(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記単位経路それぞれの軌道を計画するとともに、前記前進および前記後進の到達位置において前記車両の操舵角度が略0度となるように、前記車両を前記軌道に沿って移動させる車両制御信号を算出する駐車経路計画部と、
前記単位経路の進入禁止領域への侵入を検出する侵入検出部と、
を備え、
前記侵入検出部が前記進入禁止領域への侵入を検出した場合、前記駐車経路計画部は、前記単位経路の軌道を前記進入禁止領域へ侵入する手前で停止する軌道に変更し、変更後の前記単位経路において前記進入禁止領域の手前の停止位置での前記車両の操舵角度が略0度となるよう前記車両制御信号を変更する、
駐車支援システム。
前記車両制御信号は、前記単位経路の前進および後進における操舵角度の制御において、操舵角度を所定角度から増加した後に一定の操舵角度を維持し、その後操舵角度を減少し略0度とする制御信号を含む、
請求項1に記載の駐車支援システム。
前記異常検出部は、前記車両制御信号に含まれる操舵角度制御信号と実際の操舵角度との偏差、または、車速制御信号と実際の車速との偏差のうち少なくとも一つが、それぞれについて設定された閾値以上となることに基づいて前記ハードウェアに異常が発生したことを検出し、
前記駐車経路計画部は、前記異常検出部により異常が検出されたハードウェアの異常時における性能値に基づいて前記単位経路を算出する、
請求項6に記載の駐車支援システム。
前記駐車経路計画部は、前記単位経路の到達位置を出発位置とする連続した前記単位経路を、ある1回の前記単位経路の到達位置における前記車両の位置と前記目標駐車位置との差が所定の範囲内となるまで繰り返し計画し、一つまたは複数の前記単位経路からなる駐車経路を算出する、
請求項1から請求項9の何れか1項に記載の駐車支援システム。
連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記車両の操舵角度の変化を制御する操舵角度制御信号を生成する駐車経路計画部と、
前記単位経路の進入禁止領域への侵入を検出する侵入検出部と、
を備え、
前記駐車経路計画部は、前記前進および前記後進のそれぞれにおける操舵角度が略0度で開始し略0度で終了する台形波形を含む操舵角度制御信号を算出し、
前記侵入検出部が前記進入禁止領域への侵入を検出した場合、前記駐車経路計画部は、前記単位経路の軌道を前記進入禁止領域へ侵入する手前で停止する軌道に変更し、変更後の前記単位経路において前記進入禁止領域の手前の停止位置での前記車両の操舵角度が略0度となるよう前記操舵角度制御信号を変更する、
駐車支援システム。
連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記単位経路それぞれの軌道を計画する駐車経路計画部、
を備え、
前記駐車経路計画部は、前記単位経路の到達位置を出発位置とする連続した前記単位経路を、ある1回の前記単位経路の到達位置における前記車両の位置と前記目標駐車位置との差が所定の範囲内となるまで繰り返し計画し、
繰り返し行う前記単位経路の計画のそれぞれにおいて、前記車両の自動運転時における前記車両のアクチュエータが出力可能な性能値の上下限値の範囲内で前記車両を移動させた場合の前記単位経路の候補を複数算出し、それら複数の前記単位経路の中から、前記単位経路の到達位置から前記目標駐車位置までの距離が最も近い前記単位経路を選択する、
駐車支援システム。
連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記単位経路それぞれの軌道を計画するとともに、前記前進および前記後進の到達位置において前記車両の操舵角度が略0度となるように、前記車両を前記軌道に沿って移動させるための車両制御信号を算出するステップと、
前記単位経路の進入禁止領域への侵入を検出するステップと、
前記進入禁止領域への侵入を検出するステップにて前記進入禁止領域への侵入を検出した場合、前記単位経路の軌道を前記進入禁止領域へ侵入する手前で停止する軌道に変更し、変更後の前記単位経路において前記進入禁止領域の手前の停止位置での前記車両の操舵角度が略0度となるよう前記車両制御信号を変更するステップと、
を有する駐車支援方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に車両の運転支援や自動運転における車両への入力情報は、前輪操舵角度(ハンドル回転角度)と車速の二つである場合が多い。また、特許文献1を含む従来の駐車支援・自動駐車システムでは、車両を構成する各種ハードウェアの制約条件が考慮されていない場合が多い。各種ハードウェアの制約条件とは、例えば、ステアトルク最大値・ステア最大操舵角度・操舵角度を変化させるときの角速度の最大値などである。例えば、ステアトルクの最大値が小さい車両では据え切り(車両を動かさずに前輪だけをその場で動かすこと)を行うことができない。このような車両に対して特許文献1のような手法を用いると、切返しの際に据え切りが行えず計画した経路に車両が追従できない場合があるという問題があった。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる駐車支援システム、駐車支援方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記単位経路それぞれの軌道を計画するとともに、前記前進および前記後進の到達位置において前記車両の操舵角度が略0度となるように、前記車両を前記軌道に沿って移動させる車両制御信号を算出する駐車経路計画部
と、前記単位経路の進入禁止領域への侵入を検出する侵入検出部と、を備
え、前記侵入検出部が前記進入禁止領域への侵入を検出した場合、前記駐車経路計画部は、前記単位経路の軌道を前記進入禁止領域へ侵入する手前で停止する軌道に変更し、変更後の前記単位経路において前記進入禁止領域の手前の停止位置での前記車両の操舵角度が略0度となるよう前記車両制御信号を変更する駐車支援システムである。
【0007】
本発明の第2の態様における前記車両制御信号は、前記単位経路の前進および後進における操舵角度の制御において、操舵角度を所定角度から増加した後に一定の操舵角度を維持し、その後操舵角度を減少し略0度とする制御信号を含む。
【0009】
本発明の第
3の態様の前記駐車支援システムでは、前記侵入検出部が進入禁止領域への侵入を検出した場合、前記駐車経路計画部は、変更後の前記車両制御信号に基づいて変更後の前記単位経路の軌道を再度算出し、再度算出した軌道が前記侵入検出部によって前記進入禁止領域へ侵入しないと判定されるまで、前記車両制御信号の変更を繰り返す。
【0010】
本発明の第
4の態様における前記駐車経路計画部は、前記車両の自動運転時における
前記車両のアクチュエータが出力可能な性能値に基づいて前記単位経路および前記車両制御信号を算出する。
【0011】
本発明の第
5の態様における前記駐車経路計画部は、前記車両の自動運転時における
前記車両のアクチュエータが出力可能な性能値の上下限値の範囲内で前記車両を移動させた場合の前記単位経路の候補を複数算出し、それら複数の前記単位経路の中から、前記単位経路の到達位置
から前記目標駐車位置
までの距離が最も近い前記単位経路を選択する。
【0012】
本発明の第
6の態様の前記駐車支援システムは、前記車両の備えるハードウェアのうち前記車両制御信号に係るハードウェアの異常を検出する異常検出部、をさらに備え、前記駐車経路計画部は、前記異常検出部により異常が検出されたハードウェアの異常時における性能値に基づいて前記単位経路および前記車両制御信号を算出する。
【0013】
本発明の第
7の態様における前記異常検出部は、前記車両制御信号に含まれる操舵角度制御信号と実際の操舵角度との偏差、または、車速制御信号と実際の車速との偏差のうち少なくとも一つが、それぞれについて設定された閾値以上となることに基づいて前記ハードウェアに異常が発生したことを検出し、前記駐車経路計画部は、前記異常検出部により異常が検出されたハードウェアの異常時における性能値に基づいて前記単位経路を算出する。
【0014】
本発明の第
8の態様における前記駐車経路計画部は、駐車開始位置と切り替し回数との関係を定めた初期位置ガイド情報に基づく
複数の駐車開始位置のうち切り返し回数が
最も少なくなる駐車開始位置を出発位置として、前記単位経路を算出する。
【0015】
本発明の第
9の態様の前記駐車支援システムは、前記車両が前記単位経路に基づく移動を完了する度に、前記単位経路の到達位置における前記車両の位
置と前記目標駐車位置における前記車両の位
置との偏差
および所定の基準位置における前記車両の向きに対する前記単位経路の到達位置における前記車両の向きがなす角度と前記基準位置における前記車両の向きに対する前記目標駐車位置における前記車両の目標とする向きがなす角度との偏差を算出する進捗状況算出部、をさらに備える。
【0016】
本発明の第
10の態様における前記駐車経路計画部は、前記単位経路の到達位置を出発位置とする連続した前記単位経路を、ある1回の前記単位経路の到達位置における前記車両の位置と前記目標駐車位置との差が所定の範囲内となるまで繰り返し計画し、一つまたは複数の前記単位経路からなる駐車経路を算出する。
【0017】
本発明の第
11の態様は、連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記車両の操舵角度の変化を制御する操舵角度制御信号を生成する駐車経路計画部
と、前記単位経路の進入禁止領域への侵入を検出する侵入検出部と、を備え、前記駐車経路計画部は、前記前進および前記後進のそれぞれにおける操舵角度が略0度で開始し略0度で終了する台形波形を含む操舵角度制御信号を算出
し、前記侵入検出部が前記進入禁止領域への侵入を検出した場合、前記駐車経路計画部は、前記単位経路の軌道を前記進入禁止領域へ侵入する手前で停止する軌道に変更し、変更後の前記単位経路において前記進入禁止領域の手前の停止位置での前記車両の操舵角度が略0度となるよう前記操舵角度制御信号を変更する駐車支援システムである。
【0018】
本発明の第
12の態様は、連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記単位経路それぞれの軌道を計画する駐車経路計画部、を備え、前記駐車経路計画部は、前記単位経路の到達位置を出発位置とする連続した前記単位経路を、ある1回の前記単位経路の到達位置における前記車両の位置と前記目標駐車位置との差が所定の範囲内となるまで繰り返し計画
し、繰り返し行う前記単位経路の計画のそれぞれにおいて、前記車両の自動運転時における前記車両のアクチュエータが出力可能な性能値の上下限値の範囲内で前記車両を移動させた場合の前記単位経路の候補を複数算出し、それら複数の前記単位経路の中から、前記単位経路の到達位置から前記目標駐車位置までの距離が最も近い前記単位経路を選択する駐車支援システムである。
【0019】
本発明の第
13の態様は、連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記単位経路それぞれの軌道を計画するとともに、前記前進および前記後進の到達位置において前記車両の操舵角度が略0度となるように、前記車両を前記軌道に沿って移動させるための車両制御信号を算出する
ステップと、前記単位経路の進入禁止領域への侵入を検出するステップと、前記進入禁止領域への侵入を検出するステップにて前記進入禁止領域への侵入を検出した場合、前記単位経路の軌道を前記進入禁止領域へ侵入する手前で停止する軌道に変更し、変更後の前記単位経路において前記進入禁止領域の手前の停止位置での前記車両の操舵角度が略0度となるよう前記車両制御信号を変更するステップとを有する駐車支援方法である。
【0020】
本発明の第
14の態様は、駐車支援システムのコンピュータを、連続する1回の前進および1回の後進からなる単位経路の移動を繰り返して車両を目標駐車位置に移動するにあたり、前記単位経路それぞれの軌道を計画するとともに、前記前進および前記後進の到達位置において前記車両の操舵角度が略0度となるように、前記車両を前記軌道に沿って移動させるための車両制御信号を算出する手段、
前記単位経路の進入禁止領域への侵入を検出する手段、前記侵入を検出する手段が前記進入禁止領域への侵入を検出した場合、前記単位経路の軌道を前記進入禁止領域へ侵入する手前で停止する軌道に変更し、変更後の前記単位経路において前記進入禁止領域の手前の停止位置での前記車両の操舵角度が略0度となるよう前記車両制御信号を変更する手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ハードウェアの制約を考慮した駐車経路を算出することができる。そのため、本発明の駐車支援システムを適用すれば、据え切りができないなどハードウェア制約の強い車両でも自動駐車が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第一実施形態>
以下、本発明の実施形態による駐車支援システムを
図1〜
図9を参照して説明する。
図1は、本発明に係る第一実施形態における駐車支援システムのブロック図である。
駐車支援システム10は、車両に搭載されるコンピュータ装置であって、駐車支援システム10が搭載された車両の自動駐車を支援する。駐車支援システム10は、入力部11と、駐車経路計画部12と、侵入検出部13と、駐車動作制御部14と、記憶部15と、出力部16とを備えている。
【0024】
入力部11は、目標駐車位置の位置情報、目標駐車位置に車両を駐車させるときの姿勢情報を取得する。また、入力部11は、現在の車両の位置情報および姿勢情報を取得する。また、入力部11は、現在の車両位置や目標駐車位置を含む所定の領域内に存在する進入禁止領域の位置情報を取得する。
【0025】
駐車経路計画部12は、車両が駐車開始位置から目標駐車位置に至るまでの経路(駐車経路とよぶ)を算出し、車両をその駐車経路に沿って移動させるように車両を動作させるための車両制御信号(操舵角度、車速など)を生成する。本実施形態では、連続する1回の前進および1回の後進からなる移動単位をフレームと呼ぶ。ここでいうフレームとは、本発明の態様の説明で示した単位経路と同義である。駐車経路計画部12は、このフレーム単位の移動を繰り返して、車両を目標駐車位置に移動させる駐車方法を計画する。つまり、駐車経路は1つのフレーム又は複数の連続するフレームから構成される。駐車経路計画部12は、各フレームの軌道を計画する。また、駐車経路計画部12は、各フレームの軌道に沿って車両を移動させるための車両制御信号を生成する。特に、駐車経路計画部12は、各フレームの開始位置、終了位置、切り返し位置で車両が備える車輪(前輪)の角度が0度となるように車両制御信号を生成する。車両制御信号とは、駐車動作に関する車両のアクチュエータの動きを制御する信号である。
【0026】
侵入検出部13は、フレームの軌道に沿って車両を移動させた場合に、車両が進入禁止領域に侵入するか否かを判定する。
駐車動作制御部14は、駐車経路計画部12が生成した車両制御信号を車両の駐車動作に関する各アクチュエータに出力する。
記憶部15は、入力部11が取得した目標駐車位置の位置情報などを記憶する。また、記憶部15は、駐車経路計画部12が算出したフレームの軌道を示す情報などを記憶する。また、記憶部15は、操舵角度(ステア角度)の最大値、車両の車速の上下限値、操舵角速度(ステア角速度)の上下限値などハードウェアの性能値を記憶する。
出力部16は、車両の運転席に設けられたディスプレイに自動駐車の開始および完了の通知を表示したり、自動駐車の進捗状況の表示を行ったりする。
入力部11、駐車経路計画部12、侵入検出部13、駐車動作制御部14、出力部16は、駐車支援システム10が備えるCPUが、記憶部15が記憶するプログラムを読み込んで実行することにより駐車支援システム10に備わる機能である。
【0027】
これまでに提案されてきた多くの駐車支援システムにおいては、車両をある駐車開始位置から目標駐車位置まで一度の切り返しで移動させ、駐車させることを前提にしたシステムが多かった。これら従来の駐車支援システムは、例えば、ハンドルの切り返し操作などで人が運転するのと同様の動作が可能であることを前提にしている場合が多い。ところが、一般的な車両では、パワーステアリングシステムはドライバのハンドル操作を補助する目的で搭載されており、パワーステアリングシステムの動力だけで人が運転した場合と同等の操舵動作を車両に行わせることは難しい。よって、人が運転すれば曲がれるような曲線でも、パワーステアリングシステムによる自動運転では曲がりきれない状況が起こり得る。従って、従来の駐車支援システムが提供する駐車方法を、全自動で行おうとするならば、その車両が備えるアクチュエータやバッテリは、人と同様の操作ができる程度に性能が高くなければならず、一般的な車両には適さない。そこで、本実施形態では、車両のハードウェアの制約を陽に考慮し、一般的な車両が備えるハードウェア(アクチュエータなど)の性能でも自動駐車が可能となるような駐車支援システムを提供する。
【0028】
また、一般的な車両の中には、操舵角トルクの最大値が小さい等の理由により据え切り(車両を動かさずに車輪だけをその場で動かすこと)ができないものもある。このような車両においては、切り返しの際に据え切ができない為に、従来の駐車支援システムが計画した経路に車両が追随できない可能性がある。そこで本実施形態では、切り返し時などに車輪の操舵角度が0度となるように操舵角度の制御を行う。
【0029】
次に本実施形態における1フレームごとの軌道の計画について
図2〜
図4を用いて説明する。なお、連続する1回の前進および1回の後進からなるフレームの軌道において、前進時の軌道を前半軌道、後進時の軌道を後半軌道とよぶ。
図2は、本発明に第一実施形態による車両制御信号の一例を示す図である。
図2(a)は、1フレームの後進時における車両の前輪の操舵角度を制御する信号の波形を示している。
図2(a)の縦軸は角度(rad)、横軸は時間を示している。上述のとおり、本実施形態では1フレームの開始時および終了時、1フレーム内の切り返し時(前進と後進の変換時)にハンドルが正面を向いた状態となるように操舵角度を制御するので、初期状態の操舵角度は0度である。時刻0から時刻t
1までの操舵角度は0度であり、このとき車両は直線上を移動する。時刻t
1から時刻t
2までの操舵角度は一定の角速度で増加し、このとき車両はクロソイド曲線上を移動する。時刻t
2から時刻t
3までの操舵角度は一定で、このとき車両は円弧上を移動する。時刻t
3から時刻t
4までの操舵角度は一定の角速度で0度まで減少し、車両はクロソイド曲線上を移動しつつ、時刻t
4に停止する。このときハンドルは正面を向いている(操舵角度は0度)。前進時の制御信号の波形も同様に、操舵角度を0度から増加させ、所定の目標操舵角度を維持し、その後、切り返し地点では再び0度となるように減少させるような台形波形である。駐車経路計画部12は、
図2(a)で例示する波形の操舵角度制御信号を1フレームの前進動作および後進動作のそれぞれについて生成する。
図示するように、時刻t
1から時刻t
2までの目標ステア角度φ(t)は、φ(t)=ω
1t−t
1、時刻t
2から時刻t
3までの目標ステア角度φ(t)は、φ(t)=ω
1(t
2−t
1)、時刻t
3から時刻t
4までの目標ステア角度φ(t)は、φ(t)=−ω
2t+ω
2t
3+ω
1(t
2−t
1)で表すことができる。ここでtは時刻、ω
1は操舵角度を増加させるときの角速度、ω
2は操舵角度を減少させるときの角速度である。
【0030】
図2(b)は、1フレームの後進時の車両の速度を制御する信号の波形を示している。
図2(b)の縦軸は速度(km/h)、横軸は時間を示している。
図2(b)の例では、車両の速度が一定で、後進時のためマイナスの値となっている。速度について特に制限はないが、前進時、後進時ともに一定速度でよい。駐車経路計画部12は、
図2(b)で例示する波形の車速制御信号を1フレームの前進動作および後進動作のそれぞれについて生成する。なお、車速については、加速・減速してもよいし等速でもよい。本実施形態では車速を等速とした場合を例に説明を行う。車両制御信号には、これら操舵角度制御信号と車速制御信号とが含まれている。
【0031】
記憶部15は、車両の最大操舵角度、操舵角速度の上下限値、車速の上下限値を規定した性能値を記憶している。これら上下限値の情報は、人間が操作することによって可能となる性能値ではなく、自動運転時にアクチュエータのみによって出力可能な性能値である。駐車経路計画部12は、記憶部15からこれらの値を読み出して、車両を前後進させるための制御信号を、読み出した性能値の範囲内で生成する。
【0032】
図3は、本発明に第一実施形態による1フレームの前半軌道の計画方法を説明する図である。
駐車経路計画部12は、記憶部15から読み出した最大操舵角度または操舵角速度、
図2(a)で例示した時刻t1〜t2の時間、時刻t2〜t3の時間、時刻t3〜t4の時間をパラメータとして、これらのパラメータに適切な範囲の値を設定し、1フレームの前進時における操舵角度制御信号を複数パターン生成する。また、駐車経路計画部12は、記憶部15から読み出した車速の上下限値の範囲内で適切な速度Vを選択し、操舵角度制御信号で規定する前進の開始から停止までの時間に合わせて、その時間を速度Vで前進することを指示する車速制御信号を生成する。駐車経路計画部12は、生成した複数の操舵角度制御信号とそれぞれに対応する車速制御信号を組にして、その車両制御信号で車両を前進させた場合の軌道、到達位置の位置情報、到達位置における姿勢情報を算出する。なお、到達位置の位置情報とは、例えば、駐車開始位置20における車両の所定位置(例えば両後輪の中心)を原点とし、車両進行方向にX軸、車幅方向にY軸を設定した座標系における、車両が到達位置に至ったときの車両の所定位置の座標情報である。また、到達位置における姿勢情報とは、駐車開始位置20における車両の向きに対して到達位置に至ったときの車両の向きがなす角度である。
図3の前半軌道21A〜前半軌道23Aは、駐車開始位置20を出発位置とした複数パターンの車両制御信号に基づく車両の軌道を示している。
図3の前半軌道到達位置21〜前半軌道到達位置23は、複数パターンの車両制御信号に基づいて車両を前進させた場合の到達位置を示している。また、例えば、駐車開始位置20と目標駐車位置25との位置関係に基づく好ましい切り返し位置の許容範囲を示す領域24を規定する座標情報が予め記憶部15に記録されていて、駐車経路計画部12は、性能の範囲内で任意に設定した操舵角速度、車速などに基づいて到達する前半軌道の到達位置がこの領域24に含まれるような軌道を前半軌道の候補として決定してもよい。このように前半軌道を多数模擬し、その中から前半軌道の候補を複数(例えば10パターン)決定すると、駐車経路計画部12は、後半軌道を算出して車両を目標駐車位置25へと移動させる駐車経路における1フレーム分の軌道を計画する。なお、目標駐車位置25の周囲の駐車スペースには、駐車車両100〜102が既に駐車している。
【0033】
図4は、本発明に第一実施形態による1フレームの後半軌道の計画方法を説明する図である。
駐車経路計画部12は、前半軌道の計画で算出した前半軌道到達位置21〜前半軌道到達位置23の各点を出発位置として、1つの出発位置につき複数パターンの後半軌道を算出する。例えば、駐車経路計画部12は、最大操舵角度、操舵角度が0度の状態から最大操舵角度に至るまでの時間、最大操舵角度を維持する時間、操舵角度を最大角度から0度に戻す時間、後進時の車速などを性能値の範囲内で任意に設定し、前半軌道到達位置23を出発位置として複数の後半軌道を算出する。後半軌道23B1、23B2は、駐車経路計画部12がそのようにして算出した後半軌道の一例である。前半軌道と同様、駐車経路計画部12は、後半軌道の到達位置(1フレームの到達位置)が所定の領域に含まれるものだけを選択してもよい。同様に駐車経路計画部12は、前半軌道到達位置22を出発位置とする複数の後半軌道(例えば後半軌道22B1〜22B3)の候補を模擬する。前半軌道到達位置21についても同様の処理を行う。また、駐車経路計画部12は、複数の後半軌道のそれぞれについて、車両の到達位置の位置情報、到達位置における姿勢情報を算出する。次に駐車経路計画部12は、算出した複数の後半軌道の到達位置(例えば、到達位置23E1、23E2、22E1、22E2、22E3)と目標駐車位置25との距離を比較し、最も目標駐車位置25に近い到達位置を選択する。
図4の例では、到達位置22E2が最も目標駐車位置25に近い到達位置である。駐車経路計画部12は、選択した到達位置に対応する後半軌道およびその後半軌道につながる前半軌道を選択し、それらを1フレームの軌道として決定する。
図3、
図4の例では、駐車経路計画部12は、前半軌道22Aと後半軌道22B2との組み合わせを1フレームとして決定する。なお、
図3、
図4の例では、車両は、駐車開始位置20から1フレームで目標駐車位置25へ移動したが、1フレームで目標駐車位置25へ到達することができない場合は、例えば1フレームの移動が完了する度に、
図3、
図4を用いて説明した前半軌道および後半軌道の算出を繰り返し、複数フレームの移動を繰り返すことで目標駐車位置25への移動を行う。
【0034】
図5は、本発明に第一実施形態による駐車経路の一例を示す図である。
図5の各図において、駐車開始位置は(X、Y)=(0、0)の原点、目標駐車位置は(X、Y)=(−3、6)で表されている。車両が駐車開始位置に停車しているときに、ドライバの自動駐車開始指示操作により、駐車支援システム10は全自動での駐車支援を開始する。まず、駐車経路計画部12が、駐車開始位置から1フレーム目の軌道を計画する。具体的な計画方法は
図3、
図4で説明したとおりである。軌道を計画することによって舵角制御信号の波形などが決定され、その軌道の到達位置や姿勢情報が算出される。駐車経路計画部12は、計画した1フレーム目の軌道で車両を移動させるのに必要な車両制御信号を駐車動作制御部14に出力する。車両制御信号は、前進時の操舵角度制御信号、前進時の車速制御信号、後進時の操舵角度制御信号、後進時の車速制御信号を含んでいる。駐車動作制御部14は、前進時の操舵角度制御信号に基づいて、パワーステアリングシステムを操作し、前輪の操舵角度を制御する。また、駐車動作制御部14は、前進時の車速制御信号に基づいて、車輪駆動機構を制御し、車両を所定の速度で前進させる。これにより車両は、前半軌道上を移動して切り返し位置へ到達する。
図2を用いて説明したように、本実施形態の操舵角度制御信号によれば、切り返し位置へ到達したときの前輪の操舵角度は約0度となっている。これにより、1フレームの後半の移動を行う際に据え切りを行うことなく、車両の後半軌道へスムーズな追随を実現することができる。切り返し位置へ到達すると、駐車動作制御部14は、後進時の車両制御信号に基づいて車両を後進させる。
【0035】
1フレーム目の移動が完了すると、駐車経路計画部12は、1フレーム目の最終到達位置(1フレーム目後半軌道の到達位置)を出発位置として2フレーム目の軌道を計画する。駐車動作制御部14は、2フレーム目の車両制御信号に基づいて車両を前後進させる(
図5の上中央図)。このときも、1フレーム目の完了時に前輪の操舵角度が0度となるよう制御されているので、据え切を行うことなく、車両はスムーズに2フレーム目の前半軌道へ追随することができる。同様に駐車支援システム10は、3フレーム目の移動(
図5の上右図)、4フレーム目の移動(
図5の下左図)、5フレーム目の移動(
図5の下中央図)、6フレーム目の移動(
図5の下右図)を計画し実行する。また、1フレームの移動が完了する度に目標駐車位置との距離を確認して、自動駐車の終了判定を行う。この例では、駐車経路計画部12は、6フレーム目の最終到達位置と目標駐車位置との距離を比較し、その距離が所定の範囲内であることに基づいて車両が目標駐車位置に到達したと判定し、出力部16はドライバに自動駐車支援の完了を通知する。
図2で例示した車両制御信号によれば、車両はクロソイド曲線と円弧を組み合わせた滑らかな軌道上を移動する。また、1フレームにおける前後進の切り返し位置やフレーム間においては、ハンドルが正面を向いた状態となるため、一連の駐車経路において据え切りが不要である。そのため、車体や制御系に負荷が掛かることがなく、また乗車している人も心理的に安心して乗車していることができる。また、複数回の切り返しを行って目標駐車位置に至ることを前提としており、高性能なアクチュエータを備えない一般的な車両であっても複数フレームの移動を経て自動駐車を行うことができる。
次に、計画した1フレームの軌道が進入禁止領域と干渉する場合の処理について説明する。
【0036】
図6は、本発明の第一実施形態による駐車経路が進入禁止領域と干渉する例を示す図である。
図6において斜線で示した領域は、進入禁止領域33である。位置30に存在する車両に搭載された駐車支援システム10において、駐車経路計画部12が、前半軌道31と後半軌道32からなる1フレームの軌道を算出したとする。この場合、後半軌道32は、進入禁止領域33と干渉する。従って、後半軌道32を修正しなければ、車両は進入禁止領域33に侵入してしまい問題となる。このような場合、侵入検出部13が、後半軌道32の進入禁止領域33への侵入を検出し、駐車経路計画部12は、後半軌道32の軌道を修正する。具体的には、駐車経路計画部12は、後半軌道32を進入禁止領域33の手前(例えば位置34)で終了させる修正を行う。そして、駐車経路計画部12は、位置34を出発位置として再度フレームの計画を行い、目的駐車位置への移動を継続する。このような修正を行えば、車両の進入禁止領域33への侵入を防ぎ、車両を目的駐車位置に駐車させることができる。
【0037】
例えば、車両が後半軌道32の位置34へ到達する時刻を求め、後半軌道32に対応する車両制御信号を、位置34へ到達する時刻で終了させる新たな車両制御信号を生成することを考える。この場合、既に算出された車両制御信号の位置34へ到達する時刻における操舵角度は0度となっていないと考えられる。具体的には、
図2(a)の例において、位置34へ到達する時刻の操舵角度は、操舵角速度一定で増減させている時間帯や、操舵角度が一定の時間帯に該当すると考えられる。すると、位置34で停止させた場合に、車両の前輪操舵角度は0度でなく、次の前進前に据え切りが必要になったり、次フレームの前進中に今の逆側に前輪の操舵角度を大きく旋回させなければならないという無駄な動作が生じる。これらの動作は、十分な性能を有さない車両では実行できない可能性がある。そこで、本実施形態では、進入禁止領域33への侵入を検出すると、進入禁止領域33への侵入を防ぐよう軌道を修正するだけではなく、修正後の軌道の到達位置において車輪の操舵角度が0度となるように操舵角度制御信号の修正を行う。次に、操舵角度制御信号の修正例を、
図7を用いて説明する。
【0038】
図7は、本発明の第一実施形態による軌道の修正方法を説明する第一の図である。
図8は、本発明の第一実施形態による軌道の修正方法を説明する第二の図である。
操舵角度制御信号41は、駐車経路計画部12が生成した後半軌道の操舵角度制御信号の波形を示している。進入禁止領域33が時刻t41に車両が進入禁止領域に侵入することを検出すると、駐車経路計画部12は、操舵角度制御信号41を例えば操舵角度制御信号40の波形に修正する。また、駐車経路計画部12は、車速制御信号の波形(図示せず)を時刻t41で0にするよう修正する。操舵角度制御信号の修正の場合、駐車経路計画部12は、ハードウェアの制約条件である操舵角速度の最大値を考慮して修正を行う。ここで、
図8を用いて据え切りが可能な車両における操舵角度制御信号の修正方法を説明する。据え切りが可能な車両においては、
図8で例示するような単純なステップ型の波形を指令値として与えることができる。この波形は前輪の操舵角度が一定のまま前進または後進し、進入禁止領域の手前で停止しつつ、据え切りを行って操舵角度を0度にする制御を示している。このような動作は、操舵角度を制御する高性能なアクチュエータを備える車両では可能である。しかしながら、一般的な車両では、
図8のような操舵角度制御信号を与えたとしてもこの通りに前輪を旋回させることができず、進入禁止領域手前で停止したときの前輪操舵角度が0度に戻らない。従って、据え切りが不可能または困難な車両に対しても適用できるように、本実施形態では、進入禁止領域手前の停止位置に至る前から操舵角度を逐次変化させ、
図7のような波形を生成する。
【0039】
ところで
図7において、予め操舵角度制御信号41と車速制御信号(図示せず)に基づく後半軌道において時刻t41で停車させた場合の軌道と、修正後の操舵角度制御信号40と修正後の車速制御信号(図示せず)に基づく後半軌道とでは軌道が異なる。それは、修正後の操舵角度制御信号40の場合、時刻t40から前輪の操舵角度を0度に戻しながら後進するので修正前の軌道に比べ、曲線が膨らむことになるからである。この様子を
図6に破線で示す。破線36は、修正後の操舵角度制御信号40および修正後の車速制御信号に基づく後半軌道の一例である。また、到達位置37は、修正後の車両制御信号に基づいて車両を後進させ停止させた場合の到達位置である。この例の場合、修正後の車両制御信号に基づいて車両を後進させると、車両の停止時にわずかに進入禁止領域に侵入することになってしまう。駐車経路計画部12が、例えば最大操舵角速度で操舵角度を0度に戻すのに要する時間を計算し、単純にその時間を停止時刻t41から逆算して時刻t40を算出したとすると、
図6の破線36で例示したような侵入が起こり得る。従って、駐車経路計画部12は、操舵角度を戻し始める時刻t40を前後に調整したり、操舵角度を戻すときの操舵角速度を調整したりしつつ、そのときの経路を再計算し、停車時に進入禁止領域に侵入しないように確認する処理を行う。
【0040】
例えば、駐車経路計画部12は、最大操舵角速度で操舵角度を0度に戻すのに要する時間を計算し、その時間を停止時刻t41から逆算して時刻t40を算出する。そして、駐車経路計画部12は、修正後の車両制御信号に基づく軌道を算出する。次に侵入検出部13が、駐車経路計画部12が算出した修正後軌道と進入禁止領域の座標情報とを用いて、修正後軌道が進入禁止領域を通過するかどうかを判定する。侵入検出部13が、進入禁止領域を通過すると判定した場合、駐車経路計画部12は、例えば時刻t40から所定時間(例えば数秒)後に操舵角度を最大操舵角速度で0度に戻す制御を開始する場合の軌道を算出する。侵入検出部13は、新たな修正後軌道が進入禁止領域を通過するかどうかを判定する。駐車経路計画部12と侵入検出部13とは、この処理を、進入禁止領域を通過しない修正後軌道が見つかるまで繰り返す。駐車経路計画部12は、進入禁止領域を通過しない修正後軌道に対応する車両制御信号を、後進時の新たな車両制御信号として決定する。これによって、進入禁止領域手前で停車したときの操舵角度を0度としつつ、進入禁止領域への侵入を確実に防ぐことができる。なお、後進時の動作を例に説明を行ったが前進時についても同様の処理を行う。
【0041】
図9は、本発明の第一実施形態による自動駐車処理の一例を示すフローチャートである。
前提として目標駐車位置、進入禁止領域の座標情報が駐車支援システム10の外部から与えられるものとする。また、車両は自車両の位置や姿勢を検出するセンサを有しており、駐車支援システム10は、これらのセンサの検出結果に基づく車両の位置情報や姿勢情報を取得できる。また、説明の便宜のため、以下の説明では、車速制御信号の生成に関して自動駐車時における前後進の速度Vを一定とする。また、前進時のシフトは1速、後進時のシフトはバックと定められているとする。また、ボタンを押下するなどのドライバによる自動駐車開始指示操作によって、自動駐車処理が開始されたとする。
【0042】
まず、入力部11が、目標駐車位置情報、進入禁止領域情報を取得する(ステップS11)。目標駐車位置情報には、現在の車両の所定位置を原点とした座標系における目標駐車位置の座標情報(Xr、Yr)、現在の車両の正面方向を基準とする目標駐車位置に駐車したときの車両の正面方向がなす角度を示す目標駐車姿勢情報(θr)が含まれている。また、進入禁止領域情報には、現在の車両の所定位置を原点とした座標系における進入禁止領域の範囲を規定する座標情報が含まれている。また、入力部11は、車両が備えるセンサ(カメラなど)の検出値に基づく現在の車両の位置情報、姿勢情報を取得する。入力部11は、これらの情報を駐車経路計画部12、侵入検出部13へ出力する。次に駐車経路計画部12は、前半軌道を生成する(ステップS12)。具体的には、駐車経路計画部12は、記憶部15から最大操舵角速度、車速の上下限値等のハードウェア性能を考慮した性能値を読み出す。次に、駐車経路計画部12は、目標操舵角度、操舵角度を0度から目標操舵角度まで増加させる時間、操舵角度を一定に維持する時間、操舵角度を目標操舵角度から0度に戻す時間をパラメータとし、これらのパラメータを許容範囲内でランダムに設定し、前半軌道に沿って移動するための操舵角度制御信号、車速制御信号を複数生成する。なお、許容範囲内で設定するとは、例えば、目標操舵角度を最大操舵角度以下、操舵角度を増減させる速度を最大操舵角速度以内となるように設定することをいう。また、駐車経路計画部12は、生成した複数の車両制御信号それぞれに基づく前半軌道を算出し、最終到達位置の位置情報、最終到達位置における車両の姿勢情報を算出する。なお、軌道の算出は、直線、円弧、クロソイド曲線の軌道を算出してそれらを組み合わせるなどの種々の公知の方法を用いて行なえばよい。駐車経路計画部12は、前半軌道の候補を所定の数(例えば10パターン)だけ算出する。このとき、駐車経路計画部12は、算出した到達位置の位置情報が、所定の許容範囲領域に含まれている前半軌道だけを候補として選択してもよい。所定の許容範囲領域は、例えば、駐車開始位置と目標駐車位置との位置関係から予め定められており、記憶部15がその情報を記憶している。駐車経路計画部12は、算出した前半軌道の候補を侵入検出部13へ出力する。
【0043】
次に侵入検出部13が、前半軌道の候補について進入禁止領域への侵入判定を行う(ステップS13)。具体的には、侵入検出部13は、前半軌道の候補のそれぞれが、進入禁止領域を通過するかどうかを判定する。前半軌道の候補が進入禁止領域へ侵入する場合(ステップS14;Yes)、侵入検出部13は、その前半軌道の候補について、駐車経路計画部12に修正を指示する。駐車経路計画部12は、
図6〜
図8を用いて説明したように進入禁止領域の手前で停止し、かつ、停止時に操舵角度が0度となる修正後の前半軌道の候補を生成する。
一方、選択した候補のうち、進入禁止領域へ侵入しない前半軌道の候補については(ステップS14;No)、ステップS16の処理へ進む。
【0044】
進入禁止領域へ侵入しないことが確認された複数の前半軌道の候補を算出すると、駐車経路計画部12は、続いて後半軌道の候補を生成する(ステップS16)。具体的には、駐車経路計画部12は、前半軌道の候補の到達位置を出発位置とする複数の後半軌道の候補を生成する。駐車経路計画部12は、全ての前半軌道の候補の到達位置について同様に複数個ずつの後半軌道の生成を行う。駐車経路計画部12は、各出発位置について、前半軌道と同様に、目標操舵角度、操舵角度を0度から目標操舵角度まで増加させる時間、操舵角度を一定に維持する時間、操舵角度を目標操舵角度から0度に戻す時間をパラメータとし、これらのパラメータに任意の値を設定して複数の後半軌道の候補を生成する。駐車経路計画部12は、各出発位置について複数ずつ生成した後半軌道の候補を侵入検出部13へ出力する。
【0045】
次に侵入検出部13は、取得した後半軌道の候補それぞれについて前半軌道と同様に進入禁止領域への侵入判定を行う(ステップS17)。後半軌道の候補が進入禁止領域へ侵入する場合(ステップS18;Yes)、侵入検出部13は、その後半軌道の候補について駐車経路計画部12に修正を指示する。駐車経路計画部12は、進入禁止領域の手前で停止し、かつ、停止時に操舵角度が0度となる修正後の後半軌道の候補を生成する(ステップS19)。複数の候補のうち、進入禁止領域へ侵入しない後半軌道の候補については(ステップS18;No)、ステップS20の処理へ進む。
【0046】
進入禁止領域へ侵入しないことが確認された複数の後半軌道の候補を算出すると、駐車経路計画部12は、次フレームの軌道を決定する(ステップS20)。具体的には、駐車経路計画部12は、生成した全ての後半軌道の候補について、後半軌道の到達位置の座標情報と目標駐車位置の座標情報との距離を算出する。そして、駐車経路計画部12は、算出した距離が最も短くなる場合の後半軌道の到達位置を選択する。次に駐車経路計画部12は、選択した到達位置を到達位置とする後半軌道と、その後半軌道の出発位置を到達位置とする前半軌道との組み合わせを選択する。駐車経路計画部12は、選択した前半軌道および後半軌道を、次フレームの軌道として決定する。駐車経路計画部12は、決定した次フレームの軌道に沿って車両を移動させるための車両制御信号を駐車動作制御部14に出力する。駐車動作制御部14は、車両制御信号に基づき操舵角度や前後進速度を制御して、車両を次フレームの最終到達位置まで移動する(ステップS21)。
【0047】
次に駐車経路計画部12は、目標駐車位置に至ったか否かの判定を行う(ステップS22)。具体的には、駐車経路計画部12は、現在位置(フレームの最終到達位置)と目標駐車位置の距離を算出し、所定の閾値と比較する。算出した距離が所定の閾値以下の場合(ステップS22;Yes)、駐車経路計画部12は、自動駐車処理を終了する。一方、算出した距離が所定の閾値を上回る場合(ステップS22;No)、駐車経路計画部12は、さらに次のフレームの軌道を生成するために、目標駐車位置や進入禁止領域の座標情報を、現在の車両位置を基準とする座標系に変換する(ステップS23)。例えば、駐車経路計画部12は、目標駐車位置の座標情報を、現在の車両の所定位置を原点とし、車両の進行方向にX軸、車幅方向にY軸を設定した座標系における座標情報に変換する。また、目標駐車位置における姿勢情報に、現在の車両の向きに対して目標駐車位置に駐車したときの車両の向きがなす角度を設定する。進入禁止領域の座標情報についても同様である。そして、駐車経路計画部12は、車両が目標駐車位置に至るまでステップS12からの処理を繰り返す。
【0048】
本実施形態によれば、駐車時の切り返し位置において車輪の操舵角度が0度となっているので据え切りを行うことなく目標駐車位置に自動で駐車することができる。これにより、据え切のできない車両であっても自動駐車を行うことができる。また、元々は据え切りが可能な車両が故障などにより据え切りできなくなった場合でも自動駐車を行うことができる。また、ハードウェアの制約(操舵角度や操舵角速度の上下限値)を陽に考慮して目標駐車位置に至るまでの駐車経路を計画するので、確実に目標駐車位置に車両を移動させることができる。また、目標駐車位置に至るまで複数回の前後進を繰り返して自動駐車を行うことができるので、自動運転時のハードウェアの制約が強く、最小回転半径が大きな車両でも、自動駐車が可能である。また、駐車支援システム10は、既存の車両に対して大きな改造を要せず搭載し動作させることができる。また、自動駐車を行う上で高価なアクチュエータは必ずしも必要ではなくなり、車両メーカも車両の製造コストを低減できる。これらの特徴により、本実施形態の駐車支援システム10は、低コストで幅広い車種に搭載することができ、搭載した車両の自動駐車を実現することができる。
【0049】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による駐車支援システムについて
図10を参照して説明する。
第一実施形態ではハードウェアの制約を陽に考慮して車両の駐車経路を生成した。第二実施形態における駐車支援システム10Aは、第一実施形態の駐車支援システム10をさらに有効に活用できる構成を備える。車両の操舵角度を制御するアクチュエータは、例えば熱によって本来の性能を発揮できなくなる場合がある。そのような場合、ハードウェアの制約条件で定めた最大操舵角度、操舵角速度ですら動作しない状況が生じる。第二実施形態では、このような事態に備え、各種アクチュエータの故障・異常を検出し、異常が生じた状況下でのハードウェアの性能値に基づいて駐車経路を計画する。
【0050】
図10は、本発明の第二実施形態による駐車支援システムのブロック図である。
本発明の第二実施形態に係る構成のうち、本発明の第一実施形態に係る駐車支援システム10を構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それらの説明を省略する。第二実施形態に係る駐車支援システム10Aは、第一実施形態の構成に加えて、異常検出部17を備えている。
異常検出部17は、車両の状態を常に監視しておき、車両の備えるハードウェアのうち車両制御信号によって制御するハードウェア(アクチュエータなど)の異常を検出する。
駐車経路計画部12Aは、異常検出部17が異常を検出すると、異常が発生したハードウェアに関する車両制御信号の波形や前半軌道および後半軌道を、ハードウェアの制約を考慮した性能値をさらに下方修正した異常時における性能値に基づいて生成する。また、記憶部15は、異常時における各種の性能値を記憶している。
【0051】
次に本実施形態の自動駐車処理の一例について説明を行う。例えば、
図9のフローチャートに従って1フレーム目の軌道を算出し、車両をその軌道に沿って移動させる。この過程で、異常検出部17は、ハードウェアの異常を検出する。例えば、異常検出部17は、駐車経路計画部12が生成した操舵角度制御信号とその指令値に対して実際に車輪の操舵角度が変化した結果とを比較する。そして、それらの差が所定の閾値以上であれば、操舵角度・角速度を制御するハードウェアに異常が発生していると判定する。同様に、異常検出部17は、駐車経路計画部12が生成した車速制御信号とその指令値に対して実際に車両が前進または後進したときの実際の速度の差が所定の閾値以上であれば、車速を制御するハードウェアに異常が発生していると判定する。また、例えば、異常検出部17は、操舵角度・角速度を制御するアクチュエータなどの温度を検出し、その温度によって異常の発生を検出してもよい。異常検出部17が、操舵角度や車速を制御するハードウェアに異常が発生していると判定すると、駐車経路計画部12は、次フレームの軌道計画処理において、異常時の性能値に基づく前半軌道の生成(ステップS12)および後半軌道の生成(ステップS19)を行う。例えば、異常検出部17が操舵角度・角速度を制御するハードウェアの異常を検出した場合、駐車経路計画部12は、記憶部15から操舵角度・角速度を制御するハードウェアに異常が発生した場合の最大操舵角度、最大角速度を読み出して操舵角度制御信号の波形を生成し、前半軌道および後半軌道の生成を行う。
【0052】
本実施形態によれば、機械の故障などにより操舵角度・角速度などの性能値の上下限値が変化した場合でもそれを駐車経路に反映することができる。
【0053】
<第三実施形態>
以下、本発明の第三実施形態による駐車支援システムについて
図11〜12を参照して説明する。
第一実施形態、第二実施形態の方法を用いることで原理的には、幅広い車種の車両について自動駐車が可能であるが、切返し回数が多くなるにつれてセンサの検出値に基づく自己位置推定などの誤差が大きくなる。そのため、切り返し回数はなるべく少ない方が望ましい。一般的に知られているように,切り返し回数は駐車開始位置に依存する。第三実施形態では、切返し回数を少なくする駐車開始位置の提案を行う。
【0054】
図11は、本発明の第三実施形態による駐車支援システムのブロック図である。
第三実施形態は、第一実施形態および第二実施形態のどちらと組み合わせることも可能であるが、ここでは第一実施形態と組み合わせた場合の構成を例に説明を行う。また、本発明の第三実施形態に係る構成のうち、第一実施形態に係る駐車支援システム10を構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それらの説明を省略する。第三実施形態に係る駐車支援システム10Bは、第一実施形態の構成に加えて、初期位置提示部18を備えている。
初期位置提示部18は、切り返し回数を少なくする駐車開始位置を提示する。また、記憶部15は、駐車開始位置と切り替し回数との関係を定めた初期位置ガイド情報を記憶している。
【0055】
図12は、本発明の第三実施形態による初期位置ガイド情報の一例を示す図である。
図12の3次元グラフのX軸は駐車開始位置候補のX座標、Y軸は駐車開始位置候補のY座標、Z軸は切り返し回数を示している。このグラフは、例えば、ある駐車場で駐車開始位置を変えながら目標駐車位置に対して繰り返し駐車操作を行ったときの切り返し回数を蓄積したデータを用いて生成する。(X,Y)=(0、0)の位置は、車両の現在位置を示している。目標駐車位置は所定の位置である。
図12のグラフは、この現在位置と目標駐車位置との位置関係の下での駐車開始位置と切り返し回数の関係を示している。このグラフによれば、Z軸の値が最も小さくなるときのX座標、Y座標の位置に車両を移動し、その位置から自動駐車を開始すれば、目標駐車位置への移動について切り返し回数を最も少なくすることができることがわかる。
【0056】
次に本実施形態の自動駐車処理の一例について説明を行う。まず、入力部11が、目標駐車位置情報、進入禁止領域情報を取得する(ステップS11)。すると、初期位置提示部18が、記憶部15から予め蓄積した駐車開始位置と切り替し回数との関係を示す情報を読み出す。初期位置提示部18は、入力部11が取得した目標駐車位置情報とセンサで検出した情報に基づく車両の自己位置情報とを用いて、記憶部15から読み出した駐車開始位置と切り替し回数との関係を示す情報の座標系を、現在の車両の位置情報と目標駐車位置との位置関係に合わせて補正する。そして、初期位置提示部18は、
図12で例示した3次元グラフを生成し、出力部16へ出力する。出力部16は、運転席に設けられたディスプレイ装置に初期位置ガイド情報(3次元グラフ)を表示する。ドライバは、3次元グラフを参照して、切り返し回数が少なくなる位置に車両を移動させる。あるいは、ドライバが3次元グラフから切り返し回数が少なくなる位置を選択すると、車両がその位置まで自動運転で移動してもよい。切り返し回数が少なくなる駐車開始位置に到達すると、駐車経路計画部12が、初期位置ガイド情報に基づく、最も切り返し回数が少なくなる駐車開始位置を出発位置として駐車経路を算出し、車両を目標位置に移動させる(ステップS12〜ステップS23)。
【0057】
本実施形態によれば、自動駐車の際の切り返し回数を低減し,自己位置推定誤差の増大を防ぐことができる。これにより、第一実施形態、第二実施形態の効果に加え、より高い精度で自動駐車を行うことができる。
【0058】
<第四実施形態>
以下、本発明の第三実施形態による駐車支援システムについて
図13を参照して説明する。
第一実施形態〜第三実施形態の方法を用いることで、複数回の切り返しを行う自動駐車を実現することができる.しかしながら,複数回数の切返しを行うがゆえに自動駐車の進捗度合が不明であり、ドライバを不安にさせる可能性がある。そこで第四実施形態に係る駐車支援システム10Cは、ドライバの不安を和らげるために自動駐車の進捗状況を提示する機能を有している。
【0059】
図13は、本発明の第四実施形態による駐車支援システムのブロック図である。
第四実施形態は、第一実施形態〜第三実施形態の何れとも組み合わせることも可能であるが、ここでは第一実施形態と組み合わせた場合の構成を例に説明を行う。また、本発明の第四実施形態に係る構成のうち、第一実施形態に係る駐車支援システム10を構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それらの説明を省略する。第四実施形態に係る駐車支援システム10Cは、第一実施形態の構成に加えて、進捗状況算出部19を備えている。
進捗状況算出部19は、車両がフレームの軌道に基づく移動を完了する度に、フレームの到達位置における車両の位置および姿勢と目標駐車位置における車両の位置および姿勢との偏差を算出する。
【0060】
次に本実施形態の自動駐車処理の一例について説明を行う。まず、
図9で説明したフローチャートのステップS11からステップS21までの処理を行って1フレーム目の移動を完了する。次に進捗状況算出部19が車両の現在位置情報と姿勢情報を、入力部11を介して取得する。また、進捗状況算出部19は、目標駐車位置の位置情報と目標駐車位置における姿勢情報とを駐車経路計画部12から取得する。次に進捗状況算出部19は、自動駐車の進捗度を以下の式で計算する。
進捗度(q)= 100 − (Xr−Xq)
2
− (Yr−Yq)
2 − (θr−θq)
2[%]
ここでXr、Yrは目標駐車位置の位置情報のX座標とY座標、θrは目標駐車位置における姿勢情報である。また、qは何フレーム目かを表し、Xq、Yq、θqはそれぞれqフレーム目の最終到達位置のX座標、Y座標、姿勢情報である。qフレーム目の最終到達位置・姿勢が目標駐車位置・姿勢に近づけば近づくほど「進捗度(q)」は大きな値となり、最終到達位置・姿勢が目標駐車位置・姿勢と一致すると、「進捗度(q)」は100%となることが分かる。なお、この式の値が0を下回る場合は、進捗率0%とする。進捗状況算出部19は、算出した「進捗度(q)」を出力部16に出力し、出力部16がこの値を運転席のディスプレイ装置に表示する。進捗状況算出部19は、2フレーム目以降も後半軌道の移動が完了する度に同様の計算を行って「進捗度(q)」を算出する。これによってドライバは、1フレームの移動が完了する度に自動駐車の進捗状況を把握することができる。
【0061】
本実施形態によれば、第一実施形態から第三実施形態の手法に基づく自動駐車の進捗状況をドライバが把握できる。また、万が一目標駐車位置に到達できず駐車が完了してしまった場合でも、ドライバは、どの程度目標駐車位置から離れた位置で完了したかを知ることができる。
【0062】
なお、上述した駐車支援システム10における各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを駐車支援システム10のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0063】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、駐車支援システム10は、1台のコンピュータで構成されていても良いし、通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0064】
なお、上述した駐車支援システム10の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0065】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、
図2(a)などで、初期状態の操舵角度を0度とし、一定の角速度で操舵角度を増加させ、一定の操舵角度を維持し、その後、一定の角速度で操舵角度を減少し0度とする制御を例に説明を行ったが、初期状態の操舵角度は0度でなくてもよい。また、操舵角度を増加・減少させる場合、増加・減少させる角速度は一定でなくてもよい。なお、フレームは単位経路の一例である。