特許第6579461号(P6579461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6579461
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】卵アレルギーの抗原
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20190912BHJP
   A23L 15/00 20160101ALI20190912BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20190912BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20190912BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 14/465 20060101ALI20190912BHJP
   C07K 16/02 20060101ALI20190912BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20190912BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   G01N33/53 QZNA
   A23L15/00 Z
   A61K39/00 H
   A61K39/39
   A61P37/08
   G01N33/53 N
   G01N33/53 D
   C07K14/465
   C07K16/02
   C12N15/11 Z
   A01K67/027
【請求項の数】9
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2019-66871(P2019-66871)
(22)【出願日】2019年3月29日
(62)【分割の表示】特願2018-141311(P2018-141311)の分割
【原出願日】2017年6月2日
【審査請求日】2019年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-111308(P2016-111308)
(32)【優先日】2016年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】松永 佳世子
(72)【発明者】
【氏名】矢上 晶子
(72)【発明者】
【氏名】中村 政志
(72)【発明者】
【氏名】青木 祐治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英里香
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/190376(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/077457(WO,A1)
【文献】 AMO Alvaro,Gal d 6 Is the Second Allergen Characterized from Egg Yolk,J Agric Food Chem,2010年 6月23日,Vol.58 No.12,Page.7453-7457
【文献】 MARTOS, G. et al.,In vitro digestions and IgE binding of proteins from white and whole hen’s egg,Clinical and Translational Allergy,2011年 8月12日,Vol.1/Suppl.1,O8,doi:10.1186/2045-7022-1-S1-O8
【文献】 原 彰彦,魚類の卵形成と雌特異蛋白質ビテロジェニン “環境ホルモン”のバイオマーカー,化学と生物,日本農芸化学会,2001年 1月25日,Vol.39/No.1,pp.29-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏卵アレルギーの診断キットであって、以下(3)、(5)、(6)又は(10)のタンパク質の少なくとも一つ:
(3)(3A)ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分若しくはリポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分を含むタンパク質、又はそれらの変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(5)(5A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)を含むタンパク質又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(6)(6A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列
を含むタンパク質;又は
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(10)(10A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配
列を含むタンパク質;又は
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくと
も一つを含むタンパク質を抗原として含む、前記診断キット。
【請求項2】
鶏卵アレルギーの診断用組成物であって、以下(3)、(5)、(6)又は(10)のタンパク質の少なくとも一つ:
(3)(3A)ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分若しくはリポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分を含むタンパク質、又はそれらの変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(5)(5A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)を含むタンパク質又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(6)(6A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列
を含むタンパク質;又は
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(10)(10A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配
列を含むタンパク質;又は
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくと
も一つを含むタンパク質を抗原として含む、前記診断用組成物。
【請求項3】
対象の鶏卵アレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が鶏卵アレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は、以下(3)、(5)、(6)又は(10):
(3)(3A)ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分若しくはリポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分を含むタンパク質、又はそれらの変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(5)(5A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)を含むタンパク質又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(6)(6A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列
を含むタンパク質;又は
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(10)(10A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配
列を含むタンパク質;又は
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくと
も一つを含むタンパク質として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記方法。
【請求項4】
抗原を含有しないまたは含有量の少ない鶏卵加工品であって、当該抗原は以下(3)、(5)、(6)又は(10):
(3)(3A)ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分若しくはリポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分を含むタンパク質、又はそれらの変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(5)(5A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)を含むタンパク質又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(6)(6A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列
を含むタンパク質;又は
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(10)(10A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配
列を含むタンパク質;又は
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくと
も一つを含むタンパク質として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記鶏卵加工品
【請求項5】
以下(3)、(5)、(6)又は(10):
(3)(3A)ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分若しくはリポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分を含むタンパク質、又はそれらの変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(5)(5A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)を含むタンパク質又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(6)(6A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列
を含むタンパク質;又は
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(10)(10A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配
列を含むタンパク質;又は
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくと
も一つを含むタンパク質として特定されるタンパク質の少なくとも一つと結合する抗体を含むことを特徴とする、対象物における鶏卵抗原の有無を判定するためのテスター。
【請求項6】
配列番号17、58、105または261で示される塩基配列の少なくとも1つと相補的な塩基配列を有するプライマーを含むことを特徴とする、対象物における鶏卵に対するアレルギーの抗原の有無を判定するためのテスター。
【請求項7】
抗原を含有しないまたは含有量の少ない鶏卵加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原を含有しないまたは含有量の少ないことを確認するステップを有する、ここで当該抗原は、以下(3)、(5)、(6)又は(10):
(3)(3A)ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分若しくはリポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分を含むタンパク質、又はそれらの変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(5)(5A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)を含むタンパク質又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(6)(6A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列
を含むタンパク質;又は
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(10)(10A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配
列を含むタンパク質;又は
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくと
も一つを含むタンパク質として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記製造方法。
【請求項8】
鶏卵由来の抗原であって、以下(3)、(5)、(6)又は(10):
(3)(3A)ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分若しくはリポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分を含むタンパク質、又はそれらの変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(5)(5A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)を含むタンパク質又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(6)(6A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列
を含むタンパク質;又は
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(10)(10A)ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、鶏卵に対するアレルギーの抗原である、以下のいずれかのタンパク質:
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配
列を含むタンパク質;又は
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくと
も一つを含むタンパク質として特定されるタンパク質の少なくとも一つであり、そして鶏卵に対するアレルギーの原因となる、前記抗原。
【請求項9】
請求項8の抗原を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵に対するアレルギーの新規抗原に関する。本発明はまた、卵に対するアレルギーの診断キット、診断用組成物、及び診断方法に関する。本発明はまた、当該抗原を含む医薬組成物、及び当該抗原が除去又は低減された卵、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥に関する。本発明はさらに、当該抗原が除去又は低減された卵加工品の製造方法に関する。本発明はさらにまた、対象物における卵抗原の有無を判定するためのテスターに関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー患者の血清及び組織中では、特定の抗原(以下、アレルゲンともいう)に特異的なIgE抗体が産生される。このIgE抗体と特定の抗原の相互作用により生じた生理学的結果によりアレルギー反応が惹起される。抗原とは、広義にはアレルギー症状を引き起こす食品・食材等を示し、狭義には特異的なIgE抗体が結合する、食品・食材等に含まれるタンパク質(以下、アレルゲンコンポーネントともいう)をいう。
【0003】
従来のアレルギー検査薬においては、単にアレルゲン候補の食品・食材等をすりつぶして抗原試薬を作成していることが多い(特許文献1)。このため、従来の抗原試薬中に含まれるアレルゲンコンポーネントの中で、IgE抗体との結合について陽性反応が判定可能な閾値を超える含有量であった場合にのみ、アレルギー検査における陽性反応を検出することが可能であり、診断効率は十分に高いとはいえない状態であった。
【0004】
卵アレルゲンに関しては、現在、以下の表に示すものが知られている(非特許文献1)。
【0005】
【表1】
【0006】
アレルゲン候補の食品・食材において、いくつかのアレルゲンコンポーネントが示唆され、検査キットとして商品化もされているが、アレルギー検査の信頼度を高めるためには、アレルゲンコンポーネントを網羅的に特定する必要があるところ、上記アレルゲンコンポーネントの測定による患者検出率はまだまだ不十分である。卵の新規アレルゲンを同定することは、診断薬の精度を高めるだけでなく、低アレルゲン食品、低アレルゲン食材や治療薬のターゲットとしても非常に重要である。
【0007】
一方、タンパク質の分離・精製に関しては、近年、少量のサンプルから多様なタンパク質を分離精製する方法として、1次元目に等電点電気泳動を行い、2次元目にSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム―ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を行う2次元電気泳動法が用いられている。出願人らはこれまでに、分離能が高い2次元電気泳動法を開発してきた(特許文献2〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−286716
【特許文献2】特開2011−33544
【特許文献3】特開2011−33546
【特許文献4】特開2011−33547
【特許文献5】特開2011−33548
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Allergen Nomenclature, WHO/IUIS Allergen Nomenclature Sub-Committee, [平成28年5月31日検索],インターネット<URL: http://www.allergen.org/search.php?allergenname=&allergensource=gallus+domesticus&TaxSource=&TaxOrder=&foodallerg=all&bioname= >
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、卵に対するアレルギーの新規抗原を提供する。本発明はまた、卵に対するアレルギーの診断方法及び診断キットを提供する。本発明はまた、当該抗原を含む医薬組成物、及び当該抗原が除去又は低減された卵又、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥を提供する。本発明はさらに、対象物における卵抗原の有無を判定するためのテスターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために卵に対するアレルギーの原因抗原特定について鋭意研究を行った。その結果、卵アレルギーを有する患者の血清中のIgE抗体が特異的に結合する新規な抗原を特定することに成功した。当該知見に基づいて、本発明は完成された。
【0012】
すなわち、一態様において、本発明は以下のとおりであってよい。
【0013】
[1]卵アレルギーの診断キットであって、以下(1)〜(3)のタンパク質の少なくとも一つ:
(1)(1A)ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)のC末端部分を含むタンパク質又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(1A−a)〜(1A−e)のいずれかのタンパク質:
(1A−a)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(1A−b)配列番号2で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(1A−c)配列番号1において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(1A−d)配列番号1で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(1A−e)配列番号1で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(1B)配列番号2〜11からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(2)(2A)ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)のC末端部分を含むタンパク質又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(2A−a)〜(2A−e)のいずれかのタンパク質:
(2A−a)配列番号13において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2A−b)配列番号13で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2A−c)配列番号12において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2A−d)配列番号12で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(2A−e)配列番号12で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(2B)配列番号9〜11、13、14、及び16からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(3)(3A)ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分若しくはリポビテリン−1(lipovitelin-1)のC末端部分を含むタンパク質、又はそれらの変異体であって、
卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(3A−a)〜(3A−e)のいずれかのタンパク質:
(3A−a)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−c)配列番号17において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
を抗原として含む、前記診断キット。
【0014】
[2]卵アレルギーの診断用組成物であって、上記[1]において(1)〜(3)として特定されるタンパク質の少なくとも一つを抗原として含む、前記診断用組成物。
【0015】
[3]対象の卵アレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が卵アレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は、上記[1]において(1)〜(3)として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記方法。
【0016】
[4]上記[1]において(1)〜(3)として特定されるタンパク質の少なくとも一つを含む医薬組成物。
【0017】
[5]卵アレルギーを治療するための、上記[4]に記載の医薬組成物。
【0018】
[6]抗原が除去又は低減されていることを特徴とする卵、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥であって、当該抗原は上記[1]において(1)〜(3)として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記卵、卵加工品または鳥。
【0019】
[7]上記[1]において(1)〜(3)として特定されるタンパク質の少なくとも一つと結合する抗体を含むことを特徴とする、対象物における卵抗原の有無を判定するためのテスター。
【0020】
[8]配列番号1、12または17で示される塩基配列の少なくとも1つと相補的な塩基配列を有するプライマーを含むことを特徴とする、対象物における卵に対するアレルギーの抗原の有無を判定するためのテスター。
【0021】
[9]卵アレルギーの診断キットであって、以下(4)〜(10)のタンパク質の少なくとも一つ:
(4)(4A)ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)を含むタンパク質又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(4A−a)〜(4A−e)のいずれかのタンパク質:
(4A−a)配列番号47において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(4A−b)配列番号47で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(4A−c)配列番号46において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(4A−d)配列番号46で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(4A−e)配列番号46で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(4B)配列番号47〜57からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(5)(5A)ビテロゲニン−2プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)を含むタンパク質又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(5A−a)〜(5A−e)のいずれかのタンパク質:
(5A−a)配列番号59において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−c)配列番号58において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とス
トリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(6)(6A)ビテロゲニン−2プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(6A−a)〜(6A−e)のいずれかのタンパク質:
(6A−a)配列番号106において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−c)配列番号105において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(7)(7A)アポリポプロテインBプレカーサー(Apolipoprotein B precursor)又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(7A−a)〜(7A−e)のいずれかのタンパク質:
(7A−a)配列番号152において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(7A−b)配列番号152で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(7A−c)配列番号151において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(7A−d)配列番号151で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(7A−e)配列番号151で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(7B)配列番号152〜235からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(8)(8A)アポリポプロテインBプレカーサー(Apolipoprotein B precursor)又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(8A−a)〜(8A−e)のいずれかのタンパク質:
(8A−a)配列番号237において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(8A−b)配列番号237で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(8A−c)配列番号236において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(8A−d)配列番号236で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(8A−e)配列番号236で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(8B)配列番号237〜249からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(9)(9A)アポリポプロテインBプレカーサー(Apolipoprotein B precursor)又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(9A−a)〜(9A−e)のいずれかのタンパク質:
(9A−a)配列番号251において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(9A−b)配列番号251で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(9A−c)配列番号250において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(9A−d)配列番号250で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(9A−e)配列番号250で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(9B)配列番号251〜260からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(10)(10A)ビテロゲニン−2プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)又はその変異体であって、卵に対するアレルギーの抗原である、以下の(10A−a)〜(10A−e)のいずれかのタンパク質:
(10A−a)配列番号262において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−c)配列番号261において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
を抗原として含む、前記診断キット。
【0022】
[10]卵アレルギーの診断用組成物であって、上記[9]において(4)〜(10)として特定されるタンパク質の少なくとも一つを抗原として含む、前記診断用組成物。
【0023】
[11]対象の卵アレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が卵アレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は、上記[9]において(4)〜(10)として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記方法。
【0024】
[12]上記[9]において(4)〜(10)として特定されるタンパク質の少なくと
も一つを含む医薬組成物。
【0025】
[13]卵アレルギーを治療するための、上記[12]に記載の医薬組成物。
【0026】
[14]抗原が除去又は低減されていることを特徴とする卵、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥であって、当該抗原は上記[9]において(4)〜(10)として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記卵、卵加工品または鳥。
【0027】
[15]上記[9]において(4)〜(10)として特定されるタンパク質の少なくとも一つと結合する抗体を含むことを特徴とする、対象物における卵抗原の有無を判定するためのテスター。
【0028】
[16]配列番号46、58、105、151、236、250または261で示される塩基配列の少なくとも1つと相補的な塩基配列を有するプライマーを含むことを特徴とする、対象物における卵に対するアレルギーの抗原の有無を判定するためのテスター。
【0029】
[17]抗原が除去または低減されている卵加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原が除去又は低減されていることを確認するステップを有する、ここで当該抗原は上記[1]において(1)〜(3)として特定されるタンパク質の少なくとも一つ、または上記[9]において(4)〜(10)として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記製造方法。
【0030】
[18]卵由来の抗原であって、上記[1]において(1)〜(3)として特定されるタンパク質の少なくとも一つ、または上記[9]において(4)〜(10)として特定されるタンパク質の少なくとも一つであり、そして卵に対するアレルギーの原因となる、前記抗原。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、卵に対するアレルギーの新規抗原を提供することができる。本発明において卵アレルギーを引き起こす新規な抗原(アレルゲンコンポーネント)が同定されたことから、卵に対するアレルギーの高感度な診断方法及び診断キット、当該抗原を含む医薬組成物、当該抗原が除去又は低減された卵、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥、当該抗原が除去又は低減された卵加工品の製造方法、ならびに対象物における卵抗原の有無を判定するためのテスターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、鶏卵(生卵)の卵黄に含まれるタンパク質について、2次元電気泳動によるタンパク質の泳動パターンを示すゲルの写真である。写真の左側のバンドは分子量マーカーのバンドであり、写真の左側の数値は各分子量マーカーの分子量(KDa)である。写真上部の数値は、等電点を表す。
図2図2は、鶏卵(生卵)の卵黄に含まれるタンパク質の二次元電気泳動パターンに対して、卵アレルギー患者1の血清を用いたイムノブロットの写真である。
図3図3は、鶏卵(生卵)の卵黄に含まれるタンパク質の二次元電気泳動パターンのゲル写真である。卵アレルギー患者1の血清が特異的に反応したスポット1、2および3は、それぞれ四角の枠で囲って示した。
図4図4は、鶏卵(生卵)の卵黄に含まれるタンパク質の二次元電気泳動パターンに対して、卵アレルギー患者2の血清を用いたイムノブロットの写真である。卵アレルギー患者2の血清が特異的に反応したスポット4〜8は、それぞれ四角の枠で囲って示した。
図5図5は、鶏卵(生卵)の卵黄に含まれるタンパク質の二次元電気泳動パターンに対して、卵アレルギー患者3の血清を用いたイムノブロットの写真である。卵アレルギー患者3の血清が特異的に反応したスポット9および10は、それぞれ四角の枠で囲って示した。
図6図6は、鶏卵(生卵)の卵黄に含まれるタンパク質の二次元電気泳動パターンに対して、卵アレルギー患者4の血清を用いたイムノブロットの写真である。卵アレルギー患者4の血清が特異的に反応したスポット11は、四角の枠で囲って示した。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0035】
本明細書においてアレルギーとは、ある抗原に感作されている生体に、再びその抗原が入った場合に起こる、生体に不都合な過敏反応を示す状態をいう。食物におけるアレルギー疾患の多くにおいて、血液および組織で抗原に特異的なIgE抗体が産生される。IgE抗体は、肥満細胞または好塩基球と結合する。当該IgE抗体に特異的な抗原が再びアレルギー疾患患者の体内に入ると、当該抗原は肥満細胞または好塩基球と結合したIgE抗体と組み合わさり、そして当該IgE抗体が細胞表面で架橋し、IgE抗体−抗原相互作用の生理学的効果を生ずる。これらの生理学的効果として、ヒスタミン、セロトニン、ヘパリン、好酸球遊走因子または各種ロイコトリエン等の放出が挙げられる。これらの放出物質は、IgE抗体と特定の抗原の組み合わせにより起こるアレルギー反応を惹起する。特定の抗原によるアレルギー反応は、上記の経路を通じて現れる。
【0036】
本明細書において卵とは、鳥類の卵、好ましくは鶏卵を意味する。
【0037】
本明細書において卵に対するアレルギーとは、卵に含まれるタンパク質等を抗原として生じるアレルギー反応を有する状態をいう。卵に対するアレルギーは、卵に含まれる抗原と接触した場合、あるいは当該抗原を摂取した場合に、アレルギー反応を生じ得る。一般的に食物を摂取した場合に生じるアレルギー反応を特に食物アレルギーという。卵に対するアレルギーは食物アレルギーであってもよい。
【0038】
本明細書において抗原とは、アレルギー反応を惹起させる物質であり、アレルゲンコンポーネントとも称される。抗原は好ましくはタンパク質である。
【0039】
本明細書において、タンパク質は、天然のアミノ酸がペプチド結合により連結された構造を有する分子である。タンパク質に含まれるアミノ酸の数は特に限定されないが、2〜50個程度のアミノ酸がペプチド結合により連結されたタンパク質を、ペプチドと呼ぶことがある。また、アミノ酸に関して光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示す。本明細書で用いるタンパク質またはペプチドのアミノ酸配列の表記法は、標準的用法及び当業界で慣用されている表記法に基づき、アミノ酸の一文字表記で表され、左方向はアミノ末端方向であり、そして右方向はカルボキシ末端方向である。
【0040】
抗原の特定
卵に含まれるタンパク質について、上記の手法を利用して卵に対するアレルギーの抗原の特定を行った。具体的には、生の鶏卵を卵黄と卵白とに分け、それぞれに含まれる卵タンパク質を下記の条件で2次元電気泳動に供した。
【0041】
1次元目の電気泳動は、等電点電気泳動用ゲルとして、ゲル長が5〜10cmの範囲内
であって、ゲルのpH範囲が3〜10であり、泳動方向に対するゲルのpH勾配が、ゲルの全長を1とし、pH5までのゲル長をa、pH5〜7のゲル長をb、pH7以上のゲル長をcとした場合において、aが0.15〜0.3の範囲内、bが0.4〜0.7の範囲内、cが0.15〜0.3の範囲内であるゲルを用いて、具体的には、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社(以下、GE社と省略する)製のIPGゲルImmobiline Drystrip (pH3-10NL)を用いて等電点泳動を行った。電気泳動機器は、GE社製のIPGphorを用い
た。電気泳動機器の電流値の上限をゲル1本当たり75μAに設定し、電圧プログラムを、(1)300V定電圧で750Vhrまで定電圧工程を行い(当該工程終了前の泳動30分間の電流変化幅が5μAであった)、(2)300Vhrかけて1000Vまで徐々に電圧を上昇させ、(3)更に4500Vhrかけて5000Vまで徐々に電圧を上昇させ、(4)その後5000V定電圧で総Vhrが12000になるまで、1次元目の等電点電気泳動を行った。
【0042】
2次元目の電気泳動は、泳動方向基端部のゲル濃度が3〜6%に設定され、泳動方向先端側の部分のゲル濃度が泳動方向基端部のゲル濃度よりも高く設定されたポリアクリルアミドゲルを用いて、具体的にはlife technologies社製のNuPAGE 4-12% Bris-Tris Gels IPG well mini 1mmを用いてSDS-PAGEを行った。電気泳動機器は、life technologies社製
のXCell SureLock Mini-Cellを用いた。泳動緩衝液として50mM MOPS、50mM
Tris塩基、0.1%(w/v)SDS、1mM EDTAを用い、200V定電圧で約45分間泳動を行った。
【0043】
その結果、鶏卵のタンパク質について上記の条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、スポット1〜3の抗原が、卵に対するアレルギー患者であって食物依存性運動誘発アナフィラキシーと診断された患者のIgE抗体に特異的に結合することを明らかにした(図3)。また、卵に対する他のアレルギー患者において、スポット4〜11の抗原が、当該患者のIgE抗体に特異的に結合することを明らかにした(図4〜6)。
【0044】
抗原
(1)スポット1の抗原
スポット1について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号3〜11のアミノ酸配列が検出された。
【0045】
また、スポット1について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号3〜11)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)のC末端部分(アミノ酸配列:配列番号2、それをコードする塩基配列:配列番号1)であることが同定された。
【0046】
したがって、本願においてスポット1の抗原は、以下(1A−a)〜(1A−e)および(1B)のいずれかであってよい。
(1A−a)配列番号2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(1A−b)配列番号2で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(1A−c)配列番号1において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(1A−d)配列番号1で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(1A−e)配列番号1で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とスト
リンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(1B)配列番号2〜11からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号2、4、及び9〜11からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号3〜11のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0047】
上記(1A−a)〜(1A−e)および(1B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量20kDa〜40kDa、好ましくは分子量30kDa〜35kDa付近、および等電点4.0〜10.0、好ましくは等電点4.0〜9.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0048】
(2)スポット2の抗原
スポット2について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号9〜11、14、16のアミノ酸配列が検出された。
【0049】
また、スポット2について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号9〜11、14、16)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)のC末端部分(アミノ酸配列:配列番号13、それをコードする塩基配列:配列番号12)であることが同定された。
【0050】
したがって、本願においてスポット2の抗原は、以下(2A−a)〜(2A−e)および(2B)のいずれかであってよい。
(2A−a)配列番号13において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(2A−b)配列番号13で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(2A−c)配列番号12において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(2A−d)配列番号12で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(2A−e)配列番号12で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(2B)配列番号9〜11、13、14、および16からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号9〜11、13、および16からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号9〜11、13、14、16のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0051】
上記(2A−a)〜(2A−e)および(2B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」
の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量30kDa〜60kDa、好ましくは分子量35kDa〜40kDa付近、および等電点5.0〜10.0、好ましくは等電点6.0〜9.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0052】
(3)スポット3の抗原
スポット3について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号19〜45のアミノ酸配列が検出された。
【0053】
また、スポット3について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号19〜45)をUniProtのタンパク質データと照合して解析したところ、ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)の中央部分又はそのタンパク質のN末端側の切断によりできるリポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分(アミノ酸配列:配列番号18、それをコー
ドする塩基配列:配列番号17)であることが同定された。
【0054】
したがって、本願においてスポット3の抗原は、以下(3A−a)〜(3A−e)および(3B)のいずれかであってよい。
(3A−a)配列番号18において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(3A−b)配列番号18で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(3A−c)配列番号17において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(3A−d)配列番号17で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(3A−e)配列番号17で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(3B)配列番号18〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号18、19、22〜31、33〜35、37、39、40、42、43および45からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号18〜45のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0055】
上記(3A−a)〜(3A−e)および(3B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量35kDa〜60kDa、好ましくは分子量40kDa〜50kDa付近、および等電点5.0〜10.0、好ましくは等電点6.0〜9.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0056】
(4)スポット4の抗原
スポット4について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号48〜57のアミノ酸配列が検出された。
【0057】
また、スポット4について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号48〜57)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)(アミノ酸配列:配列番号47、それをコードする塩基配列:配列番号46)であることが同定された。
【0058】
したがって、本願においてスポット4の抗原は、以下(4A−a)〜(4A−e)および(4B)のいずれかであってよい。
(4A−a)配列番号47において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(4A−b)配列番号47で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(4A−c)配列番号46において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(4A−d)配列番号46で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(4A−e)配列番号46で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(4B)配列番号47〜57からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号47、50、51、53、および54からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号47〜57のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0059】
上記(4A−a)〜(4A−e)および(4B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量が20〜50kDa、好ましくは25〜40kDa、さらに好ましくは30〜35kDa付近、および等電点が3.0〜8.0、好ましくは3.5〜7.0、さらに好ましくは4.0〜6.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0060】
(5)スポット5および6の抗原
スポット5および6について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号60〜104のアミノ酸配列が検出された。
【0061】
また、スポット5および6について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号60〜104)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)(アミノ酸配列:配列番号59、それ
をコードする塩基配列:配列番号58)であることが同定された。
【0062】
したがって、本願においてスポット5および6の抗原は、以下(5A−a)〜(5A−e)および(5B)のいずれかであってよい。
(5A−a)配列番号59において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(5A−b)配列番号59で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは7
5%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(5A−c)配列番号58において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(5A−d)配列番号58で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(5A−e)配列番号58で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(5B)配列番号59〜104からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号59、60、63、65、68、69、71、73、75〜79、81、83〜88、91〜94、96〜99、および101〜103からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号59〜104のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0063】
上記(5A−a)〜(5A−e)および(5B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量が80〜260kDa、好ましくは90〜200kDa、さらに好ましくは110〜160kDa付近、および等電点が1.0〜8.0、好ましくは2.0〜7.0、さらに好ましくは3.0〜6.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0064】
6)スポット7の抗原
スポット7について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号107〜150のアミノ酸配列が検出された。
【0065】
また、スポット7について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号107〜150)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ビテロゲニン−2
プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)(アミノ酸配列:配列番号106、それをコードする塩基配列:配列番号105)であることが同定された。
【0066】
したがって、本願においてスポット7の抗原は、以下(6A−a)〜(6A−e)および(6B)のいずれかであってよい。
(6A−a)配列番号106において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(6A−b)配列番号106で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(6A−c)配列番号105において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(6A−d)配列番号105で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(6A−e)配列番号105で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を
含むタンパク質。
(6B)配列番号106〜150からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、44種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号106、108、110、111、113、114、116、117、120〜124、126〜131、133、134、136〜138、140〜143、145〜147および149からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、31種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号106〜150のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0067】
上記(6A−a)〜(6A−e)および(6B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量が110〜300kDa、好ましくは130〜280kDa、さらに好ましくは160〜260kDa付近、および等電点が3.0〜8.0、好ましくは3.5〜7.0、さらに好ましくは4.0〜6.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0068】
(7)スポット8の抗原
スポット8について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号153〜235のアミノ酸配列が検出された。
【0069】
また、スポット8について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号153〜235)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、アポリポプロテイン
B プレカーサー(Apolipoprotein B precursor)(アミノ酸配列:配列番号152、それをコードする塩基配列:配列番号151)であることが同定された。
【0070】
したがって、本願においてスポット8の抗原は、以下(7A−a)〜(7A−e)および(7B)のいずれかであってよい。
(7A−a)配列番号152において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(7A−b)配列番号152で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(7A−c)配列番号151において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(7A−d)配列番号151で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(7A−e)配列番号151で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(7B)配列番号152〜235からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、83種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号152、154、157〜160、163、164、167〜172、174、175、177、178、180、182〜185、187、189、190、192、194〜196、198〜200、203〜207、209、211、212、214〜
216、220〜229、231および232からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号152〜235のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0071】
上記(7A−a)〜(7A−e)および(7B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量が160〜550kDa、好ましくは180〜400kDa、さらに好ましくは200〜300kDa付近、および等電点が3.0〜8.0、好ましくは3.5〜7.0、さらに好ましくは4.0〜6.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0072】
(8)スポット9の抗原
スポット9について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号238〜249のアミノ酸配列が検出された。
【0073】
また、スポット9について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号238〜249)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、アポリポプロテイン
B プレカーサー(Apolipoprotein B precursor)(アミノ酸配列:配列番号237、それをコードする塩基配列:配列番号236)であることが同定された。
【0074】
したがって、本願においてスポット9の抗原は、以下(8A−a)〜(8A−e)および(8B)のいずれかであってよい。
(8A−a)配列番号237において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(8A−b)配列番号237で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(8A−c)配列番号236において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(8A−d)配列番号236で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(8A−e)配列番号236で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(8B)配列番号237〜249からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号237〜239、241、242、244、および246〜249からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号237〜249のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0075】
上記(8A−a)〜(8A−e)および(8B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量が20〜50kDa、好ましくは25〜45kDa、さらに好ましくは30〜40kDa付近、および等電点が7.0〜11.0、好ましくは8.0〜10.0、さらに好ましくは9.0〜1
0.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0076】
(9)スポット10の抗原
スポット10について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号252〜260のアミノ酸配列が検出された。
【0077】
また、スポット10について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号252〜260)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、アポリポプロテイン B プレカーサー(Apolipoprotein B precursor)(アミノ酸配列:配列番号251、それをコードする塩基配列:配列番号250)であることが同定された。
【0078】
したがって、本願においてスポット10の抗原は、以下(9A−a)〜(9A−e)および(9B)のいずれかであってよい。
(9A−a)配列番号251において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(9A−b)配列番号251で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(9A−c)配列番号250において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(9A−d)配列番号250で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(9A−e)配列番号250で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(9B)配列番号251〜260からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号251〜254、256、257および260からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号251〜260のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0079】
上記(9A−a)〜(9A−e)および(9B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量が20〜50kDa、好ましくは25〜45kDa、さらに好ましくは30〜40kDa付近、および等電点が7.0〜11.0、好ましくは8.0〜10.0、さらに好ましくは9.0〜10.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0080】
(10)スポット11の抗原
スポット11について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号263〜271のアミノ酸配列が検出された。
【0081】
また、スポット11について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号263〜271)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ビテロゲニン−2
プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)(アミノ酸配列:配列番号262、それを
コードする塩基配列:配列番号261)であることが同定された。
【0082】
したがって、本願においてスポット11の抗原は、以下(10A−a)〜(10A−e)および(10B)のいずれかであってよい。
(10A−a)配列番号262において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10A−b)配列番号262で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10A−c)配列番号261において1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10A−d)配列番号261で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10A−e)配列番号261で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10B)配列番号262〜271からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9種またはすべての配列を含むタンパク質。さらに好ましくは、配列番号262〜265、268および269からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号262〜271のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0083】
上記(10A−a)〜(10A−e)および(10B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量が15〜40kDa、好ましくは17〜35kDa、さらに好ましくは20〜30kDa付近、および等電点が6.0〜11.0、好ましくは7.0〜10.0、さらに好ましくは8.0〜10.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0084】
上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原であるタンパク質には、リン酸化や糖鎖修飾、アミノアシル化、開環、脱アミノ化などにより当該タンパク質のアミノ酸残基が修飾を受けているタンパク質もまた、含まれる。
【0085】
好ましくは、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原であるタンパク質は、卵に対するアレルギーの抗原である。
【0086】
本明細書において、アミノ酸配列について「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加された」という場合は、対象となるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸(例えば、アミノ酸配列の全長に対して30%、好ましくは25%、20%、15%、10%、5%、3%、2%または1%のアミノ酸)が欠失しているか、他のアミノ酸に置換されているか、他のアミノ酸が挿入されているか、および/または他のアミノ酸が付加されているアミノ酸配列をいう。
【0087】
上記のうち、置換は、好ましくは保存的置換である。保存的置換とは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることであるが、もとの配列の構造に関する特徴を実質的に変化させなければいかなる置換であってもよく、例えば、置換アミノ酸が、もとの配列に存在するらせんを破壊したり、もとの配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊したりしなければいかなる置換であってもよい。以下に、アミノ酸残基の保存的置換について置換可能な残基ごとに分類して例示するが、置換可能なアミノ酸残
基は以下に記載されているものに限定されるものではない。
A群:ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、メチオニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、
E群:セリン、スレオニン
F群:フェニルアラニン、チロシン
非保存的置換の場合は、上記種類のうち、ある1つのメンバーと他の種類のメンバーとを交換することができる。例えば、不用意な糖鎖修飾を排除するために上記のB、D、E群のアミノ酸をそれ以外の群のアミノ酸に置換してもよい。または、3次構造でタンパク質中に折りたたまれることを防ぐためにシステインを欠失させるか、他のアミノ酸に置換してもよい。あるいは、親水性/疎水性のバランスが保たれるように、または合成を容易にするために親水度を上げるように、アミノ酸に関する疎水性/親水性の指標であるアミノ酸のハイドロパシー指数(J. Kyte 及びR. Doolittle, J. Mol. Biol., Vol.157, p.105-132, 1982)を考慮して、アミノ酸を置換してもよい。
【0088】
本明細書において、2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査及び数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性%を決定することもできる。そのようなコンピュータープログラムとしては、例えば、BLAST及びClustalW等があげられる。特に、BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は、Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されたもので、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)やDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから公的に入手することができる(BLASTマニュアル、Altschulら NCB/NLM/NIH Bethesda, MD 20894;Altschulら)。また、遺伝情報
処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス)、DNASIS Pro(日立ソフト)、Vector NTI(Infomax)等のプログラムを用いて決定することもできる。
【0089】
本明細書において、塩基配列について「1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された」という場合は、対象となる塩基配列において、1個もしくは数個のヌクレオチド(例えば、塩基配列の全長に対して30%、好ましくは25%、20%、15%、10%、5%、3%、2%または1%のアミノ酸)が欠失しているか、他のヌクレオチドに置換されているか、他のヌクレオチドが挿入されているか、および/または他のヌクレオチドが付加されている塩基配列をいう。上記ヌクレオチドの欠失、置換、挿入もしくは付加により、アミノ酸をコードする配列にフレームシフトを生じないことが好ましい。
【0090】
本明細書において、2つの塩基配列の同一性%は、視覚的検査及び数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性%を決定することもできる。そのような配列比較コンピュータープログラムとしては、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiから利用できるBLASTNプログラム(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10)を用いることができ、デフォルトのパラメータを用いて決定することができる。
【0091】
本明細書における「ストリンジェントな条件下」とは、中程度又は高度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件としては、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示されている。好ましくは、中程度にストリンジェントな条件は、ハイブリ
ダイゼーション条件として、1×SSC〜6×SSC、42℃〜55℃の条件、より好ま
しくは、1×SSC〜3×SSC、45℃〜50℃の条件、最も好ましくは、2×SSC、50℃の条件があげられる。ハイブリダイゼーション溶液中に、例えば、約50%のホルムアミドを含む場合には、上記温度よりも5ないし15℃低い温度を採用する。洗浄条件としては、0.5×SSC〜6×SSC、40℃〜60℃があげられる。ハイブリダイゼーション及び洗浄時には、一般に、0.05%〜0.2%、好ましくは約0.1%SDSを加えてもよい。高度にストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。一般に、高度にストリンジェント(ハイストリンジェント)な条件としては、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度及び/又は低い塩濃度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を含む。例えば、ハイブリダイゼーション条件として、0.1×SSC〜2×SSC、55℃〜65℃の条件、より好ましくは、0.1×SSC〜1×SSC、60℃〜65℃の条件、最も好ましくは、0.2×SSC、63℃の条件があげられる。洗浄条件として、0.2×SSC〜2×SSC、50℃〜68℃、より好ましくは、0.2×SSC、60〜65℃が挙げられる。
【0092】
抗原は、卵(好ましくは鶏卵)から当業者に周知のタンパク質精製方法を組み合わせて分離・精製することによって得てもよい。または、抗原は、当業者に周知の遺伝子組換え技術により抗原を組換えタンパク質として発現させ、そして当業者に周知のタンパク質精製方法により分離・精製することによって得てもよい。
【0093】
タンパク質の精製方法としては、例えば、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、SDS-PAGEなど分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーやヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
【0094】
遺伝子組換え技術によるタンパク質の調製は、抗原をコードする核酸を含む発現ベクターを調製し、当該発現ベクターを適切な宿主細胞中に遺伝子導入または形質転換により導入し、当該宿主細胞を組換えタンパク質の発現に適する条件下で培養し、そして当該宿主細胞中で発現された組換えタンパク質を回収することにより行う。
【0095】
「ベクター」は、それに連結させた核酸を宿主細胞内に導入するために用いることが可能な核酸であり、「発現ベクター」はベクターにより導入された核酸がコードするタンパク質の発現を導くことが可能なベクターである。ベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクター等が含まれる。当業者は、使用する宿主細胞の種類に応じて、組換えタンパク質の発現に適切な発現ベクターを選択することができる。
【0096】
「宿主細胞」は、ベクターにより遺伝子導入または形質転換を受ける細胞である。宿主細胞は、使用するベクターに応じて当業者が適切に選択することができる。宿主細胞は、例えば、大腸菌(E. coli)などの原核生物由来であることが可能である。大腸菌のよう
な原核細胞を宿主として使用する場合、本発明の抗原は、原核細胞内での組換えタンパク質の発現を容易にするためにN末端メチオニン残基を含むようにしてもよい。このN末端メチオニンは、発現後に組換えタンパク質から切り離すこともできる。あるいは、酵母などの単細胞真核生物、植物細胞、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞または昆虫細胞)などの、真核生物由来の細胞やカイコであることが可能である。
【0097】
発現ベクターの宿主細胞への遺伝子導入または形質転換は、当業者に公知の手法により適宜行うことができる。また、当業者は、宿主細胞の種類に応じて組換えタンパク質の発
現に適する条件を適宜選択し、宿主細胞を培養することにより組換えタンパク質を発現させることができる。そして、組換えタンパク質を発現した宿主細胞をホモジナイズし、得られたホモジネートから上述したタンパク質の精製方法を適宜組み合わせて行うことにより、組換えタンパク質として発現された抗原を分離・精製することができる。
【0098】
診断キット・診断方法
本発明は、対象の卵アレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が卵アレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記方法を提供する。
【0099】
対象から得られた試料とは、対象から採取されたIgE抗体、が含まれる溶液である。そのような溶液には、例えば、血液、唾液、痰、鼻水、尿、汗、涙が含まれる。対象から得られた試料は、抗原に接触させる前に、試料中のIgE抗体濃度を高めるための前処理が施されていてもよい。試料の前処理としては、例えば血液から血清、血しょうを得ることが含まれてもよい。またさらに、抗原との結合部分であるFab部分を精製してもよい。特に好ましい態様において、上記工程(i)は、対象から得られた血清中のIgE抗体と抗原を接触させることにより行われる。
【0100】
IgE抗体は、IgE抗体そのものであってもよく、IgE抗体が結合した肥満細胞等であってもよい。
【0101】
対象から得られた試料と抗原との接触およびその結合の検出は、既知の方法により行うことが可能である。そのような方法には、例えば、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorvent Assay)、サンドイッチ免疫測定法、イムノブロット法、免疫沈降法、イムノクロ
マト法による検出を用いることができる。これらはいずれも、抗原に対象のIgE抗体を接触させて結合させ、抗原に特異的に結合したIgE抗体に対して酵素標識した二次抗体を作用させ、酵素の基質(通常は、発色あるいは発光試薬)を加えて酵素反応の生成物を検出することにより、抗原と対象のIgE抗体の結合を検出する手法である。もしくは蛍光標識した二次抗体を検出する方法である。あるいは、表面プラズモン共鳴(SPR)等の
、抗原とIgE抗体の結合を評価可能な測定方法による検出を用いることもできる。複数種の抗原特異的IgE抗体が混合されていてもよい。
【0102】
抗原は、単離された抗原が担体に固定されている状態であってもよい。この場合は上記工程(i)および(ii)においてELISA、サンドイッチ免疫測定法、イムノクロマト法、表面プラズモン共鳴等が利用でき、また、上記工程(i)では、対象から得られた試料を抗原を固定した面に接触させることにより行う。単離された抗原は、卵(好ましくは鶏卵)から当業者に周知のタンパク質精製方法を組み合わせて分離・精製することによって、または遺伝子組換え技術により調製することによって得てもよい。また、抗体が固定されている状態であってもよい。
【0103】
抗原は担体に固定されていない状態であってもよい。この場合は、上記工程(i)および(ii)において、フローサイトメトリー等が利用でき、レーザー光により抗体が結合した抗原の存在を確認できる。例えば、好塩基球活性化試験(BAT)等が挙げられる。また、抗原を試料中の血球にさらに接触させることにより、ヒスタミンを遊離するかどう
かを調べるヒスタミン遊離試験(HRT)も挙げられる。
【0104】
また、抗原は2次元電気泳動により分離した状態から転写してイムノブロット法による検出を行ってもよい。2次元電気泳動は、1次元目に等電点電気泳動、2次元目にSDS−PAGE(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を行うことで、タンパク質試料を分離する手法である。この場合、2次元電気泳動の条件は、本願発明の抗原が分離できる条件であれば特に限定されない。例えば、上記「抗原の特定」の項目において記載した2次元電気泳動の条件を利用できる。あるいは、上述の特許文献1〜4の記載を参考にして電気泳動の条件を定めることもでき、例えば、以下:
(A)1次元目の等電点電気泳動ゲルとして、ゲル長が5〜10cmの範囲内であって、ゲルのpH範囲が3〜10であり、泳動方向に対するゲルのpH勾配が、pH5までのゲル長をa、pH5〜7のゲル長をb、pH7以上のゲル長をcとした場合において、「a<b]及び「b>c」の関係を満たす;
(B)(A)の場合であって、ゲルの全長を1とした場合、aが0.15〜0.3の範囲内、bが0.4〜0.7の範囲内、cが0.15〜0.3の範囲内である;
(C)1次元目の等電点電気泳動において、検体を含むゲル1本につき100V〜600Vの範囲内の値の定電圧の印加による定電圧工程を行い、泳動30分あたりの泳動変化幅が5μAの範囲内となった後に前記定電圧から電圧を上昇させる電圧上昇行程を始める;(D)(C)の場合に、電圧上昇工程の最終電圧を3000V〜6000Vの範囲内とする;
(E)1次元目の等電点電気泳動ゲルの長手方向のゲル長が5〜10cmであって、2次元目電気泳動ゲルの泳動方向基端部のゲル濃度を3〜6%とする;および
(F)(E)の場合に、2次元目電気泳動ゲルの泳動方向先端側の部分のゲル濃度が、泳動方向基端部のゲル濃度よりも高く設定する;
からなる群より選択される少なくとも一つを満たす条件で2次元電気泳動を行うことができる。
【0105】
上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原は、卵に対するアレルギーの患者のIgE抗体と特異的に結合する抗原である。したがって、対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が卵に対するアレルギーであることの指標が提供される。
【0106】
本発明はまた、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを含む卵に対するアレルギーの診断キットを提供する。本発明の診断キットは、上記の卵に対するアレルギーを診断するための指標を提供する方法、または下記の診断方法に用いてもよい。本発明の診断キットは、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを含むほか、酵素標識された抗IgE抗体および当該酵素の基質となる発色基質または発光基質を含んでいてもよい。また、蛍光標識された抗IgE抗体を用いてもよい。本発明の診断キットにおいて、抗原は担体に固定化された状態で提供されてもよい。本発明の診断キットはまた、診断のための手順についての説明書や当該説明を含むパッケージと共に提供されてもよい。
【0107】
別の態様において、上記の診断キットは、卵に対するアレルギーについてのコンパニオン診断薬を含む。コンパニオン診断薬とは、医薬品の効果が期待される患者の特定または医薬品の重篤な副作用リスクを有する患者の特定、あるいは医薬品を用いた治療の最適化のために当該医薬品の反応性を検討するために用いるものである。ここで治療の最適化とは、例えば、用法容量の決定や投与中止の判断、どのアレルゲンコンポーネントを使って免疫寛容するかの確認等が含まれる。
【0108】
本発明はまた、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを含む卵に対するアレルギーの診断用組成物を提供する。本発明の診断用組成物は、下記の診断
方法に用いることができる。本発明の診断用組成物は、必要に応じて本発明の抗原とともに一般的に用いられる、薬学的に許容される担体や添加剤を含んでいてもよい。
【0109】
一態様において、本発明は、対象の卵に対するアレルギーを診断する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が卵に対するアレルギーであると判断する;
ことを含み、ここで当該抗原は上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記方法を提供する。ここにおいて(i)および(ii)の各工程は、卵に対するアレルギーを診断するための指標を提供する方法の各工程について説明したとおりに行われる。
【0110】
別の態様において、本発明は、対象の卵に対するアレルギーを診断する方法であって、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを対象に投与することを含む、前記方法を提供する。当該方法は、皮膚に抗原を適用することを特徴とする皮膚テストの形式で行ってもよい。皮膚テストには、皮膚上に診断用組成物を適用した後に、出血しない程度に微少な傷をつけることで皮膚に抗原を浸透させて皮膚反応を観察するプリックテスト、診断用組成物を適用した上に皮膚を少し引っ掻いて反応を観察するスクラッチテスト、クリームや軟膏などの形態の診断用組成物を皮膚に適用して反応を観察するパッチテスト、抗原を皮内に投与して反応を観察する皮内テスト、などの形態が含まれる。抗原を適用した部分の皮膚に腫れなどの皮膚反応が生じた場合、その対象は卵に対するアレルギーを有すると診断する。ここで、皮膚に適用する抗原の量は、例えば、1回あたり100μg以下の用量であってよい。
【0111】
アレルギーの診断においては、抗原の特定を目的とした負荷試験がしばしば行われている。上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つは、卵に対するアレルギーであることを診断するための負荷試験の有効成分として用いることができる。ここで、負荷試験に用いる抗原タンパク質としては、発現精製したタンパク質であってもよく、例えば、イネにスギ花粉抗原の遺伝子を形質転換し、その抗原タンパク質を米内に発現させた花粉米のように、食品・食材において発現させたものであってもよい。
【0112】
また別の態様において、本発明は卵に対するアレルギーの診断に使用するための上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを提供する。ここで、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを、既知の抗原と混合して提供することも含む。
【0113】
さらなる別の態様において、本発明は卵に対するアレルギーの診断薬の製造のための上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つの使用を提供する。
【0114】
医薬組成物・治療方法
本発明は、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを含む医薬組成物を提供する。
【0115】
一態様において、上記の医薬組成物は、卵に対するアレルギーを治療するために用いられる。
【0116】
本発明はまた、卵に対するアレルギーの治療を必要とする患者に対して、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを投与することを含む、卵に対するア
レルギーを治療する方法を提供する。
【0117】
別の態様において、本発明は卵に対するアレルギーの治療に使用するための上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つを提供する。さらに別の態様において本発明は、卵に対するアレルギーの治療薬の製造のための上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つの使用を提供する。
【0118】
アレルギーの治療においては、患者に抗原を投与することで免疫寛容へと誘導することを目標とした、減感作療法がしばしば行われている。上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つは、卵に対するアレルギーに対する減感作療法のための有効成分として用いることができる。ここで、減感作療法に用いる抗原タンパク質としては、発現精製したタンパク質であってもよく、例えば、イネにスギ花粉抗原の遺伝子を形質転換し、その抗原タンパク質を米内に発現させた花粉米のように、食品・食材において発現させたものであってもよい。
【0119】
本発明の医薬組成物は、通常の投与経路により投与することができる。通常の投与経路には例えば、経口、舌下、経皮、皮内、皮下、血液内、鼻腔内、筋肉内、腹腔内、直腸内の投与が含まれる。
【0120】
本発明の医薬組成物は、必要に応じて本発明の抗原と共に、一般的に用いられる薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤、または各種の添加剤(例えば安定剤、溶解補助剤、乳濁化剤、緩衝剤、保存剤、着色剤等)を常法により添加した医薬組成物として用いることができる。医薬組成物の剤型は、投与経路に応じて当業者が適宜選択することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ、舌下錠、注射剤、鼻腔内噴霧剤、パップ剤、液剤、クリーム剤、ローション剤、坐剤等の形態であってよい。本発明の医薬組成物の投与量、投与回数および/または投与期間は、投与経路、症状、年齢や体重などの患者の特性等に応じて医師が適宜選択することができる。例えば、成人の場合、1回あたり100μg以下の用量で投与してもよい。投与間隔は、例えば、毎日、毎週1回、月に2回、又は3ヶ月に1回程度であってよい。投与期間は例えば、数週間から数年であってよい。投与期間内において、投与量を段階的に増加させる投与方法であってもよい。
【0121】
テスター
本発明は、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つに対する抗体を含むテスターを提供する。
【0122】
当該抗体は、常法により作製することができる。例えば、ウサギなどの哺乳動物を上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原で免疫することにより作製してもよい。当該抗体は、IgE抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、Fab’)であってもよい。
【0123】
また、上記のテスターにおいて、当該抗体は担体に結合した形で提供されていてもよい。担体は、抗体と抗原の結合の検出に利用可能な担体であれば特に限定されない。当業者に公知の任意の担体が利用できる。
【0124】
抗原含有の有無を調べる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
・作製したIgE抗体を含むテスターを食品・食材等から得られた試料に接触させて、例えばELISA法等を用いて当該IgE抗体と試料中の抗原との結合を検出し、当該IgE抗体と抗原との結合が検出された場合に、対象食品・食材等に当該抗原が残留していると判断する方法。
・ろ紙などに食品・食材をしみこませ、そこに含まれる抗原を検出するように、抗体溶液
を反応させる方法。
【0125】
本発明の別の態様において、配列番号1、12、17、46、58、105、151、236、250または261で示される塩基配列の少なくとも1つの一部と相補的な塩基配列を有するプライマーを含むことを特徴とする、対象物における卵に対するアレルギーの抗原の有無を判定するためのテスターを含む。非限定的に、上記プライマーは例えば、配列番号1、12、17、46、58、105、151、236、250または261で示される塩基配列の少なくとも1つの配列の一部の3’末端または中央部分の配列の、好ましくは、12残基、15塩基、20塩基、25塩基と相補的な塩基配列を有する。特にmRNAを対象とする場合は、ポリAテールの相補プライマーを有する。好ましい態様において、上記のプライマーを含むテスターは、さらに配列番号1、12、17、46、58、105、151、236、250または261で示される塩基配列の少なくとも1つの配列の5’末端の部分の塩基配列、好ましくは12塩基、15塩基、20塩基、25塩基からなる塩基配列を含むプライマーを含んでもよい。
【0126】
例えば、卵または鳥から得られたDNAまたはmRNAを鋳型として、前記相補的なプライマーを用い、RT−PCRを含むPCR(Polymerase Chain Reaction)でcDNA
を増幅し、増幅されたcDNAの配列を配列番号1、12、17、46、58、105、151、236、250または261と比較することで、抗原の有無を判断する。PCRで増幅する方法は、RACE法等が例示できる。この時、増幅されたcDNAと配列番号1、12、17、46、58、105、151、236、250または261との比較において、同じアミノ酸をコードする点変異が存在する場合、または、増幅されたcDNAの塩基配列において、配列番号1、12、17、46、58、105、151、236、250または261の塩基配列に対する塩基の挿入、欠失、置換もしくは付加が存在しても、当該cDNAコードするアミノ酸配列が配列番号2、13、18、47、59、106、152、237、251または262のアミノ酸配列に対して同一性が70%以上、好ましくは80、90、95、98、99%以上となる場合は、抗原が存在すると判断する。
【0127】
一態様において、上記のテスターは、食材(卵または鳥)または食品製造ライン中などの対象物中の抗原含有の有無を調べるために用いられる。上記テスターは、製造業者による製造ラインおよび出荷前製品の品質検査用として用いてもよく、喫食者自身による対象食品・食材の抗原含有の有無のチェック用として用いてもよい。
【0128】
抗原除去食品等
本発明は、上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つが除去又は低減されていることを特徴とする卵、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥を提供する。
【0129】
卵、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥において、本発明の抗原を除去又は低減する方法は限定されない。抗原の除去又は低減は、本発明の抗原が除去又は低減される限り、いかなる方法によって行われてもよい。
【0130】
例えば、本発明の抗原が除去又は低減された卵は、遺伝子ノックアウト技術を用いて、本発明の抗原の発現がノックアウトされた卵を調製してもよい。
【0131】
遺伝子ノックアウト技術は、当業者に公知の手法のいずれかを用いることができる。例えば、Oishi, et al.(Scientific Reports, Vol.6, Article number: 23980, 2016, doi:10.1038/srep23980)は、ゲノム編集技術であるCRISPER/Cas9をニワトリの始原生殖細胞に適用して、オボムコイド遺伝子欠失個体を得ることを記載している。同様の手法を利用
して、本発明の抗原が除去された卵を得てもよい。また、抗原を含有しないまたは含有量の少ない鳥または卵との人工授精による交配により、本発明の抗原が除去・低減された鳥または卵を得てもよい。鳥または卵の人工交配は、常法により行うことができる。
【0132】
本発明の抗原が除去又は低減された卵加工品は、本発明の抗原が除去又は低減された卵を原料とした加工品であってもよい。通常の卵を原料とする場合は、卵加工品の調製前または調製後に本発明の抗原を除去又は低減する処理を行う。通常の卵を原料とした卵加工品において本発明の抗原を除去又は低減する方法として、高圧処理および中性塩溶液による溶出や、高温スチーム等の、食品・食材中のタンパク質成分を除去する方法や、熱処理および酸処理による加水分解・変性・アミノ酸変化(側鎖の化学修飾・脱離等)する方法が挙げられる。
【0133】
本発明の抗原が除去又は低減された鳥は、上記本発明の抗原が除去又は低減された卵を孵化し、成長させた鳥であってもよい。鳥は、雛、幼鳥、若鶏、成鳥および老鳥の各成長段階のものを含む。本明細書において鳥とは、鳥類に属する動物、好ましくは鶏を意味する。
【0134】
抗原除去卵加工品の製造方法
本発明は、抗原が除去または低減されている卵加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原が除去又は低減されていることを確認するステップを有する、ここで当該抗原は上記(1)〜(3)、(4)〜(10)の抗原の少なくとも一つである、前記製造方法を提供する。
【0135】
抗原が除去または低減されている卵加工品の製造過程で抗原が除去又は低減されていることを確認するステップは、上記『テスター』の項目において記載した方法により抗原の含有の有無を確認することにより行ってもよい。
【0136】
また、抗原が除去または低減されている卵加工品の製造は、上記『抗原除去食品等』の項目において記載した方法により行ってもよい。
【実施例】
【0137】
以下に本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって限定されない。
【0138】
実施例1:タンパク質パターンの確認
下記の二次元電気泳動方法を使用して、卵に含まれるタンパク質を調べた。
【0139】
タンパク質の抽出
生の鶏卵を、卵白と卵黄に分けた。
【0140】
卵白および卵黄に含まれるタンパク質の抽出及び精製は次のように行った。卵白に、可溶化剤を加えてタンパク質を抽出した後、水又は尿素バッファーを添加してタンパク質抽出液を得た。尿素バッファーの組成は以下の通りである。
30mM Tris
2M チオ尿素
7M 尿素
4%(w/v) CHAPS:
3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナート
適量の希塩酸
蒸留水を加えて全体を100mLに調整した。pHは8.5であった。
その後、タンパク質重量として25μgずつを混合して抽出液を得た。卵黄に可溶化剤として界面活性剤バッファー(Mammalian Lysis Buffer (MCLI), SIGMA社)を添加して、タンパク質を抽出した。
【0141】
その後、2D-CleanUPキット(GE社製)を使用して2回の沈殿操作を行った。第1回目の沈殿操作は、回収した上記蛋白質抽出液にTCA(トリクロロ酢酸)を加えて沈殿を行い、当該操作で生じた沈殿(TCA沈殿)を回収した。第2回目の沈殿操作は、回収した前記TCA沈殿にアセトンを加えて沈殿を行い、当該操作で得られた沈殿(検体)を回収した。
【0142】
検体溶液の調製
得られた検体の一部(タンパク質重量として50μg)を、1次元目等電点電気泳動用ゲルの膨潤用緩衝液であるDeStreak Rehydration Solution(GE社製)150μlに溶
解し、1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)とした。DeStreak Rehydration Solutionの組成は以下の通りである。
7M チオ尿素
2M 尿素
4%(w/v) CHAPS
0.5%(v/v) IPGバッファー;GE社製
適量のBPB(ブロモフェノールブルー)
【0143】
1次元目等電点電気泳動用ゲルへの検体の浸透
1次元目等電点電気泳動用ゲル(GE社製:IPGゲルImmobiline Drystrip (pH3-10NL))を前記した1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨張用検体溶液)140μlに浸漬し、一晩室温にて浸透させた。
【0144】
本実施例においては、電気泳動機器としてGE社製のIPGphorを使用した。
【0145】
泳動トレーにシリコンオイルを満たした。検体を浸透させたゲルの両端に水で湿らせた濾紙を設け、ゲルをシリコンオイルに覆われるよう、泳動トレーにセットし、ゲルとの間に当該濾紙を挟んだ状態で電極をセットした。
【0146】
等電点電気泳動機器の電流値の上限をゲル1本当たり75μAに設定し、電圧プログラムを、(1)300V定電圧で750Vhrまで定電圧工程を行い(当該工程終了前の泳動30分間の電流変化幅が5μAであった)、(2)300Vhrかけて1000Vまで徐々に電圧を上昇させ、(3)更に4500Vhrかけて5000Vまで徐々に電圧を上昇させ、(4)その後5000V定電圧で総Vhrが12000になるまで、1次元目の等電点電気泳動を行った。
【0147】
等電点電気泳動ゲルのSDS平衡化
上記の1次元目の等電点電気泳動を行った後、等電点電気泳動機器からゲルを取り外し、還元剤を含む平衡化緩衝液に当該ゲルを浸漬して、15分・室温にて振とうした。上記還元剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
6M 尿素
30%(v/v) グリセロール
2%(w/v) SDS
1%(w/v) DTT
【0148】
次に、上記還元剤を含む平衡化緩衝液を除き、ゲルをアルキル化剤を含む平衡化緩衝液
に浸漬して、15分・室温にて振とうし、SDS平衡化したゲルを得た。上記アルキル化剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
6M 尿素
30%(v/v) グリセロール
2%(w/v) SDS
2.5%(w/v) ヨードアセトアミド
【0149】
2次元目のSDS−PAGE
本実施例においては、電気泳動機器としてlife technologies社製のXCell SureLock Mini-Cellを使用した。2次元目泳動用ゲルはlife technologies社製NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gelsを使用した。また、以下の組成の泳動用緩衝液を調製し、使用した。
50mM MOPS
50mM Tris塩基
0.1%(w/v) SDS
1mM EDTA
【0150】
また、本実施例においては泳動用緩衝液に0.5%(w/v)のアガロースS(ニッポンジーン社製)と適量のBPB(ブロモフェノールブルー)を溶解させた接着用アガロース溶液を使用した。
【0151】
SDS−PAGEのウェル中を十分に上記泳動用緩衝液で洗浄した後、当該洗浄に用いた緩衝液を取り除いた。次に、ウェルの中に充分に溶解させた接着用アガロース溶液を添加した。次に、SDS平衡化したゲルをアガロース中に浸漬させ、ピンセットでSDS平衡化したゲルと2次元目泳動用ゲルを密着させた。当該両ゲルが密着した状態でアガロースが充分に固まったのを確認し、200V定電圧で約45分間泳動を行った。
【0152】
ゲルの蛍光染色
SYPRO Ruby(life technologies社製)を用いてゲルの蛍光染色を行った。
【0153】
まず、使用する密閉容器を事前に98%(v/v)のエタノールで十分に洗浄した。SDS−PAGE機器から泳動後の2次元目泳動用ゲルを取り外して、洗浄した密閉容器におき、50%(v/v)メタノール及び7%(v/v)酢酸含有水溶液に30分間浸漬する処理を2回行った。その後、当該水溶液を水に置換し、10分間浸漬した。次に、2次元目泳動用ゲルを40mlのSYPRO Rubyに浸漬し、室温で一晩振とうした。次に、SYPRO Rubyを除き、2次元目泳動用ゲルを水で洗浄した後、10%(v/v)メタノール及び7%(v/v)酢酸含有水溶液で30分間振とうした。更に当該水溶液を水に置換し、30分以上振とうした。
【0154】
解析
上記一連の処理を施した2次元目泳動用ゲルをTyphoon9400(GE社製)を使用した蛍
光イメージのスキャンに供した。卵黄に含まれるタンパク質について、2次元電気泳動の結果を図1に示す(卵白についての結果は示さない)。ゲルの写真の左側には、分子量マーカーのバンドが見られ、バンドの位置が特定の分子量(KDa)を示す。
【0155】
実施例2:イムノブロットでの抗原確認(1)
イムノブロットでの抗原確認は、実施例1に記載した手順を「2次元目のSDS−PAGE」まで行った後、以下の「メンブレンへの転写」「イムノブロット」「解析」の操作を行うことにより行った。
【0156】
メンブレンへの転写
メンブレンへの転写は、以下の転写装置及び転写用緩衝液を用いて行った。
転写装置:XCell SureLock Mini-Cell およびXCell IIブロットモジュール(life technologies社製)
転写用緩衝液: NuPAGEトランスファーバッファー(×20)(life technologies社製)をmilliQ水で20倍希釈して使用した。
【0157】
具体的には以下の手順に従って二次元電気泳動ゲル中のタンパク質をメンブレン(PVDF膜)へ転写した。
【0158】
(1)PVDF膜を、100%メタノールに浸漬し、次にmilliQ水に浸漬し、その後、転写用緩衝液に移して、PVDF膜の親水化処理を行った。
(2)スポンジ、ろ紙、2次元目のSDS−PAGEが終わったゲル、親水化処理済みPVDF膜、ろ紙、スポンジの順でセットし、転写装置中、30V定電圧で1時間通電した。
【0159】
イムノブロット
メンブレンのイムノブロットを、1次抗体として卵に対するアレルギーを有する患者(患者1)の血清または非卵アレルギー被験者の血清を用いて行った。この卵アレルギーの患者は、鶏卵による食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)と診断された患者で
ある。なお、この患者は、プリックテストでは、生卵、ゆで卵、および温泉卵ともに陰性を示し、特異的IgE抗体検査でも、卵白、卵黄、オボムコイドについて陰性を示した。
【0160】
メンブレンのイムノブロットは、以下の手順に従って行った。
(1)転写したメンブレンを5%スキムミルク/PBST溶液(非イオン界面活性剤Tween 20を0.1%含むPBSバッファー)中、室温で1時間振とうした。
(2)1次抗体として、5%血清/5%スキムミルク/PBST溶液中、室温で1時間静置した。
(3)PBST溶液で洗浄した(5分×3回)。
(4)2次抗体として抗ヒトIgE−HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)を5%スキムミルク/PBST溶液で5000倍に希釈した溶液中、室温で1時間静置した。
(5)PBST溶液で洗浄した(5分×3回)。
(6)Pierce Western Blotting Substrate Plus(Thermo社製)で、5分間静置した。
【0161】
解析
上記一連の処理を施したメンブレンをTyphoon9500(GE社製)を使用した蛍光イメー
ジのスキャンに供した。
【0162】
卵アレルギー患者の血清を用いたイムノブロットを、対照である非卵アレルギー被験者の血清を用いたイムノブロットと比較した。生の卵黄に含まれるタンパク質について卵アレルギー患者の血清を用いたイムノブロット(図2)において、非卵アレルギー被験者の血清を用いた場合とは異なり、かつ公知の鶏卵アレルゲンタンパク質とは異なる3つのスポットが検出された。
【0163】
上記3つのスポットの分子量および等電点はそれぞれ以下の通りである(図3)。
スポット1:分子量20〜40kDa、pI4.0〜10.0
スポット2:分子量30〜60kDa、pI5.0〜10.0
スポット3:分子量35〜60kDa、pI5.0〜10.0
【0164】
実施例3:質量分析および抗原の同定(1)
実施例2の3つのスポットを生じる抗原について、質量分析によるアミノ酸配列の同定を行った。
【0165】
具体的には、以下の手順でタンパク質の抽出および質量分析を行った。
(1)生の鶏卵の卵黄について、実施例1及び2の手順に従ってタンパク質抽出、2次元電気泳動及びメンブレン転写を行い、0.008%Direct blue/40%エタノール・1
0%酢酸で振とうにより染色した。
(2)その後、40%エタノール・10%酢酸で5分間の処理を3回行って脱色し、水で5分間洗浄後、風乾した。
(3)目的のスポットをきれいなカッター刃で切り取り、遠心チューブに入れた。50μLのメタノールでメンブレン親水処理後、100μLの水で2回洗浄後遠心除去し、20μLの20mM NHHCO・50%アセトニトリルを加えた。
(4)1pmol/μLリシルエンドペプチダーゼ(WAKO)1μLを加え、37℃で60分間静置した後、溶液を新しい遠心チューブに回収した。20μLの20mM NHHCO・70%アセトニトリルをメンブレンに加え、室温にて10分間浸し、さらに回収した。0.1%ギ酸、4%アセトニトリル10μLで溶解し、チューブに移した。
(5)回収した溶液を減圧乾燥した後、A液(0.1%ギ酸、4%アセトニトリル溶液)15μlで溶解し、質量分析(ESI-TOF6600, AB Sciex社製)を行った。
(6)質量分析計から得られた質量データに基づくタンパク質の同定は、NCBIまたはUniProtをサーチすることで行った。
【0166】
結果
各スポットについて、質量分析を行ったところ、以下のアミノ酸配列が検出された。
スポット1:配列番号3〜11で示されるアミノ酸配列
スポット2:配列番号9〜11、14、16で示されるアミノ酸配列
スポット3:配列番号19〜45で示されるアミノ酸配列
【0167】
さらに、各スポットについて、質量分析計から得られた質量データをスポット1および2についてはNCBIで、スポット3についてはUniProtで解析したところ、それぞれのスポットは以下のタンパク質であることが同定された。
スポット1:ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)(アミノ酸配列:NCBIアクセッション番号XP_015146355、それをコードする塩基配列:GenBankアクセッション番号XM_015290869.1)のC末端部分(アミノ酸配列:配列番号2、それをコードする塩基配列:配列番号
1)
スポット2:ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)(アミノ酸配列:NCBIアクセッション番号XP_015146355、それをコードする塩基配列:GenBankアクセッション番号XM_015290869.1)のC末端部分(アミノ酸配列:配列番号13、それをコードする塩基配列:配列番
号12)
スポット3:ビテロゲニン−1(Vitellogenin-1)(アミノ酸配列:UniProtアクセッシ
ョン番号P87498、それをコードする塩基配列:ENA(EMBL)アクセッション番号 D89547.1)の中央部分または、リポビテリン−1(Lipovitelin-1)のC末端部分(アミノ酸配列:配列番号18、それをコードする塩基配列:配列番号17)
【0168】
実施例4:イムノブロットでの抗原確認(2)
実施例2と同様に、別の卵アレルギー患者3名(患者2、患者3、患者4)の血清を用いてイムノブロットでの抗原確認を行った。生の卵黄に含まれるタンパク質について卵アレルギー患者の血清を用いたイムノブロット(患者2について図4、患者3について図5、患者4について図6)において、非卵アレルギー被験者の血清を用いた場合とは異なり、かつ公知の鶏卵アレルゲンタンパク質とは異なるスポットが検出された。具体的には、患者2についてスポット4〜8が、患者3についてスポット9および10が、患者4につ
いてスポット11が検出された。
【0169】
上記スポット4〜11の分子量および等電点はそれぞれ以下の通りである(図4〜6)。
スポット4:分子量20〜50kDa、pI3.0〜8.0
スポット5、6:分子量80〜260kDa、pI1.0〜8.0
スポット7:分子量110〜300kDa、pI3.0〜8.0
スポット8:分子量160〜550kDa、pI3.0〜8.0
スポット9:分子量20〜50kDa、pI7.0〜11.0
スポット10:分子量20〜50kDa、pI7.0〜11.0
スポット11:分子量15〜40kDa、pI6.0〜11.0
【0170】
実施例5:質量分析および抗原の同定(2)
実施例4のスポット4〜11を生じる抗原について、質量分析によるアミノ酸配列の同定を、実施例3と同様に行った。
【0171】
各スポットについて、質量分析を行ったところ、以下のアミノ酸配列が検出された。
スポット4:配列番号48〜57で示されるアミノ酸配列
スポット5、6:配列番号60〜104で示されるアミノ酸配列
スポット7:配列番号107〜150で示されるアミノ酸配列
スポット8:配列番号153〜235で示されるアミノ酸配列
スポット9:配列番号238〜249で示されるアミノ酸配列
スポット10:配列番号252〜260で示されるアミノ酸配列
スポット11:配列番号263〜271で示されるアミノ酸配列
【0172】
さらに、各スポットについて、質量分析計から得られた質量データをNCBIで解析したところ、それぞれのスポットは以下のタンパク質であることが同定された。
スポット4:ビテロゲニン−3(Vitellogenin-3)(アミノ酸配列:NCBIアクセッション番号XP_015146355、それをコードする塩基配列:GenBankアクセッション番号XM_015290869.1)(アミノ酸配列:配列番号47、それをコードする塩基配列:配列番号46)
スポット5、6:ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)(アミ
ノ酸配列:NCBIアクセッション番号NP_001026447.1、それをコードする塩基配列:GenBankアクセッション番号NM_001031276.1)(アミノ酸配列:配列番号59、それをコードす
る塩基配列:配列番号58)
スポット7:ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)(アミノ酸
配列:NCBIアクセッション番号NP_001026447.1、それをコードする塩基配列:GenBankア
クセッション番号NM_001031276.1)(アミノ酸配列:配列番号106、それをコードする塩基配列:配列番号105)
スポット8:アポリポプロテイン B プレカーサー(Apolipoprotein B precursor)(アミノ酸配列:NCBIアクセッション番号NP_001038098.1、それをコードする塩基配列:GenBankアクセッション番号NM_001044633.1)(アミノ酸配列:配列番号152、それをコー
ドする塩基配列:配列番号151)
スポット9:アポリポプロテイン B プレカーサー(Apolipoprotein B precursor)(アミノ酸配列:NCBIアクセッション番号NP_001038098.1、それをコードする塩基配列:GenBankアクセッション番号NM_001044633.1)(アミノ酸配列:配列番号237、それをコー
ドする塩基配列:配列番号236)
スポット10:アポリポプロテイン B プレカーサー(Apolipoprotein B precursor)(アミノ酸配列:NCBIアクセッション番号NP_001038098.1、それをコードする塩基配列:GenBankアクセッション番号NM_001044633.1)(アミノ酸配列:配列番号251、それをコ
ードする塩基配列:配列番号250)
スポット11:ビテロゲニン−2 プレカーサー(Vitellogenin-2 precursor)(アミノ
酸配列:NCBIアクセッション番号NP_001026447.1、それをコードする塩基配列:GenBank
アクセッション番号NM_001031276.1)(アミノ酸配列:配列番号262、それをコードする塩基配列:配列番号261)
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明により、卵に対するアレルギーの新規抗原、卵に対するアレルギーの診断方法および診断キット、当該抗原を含む医薬組成物、当該抗原が除去又は低減された卵、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥、ならびに当該抗原が除去又は低減された卵加工品の製造方法を提供することができる。本発明はさらに、対象物における卵抗原の有無を判定するためのテスターを提供することができる。
【要約】
本発明は、卵に対するアレルギーの新規抗原、卵に対するアレルギーの診断方法および診断キット、当該抗原を含む医薬組成物、当該抗原が除去又は低減された卵、卵加工品または当該卵を産む若しくは当該卵から生まれた鳥、当該抗原が除去又は低減された卵加工品の製造方法、ならびに対象物における卵抗原の有無を判定するためのテスターを提供する。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]