特許第6579471号(P6579471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6579471有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579471
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20190912BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190912BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20190912BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   H05B33/12 C
   H05B33/14 A
   H05B33/28
   H05B33/10
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-515805(P2016-515805)
(86)(22)【出願日】2014年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2014062008
(87)【国際公開番号】WO2015166562
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2017年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】夫 勇進
(72)【発明者】
【氏名】千葉 貴之
(72)【発明者】
【氏名】城戸 淳二
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−038636(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/122182(WO,A1)
【文献】 特開2004−095546(JP,A)
【文献】 特開2006−019678(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/160714(WO,A1)
【文献】 特開2015−046596(JP,A)
【文献】 特開2014−137888(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/068970(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−33/28
H01L 51/50−51/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の電極間に、少なくとも1つの発光層を有する発光ユニットが中間層を介して複数積層されたマルチフォトンエミッション有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
基板上に、陰極、中間層を介して複数積層された発光ユニット、陽極の順に積層された構成からなるインバーテッド構造を有し、
前記中間層が、陰極側の電荷発生層と、陽極側の電子注入層との塗布積層からなり、
前記電荷発生層が、導電性高分子を1層又は複数層含有しており、
前記導電性高分子が、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリアリールアミン誘導体のうちのいずれかであり、ドープされたn型又はp型半導体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記電子注入層が、金属酸化物微粒子又は極性高分子を1層又は複数層含有していることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記金属酸化物微粒子が、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ズズのうちのいずれかからなることを特徴とする請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記極性高分子が、ポリエチレンイミン誘導体であることを特徴とする請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記発光ユニットが、蛍光又はリン光発光するものであることを特徴とする請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記陰極及び前記陽極の少なくともいずれか一方が透明であることを特徴とする請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記陰極及び前記陽極が、金属、金属酸化物及び導電性高分子のうちのいずれかからなることを特徴とする請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記金属が、アルミニウム、銀及び金のうちのいずれかであることを特徴とする請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記金属酸化物が、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)及びガリウム添加酸化亜鉛(GZO)のうちのいずれかであることを特徴とする請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記導電性高分子が、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリアリールアミン誘導体のうちのいずれかであり、ドープされたn型又はp型半導体であることを特徴とする請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する方法であって、
前記中間層を、溶媒を用いて塗布積層した後、130℃以下で乾燥させて成膜する工程を備えていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布法により作製することができるマルチフォトンエミッション有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発光ユニットを電荷発生層(中間層)を介して直列に接続したマルチフォトンエミッション有機EL素子は、同一輝度で通常の有機EL素子と比較した場合、各ユニット当たりの電流量を低減させることで、素子の耐久性を向上させることができる。また、電流値を一定とした場合、各ユニットからそれぞれの輝度が得られるため、効率面においても有効な手段である。
【0003】
しかしながら、有機材料の多段積層化や、電荷発生層として金属酸化物又は金属の使用が必要となるため、塗布法を用いた素子作製が困難であり、各構成層の積層工程には、一般に、真空蒸着法が用いられている。
【0004】
近年、蒸着法と塗布法を組み合わせたマルチフォトンエミッション有機EL素子の製造方法も提案されており、例えば、特許文献1に、電荷発生層(V25)と電子注入層(Li)からなる中間層を真空蒸着にて成膜し、各発光ユニットを塗布法にて成膜することが記載されている。
【0005】
一方、発光ユニット及び中間層のいずれも塗布成膜した素子も開示されている。例えば、特許文献2には、ジペンタエリシリトールヘキサアクリレートを熱架橋材料として用い、発光層、電荷発生層及び電子注入層を200℃にて加熱焼成することで不溶化することが記載されている。また、特許文献3には、電荷発生材料や電子注入層に光架橋性基を導入し、低圧水銀灯(15mW/cm2)照射下、120℃にて加熱焼成することで塗布法による多段積層化を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−192474号公報
【特許文献2】特開2009−152015号公報
【特許文献3】特開2011−86442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような方法は、複数の異なる成膜プロセスを繰り返す必要があるため、連続的な素子作製が困難であり、高コスト化の要因となる。また、水分や酸素に対して不安定である電子注入金属材料に対して塗布成膜を行うため、素子特性の低下が懸念される。
【0008】
また、上記特許文献2に記載されているような方法では、塗布法のみで各構成層を作製することが可能となるが、発光層への架橋材料の添加は、発光効率の低下や素子の高電圧化を引き起こす要因となる。また、加熱温度が200℃と高温であり、使用する材料や基板が耐熱性のあるものに限定される等の課題を有している。
さらに、上記特許文献3に記載されているような方法では、架橋反応による輸送特性及び注入特性の低下が、素子特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
このように、従来の方法では、素子作製の簡略化と高効率化を両立することは困難であった。また、架橋性材料を使用せずに、電荷発生層及び電子注入層を塗布法にて成膜し、リン光材料を適用したという先行技術は報告されていない。
【0010】
したがって、マルチフォトンエミッション有機EL素子を、塗布法で簡便に、かつ、素子特性を低下させることなく形成するための中間層の好適な材料や層構成を見出すことが求められている。
【0011】
本発明は、上記技術課題を解決するためになされたものであり、マルチフォトンエミッション有機EL素子において、電荷発生層を含む中間層の塗布積層を簡略化することにより、すべての構成層を効率的に低コストで、かつ、素子特性を低下させることなく、塗布法で簡便に形成することができる有機EL素子及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る有機EL素子は、1対の電極間に、少なくともつの発光層を有する発光ユニットが中間層を介して複数積層されたマルチフォトンエミッション有機エレクトロルミネッセンス素子であって、基板上に、陰極、中間層を介して複数積層された発光ユニット、陽極の順に積層された構成からなるインバーテッド構造を有し、前記中間層が、陰極側の電荷発生層と、陽極側の電子注入層との塗布積層からなり、前記電荷発生層が、導電性高分子を1層又は複数層含有しており、前記導電性高分子が、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリアリールアミン誘導体のうちのいずれかであり、ドープされたn型又はp型半導体であることを特徴とする。
このようなインバーテッド構造とすることにより、マルチフォトンエミッション有機EL素子の積層構造を塗布法により簡便に構成することが可能となる。
【0013】
このような電荷発生層によれば、塗布成膜が可能となり、かつ、成膜時に高温加熱を要することなく成膜することができる。
【0014】
このような導電性高分子によれば、塗布成膜によりホール注入特性に優れた電荷発生層を構成し得る。
【0015】
また、前記電子注入層が、金属酸化物微粒子又は極性高分子を1層又は複数層含有していることが好ましい。
このような電子注入層によれば、前記中間層が、隣接する上層の成膜性を向上させ、かつ、隣接する下層への溶媒の浸透を防止する効果を奏するものとなる。
【0016】
金属酸化物微粒子の場合は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ズズのうちのいずれかからなり、また、極性高分子の場合は、ポリエチレンイミン誘導体であることが好ましい。
【0017】
また、前記発光ユニットは、蛍光又はリン光発光するもののいずれでもよい。
前記電子注入層が、電荷発生層からの良好な電子注入特性を発揮するため、いずれの発光材料でも好適に適用し得る。
【0018】
さらに、光取り出し面として、前記陰極及び前記陽極の少なくともいずれか一方が透明であることが好ましい。
【0019】
前記陰極及び前記陽極は、金属、金属酸化物及び導電性高分子のうちのいずれかからなることが好ましい。
金属の場合は、アルミニウム、銀及び金のうちのいずれかであり、また、金属酸化物の場合は、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)及びガリウム添加酸化亜鉛(GZO)のうちのいずれかであり、また、導電性高分子の場合は、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリアリールアミン誘導体のうちのいずれかであり、ドープされたn型又はp型半導体であることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る有機EL素子の製造方法は、上記の有機EL素子を製造する方法であって、前記中間層を、溶媒を用いて塗布積層した後、130℃以下で乾燥させて成膜する工程を備えていることを特徴とする。
前記中間層は、130℃以下の低温処理で成膜することができるため、マルチフォトンエミッション有機EL素子を塗布法で効率的に低コストで製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マルチフォトンエミッション有機EL素子における電荷発生層を含む中間層を簡便に塗布積層することができるため、すべての構成層を塗布法により形成することが可能となる。
したがって、本発明における中間層を適用することにより、多段積層が必要なマルチフォトンエミッション有機EL素子を、塗布法で効率的に低コストで製造することが可能となり、さらに、素子の高効率化も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】インバーテット構造のマルチフォトンエミッション有機EL素子の層構造を模式的に示した概略断面図である。
図2】標準構造のマルチフォトンエミッション有機EL素子の層構造を模式的に示した概略断面図である。
図3】実施例1−1及び比較例1−1,1−2の素子の輝度−電圧特性を示したグラフである。
図4】実施例1−1及び比較例1−1,1−2の素子の外部量子効率−電流密度特性を示したグラフである。
図5】実施例1−2及び比較例1−3,1−2の素子のELスペクトル特性を示したグラフである。
図6】実施例1−2及び比較例1−3,1−2の素子の外部量子効率−電流密度特性を示したグラフである。
図7】実施例2−1及び比較例2−1,2−2の素子の輝度−電圧特性を示したグラフである。
図8】実施例2−1及び比較例2−1,2−2の素子の外部量子効率−電流密度特性を示したグラフである。
図9】実施例3−1及び比較例3−1,3−2の素子の輝度−電圧特性を示したグラフである。
図10】実施例3−1及び比較例3−1,3−2の素子の外部量子効率−電流密度特性を示したグラフである。
図11】実施例4−1及び比較例4−1,4−2の素子のELスペクトル特性を示したグラフである。
図12】実施例4−1及び比較例4−1,4−2の素子の外部量子効率−電流密度特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参照して、より詳細に説明する。
本発明に係る有機EL素子は、1対の電極間に、少なくとも1つの発光層を有する発光ユニットが中間層を介して複数積層されたマルチフォトンエミッション有機EL素子である。そして、前記中間層が、陰極側の電荷発生層と、陽極側の電子注入層との塗布積層からなり、インバーテッド構造を有していることを特徴としている。前記インバーテッド構造は、具体的には、基板上に、陰極、中間層を介して複数積層された発光ユニット、陽極の順に積層された構成である。
【0024】
図1に、インバーテッド構造のマルチフォトンエミッション有機EL素子の層構成の一例を示す。また、図2に、標準構造のマルチフォトンエミッション有機EL素子の層構成の一例を示す。
図2に示すような標準構造の素子においては、ガラス基板11上のITO透明電極を陽極12とし、その上に、第一発光ユニット13、電荷発生層15、電子注入層14、第二発光ユニット16が積層され、その上に、陰極17としてアルミニウム反射電極が形成されている。
これに対して、インバーテッド構造の素子は、図1に示すように、ガラス基板1上の陰極2にITO透明電極を用い、その上に、第一発光ユニット3、電荷発生層4、電子注入層5、第二発光ユニット6が積層され、その上に、陽極7としてアルミニウム反射電極が形成されている。
【0025】
マルチフォトンエミッション有機EL素子を塗布法により作製する場合、電荷発生層を含む中間層が、その下層(第一発光ユニット)を再溶解しない溶媒で塗布成膜可能であり、かつ、該中間層の上層(第二発光ユニット)の塗布に用いられる溶媒に不溶であることが求められる。さらに、安定的に素子を作製するためには、前記中間層がその上層(第二発光ユニット)の成膜性を向上させ、かつ、該中間層の下層(第一発光ユニット)への溶媒の浸透が防止されることが望ましい。
【0026】
本発明は、マルチフォトンエミッション有機EL素子を上記のようなインバーテッド構造とすることにより、発光ユニットの上に電荷発生層を塗布成膜し、その上に、大気中の酸素や水分の影響を受けやすい電子注入層を連続的に塗布成膜することが可能となり、電荷発生層及び電子注入層からなる中間層を塗布積層することを可能とするものである。
【0027】
本発明に係る有機EL素子においては、電荷発生層が導電性高分子を1層又は複数層含有していることが好ましい。
さらに、発光ユニット上に塗布成膜可能な電荷発生層を構成する導電性高分子としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリアリールアミン誘導体のうちのいずれかであり、ドープされたn型又はp型半導体であることが好ましい。
【0028】
前記導電性高分子のうち、特に、水溶性であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)が好適に用いられる。PEDOT:PSSは、塗布成膜に一般に用いられる有機溶媒であるアルコール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム及びクロロベンゼンに不溶であることから、その上の有機膜を、有機溶媒を用いて塗布積層することができる。
また、PEDOT:PSSは、良好なホール注入特性を有するものであり、電荷発生層に用いた場合、第一発光ユニットへの良好なホール注入特性が得られる。
なお、PEDOT:PSSは、水分散液であり、表面が疎水性である有機膜上への塗布成膜が困難であるため、メタノールやイソプロパノール等のアルコール系溶媒で希釈することにより、有機膜上への濡れ性を改善し、良好な成膜性を得ることができる。さらに、熱や光架橋性材料を用いることなく、容易に多積層化させることが可能となる。
また、PEDOT:PSSは、強い酸性(pH1〜2)を示すため、耐酸性に劣る材料かならなる電子注入層をその上に積層させることは困難である。この場合は、水酸化ナトリウム水溶液で中和(pH6〜8)し、酸性のPEDOT:PSS膜上に中性のPEDOT:PSSをスピンコートすることにより、耐酸性が十分でない電子注入層を積層させることが可能となる。
【0029】
前記電荷発生層に塗布積層される電子注入層は、金属酸化物微粒子又は極性高分子を1層又は複数層含有していることが好ましい。
前記金属酸化物微粒子としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ズズからなるものが好適に用いられる。このような金属酸化物微粒子は、塗布成膜に一般に用いられる有機溶媒であるアルコール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム及びクロロベンゼンに不溶であることから、隣接する有機膜を有機溶媒を用いて塗布積層することができる。
また、前記極性高分子としては、例えば、下記(化1)に示すようなポリエチレンイミン誘導体が好適に用いられる。ポリエチレンイミン誘導体等の極性高分子は、水溶性であり、塗布成膜に一般に用いられる有機溶媒であるトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム及びクロロベンゼンに不溶であることから、前記金属酸化物微粒子と同様に、隣接する有機膜を有機溶媒を用いて塗布積層することができる。
【0030】
【化1】
【0031】
前記中間層における電子注入層は、特に、酸化亜鉛微粒子/ポリエチレンイミン誘導体から構成されることが好ましい。電子注入層をこのような複数層の構成とすることにより、電荷発生層から第二発光ユニットへの良好な電子注入特性が得られる。これは、極性高分子であるポリエチレンイミン誘導体が酸化亜鉛微粒子の仕事関数を低エネルギー側へと変化させ、電子の注入障壁がより緩和することによる。
このように電子注入特性が向上することにより、発光ユニットは、蛍光材料による発光のみならず、リン光材料により発光するものにも好適に適用することができる。
【0032】
上記のような電荷発生層及び電子注入層により構成される中間層は、第二発光ユニットの塗布形成時に用いられる溶媒が第一発光ユニットにまで浸透することを抑制する効果を奏するものであり、これにより、複数の発光ユニットを有するマルチフォトン構造の形成が容易となる。
【0033】
また、前記中間層を構成する材料のうち、PEDOT:PSS、酸化亜鉛微粒子、ポリエチレンイミン誘導体等は、成膜時に100〜120℃と比較的低温で乾燥させることができるため、有機材料への熱的な悪影響が抑制され、素子基板として樹脂製等のフレキシブル基板の適用も可能となる。
【0034】
なお、本発明に係る有機EL素子は、陰極又は陽極のいずれから光を取り出すことができるものであってもよく、陰極及び陽極の少なくともいずれか一方が透明であることが好ましい。
前記陰極及び前記陽極の構成材料は、金属、金属酸化物及び導電性高分子のうちのいずれかであることが好ましい。
具体的には、金属としては、アルミニウム、銀又は金、また、金属酸化物としては、ITO、IZO、酸化亜鉛、AZO又はGZOが挙げられる。また、導電性高分子としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリアリールアミン誘導体のうちのいずれかであって、ドープされたn型又はp型半導体が挙げられる。
【0035】
また、上記のような本発明に係る有機EL素子の製造方法においては、前記中間層を、溶媒を用いて塗布積層した後、130℃以下で乾燥させて成膜する工程を経ることが好ましい。
上述したように、前記電荷発生層及び電子注入層からなる中間層は、成膜時に130℃以下で乾燥させることができるため、熱処理温度は比較的低温で行うことができる。これにより、有機材料への熱的な悪影響が抑制され、かつ、マルチフォトンエミッション有機EL素子を塗布法で効率的に低コストで製造することが可能となる。また、高温熱処理工程には適用することが困難であるフレキシブル基板を用いた素子作製にも適用することができる。
【0036】
上記のような本発明に係る有機EL素子の中間層以外の層構造は、マルチフォトンエミッション有機EL素子の公知の構成とすることができる。例えば、陰極/第一発光ユニット間には、電子注入層を設けてもよく、また、第二発光ユニット/陽極間には、ホール注入層を設けてもよい。さらに、ホール輸送層、電子輸送層、ホール輸送発光層、電子輸送発光層等をも含む公知の積層構造であってもよい。
なお、発光層を含む発光ユニットの数は、2つに限られず、複数であればいくつでもよい。
【0037】
前記中間層以外の層の構成材料は、特に限定されるものではなく、公知のものから適宜選択して用いることができ、低分子系又は高分子系のいずれであってもよい。
また、前記有機EL素子の各構成層の膜厚は、各層同士の適応性や求められる全体の層厚さ等を考慮して、適宜状況に応じて定められるが、通常、0.5nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
【0038】
前記中間層以外の各構成層の形成方法は、蒸着法、スパッタリング法等のドライプロセスでもよいが、本発明は、特に、すべての層を塗布法により形成可能である点に利点を有しており、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、ナノパーティクル分散液を用いる方法等のウェットプロセスを好適に適用することができる。
これにより、簡便で効率的な塗布法によるマルチフォトンエミッション有機EL素子の作製が可能となる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1−1]塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
ITO付ガラス基板上に、感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、エッチングを行い、ストライプ状のパターンを形成した。このパターン形成したITO付きガラス基板を中性洗剤で洗浄後、超純水で超音波洗浄し、2−プロパノールにて煮沸後、UVオゾン処理を20分間行った。
このITO付きガラス基板上に、以下に示す条件にて、グローブボックス内にてスピンコート法により各層を成膜し、順に積層させた。
・電子注入層1(膜厚10nm):粒径10nmのZnO微粒子の2−エトキシエタノール分散液をスピンコートした後、100℃で5分間乾燥した。
・電子注入層2(膜厚10nm):ポリエチレンイミンエトキシレイティド(PEIE)(シグマアルドリッチジャパン社製)の2−エトキシエタノール溶液をスピンコートした後、100℃にて5分間乾燥した。
・発光層1(膜厚80nm):ポリ[(9,9−ジ−n−オクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−o−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル)](F8BT)(住友化学株式会社製)のp−キシレン溶液をスピンコートした後、130℃で10分間乾燥した。
・電荷発生層1(膜厚40nm):PEDOT:PSS(ヘレウス株式会社製CleviousTMCH8000)をメタノール及びイソプロパノールを用いて体積比1:1:4で希釈し、この分散混合液をスピンコートした後、120℃にて10分間乾燥した。
・電荷発生層2(膜厚10nm):PEDOT:PSSを水酸化ナトリウム水溶液と混合してpH7に調整した後、イソプロパノールを用いて体積比1:4で希釈し、この分散混合液をスピンコートした後、120℃にて10分間乾燥した。
・電子注入層3(膜厚10nm):電子注入層1と同様にして形成した。
・電子注入層4(膜厚10nm):電子注入層2と同様にして形成した。
・発光層2(膜厚80nm):発光層1と同様にして形成した。
・ホール注入層1(膜厚40nm):PEDOT:PSSを、メタノール及びイソプロパノールを用いて体積比1:1:4で希釈し、この分散混合液をスピンコートした後、120℃にて10分間乾燥した。
この上に、アルミニウムを真空蒸着し、膜厚100nmの陰極を形成し、2つの発光ユニットを有する塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/Alである。
【0041】
[比較例1−1]第一発光ユニットのみの素子の作製
実施例1−1において、電子注入層3,4、発光層2及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例1−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層1のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0042】
[比較例1−2]第二発光ユニットのみの素子の作製
実施例1−1において、電荷発生層2、電子注入層3,4、発光層1及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例1−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層2のみ)のみの有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/Alである。
【0043】
上記実施例1−1及び比較例1−1,1−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図3に、輝度−電圧特性を示す。縦軸が輝度(cd/m2)、横軸が駆動電圧(V)を表している。
図4に、外部量子効率−電流密度特性を示す。縦軸が外部量子効率(%)、横軸が電流密度(mA/cm2)を表している。
また、表1に、輝度1000cd/m2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
上記評価結果から、実施例1−1の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例1−1及び比較例1−2のほぼ合計値であり、マルチフォトンエミッション特性が認められた。
【0046】
[実施例1−2]発光色の異なる発光ユニットを積層した塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
実施例1−1において、発光層1で用いたF8BTに代えて、ポリフルオレン系青色蛍光ポリマー(住友化学株式会社社製)のp−キシレン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥し、第一発光ユニットとして膜厚70nmの発光層3を形成した。それ以外は実施例1−1と同様にして、塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/青色蛍光ポリマー/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/F8BT/PEDOT:PSS/Alである。
【0047】
[比較例1−3]第一発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例1−2において、電子注入層3,4、発光層2及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例1−2と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層1のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/青色蛍光ポリマー/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0048】
上記実施例1−2及び比較例1−3,1−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図5に、ELスペクトル特性を示す。縦軸がEL相対強度(a.u.)、横軸が波長(nm)を表している。
実施例1−2において、第一発光ユニットの青色発光と第二発光ユニットの黄色発光がそれぞれ得られることが認められた。
【0049】
図6に、外部量子効率−電流密度特性を示す。
また、表2に、輝度1000cd/m2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
上記評価結果から、実施例1−2の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例1−3及び比較例1−2のほぼ合計値であり、マルチフォトンエミッション特性が認められた。
【0052】
[実施例2−1]ホール輸送層を用いた塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
実施例1−1において、発光層1,2に代えて発光層4,5を形成し、また、発光層3の上にホール輸送層1を、発光層4の上にホール輸送層2を積層させ、それ以外は実施例1−1と同様にして、塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
発光層4,5及びホール輸送層1は、以下のようにして形成した。
・発光層4(膜厚70nm):ポリフルオレン系緑色蛍光ポリマーSGP2(住友化学株式会社製)のp−キシレン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥した。
・ホール輸送層1(膜厚10nm):テトラフェニルベンジジン含有ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(TPDPES)の1,4−ジオキサン溶液をスピンコートした後、120℃にて10分間乾燥した。
・発光層5(膜厚70nm):発光層4と同様にして形成した。
・ホール輸送層2(膜厚10nm):ホール輸送層1と同様にして形成した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/SGP2/TPDPES/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/SGP2/TPDPES/PEDOT:PSS/Alである。
【0053】
[比較例2−1]第一発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例2−1において、電子注入層3,4、発光層5、ホール輸送層2及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例2−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層4のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/SGP2/TPDPES/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0054】
[比較例2−2]第二発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例2−1において、電荷発生層2、電子注入層3,4、発光層4、ホール輸送層1及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例2−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層5のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/SGP2/TPDPES/PEDOT:PSS/Alである。
【0055】
上記実施例2−1及び比較例2−1,2−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図7に、輝度−電圧特性を示す。
図8に、外部量子効率−電流密度特性を示す。
また、表3に、輝度1000cd/m2時及び5000cd/m2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0056】
【表3】
【0057】
上記評価結果から、実施例2−1の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例2−1及び比較例2−2のほぼ合計値であり、マルチフォトンエミッション特性が認められた。
【0058】
[実施例3−1]リン光発光層を有する塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
実施例1−1において、発光層1,2に代えて発光層6,7を形成し、それ以外は実施例1−1と同様にして、塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
発光層6,7は、以下のようにして形成した。
・発光層6(膜厚70nm):ポリ−N−ビニルカルバゾール(PVK)、10wt%の4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)、10wt%の2,6−ビス[3−(カルバゾール−9−イル)フェニル]ピリジン(26DCzppy)、10wt%のトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥した。
・発光層7(膜厚70nm):発光層6と同様にして形成した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)3/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)3/PEDOT:PSS/Alである。
【0059】
[比較例3−1]第一発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例3−1において、電子注入層3,4、発光層7及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例3−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層6のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)3/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0060】
[比較例3−2]第二発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例3−1において、電子注入層3,4、発光層6及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例3−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層7のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)3/PEDOT:PSS/Alである。
【0061】
上記実施例3−1及び比較例3−1,3−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図9に、輝度−電圧特性を示す。
図10に、外部量子効率−電流密度特性を示す。
また、表4に、輝度1000cd/m2時及び5000cd/m2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0062】
【表4】
【0063】
上記評価結果から、実施例3−1の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例3−1及び比較例3−2のほぼ合計値であり、リン光材料を用いた素子においてもマルチフォトンエミッション特性が認められた。
【0064】
[実施例4−1]発光色の異なるリン光発光層を有する塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子の作製
実施例1−1において、発光層1,2に代えて発光層8,9を形成し、それ以外は実施例1−1と同様にして、塗布型マルチフォトンエミッション有機EL素子を作製した。
発光層8,9は、以下のようにして形成した。
・発光層8(膜厚70nm):PVK、10wt%TCTA、10wt%26DCzppy、10wt%Ir(ppy)3)、1wt%のトリス(2−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Ir(phq)3)のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥した。
・発光層9(膜厚70nm):PVK、10wt%TCTA、10wt%26DCzppy)、10wt%のトリス(2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン)イリジウム(III)(Ir(Fppy)3)のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートした後、130℃にて10分間乾燥した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)3:Ir(phq)3/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(Fppy)3/PEDOT:PSS/Alである。
【0065】
[比較例4−1]第一発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例4−1において、電子注入層3,4、発光層9及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例4−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層8のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(ppy)3:Ir(phq)3/PEDOT:PSS/n−PEDOT:PSS/Alである。
【0066】
[比較例4−2]第二発光ユニットのみの有機EL素子の作製
実施例4−1において、電子注入層3,4、発光層8及びホール注入層1を設けず、それ以外は実施例4−1と同様にして、発光ユニットが1つ(発光層9のみ)の有機EL素子を作製した。
この素子の層構成の概略は、ガラス/ITO/ZnO/PEIE/PVK:TCTA:26DCzppy:Ir(Fppy)3/PEDOT:PSS/Alである。
【0067】
上記実施例4−1及び比較例4−1,4−2の素子特性の評価結果を下記に示す。
図11に、ELスペクトル特性を示す。
図12に、外部量子効率−電流密度特性を示す。
また、表5に、輝度1000cd/m2時及び5000cd/m2時における駆動電圧と外部量子効率を示す。
【0068】
【表5】
【0069】
上記評価結果から、実施例4−1の駆動電圧及び外部量子効率は、比較例4−1及び比較例4−2のほぼ合計値であり、発光色の異なるリン光材料を用いた素子においてもマルチフォトンエミッション特性が認められた。
【符号の説明】
【0070】
1,11 ガラス基板
2 陰極(ITO)
3,13 第一発光ユニット
4,15 電荷発生層
5,14 電子注入層
6,16 第二発光ユニット
7 陰極(Al)
12 陽極(ITO)
17 陰極(Al)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12