特許第6579459号(P6579459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579459
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】排泄物処理剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/148 20190101AFI20190912BHJP
   A47K 11/00 20060101ALI20190912BHJP
   A01K 1/015 20060101ALI20190912BHJP
   A01K 1/01 20060101ALI20190912BHJP
   A01K 23/00 20060101ALI20190912BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20190912BHJP
   C02F 11/145 20190101ALI20190912BHJP
【FI】
   C02F11/148
   A47K11/00 114
   A01K1/015 BZAB
   A01K1/01 ZZBP
   A01K23/00 C
   C02F11/00 F
   C02F11/145
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-516576(P2018-516576)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2018012915
(87)【国際公開番号】WO2018190133
(87)【国際公開日】20181018
【審査請求日】2018年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-80854(P2017-80854)
(32)【優先日】2017年4月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505388355
【氏名又は名称】株式会社エクセルシア
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】足立 寛一
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−009696(JP,A)
【文献】 特開2016−179127(JP,A)
【文献】 特開2010−148444(JP,A)
【文献】 特開2015−168620(JP,A)
【文献】 特開2004−337533(JP,A)
【文献】 特開昭50−151787(JP,A)
【文献】 特開昭63−079659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
A61L 9/00− 9/22
B01J 20/00−20/28
B01J 20/30−20/34
C09K 3/32
A01K 1/00− 3/00
A01K 31/00−31/24
A47K 11/00−11/12
B09B 1/00− 5/00
B09C 1/00− 1/10
B01D 53/14−53/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモナイト 11〜60質量%と、
リグニン 5〜35質量%と、
ベントナイト 1〜30質量%と、
吸水性ポリマー 20質量%以上と、
消石灰と、
を含み、
当該消石灰の含有量が、10質量%以下であり、前記リグニンは、木粉形態では含まれない、排泄物処理剤。
【請求項2】
前記吸水性ポリマーが、60質量%以下含まれる、請求項1に記載の排泄物処理剤。
【請求項3】
当該消石灰の含有量が、1質量%以上である、請求項1または2に記載の排泄物処理剤。
【請求項4】
前記吸水性ポリマーが、でんぷん系吸水性ポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の排泄物処理剤。
【請求項5】
非水洗トイレまたはペット排泄物の処理に用いられる、請求項1〜のいずれか1項に記載の排泄物処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の排泄物処理剤と、
バインダと、
を有する、造粒物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害による長期の停電および断水時等においては、トイレが使用できなくなり、各家庭では糞尿が溜まってしまう。溜まった糞尿からは悪臭が発散し続け、そのままにしておくと、その臭気により生活環境が著しく悪化してしまう。そこで、一般には糞尿をプラスチック製の袋に入れ、密封状態でとりあえず保管しておく方法等が採られているが、保管中に臭いが漏れ出し、周囲に悪臭を発散させてしまう等の問題がある。
【0003】
かような問題を解決しようと、本発明者は、消石灰と、吸水性ポリマーと、バインダと、pH8〜13のリン酸塩、炭酸塩および水酸化物からなる群から選択される少なくとも一種と、を含む、塊状処理剤を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−87779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の処理剤は、滅菌性のある、消石灰を必須としているため、処理された排泄物の腐敗はほとんど起こらず、また、バインダの使用で、消石灰の粉塵の発生が抑制され、健康被害を有意に抑制する。かような観点で、特許文献1の処理剤は、災害用途として特に優れている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の処理剤は、滅菌性のある消石灰の作用によって大便由来の悪臭は抑制することはできるが、環境によっては、アンモニア臭を抑えることができない場合があることが判明した。
【0007】
よって、本発明は、様々な環境下でも、糞便臭のみならず、アンモニア臭をも抑制することができる排泄物処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、リモナイトと、リグニンと、ベントナイトと、を含み、さらに消石灰を含む場合、当該消石灰の含有量が、10質量%以下である、排泄物処理剤であれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明が完成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、様々な環境下でも、糞便臭のみならず、アンモニア臭をも抑制することができる排泄物処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
【0011】
<排泄物処理剤>
本発明は、リモナイトと、リグニンと、ベントナイトと、を含み、さらに消石灰を含む場合、当該消石灰の含有量が、10質量%以下である、排泄物処理剤である。かかる構成によって、様々な環境下でも、糞便臭のみならず、アンモニア臭をも抑制することができる。
【0012】
上記のように、特許文献1に記載の処理剤は、滅菌性のある消石灰の作用によって大便由来の悪臭は抑制することはできるが、必須成分として含まれる消石灰の影響によってアンモニア発生が助長される場合があることが分かった。災害用途で処理剤が用いられる場合、糞尿をプラスチック製の袋に入れて、つまり、閉鎖式で保管しておくことができるため特にアンモニア臭については問題となり難い。しかし、仮設トイレ等の非水洗トイレ等の開放式の場合、糞便臭由来の臭気を抑制することができても、アンモニア臭を抑えることが難しいことが判明した。
【0013】
そこで、消石灰を含んでもよいが、その量を排泄物処理剤中で10質量%以下とし、かつ、リモナイトと、リグニンと、ベントナイトとを組み合わせることによって、糞便臭のみならず、アンモニア臭をも抑制することができることを見出し、本発明が完成した。
【0014】
以下、排泄物処理剤を構成する成分を説明する。
【0015】
(リモナイト)
本発明の排泄物処理剤は、リモナイトを含む。
【0016】
リモナイトの化学組成は、FeO(OH)・nHOであるが、赤鉄鉱(Fe)や粘土鉱物、酸化マンガン(II)等を不純物として含む場合がある。リモナイトが含まれることによって大便中の悪臭成分である、メルカプタン、メチルメルカプタン、硫化水素等の硫黄系化合物や、脂肪酸系化合物の分解、吸着を行うことができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、リモナイトは、排泄物処理剤に、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜30質量%、よりさらに好ましくは11〜20質量%、よりさらに好ましくは12〜15質量%含まれる。かような範囲であることによって、硫黄系化合物や脂肪酸系化合物の分解、吸着または除去を効率よく行うことができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、リモナイトの粒子径分布測定における体積平均粒子径(D50)は、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは1〜150μm、さらに好ましくは5〜100μmであり、よりさらに好ましくは10〜50μmであり、よりさらに好ましくは11〜30μmである。かような範囲であることによって、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。
【0019】
リモナイトとしては、市販品の中から自由に選択することが可能である。例えば、LMB50、LMB300(以上、日本リモナイト社製)等が挙げられる。
【0020】
(リグニン)
本発明の排泄物処理剤は、リグニンを含む。リグニンは、高等植物の木化に関与する高分子のフェノール性化合物であり、木質素とも呼ばれる。本発明の排泄物処理剤において、リグニンは、アンモニアおよびその他臭気物質の吸着および分解の作用効果を発揮しているものと推測される。本発明の実施形態によれば、リグニンは、リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸マグネシウム、変性リグニンスルホン酸カルシウム、変性リグニンスルホン酸マグネシウム、あるいは、部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム等の形態であってもよい。
【0021】
本発明の実施形態によれば、リグニンは、排泄物処理剤に、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは5〜35質量%含まれ、よりさらに好ましくは15〜32質量%、よりさらに好ましくは20〜30質量%、よりさらに好ましくは23〜29質量%含まれる。かような範囲であることによって、アンモニアおよびその他臭気物質を効率よく吸着する効果がある。
【0022】
本発明の実施形態によれば、リグニンの平均粒子径は、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜100μm、よりさらに好ましくは40〜80μmである。かような範囲であることによって、アンモニアおよびその他臭気物質を効率よく吸着する。なお、本明細書中に記載の「平均粒子径」は、特記がない限り、統計学的に信頼ある数の粒子を任意に選択して、顕微鏡によって1粒ごと一番長い粒径を測定し、それらを相加平均した平均値を意味する。なお、所望の平均粒子径とするためには、適宜、篩い等にかければよい。
【0023】
リグニンとしては、市販品の中から自由に選択することが可能である。例えば、サンエキス(サンエキスP202、サンエキスP321、サンエキスP252サンエキスSCP、パニレックスHW等)、バニレックス(以上、日本製紙社製)等が挙げられる。
【0024】
(ベントナイト)
本発明の排泄物処理剤は、ベントナイトを含む。ベントナイトは、層状のフィロケイ酸アルミニウムを多く含み、高い粘性、粘着性、吸水性や吸着性等の性質を有する。本発明の排泄物処理剤において、ベントナイトは、アンモニア等の陽イオンを吸着し、アンモニアおよびその他臭気物質の発生を抑制し、吸着する。また、リグニンと、ベントナイトとを組み合わせることによって、ベントナイトの陽イオンの吸着効果と、リグニンの解明されていない複雑な3次元状網目構造とが協働し、アンモニアおよびその他臭気物質の発生を抑制し、吸着し、分解する効果をさらに発揮しているのではないかと推測している。
【0025】
本発明の実施形態によれば、ベントナイトは、排泄物処理剤に、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、よりさらに好ましくは6〜15質量%、よりさらに好ましくは7〜12質量%含まれる。かような範囲であることによって、アンモニアおよびその他臭気物質を効率よく吸着する効果がある。
【0026】
本発明のある実施形態によれば、ベントナイトの平均粒子径は、好ましくは0.05〜300μm、より好ましくは0.5〜200μm、さらに好ましくは10〜150μmであり、よりさらに好ましくは80〜145μmである。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、ベントナイトの粒子径分布測定における体積平均粒子径(D50)は、好ましくは50〜300μm、より好ましくは80〜200μm、さらに好ましくは100〜130μmである。また、本発明の別の実施形態によれば、ベントナイトのモード径は、好ましくは50〜300μm、より好ましくは80〜200μm、さらに好ましくは100〜180μmである。かような範囲であることによって、アンモニアおよびその他臭気物質を効率よく吸着するとの技術的効果を有する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、ベントナイトは、主成分であるモンモリロナイトの含有率が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90%質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上である。主成分以外の成分としては特に制限されないが、例えば、石英、クリストバライト、沸石、長石などを含む粘土鉱物である。本発明の実施形態によれば、ベントナイトの化学式又は構造式は、Si(Al3.34Mg0.66)Na0.6620(OH)を有する。本発明の実施形態によれば、ベントナイトは、50±15質量%程度のシリカ(特に結晶性シリカ)を含有する。また、本発明の実施形態によれば、ベントナイト中におけるモンモリロナイトの単位結晶は、厚みが、好ましくは0.5〜5nm、より好ましくは0.8〜3nmである。本発明の実施形態によれば、ベントナイト中におけるモンモリロナイトの単位結晶は、幅が、好ましくは50〜2000nmであり、より好ましくは80〜1500nmであり、さらに好ましくは100〜1000nmである。本発明の実施形態によれば、ベントナイト中におけるモンモリロナイトの形状としては、平板状である。
【0029】
上記のようなベントナイトは、市販品の中から自由に選択することが可能である。ベントナイトの市販品としては、例えば、クニピア−F、クニミネF、モイストナイトS、モイストナイトU(以上、クニミネ工業製)や、250SA−B(以上、豊洋ベントナイト鉱業(株))等を挙げることができる。
【0030】
(消石灰)
本発明の排泄物処理剤は、消石灰を含んでもよいが、その量を排泄物処理剤中で10質量%以下とすることを特徴とする。消石灰の含有量の好ましい上限は、9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下であり、よりさらに好ましくは6質量%以下であり、よりさらに好ましくは5質量%以下である。上限を10質量%以下とすることによってアンモニアを抑制することができる。一方で、下限は、0質量%であるが、1質量%以上でも、2質量%以上でも、3質量%以上であってもよい。消石灰が含まれることによって糞便臭を抑え、微生物を死滅させる効果がある。消石灰を排泄物処理剤に添加する場合の消石灰の弱点(アンモニアの発生を助長させてしまう弱点)を、リモナイトと、リグニンと、ベントナイトと(特に、リモナイト)で補うことによって糞便臭と、アンモニア臭とを抑制しうる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、消石灰の平均粒子径は、10μm以上、より好ましくは50μm以上である。上限にも特に制限されないが、例えば、1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。また、本発明の実施形態によれば、10〜300μmが好ましく、20〜150μmが好ましく、50〜100μmが好ましい。かような範囲であることによって、大便中の悪臭物質である硫黄系化合物を除去する技術的効果を有する。
【0032】
消石灰を準備する方法としては、市販品を購入する方法が好ましく、例えば、宇部マテリアルズ社のもの等が好ましい。
【0033】
(吸水性ポリマー)
本発明の排泄物処理剤は、吸水性ポリマーを含みうる。
【0034】
本発明の排泄物処理剤に含まれうる吸水性ポリマー(吸水剤)は、リモナイトと、リグニンと、ベントナイトと、一定量以下の消石灰とを補助しつつ、さらに被処理物のpHを中性の方向にせしめる役割がある。本発明において、吸水性ポリマーが含まれることによって、糞尿中の水分を吸収し固化することができる。また、吸水性ポリマーの作用によって、被処理物が固化し、固化した被処理物の周囲を、排泄物処理剤を構成する成分を覆う形態となり、本発明の所期の効果をより効率よく奏することができる。
【0035】
本発明で用いられる吸水性ポリマーの具体例としては、たとえばでんぷんアクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、でんぷんアクリル酸グラフト重合体等のでんぷん系吸水性ポリマー、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト共重合体等のセルロース系吸水性ポリマー、多糖類系吸水性ポリマー、コラーゲン等のたんぱく質系吸水性ポリマー、ポリビニルアルコール架橋重合体等のポリビニルアルコール系吸水性ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、アクリル酸ナトリウム−ビニルアルコール共重合体等のアクリル系吸水性ポリマー、無水マレイン酸系吸水性ポリマー、ビニルピロリドン系吸水性ポリマー、ポリエチレングリコール・ジアクリレート架橋重合体等のポリエーテル系吸水性ポリマー等が挙げられる。これら吸水性ポリマーは、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これら吸水性ポリマーは、合成してもよいし市販品を用いてもよい。市販品の例としては、たとえば、アクアキープ(登録商標)SA(住友精化株式会社製)、アクアリック(登録商標)CA(株式会社日本触媒製)、サンフレッシュ(ST−250、ST−100、ST−573)、アクアパール(サンダイヤポリマー株式会社製)、ハイモサブHS−960(ハイモ株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
また、本発明の実施形態において、吸水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロースであってもよい。カルボキシメチルセルロースは、セルロースの誘導体であり、セルロースの骨格を構成するグルコノピラノースモノマーのヒロドキシ基の一部にカルボキシメチル基(−CH−COOH)を結合させたものである。また、このカルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロース塩であってもよい。カルボキシメチルセルロースは、水との親和性が高く、水と混合することでゲル状の高粘度体となる増粘剤である。本発明において、処理剤が増粘することで、悪臭の抑制効果が高く、さらに抑制効果を維持できる。
【0037】
本発明の排泄物処理剤に含まれうる吸水性ポリマーの平均粒子径にも特に制限はないが、好ましくは50〜1000μmであり、より好ましくは80〜850μmであり、さらに好ましくは100〜600μmであり、よりさらに好ましくは200〜500μmであり、よりさらに好ましくは250〜450μmであり、よりさらに好ましくは300〜400μmである。また、本発明の好ましい実施形態においては、吸水性ポリマーは、106μm以下が、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、よりさらに好ましくは12質量%以下である。また、106μm超850μm以下が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。また、850μm超が、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0038】
本発明の実施形態によれば、吸水性ポリマーは、排泄物処理剤に、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%含まれる。かような範囲であることによって、糞便中の水分を固め、拡散を防ぐ効果がある。
【0039】
本発明の実施形態の排泄物処理剤は、水や、PVA、水溶性セルロース、水溶性カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等のバインダ等を用いて造粒してもよい。また、本発明の実施形態の排泄物処理剤は、特開2013−6137号公報や、再表2011/162244号公報の技術を用いて、顆粒状処理剤や、塊状処理剤の形態としてもよい。
【0040】
<排泄物処理剤の製造方法>
本発明においては、リモナイトと、リグニンと、ベントナイトと、消石灰とを混合することを有し、前記消石灰の含有量が、10質量%以下となるように混合することを有する、排泄物処理剤の製造方法が提供される。
【0041】
排泄物処理剤の製造方法としては、排泄物処理剤を構成する各成分を混合することを有し、上記の成分を混合する順序は、特に制限されず、各成分を一度に混合してもよいし、各成分を順次混合してもよい。
【0042】
<排泄物処理剤の用途、使用方法等>
本発明の実施形態によれば、排泄物処理剤は、仮設トイレ等の非水洗トイレ等の開放式のトイレに好適である。よって、本発明の実施形態によれば、排泄物処理剤は、非水洗トイレに用いられる。つまり、本発明の排泄物処理剤は、糞便臭のみならず、アンモニア臭をも抑制(しかも、長期に亘って抑制)しうるので、非水洗トイレ(仮設トイレ)に好適に用いられうる。(ベントナイトの代わりに、ゼオライトを使用したりしても、長期間にわたり、アンモニア臭を抑制することはできない)。
【0043】
本発明の実施形態において、仮設トイレ等の非水洗トイレに適用する場合、糞尿受けに本発明の排泄物処理剤を予め設置しておくことが好ましい。かような実施形態であることによって、トイレの使用者が直接排泄物処理剤を添加する必要がなくなる。
【0044】
また、本発明の実施形態において、糞尿受けに予め本発明の排泄物処理剤を設置しておく場合、少量の水も添加しておくことが好ましい。かような実施形態であることによって、排泄物処理剤を造粒させておくこともできる。そうすることで、排泄物処理剤の粉塵を抑制し、使用者が快適にトイレを使用することができる。
【0045】
また、本発明の実施形態において、下水道インフラの整っていない地域における、非水洗トイレ(例えば、土壌等に穴を掘って、その穴を糞尿受とするトイレ)に対しては、当該穴に予め本発明の排泄物処理剤を設置しておくことが好ましい。ここで、本発明の排泄物処理剤は、リモナイトと、リグニンと、ベントナイトとを含んで構成される。これらの成分は、土壌に対して悪影響を及ぼす成分ではないので、当該穴が糞尿で満たされれば土壌で穴を埋めるだけで糞尿処理が可能となる。さらに言えば糞尿成分や排泄物処理剤由来成分の土壌への好影響によって土壌改良にも繋がり得る。本発明の実施形態において吸水性ポリマーとしてでんぷん系等の生分解性吸水性ポリマーを使うことによって同様の効果を期待することができる。
【0046】
また、本発明の実施形態において、排泄物処理剤が吸水性ポリマーを含む場合、例えば、次亜塩素酸、塩化カルシウム等の、吸水性ポリマーの構造を破壊する成分を処理済の糞尿に添加することが好ましい。かかる実施形態によって、固化されていた糞尿が液体状になり土壌に噴霧、散布して肥料等に用いることもできる。
【0047】
本発明の排泄物処理剤は、かような苛酷な環境においても効果を発揮するので、無論、ペットの糞尿処理剤として用いることもできる。よって、本発明の実施形態において、排泄物処理剤は、ペット排泄物の処理に用いられる。本実施形態において、排泄物処理剤を構成する成分が水溶性基材に包含される。かような実施形態であることによって、ペットのオーナーが排泄物処理剤を粉末形態で持ち歩く必要がなくなり、携帯性が向上する。また、本実施形態においては、水溶性基材に包含された状態の排泄物処理剤を直接、ペットの排泄物が収納された袋(例えば、プラスチック袋)に添加することができる。この場合、少量の水をさらに添加することがより好ましい。かかる実施形態によれば、ペットの糞尿処理が非常に容易となり、臭いの問題も解決することができる。また、本発明の実施形態においては、排泄物処理剤が包含されてなる水溶性基材を一部切って開封し、水溶性基材の中に収納されていた粉末形態の排泄物処理剤をペットの排泄物に振りかけてもよい。かような実施形態であることによって、水を添加しなくても、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。
【0048】
ここで、水溶性基材としては、水に溶解する基材であれば特に制限されず、例えば水溶紙、水溶性フィルム等が挙げられる。水溶性基材のサイズとしては特に制限はない。
【0049】
また、かような苛酷な環境(特に開放式トイレ)においても効率的に所期の効果を発揮する本発明の排泄物処理剤であれば、処理した排泄物を袋(例えば、ビニール袋)に入れて縛ることを想定している災害用途の処理剤としてはもちろん、家畜の排泄物、有機汚泥や嘔吐物の排泄物の処理にも使用することができる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、被処理物(大便150〜350g)に対する排泄物処理剤の量は、必要に応じて適宜調整することができるが、目安としては、好ましくは3〜100gであり、より好ましくは5〜70gであり、さらに好ましくは10〜50gである。被処理物(小便50〜500g)に対する排泄物処理剤の量は、必要に応じて適宜調整することができるが、目安としては、好ましくは3〜100gであり、より好ましくは5〜70gであり、さらに好ましくは10〜50gである。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の代表的な実施形態を示し、本発明につきさらに説明するが、無論、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定した。
【0052】
<排泄物処理剤の作製>
(実施例1、比較例1〜10)
表1に示される組成となるように排泄物処理剤を構成する各成分を混合して、35gの排泄物処理剤を作製した。
【0053】
(比較例11)
特開2014−87779号公報の実施例19と同じ組成となるようにした以外は、実施例1と同様にして35gの排泄物処理剤を作製した。
【0054】
<臭気試験、アンモニア計測>
ポリエチレン製の袋に男性40代の大便200gおよび小便100gを添加して密閉し1時間放置した。
【0055】
袋を開けて、各実施例、各比較例で作製した排泄物処理剤を35g添加し、30日間放置後、臭気の官能試験を行った。また、検知管(アンモニア用ガス検知管(北川式)(光明理化学工業(株)社製) 測定限界が200ppmまで)を用いて、アンモニア濃度を測定した(表1に示す)。
【0056】
【表1】
【0057】
<結果、考察>
実施例1の排泄物処理剤によれば、処理済の排泄物を30日間との長期間に亘って放置しても、糞便臭のみならず、アンモニア臭をも抑制することができ、殆ど臭気を感じなかった。一方、比較例1、2は、消石灰が含まれていないためアンモニアの発生がそもそも少なくリグニンも含まれているためアンモニアの確認ができなかったが、糞便臭がやや強く残存していた。よって、ベントナイトの存在が本発明の所期の効果を奏するために重要であることが示唆されている。
【0058】
比較例3は、消石灰の含有比率が排泄物処理剤において10質量%超であるため、アンモニア濃度が高かった。そのため、リモナイト、リグニン、ベントナイト、消石灰等の作用によって糞便臭は抑えられていたが、アンモニア由来の刺激臭が強く、臭気が残っていた。
【0059】
比較例4は、リモナイトのみを使用した実験であるが、結果、生ゴミが発酵したような悪臭を感じた。
【0060】
比較例5は、比較例4の組成に半分、吸水性ポリマーを入れた実験であるが、水分を吸収している分、比較例4よりは臭気は低いが、依然生ゴミが発酵したような悪臭を感じた。
【0061】
比較例6、7は、比較例5の組成をベースに、消石灰を添加したため、アンモニア発生が助長され、いずれも、アンモニアの刺激臭と有機的な臭いとが組み合わさったやや強い臭気を発していた。
【0062】
比較例8は、実施例の組成に近いが、ベントナイトが入っていない。その結果、臭気としては、アンモニアの刺激臭と有機的な臭いとが組み合わさった臭気が残っていた。換言すれば、リモナイト、リグニン、ベントナイトが協働して本発明の所期の効果を奏していることが示唆された。しかも、リモナイトと、リグニンと、ゼオライトと、の組み合わせでは、本発明の所期の効果を奏することはできず、リモナイトと、リグニンと、ベントナイトとの組み合わせが重要であることが示唆される。換言すれば、ゼオライトは、ベントナイトの代替品には本発明においてはならないということである。
【0063】
比較例9はリグニンが含まれていないことによってアンモニアの発生を抑制することができず、また糞便臭による臭気も残ってしまった。比較例10はリモナイトが含まれていないことによってかなりの悪臭となってしまった。
【0064】
比較例11は、消石灰を多く含んでいるので、糞便臭はあまり感じられないが、その分、アンモニア発生が助長されて、臭気が残ってしまった。
【0065】
なお、本出願は、2017年4月14日に出願された日本国特許出願第2017−80854号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。