜3cの進行方向(紙面の上方に向かう方向)に対して傾いている。この傾きは、初期位置における傾きと逆の傾きである。この傾きは、例えば、進行方向に対して10〜60度の角度であってもよい。
【0043】
このように吐出ヘッド3a〜3cが移動することによって、ワーク7のほぼ全領域に対して流体9を塗布することができる。具体的には、第1の吐出ヘッド3aによって中央の領域A1における塗布がカバーされ、左側の第2の吐出ヘッド3bによって左側の領域A2における塗布がカバーされ、右側の第2の吐出ヘッド3cによって右側の領域A3におけるが塗布がカバーされる。吐出ヘッド3a〜3cの吐出ノズル5a〜5cの形成領域と、基準位置RP1〜RP3と、を調節することによって、ワーク7上の被吐出領域を実質的に重複することなくカバーすることも可能である。
【0044】
C.第3実施形態:
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
図3は、第3実施形態による流体塗布装置の一例としてのはんだバンプ形成装置の概略構成を示す模式図である。はんだバンプ形成装置は、電子部品のワーク7(例えば、シリコンウエハやプリント基板等)上に流体9(ここでは、溶融はんだ)を塗布して、はんだバンプを形成する装置である。
図3に示すように、はんだバンプ形成装置は、吐出ヘッド部1と、圧力供給手段11と、圧力発生源14と、マイクロエジェクタ16と、圧力発生源19と、流体供給装置22と、を備えている。また、はんだバンプ形成装置は、ステージ30〜32を備えている(
図12参照)。これらの詳細については後述する。
【0045】
図5は、はんだバンプ形成装置の吐出ヘッド部1を示す概略図である。
図5に示すように、吐出ヘッド部1は、流体9を収容可能な流体タンク2と、その下端に設けられた吐出ヘッド3と、を備えている。この吐出ヘッド部1は、任意のアクチュエータ(図示省略)によって、ワーク7の上方を水平方向に移動可能に構成されている。本実施例では、吐出ヘッド部1は、ワーク7上に配置されたマスク8上を摺動的に移動する。マスク8は、はんだバンプを形成すべき箇所に形成された複数の孔部を有している。これらの孔部は、マスク8を、その厚み方向(鉛直方向)に貫通している。マスク8は、例えば、ポリイミドやレジストによって形成されてもよい。さらに、吐出ヘッド部1は、鉛直方向に、すなわち、ワーク7に対して接近および離反するように移動可能に構成されている。
【0046】
流体タンク2は、
図3に示すように、流体供給装置22に接続されていてもよい。流体供給装置22は、流体タンク2内の流体9が消費されたときに、流体タンク2内に収容された流体量が常にほぼ一定となるように、流体9を自動補給することができる。かかる構成によれば、流体タンク2内に収容された流体量の変動によるタンク内の圧力の変動を抑制できる。
【0047】
本実施例では、吐出ヘッド部1は、タンク2内の流体9を所望の温度に保つためのヒータ4を備えている。ヒータ4は、タンク2の壁部に内蔵されていてもよい。ヒータ4は、タンク2内の流体9の塗布条件に最適な粘度を保つのに適切な温度に流体9を加熱するように制御される。
【0048】
図5に示すように、吐出ヘッド3は、吐出ノズル5と、吸引口6と、を有している。吐出ノズル5は、吐出ヘッド3を鉛直方向に貫通し、流体タンク2に連通している。
図3に示すように、流体タンク2は、延長管路10を介して、圧力供給手段11に接続されている。圧力供給手段11は、例えば0.06ないし0.1MPa(これに限定されない)の圧力の窒素ガスを発生させる圧力発生源14を備えている。圧力発生源14は、ゲート弁および三方弁を介して吐出ヘッド部1へ圧力を供給する。この圧力によって、流体タンク2内の流体9が吐出ノズル5から吐出される。
【0049】
図5に示すように、吸引口6は、吐出ヘッド3を鉛直方向に貫通し、吸引管延長管路12に連通している。
図3に示すように、吸引管延長管路12は、減圧供給手段13に接続されている。減圧供給手段13は、減圧発生装置であるマイクロエジェクタ16を備えている。マイクロエジェクタ16は、例えばレギュレータおよび絞り弁18を介して、0.4MPa(これに限定されない)の圧力の窒素ガスを発生させる圧力発生源19に接続されている。この減圧供給手段13によって、吸引管延長管路12を介して吸引口6へ負圧が供給される。
【0050】
この吸引口6は、吐出ヘッド部1の進行方向において、吐出ノズル5よりも前方に配置されている。このため、吐出ノズル5から流体を吐出する前に、マスク8の孔部内を吸引口6から脱気・減圧することができる。これにより、安定して同じ量の流体を吐出することができる。
【0051】
吐出ノズル5の開口形状としては、丸状、スリット状およびその他の公知の形状を採用することができる。特に、吐出ノズル5の開口形状としてスリット状を採用すると、マスク8の複数の孔部内に同時に流体を吐出することが可能となる。また、吸引口6の開口形状も、丸状、スリット状およびその他の公知の形状を採用することができる。吸引口6の開口形状としてスリット状を採用した場合、複数の箇所において同時に空気や既に吐出した流体を吸引することが可能となる。
【0052】
上述したはんだバンプ形成装置の動作の概略について以下に説明する。吐出ヘッド部1は、流体吐出時には、吐出ヘッド3(すなわち、吐出ノズル5の下端に位置する開口部)がマスク8に接触する位置まで下降する。そして、吐出ヘッド3は、吐出ノズル5とマスク8との接触状態が維持された状態で、水平方向に移動する。吐出ヘッド3が水平に移動すると、まず、吐出ヘッド3の進行方向前方に配置された吸引口6から、ワーク7上に配置されたマスク8の孔部内の空気が吸引される。また、吐出ヘッド3が同一の孔部上を複数回走査する場合には、以前に孔部に吐出された流体9もこの段階で吸引される。吐出ヘッド3の下部には、ヒータが配置されてもよい。こうすれば、以前に孔部に吐出された流体9が固化することがないので、当該流体を確実に吸引することができる。その後、吐出ヘッド3をさらに水平移動すると、吸引口6によって吸引が実施された後のマスク8の孔部内に、吐出ノズル5の開口から流体9が吐出される。これによって、ワーク7上のマスク8の孔部内に流体9が塗布される。流体9の塗布が終了すると、吐出ヘッド3は、マスク8から離れるように持ち上げられる。マスク8を使用しない場合でも、同じ工程が可能である。
【0053】
図12は、吐出ヘッド部1および第1のステージステージ30および第2のステージ31,32の配置を示す上面図である。
図12に示すように、本実施例のはんだバンプ形成装置は、3つの吐出ヘッド3a〜3cを備えている。実際には、吐出ヘッド部1も3つ設けられているが、
図12では、それらの図示を省略している。また、マスク8についても図示を省略している。本実施例では、吐出ヘッド3a〜3cの移動形態の違いに着目して、吐出ヘッド3aを第1の吐出ヘッド3aとも呼び、吐出ヘッド3b,3cを第2の吐出ヘッド3b,3cとも呼ぶ。また、はんだバンプ形成装置は、ワーク7を支持するための第1のステージステージ30と、第1のステージステージ30の外部に配置された第2のステージ31,32と、を備えている。
【0054】
本実施例では、第1のステージステージ30は、円形のワーク7よりも若干大きな円形の形状を有している。ただし、第1のステージステージ30の形状は、ワーク7の形状に応じて、任意の形状を有していてもよい。第2のステージ31,32は、第1のステージステージ30の外縁と接触するように、第1のステージステージ30の径方向の両端に対向して配置されている。本実施例では、第2のステージ31,32は、矩形形状を有している。ただし、第2のステージ31,32は、第1のステージステージ30の外縁まで延在する任意の形状であってもよい。例えば、第2のステージ31,32は、第1のステージステージ30の外縁の円弧形状と一致する円弧を有する凹型形状を有していてもよい。
【0055】
図13は、第1のステージステージ30および第2のステージ31,32の配置を示す断面図である。
図13に示すように、第1のステージステージ30は、その中央にワーク7を配置するための凹部を有している。この凹部は、当該凹部内にワーク7およびマスク8が配置されたときに凹部の上端とマスク8の上端とが一致する大きさに形成されている。また、第2のステージ31および32の上端は、第1のステージステージ30の凹部の上端およびマスク8の上端と同一高さにある。これにより、後述する第1の吐出ヘッド3aは、ステージ30〜32の上面およびマスク8と接触しながら、水平方向に摺動的に移動することができる。
【0056】
第1の吐出ヘッド3aは、ワーク7の上方を水平方向に移動するように構成されている。具体的には、第1の吐出ヘッド3aは、第1のステージステージ30の外部の初期位置(第2のステージ31上の位置)から第1のステージステージ30の外部の最終位置(第2のステージ32上の位置)まで、ワーク7の中央を通って直線的に移動する。
【0057】
第2の吐出ヘッド3b,3cは、第1の吐出ヘッド3aの両側にそれぞれ配置されている。この第2の吐出ヘッド3b,3cは、配置角度を変えながら、第1の吐出ヘッド3aと同じ進行方向にワーク7の上方を移動する。
【0058】
吐出ヘッド3a〜3cの長手方向の幅(換言すれば、吐出ヘッド3a〜3cにおける流体9を吐出可能な範囲)は、いずれも、ワーク7の幅(換言すれば、ワーク7を配置する領域)よりも小さい。このため、吐出ヘッド3a〜3cは、互いに協働して、ワーク7の全領域に流体9を塗布する。換言すれば、吐出ヘッド3a〜3cがそれぞれ異なる領域に流体9を塗布することによって、ワーク7の全領域に流体9が塗布される。吐出ヘッド3a〜3cの幅は、ワーク7を配置する領域の幅の1/4以上、1/2以下であってもよい。こうすれば、装置構成を過剰に複雑化することなく、流体9を均一に塗布することができる。
【0059】
図14〜16は、吐出ヘッド3a〜3cの移動経路の具体例を示している。
図14は、吐出ヘッド3a〜3cの走査前の初期位置を示している。第1の吐出ヘッド3aは、第2のステージ31(
図14では図示省略)上に配置されている。第1の吐出ヘッド3aの長手方向は、第1の吐出ヘッド3aの進行方向(紙面の上方に向かう方向)に対して垂直である。第2の吐出ヘッド3b,3cは、円形のワーク7の内周に接するように配置されている。換言すれば、第2の吐出ヘッド3b,3cは、第1の吐出ヘッド3aよりも進行方向の前方に配置されている。第2の吐出ヘッド3b,3cの長手方向は、吐出ヘッド3a〜3cの進行方向(紙面の上方に向かう方向)に対して傾いている。この傾きは、例えば、進行方向に対して10〜60度の角度であってもよい。第2の吐出ヘッド3bは、進行方向に進むに従って、反時計回りに旋回し、第2の吐出ヘッド3cは、進行方向に進むに従って、時計回りに旋回する。第2の吐出ヘッド3b,3cのこの旋回しながら進行方向に進む動作は、例えば、ロボットアームによって実現できる。
【0060】
図15は、吐出ヘッド3a〜3cの走査中の中間位置を示している。第1の吐出ヘッド3aは、
図14に示した初期位置から、ワーク7の中央まで直線的に移動している。第1の吐出ヘッド3aの基準点RPaは、直線L1に沿って移動する。第2の吐出ヘッド3b,3cは、
図14に示した初期位置から、旋回しながら進行方向に進むことによって、第1の吐出ヘッド3aと同じ配置角度で配置されている。つまり、第1の吐出ヘッド3aの長手方向は、第2の吐出ヘッド3b,3cの長手方向と平行である。この旋回移動において、第2の吐出ヘッド3b,3cの基準点RPb,RPcは、それぞれ、直線L1,L2に沿って移動する。なお、基準点RPb,RPcは、吐出ノズル5の第1の吐出ヘッド3a側の端部に設定されている。
【0061】
図16は、吐出ヘッド3a〜3cの走査終了後の最終位置を示している。第1の吐出ヘッド3aは、
図15に示した中間位置から、第2のステージ32(
図16では図示省略)上の位置まで移動している。第2の吐出ヘッド3b,3cは、
図15に示した中間位置から、旋回しながら進行方向に進むことによって、吐出ヘッド3a〜3cの進行方向(紙面の上方に向かう方向)に対して傾いている。この傾きは、初期位置における傾きと逆の傾きである。この傾きは、例えば、進行方向に対して10〜60度の角度であってもよい。
【0062】
このように吐出ヘッド3a〜3cが移動することによって、ワーク7のほぼ全領域に対して流体9を塗布することができる。具体的には、第1の吐出ヘッド3aによって中央の領域A1における塗布がカバーされ、左側の第2の吐出ヘッド3bによって左側の領域A2における塗布がカバーされ、右側の第2の吐出ヘッド3cによって右側の領域A3におけるが塗布がカバーされる。吐出ヘッド3a〜3cの吐出ノズル5a〜5cの形成領域と、基準位置RP1〜RP3と、を調節することによって、ワーク7上の被吐出領域を実質的に重複することなくカバーすることも可能である。
【0063】
上述した吐出ヘッド3a〜3cの移動は、互いに同期して同時に実施されてもよい。こうすれば、ワーク7の処理時間を短縮化できる。ただし、吐出ヘッド3a〜3cの少なくとも1つの移動が終了した後に、吐出ヘッド3a〜3cの残りが移動を開始してもよい。
【0064】
上述したはんだバンプ形成装置によれば、ワーク7のサイズより小さな複数の吐出ヘッド3a〜3cを用いて流体9を吐出するので、ワーク7が大型の場合であっても、吐出ヘッド3a〜3cの各々からワーク7に加わる圧力がほぼ均等に分散する。したがって、流体9の吐出量を均一化できる。また、第1のステージステージ30の外部において、第1の吐出ヘッド3aの移動経路上に第2のステージ31,32が配置されているので、第1の吐出ヘッド3aは、ワーク7の外縁から外縁まで塗布を行うことができる。さらに、第2の吐出ヘッド3b,3cは、配置角度を変えながら移動するので、ワーク7上の位置から塗布を開始した場合であっても、広範囲に流体9を吐出できる。したがって、ワーク7の広範囲の領域にわたって、流体9を吐出できる。特に、本実施例のように、1つの第1の吐出ヘッド3aと、2つの第2の吐出ヘッド3b,3cと、を用いることによって、円形のワーク7のほぼ全領域に対して流体を効率的に塗布することができる。ただし、吐出ヘッド3の数は、ワーク7のサイズや形状に応じて2以上の任意の数とすることができる。