(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579508
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】吸引チューブ
(51)【国際特許分類】
A61C 17/08 20060101AFI20190912BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20190912BHJP
A61C 17/06 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
A61C17/08
A61M1/00 161
A61C17/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-31411(P2015-31411)
(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2016-152838(P2016-152838A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】長谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中村 博幸
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−507140(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0303619(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/08
A61C 17/06
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引器に接続するための接続部と、吸引孔を有する吸引部と、前記接続部及び吸引部をつなぐ中間チューブ部とを備え、
前記吸引部は円筒形状であり、前記円筒形状の外周面である外周基部から突設した複数の突起部と当該外周基部に設けた複数の吸引孔を有し、
前記突起部は前記外周基部から立設した支柱部の先端に丸み形状部を有し、丸み形状部の外径が支柱部の直径よりも大きいキノコ形状であることを特徴とする吸引チューブ。
【請求項2】
前記吸引部は先端部に先端開口部を有し、
前記先端開口部の開口周縁部は内側方向に向けて丸くした丸み端部に形成されていることで組織を傷付けないようにするとともに、吸引力が複数の吸引孔に分散されるようにしてあることを特徴とする請求項1記載の吸引チューブ。
【請求項3】
前記接続部は吸引器に対して回転可能に接続できることを特徴とする請求項1又は2記載の吸引チューブ。
【請求項4】
前記吸引部と中間チューブ部との連結部位が曲げ角度調整可能になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸引チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内や咽頭内等のケアに用いられる吸引チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進展に伴い、高齢者の肺炎患者が増大している。
特に嚥下機能が低下する後期高齢者に多い誤嚥性肺炎は、発症の度に入院加療が繰り返され、医療費を圧迫する要因にもなっている。
そのため、肺炎予防を目的として医療や介護の現場では口腔ケアが積極的に行われている。
その際に、ブラシ類を用いることで口腔内に付着した喀痰は比較的容易に除去可能であるが、誤嚥を繰り返す高齢者には視覚が困難な咽頭にかけて粘稠度の強い喀痰が貯留停滞している症例が多い。
咽頭に貯留した喀痰を除去するには目視が困難であり、部位的にもブラシ類を使用することが不可能である。
そこで従来は吸引チューブを経鼻的又は経口的に挿入して吸引除去がおこなわれているが、この吸引チューブは吸引のみを使用目的に製作されている場合が多く、チューブの先端部が滑らかな表層構造であり、喀痰の粘稠度が強くなるほど除去が困難である。
また、咽頭に吸引チューブを挿入する吸引操作は盲目的であり、不用意に咽頭粘膜を刺激することで出血する事例もあった。
【0003】
特許文献1,2にそれぞれ口腔内清掃具及び口腔ケアブラシを開示するが、いずれも先端がブラシ形状であり咽頭部のケアには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3905508号公報
【特許文献2】実用新案登録第3121246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、口腔内や咽頭部等の組織や粘膜を傷つけることなく、ケアが容易な吸引チューブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る吸引チューブは、吸引器に接続するための接続部と、吸引孔を有する吸引部と、前記接続部及び吸引部をつなぐ中間チューブ部とを備え、前記吸引部は外周基部から突設した複数の突起部と当該外周基部に設けた複数の吸引孔を有し、前記突起部の先端が丸み形状に形成してなることを特徴とする。
ここで吸引部は円筒形状であり、この円筒形状の外周面である外周基部から外側方向に複数の柔軟な材質からなる突起部を突設することで、汚染物、異物をかきとり、喀痰をからませることができ、その近傍の吸引孔から吸引除去できる。
この際に、突起部の先端が丸み形状になっているので組織や粘膜が傷つくのを防止する。
【0007】
本発明において突起部の先端丸み形状は、鋭利でない限り特に制限がない。
粘稠度の強い喀痰も絡めて吸引除去するには、前記突起部は外周基部から立設した支柱部の先端に丸み形状部を有し、丸み形状部の外径が支柱部の直径よりも大きいキノコ形状であるのが好ましい。
【0008】
また、前記吸引部は先端部
に先端開口部を有し、前記先端開口部の開口周縁部は内側方向に向けて丸くした丸み端部に形成してあってもよいと、この周縁部にて組織や粘膜が傷つくのを防止する。
【0009】
本発明において、前記接続部は吸引器に対して回転可能に接続されていてもよい。
このようにすると吸引チューブを回転させることで先端の吸引部が動き、汚染物や喀痰をかきとりやすくなる。
【0010】
本発明において、前記吸引部と中間チューブ部との連結部位が曲げ角度調整可能になっていてもよい。
このようにすると、チューブの挿入操作において吸引部の曲げ調整が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吸引チューブは、口腔や咽頭のみならず各種部位の吸引ケアに使用できるが、特に経鼻的もしくは経口的に咽頭に挿入し、咽頭部の弱い組織を傷つけることなく粘稠度の高い喀痰等を除去するのに効果的である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る吸引チューブ10の構造例を以下図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0014】
図1に吸引チューブ10の全体を模式的に示し、
図2に吸引部13の拡大図を示す。
吸引チューブ10は樹脂製の接続部11と柔軟な材質からなる樹脂製の吸引部13とを軟らかい管状の中間チューブ部12でつないである。
接続部11は、図示を省略した吸引器と接続するためのものであり、接続した状態で指で中間チューブ部を回転方向に廻せる回転部11aを有する。
中間チューブ部12と吸引部13との連結部付近には、金属芯線等の曲げ角度調達部材14を配設してある。
【0015】
吸引部13はその拡大図を
図2に示すように全長が約20mmで、内径が約3.3mmの円筒状の外周基部13aから複数の突起部13bを突設してある。
また、突起部13bの根元近傍には吸引孔13eを有する。
吸引部13は、柔軟な材質からなる樹脂製である。
本実施例では、高さH=約1mmの突起部13bになっていて、突起部13bは外周基部13aから立設した支柱部113の先端側に半球形状の丸み形状部213をキノコ状に形成してある。
支柱部113の高さh
1は約0.5mm,径d
3=0.5mm,丸み形状部213の高さh
2は約0.5mmであり、外径d
2=1mmの例となっている。
また、吸引孔13eの開口寸法a=1mm、b=0.5mmの例となっている。
先端開口部の周縁部13cは、開孔径d
1が約3mmとチューブの内径3.3mmよりも小さくなるように丸み端部に形成し、組織等を傷付けないようにしてある。
このように先端開口部の周縁部を内側方向に向けて丸くしたので、その分だけ開口径d
1が小さくなる。
従って、吸引力は、この先端開口部と外周基部13aに設けた複数の吸引孔13eに分散され、突起部13bにて掻き取られた汚染物や喀痰を吸引除去する。
なお、これらの寸法は吸引チューブの用途に応じて設定される。
【符号の説明】
【0016】
10 吸引チューブ
11 接続部
11a 回転部
12 中間チューブ部
13 吸引部
13a 外周基部
13b 突起部
13c 周縁部
13e 吸引孔
14 曲げ角度調整部材