【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1−1]塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
ITO付ガラス基板上に、感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、エッチングを行い、ストライプ状のパターンを形成した。このパターン形成したITO付きガラス基板を中性洗剤で洗浄後、超純水で超音波洗浄し、2−プロパノールにて煮沸後、UVオゾン処理を20分間行った。
このITO付きガラス基板上に、以下に示す条件にて、グローブボックス内にてスピンコート法により各層を成膜し、順に積層させた。
・電子注入層1(膜厚10nm):粒径10nmのZnO微粒子の2−エトキシエタノール分散液をスピンコートした後、100℃で5分間乾燥した。
・電子注入層2(膜厚10nm):ポリエチレンイミンエトキシレイティド(PEIE)(シグマアルドリッチジャパン社製)の2−エトキシエタノール溶液をスピンコートした後、100℃にて5分間乾燥した。
・発光層1(膜厚80nm):ポリ[(9,9−ジ−n−オクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−o−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル)](F8BT)(住友化学株式会社製)のp−キシレン溶液をスピンコートした後、130℃で10分間乾燥した。
・電荷発生層1(膜厚40nm):PEDOT:PSS(ヘレウス株式会社製Clevious
TMCH8000)をメタノール及びイソプロパノールを用いて体積比1:1:4で希釈し、この分散混合液をスピンコートした後、120℃にて10分間乾燥した。
・電荷発生層2(膜厚10nm):PEDOT:PSSを水酸化ナトリウム水溶液と混合してpH7に調整した後、イソプロパノールを用いて体積比1:4で希釈し、この分散混合液をスピンコートした後、120℃にて10分間乾燥した。
・電子注入層3(膜厚10nm):電子注入層1と同様にして形成した。
・電子注入層4(膜厚10nm):電子注入層2と同様にして形成した。
・発光層2(膜厚80nm):発光層1と同様にして形成した。
・ホール注入層1(膜厚40nm):PEDOT:PSSを、メタノール及びイソプロパノールを用いて体積比1:1:4で希釈し、この分散混合液をスピンコートした後、120℃にて10分間乾燥した。
この上に、アルミニウムを真空蒸着し、膜厚100nmの陰極を形成し、2つの発光ユニットを有する塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/Alである。
【0041】
[比較例1−1]第一発光ユニットのみの素子の作製
実施例1−1において、電子注入層3,4、発光層2及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例1−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層1のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0042】
[比較例1−2]第二発光ユニットのみの素子の作製
実施例1−1において、電荷発生層2、電子注入層3,4、発光層1及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例1−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層2のみ)のみの有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/Alである。
【0043】
上記実施例1−1及び比較例1−1,1−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図3に、輝度−電圧特性を示す。縦軸が輝度(cd/m
2)、横軸が駆動電圧(V)を表している。
図4に、外部量子効率−電流密度特性を示す。縦軸が外部量子効率(%)、横軸が電流密度(mA/cm
2)を表している。
また、表1に、輝度1000cd/m
2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
上記評価結果から、実施例1−1の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例1−1及び比較例1−2のほぼ合計値であり、マルチフォトンエミッション特性が認められた。
【0046】
[実施例1−2]発光色の異なる発光ユニットを積層した塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
実施例1−1において、発光層1で用いたF8BTに代えて、ポリフルオレン系青色蛍光ポリマー(住友化学株式会社社製)のp−キシレン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥し、第一発光ユニットとして膜厚70nmの発光層3を形成した。それ以外は実施例1−1と同様にして、塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/青色蛍光ポリマー/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/Alである。
【0047】
[比較例1−3]第一発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例1−2において、電子注入層3,4、発光層2及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例1−2と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層1のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/青色蛍光ポリマー/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0048】
上記実施例1−2及び比較例1−3,1−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図5に、ELスペクトル特性を示す。縦軸がEL相対強度(a.u.)、横軸が波長(nm)を表している。
実施例1−2において、第一発光ユニットの青色発光と第二発光ユニットの黄色発光がそれぞれ得られることが認められた。
【0049】
図6に、外部量子効率−電流密度特性を示す。
また、表2に、輝度1000cd/m
2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
上記評価結果から、実施例1−2の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例1−3及び比較例1−2のほぼ合計値であり、マルチフォトンエミッション特性が認められた。
【0052】
[実施例2−1]ホール輸送層を用いた塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
実施例1−1において、発光層1,2に代えて発光層4,5を形成し、また、発光層3の上にホール輸送層1を、発光層4の上にホール輸送層2を積層させ、それ以外は実施例1−1と同様にして、塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
発光層4,5及びホール輸送層1は、以下のようにして形成した。
・発光層4(膜厚70nm):ポリフルオレン系緑色蛍光ポリマーSGP2(住友化学株式会社製)のp−キシレン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥した。
・ホール輸送層1(膜厚10nm):テトラフェニルベンジジン含有ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(TPDPES)の1,4−ジオキサン溶液をスピンコートした後、120℃にて10分間乾燥した。
・発光層5(膜厚70nm):発光層4と同様にして形成した。
・ホール輸送層2(膜厚10nm):ホール輸送層1と同様にして形成した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/SGP2/TPDPES/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/SGP2/TPDPES/PEDOT:PSS/Alである。
【0053】
[比較例2−1]第一発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例2−1において、電子注入層3,4、発光層5、ホール輸送層2及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例2−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層4のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/SGP2/TPDPES/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0054】
[比較例2−2]第二発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例2−1において、電荷発生層2、電子注入層3,4、発光層4、ホール輸送層1及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例2−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層5のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/SGP2/TPDPES/PEDOT:PSS/Alである。
【0055】
上記実施例2−1及び比較例2−1,2−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図7に、輝度−電圧特性を示す。
図8に、外部量子効率−電流密度特性を示す。
また、表3に、輝度1000cd/m
2時及び5000cd/m
2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0056】
【表3】
【0057】
上記評価結果から、実施例2−1の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例2−1及び比較例2−2のほぼ合計値であり、マルチフォトンエミッション特性が認められた。
【0058】
[実施例3−1]リン光発光層を有する塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
実施例1−1において、発光層1,2に代えて発光層6,7を形成し、それ以外は実施例1−1と同様にして、塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
発光層6,7は、以下のようにして形成した。
・発光層6(膜厚70nm):ポリ−N−ビニルカルバゾール(PVK)、10wt%の4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)、10wt%の2,6−ビス[3−(カルバゾール−9−イル)フェニル]ピリジン(26DCzppy)、10wt%のトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(Ir(ppy)
3)のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥した。
・発光層7(膜厚70nm):発光層6と同様にして形成した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)
3/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)
3/PEDOT:PSS/Alである。
【0059】
[比較例3−1]第一発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例3−1において、電子注入層3,4、発光層7及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例3−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層6のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)
3/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0060】
[比較例3−2]第二発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例3−1において、電子注入層3,4、発光層6及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例3−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層7のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)
3/PEDOT:PSS/Alである。
【0061】
上記実施例3−1及び比較例3−1,3−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図9に、輝度−電圧特性を示す。
図10に、外部量子効率−電流密度特性を示す。
また、表4に、輝度1000cd/m
2時及び5000cd/m
2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0062】
【表4】
【0063】
上記評価結果から、実施例3−1の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例3−1及び比較例3−2のほぼ合計値であり、リン光材料を用いた素子においてもマルチフォトンエミッション特性が認められた。
【0064】
[実施例4−1]発光色の異なるリン光発光層を有する塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
実施例1−1において、発光層1,2に代えて発光層8,9を形成し、それ以外は実施例1−1と同様にして、塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
発光層8,9は、以下のようにして形成した。
・発光層8(膜厚70nm):PVK、10wt%TCTA、10wt%26DCzppy、10wt%Ir(ppy)
3)、1wt%のトリス(2−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Ir(phq)
3)のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥した。
・発光層9(膜厚70nm):PVK、10wt%TCTA、10wt%26DCzppy)、10wt%のトリス(2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン)イリジウム(III)(Ir(Fppy)
3)のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)
3:Ir(phq)
3/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(Fppy)
3/PEDOT:PSS/Alである。
【0065】
[比較例4−1]第一発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例4−1において、電子注入層3,4、発光層9及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例4−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層8のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)
3:Ir(phq)
3/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0066】
[比較例4−2]第二発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例4−1において、電子注入層3,4、発光層8及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例4−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層9のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(Fppy)
3/PEDOT:PSS/Alである。
【0067】
上記実施例4−1及び比較例4−1,4−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図11に、ELスペクトル特性を示す。
図12に、外部量子効率−電流密度特性を示す。
また、表5に、輝度1000cd/m
2時及び5000cd/m
2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0068】
【表5】
【0069】
上記評価結果から、実施例4−1の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例4−1及び比較例4−2のほぼ合計値であり、発光色の異なるリン光材料を用いた素子においてもマルチフォトンエミッション特性が認められた。