(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る撮影装置について図面を参照しながら説明する。以下においては、本発明の一実施形態として、デジタル一眼レフカメラについて説明する。なお、撮影装置は、デジタル一眼レフカメラに限らず、例えば、ミラーレス一眼カメラ、コンパクトデジタルカメラ、ビデオカメラ、カムコーダ、タブレット端末、PHS(Personal Handy phone System)、スマートフォン、フィーチャフォン、携帯ゲーム機など、撮影機能を有する別の形態の装置に置き換えてもよい。
【0023】
[撮影装置1全体の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る撮影装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、撮影装置1は、システムコントローラ100、操作部102、駆動回路104、撮影レンズ106、絞り108、シャッタ110、像振れ補正装置112、信号処理回路114、画像処理エンジン116、バッファメモリ118、カード用インタフェース120、LCD(Liquid Crystal Display)制御回路122、LCD124、ROM(Read Only Memory)126、ジャイロセンサ128、加速度センサ130、地磁気センサ132及びGPS(Global Positioning System)センサ134を備えている。なお、撮影レンズ106は複数枚構成であるが、
図1においては便宜上一枚のレンズとして示す。また、撮影レンズ106の光軸AXと同じ方向をZ軸方向と定義し、Z軸方向と直交し且つ互いに直交する二軸方向をそれぞれX軸方向(水平方向)、Y軸方向(垂直方向)と定義する。
【0024】
操作部102には、電源スイッチやレリーズスイッチ、撮影モードスイッチなど、ユーザが撮影装置1を操作するために必要な各種スイッチが含まれる。ユーザにより電源スイッチが操作されると、図示省略されたバッテリから撮影装置1の各種回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。
【0025】
システムコントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)及びDSP(Digital Signal Processor)を含む。システムコントローラ100は電源供給後、ROM126にアクセスして制御プログラムを読み出してワークエリア(不図示)にロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、撮影装置1全体の制御を行う。
【0026】
レリーズスイッチが押されると、システムコントローラ100は、例えば、固体撮像素子112a(後述の
図2参照)により撮像された画像に基づいて計算された測光値や、撮影装置1に内蔵された露出計(不図示)で測定された測光値に基づき適正露出が得られるように、駆動回路104を介して絞り108及びシャッタ110を駆動制御する。より詳細には、絞り108及びシャッタ110の駆動制御は、プログラムAE(Automatic Exposure)、シャッタ優先AE、絞り優先AEなど、撮影モードスイッチにより指定されるAE機能に基づいて行われる。
【0027】
また、システムコントローラ100はAE制御と併せてAF(Autofocus)制御を行う。AF制御には、アクティブ方式、位相差検出方式、像面位相差検出方式、コントラスト検出方式等が適用される。また、AFモードには、複数の測距エリアを用いた多点測距モード、全画面の距離情報に基づく全画面測距モード等がある。システムコントローラ100は、AF結果に基づいて駆動回路104を介して撮影レンズ106を駆動制御し、撮影レンズ106の焦点を調整する。なお、この種のAE及びAFの構成及び制御については周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0028】
図2及び
図3は、像振れ補正装置112の構成を概略的に示す図である。
図2及び
図3に示されるように、像振れ補正装置112は、固体撮像素子112aを備えている。被写体からの光束は、撮影レンズ106、絞り108、シャッタ110を通過して固体撮像素子112aの受光面112aaにて受光される。なお、固体撮像素子112aの受光面112aaは、X軸及びY軸を含むXY平面である。
【0029】
固体撮像素子112aは、透過波長選択素子としてベイヤ型画素配置のカラーフィルタを有する単板式カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。固体撮像素子112aは、受光面112aa上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の画像信号を生成して出力する。
【0030】
なお、固体撮像素子112aは、CMOSイメージセンサに限らず、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。固体撮像素子112aはまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよいし、画素毎に何れかのカラーフィルタを配置していれば、ベイヤ配列等の周期的なカラー配列を有するフィルタである必要はない。
【0031】
信号処理回路114は、固体撮像素子112aより入力される画像信号に対してクランプ、デモザイク(色補間)等の所定の信号処理を施して、画像処理エンジン116に出力する。
【0032】
画像処理エンジン116は、信号処理回路114より入力される画像信号に対してマトリクス演算、Y/C分離、ホワイトバランス等の所定の信号処理を施して輝度信号Y、色差信号Cb、Crを生成し、JPEG(Joint Photographic Experts Group)等の所定のフォーマットで圧縮する。
【0033】
バッファメモリ118は、画像処理エンジン116による処理の実行時、処理データの一時的な保存場所として用いられる。また、撮影画像の保存形式は、JPEG形式に限らず、最小限の画像処理(例えばクランプ)しか施されないRAW形式であってもよい。
【0034】
カード用インタフェース120のカードスロットには、メモリカード200が着脱可能に差し込まれている。
【0035】
画像処理エンジン116は、カード用インタフェース120を介してメモリカード200と通信可能である。画像処理エンジン116は、生成された圧縮画像信号(撮影画像データ)をメモリカード200(又は撮影装置1に備えられる不図示の内蔵メモリ)に保存する。
【0036】
また、画像処理エンジン116は、生成された輝度信号Y、色差信号Cb、Crをフレームメモリ(不図示)にフレーム単位でバッファリングする。画像処理エンジン116は、バッファリングされた信号を所定のタイミングで各フレームメモリから掃き出して所定のフォーマットのビデオ信号に変換し、LCD制御回路122に出力する。LCD制御回路122は、画像処理エンジン116より入力される画像信号を基に液晶を変調制御する。これにより、被写体の撮影画像がLCD124の表示画面に表示される。ユーザは、AE制御及びAF制御に基づいて適正な輝度及びピントで撮影されたリアルタイムのスルー画(ライブビュー)を、LCD124の表示画面を通じて視認することができる。
【0037】
画像処理エンジン116は、ユーザにより撮影画像の再生操作が行われると、操作により指定された撮影画像データをメモリカード200又は内蔵メモリより読み出して所定のフォーマットの画像信号に変換し、LCD制御回路122に出力する。LCD制御回路122が画像処理エンジン116より入力される画像信号を基に液晶を変調制御することで、被写体の撮影画像がLCD124の表示画面に表示される。
【0038】
[振れ補正部材の駆動に関する説明]
像振れ補正装置112は、振れ補正部材を駆動させる。本発明の一実施形態において、振れ補正部材は、固体撮像素子112aである。なお、振れ補正部材は、固体撮像素子112aに限らず、撮影レンズ106内に含まれる一部のレンズなど、光軸AXを基準として物理的に動かされることにより、固体撮像素子112aの受光面112aa上での被写体像の入射位置をシフトさせることが可能な別の構成であってもよく、又は、これらと固体撮像素子112aのうち2つ以上の部材を組み合わせた構成であってもよい。
【0039】
像振れ補正装置112は、像振れを補正するために振れ補正部材を光軸AXと直交する平面内(すなわち、XY平面内)で微小に駆動(振動)させるだけでなく、被写体像が画素ピッチ分ぼかされることによる光学的なローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)効果(偽色等のモアレの軽減)が得られるように振れ補正部材を光軸AXと直交する平面内で微小に駆動(微小回転)させる。以下、説明の便宜上、振れ補正部材を像振れ補正で駆動させることを「像振れ補正駆動」と記し、振れ補正部材を光学的なLPFと同様の効果が得られるように駆動させることを「LPF駆動」と記す。
【0040】
(像振れ補正駆動に関する説明)
ジャイロセンサ128は、像振れ補正を制御するための情報を検出するセンサである。具体的には、ジャイロセンサ128は、撮影装置1に加わる二軸周り(X軸周り、Y軸周り)の角速度を検出し、検出された二軸周りの角速度をXY平面内(換言すると、固体撮像素子112aの受光面112aa内)の振れを示す振れ検出信号としてシステムコントローラ100に出力する。
【0041】
図2及び
図3に示されるように、像振れ補正装置112は、撮影装置1が備えるシャーシ等の構造物に固定された固定支持基板112bを備えている。固定支持基板112bは、固体撮像素子112aが搭載された可動ステージ112cをスライド可能に支持している。
【0042】
可動ステージ112cと対向する固定支持基板112bの面上には、磁石M
YR、M
YL、M
XD、M
XUが取り付けられている。また、固定支持基板112bには、磁性体であるヨークY
YR、Y
YL、Y
XD、Y
XUが取り付けられている。ヨークY
YR、Y
YL、Y
XD、Y
XUはそれぞれ、固定支持基板112bから可動ステージ112cを回り込んで磁石M
YR、M
YL、M
XD、M
XUと対向する位置まで延びた形状を持ち、磁石M
YR、M
YL、M
XD、M
XUとの間に磁気回路を構成する。また、可動ステージ112cには、駆動用コイルC
YR、C
YL、C
XD、C
XUが取り付けられている。駆動用コイルC
YR、C
YL、C
XD、C
XUが磁気回路の磁界内において電流を受けることにより、駆動力が発生する。可動ステージ112c(固体撮像素子112a)は、発生した駆動力により、固定支持基板112bに対してXY平面内で微小に駆動される。
【0043】
対応する磁石、ヨーク及び駆動用コイルはボイスコイルモータを構成する。以下、便宜上、磁石M
YR、ヨークY
YR及び駆動用コイルC
YRよりなるボイスコイルモータに符号VCM
YRを付し、磁石M
YL、ヨークY
YL及び駆動用コイルC
YLよりなるボイスコイルモータに符号VCM
YLを付し、磁石M
XD、ヨークY
XD及び駆動用コイルC
XDよりなるボイスコイルモータに符号VCM
XDを付し、磁石M
XU、ヨークY
XU及び駆動用コイルC
XUよりなるボイスコイルモータに符号VCM
XUを付す。
【0044】
各ボイスコイルモータVCM
YR、VCM
YL、VCM
XD、VCM
XU(駆動用コイルC
YR、C
YL、C
XD、C
XU)は、システムコントローラ100の制御下でPWM(Pulse Width Modulation)駆動される。ボイスコイルモータVCM
YRとVCM
YLは、固体撮像素子112aの下方であって、水平方向(X軸方向)に所定の間隔を空けて並べて配置されており、ボイスコイルモータVCM
XDとVCM
XUは、固体撮像素子112aの側方であって、垂直方向(Y軸方向)に所定の間隔を空けて並べて配置されている。
【0045】
固定支持基板112b上であって駆動用コイルC
YR、C
YL、C
XD、C
XUの各近傍位置には、ホール素子H
YR、H
YL、H
XD、H
XUが取り付けられている。ホール素子H
YR、H
YL、H
XD、H
XUはそれぞれ、磁石M
YR、M
YL、M
XD、M
XUの磁力を検出して、可動ステージ112c(固体撮像素子112a)のXY平面内の位置を示す位置検出信号をシステムコントローラ100に出力する。具体的には、ホール素子H
YR及びH
YLにより可動ステージ112c(固体撮像素子112a)のY軸方向位置及び傾き(回転)が検出され、ホール素子H
XD及びH
XUにより可動ステージ112c(固体撮像素子112a)のX軸方向位置及び傾き(回転)が検出される。
【0046】
システムコントローラ100は、ボイスコイルモータ用のドライバICを内蔵している。システムコントローラ100は、ジャイロセンサ128より出力される振れ検出信号及びホール素子H
YR、H
YL、H
XD、H
XUより出力される位置検出信号に基づいて、ドライバICの定格電力(許容電力)を超えない範囲内において各ボイスコイルモータVCM
YR、VCM
YL、VCM
XD、VCM
XU(駆動用コイルC
YR、C
YL、C
XD、C
XU)に流す電流のバランスを崩さないようにデューティ比を計算する。
【0047】
システムコントローラ100は、計算されたデューティ比で各ボイスコイルモータVCM
YR、VCM
YL、VCM
XD、VCM
XUに駆動電流を流し、固体撮像素子112aを像振れ補正駆動する。これにより、固体撮像素子112aが重力や外乱等に抗して規定の位置に保持されつつ固体撮像素子112aの受光面112aa上での像振れが補正(別の言い方によれば、受光面112aa上での被写体像の入射位置が振れないように固体撮像素子112aの位置が調整)される。
【0048】
(LPF駆動に関する説明)
次に、LPF駆動に関する説明を行う。本発明の一実施形態において、像振れ補正装置112は、ボイスコイルモータVCM
YR、VCM
YL、VCM
XD、VCM
XUに所定の駆動電流を流すことにより、一回の露光期間に対して、XY平面内において所定の軌跡を描くように可動ステージ112c(固体撮像素子112a)を駆動して、被写体像を固体撮像素子112aの検出色(R、G又はB)の異なる複数の画素に入射させる。これにより、光学的なLPFと同様の効果が得られる。
【0049】
図4(a)、
図4(b)は、LPF駆動の説明を補助する図である。同図に示されるように、固体撮像素子112aの受光面112aa上には、複数の画素PIXが所定の画素ピッチPでマトリックス状に並べて配置されている。説明の便宜上、同図の各画素PIXについて、前面に配置されたフィルタ色に対応させて符号(R、G、Bの何れか1つ)を付す。
【0050】
図4(a)は、固体撮像素子112aが光軸AXを中心とする正方形軌跡を描くように駆動される例を示す。この正方形軌跡は、例えば固体撮像素子112aの画素ピッチPを一辺とした正方形の閉じた経路とすることができる。
図4(a)の例では、固体撮像素子112aは、X軸方向とY軸方向とに1画素ピッチP単位で交互に且つ正方形経路となるように駆動される。
【0051】
図4(b)は、固体撮像素子112aが光軸AXを中心とする回転対称な円形軌跡を描くように駆動される例を示す。この円形軌跡は、例えば固体撮像素子112aの画素ピッチPの√2/2倍を半径rとする円形の閉じた経路とすることができる。
【0052】
なお、画素ピッチPを含む駆動軌跡の情報は、システムコントローラ100の内部メモリ又はROM126に予め保持されている。
【0053】
図4(a)(又は
図4(b))に例示されるように、露光期間中、固体撮像素子112aが駆動軌跡の情報に基づいて所定の正方形軌跡(又は円形軌跡)を描くように駆動されると、被写体像が4つのカラーフィルタR、G、B、G(4つ(二行二列)の画素PIX)に均等に入射される。これにより、光学的なLPFと同等の効果が得られる。すなわち、何れのカラーフィルタ(画素PIX)に入射された被写体像も、その周辺のカラーフィルタ(画素PIX)に必ず入射されるため、恰も光学的なLPFを被写体像が通過したときと同等の効果(偽色等のモアレの軽減)が得られる。
【0054】
なお、ユーザは、操作部102を操作することにより、像振れ補正駆動のオン/オフやLPF駆動のモードを切り替えることができる。LPF駆動のモードには、例えば「解像度優先」、「バランス」、「偽色軽減優先」がある。
【0055】
「解像度優先」モードは、解像度を重視するモードであり、振れ補正部材(固体撮像素子112a)をLPF駆動させないモードである。「バランス」モードは、解像度と偽色とのバランスを考慮したモードであり、振れ補正部材(固体撮像素子112a)を第一の微小駆動量でLPF駆動させるモードである。「偽色軽減優先」モードは、偽色の軽減を重視するモードであり、振れ補正部材(固体撮像素子112a)を第一の微小駆動量よりも大きい第二の微小駆動量でLPF駆動させるモードである。
【0056】
[偽色の検出及び報知に関する説明]
次に、本発明の一実施形態において撮影画像内に発生する、モアレの一種である偽色を検出する方法及び検出された偽色をユーザに報知する方法について説明する。
図5A及び
図5Bは、システムコントローラ100により実行される偽色処理フローを示す。
図5A及び
図5Bに示される偽色処理フローは、例えば、レリーズスイッチが半押しされた時点、すなわち、AFの指示操作が行われた時点で開始される。
【0057】
[
図5AのS11(AE制御及びAF制御)]
本処理ステップS11では、レリーズスイッチが半押しされたことにより、AE制御及びAF制御が行われる。
【0058】
[
図5AのS12(状態の判定)]
本処理ステップS12では、撮影装置1が静止状態であるか否かが判定される。例示的には、ジャイロセンサ128より入力される振れ検出信号のうち一定周波数以上の信号成分の振幅が一定期間継続してある閾値以内に収まる場合に静止状態と判定される。撮影装置1の静止状態として、典型的には、撮影装置1が三脚に固定された状態が挙げられる。
【0059】
なお、静止状態を含めた撮影装置1の姿勢はジャイロセンサ128に代えて、加速度センサ130、地磁気センサ132、GPSセンサ134など、他のセンサより出力される情報を用いて検出されてもよい。また、検出精度を向上させるため、例えばセンサ・フュージョン技術を適用し、これらのセンサより出力される情報が複合的に用いられるようにしてもよい。
【0060】
撮影装置1が低速シャッタスピード設定下の手持ち撮影状態など、静止状態にない場合は、手振れ(あるいは被写体ぶれ)による被写体のボケに起因して偽色がそもそも発生し難い。従って、本発明の一実施形態では、撮影装置1が静止状態である(すなわち、偽色が発生しやすい状態である)と判定された場合に限り(S12:YES)、撮影画像内の偽色を検出し、これをユーザに報知すべく、処理ステップS13(LPF駆動設定の読み込み)以降が実行される。
【0061】
撮影装置1が静止状態にない場合は、処理ステップS13(LPF駆動設定の読み込み)以降が実行されないため、システムコントローラ100の処理負荷が軽減される。処理ステップS13(LPF駆動設定の読み込み)以降が実行されない旨は、撮影者に例えばLCD124の表示画面等を通じて通知されてもよい。
【0062】
なお、撮影画像内の偽色の検出・ユーザへの報知を重視したい場合は、撮影装置1が静止状態であるか否かに拘わらず処理ステップS13(LPF駆動設定の読み込み)以降が実行されてもよい。この場合、処理ステップS13(LPF駆動設定の読み込み)以降が実行される旨は、撮影者に例えばLCD124の表示画面等を通じて通知されてもよい。また、静止状態の判定閾値は撮影装置1に設定されたシャッタスピードに応じて変更されてもよい。
【0063】
[
図5AのS13(LPF駆動設定の読み込み)]
本処理ステップS13では、振れ補正部材(固体撮像素子112a)のLPF駆動に関する情報として、LPF駆動の設定モードの情報が読み込まれる。
【0064】
[
図5AのS14(第一画像の撮影)]
図6(a)、
図7(a)は、撮影される被写体の一部であって、それぞれ異なる部分を拡大して示す図である。
図6(a)に示される被写体は、固体撮像素子112aの画素PIXの画素ピッチPと同ピッチで明暗が交互に現れる斜め縞模様であり、
図7(a)に示される被写体は、画素ピッチPと同ピッチで明暗が交互に現れる縦縞模様である。説明の便宜上、
図6(a)に示される被写体のうち太実線で囲まれた6×6マスの被写体を「斜め縞被写体6a」と記し、
図7(a)に示される被写体のうち太実線で囲まれた6×6マスの被写体を「縦縞被写体7a」と記す。
【0065】
本処理ステップS14では、AE制御及びAF制御に基づいて適正な輝度及びピントで被写体画像(第一画像)が撮影される。ここでは、斜め縞被写体6aと縦縞被写体7aの何れにもピントが合っているものとする。
【0066】
なお、第一画像は、シャッタ(フォーカルプレーンシャッタ)110による衝撃を防ぐと共に画面の暗転を最小限に抑えるべく、シャッタ110ではなく電子シャッタを用いて撮影される。
【0067】
図6(b)、
図7(b)はそれぞれ、固体撮像素子112aの各画素PIXの取り込まれる斜め縞被写体6a、縦縞被写体7aを模式的に示す図であり、固体撮像素子112aの受光面112aaを被写体側から正面視した図である。
図6(b)及び
図7(b)では、
図4と同様に、各画素PIXについて、前面に配置されたフィルタ色に対応させて符号(R、G、Bの何れか1つ)を付す。
図6(b)、
図7(b)の各図中、黒塗りの画素PIXは、縞模様の暗部分を取り込んだことを示し、白塗りの画素PIXは、縞模様の明部分を取り込んだことを示す。また、説明の便宜上、
図6(b)、
図7(b)の各図に画素のアドレス(数字1〜8、符号イ〜チ)を付す。
【0068】
なお、厳密には、撮影レンズ106の結像作用によって、被写体は上下左右が反転した状態で固体撮像素子112a上に結像される。一例として、「斜め縞被写体6a」の左上角の部分は、固体撮像素子112a上では右下角の部分として結像する。しかし、本発明の一実施形態では、説明の煩雑化を避けるため、「斜め縞被写体6a」の左上角の部分は、
図6(b)の左上角の部分に対応するものとして説明する。
【0069】
[
図5AのS15(スルー画の表示)]
本処理ステップS15では、処理ステップS14(第一画像の撮影)にて撮影された第一画像がLCD124の表示画面にスルー画として表示される。
【0070】
[
図5AのS16(固体撮像素子112aのシフト)]
本処理ステップS16では、可動ステージ112cが駆動されて、固体撮像素子112aが1画素分の距離だけ右方向(
図6のX軸の矢じり側の方向)にシフトされる。
【0071】
[
図5AのS17(第二画像の撮影)]
本処理ステップS17においても、第一画像撮影時のAE制御及びAF制御に基づいて被写体画像(第二画像)が撮影される。第二画像の撮影完了後、第一画像と第二画像を用いた偽色検出処理を開始する旨が撮影者に告知されてもよい。
【0072】
なお、第二画像も第一画像と同様に、シャッタ(フォーカルプレーンシャッタ)110による衝撃を防ぐと共に画面の暗転を最小限に抑えるべく、シャッタ110ではなく電子シャッタを用いて撮影される。
【0073】
図6(c)、
図7(c)はそれぞれ、
図6(b)、
図7(b)と同様の図であり、固体撮像素子112aの各画素PIXの取り込まれる斜め縞被写体6a、縦縞被写体7aを模式的に示す。
図6、
図7の各図(b)、(c)に示されるように、固体撮像素子112aの受光面112aa上での被写体像の入射位置は、処理ステップS16(固体撮像素子112aのシフト)における固体撮像素子112aのシフト量に応じて(受光面112aa上で左方向に1画素分の距離だけ)シフトする。
【0074】
附言するに、本処理ステップS17における撮影条件は、処理ステップS14(第一画像の撮影)における撮影時に対して、固体撮像素子112aが1画素分の距離だけ右方向にシフトされた点以外は同一である。そのため、第二画像は、実質的に、第一画像に対して1画素分右方向にシフトした範囲を撮影したものとなっている。
図6、
図7の各図(b)、(c)から判るように、第二画像において、被写体は、第一画像に対して全体的に1画素分の距離だけ左方向にシフトした位置に写る。
【0075】
処理ステップS14(第一画像の撮影)にて撮影された第一画像、処理ステップS17(第二画像の撮影)にて撮影された第二画像の何れの画像信号も、上述した信号処理(クランプ、デモザイク、マトリクス演算、Y/C分離、ホワイトバランス等)が施されて、輝度信号Y、色差信号Cb、Crに変換される。以下、説明の便宜上、処理ステップS14(第一画像の撮影)にて撮影された第一画像の色差信号(Cb、Cr)を「第一色差信号」と記し、処理ステップS17(第二画像の撮影)にて撮影された第二画像の色差信号(Cb、Cr)を「第二色差信号」と記す。また、「注目画素」とは、少なくともデモザイク処理された後の各画像の画素を指すものとする。
【0076】
なお、第一画像、第二画像の何れの画像も、処理ステップS13(LPF駆動設定の読み込み)にて読み込まれた設定モードの情報に従い、LPF駆動下で撮影されてもよい。
【0077】
また、上記の例では、一枚の画像(第一画像)を撮影後、固体撮像素子112aをシフトして一枚の画像(第二画像)を撮影しているが、別の例では、複数枚の画像を撮影し、その中から一枚の画像(第一画像)を選択し、固体撮像素子112aをシフトした後、再び複数枚の画像を撮影し、その中から一枚の画像(第二画像)を選択するようにしてもよい。
【0078】
また、上記の例では、第一画像をLCD124の表示画面にスルー画として表示しているが、別の例では、第二画像をLCD124の表示画面にスルー画として表示してもよく、また、第一画像、第二画像をLCD124の表示画面にスルー画として順次表示してもよい。また、第一画像、第二画像以外のタイミングで撮影された他の画像をLCD124の表示画面にスルー画として表示してもよい。
【0079】
[
図5AのS18(電気的なLPF処理)]
本発明の一実施形態では、詳しくは後述するが、第一色差信号と第二色差信号との信号差分値や信号加算値に基づいて偽色の発生が検出される。しかし、コントラストの高いエッジ部分では、偽色が発生していなくても、第一色差信号と第二色差信号との信号差分値が大きくなることがある。この場合、エッジ部分において偽色が発生していると誤検出される虞がある。
【0080】
また、詳しくは後述するが、信号差分値や信号加算値の演算に用いられる第一色差信号と第二色差信号は、同一の被写体像を写す画素の色差信号ではあるが、処理ステップS16(固体撮像素子112aのシフト)にて固体撮像素子112aがシフトされたことが原因で、それぞれ、アドレスが異なる画素を用いてデモザイク処理されている。そのため、第一色差信号と第二色差信号は、同一の被写体像を写す画素の色差信号であるにも拘わらず色情報が極僅かに異なる場合がある。
【0081】
そこで、本処理ステップS18では、画像信号(輝度信号Y、色差信号Cb、Cr)に対してLPF処理が施される。LPF処理によって画像がぼかされることで、エッジ部分における偽色の誤検出が抑えられると共に第一色差信号と第二色差信号との色情報の誤差が抑えられる。
【0082】
[
図5AのS19(アドレスの変換)]
本発明の一実施形態では、撮影画像内において偽色が発生する偽色発生領域が画素単位で検出される。この場合、偽色の検出精度を向上させるため、同一の被写体像が入射される注目画素同士で信号差分値や信号加算値を演算することが望ましい。
【0083】
そこで、本処理ステップS19では、同一の被写体像が同一アドレスの画素に入射されたものとして処理されるように、処理ステップS17(第二画像の撮影)にて撮影された第二画像を構成する各画素のアドレスが、処理ステップS16(固体撮像素子112aのシフト)における固体撮像素子112aのシフト量(換言すると、固体撮像素子112aの受光面112aa上での被写体像の入射位置のシフト量)に応じて変換される。
【0084】
一例として、
図6(c)の画素PIXbのアドレス(ハ,2)は、被写体像の入射位置のシフト量に応じて右方向に1画素シフトしたときに位置する画素、すなわち、画素PIXbと同一の被写体像を取り込む画素PIXa(
図6(b)参照)と同一のアドレス(ニ,2)に変換される。
【0085】
[
図5AのS20(色差信号の差分値の演算)]
斜め縞被写体6a及び縦縞被写体7aは、固体撮像素子112aの画素PIXの画素ピッチPと同ピッチの高周波成分を含む。そのため、斜め縞被写体6a及び縦縞被写体7aの画像信号が処理ステップS14(第一画像の撮影)、処理ステップS17(第二画像の撮影)においてデモザイク処理されると、偽色が発生する。
【0086】
具体的には、
図6(b)の例では、G成分の画素PIXの輝度が高く、R及びB成分の画素PIXの輝度が低い。そのため、デモザイク処理後の各画素PIXの色情報はG成分が支配的となって、斜め縞被写体6aに緑色の偽色が発生する。一方、
図6(c)の例では、
図6(b)の例とは反対に、R及びB成分の画素PIXの輝度が高く、G成分の画素PIXの輝度が低い。そのため、デモザイク処理後の各画素PIXの色情報はR及びB成分が支配的となって、斜め縞被写体6aに紫色の偽色が発生する。
【0087】
また、
図7(b)の例では、B成分の画素PIXの輝度が高く、R成分の画素PIXの輝度が低い。そのため、デモザイク処理後の各画素PIXの色情報はBとGとの混色成分となって、青と緑との中間色(例えばシアン色中心の近傍色)の偽色が発生する。一方、
図7(c)の例では、
図7(b)の例とは反対に、R成分の画素PIXの輝度が高く、B成分の画素PIXの輝度が低い。そのため、デモザイク処理後の各画素PIXの色情報はRとGとの混色成分となって、赤と緑の中間色(橙色中心の近傍色)の偽色が発生する。
【0088】
図8は、Cb、Crの二軸で定義される色空間を示す。
図8中、符号6bは、
図6(b)の例において注目画素で発生する緑色の偽色に対応するプロットであり、符号6cは、
図6(c)の例において注目画素で発生する紫色の偽色に対応するプロットであり、符号7bは、
図7(b)の例において注目画素で発生する青と緑との中間色の偽色に対応するプロットであり、符号7cは、
図7(c)の例において注目画素で発生する赤と緑の中間色の偽色に対応するプロットである。下記は、各プロットの座標情報を示す。なお、原点Oは座標(0,0)である。
プロット6b:(Cb,Cr)=(−M,−N)
プロット6c:(Cb,Cr)=(M,N)
プロット7b:(Cb,Cr)=(M’,−N’)
プロット7c:(Cb,Cr)=(−M’+α,N’+β)
但し、M,N,M’,N’,α,βは何れも正数である。
【0089】
図8に示されるように、本発明の一実施形態では、固体撮像素子112aの画素PIXの画素ピッチPと同程度の高周波成分の被写体像を取り込んだときに発生する偽色の色自体が、受光面112aa上での被写体像の入射位置をシフトさせることによって変化することを利用して、偽色が発生する箇所(注目画素)を検出している。より詳細には、高周波成分の被写体像が取り込まれる注目画素において、第一色差信号と第二色差信号が持つ色情報が互いに補色の関係となる部分を、偽色が発生する部分であると判断し検出している。
【0090】
本発明の一実施形態では、上記の補色関係を得るべく、受光面112aa上での被写体像の入射位置が左方向(水平の画素の並び方向)に1画素分シフト(固体撮像素子112aが被写体像に対して右方向に1画素分シフト)されているが、本発明はこれに限らない。
【0091】
シフト方向は、例示的には、右方向(水平の画素の並び方向)であってもよく、又は、上方向(垂直な画素の並び方向)、下方向(垂直な画素の並び方向)、右上、右下、左上、左下の各斜め方向(水平、垂直の各並び方向に対して45度をなす方向)など、画素配置に応じた他の方向であってもよいし、併用してもよい。
【0092】
また、シフト距離は、例示的には、3画素分、5画素分など、他の奇数画素分の距離であってもよく、また、半画素分又は半画素分+奇数画素分(例えば1.5画素分、2.5画素分等)であってもよく(すなわち、n画素分又は(m+0.5)画素分(但し、n=奇数の自然数,m=0又は奇数の自然数)の何れかであればよく)、シフト駆動する機構の精度に応じて選択できることもできる。
【0093】
また、シフト距離は、撮影対象の被写体や撮影条件によっては、偶数画素分及びその近傍(例えば1.9〜2.1画素分等)以外の距離であればよい。これらの量(方向及び距離)で受光面112aa上での被写体像の入射位置がシフトされる場合も、高周波成分の被写体像が取り込まれる(偽色が発生する)注目画素において、第一色差信号と第二色差信号が持つ色情報が互いに補色の関係となることから、偽色の発生が検出できる。
【0094】
本処理ステップS20では、処理ステップS19(アドレスの変換)におけるアドレス変換後において、アドレスが同一の注目画素毎に、第一色差信号と第二色差信号との差分値(Cb
sub,Cr
sub)が演算される。具体的には、本処理ステップS20では、第一色差信号のCb、CrをそれぞれCb1、Cr1と定義し、これと同一アドレスの第二色差信号のCb、CrをそれぞれCb2、Cr2と定義した場合に、差分値(Cb
sub,Cr
sub)が次式により演算される。
Cb
sub=Cb1−Cb2
Cr
sub=Cr1−Cr2
【0095】
[
図5AのS21(第一の距離情報の演算)]
本処理ステップS21では、アドレスが同一の注目画素毎に、第一色差信号と第二色差信号との色空間内での距離(第一の距離情報Saturation_
sub)が次式により演算される。
Saturation_
sub=√(Cb
sub2+Cr
sub2)
【0096】
第一の距離情報Saturation_
subは、
図8の各プロット対(プロット6bとプロット6c、プロット7bとプロット7c)の例でそれぞれ、2√(M
2+N
2)、√{(2M’−α)
2+(2N’+β)
2-}となる。
【0097】
図8の各プロット対の位置関係から把握されるように、第一色差信号と第二色差信号が持つ色情報が強い補色関係にあるほど第一の距離情報Saturation_
subが大きくなり、第一色差信号と第二色差信号が持つ色情報が補色関係にない(例えば同様の色相である)ほど第一の距離情報Saturation_
subが小さくなる。すなわち、第一の距離情報Saturation_
subは、偽色発生領域でなければ理想的にはゼロであり、偽色が強く発生する偽色発生領域ほど大きくなる。
【0098】
[
図5AのS22(色差信号の加算値の演算)]
本処理ステップS22では、アドレスが同一の注目画素毎に、第一色差信号と第二色差信号との加算値(Cb’
add,Cr’
add)が演算される。
【0099】
具体的には、本処理ステップS22では、暫定加算値(Cb
add,Cr
add)が次式により演算される。
Cb
add=Cb1+Cb2
Cr
add=Cr1+Cr2
【0100】
次いで、暫定加算値の平均値(Cb
mean,Cr
mean)が次式により演算される。
Cb
mean=Cb
add/2
Cr
mean=Cr
add/2
【0101】
次いで、加算値(Cb’
add,Cr’
add)が次式により演算される。
Cb’
add=Cb
add−Cb
mean
Cr’
add=Cr
add−Cr
mean
【0102】
[
図5AのS23(第二の距離情報の演算)]
本処理ステップS23では、アドレスが同一の注目画素毎に、加算値(Cb’
add,Cr’
add)に基づいて色空間内における第二の距離情報Saturation_
addが次式により演算される。
Saturation_
add=√(Cb’
add2+Cr’
add2)
【0103】
第二の距離情報Saturation_
addは、
図8の各プロット対(プロット6bとプロット6c、プロット7bとプロット7c)の例でそれぞれ、ゼロ、√(α
2+β
2)となる。
【0104】
ここで、第一、第二の各色差信号は、画像撮影時の光源、露出条件、ホワイトバランス等の影響を受けて変化する。しかし、第一、第二の各色差信号が同じように変化するため、色空間内における互いの相対距離(すなわち、第一の距離情報Saturation_
sub)は変化が少ない。
【0105】
一方、第二の距離情報Saturation_
addは、第一、第二の各色差信号が画像撮影時の光源、露出条件、ホワイトバランス等の影響を受けて色空間の原点Oの位置に対して変化すると、大きく変化する。そこで、処理ステップS22(色差信号の加算値の演算)では、第二の距離情報Saturation_
addを暫定加算値(Cb
add,Cr
add)を用いて即座には演算せず、上記影響による原点Oに対する位置の変化を相殺又は軽減すべく(上記影響により、原点Oから離れた第一色差信号と第二色差信号との中点を原点Oに近付けるべく)、加算値(Cb’
add,Cr’
add)が演算されている。
【0106】
図8の各プロット対の位置関係から把握されるように、第一色差信号と第二色差信号が持つ色情報が補色関係にある場合は、互いの符号が逆となることから加算値(Cb’
add,Cr’
add)が小さくなって、第二の距離情報Saturation_
addが小さくなる。また、強い補色関係であるほど第二の距離情報Saturation_
addが小さくなって、理想的にはゼロとなる。一方、第一色差信号と第二色差信号が持つ色情報が補色関係にない(例えば同様の色相である)場合は、互いの符号が同一となることから、加算値(Cb’
add,Cr’
add)が大きくなって、第二の距離情報Saturation_
addが大きくなる。すなわち、第二の距離情報Saturation_
addは、偽色発生領域でなければ大きくなり、偽色発生領域であれば小さくなる。
【0107】
[
図5AのS24(輝度信号の差分値の演算)]
説明の便宜上、処理ステップS14(第一画像の撮影)にて撮影された第一画像の輝度信号Yを「第一輝度信号」と記し、処理ステップS17(第二画像の撮影)にて撮影された第二画像の輝度信号Yを「第二輝度信号」と記す。本処理ステップS24では、アドレスが同一の注目画素毎に、第一輝度信号と第二輝度信号との差分値Y
diffが演算される。具体的には、本処理ステップS24では、第一輝度信号をY1と定義し、第二輝度信号をY2と定義した場合に、差分値Y
diffが次式により演算される。
Y
diff=|Y1−Y2|
【0108】
[
図5AのS25(偽色発生領域の判定)]
本処理ステップS25では、アドレスが同一の注目画素毎に、偽色発生領域であるか否かが判定される。具体的には、次の条件(1)〜(3)が全て満たされる場合に、当該画素が偽色発生領域であると判定される。
【0109】
・条件(1)
上述したように、第一の距離情報Saturation_
subが大きいほど第一色差信号と第二色差信号が持つ色情報が強い補色関係となることから、当該注目画素が偽色発生領域である可能性が高い。そこで、条件(1)は次のように規定される。
条件(1):Saturation_
sub≧閾値T1
【0110】
・条件(2)
上述したように、第二の距離情報Saturation_
addが小さいほど第一色差信号と第二色差信号が持つ色情報が強い補色関係となることから、当該注目画素が偽色発生領域である可能性が高い。そこで、条件(2)は次のように規定される。
条件(2):Saturation_
add≦閾値T2
【0111】
処理ステップS14(第一画像の撮影)にて撮影された第一画像と処理ステップS17(第二画像の撮影)にて撮影された第二画像の一方だけで大きな像振れが発生した場合を考える。この場合、第一色差信号と第二色差信号との差分が大きくなって、偽色が誤検出される虞がある。そこで、条件(3)は次のように規定される。
条件(3):Y
diff≦閾値T3
【0112】
すなわち、差分値Y
diffが閾値T3よりも大きい場合は、上記の誤検出の虞があることから、当該注目画素に対する偽色の検出が行われない(当該注目画素が偽色発生領域でないものとして処理される。)。
【0113】
なお、条件(1)と条件(2)は、当該注目画素が偽色発生領域であるか否かを直接的に判定する条件となっている。そこで、別の実施形態では、条件(1)と条件(2)の少なくとも一方が満たされる場合に、当該注目画素が偽色発生領域であると判定されるようにしてもよい。
【0114】
また、ユーザは、操作部102を操作して閾値T1〜T3を設定変更することにより、偽色の検出感度を変更することができる。
【0115】
[
図5BのS26(偽色の検出)]
本処理ステップS26では、偽色の有無が検出される。例示的には、処理ステップS25(偽色発生領域の判定)において偽色発生領域と判定された注目画素数(又は全有効画素数のうち偽色発生領域と判定された注目画素の割合)が所定の閾値以上である場合に、偽色有りという検出結果となり(S26:YES)、該注目画素数(又は割合)が所定の閾値未満である場合に、偽色無しという検出結果となる(S26:NO)。
【0116】
[
図5BのS27(偽色識別画面の表示)]
本処理ステップS27では、偽色識別画面がLCD124の表示画面に表示される。
【0117】
図9に、偽色識別画面の一例を示す。
図9の例では、LCD124の表示画面にテレビモニタTV1の画面が写っている。テレビモニタTV1の画面は、微小な画素が密に並ぶ空間周波数の高い被写体であることから、偽色が発生しやすい。そのため、
図9の例では、処理ステップS25(偽色発生領域の判定)において、テレビモニタTV1の画面が写る領域に属する全ての画素で偽色が発生しているものと判定される。
【0118】
本処理ステップS27では、LCD124の表示画面に表示されるスルー画のうち、偽色が発生していると判定された画素に対応する偽色発生領域(
図9の例では、テレビモニタTV1の画面全域)に特定の情報が重畳される。
【0119】
本発明の一実施形態では、特定の情報は、スルー画内において、偽色が発生していると判定された画素に対応する偽色発生領域とそれ以外の領域とをユーザに視覚的に識別させるための画像情報である。
図9の例では、スルー画内に写るテレビモニタTV1の画面全域に特定の色の画像が重畳される。ユーザは、スルー画内に重畳された特定の色の画像を視認することにより、偽色がどのように発生しているかを容易に把握することができる。これにより、ユーザは、例えば、偽色が発生する被写体を外した構図で撮影を行ったり、LPF駆動のモードを偽色に合わせて適切に設定したりすることができる。
【0120】
なお、スルー画に重畳される特定の情報は、特定の色の画像に限らない。他の例としては、特定のパターンの画像、特定の色及びパターンの組み合わせよりなる画像が挙げられる。
【0121】
[
図5BのS28(半押し操作解除判定)]
本処理ステップS28では、レリーズスイッチの半押しが解除されたか否かが判定される。
【0122】
[
図5BのS29(LPF駆動のモード設定画面の表示)]
本処理ステップS29は、処理ステップS28(半押し操作解除判定)にてレリーズスイッチの半押しが解除されたと判定された場合(S28:YES)に実行される。本処理ステップS29では、LPF駆動のモード設定画面がLCD124の表示画面に表示される。ユーザは、操作部102を操作することにより、モード設定画面を通じてLPF駆動のモードを任意で設定変更することができる。
【0123】
[
図5BのS30(半押し操作判定)]
本処理ステップS30では、所定の条件下で(例えば、LPF駆動のモード設定画面に対する終了操作が行われてから所定時間経過するまでの間に)レリーズスイッチが半押しされたか否かが判定される。本処理ステップS30にて所定の条件下でレリーズスイッチが半押しされたと判定されると(S30:YES)、本フローチャートの処理は、処理ステップS11(AE制御及びAF制御)に戻る。
【0124】
[
図5BのS31(全押し操作判定)]
本処理ステップS31は、処理ステップS28(半押し操作解除判定)にてレリーズスイッチの半押しが解除されていないと判定された場合(S28:NO)に実行される。本処理ステップS31では、レリーズスイッチが全押しされたか否かが判定される。本処理ステップS31にてレリーズスイッチが全押しされていないと判定されると(S31:NO)、本フローチャートの処理は、処理ステップS11(AE制御及びAF制御)に戻る。
【0125】
[
図5BのS32(本撮影)]
本処理ステップS32は、処理ステップS31(全押し操作判定)にてレリーズスイッチが全押しされたと判定される場合(S31:YES)に実行される。本処理ステップS32では、レリーズスイッチの全押し操作に従い、本撮影(全押しされた時点の静止画の取り込み)が行われる。なお、本撮影は、処理ステップS26(偽色の検出)にて偽色有りという検出結果が得られている場合には、LPF駆動下で行われてもよい。
【0126】
[
図5BのS33(本撮影画像の保存)]
本処理ステップS33では、処理ステップS32(本撮影)にて本撮影された本撮影画像がメモリカード200(又は撮影装置1に備えられる不図示の内蔵メモリ)に保存される。また、本撮影画像に代えて又は追加して、処理ステップS14(第一画像の撮影)にて撮影された第一画像及び処理ステップS17(第二画像の撮影)にて撮影された第二画像の少なくとも一方がメモリカード200(又は撮影装置1に備えられる不図示の内蔵メモリ)に保存されてもよい。
【0127】
[
図5BのS34(偽色識別画面の表示の停止)]
本処理ステップS34は、処理ステップSS30(半押し操作判定)にて所定の条件下でレリーズスイッチが半押しされていないと判定された場合(S30:NO)又は処理ステップS33(本撮影画像の保存)が行われた後に実行される。本処理ステップS34では、偽色識別画面の表示が停止、すなわち、スルー画に重畳されていた特定の情報(例えば特定の色の画像)が消去される。これにより、LCD124の表示画面の表示は通常のスルー画に戻る。
【0128】
このように、本発明の一実施形態によれば、ユーザは、スルー画内に重畳された特定の色の画像を視認することにより、偽色がどのように発生しているかを容易に把握することができる。これにより、ユーザは、例えば、偽色が発生する被写体を外した構図で撮影を行ったり、LPF駆動のモードを偽色に合わせて適切に設定したりすることができる。
【0129】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0130】
上記の実施形態では、
図5Bの処理ステップS27(偽色識別画面の表示)にて偽色が発生していると判定された画素に対応する偽色発生領域に1つの種類の情報(特定の色の画像)が重畳されているが、本発明はこれに限らない。例えば、本発明の変形例では、偽色発生領域に発生する偽色の強度に応じて異なる種類の情報が重畳されてもよい。
【0131】
図10に、本発明の変形例における偽色識別画面を示す。
図10に示される偽色識別画面には、3台のテレビモニタTV2〜TV4が写っている。テレビモニタTV2の画面には強い偽色が発生し、テレビモニタTV3の画面には中程度の偽色が発生し、テレビモニタTV4の画面には弱い偽色が発生している。
【0132】
本変形例では、例えば第一の距離情報Saturation_
subや第二の距離情報Saturation_
addに基づいて偽色発生領域における偽色の強度が検出され、検出された強度に応じて重畳すべき画像情報が決定される。本変形例では、濃度の濃い色の画像がテレビモニタTV2の画面に重畳され、中程度の濃度の色の画像がテレビモニタTV3の画面に重畳され、濃度の薄い色の画像がテレビモニタTV4の画面に重畳される。
【0133】
本変形例によれば、ユーザは、スルー画内に重畳された画像情報を視認することにより、どの程度の強さの偽色がどの位置に発生しているかを容易に把握することができる。
【0134】
また、上記の実施形態では、LPF駆動を実行することにより、画像全体に対して光学的に偽色の除去を施しているが、本発明はこれに限らない。偽色は、画像処理を用いて除去されてもよい。画像処理の場合は、偽色を画像全体に限らず局所的に(例えば偽色発生領域と判定された注目画素毎に)除去することもできる。
【0135】
また、上記の実施形態では、固体撮像素子112a自体をシフトさせることにより、受光面112aa上での被写体像の入射位置をシフトさせているが、本発明はこれに限らない。例えば、別の振れ補正部材(撮影レンズ106内に含まれる一部のレンズなど)を偏心駆動させることにより、受光面112aa上での被写体像の入射位置をシフトさせてもよく、また、撮影レンズ106の光路内に光軸AXに対して垂直よりやや傾けて配置された平行平板を光軸AX周りに回転させたり、頂角可変プリズム、固体撮像素子112aのカバーガラス(カバーガラスに付着した塵等を除去するための加振機能を備えたもの)等を駆動させたりすることにより、受光面112aa上での被写体像の入射位置をシフトさせてもよい。
【0136】
また、上記の実施形態では、処理ステップS25(偽色発生領域の判定)において、閾値T1〜T3が各画素に対する全ての判定において不変であるが、本発明はこれに限らない。
【0137】
例えば、システムコントローラ100によってAF制御が行われることにより、画像内でピントが合っているとみなせる範囲(合焦エリアであり、例示的には被写界深度に収まる範囲)が求まる。合焦エリア(合焦状態)の被写体はコントラストが高く、高周波成分を含みやすいため、偽色が発生しやすい。一方、合焦エリア外(非合焦状態)の被写体はコントラストが低く、高周波成分を含み難いため、偽色が発生し難い。
【0138】
そこで、処理ステップS25(偽色発生領域の判定)では、演算によって求まった合焦エリア内の画素に対する判定を行う場合と合焦エリア外の画素に対する判定を行う場合とで、閾値T1〜T3が異なる値に変更されてもよい。例示的には、合焦エリア内の画素では偽色が発生している(目立つ)可能性が高いことから、検出感度が高くなるような閾値設定(例えば閾値T1を低い値に設定)を行い、それ以外の画素では偽色が発生している可能性が低い(目立たない)ことから、検出感度が低くなるような閾値設定(例えば閾値T1を高い値に設定)を行うか、偽色検出の処理自体が省略される。これにより、偽色の検出精度がより一層向上したり、検出速度が向上したりする。
【0139】
また、上記の実施形態では、一対の画像(処理ステップS14(第一画像の撮影)にて撮影された第一画像と処理ステップS17(第二画像の撮影)にて撮影された第二画像)を用いて偽色の検出が行われているが、別の実施形態では、3枚以上の画像を用いて偽色の検出が行われてもよい。
【0140】
また、上記の実施形態では、偽色発生領域にのみ特定の情報が重畳されているが、本発明はこれに限らない。例えば、偽色発生領域以外の領域、すなわち、偽色の発生が無い領域にのみ特定の情報が重畳されてもよく、また、偽色発生領域と偽色の発生が無い領域の両方の領域に互いに異なる特定の情報が重畳されてもよい。この場合も、ユーザは、偽色発生領域と偽色の発生が無い領域とを視覚的に識別することができる。