特許第6579413号(P6579413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6579413
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】防汚塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 143/04 20060101AFI20190912BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20190912BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20190912BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190912BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20190912BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   C09D143/04
   C08F220/10
   C09D133/14
   C09D201/00
   C09D7/63
   C09D5/16
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-528595(P2019-528595)
(86)(22)【出願日】2019年4月15日
(86)【国際出願番号】JP2019016124
【審査請求日】2019年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-81650(P2018-81650)
(32)【優先日】2018年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】和久 英典
(72)【発明者】
【氏名】松木 崇
(72)【発明者】
【氏名】小林 慧
(72)【発明者】
【氏名】岡 永都
(72)【発明者】
【氏名】安井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 基道
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−030071(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/071181(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/012148(WO,A1)
【文献】 特表2005−507450(JP,A)
【文献】 特開平2−150488(JP,A)
【文献】 特開2000−167993(JP,A)
【文献】 特開2005−075780(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/072662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 143/04
C08F 220/10
C09D 7/63
C09D 133/14
C09D 201/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体Aと、カルボン酸シリルエステルBと、モノカルボン酸金属塩Cを含有する防汚塗料組成物であって、
前記共重合体Aは、単量体(a)と、単量体(b)と、エチレン性不飽和単量体(c)の混合物を共重合して得られ、
前記単量体(a)は、一般式(1)で表され、
前記単量体(b)は、一般式(2)で表され、
前記カルボン酸シリルエステルBは、エチレン性不飽和カルボン酸以外のカルボン酸のシリルエステルである、防汚塗料組成物。
【化1】
(式中、3つのRは、同一又は異なって、炭素数3〜8のα位、又はβ位が分岐した炭化水素基であり、この炭化水素基は、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状、分岐鎖状、又は環状構造を示し、Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基を示す。)
Y−R...(2)
(式中、Rは炭素数2〜10の酸素原子を有するアルキル基またはアリール基を示し、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フジツボ、セルプラ、ムラサキイガイ、フサコケムシ、ホヤ、アオノリ、アオサ、スライム等の水棲汚損生物が、船舶(特に船底部分)や漁網類、漁網付属具等の漁業具や発電所導水管等の水中構造物に付着することにより、それら船舶等の機能が害される、外観が損なわれる等の問題がある。
このような問題を防ぐために、船舶等に防汚塗料組成物を塗布して防汚塗膜を形成し、防汚塗膜から防汚薬剤を徐放させることによって、長期間に渡って防汚性能を発揮させる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−17203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術を採用しても、海水中に常に没水されている塗膜部分は長期防汚性能を維持するものの、水中と水上との境界である喫水部においては、ドライアンドウェットが繰り返され、日照などの影響を受けやすいなど様々影響を受けることから、防汚性が十分に発揮されないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、長期間太陽光に暴露された後においても長期間にわたり塗膜溶解が持続し、水棲汚損生物の付着が起こりやすい喫水部においても良好な防汚性能を発揮できる、環境安全性の高い防汚塗膜を形成するための組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、共重合体Aと、カルボン酸シリルエステルBと、モノカルボン酸金属塩Cを含有する防汚塗料組成物であって、前記共重合体Aは、単量体(a)と、単量体(b)と、エチレン性不飽和単量体(c)の混合物を共重合して得られ、前記単量体(a)は、一般式(1)で表され、前記単量体(b)は、一般式(2)で表され、前記カルボン酸シリルエステルBは、エチレン性不飽和カルボン酸以外のカルボン酸のシリルエステルである、防汚塗料組成物が提供される。
【0007】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、特定構成の、共重合体Aと、カルボン酸シリルエステルBと、モノカルボン酸金属塩Cを含有する防汚塗料組成物を用いて防汚塗膜を形成したところ、喫水部においても良好な防汚性能が発揮されることを見出し、本発明の完成に到った。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0009】
1.防汚塗料組成物
本発明の防汚塗料組成物は、共重合体Aと、カルボン酸シリルエステルBと、モノカルボン酸金属塩Cを含有する。
【0010】
1−1.共重合体A
共重合体Aは、トリオルガノシリルエステル含有共重合体であり、単量体(a)と、単量体(b)と、エチレン性不飽和単量体(c)の混合物を共重合して得られる。従って、共重合体Aは、単量体(a)〜(c)に由来する単量体単位を含む。
【0011】
<単量体(a)>
単量体(a)は、トリオルガノシリル基含有単量体であり、一般式(1)で表される構造を有する。
【0012】
【化1】
(式中、3つのRは、同一又は異なって、炭素数3〜8のα位、又はβ位が分岐した炭化水素基であり、この炭化水素基は、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状、分岐鎖状、又は環状構造を示し、Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基を示す。)
【0013】
炭素数3〜8のα位が分岐した炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、テキシル基、シクロヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、1−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1−メチルヘプチル基等が挙げられる。β位が分岐した炭化水素基としては、2,2−ジメチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基等が挙げられる。
【0014】
Rとして特定の基を選択することにより、塗膜異常がさらに起こりにくくなり、且つ、防汚塗膜の耐水性が特に高くなる。このような観点から、Rとしては、それぞれ同一又は異なって、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、及び2−エチルヘキシル基であることが好ましく、イソプロピル基であることがより好ましい。
【0015】
前記単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリs−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルs−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルt−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルテキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジs−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジフェニルテキシルシリル、(メタ)アクリル酸t−ブチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルシクロヘキシルシラン、(メタ)アクリル酸トリシクロヘキシルシラン、(メタ)アクリル酸トリ1,1−ジメチルペンチルシラン、(メタ)アクリル酸トリ1−メチルヘキシルシラン、(メタ)アクリル酸トリ1,1−ジメチルヘキシルシラン、(メタ)アクリル酸トリ1−メチルヘプチルシラン、(メタ)アクリル酸トリ2,2−ジメチルプロピルシラン、(メタ)アクリル酸トリシクロヘキシルメチルシラン、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルシクロヘキシルメチルシラン、(メタ)アクリル酸トリ2−エチルヘキシルシラン、(メタ)アクリル酸トリ2−プロピルペンチルシラン等が挙げられる。特に、塗膜異常を起こしにくく、且つ、耐水性に優れた防汚塗膜を形成できる点で、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリs−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸t−ブチルジフェニルシリル、及び(メタ)アクリル酸トリ2−エチルヘキシルシリルが好ましく、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルがより好ましい。これらの(メタ)アクリル酸トリオルガノシリルエステル単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて使用される。
【0016】
<酸素原子含有単量体(b)>
単量体(b)は、酸素原子含有単量体であり、一般式(2)で表される構造を有する。
Y−R...(2)
(式中、Rは炭素数2〜10の酸素原子を有するアルキル基またはアリール基を示し、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基を示す。)
【0017】
単量体(b)は、単量体(a)と共重合可能な酸素原子含有エチレン性不飽和単量体であり、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸プロピレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられ、塗膜物性の観点から、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルがより好ましい。前記例示の単量体(b)は、共重合体Aのモノマー成分として単独又は二種以上で使用できる。
【0018】
<エチレン性不飽和単量体(c)>
単量体(c)は、前記単量体(a)及び前記単量体(b)以外の単量体であって、且つ単量体(a)および単量体(b)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体である。単量体(c)は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、及び(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸銅、(メタ)アクリル酸バーサチック酸亜鉛、(メタ)アクリル酸バーサチック酸銅、(メタ)アクリル酸ナフテン酸亜鉛、(メタ)アクリル酸ナフテン酸銅、(メタ)アクリル酸ステアリン酸亜鉛、(メタ)アクリル酸アビエチン酸銅、等の(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族化合物等が挙げられる。この中でも特に、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸ナフテン酸亜鉛、(メタ)アクリル酸アビエチン酸銅、(メタ)アクリル酸水添ロジン亜鉛、(メタ)アクリル酸水添ロジン銅、がより好ましい。前記例示の単量体(c)は、共重合体Aのモノマー成分として単独又は二種以上で使用できる。
【0019】
<共重合体Aの合成>
共重合体Aは、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)との混合物を共重合させることにより得られる。前記混合物中における単量体(a)の含有量は20〜70質量%程度が好ましく、30〜60質量%程度がより好ましい。単量体(a)の含有量が30〜60質量%程度の場合、得られる防汚塗料組成物を用いて形成した塗膜が、安定した塗膜溶解性を示し、長期間、防汚性能を維持できる。前記混合物中における単量体(a)の含有量は、具体的には例えば、20、30、40、50、60、70質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは、10,000〜100,000であり、特に好ましくは、20,000〜70,000である。Mwが10,000〜100,000の場合、塗膜が脆くならず、かつ、塗膜の溶解が適度であるため、所望の防汚効果を有効に発揮できる。Mwの測定方法としては、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。この重量平均分子量は、具体的には例えば、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
共重合体Aは、単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)とのランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体のいずれの共重合体であってもよい。共重合体Aは、例えば、重合開始剤の存在下、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)を重合させることにより得ることができる。
【0022】
前記重合反応において使用される重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物が挙げられる。これら重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記重合開始剤としては、特に、AIBN、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト又は1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエートが好ましい。重合開始剤の使用量を適宜設定することにより、共重合体Aの分子量を調整することができる。この時、さらにメルカプタンやα−メチルスチレンダイマーのような連鎖移動剤を用いることもできる。
【0023】
重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。この中でも特に、簡便に、且つ、精度良く、共重合体Aを得ることができる点で、溶液重合が好ましい。
【0024】
前記重合反応においては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピル等のエステル系溶剤;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。この中でも特に、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレンがより好ましい。これら溶媒については、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
重合反応における反応温度は、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、通常70〜140℃であり、好ましくは80〜120℃である。重合反応における反応時間は、反応温度等に応じて適宜設定すればよく、通常4〜8時間程度である。重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0026】
本発明の組成物中における共重合体Aの含有量は、特に制限されないが、本発明の組成物の固形分中、通常2〜50質量%、好ましくは4〜25質量%である。共重合体Aの含有量が4質量%〜25質量%の場合、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性が得られ、長期間の安定した表面更新性が維持でき、所望の防汚効果を有効に発揮することができる。また、塗膜の優れたリコート性能を発揮することができる。
【0027】
1−2.カルボン酸シリルエステルB
カルボン酸シリルエステルBは、エチレン性不飽和カルボン酸以外のカルボン酸のシリルエステルであって、該カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ネオヘキサン酸、バーサチック酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、ネオノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ナフテン酸などの飽和脂肪酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシ酸;安息香酸、フタル酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸;ロジン、水添ロジン、不均化ロジンなどの樹脂酸;トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸などのシクロアルケニルカルボン酸などが挙げられる。
【0028】
喫水部での防汚性および耐クラック性などの塗膜物性が良い点から、ネオデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ナフテン酸などの飽和脂肪酸、ロジン、水添ロジン、不均化ロジンなどの樹脂酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸などのシクロアルケニルカルボン酸が好ましく、ナフテン酸、ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸が更に好ましい。
【0029】
カルボン酸シリルエステルBのシリル基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリイソブチルシリル、トリs−ブチルシリル、トリイソペンチルシリル、トリフェニルシリル、ジイソプロピルフェニルシリル、ジイソプロピルイソブチルシリル、ジイソプロピルs−ブチルシリル、ジイソプロピルイソペンチルシリル、イソプロピルジイソブチルシリル、イソプロピルジs−ブチルシリル、t−ブチルジイソプチルシリル、t−ブチルジイソペンチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、ジイソプロピルテキシルシリル、ジイソプロピルシクロヘキシルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリ1,1−ジメチルペンチルシリル、トリ2,2−ジメチルプロピルシリル、トリシクロヘキシルメチルシリル、ジイソプロピルシクロヘキシルメチルシリル、トリ2−エチルヘキシルシリル、トリ2−プロピルペンチルシリル等が挙げられ、喫水部での防汚性および耐クラック性などの塗膜物性が良い点から、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジフェニルシリルが好ましく、トリイソプロピルシリルが更に好ましい。
【0030】
本発明の組成物中におけるカルボン酸シリルエステルBの含有量は特に制限されないが、共重合体Aとの含有割合が、固形分換算で、質量%(カルボン酸シリルエステルB/共重合体A)、通常0.1〜25質量%であり、より好ましくは0.1〜15質量%である。前記範囲内にある時、本発明の塗料組成物からなる塗膜の耐クラック性と塗膜溶解性が良好となり、特に喫水部においてその効果が顕著に現れる。
【0031】
1−3.モノカルボン酸金属塩C
モノカルボン酸金属塩のモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ネオヘキサン酸、バーサチック酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、ネオノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ナフテン酸などの飽和脂肪酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシ酸;安息香酸、フタル酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸;ロジン、水添ロジン、不均化ロジンなどの樹脂酸;トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸などのシクロアルケニルカルボン酸などが挙げられ、喫水部での防汚性および耐クラック性などの塗膜物性が良い点から、ネオデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ナフテン酸などの飽和脂肪酸、ロジン、水添ロジン、不均化ロジンなどの樹脂酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸などのシクロアルケニルカルボン酸が好ましく、ナフテン酸、ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸が更に好ましい。
【0032】
モノカルボン酸金属塩の金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、銅などが挙げられ、特に亜鉛または銅が好ましい。
【0033】
本発明の組成物中におけるモノカルボン酸金属塩Cの含有量は特に制限されないが、共重合体Aとの含有割合が、固形分換算で、質量比(共重合体A/モノカルボン酸金属塩C)が、通常15〜0.1であり、好ましくは10〜0.3で、より好ましくは5〜0.6である。前記範囲内にある時、本発明の塗料組成物からなる塗膜の耐クラック性と塗膜溶解性が良好となり、特に喫水部においてその効果が顕著に現れる。
【0034】
1−4.防汚薬剤
防汚薬剤としては、例えば無機薬剤及び有機薬剤が挙げられる。
無機薬剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン酸銅(一般名:ロダン銅)、銅粉等が挙げられる。この中でも特に、亜酸化銅とロダン銅が好ましく、亜酸化銅はグリセリン、ショ糖、ステアリン酸、ラウリン酸、リシチン、鉱物油などで表面処理されているものが、貯蔵時の長期安定性の点でより好ましい。
有機薬剤としては、例えば、2−メルカプトピリジン−N−オキシド銅(一般名:カッパーピリチオン)、2−メルカプトピリジン−N−オキシド亜鉛(一般名:ジンクピリチオン)、ジンクエチレンビスジチオカーバメート(一般名:ジネブ)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン(一般名:シーナイン211)、3,4−ジクロロフェニル−N−N−ジメチルウレア(一般名:ジウロン)、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン(一般名:イルガロール1051)、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール(一般名:Econea28) 、4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−1H−イミダゾール(一般名:メデトミジン)等が挙げられる。
これらの防汚薬剤は1種又は2種以上併用して使用できる。
【0035】
1−5.他の添加剤
さらに本発明の防汚塗料用樹脂には、必要に応じて溶出調整剤、可塑剤、顔料、染料、消泡剤、脱水剤、揺変剤、有機溶剤等を添加して防汚塗料とすることができる
溶出調整剤としては、例えば、脂環式炭化水素樹脂等が挙げられ、市販品として、例えば、クイントン1500、1525L、1700(商品名、日本ゼオン社製)等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、燐酸エステテル類、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、エポキシ化大豆油、アルキルビニルエーテル重合体、ポリアルキレングリコール類、t−ノニルペンタスルフィド、ワセリン、ポリブテン、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、シリコーンオイル、流動パラフィン、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上で使用できる。
脱水剤としては、例えば、合成ゼオライト系吸着剤、オルソエステル類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のシリケート類やイソシアネート類、カルボジイミド類、カルボジイミダゾール類等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
2.防汚塗料組成物の製造方法
本発明の防汚塗料組成物は、例えば、前記共重合体A、カルボン酸シリルエステルB、モノカルボン酸金属塩C及び他の添加剤等を含有する混合液を、分散機を用いて混合分散することにより製造できる。
前記混合液としては、共重合体及び防汚薬剤等の各種材料を溶媒に溶解または分散させたものであることが好ましい。
前記分散機としては、例えば、微粉砕機として使用できるものを好適に用いることができる。例えば、市販のホモミキサー、サンドミル、ビーズミル等を使用することができる。また、撹拌機を備えた容器に混合分散用のガラスビーズ等を加えたものを用い、前記混合液を混合分散してもよい。
【0037】
3.防汚処理方法、防汚塗膜、および塗装物
本発明の防汚処理方法は、上記防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成する。本発明の防汚処理方法によれば、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。
被塗膜形成物としては、例えば、船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等が挙げられる。
防汚塗膜の厚みは、被塗膜形成物の種類、船舶の航行速度、海水温度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、被塗膜形成物が船舶の船底の場合、防汚塗膜の厚みは通常50〜700μm、好ましくは100〜600μmである。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は実施例等に限定されるものではない。
各製造例、比較製造例、実施例及び比較例中の%は質量%を示す。粘度は、25℃での測定値であり、B形粘度計により求めた値である。重量平均分子量(Mw)は、GPCにより求めた値(ポリスチレン換算値)である。GPCの条件は下記の通りである。
装置・・・ 東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム・・・ TSKgel SuperHZM−M 2本
流量・・・ 0.35 mL/min
検出器・・・ RI
カラム恒温槽温度・・・ 40℃
溶離液・・・ THF
加熱残分は、JIS K 5601−1−2:1999(ISO 3251:1993)「塗料成分試験方法−加熱残分」に準拠して測定した値である。
また、表1中の各成分の配合量の単位はgである。
【0039】
<製造例1(トリイソプロピルシリルメタクリレート含有共重合体溶液1−1の製造)>
温度計、還流冷却器、撹拌機及び滴下ロートを備えた1000mLのフラスコに、キシレン230gを仕込んだ後、窒素雰囲気下、100±2℃で攪拌しながら、メタクリル酸トリイソプロピルシリル270g、メタクリル酸2−メトキシエチル130g、アクリル酸2−メトキシエチル30g、メタクリル酸メチル50g、アクリル酸エチル20g、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4g(初期添加)の混合液を1時間かけて滴下した。滴下後、100±2℃で2時間重合反応を行った。次いで、反応液を100±2℃にて攪拌しながら、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1g(後添加)を2時間毎に3回添加して重合反応を行った後、キシレン270gを添加し溶解させることにより、トリイソプロピルシリルメタクリレート含有共重合体溶液1−1 を得た。1−1の粘度、加熱残分、Mw及びTgを表1に示す。
【0040】
<製造例2〜6(共重合体溶液1−2、2−1、2−2、3−1および3−2の製造)>
表1に示す有機溶剤、単量体及び重合開始剤を用いて、製造例1と同様の操作で重合を行い、共重合体溶液1−2、2−1、2−2、3−1および3−2を得た。得られた各共重合体溶液の粘度、加熱残分、Mwを表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
<製造例7(トリイソプロピルシリルロジネート溶液の製造)>
温度計、還流冷却器、撹拌機及び滴下ロートを備えた500mLのフラスコに、ガムロジン・キシレン溶液(固形分50%)260g及びトリエチルアミン42gを仕込んだ後、窒素雰囲気下で攪拌しながら45〜55℃に保ち、該フラスコにトリイソプロピルクロリド78gを滴下した。滴下後、得られた反応液を45〜55℃に保ちながら5時間熟成させた。その後、該フラスコに100gの水を入れ、クエンチした。得られた有機層を還流脱水し、キシレンを加えてトリイソプロピルシリルロジネート溶液(固形分50%)を得た。
【0043】
<製造例8〜9(トリイソプロピルシリル水添ロジネート溶液、トリイソプロピルシリルナフテネート溶液の製造)>
水添ロジン・キシレン溶液(固形分50%)、ナフテン酸・キシレン溶液(固形分50%)を用いて製造例7と同様の操作で反応させ、それぞれトリイソプロピルシリル水添ロジネート溶液(固形分50%)及びトリイソプロピルシリルナフテネート溶液(固形分50%)を得た。
【0044】
<製造例10(トリイソプロピルシリルトリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボキシレート溶液の製造)>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた500mLのフラスコにアロオシメン320g、メタクリル酸175g及びMEHQ0.17gを仕込み、40℃で24時間加熱攪拌した。その後、減圧で未反応の原料を留去し、褐色の粘調液体状のトリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸73gを得た。これにキシレンを加え、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸(固形分50%)とした。
【0045】
次に、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸(固形分50%)を用いて製造例7と同様の操作で反応させ、トリイソプロピルシリルトリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボキシレート溶液(固形分50%)を得た。
【0046】
<製造例11(ロジン亜鉛塩溶液の製造)>
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた1000mLのフラスコに、ガムロジン・キシレン溶液(固形分50%)400g、酸化亜鉛ZnO100g及びキシレン50gを加え、減圧下70〜80℃で3時間還流脱水後、室温(25℃)まで冷却し濾過することにより、ロジン亜鉛塩溶液(濃褐色透明溶液、固形分50%)を得た。
【0047】
<製造例12〜14(水添ロジン亜鉛塩溶液、ナフテン酸亜鉛塩溶液及びトリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸亜鉛塩溶液の製造)>
水添ロジン・キシレン溶液(固形分50%)、ナフテン酸・キシレン溶液(固形分50%)及びトリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸(固形分50%)を用いて製造例11と同様の操作で反応させ、それぞれ水添ロジン亜鉛塩溶液(固形分50%)、ナフテン酸亜鉛塩溶液(固形分50%)及びトリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸亜鉛塩溶液(固形分50%)を得た。
【0048】
<実施例1〜19及び比較例1〜7(塗料組成物の製造)>
共重合体Aとして、製造例1〜6で得た共童合体溶液1−1〜3−2を用い、カルボン酸シリルエステルBとして、製造例7〜10で得たキシレン溶液(固形分約50%)を用い、モノカルボン酸金属塩Cとして、製造例11〜14で得たキシレン溶液(固形分約50%)を用い、その他、表2〜表4に記載の可塑剤、防汚薬剤、その他の添加物、溶剤を表2に示す割合(質量%)で配合し、実験用の小型卓上サンドミル(直径1.5mm〜2.5mmのガラスビーズを使用)で混合分散することにより塗膜組成物を調製した。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表2〜表4中の防汚薬剤、顔料、他添加物の詳細は、以下の通りである。
【0053】
<可塑剤>
塩素化パラフィン:商品名「Paraffin Chlorinated (Cl:40%)」(和光純薬工業(株)製)
E−2000H:エポキシ化大豆油:商品名「サンソサイザー E−2000H」(新日本理化(株)製)
【0054】
<防汚薬剤>
亜酸化銅:商品名「NC−301」(日進ケムコ(株)製)
銅ピリチオン:商品名「カッパーオマジン」(アーチケミカル(株)製)
SeaNine:商品名「Sea Nine211」4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン(固形分30%キシレン溶液、ロームアンドハース社製)
medetomidine:商品名「4−(1−(2,3−Dimethylphenyl)ethyl)−1H−imidazole」(和光純薬工業(株) 製)
Econia:商品名「Econea 028」2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール(ヤンセンPMP製)
【0055】
<その他の添加剤>
タルク(松村産業製、クラウンタルク3S)
酸化亜鉛(正同化学製、酸化亜鉛2種(商品名))
ベンガラ(戸田ピグメント製、TODA COLOR EP−13D)
酸化チタン(古河機械金属製、FR−41)
テトラエトキシシラン:商品名「Tetraethyl Orthosilicate」(東京化成(株)製)
脂肪族アマイド系揺変剤:商品名「ディスパロンA603−20X」(楠本化成(株)製)
【0056】
<試験例1(防汚試験)>
実施例1〜19及び比較例1〜7で得られた防汚塗料組成物を、硬質塩ビ板(100×400×2mm)の両面に乾燥塗膜としての厚みが約200μmとなるよう塗布し乾燥させることにより、試験板を作製した。この試験板を三重県尾鷲市において上半分が大気中に、下半分が海水に浸漬されるように12か月間設置した。そののち試験版の全体を海面下1.5mに浸漬した。付着物による試験板の汚損を合計24か月観察した。
結果を表2〜表4に示す。
なお、表中の数字は汚損生物の付着面積(%)を表す。
【0057】
表2〜表4から、比較例1〜7の塗膜組成物を用いて形成された塗膜に比べ、本発明の塗膜組成物(実施例1〜19)を用いて形成された塗膜には、ほとんど水棲汚損生物が付着していないことがわかる。これは、本発明の塗膜組成物(実施例1〜19)を用いて形成された塗膜は、長期間太陽光に暴露されたのちでも加水分解速度がある程度抑制されており、一定の速度で長期間安定して溶解するためである。
【要約】
長期間太陽光に暴露された後においても長期間にわたり塗膜溶解が持続し、水棲汚損生物の付着が起こりやすい喫水部においても良好な防汚性能を発揮できる、環境安全性の高い防汚塗膜を形成するための組成物を提供する。
本発明によれば、共重合体Aと、カルボン酸シリルエステルBと、モノカルボン酸金属塩Cを含有する防汚塗料組成物であって、前記共重合体Aは、単量体(a)と、単量体(b)と、エチレン性不飽和単量体(c)の混合物を共重合して得られ、前記単量体(a)は、一般式(1)で表され、前記単量体(b)は、一般式(2)で表され、前記カルボン酸シリルエステルBは、エチレン性不飽和カルボン酸以外のカルボン酸のシリルエステルである、防汚塗料組成物が提供される。