特許第6579542号(P6579542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579542
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60G 21/045 20060101AFI20190912BHJP
   B60G 11/36 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B60G21/045
   B60G11/36
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-98786(P2015-98786)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-215663(P2016-215663A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】長坂 智
【審査官】 高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−184511(JP,A)
【文献】 特開2013−256272(JP,A)
【文献】 特公昭44−009127(JP,B1)
【文献】 特開平07−180182(JP,A)
【文献】 実開昭57−109006(JP,U)
【文献】 特開2006−327561(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/123630(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102139614(CN,A)
【文献】 特開昭62−187606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の前部に設けられた左右一対の前輪と、
前記車体の後部に設けられた左右一対の後輪と、
左側の前記前輪と左側の前記後輪とを連結し、これらの上下方向の動きを相互に伝達する1つの板ばねで構成された左側連結部と、
右側の前記前輪と右側の前記後輪とを連結し、これらの上下方向の動きを相互に伝達する1つの板ばねで構成された右側連結部とを備え、
前記車体は、前記前輪と前記後輪との間にそれぞれ1つずつ設けられた左右一対の支持部を有しており、
前記左側連結部は、前記前輪と前記後輪との間で左側の前記支持部にのみ回動可能に取り付けられて前記支持部と前記前輪および前記後輪との各間は前記車体に連結されておらず
前記右側連結部は、前記前輪と前記後輪との間で右側の前記支持部にのみ回動可能に取り付けられて前記支持部と前記前輪および前記後輪との各間は前記車体に連結されていない、車両。
【請求項2】
前記車体の下方において前記前輪どうしを連結し、前記前輪のそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するための前側連結部、および
前記車体の下方において前記後輪どうしを連結し、前記後輪のそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するための後側連結部の少なくとも一方を備える、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車体の下方において前記前輪どうしを連結し、前記前輪のそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するための前側連結部と、
前記車体の下方において前記後輪どうしを連結し、前記後輪のそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するための後側連結部とを備え、
前記左側連結部および前記右側連結部の各前端部は、前記前側連結部を介して左右一対の前記前輪に連結されており、
前記左側連結部および前記右側連結部の各後端部は、前記後側連結部を介して左右一対の前記後輪に連結されている、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記前側連結部の左右方向両端部と前記車体との間にそれぞれ配置され、左右一対の前記前輪から伝わる振動を吸収するための左右一対の第1ばね部材と、
前記後側連結部の左右方向両端部と前記車体との間にそれぞれ配置され、左右一対の前記後輪から伝わる振動を吸収するための左右一対の第2ばね部材とを備える、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記左側連結部および前記右側連結部の各前端部は、平面視において左右一対の前記第1ばね部材に重なるように配置されており、
前記左側連結部および前記右側連結部の各後端部は、平面視において左右一対の前記第2ばね部材に重なるように配置されている、請求項4に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪と後輪とが連動するように構成された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、従来から前輪と後輪とが連動するように構成された車両がある。特許文献1に記載された車両は、メインフレームと、メインフレームの下方に前後方向に延びて設けられた左右一対のサブフレームとを有している。各サブフレームの前部および後部は、メインフレームに対してロッドを介して連結されている。各サブフレームの前部および後部とメインフレームとの間には、スプリングが配置されている。各サブフレームの前部および後部には、前輪および後輪が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4904598号
【0004】
特許文献1に記載された車両では、前輪と後輪とがサブフレームで連結されているが、前輪と後輪との間で上下方向の動きを十分に伝達することができず、高い走破性を得ることが困難であった。また、各サブフレームの前部および後部がメインフレームに対してロッドを介して連結されていたので、構成が複雑であり、製造コストが高くなるという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、簡単な構成で高い走破性を得ることができる車両を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両の特徴は、車体と、前記車体の前部に設けられた左右一対の前輪と、前記車体の後部に設けられた左右一対の後輪と、左側の前記前輪と左側の前記後輪とを連結し、これらの上下方向の動きを相互に伝達する1つの板ばねで構成された左側連結部と、右側の前記前輪と右側の前記後輪とを連結し、これらの上下方向の動きを相互に伝達する1つの板ばねで構成された右側連結部とを備え、前記車体は、前記前輪と前記後輪との間にそれぞれ1つずつ設けられた左右一対の支持部を有しており、前記左側連結部は、前記前輪と前記後輪との間で左側の前記支持部にのみ回動可能に取り付けられて前記支持部と前記前輪および前記後輪との各間は前記車体に連結されておらず、前記右側連結部は、前記前輪と前記後輪との間で右側の前記支持部にのみ回動可能に取り付けられて前記支持部と前記前輪および前記後輪との各間は前記車体に連結されていないことにある。
【0007】
この構成では、前輪と後輪とを左側連結部および右側連結部を介して連動させることができ、前輪と後輪との間で上下方向の動きを十分に伝達して高い走破性を得ることができる。例えば、走行中に左側の前輪が持ち上げられると、左側連結部の全体が左側の支持部において回動され、左側連結部の後端部が下がって後輪が押し下げられる。これにより、後輪の接地力が向上し、高い走破性を得ることができる。
【0008】
また、左側連結部および右側連結部は、板ばね状に形成されているので、前輪および後輪から伝わる衝撃や振動を吸収でき、高い走行安定性を得ることができる。さらに、左側連結部および右側連結部で前輪および後輪の前後方向の位置を定めることができるので、特許文献1に記載されているようなロッドを設ける必要がなく、簡単な構成で安価に製造できる。
【0009】
本発明の他の特徴は、前記車体の下方において前記前輪どうしを連結し、前記前輪のそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するための前側連結部、および前記車体の下方において前記後輪どうしを連結し、前記後輪のそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するための後側連結部の少なくとも一方を備えることにある。
【0010】
この構成では、左右一対の前輪間および左右一対の後輪間の少なくとも一方で上下方向の動きを相互に伝達することができるので、走破性を高めることができる。
【0011】
本発明の他の特徴は、前記車体の下方において前記前輪どうしを連結し、前記前輪のそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するための前側連結部と、前記車体の下方において前記後輪どうしを連結し、前記後輪のそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するための後側連結部とを備え、前記左側連結部および前記右側連結部の各前端部は、前記前側連結部を介して左右一対の前記前輪に連結されており、前記左側連結部および前記右側連結部の各後端部は、前記後側連結部を介して左右一対の前記後輪に連結されていることにある。
【0012】
この構成では、左右一対の前輪および左右一対の後輪の全てを連動させることができる。
【0013】
本発明の他の特徴は、前記前側連結部の左右方向両端部と前記車体との間にそれぞれ配置され、左右一対の前記前輪から伝わる振動を吸収するための左右一対の第1ばね部材と、前記後側連結部の左右方向両端部と前記車体との間にそれぞれ配置され、左右一対の前記後輪から伝わる振動を吸収するための左右一対の第2ばね部材とを備えることにある。
【0014】
この構成では、車体を、左側連結部および右側連結部だけでなく、各第1ばね部材および各第2ばね部材によっても支持できる。したがって、大荷重を支持できるとともに、走行安定性を高めることができる。
【0015】
本発明の他の特徴は、前記左側連結部および前記右側連結部の各前端部は、平面視において左右一対の前記第1ばね部材に重なるように配置されており、前記左側連結部および前記右側連結部の各後端部は、平面視において左右一対の前記第2ばね部材に重なるように配置されていることにある。
【0016】
この構成では、左側連結部および右側連結部の各前端部を第1ばね部材と共に前輪の近くに配置でき、かつ、左側連結部および右側連結部の各後端部を第2ばね部材と共に後輪の近くに配置できる。したがって、旋回時のローリングを抑えて、走行安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両の構成を示す正面図である。
図3】前側連結部に対する左側連結部および第1ばね部材の取付構造を示す側面図である。
図4】(A),(B)のそれぞれは、他の実施形態における前側連結部および後側連結部に対する左側連結部の固定位置を示す正面図である。
図5】(A),(B)のそれぞれは、他の実施形態における左側連結部の前端部と第1ばね部材との位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる「前、後、左、右、上、下」の各方向は、図中に矢印で示した方向を基準とする。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両10の構成を示す斜視図である。図2は、車両10の構成を示す正面図である。図1では、車体12を二点鎖線(仮想線)で示しており、車体12に搭載された各種の部品(シートおよびバッテリー等)を省略している。図2では、前輪14aと後輪16aと支持部28aの一部を二点鎖線(仮想線)で示している。本実施形態に係る車両10は、高齢者や障害者が使用する電動車椅子である。
【0020】
図1に示すように、車両10は、車体12と、左右一対の前輪14a,14bと、左右一対の後輪16a,16bと、左側の前輪14aと左側の後輪16aとを連結する左側連結部18aと、右側の前輪14bと右側の後輪16bとを連結する右側連結部18bとを備えている。また、車両10は、前輪14a,14bどうしを連結する前側連結部20と、後輪16a,16bどうしを連結する後側連結部22と、左右一対の第1ばね部材24a,24bと、左右一対の第2ばね部材26a,26bとを備えている。すなわち、本実施形態において車両10は、所謂リジットアスクルで構成されている。
【0021】
図1に示すように、車体12は、平面視で四角形の枠状の本体部12aと、本体部12aの左右方向両側部に設けられた左右一対の板状の支持部28a,28bとを有している。各支持部28a,28bは、前輪14a,14bと後輪16a,16bとの間において、本体部12aから下方に突出するように設けられている。各支持部28a,28bの互いに対向する内側面には、左右一対の回動軸30a,30bが左右方向に延びて設けられている。各回動軸30a,30bには、取付板32a,32bが回動可能に取り付けられている。各取付板32a,32bには、2つの貫通孔(図示省略)が前後方向に間隔を隔てて形成されている。
【0022】
図2に示すように、車体12の前後方向中央部には、搭乗者が着座するシート34が設けられており、車体12の後部には、バッテリー36が搭載されている。また、図示していないが、車体12には、カバーやアームレストなどの各種の部品が設けられている。
【0023】
図1に示すように、前側連結部20は、前輪14a,14bのそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するためのものであり、車体12から下方に離間して左右方向に延びて設けられている。本実施形態の前側連結部20は、断面形状が四角形の棒状に形成されており、前側連結部20の左右方向両端部には、左右一対のモータ40a,40bが取り付けられている。各前輪14a,14bは、モータ40a,40bの回転軸(図示省略)に取り付けられている。
【0024】
図1に示すように、後側連結部22は、後輪16a,16bのそれぞれの上下方向の動きを相互に伝達するためのものであり、車体12から下方に離間して左右方向に延びて設けられている。本実施形態の後側連結部22は、断面形状が四角形の棒状に形成されており、後側連結部22の左右方向両端部には、左右一対のモータ42a,42bが取り付けられている。各後輪16a,16bは、モータ42a,42bの回転軸(図示省略)に取り付けられている。
【0025】
図1に示す各モータ40a,40b,42a,42bには、図2に示すバッテリー36と、図示していないコントローラとが電気的に接続されている。コントローラは、図2に示すシート34の近傍に設けられた図示していないアームレストに取り付けられている。
【0026】
図1に示す左右一対の第1ばね部材24a,24bは、左右一対の前輪14a,14bから伝わる振動を吸収するためのものであり、前側連結部20の左右方向両端部と車体12との間に配置されている。図1に示す左右一対の第2ばね部材26a,26bは、左右一対の後輪16a,16bから伝わる振動を吸収するためのものであり、後側連結部22の左右方向両端部と車体12との間に配置されている。
【0027】
図3は、前側連結部20に対する左側連結部18aおよび第1ばね部材24aの取付構造を示す側面図である。図3に示すように、左側の第1ばね部材24aは、コイルばねであり、第1ばね部材24aの下端部には、板状の取付部材46が設けられている。取付部材46の左側部には、第1U字ボルト48が挿通される2つの第1貫通孔46a,46aが前後方向に間隔を隔てて形成されている。取付部材46の右側部には、第2U字ボルト50が挿通される2つの第2貫通孔46b,46bが前後方向に間隔を隔てて形成されている。第1U字ボルト48および第2U字ボルト50のそれぞれの両端部には、雄ねじ部(図示省略)が設けられている。
【0028】
図3に示すように、左側連結部18aの前端部は前側連結部20の上面に配置されており、取付部材46は、前側連結部20の上面において左側連結部18aの前端部と重ねて配置されている。第1U字ボルト48および第2U字ボルト50は、前側連結部20の前面、後面および下面に沿うようにして、左右方向に間隔を隔てて配置されている。そして、第1U字ボルト48および第2U字ボルト50のそれぞれの雄ねじ部(図示省略)が、第1貫通孔46a,46aおよび第2貫通孔46b,46bに挿通されて、第1ナット52,52および第2ナット54,54に螺合されている。第1ばね部材24aの上端部は車体12(図1)に固定されている。
【0029】
図1に示す右側の第1ばね部材24b、左側の第2ばね部材26aおよび右側の第2ばね部材26bのそれぞれは、図3に示す左側の第1ばね部材24aとほぼ同様に構成されている。以下には、これらの構成について簡単に説明する。
【0030】
図1に示すように、右側の第1ばね部材24bの下端部には、板状の取付部材58が設けられている。取付部材58は、前側連結部20の上面に右側連結部18bの前端部と重ねて配置されており、第1U字ボルト60および第2U字ボルト62を用いて前側連結部20の上面に固定されている。第1ばね部材24bの上端部は車体12(図1)に固定されている。
【0031】
図1に示すように、左側の第2ばね部材26aの下端部には、板状の取付部材64が設けられている。取付部材64は、後側連結部22の上面に左側連結部18aの前端部と重ねて配置されており、第1U字ボルト66および第2U字ボルト68を用いて後側連結部22の上面に固定されている。第2ばね部材26aの上端部は車体12(図1)に固定されている。
【0032】
図1に示すように、右側の第2ばね部材26bの下端部には、板状の取付部材70が設けられている。取付部材70は、後側連結部22の上面に右側連結部18bの後端部と重ねて配置されており、第1U字ボルト72および第2U字ボルト74を用いて後側連結部22の上面に固定されている。第2ばね部材26bの上端部は車体12(図1)に固定されている。
【0033】
図1に示すように、左側連結部18aは、左側の前輪14aと左側の後輪16aとを連結し、これらの上下方向の動きを相互に伝達するためのものであり、ばね鋼によって前後方向に延びる板ばね状に形成されている。左側連結部18aの前後方向中央部には、支持部28aの取付板32aに形成された2つの貫通孔(図示省略)に対応する2つの貫通孔(図示省略)が前後方向に間隔を隔てて形成されている。図2に示すように、左側連結部18aの前後方向中央部は、取付板32aの上面に当接されており、左側連結部18aの各貫通孔と取付板32aの各貫通孔には、ボルト80,80が挿通されている。各ボルト80,80にはナット82,82が螺合されており、これにより、左側連結部18aが取付板32aに固定されている。
【0034】
図1に示すように、左側連結部18aの前端部は、左側の第1ばね部材24aの鉛直下方において、前側連結部20の上面に取付部材46およびU字ボルト48,50を用いて固定されている。左側連結部18aの後端部は、左側の第2ばね部材26aの鉛直下方において、後側連結部22の上面に取付部材64およびU字ボルト66,68を用いて固定されている。
【0035】
図2に示すように、本実施形態では、左側連結部18aが、搭乗者が搭乗していない状態で撓むことがない程度の剛性を有している。取付板32aの上面、前側連結部20の上面および後側連結部22の上面は、ほぼ同じ高さに配置されており、左側連結部18aは、前側連結部20と後側連結部22との間で水平に配置されている。
【0036】
図1に示すように、右側連結部18bは、右側の前輪14bと右側の後輪16bとを連結し、これらの上下方向の動きを相互に伝達するためのものであり、ばね鋼によって前後方向に延びる板ばね状に形成されている。右側連結部18bの前後方向中央部には、支持部28bの取付板32bに形成された2つの貫通孔(図示省略)に対応する2つの貫通孔(図示省略)が前後方向に間隔を隔てて形成されている。右側連結部18bの前後方向中央部は、取付板32bの上面に当接されており、右側連結部18bの各貫通孔と取付板32bの各貫通孔には、ボルト84,84が挿通されている。各ボルト84,84にはナット(図示省略)が螺合されており、これにより、右側連結部18bが取付板32bに固定されている。
【0037】
図1に示すように、右側連結部18bの前端部は、右側の第1ばね部材24bの鉛直下方において、前側連結部20の上面に取付部材58およびU字ボルト60,62を用いて固定されている。右側連結部18bの後端部は、右側の第2ばね部材26bの鉛直下方において、後側連結部22の上面に取付部材70およびU字ボルト72,74を用いて固定されている。
【0038】
図1に示すように、本実施形態では、右側連結部18bが、搭乗者が搭乗していない状態で撓むことがない程度の剛性を有している。取付板32bの上面、前側連結部20の上面および後側連結部22の上面は、ほぼ同じ高さに配置されており、右側連結部18bは、前側連結部20と後側連結部22との間で水平に配置されている。
【0039】
車両10を使用する際には、図2に示すシート34に搭乗者が着座し、搭乗者がコントローラ(図示省略)を操作することによって、各モータ40a,40b,42a,42bを走行態様に応じて駆動させる。
【0040】
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、車両10の走行時に、左右一対の前輪14a,14bおよび左右一対の後輪16a,16bのいずれか1つが路面の凹凸等で持ち上げられると、その動きが他に伝達されて走破性が高められる。例えば、左側の前輪14aが持ち上げられると、前側連結部20の左端部が持ち上げられ、前側連結部20の右端部が下がって右側の前輪14bが押し下げられる。また、左側連結部18aの全体が支持部28aの回動軸30aを中心として回動され、左側連結部18aの後端部が下がって左側の後輪16aが押し下げられる。
【0041】
図1に示すように、左側連結部18aおよび右側連結部18bは板ばね状に形成されているので、走行時には、前輪14a,14bおよび後輪16a,16bから伝わる衝撃や振動がこれらで吸収されて走行安定性が高められる。また、車体12の荷重を、左側連結部18a、右側連結部18b、第1ばね部材24a,24bおよび第2ばね部材26a,26bで支持できるので、大荷重に耐えることができる。
【0042】
図1に示すように、左側連結部18aおよび右側連結部18bで前輪14a,14bおよび後輪16a,16bの前後方向の位置を定めることができるので、位置決めのための特別な機構は不要であり、簡単な構成で安価に製造できる。
【0043】
図1に示すように、左側連結部18aおよび右側連結部18bの前端部は、平面視において第1ばね部材24a,24bに重なるように配置されているので、これらの前端部を第1ばね部材24a,24bと共に前輪14a,14bの近くに配置できる。また、左側連結部18aおよび右側連結部18bの後端部は、平面視において第2ばね部材26a,26bに重なるように配置されているので、これらの後端部を第2ばね部材26a,26bと共に後輪16a,16bの近くに配置できる。したがって、旋回時のローリングを抑えて、走行安定性を高めることができる。
【0044】
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態に係る車両10は電動車椅子であるが、本発明が適用される車両の種類はゴルフカートや不整地走行車両などであってもよい。また、車両の駆動方式は、エンジン駆動方式やモータとエンジンを併用するハイブリッド駆動方式などであってもよい。
【0045】
図1に示すように、上記実施形態では、車両10が前側連結部20および後側連結部22を備えているが、これらの一方または両方は省略されてもよい。これらが省略された場合でも、前輪14a,14bと後輪16a,16bとの間で上下方向の動きを相互に伝達することができるので、高い走破性を得ることができる。
【0046】
図1に示す左側連結部18aおよび右側連結部18bの材料は、ばね鋼に限定されるものではなく、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックなどであってもよい。
【0047】
図2に示すように、左側連結部18aおよび右側連結部18b(図2では図示省略)における回動軸30aよりも前側の部分の長さをL1とし、回動軸30aよりも後側の部分の長さをL2としたとき、長さL1,L2は、適宜変更されてもよい。例えば、長さL2を短くして回動軸30aよりも後側の部分のばね定数を大きくしてもよい。この場合には、バッテリー36の重量による車体12の後部の沈み込みを抑えて走行安定性を高めることができる。長さL1,L2を変更するための手段としては、例えば、回動軸30a,30bの位置を前後方向で調整するための位置調整機構が用いられてもよい。
【0048】
図4(A),(B)は、それぞれ他の実施形態における前側連結部20および後側連結部22に対する左側連結部18aの固定位置を示す正面図である。図2に示すように、上記実施形態では、左側連結部18aおよび右側連結部18b(図2では図示省略)の前端部および後端部が、前側連結部20および後側連結部22のそれぞれの上面に固定されているが、これらの固定位置は適宜変更されてもよい。
【0049】
例えば、図4(A)に示すように、左側連結部18aおよび右側連結部18b(図4では図示省略)のそれぞれの前端部が前側連結部20の上面に固定されるとともに、これらの後端部が後側連結部22の下面に固定されてもよい。また、図4(B)に示すように、左側連結部18aおよび右側連結部18b(図4では図示省略)のそれぞれの前端部が前側連結部20の下面に固定されるとともに、これらの後端部が後側連結部22の上面に固定されてもよい。さらに、図示していないが、左側連結部18aおよび右側連結部18bのそれぞれの前端部および後端部が、前側連結部20および後側連結部22のそれぞれの下面に固定されてもよい。
【0050】
図4(A),(B)に示すように、左側連結部18aおよび右側連結部18b(図4では図示省略)のそれぞれの前端部または後端部を前側連結部20または後側連結部22の下面に固定する際には、これらの前端部または後端部が板状の取付部材86で押さえられてもよい。この場合、下側の取付部材86と上側の取付部材46,64とは、複数のボルト88とナット90で締結されてもよい。
【0051】
図5(A),(B)は、それぞれ他の実施形態における左側連結部18aの前端部と第1ばね部材24aとの位置関係を示す側面図である。図3に示すように、上記実施形態では、左側連結部18aの前端部が平面視で第1ばね部材24aに対して重なるように配置されているが、図5(A)に示すように、左側連結部18aの前端部は、左右方向において第1ばね部材24aの外側(左側)に配置されてもよい。また、図5(B)に示すように、左側連結部18aの前端部は、左右方向において第1ばね部材24aの内側(右側)に配置されてもよい。これらの構成において、左側連結部18aの前端部は、ボルト92およびナット94を用いて前側連結部20に対して直接固定されてもよい。なお、これらの構成は、左側連結部18aの後端部と第2ばね部材26aとの関係や、右側連結部18bの前端部と第1ばね部材24bとの関係や、右側連結部18bの後端部と第2ばね部材26bとの関係で用いられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…車両、12…車体、14a,14b…前輪、16a,16b…後輪、
18a…左側連結部、18b…右側連結部、24a,24b…第1ばね部材、
26a,26b…第2ばね部材、28a,28b…支持部
図1
図2
図3
図4
図5