(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記暗箱には、前記観察対象物よりも後方の光路上に、蛍光成分を透過すると共に励起光成分を吸収及び/又は反射する第2光学フィルターが設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の微弱光観察用レンズユニット。
前記暗箱の下部には、前記観察対象物が固定又は載置されたスライドガラスを、前記レンズの直上域に挿入するためのスリットが設けられている請求項1〜8のいずれか1項に記載の微弱光観察用レンズユニット。
前記暗箱の底部外周には、前記デジタルカメラのレンズ部のカメラ本体から突出している部分を囲み、前記レンズ部への外光の入射を遮断するカバー部材が取り付けられている請求項1〜10のいずれか1項に記載の微弱光観察用レンズユニット。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照し、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係るレンズユニットについて、スマートデバイスに適用した場合を例にして説明する。
図1A〜Cは本実施形態のレンズユニットの構成例を模式的に示す図であり、
図1Aは斜視図、
図1Bは平面図、
図1Cは一部断面側面図である。
図1A〜Cに示すように、本実施形態のレンズユニット1は、暗箱10と、暗箱10の底部に設けられたレンズ2とを少なくとも備え、デジタルカメラ(スマートデバイス20のフロントカメラ25)と共に複式顕微鏡を構成するものである。
【0015】
[暗箱10]
暗箱10は、外光を遮蔽すると共に観察対象物を収容するものであり、観察対象物由来の光以外の光を遮光する材料によって形成されていればよい。暗箱10の材質は特に限定されるものではなく、プラスチック、金属、布及び紙などの一般に使用されている材料で形成することができる。また、暗箱10は、光を透過する材料で形成された箱体を、遮光性の塗料やシートなどで被覆した構成とすることもできる。
【0016】
また、暗箱10の底部には、レンズ2を収容可能な貫通孔3が形成されており、この貫通孔3にレンズ2が保持される。また、貫通孔3の内壁には、レンズ2に迷光が入ることを防止するために、黒色塗料や黒色シートで被覆するなどの不透明化処理が施されていることが望ましい。なお、暗箱10の大きさは、特に限定されるものではないが、対象となるデジタルカメラの外形よりも小型であることが好ましい。
【0017】
レンズが凸型又は球形の場合、貫通孔3は、レンズを完全に収容できる程度の内径と高さで、テーパー形状を有する孔であり、長さ方向中間位置の径がレンズ2の直径と同等になるよう設計されている。
図1Cに示すように、貫通孔3が暗箱10の内側から外側に向かって大径となる形状の場合、レンズ径より孔径が大きい外側の端部から、貫通孔3にレンズ2を押し込み、固定すればよい。なお、
図1Cには内側から外側に向かって大径となる形状の貫通孔を示しているが、貫通孔3は、外側から内側に向かって大径となる形状でもよく、その場合は、暗箱10の内側の端部からレンズを押し込めばよい。
【0018】
また、レンズが円柱状又は予め円筒形収容器に収容されている場合、貫通孔3は、レンズを完全に収容できる程度の内径と高さで、円筒形状を有する孔であり、一方の端部の内側にわずかに突出するバリ状凸部が設けられている。このバリ状凸部は、円柱状レンズ又は円筒状容器に収容されたレンズを、貫通孔3に押し込んだ際に、ストッパーとして機能する。
【0019】
また、暗箱10がプラスチック製の場合は、暗箱10全体又は貫通孔3の周辺部分をプラスチックが溶解しない程度の温度に加熱し、貫通孔3の孔径を拡大した状態でレンズ2を押し込む方法を採ることもできる。この場合、暗箱10の温度が常温に戻ると、貫通孔3が縮んでその側壁によりレンズ2が固定される。この場合、貫通孔3はテーパー形状でなくてもよい。なお、貫通孔3の形状にかかわらず、レンズ2は、貫通孔3の内側(観察対象物4側)端部から突出しない位置に固定されていることが好ましく、外側(フロントカメラ25側)端部からも突出しない位置に固定されていることがより好ましい。
【0020】
暗箱10には、観察対象物4を出し入れするための開閉蓋10aが設けられていてもよい。開閉蓋10aは、例えば暗箱10の上面の一辺を支点軸10bとして、矢印A方向に回動することで、開放される構成とすることができる。なお、観察対象物4を出し入れするための蓋は、
図1Cに示す開閉蓋10aのような扉様のものに限定されるものではなく、着脱自在な構成としてもよい。また、蓋の代わりに、暗箱10の側面に開閉又は脱着可能な扉を設けることもできる。更に、蓋は、多種多様な形状が適用され得る。具体的には、円形や多角形の他、平板などの平面的、又は箱形などの立体的な形状の蓋を用いることができ、これらは、観察対象物4の大きさや形状に応じて、適宜選択して適用することができる。
【0021】
更に、暗箱10は、内側の面の一部又は全部に、光反射防止用塗料の塗布や光反射防止用フィルムの被覆などの光反射防止処理が施されていることが好ましい。これにより、暗箱10内部での光の反射による迷光を抑制できるため、光の検出感度が向上する。この効果は、後述する本実施形態の変形例及び他の実施形態にも共通する。
【0022】
[レンズ2]
レンズ2は、例えば暗箱10の底部に設けられた貫通孔3に収容保持されている。レンズ2の種類や材質は、特に限定されるものではないが、例えばガラス若しくはプラスチックにより形成された単レンズ若しくは複合レンズ又はこれらのレンズを筒状容器に収容した収容型レンズを使用することができる。レンズ2の大きさは、例えば1〜10mmであるが、小さいレンズほど焦点距離が小さく、デジタルカメラと一体で構成される複式顕微鏡の倍率が大きくなるので、必要倍率に応じて適宜選択することができる。
【0023】
[使用方法]
次に、本実施形態のレンズユニット1を用いて微弱光を観察する方法について、観察対象物4にホタルなどのように自家発光するものを用いた場合を例に説明する。自家発光する観察対象物4の観察は、先ず、レンズユニット1を、スマートデバイス20のフロントカメラ25の少なくともレンズ25aの直上域を覆うように配置する。このとき、レンズユニット1のレンズ2が、フロントカメラ25の光軸上に位置するように調整する。このように、レンズユニット1でレンズ25aの直上域を覆うことで、環境光がフロントカメラ25内に進入することを遮断できる。
【0024】
レンズユニット1を、スマートデバイス20のフロントカメラ25上に固定又は保持する方法は、特に限定されるものではなく、例えば暗箱10の底部外面に粘着性部材や吸着性部材を設け、これらの部材を介してレンズユニット1を固定又は保持する方法などを適用することができる。
【0025】
次に、例えば暗箱10の上部に設けられた開閉蓋10aを開いて、観察対象物4を暗箱10内部に挿入する。このとき、観察対象物4はレンズ2の直上に配置される。なお、観察対象物4は、暗箱10内に配置可能な大きさでかつ上面が合焦点距離になる厚さのスライドガラス5に固定又は載置された状態で、レンズ2の直上域に配置することもできる。
【0026】
その後、開閉蓋10aを閉じて、暗箱10内への外光の進入を遮断する。そして、レンズ2とその直下に配置されたフロントカメラ25のカメラレンズ25aにより構成される複式顕微鏡により、外光を遮光した環境下で観察対象物4が自家発光する光を集光し、フロントカメラ25の光検出器(イメージセンサ)25bの受光面に結像する。光検出器25bからの信号に基づき生成されたデジタル画像は、スマートデバイス20の記憶部に記憶され、自身の表示部23や外部のスクリーンなどに表示される。
【0027】
ホタルの発光のような自然界の自家発光には、種々の化学反応が関与すると言われているが、共通する性質は、発光が極めて微弱であることである。特に微小領域を拡大観察する顕微鏡観察においては、光量が足りず、明環境下では環境光に負けて検出が不可能となる場合が多く、自家発光の観察は、通常、暗所で行われている。
【0028】
これに対して、本実施形態のレンズユニット1は、暗箱10とレンズ2を一体化しているため、スマートデバイス20のフロントカメラ25上に配置するだけで、デジタルカメラ(フロントカメラ25)の上に暗所を形成することができる。その結果、本実施形態のレンズユニット1を用いることにより、明るい室内や屋外においても、容易に自家発光像を観察することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態のレンズユニット1は、暗箱10とレンズ2という簡素な構成であるため、携帯性にも優れ、必要なときにいつでも顕微鏡観察を行うことができる。更に、本実施形態のレンズユニット1は、フロントカメラ25との間の距離を調整しなくても、顕微鏡像を観察することができるため、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスの他、所謂小型デジタルカメラ、パソコン搭載のカメラやウェブカメラ、ゲーム制御器搭載のカメラなど、あらゆるデジタルカメラと組み合わせて使用することが可能である。
【0030】
なお、本実施形態のレンズユニット1と共に使用されるデジタルカメラは、内蔵されているレンズのサイズが暗箱10の一体化微小レンズと適合するものであればよく、その種類は特に限定されるものではないが、微小レンズが多用されている各種モバイル機器に搭載されているカメラが好適である。
【0031】
本実施形態のレンズユニットにおける「レンズ一体型小型暗箱」は、1つのレンズと箱で構成されているという点においては、カメラの元祖であるカメラオブスキュラと同じである。しかしながら、カメラオブスキュラの箱の中に観察対象物を持ち込んだ場合、蛍光顕微鏡を含む微小域微弱光の観察が可能であるとは数百年間誰も想到し得なかった。なぜならば、カメラオブスキュラの一面は必ず開放されており、外部から入射する光を利用し、その開放面から像観察が行われていたからである。このように、カメラオブスキュラは「暗い部屋」ではあるが、真の暗箱ではなかった。
【0032】
(第1の実施形態の第1変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係るレンズユニットについて説明する。
図2A及び
図2Bは本変形例のレンズユニットの構成を示す一部断面側面図である。なお、
図2A及び
図2Bにおいては、
図1に示すレンズユニット1の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0033】
暗視野散乱像や蛍光像のように観察対象物4から発せられる微弱光像を観察する場合は、背景となる照明光を極力遮断する必要がある。観察対象物4に照明光を斜め方向から当てる斜光照明法は、照明光のレンズ2への入射を防ぐことができる手法の1つである。そこで、本変形例のレンズユニット11では、
図2に示すように、暗箱10の側面に開口(側面開口15)を設け、この側面開口15から自然光又は照明光を導入し、暗箱10内に収容された観察対象物4に斜め方向から光を照射する。照明光を斜め方向から照射しても、観察対象物4からは等方的に光が発せられるため、本変形例の構成は、暗視野散乱像や蛍光像の観察に有効である。なお、蛍光像観察における励起光は、自然光及び照明光のいずれでもよい。
【0034】
[側面開口15]
側面開口15は、観察対象物4を斜光照明するための光を、暗箱10内に導入するためのものである。側面開口15の数や大きさは、特に限定されるものではないが、側面開口15が大きすぎると、必要以上の光が暗室10内に進入し、散乱光や蛍光の検出感度が低下する。また、箱形の暗箱の場合、側面開口15の数を2以上にすると、照明波長の異なる光源を挿入することができ、例えば、蛍光観察のように励起光の波長を種々選択する場合は、利便性が高くなる。
【0035】
また、散乱光や蛍光は微弱であるため、ノイズ低減の観点から、側面開口15から導入される照明光が、底面に埋め込まれたレンズ2に極力入射しないようにすることが好ましい。そこで、本変形例のレンズユニット11では、
図2Aに示すように、暗箱10の底面近傍に側面開口15を設け、浅い入射角度で照明光が導入されるようにしている。なお、側面開口15が上方に位置するなどのように照明の入射角度を浅く取れない場合は、
図2Bに示すように、貫通孔3の入り口に底面から上方に突出する斜光浸入防止壁10cを設けると良い。斜光浸入防止壁10cによって照明光が遮られ、直接レンズ2に進入することを回避することができる。
【0036】
[使用方法]
次に、本変形例のレンズユニット11を用いて、散乱像や蛍光像を観察する方法について説明する。本変形例のレンズユニット11も、前述した第1の実施形態と同様に、スマートデバイス20のフロントカメラ25上に置き、カメラレンズ25aの直上域にレンズ2が位置するように調整する。
【0037】
次に、例えば暗箱10の上部に設けられた開閉蓋10aを開いて、観察対象物4を暗箱10内部に挿入し、レンズ2の直上に配置する。その後、開閉蓋10aを閉じて、暗箱10内への外光の進入を遮断すると共に、側面開口15から照明光を導入し、観察対象物4に照射する。これにより、観察対象物4から微弱な散乱光や蛍光が発せられる。
【0038】
観察対象物4から発せられた散乱光や蛍光は、レンズ2とフロントカメラ25で構成される複式顕微鏡により、散乱像や蛍光像としてフロントカメラ25の光検出器(イメージセンサ)25bに投影される。光検出器25bからの信号に基づき生成されたデジタル画像は、スマートデバイス20の記憶部に記憶され、自身の表示部23や外部のスクリーンなどに表示される。
【0039】
本変形例のレンズユニットのように、暗箱に採光(照明光導入)用の側面開口を設けることにより、暗視野散乱像や蛍光像の観察を行うことも可能となる。即ち、本変形例のレンズユニットを用いることで、モバイル機器を用いた暗視野顕微鏡や蛍光顕微鏡を実現することができる。なお、本変形例における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0040】
(第1の実施形態の第2変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係るレンズユニットについて説明する。
図3は本変形例のレンズユニットの構成を示す一部断面側面図である。なお、
図3においては、
図1に示すレンズユニット1及び
図2に示すレンズユニット11の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
光照射に伴い観察対象物4から発せられる蛍光を観察する場合は、発光強度は極めて微弱であり、且つ照明光とは波長が異なる。このため、照明光側と発光側にそれぞれに適した波長選択フィルターを設置し、デジタルカメラなどの観測光学系への照明光の進入を抑制することが好ましい。そこで、
図3に示すように、本変形例のレンズユニット21では、
図2に示す第1変形例のレンズユニット11の各構成に加えて、照明光側に励起光を透過すると共に蛍光成分を吸収及び/又は反射する光学フィルターを、発光側には蛍光成分を透過すると共に励起光成分を吸収及び/又は反射する光学フィルターを追加している。即ち、本変形例のレンズユニット21は、暗箱10の側面開口15に励起光パス蛍光カットフィルター19を設けると共に、レンズ2とフロントカメラ25との間に蛍光パス励起光カットフィルター17を設けた以外は、
図2に示す第1変形例のレンズユニット11と同様である。
【0042】
[蛍光パス励起光カットフィルター17]
蛍光パス励起光カットフィルター17は、蛍光成分を透過すると共に励起光成分を吸収及び/又は反射する光学フィルターである。蛍光観察の場合、観察対象物4に照射する励起光の波長と、観察対象物4から発せられる蛍光の波長とが相互に異なるため、この蛍光パス励起光カットフィルター17により、フロントカメラ25に入射する励起光成分をカットすることで、蛍光のみを観察することが可能となる。その場合、蛍光パス励起光カットフィルター17は、観察対象物4とフロントカメラ25の間の光路上に光軸に垂直になるように配置されていればよく、例えばレンズ2の手前や、レンズ2とフロントカメラ25の間などに設けることができる。
【0043】
[励起光パス蛍光カットフィルター19]
励起光パス蛍光カットフィルター19は、励起光を透過すると共に蛍光成分を吸収及び/又は反射する光学フィルターである。この励起光パス蛍光カットフィルター19により、側面開口15から暗室10内に入射する照明光や外光に含まれる蛍光成分をカットし、励行光成分のみを透過させることで、像のコントラストを向上させることができる。なお、励起光パス蛍光カットフィルター19は、側面開口15全体を覆うように又は照明光が垂直に入射するように設置されていればよく、暗箱10の内側でも外側でもどちら側に設けてもよい。
【0044】
蛍光は微弱であるため、ノイズ低減の観点から、側面開口15から導入される励起光が、底面に埋め込まれたレンズ2に極力入射しないようにすることが好ましい。そこで、本変形例のレンズユニット21でも、
図2Aと同様に、側面開口15は暗箱10の底面近傍に設け、励起光が浅い入射角度で導入されるようにしている。なお、励起光の入射角度を浅く取れない場合は、
図2Bに示すように、貫通孔3の入り口に斜光浸入防止壁10cを設けることで、励起光が直接レンズ2に進入することを回避することができる。
【0045】
[使用方法]
次に、本変形例のレンズユニット21を用いて、蛍光像を観察する方法について説明する。本変形例のレンズユニット21も、前述した第1の実施形態及びその変形例と同様に、スマートデバイス20のフロントカメラ25の上に置き、カメラレンズ25aの直上域にレンズ2が位置するように調整する。
【0046】
次に、例えば暗箱10の上部に設けられた開閉蓋10aを開いて、観察対象物4を暗箱10内部に挿入し、レンズ2の直上に配置する。その後、開閉蓋10aを閉じて、暗箱10内への外光の進入を遮断すると共に、側面開口15から励起光を導入する。これにより、励起光パス蛍光カットフィルター19を通過し、蛍光成分が除かれた励起光が観察対象物4に照射される。
【0047】
励起光照射に伴い観察対象物4から発せられた蛍光は、レンズ2及びその直下の蛍光パス励起光カットフィルター17を通過し、励起光成分が取り除かれた光がスマートデバイス20のフロントカメラ25に入射する。そして、レンズ2とフロントカメラ25で構成される複式顕微鏡により、蛍光像としてフロントカメラ25の光検出器(イメージセンサ)25bに投影される。光検出器25bからの信号に基づき生成されたデジタル画像は、スマートデバイス20の記憶部に記憶され、自身の表示部23や外部のスクリーンなどに表示される。
【0048】
本変形例のレンズユニットのように、蛍光パス励起光カットフィルター17や励起光パス蛍光カットフィルター19などの光学フィルターを用いることで、高感度の蛍光像観察も可能となる。即ち、本変形例のレンズユニットを用いることで、モバイル機器を用いた蛍光顕微顕微鏡を実現することができる。
【0049】
なお、一般的なデジタルカメラに用いられている光検出器(イメージセンサ)は、波長感度領域が可視域に偏っている。そこで、観察対象物4が紫外光励起で蛍光を発生する場合、この光検出器25の波長感度領域の偏りを利用することができる。具体的には、励起光に光検出器25の感度が低い紫外光を用いると、励起光がフロントカメラ25に入射しても影響をほとんど受けないため、蛍光パス励起光カットフィルター17を省略することが可能となる。
【0050】
また、励起用の紫外光中に、観察対象の蛍光域の波長成分が含まれていない場合は、蛍光パス励起光カットフィルター17及び励起光パス蛍光カットフィルター19は共に省略可能である。この場合、第1変形例と同様となる。本変形例における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0051】
(第1の実施形態の第3変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の第3変形例に係るレンズユニットについて説明する。
図4は本変形例のレンズユニットの構成を示す一部断面側面図である。なお、
図4においては、
図1に示すレンズユニット1、
図2に示すレンズユニット11及び
図3に示すレンズユニット21の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
一般の蛍光顕微鏡では、前述した第2変形例のレンズユニットとは異なり、観察対象物に垂直に光が当たる垂直照明を用いている。ただし、励起用照明光が直接カメラなどの観測光学系に入射しないように、従来の蛍光顕微鏡では、主に2色ビーム選択ミラーを用いた落射照明光学系が採用されている。一方、本発明のレンズユニットでは、暗箱10に組み込まれた微小レンズ2を外部のデジタルカメラ機器に密着させる必要があるため、2色ビーム選択ミラーを挿入するスペースを確保することができない。このため、本発明のレンズユニットで蛍光像観察を行う場合は、透過型の構成にする。
【0053】
具体的には、
図4に示すように、本変形例のレンズユニット51は、通常タイプの蛍光顕微鏡を模した観察形態を有し、暗箱10の上面のレンズ2の直上域に上面開口16が設けられており、この上面開口16を覆うように、励起光パス蛍光カットフィルター19が配置されている。また、レンズ2の直下には、励起光パス蛍光カットフィルター19と相互に平行になるよう蛍光パス励起光カットフィルター17が設けられている。なお、本変形例のレンズユニット51は、暗箱10に上面開口16を設けてそこに励起光パス蛍光カットフィルター19を設置した点と、側面開口15がない又は側面開口15が塞がれている点以外は、
図3に示す第2変形例のレンズユニット21と同様である。
【0054】
[上面開口16]
上面開口16は、観察対象物4に照射する励起光を、暗箱10内に導入するためのものであり、励起光パス蛍光カットフィルター19が設けられる点で、第2変形例のレンズユニット21の側面開口15と同様である。一方、上面開口16は、励起光パス蛍光カットフィルター19が蛍光パス励起光カットフィルター17と平行、且つ平面視で重複する位置になるように、開閉蓋10aに設定される。
【0055】
[使用方法]
次に、本変形例のレンズユニット51を用いて、蛍光像を観察する方法について説明する。本変形例のレンズユニット51も、前述した第1の実施形態及びその変形例と同様に、観察対象物4を暗箱10内部にセットする。そして、開閉蓋10aを閉じて、暗箱10内への外光の進入を遮断すると共に、上面開口16から励起光を導入する。これにより、励起光パス蛍光カットフィルター19を通過し、蛍光成分が除かれた励起光が観察対象物4に照射される。
【0056】
励起光照射に伴い観察対象物4から発せられた蛍光は、レンズ2及びその直下の蛍光パス励起光カットフィルター17を通過し、励起光成分が取り除かれた光がスマートデバイス20のフロントカメラ25に入射する。そして、レンズ2とフロントカメラ25で構成される複式顕微鏡により、蛍光像としてフロントカメラ25の光検出器(イメージセンサ)25bに投影される。光検出器25bからの信号に基づき生成されたデジタル画像は、スマートデバイス20の記憶部に記憶され、自身の表示部23や外部のスクリーンなどに表示される。
【0057】
(第1の実施形態の第4変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の第4変形例に係るレンズユニットについて説明する。
図5Aは本変形例のレンズユニットの構成を示す一部断面側面図であり、
図5Bは、
図5AのX部分の詳細図を示している。この詳細図は暗箱10の底面部の構造を示した模式図である。また、
図5においては、
図1に示すレンズユニット1、
図2に示すレンズユニット11、
図3に示すレンズユニット21及び
図4に示すレンズユニット51の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0058】
図4に示す第3変形例のレンズユニット51では、励起光パス蛍光カットフィルター19と蛍光パス励起光カットフィルター17とを相互に平行な位置に配置しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、励起光パス蛍光カットフィルター19及び蛍光パス励起光カットフィルター17に鏡面仕上げのフィルターを用いた場合、各フィルターの表面で垂直方向の入射光が反射を繰り返し、思わぬ斜光成分を生じ、デジタル画像の背景を完全に暗視野にすることが困難になることがある。
【0059】
この問題は、前述した第1変形例及び第2変形例のレンズユニットで用いられる斜光照明であれば、ある程度回避できるが、デジタルカメラなどの観測光学系への照明光の進入を根本的に防ぐためには、観察対象物4の下方から照明光を照射し、入射光が上方に抜ける照明方式を採用することが望ましい。しかしながら、前述した第1の実施形態及びその第1〜第3変形例のレンズユニット1,11,21,51は、フロントカメラ25のレンズ25aの直上域にレンズ2が位置しているため、レンズ2とレンズ25aとの距離が極めて近く、また暗箱10も小型であるため、観察対象物4の下方から照明光を照射することは困難である。そこで、
図5に示すように、本変形例のレンズユニット61では、暗箱10の底面の一部に空洞13を設け、この空洞13に光源18を設置している。
【0060】
[光源18]
光源18は、観察対象物4に下方から光を照射するものであり、暗箱10の底面に設置されている。光源18は、観察対象物4に励起光などの任意の波長の光を照射できるものであればよく、その種類や大きさは特に限定されるものではないが、例えば、暗箱10に底面の厚さが3〜5mm程度の小型のものを用いる場合は、極小LEDなどを利用した微小光源が好適である。
【0061】
[光ガイド6]
光ガイド6は、光源18から出射された光を観察対象物4に向けて案内するものであり、例えば屈曲性を有する光ファイバーの束又は屈曲したプラスチックレンズなどが用いられる。これらの光ガイド6を用いることで、光源18を暗箱10の底面に設置しても、光源18から出射された光を観察対象物4に適切に誘導することができる。
【0062】
なお、後述するスライドガラス5での反射による問題発生を防止するめ、光源18から出射された光に起因する反射光が貫通孔3に進入しないように、光ガイド6から射出される光は、全て平行光になるように調整されることが好ましい。光ガイド6から出射される光を平行光とする方法としては、例えば光ガイド6に光ファイバーの束を用いる方法などが挙げられる。
【0063】
[通路14]
通路14は、光ガイド6から出射された光を観察対象物4に導くための光の通り道である。光ガイド6を通過した光を観察対象物4に照射するとき、スライドガラス5と観察対象物4の接触面で反射が生じる。特に、スライドガラス5に斜め方向から光が入射する斜光入射の場合は、強い反射が起こりやすい。このため、通路14が延びる方向は、光ガイド6から出射される平行光がレンズ2とフロントカメラ25のカメラレンズ25aで構成される複式顕微鏡の光軸中心Cに照射され、且つスライドガラス5の表面で反射した光が貫通孔3に進入しないような角度、例えば光軸中心Cに対して概ね60度以上に調整される。
【0064】
斜光照明の場合、観察対象物4に照射される光の強度にムラが生じる。そこで、本変形例のレンズユニット61では、このような斜光の光度分布をある程度補償するため、
図5に示すように、前述した光源18、光ガイド6、通路14などから構成される光学系を、2個ずつ左右対称に設置することが好ましい。又は、レンズ2を中心に、前後左右に4個ずつ設置してもよい。3Dプリンターを用いることで、このような複雑な構造でも、容易にかつ精度よく製造することが可能である。
【0065】
図5に示すレンズユニット61では、光源18と光ガイド6の間に励起光パス蛍光カットフィルター19を設けているが、前述した方法により光源18からの励起光が貫通孔3に進入しないようにすれば、励起光パス蛍光カットフィルター19は不要となる。一方、観察対象物4に含まれる特定の蛍光成分のみを励起したいときには、他の蛍光成分が励起しないように、光源18の直後に、他の蛍光成分を励起させる波長の光をカットする励起光パス蛍光カットフィルターを設置すればよい。
【0066】
更に、本変形例のレンズユニット61には、暗箱10の底面に、固定用部材7として、両面吸着テープなどの吸着材、両面粘着ゴムや両面粘着テープなどの粘着材を設けることができる。この固定用部材7には、厚さが薄いものを用いることが好ましい。固定用部材7を設けることにより、スマートデバイス20のフロントカメラ25上に、レンズユニット61を容易に固定又は保持することができる。なお、
図1〜
図4には示していないが、前述した第1の実施形態及びその第1〜第3変形例のレンズユニット1,11,21,51にも、同様に、固定用部材7を設けてもよい。
【0067】
[使用方法]
次に、本変形例のレンズユニット61を用いて、蛍光像を観察する方法について説明する。本変形例のレンズユニット61も、前述した第1の実施形態及びその変形例と同様に、観察対象物4を暗箱10内部にセットする。そして、開閉蓋10aを閉じて、暗箱10内への外光の進入を遮断すると共に、光源18から励起光を出射する。
【0068】
光源18から出射された光は、励起光パス蛍光カットフィルター19により蛍光成分が除かれた後、光ガイド6に導かれ、通路14を通過して、観察対象物4に照射される。励起光照射に伴い観察対象物4から発せられた蛍光は、レンズ2及びその直下の蛍光パス励起光カットフィルター17を通過し、励起光成分が取り除かれた光がスマートデバイス20のフロントカメラ25に入射する。そして、蛍光像としてフロントカメラ25の光検出器(イメージセンサ)25bに投影され、そのデジタル画像が、自身の表示部23や外部のスクリーンなどに表示される。
【0069】
本変形例のレンズユニット61は、光源18により観察対象物4を下方から照明しており、また光源18から出射された励起光を、屈曲した光ガイド6及び適切な角度に調整した通路14によって、観察対象物4に誘導しているため、励起光が貫通孔3に直接又は反射光として進入することを防止できる。これにより、微弱光を観察する蛍光観察における検出感度が向上する。
【0070】
なお、本変形例では、光源18が励起光用の光源である場合を示したが、光源18は単なる照明用の光源でもよい。照明用の光を観察対象物4に照射することで、第1変形例に示したように、散乱光の検出も行うことができる。また、採光用の開口を暗箱10の側面や上面に設けてもよい。
【0071】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るレンズユニットについて説明する。
図6は本実施形態のレンズユニットの構成例を模式的に示す図である。前述した第1の実施形態及びその変形例のレンズユニットでは、単一のユニットである暗箱10を使用し、観察対象物4の出し入れを暗箱10上部の開閉蓋10aの操作により行うため、暗箱10のサイズが小さい場合、箱内が手狭となり、観察対象物4の取り扱い性が悪くなることがある。
【0072】
そこで、
図6に示すように、本実施形態のレンズユニット101では、暗箱上部100aと暗箱底部100bが分離するセパレート型暗箱100を採用している。このレンズユニット101は、暗箱上部100aが蓋又はカバーとなっており、暗箱上部100aを取り除くことで、暗箱底部100bが露出し、観察対象物4の設置や取り出しなどの作業について、利便性が向上する。
【0073】
[セパレート型暗箱100]
セパレート型暗箱100は、
図6に示すように、暗箱底部100bと、この暗箱底部100b全体を覆う暗箱上部100aとで構成されるものに限定されるものではなく、上部と下部が完全に分離することが可能な構造であればよい。観察対象物4の出し入れし易さの観点から、上部と下部の分割位置は、暗箱100の高さの半分位置よりも下方にあることが好ましい。特に、底面部とその上の部分(壁部・天井部)とが分離するものは、観察対象物4を載置する底面部がより開放的になるため、観察対象物4の暗箱100内へのセットが容易である。なお、セパレート型暗箱100の材質や形状は、特に限定されるものではなく、前述した第1の実施形態の暗箱10と同様とすることができる。
【0074】
[使用方法]
次に、本実施形態のレンズユニット101を用いて微弱光を観察する方法について説明する。
図6に示すように、本実施形態のレンズユニット101は、暗箱上部100aが暗箱底部100bの上に載置された状態であるため、暗箱上部100aを持ち上げて取り外すことで、暗箱底部100bが露出した状態となる。そこに観察対象物4が載置されたスライドガラス5をレンズ2の直上に位置するように配置する。その後、暗箱底部100b上に暗箱上部100aを載せて、暗箱100内への外光の進入を遮断する。後は、第1の実施形態と同様の手順で、観察対象物4の微弱光を観察する。
【0075】
なお、
図6に示すレンズユニット101には、前述した第1の実施形態の各変形例で採用している採光や照明光や励起光を導入用の開口、及び蛍光パス励起光カットフィルターや励起光パス蛍光カットフィルターなどの光学フィルターを設けることもできる。例えば、レンズユニット101に開口や光学フィルターを設けた場合は、第1の実施形態の各変形例のレンズユニットと同様に、観察対象物4の散乱像や蛍光像を観察することが可能となる。また、本実施形態のレンズユニット101は、暗箱底部100bを
図5に示すような構成としてもよい。
【0076】
以上詳述したように、本実施形態のレンズユニット101は、セパレート型暗箱100を採用しているため、暗箱内への観察対象物4のセットがスムーズとなり、操作性及び利便性が向上する。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るレンズユニットについて説明する。
図7は本実施形態のレンズユニットの構成例を模式的に示す図であり、
図7Aは平面図、
図7Bは一部断面側面図である。前述した第1の実施形態及びその変形例のレンズユニットでは、直方体状の暗箱を使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、暗箱は、ドーム型、球形、角柱型、円柱型、キノコ型、ロケット型、ダイヤモンド型、その他様々な形状を採用することができ、不定形状とすることもできる。
【0078】
例えば、
図7A,Bに示すレンズユニット31のように、暗箱30を1/4球状のドーム型にすると、直方体状や立方体状の場合よりも暗箱を小型にできる。この1/4球状ドーム型の暗箱30を用いる場合、観察対象物を出し入れするための開閉蓋の代わりに、暗箱30の下部にスライドガラス5を挿入するためのスリット38を設けてもよい。また、本実施形態のレンズユニット31には、暗箱30の上面及び側面に光導入用の開口(上面開口36、側面開口35)を設けることもできる。
【0079】
[スリット38]
スリット38は、スライドガラス5に固定された観察対象物4を、レンズ2の直上域に挿入するためのものであり、暗箱30の底面に平行になるよう形成されている。スリット38の幅や長さは、レンズユニット31の大きさなどに応じて適宜設定することができる。また、スリット38の間隔は、特に限定されるものではないが、スリット38の間隔を必要以上に大きくすると、暗箱30内に外光が進入し、暗箱30の遮光効果が低減するため、スライドガラス5に固定又は載置された観察対象物4をレンズ2の直上域に配置するための操作を、かろうじて実施できる程度の間隔に設定することが好ましい。
【0080】
観察対象物4の出し入れを、蓋や扉ではなく、スリット38で行うことにより、暗箱30内部の暗環境を保持したまま、観察対象物4を所定の位置(レンズ2の直上域)に手動で配置することが可能となる。また、一般にスライドガラス5の長辺の長さは暗箱30の幅よりも長いため、スリット38を利用した暗箱30内へのスライドガラス5の挿入及び観察対象物4の位置調整は、スライドガラス5を手で持って動かすことで実施でき、顕微鏡観察時の利便性が向上する。また、本実施形態のレンズユニット31では、蓋や扉を開け閉めする必要がないため、作業の煩雑さも解消できる。
【0081】
[側面開口35]
側面開口35は、暗箱30内に励起光などを導入するためのものである。側面開口35は、迷光低減の観点から、暗箱30の底面近傍に設けることが好ましい。これにより、励起光などの光は浅い入射角で導入されるため、フロントカメラ25への進入を抑制することができる。また、側面開口35には、暗箱30内に蛍光成分が進入することを防止するため、励起光パス蛍光カットフィルター19を設けることもできる。
【0082】
[上面開口36]
上部開口36は、暗箱30内に可視光、自然光及び照明光などの光を導入するためのものであり、例えば、レンズ2の直上域に設けられ、レンズ2上に配置される観察対象物を照明する。一方、蛍光などの微弱光を観察する際は、上面開口36から導入される光により、微弱光の観察に支障がでる場合がある。このため、上面開口36は、開閉塞自在な構成となっていることが好ましい。
【0083】
[その他の構成]
本実施形態のレンズユニット31は、暗箱30内に光源が設置されていてもよいし、暗箱30の外に光源が設置されていてもよい。具体的には、光源は、暗箱30(側面開口35及び上面開口36)から離れた位置に設置されていてもよいし、砲弾型LEDなどの光源を側面開口35及び/又は上面開口36に差し込んでもよい。そして、砲弾型LEDなどの光源を、側面開口35及び/又は上面開口36に差しこむ構成は、光の方向と量の調整に再現性が期待できる。
【0084】
本実施形態のレンズユニット31は、レンズ2の手前や、レンズ2とフロントカメラ25の間などに、蛍光パス励起光カットフィルター17が設けられていてもよい。これにより、励起光成分を除去し、蛍光などの微弱光のみを観察することが可能となる。また、本実施形態のレンズユニット31では、暗箱30の幅をスライドガラス5の長辺よりも小さくして、スライドガラス5の両端を手指で支持し、表示部23上の画像を観察しながら、観察対象物4の移動を実施する構成とすることができる。
【0085】
[使用方法]
次に、本実施形態のレンズユニット31を用いて、微弱光像を観察する方法について説明する。例えば、本実施形態のレンズユニット31で蛍光像を観察する場合は、前述した第1の実施形態及びその変形例と同様に、スマートデバイス20のフロントカメラ25の上にレンズユニット31を置き、カメラレンズ25aの直上域にレンズ2が位置するように調整する。また、観察対象物4は、例えばスライドガラス5に固定又は載置する。そして、このスライドガラス5を暗箱30の下部に設けられたスリット38に挿入し、スライドガラス5の位置を調整することで、観察対象物4をレンズ2の直上に配置する。
【0086】
次に、励起光パス蛍光カットフィルター19を装着した側面開口35から励起光を導入する。なお、励起光パス蛍光カットフィルター19は、励起光が垂直方向から入射するようフィルター角度が調整されていることが好ましい。これにより、励起光パス蛍光カットフィルター19で蛍光成分が除かれた励起光が、観察対象物4に照射される。励起光照射により観察対象物4から発せられた蛍光は、レンズユニット31のレンズ2及びその直下のスマートデバイス20のフロントカメラ25に入射する。このとき、レンズ2には、蛍光パス励起光カットフィルター17により励起光成分が取り除かれた蛍光のみが入射し、レンズ2とフロントカメラ25で構成される複式顕微鏡により、蛍光像としてフロントカメラ25の光検出器(イメージセンサ)25bに投影される。
【0087】
前述した蛍光像観察は、暗箱30の上面開口36を塞ぎ、遮光して行うが、例えば、暗箱30の上面開口36から可視光や照明光を照射することにより、観察対象物4の透過像を観察することができる。また、観察対象物4が紫外光で励起して蛍光を発するものである場合は、上面開口36を塞いだ上で、側面開口35から観察対象物4に紫外光を照射することで、蛍光観察ができる。この場合、蛍光パス励起光カットフィルター17は用いても、用いなくてもよい。
【0088】
本実施形態のレンズユニットは、観察対象物を出し入れするための蓋や扉の代わりに、暗箱30の下部の底面近傍に、暗箱30内にスライドガラス5を挿入するためのスリット38を設けているため、暗箱内部の暗環境を保持したまま、手動で観察対象物をレンズ2の直上域に配置することができる。なお、暗箱30に、別途蓋や扉を設けても良く、蓋や扉を設ける構成も、本実施形態に含まれる。そして、本実施形態における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態及びその変形例と同様である。
【0089】
(第3の実施形態の第1変形例)
次に、本発明の第2の実施形態の第1変形例に係るレンズユニットについて説明する。
図8は本変形例のレンズユニットをスマートデバイスに適用した場合の概観図(平面図)である。
図8に示すように、本変形例のレンズユニット41は、暗箱30の底面が延長されている。
【0090】
本変形例のレンズユニット41は、暗箱30の延長部分30aをスマートデバイス20と共にクリップで挟むことにより、レンズユニット41をスマートデバイス20に容易に固定することができる。なお、本変形例における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態及びその変形例、並びに第2の実施形態と同様である。
【0091】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る複式顕微鏡装置について説明する。前述した第1及び第2の実施形態及びこれらの変形例では、レンズユニットをスマートデバイスに適用した場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、パソコン搭載のカメラ、各種ウェブカメラ、ゲーム制御器搭載のカメラ、市販の可搬型カメラなどにも適用することもできる。
【0092】
図9は本発明の本実施形態をデジタルカメラに適用した場合の複式顕微鏡装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図9に示すように、本発明の複合顕微鏡装置は、前述した第1の実施形態のレンズユニット1と、デジタルカメラ50とで構成され、デジタルカメラ50のカメラレンズ55を覆うように、レンズユニット1が配置されている。
【0093】
本発明の複合顕微鏡装置も、前述した第1の実施形態と同様の方法で、レンズユニット1の暗箱10内に収容された観察対象物に由来する微弱光を観察することができる。本発明の複合顕微鏡装置でも、デジタルカメラ50の光検出器57で微弱光が検出され、光検出器57からの信号に基づき生成されたデジタル画像が、デジタルカメラ50の表示部53や外部のスクリーンなどに表示される。なお、デジタルカメラ50を机に置いて観察を行うと表示部53が見えないことがあるが、その場合、デジタルカメラ50の通信機能を利用して撮像した画像を他のモバイル機器やパーソナルコンピュータに送信し、それらの表示部や表示装置を用いて観察すればよい。
【0094】
本発明の複合顕微鏡装置では、デジタルカメラ50として、カメラレンズ55の周辺に凹凸があるものや、カメラレンズ55がカメラ本体から突出するものを使用する場合は、暗箱10の底部にカバー部材を取り付けることもできる。
図10は
図9に示す暗箱10にカバー部材を取り付けた構成を示す斜視図である。
図10に示すように、カバー部材60は、レンズユニット1の暗箱10の底部外周に取り付けられる。
【0095】
カバー部材60の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、布、プラスチック、紙などの不透明で柔らかい素材で形成されていることが好ましい。また、カバー部材60の暗箱10への取付方法は、特に限定されるものではなく、テープやのりなどの接着剤で貼り付けてもよいし、スナップやボタン、フックなどの留め具を用いてもよい。また、カバー部材60をゴムスカートのようにすると、着脱も容易になる。
【0096】
前述した方法でカバー部材60が取り付けられた暗箱10は、デジタルカメラ50のカメラレンズ55のカメラ本体から突出している部分を、カバー部材60で囲むように配置される。これにより、カバー部材60で外光が遮蔽され、カメラレンズへの外光の入射を防止できる。
【0097】
本実施形態の複式顕微鏡装置は、暗箱10とレンズ2を一体化したレンズユニット1を用いているため、明るい室内や屋外においても、容易に自家発光像を観察することが可能となる。なお、本発明では、レンズユニット1に代えて、第1の実施形態の変形例又は第2の実施形態及びその変形例のレンズユニットを用いることができ、その場合も同様の効果が得られる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明の実施例として、本発明のレンズユニットとスマートフォンを用いて、顕微鏡観察を行った。
【0099】
<実施例1>
本実施例では、励起光パス蛍光カットフィルター及び蛍光パス励起光カットフィルターの両方とも使用せずに、スギ花粉の青色蛍光像の観察を行うため、
図7に示すレンズユニット31から励起光パス蛍光カットフィルター19及び蛍光パス励起光カットフィルター17を外したレンズユニットを用いた。そして、このレンズユニットとスマートフォンを用いた複式顕微鏡で、スギ花粉の蛍光観察を行った。
図11A,Bはスギ花粉の顕微鏡写真(倍率約100倍)であり、
図11Aは白色光透過明視野像であり、
図11Bは紫外光照射蛍光像である。
【0100】
スギ花粉は、紫外側の波長で青色に蛍光発色することが知られている。そこで、本実施例では、暗箱30の上面開口36に照明用光源として白色LEDを挿入、倍率を約100倍として、スギ花粉の明視野透過像を撮像した(
図11A参照)。また、暗箱30の上面開口36を遮光すると共に、側面開口35に波長375nmの紫外線LEDを挿入して蛍光像を撮像した(
図11B参照)。
【0101】
一般に、スマートデバイスに搭載されたカメラは紫外光に不感であるので、本実施例の複式顕微鏡装置では、励起光パス蛍光カットフィルター及び蛍光パス励起光カットフィルターは不要であり、本実施例の観察では、両フィルターともに使用していない。
図11Bに示すように、本発明のレンズユニットを用いた複合顕微鏡装置により、スギ花粉の蛍光像観察を容易に実施することができた。
【0102】
<実施例2>
次に、蛍光蛋白質EGFP(緑色蛍光)溶液を
図7に示すレンズユニット31を用いて蛍光観察した。励起光パス蛍光カットフィルター19及び蛍光パス励起光カットフィルター17として、緑色蛍光蛋白質用に調整されたスペクトルを持つ光学フィルターを用いた。蛍光パス励起光カットフィルター17はレンズ2の下方に、励起光パス蛍光カットフィルター19は側面開口35に装着した。
【0103】
図12A〜Cは
図7に示すレンズユニット31とスマートフォンを用いて撮影した蛍光蛋白質EGFP(緑色蛍光)溶液の顕微鏡写真(倍率約100倍)であり、
図12Aは白色光透過明視野像、
図12Bは紫外光による蛍光像、
図12Cは青色励起光による蛍光像である。いずれも、レンズユニット31のレンズ2よりも後方(レンズ2とフロントカメラ25の間)の光路上に、蛍光パス励起光カットフィルター17を設置して撮影した。
【0104】
図12Aは、側面開口35を閉塞し、上面開口36に照明用光源として白色LEDを挿入して撮像した透過明視野像である。蛍光パス励起光カットフィルター17は波長500nmより短波長側をカットするため、背景である明視野は黄色になる。
図12Bは、上面開口36を閉塞し、波長375nmの紫外LEDを、暗箱30の側面開口35に挿入して撮像した蛍光像である。
図12Bに示す顕微鏡写真では、右上に混在する小さな不純物が黄色に発色し、それ以外の溶液は緑色に発光した。
【0105】
図12Cは、上面開口36を閉塞し、暗箱30の外面に、励起光パス蛍光カットフィルター19を、側面開口35の全体を覆い、且つ励起光が垂直入射するように角度を付けて張り付けた状態で、暗箱30の外部に配置した青色LEDから観察対象物(蛍光蛋白質溶液)に向けて青色LED光を照射して撮影した蛍光像である。なお、励起光パス蛍光カットフィルター19には、波長475nmよりも長波長側の光をカットするものを使用した。
図12Cに示す顕微鏡写真では、左上に混在する小さな不純物が黄色に発色し、それ以外の溶液は緑色に発光した。また、
図12Bの紫外励起蛍光よりも、
図12Cに示す青色励起緑色蛍光の方が、発光強度が大きかった。
【0106】
<実施例3>
次に、実施例1,2で実施した斜光照明による撮像と、垂直照明による撮像を比較するため、
図7に示すレンズユニット31(斜光照明)と
図4に示すレンズユニット51(垂直照明)を用いてスギ花粉の蛍光観察を行った。
図13A,Bは
図7に示すレンズユニット31とスマートフォンを用いて撮影したスギ花粉の顕微鏡写真(倍率約100倍)であり、
図13Cは
図4に示すレンズユニット51とスマートフォンを用いて撮影したスギ花粉の顕微鏡写真(倍率約100倍)である。
図13Aは白色光透過明視野像、
図13Bは青色LEDの斜光照明による蛍光像であり、
図13Cは青色LEDの垂直照明による蛍光像である。いずれも、レンズ2よりも後方(レンズ2とフロントカメラ25の間)の光路上に蛍光パス励起光カットフィルター17を設置して撮像した。
【0107】
図13Aは、暗箱30の上面開口36に、照明用光源として白色LEDを挿入して撮像した透過明視野像である。蛍光パス励起光カットフィルター17は、波長500nmよりも短波長側をカットするため、
図13Aの白色光透過明視野像は、黄色の明視野を背景に花粉のシルエットが写る画像となった。
【0108】
図13Bは、斜光照明による蛍光像であり、上面開口36を閉塞すると共に、暗箱30の外面に、励起光パス蛍光カットフィルター19を、側面開口35の全体を覆い、且つ励起光が垂直入射するように角度を付けて張り付け、暗箱30の外部に配置した青色LEDから観察対象物(花粉)に向けて青色LED光を照射して撮影した。なお、励起光パス蛍光カットフィルター19には、波長475nmよりも長波長側の光をカットするものを使用した。
【0109】
図13Bに示す顕微鏡写真では、暗視野に緑色蛍光が観察された。同様に斜光照明で撮像した
図11Bの顕微鏡写真と比較すると、蛍光発色が異なるが、これは、励起光の波長が異なること(375nmの紫外線LEDと470nmの青色LED)と、光学フィルターの有無の両方に起因すると考えられる。
【0110】
図13Cは、波長475nmより長波長側をカットする励起光パス蛍光カットフィルター19を上面開口16に装着し、励起光パス蛍光カットフィルター19に対して垂直に設置した青色LEDから青色LED光を照射して撮像した垂直照明による蛍光像である。この図からも分かるように、背景光のある不完全な暗視野に明るい緑色蛍光が観察された。そして、斜光照明で撮像した
図13Bの像と、垂直照明で撮像した
図13Cの像を比較すると明らかなように、斜光照明は、観測光学系への励起用照射光の進入防止について顕著な効果が認められた。
【0111】
一方、斜光照明の場合は、観察対象物に斜めに光が当たる分光量が減るため、蛍光強度は垂直照明に比べて弱くなる。
図13Dは、
図13Bと蛍光強度が同等になるように
図13Cの明度を落とした画像である。
図13Dの顕微鏡写真は、画像全体の明度が低下したため、背景は暗視野化した。蛍光のSN比(Signal/Noise ratio)については、斜光照明に比べて垂直照明はやや劣るが、観測不能なレベルではなく、不利とは言えない。従って、本発明のレンズユニットにおいては、斜光照明及び透過型顕微鏡を構成する垂直照明は、共に有用であると考えられる。
【0112】
以上の結果から、本発明のレンズユニット及び複合顕微鏡を用いることにより、手軽に観察対象物の微弱光像を観察することができることが確認された。