(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
《本発明の実施形態の説明》
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)本発明の一態様に係るシールドコネクタは、少なくとも1本の通信線を含む電線と、電線の周囲を一括して被覆するシールド導体とを有するシールドケーブルの端部に接続される。このシールドコネクタは、電線の導体端部に接続される端子を保持するインナーハウジングと、インナーハウジング及びシールドケーブルの端部を収容するシールドシェルとを備える。シールドシェルは、インナーハウジングが配置されるベースと、インナーハウジングを覆うようにベースに嵌合されるカバーとを有する。ベースは、インナーハウジングの下面を覆う底板部と、インナーハウジングの両側面を覆うように底板部の両側から立設する一対のベース側板部とを有する。インナーハウジングの側面及び前記ベース側板部の一方は、前後規制凸部と、上下規制凸部とを備え、インナーハウジングの側面及び前記ベース側板部の他方は、前後規制切欠部と、上下規制孔部とを備える。前後規制凸部は、他方側に突出して上下方向に延び、インナーハウジングとベースとの前後方向の相対的な移動を規制する。上下規制凸部は、他方側に突出してインナーハウジングとベースとの上下方向の相対的な移動を規制する。前後規制切欠部は、上下方向の一端から他端側に沿って形成され、前後規制凸部が係合する。上下規制孔部は、上下規制凸部が係合される。
【0016】
上記の構成によれば、インナーハウジングとベースとのがたつきを効果的に抑制できる。前後規制凸部と前後規制切欠部の係合、及び上下規制凸部と上下規制孔部の係合のそれぞれにより、インナーハウジングとベースとの前後方向、及び上下方向の相対的な移動を効果的に抑制でき、これら両係合によりベースに対するインナーハウジングの傾きを効果的に抑制できるからである。このようにインナーハウジングのシールドシェルに対する動きを規制することで、インナーハウジングとシールドシェルとの間のインピーダンスに変化が生じ難い。従って、シールドコネクタでのインピーダンスの不整合による通信品質の低下を効果的に抑制できる。
【0017】
(2)上記シールドコネクタの一形態として、前後規制凸部と上下規制凸部とが一連に形成され、前後規制切欠部と上下規制孔部とが連通していることが挙げられる。
【0018】
上記の構成によれば、前後規制凸部と上下規制凸部とが一連に形成されず独立して形成されている場合に比べて、形成箇所がインナーハウジングの各側面及び各ベース側板部のそれぞれ1箇所であるため、形成し易い。前後規制凸部と上下規制凸部とが一連に形成されていることで、このように形成箇所が1箇所でもインナーハウジングとベースとの前後方向及び上下方向の相対的な移動に加えて、傾きを効果的に抑制できる。
【0019】
特に、前後規制切欠部及び上下規制孔部をベース側板部に形成する場合、インナーハウジングとベースとの組立作業性に優れる。詳しくは後述する。
【0020】
(3)上記シールドコネクタの一形態として、上下規制凸部及び上下規制孔部を複数有し、上下規制凸部及び上下規制孔部同士が前後に間隔を開けて設けられていることが挙げられる。
【0021】
上記の構成によれば、インナーハウジングのベースに対する傾きをより一層抑制し易い。
【0022】
(4)上下規制凸部及び上下規制孔部を複数有する上記シールドコネクタの一形態として、上下規制凸部及び上下規制孔部を2つずつ有することが挙げられる。この場合、一方の上下規制凸部及び上下規制孔部が、前後規制凸部及び前後規制切欠部と一連に形成され、他方の上下規制凸部及び上下規制孔部が、一方の上下規制凸部及び上下規制孔部と間隔を開けて設けられていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、インナーハウジングとベースとの前後方向及び上下方向の相対的な移動と、インナーハウジングのベースに対する傾きとをより一層効果的に抑制できる。
【0024】
(5)上記シールドコネクタの一形態として、前後規制凸部と上下規制凸部とがインナーハウジングの側面に形成され、前後規制切欠部と上下規制孔部とがベース側板部に形成されていることが挙げられる。
【0025】
上記の構成によれば、前後規制凸部及び上下規制凸部のそれぞれが前後規制切欠部及び上下規制孔部から外側に露出するため、前後規制凸部及び上下規制凸部と前後規制切欠部及び上下規制孔部との係合状態を外部から確認し易い。そのため、インナーハウジングとベースとがしっかり固定されたか確認し易い。
【0026】
(6)本発明の一態様に係るコネクタ付きシールドケーブルは、少なくとも1本の通信線を含む電線と、電線の周囲を一括して被覆するシールド導体とを有するシールドケーブルと、シールドケーブルの端部に接続されるシールドコネクタとを備える。そして、シールドコネクタが、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のシールドコネクタである。
【0027】
上記の構成によれば、インナーハウジングとベースとのがたつきを効果的に抑制できるシールドコネクタを備えることで、シールドコネクタとシールドケーブルとのがたつきを効果的に抑制できる。従って、通信品質の向上が可能である。
【0028】
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態に係るシールドコネクタ及びコネクタ付きシールドケーブルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
《実施形態1》
〔コネクタ付きシールドケーブル〕
図1〜
図9を参照して実施形態1に係るコネクタ付きシールドケーブル1を説明する。コネクタ付きシールドケーブル1は、
図1,
図2に示すように、シールドケーブル100と、シールドケーブル100の端部に接続されるシールドコネクタ10とを備える。シールドコネクタ10は、
図3,
図4に示すように、インナーハウジング20と、インナーハウジング20及びシールドケーブル100の端部を収容するシールドシェル40とを備える。シールドシェル40は、インナーハウジング20が配置されるベース41と、ベース41に嵌合されるカバー51とを有する。コネクタ付きシールドケーブル1の主たる特徴とするところは、インナーハウジング20とベース41との取付構造にある。以下、コネクタ付きシールドケーブル1の主たる特徴部分及び関連する部分の構成、並びに主要な効果を順に説明し、その後、各構成を詳細に説明する。以下の説明では、シールドコネクタ10のインナーハウジング20側を前(正面)、シールドケーブル100側を後とし、ベース41(底板部42)側を下、カバー51(上板部52)側を上として説明する。
【0030】
〔主たる特徴部分及び関連する部分の構成〕
[シールドコネクタ]
(インナーハウジング)
インナーハウジング20は、
図4,
図6に示すように、電線110の導体111端部に接続される端子22を保持する。インナーハウジング20の材質は、絶縁性樹脂が挙げられる。インナーハウジング20は、
図7に示すように、端子22を収納する端子孔23が形成される本体部21と、本体部21の後方に一体に設けられ、電線110の導体111端部が配置される配置部31とを有する。端子孔23は、本体部21の上下に5個ずつ並んで形成されており(
図1も併せて参照)、各端子孔23には端子22が挿入されて収納されている。配置部31は、本体部21の上下方向の中間位置から後方に向かって延出している。この配置部31には、
図6,
図7に示すように、導体111端部を配置するための配置溝32が形成されている。
【0031】
(シールドシェル)
シールドシェル40は、
図3,
図4に示すようにインナーハウジング20及びシールドケーブル100の端部を収容する。シールドシェル40の材質は、導電性金属が挙げられる。シールドシェル40は、
図3に示すように、前方から順にインナーハウジング20を収容するハウジング収容部61と、露出する電線110の端部を収容する電線収容部62と、シールドケーブル100の端部が挿入されるケーブル挿入部63とを有する。ケーブル挿入部63には、シールドケーブル100の外径に対応した形状の開口が形成されている。シールドケーブル100の端部は、
図3に示すように、シールド導体130の端部の一部がシールドシェル40内に収容され、残部がケーブル挿入部63から露出するように挿入される。シールドシェル40は、インナーハウジング20が配置されるベース41と、インナーハウジング20を覆うようにベース41の上側に配置され、ベース41の上方から覆うようにベース41に嵌合されるカバー51とを有する。
【0032】
〈ベース〉
ベース41は、
図7に示すように、インナーハウジング20の下面側に配置される。ベース41は、インナーハウジング20の下面を覆い、ケーブル挿入部63に向かって延伸される底板部42と、インナーハウジング20の両側面を覆うように底板部42の両側から立設する一対のベース側板部43とを有する。ベース側板部43は、ケーブル挿入部63に向かって一連に形成されている。ベース側板部43は、所定の形状に切断した金属製の板材を折り曲げることにより形成されている。
【0033】
(インナーハウジングとベースとの取付構造)
インナーハウジング20とベース41との取付構造は、インナーハウジング20の両側面と両ベース側板部43とが互いに係合し合うことで、インナーハウジング20とベース41とを一体に取り付ける。この取付構造は、具体的には、インナーハウジング20の側面とベース側板部43の一方に他方側に突出して形成される前後規制凸部27及び上下規制凸部25と、他方に形成されて、各凸部27,25が係合される前後規制切欠部47及び上下規制孔部45とを備える(
図7,
図8)。
図7,8では、左側面のみ示しているが、反対側の右側面も同じである。ここでは、前後規制凸部27及び上下規制凸部25は、インナーハウジング20の側面にインナーハウジング20と一連に形成され、前後規制切欠部47及び上下規制孔部45は、ベース側板部43に形成される形態を説明する。なお、この形態とは反対に、前後規制凸部27及び上下規制凸部25は、ベース側板部43の内面に一連に形成され、前後規制切欠部47及び上下規制孔部45は、インナーハウジング20の側面に形成されていてもよい。
【0034】
〈前後規制凸部〉
前後規制凸部27は、前後規制切欠部47と係合することで、インナーハウジング20とベース41との前後方向の相対的な移動を規制する。前後規制凸部27は、インナーハウジング20の側面からベース側板部43側に突出して上下方向に延びるように形成される縦長の縦リブで構成される。前後規制凸部27の形状は、インナーハウジング20の側面からみたとき、長方形状である。前後規制凸部27の突出長さは、上下方向に一様であり、ベース側板部43の厚さ以下である。前後規制凸部27の形成箇所は、インナーハウジング20の本体部21の側面で、前方寄りの位置としている。
【0035】
〈上下規制凸部〉
上下規制凸部25は、上下規制孔部45に係合することで、インナーハウジング20とベース41との上下方向の相対的な移動を規制する。上下規制凸部25は、前後規制凸部27と同様、インナーハウジング20の側面からベース側板部43に突出して形成される。上下規制凸部25の形状は、下方に向かうテーパ状、即ち、インナーハウジング20の側面の下方側ほど突出長さが低くなるように傾斜する傾斜面を有するくさび状である。上下規制凸部25の最大突出長さは、ベース側板部43の厚さ以下である。
【0036】
上下規制凸部25の数は、単数でもよいし複数でもよい。上下規制凸部25の数を単数とする場合、上下規制凸部25の形成箇所は、前後規制凸部27と一連に形成されるように前後規制凸部27に隣接する位置でもよいし、前後規制凸部27と離隔するように前後規制凸部27と間隔を開けた位置でもよい。前後規制凸部27に隣接する上下規制凸部25の形成箇所は、前後規制凸部27の前方側でもよいし後方側でもよい。前後規制凸部27と離隔する上下規制凸部25の形成箇所は、上述のように前後規制凸部27が本体部21に設けられている場合、本体部21における前後規制凸部27の後方側でもよいが、配置部31とすることが好ましい。上下規制凸部25を配置部31に前後規制凸部27と離隔させて設けると、インナーハウジング20のベース41に対する傾きを抑制し易い。上下規制凸部25の複数とする場合、前後方向に並列させて、一つの上下規制凸部25の形成箇所を、前後規制凸部27の隣接する位置とし、残りの上下規制凸部25の形成箇所を、前後規制凸部27と離隔する位置としてもよいし、全ての上下規制凸部25の形成箇所を、前後規制凸部27と離隔する位置としてもよい。
【0037】
ここでは、2つの上下規制凸部25が前後方向に間隔を開けて並列されている。前方側の上下規制凸部25は、前後規制凸部27の後方側に前後規制凸部27と一連に形成され、後方側の上下規制凸部25は、前後規制凸部27及び前方側の上下規制凸部25と独立して配置部31に形成されている。
【0038】
〈前後規制切欠部〉
前後規制切欠部47は、前後規制凸部27が係合する。前後規制切欠部47は、ベース側板部43の上下方向の一端から他端側に沿って形成されている。ここでは、前後規制切欠部47は、上端縁から下端側に沿って形成されている。即ち、前後規制切欠部47におけるベース側板部43の上端縁側が開口している。前後規制切欠部47の形状は、上下に長い長方形状である。
【0039】
〈上下規制孔部〉
上下規制孔部45は、上下規制凸部25が係合される。上下規制孔部45は、上下規制凸部25と前後規制凸部27とが一連に形成されている場合、前後規制切欠部47に連通して形成される。
【0040】
ここでは、2つの上下規制孔部45が前後に間隔を開けて並列されている。前方側の上下規制孔部45は、前後規制切欠部47に連通して開口しており、その形状は、矩形状である。即ち、前後規制切欠部47と上下規制孔部45とでT字状の孔が形成される。後方側の上下規制孔部45は、周囲に開口することなく周囲が囲まれており、その形状は、矩形状である。即ち、後方側の上下規制凸部25及び上下規制孔部45は、インナーハウジング20とベース41との上下方向の相対的な移動の規制に加えて、前後方向の相対的に移動の規制も行える。
【0041】
インナーハウジング20とベース41との取付手順は、インナーハウジング20をベース41の上方から嵌め込むことで行われる。それにより、インナーハウジング20の上下規制凸部25及び前後規制凸部27と、ベース側板部43の上下規制孔部45及び前後規制切欠部47とがそれぞれ係合し、インナーハウジング20がベース41に位置決めして固定される。上下規制孔部45と前後規制切欠部47とが連通しており、上下規制孔部45の上側に位置するベース側板部43の部分(
図8中、点線で囲む部分)は、片持ち支持された状態になっている。そのため、インナーハウジング20をベース41の上方から嵌め込んで、上下規制凸部25を上下規制孔部45に係合する際、ベース側板部43の上記部分が外側に開き易く、係合し易い。
【0042】
〔コネクタ付きシールドケーブルの主たる特徴部分における作用効果〕
実施形態1のコネクタ付きシールドケーブル1は、以下の効果を奏する。
【0043】
(1)インナーハウジング20とベース41とのがたつきを効果的に抑制できる。前後規制凸部27と前後規制切欠部47の係合、及び上下規制凸部25と上下規制孔部45の係合のそれぞれにより、インナーハウジング20とベース41との前後方向及び上下方向の相対的な移動を効果的に抑制でき、これら両係合により、インナーハウジング20のベース41に対する傾きを効果的に抑制できるからである。
【0044】
(2)シールドコネクタ10でのインピーダンスの不整合による通信品質の低下を効果的に抑制できる。インナーハウジング20のシールドシェル40に対する動きを効果的に規制できるため、インナーハウジング20とシールドシェル40との間のインピーダンスに変化が生じ難いからである。
【0045】
(3)インナーハウジング20とベース41との組立作業性に優れる。前後規制切欠部47と上下規制孔部45とが連通しており、前方側の上下規制孔部45の上方の部分は片持ち支持された状態になっている。そのため、インナーハウジング20をベース41の上方から嵌め込んで前後規制凸部27を前後規制切欠部47に係合する際、ベース側板部43の片持ちされた部分が上下規制凸部25により外側に開き易い。
【0046】
(4)インナーハウジング20とベース41とがしっかり固定されたか確認し易い。インナーハウジング20に前後規制凸部27及び上下規制凸部25を形成し、ベース側板部43に前後規制切欠部47及び上下規制孔部45を形成することで、インナーハウジング20とベース41とを係合させた際、両凸部27,25がベース側板部43からその外側に露出する。そのため、インナーハウジング20とベース41との係合状態を外部から確認し易い。
【0047】
〔その他の特徴部分を含む各構成の説明〕
[シールドケーブル]
シールドケーブル100は、少なくとも1本の通信線を含む電線と、電線の周囲を一括して被覆するシールド導体とを有する。ここでは、シールドケーブル100は、
図3〜
図5に示すように、複数の電線110と、これら電線110の周囲を一括して被覆するシールド導体130と、シールド導体130の外周を被覆するシース140とを有する。シールド導体130は、銅やアルミニウムといった導電性金属からなる編組線で形成され、シース140は、絶縁性の樹脂やゴムなどで形成されている。シールドケーブル100の端部では、シース140が除去され、
図5に示すようにシールド導体130の端部がシース140上に折り返され、電線110の端部が露出している。複数の電線110の端部は撚り戻されて、
図4に示すように並列に分岐されている。
【0048】
シールドケーブル100は、
図6に示すように、10本の電線110を有する。具体的には、高速通信用として、通信線121,122の対とドレイン線123とを2組(計6本)、低速通信用として、通信線124,125の対を1組(計2本)、並びに、電源線126(1本),グランド線127(1本)を有する。通信線121,122は、USB(Universal Serial Bus)3.0規格の通信線(最大通信速度:5Gbps)であり、ドレイン線123付きの差動ペア・ケーブルである。通信線124,125は、USB2.0規格の通信線(最大通信速度:480Mbps)であり、ツイストペア・ケーブルである。電線110のうち、ドレイン線123以外は、導体111の外周に絶縁被覆112(
図5参照)を有する。シールドケーブル100の端部では、
図6に示すように電線110の端部が上下に5本ずつ分かれて配置されており、
図5に示すように電線110の先端で導体111の端部が露出している。
図6は、インナーハウジング20の後方から見た図である。
【0049】
[シールドコネクタ]
(インナーハウジング)
〈端子〉
電線110の導体111端部に接続される端子22は、導電性金属からなるメス型端子である。この端子22は、本体部21の端子孔23に収納される角筒状の部分と、その後方に一体に形成されて導体111端部と電気的に接続される板状の部分とを有する(
図7参照)。この板状部分は、配置部31の配置溝32に沿って配置される。この板状部分には、
図4に示すように、導体111端部が載置され、半田付けにより電気的に接続される。インナーハウジング20は、
図3,
図4に示すように電線110の導体111端部に端子22を接続された状態で、ベース41に配置される。
【0050】
〈縦溝〉
インナーハウジング20の側面には、
図8,
図9に示すように、後述するカバー側板部53の突条部58が挿入されることで、インナーハウジング20に対してカバー51を位置決めする縦溝28が形成されている。
図9の上図は、カバー51を下から見た概略平面図であり、同下図は、インナーハウジング20が配置されたベース41を上から見た概略平面図である。この縦溝28は、本体部21の前後規制凸部27よりも前方側で上下方向に沿って形成されている。
【0051】
(シールドシェル)
〈ベース〉
ベース41のベース側板部43の外面には、
図7、
図8に示すように、後述するカバー側板部53の嵌合孔54に嵌合されることで、ベース41とカバー41とを一体に固定する突起44を有する。この突起44は、ベース側板部43の外面からその外側に向かって突出して形成されている。この突起44の形状は、下方に向かって膨出するドーム状である。この突起44の形成は、打ち出し(叩き出し)により行える。突起44の下方には外面との間に切れ目が形成されているが、
図8に示すように、この切れ目はベース側板部43の外面(ベース41の側面)を平面視したときに実質的に見えない。つまり、突起44の形成部分は、ベース側板部43の外面に直交する方向に実質的に開口していない。
【0052】
・バレル部
ベース41のケーブル挿入部63の後端には、
図3,
図4に示すように、ベース41とシールド導体130の端部とを一体に固定することで、シールドシェル40とシールド導体130とが電気的に接続されるバレル部70が設けられている。バレル部70は、ケーブル挿入部63の後端から更に後方に向かって突出するようにケーブル挿入部63に一体に形成されている。バレル部70は、U字状をなし、両端から延びる一対の圧着片71,72を有する。バレル部70の上方からシールド導体130の端部を挿入し、圧着片71,72をかしめることで、シールド導体130の端部に圧着片71,72が圧着される(
図1を参照)。バレル部70は、圧着片71,72をかしめてシールド導体130の端部に圧着したとき、圧着片71,72が互いに噛み合って円筒状をなすように形成されている。具体的には、圧着片71は、テーパ状の突片を有し、圧着片72は、圧着片71の突片が嵌合するV状の切欠を有する二股状の突片を有する。
【0053】
〈カバー〉
カバー51は、
図3に示すように、インナーハウジング20及びシールドケーブル100(電線110)の端部がベース41に配置された状態で、ベース41の上方から取り付けられる。カバー51は、インナーハウジング20の上面を覆い、ケーブル挿入部63に向かって延伸される上板部52と、ベース側板部43の外側に重複するように上板部52の両側から立設する一対のカバー側板部53とを有する(
図7、
図9を併せて参照)。カバー側板部53は、ベース側板部43の外側に重複して、ベース側板部43の係合孔45及び縦孔47を覆う(
図2を参照)。カバー側板部53は、ケーブル挿入部63に向かって一連に形成されている。カバー側板部53は、ベース側板部43と同様に、所定の形状に切断した金属製の板材を折り曲げることにより形成されている。
【0054】
・突条部、嵌合孔
カバー側板部53の内面には、
図9に示すように、インナーハウジング20に形成された縦溝28に挿入することで、インナーハウジング20に対してカバー51が位置決めされる突条部58を有する。この突条部58は、カバー側板部53の内面からインナーハウジング20側に向かって突出し、上下方向に伸びるように形成されている。突条部58は、カバー側板部53の先端を内側に折り曲げることにより形成されている。カバー側板部53の外面には、
図7,
図8に示すように、ベース41にカバー51を嵌合したとき(
図2を参照)、ベース側板部43の突起44と嵌合することで、カバー51とベース41とを一体に固定する嵌合孔54が形成されている。
【0055】
・突出片
カバー51のケーブル挿入部63の後端には、
図3に示すように、圧着片71,72をかしめてバレル部70を圧着したとき(
図1を参照)、シールドシェル40とシールド導体130とが電気的に接続される突出片75が設けられている。突出片75は、バレル部70に対向するようにケーブル挿入部63の後端から更に後方に突出するようにケーブル挿入部63と一体に形成されている。突出片75の形状は、シールドケーブル100の外周面に沿うように円弧状である。突出片75は、圧着片71,72をかしめてバレル部70を圧着したとき(
図1を参照)、圧着片71,72の内側に位置して押さえ付けられ、シールド導体130の端部に接触する。
【0056】
〔その他の特徴部分を含む各構成における作用効果〕
実施形態1のコネクタ付きシールドケーブル1は、上述の効果に加えて更に以下の効果を奏する。
【0057】
(1)電磁波ノイズの侵入や漏洩を効果的に抑制でき、シールド性に優れる。カバー側板部53がベース側板部43に重複して、ベース側板部43の上下規制孔部45及び前後規制切欠部47を覆うと共に、ベース41とカバー51がそれぞれ、ハウジング収容部61からケーブル挿入部63まで一連に形成されている。そのため、シールドシェル40の周方向に隙間が生じ難く、インナーハウジング20及び露出する電線110の端部の周囲を全周に亘ってシールドシェル40で覆うことができる。
【0058】
(2)通信品質の向上が可能である。シールドコネクタ10を備えることから、シールドコネクタ10におけるシールド性が高いからである。特に、高速通信用の通信線121,122を有するシールドケーブルに適用した場合に、通信品質の向上が期待できる。
【0059】
(3)コネクタ10の組立性に優れる。ベース側板部43の突起44とカバー側板部53の嵌合孔54との嵌合により、カバー51をベース41に位置決めして固定できるためである。突起44が打ち出し(叩き出し)で形成されていることで、突起44の形成部分がベース側板部43の外面に直交する方向に実質的に開口していないため、シールドシェル40の周方向に隙間を生じさせない。
【0060】
(4)インナーハウジング20とシールドシェル40との位置決めをより高精度に行える。インナーハウジング20の縦溝28にカバー側板部53の突条部58が挿入されることで、インナーハウジング20に対してカバー51を位置決めできるからである。
【0061】
(5)シールドケーブル100の引抜強度を十分に確保できる。バレル部70に対向するように突出片75を有することで、圧着片71,72を圧着したときに締め付け力の集中を分散でき、圧着によるシールド導体130の端部の過度の変形を防止できながら、シールドコネクタ10をより強固に接続できるからである。
【0062】
《変形例1》
図10を参照して、実施形態1のコネクタ付きシールドケーブル1におけるシールドコネクタ10の変形例1を説明する。変形例1のシールドコネクタ10は、インナーハウジング20とベース41との取付構造が実施形態1と相違する。実施形態1におけるインナーハウジング20とベース41との取付構造では、複数の上下規制凸部のうち1つの上下規制凸部が前後規制凸部と一連に形成され、他の上下規制凸部は前後規制凸部と独立(離隔)して形成されている形態を説明した。対して、変形例1では、複数の上下規制凸部のいずれも前後規制凸部と一連に形成されることなく、その全てが前後規制凸部と離隔して形成されている形態を説明する。変形例1は、インナーハウジング20とベース41との取付構造を除き実施形態1と同様であるため、以下の説明は相違点を中心に行う。
【0063】
(インナーハウジングとベースとの取付構造)
インナーハウジング20とベース41との取付構造は、インナーハウジング20の両側面に形成される1つの前後規制凸部27及び2つの上下規制凸部25と、ベース側板部43に形成される1つの前後規制切欠部47及び2つの上下規制孔部45とで構成されている。
【0064】
〈前後規制凸部・上下規制凸部〉
前後規制凸部27の形成箇所は、実施形態1と同様、本体部21の両側面である。2つの上下規制凸部25は、前後規制凸部よりも後方で、前後規制凸部と離隔すると共に互いに離隔している。前方側の上下規制凸部25の形成箇所は本体部21の両側面であり、後方側の上下規制凸部25の形成箇所は、配置部31の両側面である。なお、前後2つの上下規制凸部25の両方を配置部31の側面に形成してもよい。
【0065】
〈前後規制切欠部・上下規制孔部〉
前後規制切欠部47及び2つの上下規制孔部45の形成箇所はそれぞれ、ベース側板部43の前後規制凸部27及び2つの上下規制凸部25に対応する位置である。2つの上下規制孔部45の形状は共に、矩形状であり、2つの上下規制孔部45は共に、周囲に開口することなく周囲が囲まれている。
【0066】
変形例1のシールドコネクタ10は、実施形態1のシールドコネクタ10と同様、インナーハウジング20とベース41とのがたつきを効果的に抑制できる。