(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シャフトの端部が、前記中空軸の内面との間に隙間が設けられ、かつ、前記抜止め部材が、前記中空軸の外部に配置され前記中空軸の端面との間に隙間が設けられる、請求項1記載のエレベータ駆動装置。
【背景技術】
【0002】
駅のホーム等の狭いスペースに設置される駅舎用エレベータの駆動装置は、水平に設けられたシャフトが、巻上機回転部の中空軸に挿入されている。
【0003】
そして、中空軸の端部において、シャフトが抜けないように抜止め部材とシャフトがボルトにより固定されている。
【0004】
しかし、シャフトと中空軸とが接触により摩耗するという問題があった。
【0005】
特許文献1では、回転軸と電動機の中空軸との摩耗を防ぐためにブッシュが設けられている。
【0006】
また、特許文献2では、摩耗を防ぐために樹脂製緩衝部材が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2により開示されている発明は、シャフトと中空軸との間で摩耗が生じないようにブッシュ又は緩衝部材を別途設けるというものである。
【0009】
一方、
図10に示すように、シャフト10と、シャフト10が挿入されている中空軸20とが接触することにより、シャフト10又は中空軸20が摩耗する。そして、シャフト10又は中空軸20が摩耗すると、シャフト10と中空軸20との間に隙間が生じる。
【0010】
そして、駆動シーブ50には、かご等の荷重により下方向に荷重がかかる。そのため、シャフト10には下方向の荷重が生じ、前記隙間が生じた場合、シャフト10は、中空軸20に対して下方向に傾く。
【0011】
しかし、抜止めプレート30は、中空軸20の端部21に押し当てられて固定されているため下方向に傾かない。そのため、抜止めプレート30とシャフト10とを固定しているボルト40に対して負荷がかかり、ボルト40が疲労破壊するおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、シャフトと抜止め部材とを固定している固定部材(ボルト等)に対して、負荷がかかり難くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエレベータ駆動装置は、エレベータ用かご及び釣合錘を主ロープにより上下動させる駆動シーブを有するシャフトが取り付けられる巻上機及び軸受を備えるエレベータ駆動装置であって、前記巻上機及び前記軸受に取付けられる中空軸と、前記シャフトの端部に取付けられる抜止め部材とを備え、前記抜止め部材と、前記巻上機側の中空軸及び前記軸受側の中空軸の少なくともいずれか一方と、の間に隙間が設けられる、ものである。
【0014】
抜止め部材と中空軸との間に隙間が設けられている。そのため、シャフト及び中空軸の少なくともいずれか一方が摩耗した場合であっても、シャフトと共に抜止め部材も傾くため、抜止め部材をシャフトに固定しているボルト(固定部材)に負担がかかり難い。
【0015】
前記抜止め部材が、前記中空軸内に挿入され、前記中空軸の内面との間に隙間が設けられる挿入部と、前記中空軸の外部に配置され、前記中空軸の端面との間に隙間が設けられる抜止め部とを備える、ものが好ましい。
【0016】
抜止め部材と中空軸の内面との間に隙間が設けられており、かつ、抜止め部材と中空軸の端面との間に隙間が設けられている。そのため、シャフト又は中空軸の少なくともいずれか一方が摩耗した場合であっても、シャフトと共に抜止め部材も傾くため、抜止め部材をシャフトに固定しているボルト(固定部材)に負担がかかり難い。
【0017】
前記抜止め部材が、前記中空軸内に挿入され、前記中空軸の内面との間に隙間が設けられる挿入部材と、前記中空軸の外部に配置され、前記中空軸の端面との間に隙間が設けられる抜止めプレートとを備える、ものであってもよい。
【0018】
抜止め部材が、挿入部材と抜止めプレートとから構成される場合であっても上記と同様の効果を有する。また、抜止め部材の製作が容易であるという効果を有する。
【0019】
前記シャフトの端部が、前記中空軸の内面との間に隙間が設けられ、かつ、前記抜止め部材が、前記中空軸の外部に配置され前記中空軸の端面との間に隙間が設けられる、ものであってもよい。
【0020】
シャフトの端部が、挿入部又は挿入部材と同様の役割をするものであってもよい。このようなものであっても上記と同様の効果を有する。
【0021】
前記抜止め部材が、前記シャフトに固定部材によって固定される、ものが好ましい。
【0022】
固定部材とは、ボルト等のことであり、ボルトと同様の効果を有するものであればどのようなものであってもよい。また、ボルトは六角ボルト等どのようなボルトであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シャフトと抜止め部材とを固定している固定部材(ボルト等)に対して、負荷がかかり難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態に関して図面を参照しながら説明する。
【0026】
(エレベータ100)
図1に示すように、エレベータ100において、昇降路最上部の機械室には巻上機200が設置されている。巻上機200の第1駆動シーブ210に巻き掛けられた第1主ロープ310(主ロープ300)の一端部にはかご400が、他端部には第1釣合錘610が連結されている。
【0027】
第2駆動シーブ220は、第1駆動シーブ210とシャフトA230を介して連結されている。第2駆動シーブ220に巻き掛けられた第2主ロープ320(主ロープ300)の一端部にはかご400が、他端部には第2釣合錘620が連結されている。
【0028】
巻上機200のモータ240によって第1駆動シーブ210及びシャフトA230並びに第2駆動シーブ220が回転駆動する。第1駆動シーブ210の回転駆動に伴って第1主ロープ310が走行する。第2駆動シーブ220の回転駆動に伴って第2種ローブ320が走行する。
【0029】
そして、第1主ロープ310及び第2主ローブ320で吊り下げられたかご400が、第1ガイドレール410に案内されて昇降路内を昇降する。
【0030】
昇降路には、かご400を上下方向に案内する一対の第1ガイドレール410と、釣合錘600(第1釣合錘610、第2釣合錘620)を上下方向に案内する一対の第2ガイドレール630(第2ガイドレールA631、第2ガイドレールB632)とが、上下方向に敷設されている。
【0031】
かご400の上下端部には、一対の第1ガイドレール410に対応する第1ガイドローラユニット(図示しない)が取り付けられている。
【0032】
これら第1ガイドローラユニット(図示しない)によって、かご400が、第1ガイドレール410上を上下方向に案内される。
【0033】
釣合錘600の上下端部には、一対の第2ガイドレール630に対応する第2ガイドローラユニット(図示しない)が取り付けられている。
【0034】
これら第2ガイドローラユニット(図示しない)によって、釣合錘600が、第2ガイドレール630上を上下方向に案内される。
【0035】
本実施形態では、釣合錘600は、第1釣合錘610と、第2釣合錘620との2つ設けられている。したがって、第2ガイドレール630も、一対の第2ガイドレールA631と、一対の第2ガイドレールB632との2組が設けられている。
【0036】
エレベータ100には、かご400の昇降速度が所定速度を超過したことを機械的に検知する調速機700が設けられている。調速機700のガバナシーブ710には、無端状のガバナロープ720が巻き掛けられている。
【0037】
ガバナロープ720は、第1主ロープ310と平行に緊張した状態で張架されている。このガバナロープ720の一部は、かご400側に備えた非常止め装置(図示しない)を作動させる非常止めレバー(図示しない)に固定されている。
【0038】
このため、ガバナロープ720は、かご400の昇降に同期してかご400と同速度で走行する。このとき、ガバナロープ720の走行速度と同速度で回転させられるガバナシーブ710の回転速度を調速機700が検出することで、昇降中のかご400の速度超過が検知される。
【0039】
調速機700がかご400の速度超過を検知した場合、把持機構(図示しない)がガバナロープ720を把持し、ガバナロープ720の走行を停止させる。そして、ガバナロープ720に固定された非常止めレバー(図示しない)が、かご400に対して相対的に引き上げられる。
【0040】
非常止めレバー(図示しない)が引き上げられた場合、非常止め装置(図示しない)が作動する。
【0041】
(エレベータ駆動装置900)
<第1実施形態>
図2に示すように、本実施形態におけるエレベータ駆動装置900は、第1主ロープ310を巻き上げ又は巻き下げる巻上機200と、巻上機200に第1端部231が挿入されるシャフトA230と、シャフトA230の第2端部(図示しない)が挿入される軸受250と、シャフトA230に固定される第1駆動シーブ210及び第2駆動シーブ220と、を含む。
【0042】
巻上機200は、モータ240と、モータ240に接続される減速機260と、モータ240に接続されるロータリエンコーダ(検出器)270と、を含む。
【0043】
モータ240、減速機260及びロータリエンコーダ270は、既知のものであり、詳しい説明は省略又は簡略する。
【0044】
図3に示すように、減速機260は、シャフトA230を挿入するための中空軸261を有する。減速機260は、モータ240の回転をシャフトA230の回転に変換する。モータ240の回転は、制御装置800(
図1に記載)により制御される。
【0045】
図4に示すように、中空軸261に挿入されたシャフトA230には、シャフトA230が中空軸261から抜けることを防止するために、抜止め部材A280が、ボルトA283でシャフトA230に固定されている。
【0046】
本実施形態における抜止め部材A280は、中空軸261内に挿入される挿入部281と、中空軸261外に配置される抜止め部282とを含む。
【0047】
抜止め部材A280の挿入部281と中空軸261の内面263との間には、隙間が設けられている。
【0048】
また、挿入部281の基端側(x軸正方向側)は中空軸261からはみ出ている。そして、挿入部281の基端側に抜止め部282が設けられている。
【0049】
つまり、中空軸261の端部262と、抜止め部材A280の抜止め部282との間には隙間が設けられている。
【0050】
抜止め部材A280の挿入部281は、シャフトA230の第1端部231に接触しており、抜止め部材A280は、シャフトA230にボルト(固定部材)283で固定されている。なお、本実施形態ではボルトA283は、2本用いられているが、1本でもよく、また、2本以上用いられてもよい。
【0051】
図5に示すように、本実施形態では、抜止め部材A280は、yz平面視で、円の一部を切り落としたような形状である。
【0052】
本実施形態では、抜止め部材A280は、ボルトA283を通すための貫通孔284を有する。抜止め部材A280は、貫通孔284にボルトA283を通して、シャフトA230に固定される。
【0053】
本実施形態では、
図4に示すように、中空軸261の内面263と挿入部281との間に隙間が設けられている。
【0054】
なお、
図6に示すように、抜止め部材A280は、yz平面視で、円状であってもよく、また、円以外の形状であってもよい。
【0055】
抜止め部材A280は、減速機260側、つまりシャフトA230の第1端部231側だけでなく、軸受250側の第2端部(図示しない)に設けられてもよい。また、抜止め部材A280は、シャフトA230の第1端部231及び第2端部(図示しない)の両側に設けられてもよい。
【0056】
この場合、減速機260側の中空軸261が、軸受250側の中空軸(図示しない)に置き換わるだけで、その他の構成は同じである。そのため、軸受250側の中空軸(図示しない)の説明は省略する。
【0057】
図7に示すように、このような抜止め部材A280がシャフトA230に固定されることにより、中空軸261又はシャフトA230が摩耗した場合であっても、シャフトA230と共に抜止め部材A280が傾くため、固定部材であるボルトA283に負担がかかり難い。
【0058】
<第2実施形態>
図8に示すように、第2実施形態は、抜止め部材B290が挿入部材291と抜止めプレート292とで構成されるものである。第2実施形態において、第1実施形態と同様の説明に関しては、簡略又は省略する。
【0059】
抜止め部材B290は、中空軸261内に挿入される挿入部材291と、中空軸261外に配置される抜止めプレート292とを含む。
【0060】
抜止め部材B290の挿入部材291と中空軸261の内面263との間には、隙間が設けられている。
【0061】
具体的には、挿入部材291のシャフト側(x軸負方向側)は、シャフトA230の第1端部231に接触している。また、挿入部材291の基端側(x軸正方向側)は中空軸261からはみ出ている。そして、挿入部材291の基端面(x軸正方向側)には、抜止めプレート292が設けられている。
【0062】
つまり、中空軸261の端部262と、抜止め部材B290の抜止めプレート292との間には隙間が設けられている。
【0063】
挿入部材291は、
図4の挿入部281に相当するものである。抜止めプレート292は、
図4の抜止め部282に相当するものである。
【0064】
つまり、本実施形態における抜止め部材B290は、第1実施形態における抜止め部材A280を挿入部281と、抜止め部282とに分割したような構成である。このような構成にすることにより、抜止め部材B290の製作が容易になるという効果を有する。
【0065】
具体的には、第1実施形態では、抜止め部材A280は、複数の段階に分けて、向きや加工機械を変更して、削り出し加工をする必要がある。しかし、本実施形態では、挿入部材291と抜止めプレート292とは、それぞれ板材を切断及び穴あけ加工するだけでよい。つまり抜止め部材290の製作が容易になる。
【0066】
挿入部材291及び抜止めプレート292は、ボルトB293によってシャフトA230に固定されている。なお、挿入部材291と抜止めプレート292とは、溶接等により接合されていてもよい。
【0067】
このような抜止め部材B290がシャフトA230に固定されることにより、中空軸261又はシャフトA230が摩耗した場合であっても、固定部材であるボルトB293に負担がかかり難い。
【0068】
<第3実施形態>
図9に示すように、第3実施形態は、抜止め部材C295が、中空軸261内に挿入されない構成である。第3実施形態において、第1実施形態又は第2実施形態と同様の説明に関しては、簡略又は省略する。
【0069】
シャフトB235の第3端部236と中空軸261の内面263との間には、隙間が設けられている。
【0070】
また、シャフトB235の第3端部236は中空軸261からはみ出ている。そして、シャフトB235の第3端部236には、抜止め部材C295が設けられている。
【0071】
つまり、中空軸261の端部262と、抜止め部材C295との間には隙間が設けられている。
【0072】
シャフトB235の第3端部236の先端には、抜止め部材C295がボルトC296により取り付けられている。したがって、第3実施形態では、抜止め部材C295は、中空軸261内に挿入されていない。
【0073】
このような抜止め部材C295がシャフトB235に固定されることにより、中空軸261又はシャフトB235が摩耗した場合であっても、固定部材であるボルトC296に負担がかかり難い。
【0074】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。