(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6579462
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】コーティング液貯蔵体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20190912BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20190912BHJP
D06M 11/42 20060101ALI20190912BHJP
D06M 13/165 20060101ALI20190912BHJP
D06M 13/507 20060101ALI20190912BHJP
B65D 75/04 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
B05D1/28
B05C1/02 101
D06M11/42
D06M13/165
D06M13/507
B65D75/04
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-106636(P2019-106636)
(22)【出願日】2019年6月7日
【審査請求日】2019年6月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595016440
【氏名又は名称】株式会社アイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【弁理士】
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】室川 敏治
【審査官】
清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−222965(JP,A)
【文献】
特開2009−270208(JP,A)
【文献】
特表2010−530016(JP,A)
【文献】
特開2000−248298(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/098309(WO,A1)
【文献】
特開2013−142215(JP,A)
【文献】
特表2013−520584(JP,A)
【文献】
野本豊和、外4名,抗菌ナノファイバーシートに含まれる微量な銀のシンクロトロン光による評価,あいち産業科学技術総合センター 研究報告 2016,2016年,p.6−9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
C09D 1/00−10/00
101/00−201/10
C03C 15/00−23/00
B05C 1/02
D06M 11/42
13/165
13/507
B65D 75/04
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材に、アルコール系の溶剤にナノ銀粒子を分散させたナノ銀粒子分散液を含浸させる工程と、
上記ナノ銀粒子分散液を含浸させた上記基材を乾燥させて上記溶剤を除去することによりナノ銀粒子担持基材を形成する工程と、
上記ナノ銀粒子担持基材にジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液を含浸させた状態で上記ナノ銀粒子担持基材を容器に密封する工程と、
を有するコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項2】
上記基材はシート状である請求項1記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項3】
上記基材は50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のポリアミドとからなるマイクロファイバー(ポリエステルとポリアミドとの総和は100重量%)を少なくとも主成分として含む請求項1または2記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項4】
上記溶剤は界面活性剤を含有する請求項1〜3のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項5】
上記溶剤はエタノールである請求項1〜4のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項6】
上記ナノ銀粒子担持基材を上記容器に入れ、上記容器に上記コーティング液を注入した後に上記容器を密封する請求項1〜5のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項7】
上記容器はアルミニウムパックである請求項1〜6のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項8】
上記コーティング液は、30重量%以上70重量%以下のジブチルエーテルと30重量%以上70重量%以下のケイ素化合物とを含む請求項1〜7のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コーティング液貯蔵体の製造方法、ナノ銀粒子担持基材の製造方法およびナノ銀粒子担持基材に関し、例えば、スマートフォンのディスプレイの表面に保護および抗菌用のコーティングを行うのに用いて好適なコーティング液貯蔵体の製造方法およびこのコーティング液貯蔵体の製造に用いて好適なナノ銀粒子担持基材の製造方法およびナノ銀粒子担持基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンなどの携帯電話機においては、ディスプレイの表面に保護用のコーティングを行った上で使用されることが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、何らかの原因によりディスプレイの表面の保護用コーティング皮膜に傷が付いたり剥がれたりした時には、ユーザーが保護用コーティング皮膜の修復を行うことは困難であり、そのまま使用するか、携帯電話機を買い換えるしかなかった。
【0004】
本発明者は、このような課題を解決するために、マイクロファイバーを主成分として含むクロスに、ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液を含浸させたコーティング液貯蔵クロスを提案し、携帯電話機あるいはスマートフォンのディスプレイ、パーソナルコンピュータのディスプレイ、眼鏡のレンズなどの表面改質用として既に商品化に成功している(例えば、特許文献2参照。)。このコーティング液貯蔵クロスによれば、ユーザーなどが、携帯電話機のディスプレイなどの、保護用コーティングを行う各種の物品の表面に容易にシリカガラスコーティングを行うことができ、しかも適度な柔軟性も有していて塗布時の効率が高く、さらに十分な量のコーティング液を貯蔵することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−196748号公報
【特許文献2】特許第6236592号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】[令和1年5月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.japan-ion.com/silver/agwater.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のコーティング液貯蔵クロスに対しては、市場では、シリカガラスコーティングを簡便にかつ効率的に行うことができるとして高い評価を受けているが、多くのユーザーから、コーティング皮膜に抗菌機能を付加することの要望が多く集まっている。
【0008】
しかしながら、本発明者の知見によれば、上記のコーティング皮膜に抗菌機能を簡単にしかも均一に付加する方法はこれまで提案されていなかった。
【0009】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、シリカガラスコーティング皮膜、より一般的には各種のコーティング皮膜に簡単にしかも均一に抗菌機能を付加することができ、しかも適度な柔軟性も有していて塗布時の効率が高く、十分な量のコーティング液を貯蔵することができるコーティング液貯蔵体の製造方法ならびにこのコーティング液貯蔵体の製造方法に用いて好適なナノ銀粒子担持基材の製造方法およびナノ銀粒子担持基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々の試みを行った。最初に、抗菌剤として一般的に知られている二酸化チタン粉末をコーティング液に含有させることを考え、このコーティング液を用いてコーティングを行った。しかし、二酸化チタン粉末は白色であり、コーティング液に含有させると白濁してしまい透明性が損なわれることが判明した。これは、透明性を重視する製品(スマートフォンや眼鏡など)には致命傷となる。また、二酸化チタンは光触媒であり、光がないところでは抗菌性を発揮できないことがネックとなった。
【0011】
そこで、新たな抗菌剤として銀粒子を使用することを考えた。例えば、シリカ系コーティング皮膜は一般的に厚さ200nm以下の薄膜であるため、粒径が大きい銀粒子では本来の表面改質効果を損なってしまうことが懸念された。このような理由により、銀粒子の中でもナノ銀粒子を使用することにした。
【0012】
ところが、市販のナノ銀粒子の粉末をシリカ系コーティング液に含有させることを試みたところ、ナノ銀粒子が液中に均一に分散しないだけでなく、含有させた後にナノ銀粒子が沈澱してしまうことが判明した。そこで、本発明者は、ナノ銀粒子の欠点である凝集性を解消し、溶剤内でナノ銀粒子が均一に分散する性能を持つ製品を探索したところ、ナノシルバー分散液(型番TX−EB14H)と呼ばれるナノ銀粒子分散液を探し出した(非特許文献1参照。)。このナノシルバー分散液は、エタノール溶剤に粒径7〜10nmのナノ銀粒子を重量比で1%(10000ppm)配合したものであり、安定剤としてポリマー系界面活性剤:ポリビニルピロリドン(両親媒性ポリマー)を加えたものである。ナノ銀粒子の含有量は5ppmで抗菌作用を持つとされている。そして、このナノシルバー分散液を特許文献2に記載のコーティング液貯蔵クロスに用いているジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液に含有させてクロスに含浸させることを試みた。しかし、このコーティング液で溶剤として使用されているジブチルエーテルとナノシルバー分散液で溶剤として使用されているエタノールとは溶解性が悪く、単純に含有させることはできなかった。そこで、窮余の策として、クロスにナノシルバー分散液を一旦染み込ませてから溶剤を蒸発させ、その後、シリカ系コーティング液をクロスに含浸させることを思い至った。この方法により、ナノ銀粒子が均一に分散して担持されたクロスにシリカ系コーティング液を含浸させることができ、このクロスを用いてコーティング液を塗布することにより、コーティング皮膜に抗菌機能を均一に付加することに成功した。
【0013】
この発明は、本発明者が独自に得た上記の知見に基づいて鋭意検討を行った結果、案出されたものである。
【0014】
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材に、溶剤にナノ銀粒子を分散させたナノ銀粒子分散液を含浸させる工程と、
上記ナノ銀粒子分散液を含浸させた上記基材を乾燥させて上記溶剤を除去することによりナノ銀粒子担持基材を形成する工程と、
上記ナノ銀粒子担持基材にコーティング液を含浸させた状態で上記ナノ銀粒子担持基材を容器に密封する工程と、
を有するコーティング液貯蔵体の製造方法である。
【0015】
マイクロファイバーは、好適には、ポリエステルとポリアミドとからなり、あるいは、100重量%のポリエステルからなる。ポリアミドには、大別して脂肪族ポリアミドと全芳香族ポリアミド(アラミド)とがあるが、柔軟性を重視する場合は好適には脂肪族ポリアミドが用いられる。脂肪族ポリアミドはナイロンと総称されるものが代表的である。ナイロンは、基本的にはどのようなものであってもよいが、具体的には、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などが挙げられる。コーティング液の溶剤の一例であるジブチルエーテルは常温で揮発性が高いが、マイクロファイバーの組成の選択により、コーティング液貯蔵体の常温保存も可能である。また、コーティング液が含浸された基材をコーティング面に接触させることで基材からコーティング液を染み出させて塗布するような使用方法では、基材の柔軟性が高いことが望まれる。このように、ジブチルエーテルのような常温で揮発性が高い溶剤を用いた場合においてもコーティング液貯蔵体の常温保存を可能とし、高い柔軟性も確保する観点からは、マイクロファイバーは、好適には、50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のポリアミドとからなり、より好適には、60重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上40重量%以下のポリアミドとからなり、さらに好適には、68重量%以上72重量%以下のポリエステルと28重量%以上32重量%以下のポリアミドとからなり、例えば70重量%のポリエステルと30重量%のポリアミドとからなる。100重量%のポリエステルからなるマイクロファイバーでも、同様な効果を得ることができる。基材の形状および大きさは、特に限定されず、含浸させるコーティング液の量、基材を容器に密封する場合は使用する容器の形状および大きさなどに応じて適宜選ばれるが、薄型容器を使用する場合には、シート状でその薄型容器中に収まる大きさに選ばれる。
【0016】
ナノ銀粒子分散液に含まれる溶剤は、特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば、エタノールなどのアルコール系の溶剤、水、ジブチルエーテルなどの揮発性溶剤などである。ナノ銀粒子分散液には、必要に応じて界面活性剤、特にポリマー系界面活性剤も含まれる。ナノ銀粒子は一般的には1nm以上200nm以下、好適には1nm以上150nm以下、より好適には1nm以上20nm以下、例えば7nm以上10nm以下の粒径の銀粒子を意味する。ナノ銀粒子分散液におけるナノ銀粒子の分散量は必要に応じて選ばれるが、例えば、重量比で0.1%以上2%以下、好適には0.5%以上1.5%以下、例えば1%(ナノ銀粒子分散液1リットル当たりナノ銀粒子を1g含有(10000ppm))程度である。
【0017】
ナノ銀粒子分散液を含浸させた基材を乾燥させて溶剤を除去する方法は、基材およびナノ銀粒子に損傷などを与えない限り特に限定されず必要に応じて選ばれるが、例えば、常温における自然乾燥、あるいは、常温または常温より高い温度での強制乾燥である。ナノ銀粒子分散液を含浸させた基材を乾燥させて溶剤を除去することにより、基材の全体にナノ銀粒子が均一に分散して担持されたナノ銀粒子担持基材が得られる。
【0018】
ナノ銀粒子担持基材に含浸させるコーティング液は、コーティングの目的やコーティングを行う物体などに応じて選択されるが、溶剤の制約がないので、種々のコーティング液を用いることができる。例えば、シリカコーティング用のコーティング液としては、ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液が挙げられる。このジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液は、好適には、30重量%以上70重量%以下のジブチルエーテルと30重量%以上70重量%以下のケイ素化合物とを含み、より好適には、40重量%以上60重量%以下のジブチルエーテルと40重量%以上60重量%以下のケイ素化合物とを含み、例えば、50重量%以上53重量%以下のジブチルエーテルと47重量%以上50重量%以下のケイ素化合物とを含み、いずれの場合も、ジブチルエーテルとケイ素化合物との総和は100重量%を超えない。ケイ素化合物は、コーティングに要求される機能に応じて適宜選択されるが、一般的にはポリシリケートが用いられ、好適には、エチルポリシリケートが用いられる。このコーティング液を用いることでシリカガラスのコーティングを行うことができる。このコーティング液は、必要に応じて、ジブチルエーテルおよびケイ素化合物以外の物質を含ませてもよい。コーティング液としては、フッ素系コーティング液、親水性コーティング液、撥水性コーティング液などを用いてもよい。
【0019】
ナノ銀粒子担持基材を密封する容器は、コーティング液に含まれる溶剤が容器内面と反応せず、コーティング液を安定に保持することができる材質で形成されているものであれば、特に限定されず、コーティング液貯蔵体の用途などに応じて形状、材質、大きさなどが適宜選択される。取り扱い、運搬の容易さ、保管のしやすさなどの観点から、容器は、好適には、薄型容器、例えばアルミニウムパックである。
【0020】
また、この発明は、
マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材に、溶剤にナノ銀粒子を分散させたナノ銀粒子分散液を含浸させる工程と、
上記ナノ銀粒子分散液を含浸させた上記基材を乾燥させて上記溶剤を除去する工程と、を有するナノ銀粒子担持基材の製造方法である。
【0021】
また、この発明は、
マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材に、溶剤にナノ銀粒子を分散させたナノ銀粒子分散液を含浸させる工程と、
上記ナノ銀粒子分散液を含浸させた上記基材を乾燥させて上記溶剤を除去する工程と、を実行することにより製造されるナノ銀粒子担持基材である。
【0022】
上記のナノ銀粒子担持基材の製造方法およびナノ銀粒子担持基材の各発明においては、特にその性質に反しない限り、上記のコーティング液貯蔵体の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ユーザーなどが、携帯電話機のディスプレイなどの、保護および抗菌用コーティングを行う各種の物品の表面に容易にシリカガラスコーティングなどの各種のコーティングを簡単に行うことができ、それによって物品の表面に形成されたコーティング皮膜に均一に抗菌機能を付加することができ、しかも適度な柔軟性も有していて塗布時の効率が高く、十分な量のコーティング液が貯蔵されたコーティング液貯蔵体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の一実施の形態によるアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体の製造方法を示す正面図および断面図である。
【
図2】この発明の一実施の形態によるアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体の製造方法を示す正面図および断面図である。
【
図3】この発明の一実施の形態によるアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体の製造方法を示す正面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。
【0026】
〈一実施の形態〉
[コーティング液貯蔵体の製造方法]
図1AおよびBに示すように、まず、必要な大きさのシート状の基材11を用意する。
図1Aは正面図、
図1Bは
図1AのB−B線に沿っての断面図である。ここでは、一例として、基材12が長方形である場合を考えるが、これに限定されるものではなく、基材11の平面形状は必要に応じて選ばれる。基材11は、マイクロファイバーを少なくとも主成分として含み、例えばこのマイクロファイバーのみからなる。マイクロファイバーは、例えば、ポリエステルとポリアミドとからなり、あるいは、100重量%のポリエステルからなる。マイクロファイバーは、例えば、優れた柔軟性を得るためには、好適には、50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のポリアミドとからなり、より好適には、60重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上40重量%以下のポリアミド、さらに好適には、65重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上35重量%以下のポリアミド、最も好適には、68重量%以上72重量%以下のポリエステルと28重量%以上32重量%以下のポリアミドとからなる(ポリエステルとポリアミドとの総和で100重量%)。
【0027】
次に、基材11の片面にナノ銀粒子分散液を塗布したり、容器に入れられたナノ銀粒子分散液に基材11を浸漬したり、容器に基材11を入れ、ナノ銀粒子分散液を注入して基材12に接触させたりすることにより、基材11にナノ銀粒子分散液を含浸させる。
【0028】
次に、ナノ銀粒子分散液を含浸させた基材11を常温または常温より少し高い温度で乾燥させることにより、ナノ銀粒子分散液に含まれる溶剤を蒸発させて除去する。こうして、
図2AおよびBに示すように、ナノ銀粒子担持基材12を形成する。
図2Aは正面図、
図2Bは
図2AのB−B線に沿っての断面図である。
【0029】
次に、ナノ銀粒子担持基材12の片面にコーティング液を塗布したり、容器に入れられたコーティング液にナノ銀粒子担持基材12を浸漬したり、容器にナノ銀粒子担持基材12を入れ、コーティング液を注入してナノ銀粒子担持基材12に接触させたりすることにより、ナノ銀粒子担持基材12にコーティング液を含浸させる。
【0030】
次に、アルミニウムパックに使用するアルミニウムシート上にナノ銀粒子担持基材12を載せ、その上からこのアルミニウムシートと同じ形状の別のアルミニウムシートを載せ、これらのアルミニウムシートの外周部を両面シールで密封する。あるいは、別の方法として、三方が密封されたアルミニウムパック用の袋の中にナノ銀粒子担持基材12を入れ、スポイトなどによりコーティング液をこの袋の中に注入し、この袋の口から内部の空気を押し出した後、その口をシーラーで密封する。コーティング液は袋の中でナノ銀粒子担持基材12の内部に吸い込まれて含浸される。こうして、
図3AおよびBに示すように、ナノ銀粒子担持基材12を密封するアルミニウムパック13が形成される。
図3Aは正面図、
図3Bは
図3AのB−B線に沿っての断面図である。
図3AおよびB中、アルミニウムパック13の外周部13aが両面シールされている。
【0031】
以上により、アルミニウムパック型の薄型のコーティング液貯蔵体が製造される。
【0032】
[実施例1]
基材11として、70重量%のポリエステルと30重量%のナイロンとからなる市販のマイクロファイバークロスを用いた。マイクロファイバークロスの大きさは20mm×20mm、厚さは0.6mmである。
【0033】
ナノ銀粒子分散液として非特許文献1に記載の市販のナノシルバー分散液を用いた。
【0034】
ナノ銀粒子分散液を上記のマイクロファイバークロスに0.1ml(0.1mgのナノ銀粒子を含有)含浸させた後、自然乾燥させることによりエタノールを除去した。こうして、ナノ銀粒子担持マイクロファイバークロスを作製した。
【0035】
コーティング液として、ポリアルキルシラザンとペルヒドロポリシラザンとから作製された市販のシリカ系コーティング溶剤(アートブリード株式会社製 型番olam60)を用いた。
【0036】
三方が密封された市販のアルミニウムパック用の袋の中に上記のナノ銀粒子担持マイクロファイバークロスを入れた後、スポイトにより0.7mlのコーティング液をこの袋の中に注入した。
【0037】
次に、この袋の口から内部の空気を押し出した後、その口をシーラーで密封し、アルミニウムパックとした。
【0038】
[実施例2]
実施例1と同様にしてナノ銀粒子担持マイクロファイバークロスを作製した。
【0039】
コーティング液として、市販のフッ素系コーティング溶剤(フロロテクノロジー株式会社製 型番FG5084)を用いた。
【0040】
三方が密封された市販のアルミニウムパック用の袋の中に上記のナノ銀粒子担持マイクロファイバークロスを入れた後、スポイトにより0.5mlのコーティング液をこの袋の中に注入した。
【0041】
次に、この袋の口から内部の空気を押し出した後、その口をシーラーで密封し、アルミニウムパックとした。
【0042】
[実施例3]
実施例1と同様にしてナノ銀粒子担持マイクロファイバークロスを作製した。
【0043】
コーティング液として、市販の親水性コーティング溶剤(大阪有機化学工業株式会社製 型番LAMBIC−771W)を用いた。
【0044】
三方が密封された市販のアルミニウムパック用の袋の中に上記のナノ銀粒子担持マイクロファイバークロスを入れた後、スポイトにより0.5mlのコーティング液をこの袋の中に注入した。
【0045】
次に、この袋の口から内部の空気を押し出した後、その口をシーラーで密封し、アルミニウムパックとした。
【0046】
[コーティング評価結果]
実施例1〜3の、コーティング液を含浸させたナノ銀粒子担持マイクロファイバークロスを使用してガラス板上にコーティングを行った。コーティング液の最大塗布面積を30cm四方と想定し、30cm四方に塗布した。
【0047】
自然落下菌を対象とした標準寒天培地シャーレに、コーティング液が塗布されてコーティング皮膜が形成されたガラス板とコーティング液を塗布しないガラス板とを接触させ培養したところ、コーティング液を塗布しないガラス板では菌群の発生が見られたが、コーティング皮膜が形成されたガラス板では菌群の発生が見られなかった。
【0048】
以上のように、この一実施の形態によれば、マイクロファイバーを主成分とする基材11にナノ銀粒子分散液を含浸させた後、基材11を乾燥させてナノ銀粒子分散液の溶剤を除去することによりナノ銀粒子が均一に分散して担持されたナノ銀粒子担持基材12を形成することができ、このナノ銀粒子担持基材12に、使用する溶剤に左右されることなくコーティング液を簡単に含浸させることができ、このコーティング液が含浸されたナノ銀粒子担持基材12をアルミニウムパック13に密封することにより、アルミニウムパック型コーティング液貯蔵体を製造することができる。そして、このアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体の、コーティング液が含浸されたナノ銀粒子担持基材12を用いて例えばスマートフォンなどの物品の表面のコーティングを行うことにより、ナノ銀粒子を均一に含むコーティング皮膜を形成することができる。これによって、コーティング皮膜に、使用するコーティング液によって得られる保護機能などに加えて、抗菌機能を均一に付加することができる。また、ナノ銀粒子担持基材12は使用する基材11により適度な柔軟性を有するため、コーティング液が含浸されたナノ銀粒子担持基材12をコーティング面に接触させることによりコーティング液を染み出させて塗布する使用方法では、塗布の効率の向上を図ることができる。また、特に、マイクロファイバーとして、50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のポリアミドとからなるもの、あるいは、100重量%のポリエステルからなるものを用いることにより、常温で長期間保存可能なアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体を実現することができる。さらに、このアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体によれば、ナノ銀粒子担持基材12、従って基材11の単位体積当たり十分な量のコーティング液を貯蔵することができる。
【0049】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0050】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構成、形状、材料、方法などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料、方法などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
11…基材、12…ナノ銀粒子担持基材、13…アルミニウムパック
【要約】
【課題】シリカガラスコーティング皮膜、より一般的には各種のコーティング皮膜に簡単にしかも均一に抗菌機能を付加することができ、しかも適度な柔軟性も有していて塗布時の効率が高く、十分な量のコーティング液を貯蔵することができるコーティング液貯蔵体の製造方法を提供する。
【解決手段】コーティング液貯蔵体の製造方法は、マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材に、エタノールなどの溶剤にナノ銀粒子を分散させたナノ銀粒子分散液を含浸させる工程と、ナノ銀粒子分散液を含浸させた基材を乾燥させて溶剤を除去することによりナノ銀粒子担持基材12を形成する工程と、ナノ銀粒子担持基材12にコーティング液を含浸させた状態でナノ銀粒子担持基材12をアルミニウムパック13に密封する工程と、を有する。
【選択図】
図3