特許第6579556号(P6579556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6579556熱接着性繊維及びコーティング用樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579556
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】熱接着性繊維及びコーティング用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/02 20060101AFI20190912BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20190912BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20190912BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   D06M13/02
   D06M15/263
   D06M15/227
   D06M15/333
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-181194(P2018-181194)
(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-157327(P2019-157327A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2018-43655(P2018-43655)
(32)【優先日】2018年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢太
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−28092(JP,A)
【文献】 特開2005−239512(JP,A)
【文献】 特開2002−60251(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0888808(KR,B1)
【文献】 中国特許出願公開第105778825(CN,A)
【文献】 米国特許第6379794(US,B1)
【文献】 特開2014−208812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維本体と、
上記繊維本体の表面を被覆し且つエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種のエチレン系共重合体100質量部融点が40〜150℃であるワックス1〜96質量部及び粘着付与剤5〜30質量部を含む外層とを有することを特徴とする熱接着性繊維。
【請求項2】
ワックスが、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、蜜蝋、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、フィッシャートロプシュワックス及びポリエチレンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種のワックスを含有することを特徴とする請求項1に記載の熱接着性繊維。
【請求項3】
粘着付与剤が、石油樹脂系粘着付与樹脂、フェノール樹脂系粘着付与樹脂、テルペン樹脂系粘着付与樹脂及びロジン系樹脂系粘着付与樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の粘着付与樹剤を含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱接着性繊維。
【請求項4】
繊維本体の表面を被覆するコーティング用樹脂組成物であって、エチレン系共重合体100質量部融点が40〜150℃であるワックス1〜96質量部及び粘着付与剤5〜30質量部を含むことを特徴とするコーティング用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着性繊維及びコーティング用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱接着性繊維が様々な分野で用いられている。特許文献1には、繊維糸の表面に感温性接着剤を担持した接着性繊維糸が開示されている。
【0003】
又、近年、織物では実現できない伸縮性を有していることから編物が見直されている。そして、長繊維の表面にホットメルト樹脂をコーティングしてなる熱接着性繊維を用いて接着性を有する編物を作製することも検討されて始めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−183184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記接着性繊維糸は、繊維糸の表面に感温性接着剤を担持させてなるが、繊維糸の表面に対する感温性接着剤の接着性が低く、感温性接着剤が繊維糸の表面から脱離し易いという問題点を有している。そのため、接着性繊維糸を用いて編み機により編物を作製する工程中において、接着性繊維糸の感温性接着剤が繊維糸の表面から脱落するという問題点を生じる。更に、上記接着性繊維糸を用いて形成された編物を布帛などの基材に接着させた場合、基材から編物が容易に脱離するという問題点を生じる。
【0006】
又、上記接着性繊維糸は、その表面の摩擦抵抗が大きいため、編み機で編物を作製する際に接着性繊維糸の滑り性が悪く、切断するという問題点も有する。
【0007】
本発明は、繊維の表面に接着性を付与するための外層が強固に一体化しており、繊維と外層との間の剥離が概ね抑制され且つ表面の摩擦抵抗が低く、例えば、編み機で円滑に編物を作製することができる熱接着性繊維を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱接着性繊維は、
繊維本体と、
上記繊維本体の表面を被覆し且つエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種のエチレン系共重合体100質量部及び融点が40〜150℃であるワックス1〜96質量部を含む外層とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱接着性繊維は、繊維本体の表面を被覆している外層が、エチレン系共重合体100質量部及び融点が40〜150℃であるワックス1〜96質量部を含むので、繊維本体と外層とが優れた密着性でもって接着一体化している。
【0010】
従って、熱接着性繊維を用いて編み機によって編物を作製する工程において、熱接着性繊維の繊維本体と外層とが剥離するような事態を概ね防止し、熱接着性繊維を用いて編物を円滑に作製することができる。
【0011】
更に、熱接着性繊維を用いて製造された編物を布帛などの基材に接着一体化させた場合にあっても、編物は基材に優れた密着性でもって接着一体化しているので、編物が基材から離脱する事態を概ね抑制することができる。
【0012】
又、本発明の熱接着性繊維は、その表面の摩擦抵抗が低いので滑り性に優れている。従って、例えば、編み機での編物の製造中に熱接着性繊維が切断するという事態を概ね防止することができ、編み機を用いて容易に編物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱接着性繊維は、繊維本体と、上記繊維本体の表面を被覆している外層とを有している。
【0014】
[繊維本体]
熱接着性繊維は、繊維本体を有している。繊維本体としては、短繊維であっても長繊維であってもよいが、繊維本体と外層との剥離防止性、及び、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を効果的に発現することができるので、長繊維が好ましい。
【0015】
繊維本体としては、熱接着性繊維に繊維糸の形態を付与することができるものであれば、特に限定されず、例えば、フィラメント(長繊維糸)、ステープル(短繊維糸)、スパン(紡績糸)などが挙げられ、繊維本体と外層との剥離防止性、及び、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を効果的に発現することができるので、フィラメントが好ましい。
【0016】
フィラメントは、一本のフィラメント(糸)からなるモノフィラメント(糸)と、複数本のフィラメント(糸)を収束させて一本の糸にしたマルチフィラメントを含み、マルチフィラメントが好ましい。マルチフィラメントは、撚りが加えられていてもよい。
【0017】
スパン(紡績糸)は、ステープルを平行状態となるように引き揃えて撚りを加えて一本の糸としたものである。
【0018】
熱接着性繊維としては、芯鞘型の複合繊維も含まれる。芯鞘型の複合繊維の場合、芯鞘構造を有する繊維における芯成分を構成している樹脂部分が、熱接着性繊維の繊維本体を構成する。
【0019】
繊維本体は合成樹脂を含有している。合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン、パラアミド(長連鎖ポリアミド)などのポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニロン、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリクラール、ノボロイドなどが挙げられ、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。なお、合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0020】
繊維本体全体の平均繊維径は、40〜500μmが好ましく、70〜130μmがより好ましい。モノフィラメントの平均繊維径は、5〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、10〜30μmが特に好ましい。なお、繊維本体の平均繊維径は下記の要領で測定された値をいう。繊維本体を長さ方向に直交する面で切断し、繊維本体の断面の顕微鏡写真(倍率:250倍)を撮影する。断面を包囲し得る最小径の真円の直径を繊維本体の直径とする。各繊維本体の直径の相加平均値を繊維本体の平均繊維径とする。
【0021】
[外層]
熱接着性繊維は、繊維本体の表面(周面)を被覆している外層を有している。外層は、繊維本体の周面を好ましくは全面的に被覆し、繊維本体に熱接着性を付与している。
【0022】
外層は、エチレン系共重合体と、融点が40〜150℃であるワックスとを含んでいる。
【0023】
エチレン系共重合体は、エチレン成分を含有しておればよく、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種のエチレン系共重合体を含む。なお、エチレン系共重合体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。エチレン系共重合体としては、繊維本体と外層との剥離防止性と、熱接着性繊維の滑り性を向上させることができるので、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0024】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量は、5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、5〜35質量%が特に好ましい。酢酸ビニル成分の含有量が上記範囲であると、繊維本体と外層との剥離防止性、及び、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を効果的に発現することができる。
【0025】
エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、0.2〜2500g/10分が好ましく、10〜2500g/10分がより好ましく、15〜900g/10分がより好ましく、15〜50g/10分が特に好ましい。なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して測定された値をいう。
【0026】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の軟化点は、40〜110℃が好ましく、40〜101℃がより好ましく、60〜90℃が特に好ましい。なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体の軟化点は、JIS K6924−2によって測定された値をいう。
【0027】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。α−オレフィンの炭素数は、3〜20が好ましく、6〜8がより好ましい。α−オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンなどが挙げられる。なかでも、α−オレフィンとしては、繊維本体と外層との剥離防止性をより向上させることができるので、1−オクテンが好ましい。
【0028】
エチレン−α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィン成分の含有量は、20〜40モル%が好ましく、30〜40モル%がより好ましく、35〜40モル%が特に好ましく、35〜37モル%が最も好ましい。α−オレフィン成分の含有量が上記範囲であると、繊維本体と外層との剥離防止性、及び、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を効果的に発現することができる。
【0029】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレイトは、5〜2500g/10分が好ましく、150〜2500g/10分がより好ましく、500〜1500g/10分が特に好ましく、850〜1200g/10分が最も好ましい。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して測定された値をいう。
【0030】
エチレン−α−オレフィン共重合体の軟化点は、40〜110℃が好ましく、40〜101℃がより好ましく、60〜90℃が特に好ましい。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体の軟化点は、JIS K6924−2によって測定された値をいう。
【0031】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、チーグラー触媒、メタロセン触媒、クロム系触媒などのシングルサイト系触媒を用いて製造されることが好ましい。なかでも、メタロセン触媒を用いて製造されることがより好ましい。
【0032】
エチレン−1−オクテン共重合体としては、市販されている製品を用いることができる。例えば、ダウケミカル社から販売されている以下の製品が挙げられる。商品名「アフィニティ EG8185」(MFR:30g/10分)、商品名「アフィニティ EG8200」(MFR:5g/10分)、商品名「アフィニティ GA1900」(MFR:1000g/10分)、商品名「アフィニティ GA1950」(MFR:500g/10分)商品名「アフィニティ GA1875」(MFR:1250g/10分)及び商品名「アフィニティ GA1000R」(MFR:1000g/10分)
【0033】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体である。なお、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。即ち、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチレン−アクリル酸エステル共重合体又はエチレン−メタクリル酸エステル共重合体を意味する。
【0034】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、特に限定されず、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体などが挙げられる。なお、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0035】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体中における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、25〜35質量%が特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が上記範囲であると、繊維本体と外層との剥離防止性、及び、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を効果的に発現することができる。
【0036】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のメルトフローレイトは、0.1〜500g/10分が好ましく、2〜500g/10分がより好ましく、20〜500g/10分が特に好ましい。なお、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して測定された値をいう。
【0037】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の軟化点は、60〜200℃が好ましく、70〜150℃がより好ましく、80〜130℃が特に好ましい。なお、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の軟化点は、JIS K2207によって測定された値をいう。
【0038】
ワックスとしては、特に限定されず、例えば、フィッシャートロプシュワックス、及びポリエチレンワックスなどの合成ワックス;パラフィンワックス、及びマイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;蜜蝋、モンタンワックス、及び植物ワックスなどの天然系ワックスなどが挙げられる。上記例示したワックスには、該ワックスを酸化させた酸化ワックスも含まれる。植物ワックスとしては、例えば、ひまわりワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス,カルナバワックス(カルナバ蝋)、木ロウなどの植物に由来するワックスなどが挙げられる。ワックスは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ワックスは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0039】
ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、蜜蝋、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、フィッシャートロプシュワックス、酸化ワックス及びポリエチレンワックスが好ましく、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、酸化ワックス及びポリエチレンワックスがより好ましく、フィッシャートロプシュワックス及びパラフィンワックスが特に好ましく、フィッシャートロプシュワックスがより好ましい。これらのワックスによれば、繊維本体と外層との剥離防止性、及び、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を熱接着性繊維に効果的に発現させることができる。
【0040】
ワックスの融点は、40〜150℃であり、60〜115℃が好ましい。融点が上記範囲内であるワックスによれば、繊維本体と外層との剥離防止性、及び、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を熱接着性繊維に効果的に発現させることができる。
【0041】
なお、ワックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。具体的には、DSC装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC−60」など)を用いて、ワックス10mgを、空気雰囲気下において、30℃から150℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、25℃まで冷却した後、30℃から150℃まで昇温速度5℃/分で再度加熱し、この再度の加熱過程におけるDSC曲線の最も高い吸熱ピーク温度を、ワックスの融点とする。
【0042】
外層中において、ワックスの含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対して1〜96質量部であり、3〜90質量部が好ましく、20〜90質量部がより好ましく、30〜85質量部がより好ましく、40〜80質量部が特に好ましい。ワックスの含有量が1質量部以上であると、繊維本体と外層との接着一体化が強固となり、繊維本体と外層との剥離をより効果的に抑制することができる。又、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を熱接着性繊維に効果的に発現させることができる。ワックスの含有量が96質量部以下であると、繊維本体と外層との接着一体化が強固となり、繊維本体と外層との剥離をより効果的に抑制しながら、熱接着性繊維の糸としての柔軟性を保持することができる。
【0043】
[粘着付与剤]
外層は、粘着付与剤を含有していてもよい。粘着付与剤としては、ロジン系粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、スチレン系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、クマロン−インデン系粘着付与剤、ポリアミド粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤、ナフテンオイル系粘着付与剤、及びケトン系粘着付与剤などが挙げられる。粘着付与剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。粘着付与剤は、一部又は完全に水素添加(水添)されていてもよい。
【0044】
粘着付与剤としては、石油樹脂系粘着付与樹脂、フェノール樹脂系粘着付与樹脂、テルペン樹脂系粘着付与樹脂及びロジン系樹脂系粘着付与樹脂が好ましい。
【0045】
ロジン系粘着付与剤としては、未変性ロジン(例えば、トールロジン、ガムロジン、及びウッドロジン等)、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマール酸変性ロジン、並びにこれらのエステル(例えば、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、及びエチレングリコールエステル等)などが挙げられる。
【0046】
石油樹脂系粘着付与剤としては、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5−C9共重合系石油樹脂、及び脂環式炭化水素系石油樹脂(例えば、ジシクロペンタジエン系石油樹脂など)、並びに水素添加石油樹脂などが挙げられる。石油樹脂系粘着付与剤は、石油樹脂が好ましく、脂環式炭化水素系石油樹脂がより好ましく、ジシクロペンタジエン系石油樹脂が特に好ましい。石油樹脂系粘着付与剤は、ワックスと混合しやすく、熱接着性繊維の柔軟性を向上させることができ、編み機による編物の作成を容易に行なうことができる。
【0047】
テルペン系粘着付与剤としては、テルペン樹脂(例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、及びジペンテン重合体等)、並びに変性テルペン樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、及び水素添加テルペン系樹脂等)などが挙げられる。
【0048】
フェノール系粘着付与剤としては、フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、及びロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0049】
スチレン系粘着付与剤としては、スチレン単独重合体、α−メチルスチレン単独重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体などのスチレン系樹脂が挙げられる。
【0050】
粘着付与剤の軟化点は、40〜160℃が好ましく、60〜110℃がより好ましい。粘着付与剤の融点が上記範囲内であると、繊維本体と外層との接着一体化が強固となり、繊維本体と外層との剥離をより効果的に抑制することができる。又、熱接着性繊維の優れた滑り性の効果を熱接着性繊維に効果的に発現させることができる。なお、粘着付与剤の軟化は、JIS K6863に準拠して環球法によって測定された値をいう。
【0051】
外層における粘着付与剤の含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、5〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部が特に好ましい。粘着付与剤の含有量が1質量部以上であると、繊維本体と外層との接着強度が向上する。粘着付与剤の含有量が30質量部以下であると、熱接着性繊維の表面の摩擦抵抗が小さくなり、熱接着性繊維の滑り性が向上する。
【0052】
外層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0053】
[酸化防止剤]
外層は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0054】
[紫外線吸収剤]
外層は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0055】
[充填剤]
外層は、充填剤を含有していてもよい。充填剤としては、特に限定されず、例えば、雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉などが挙げられる。充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0056】
[熱接着性繊維]
熱接着性繊維において、外層の厚みは10μm以上が好ましく、10〜1000μmがより好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。外層の厚みが10μm以上であると、繊維本体と外層との接着一体化が強固となり、繊維本体と外層との剥離をより効果的に抑制することができ、基材に対する熱接着性繊維の接着性が向上する。外層の厚みが1000μm以下であると、繊維本体と外層との接着一体化が強固となり、繊維本体と外層との剥離をより効果的に抑制することができ、基材に対する熱接着性繊維の接着性が向上する。更に、熱接着性繊維の糸としての柔軟性が向上する。なお、外層の厚みとは、繊維本体の径方向における外層の厚みをいう
【0057】
熱接着性繊維の製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1)繊維本体の表面にコーティング用樹脂組成物を塗工することによって繊維本体の表面に外層を積層一体化し、繊維本体の表面を外層で被覆して熱接着性繊維を製造する方法、(2)繊維本体を構成する合成樹脂を第1押出機に供給して溶融混練し、第1押出機から繊維状の押出物を連続的に押出す工程と、外層を構成するコーティング用樹脂組成物を第2押出機に供給して溶融混練して第2押出機から筒状の押出物を連続的に押出す工程と、上記繊維状の押出物の外周に筒状の押出物を連続的に積層一体化させて、繊維状の押出物の表面を筒状の押出物で連続的に被覆し、繊維状の押出物を繊維本体とし、筒状の押出物を外層とした熱接着性繊維を製造する工程とを含む方法などが挙げられる。
【0058】
ここで、コーティング用樹脂組成物は、熱接着性繊維の外層と同一の樹脂組成を有している。即ち、コーティング用樹脂組成物は、エチレン系共重合体100質量部と、融点が40〜150℃であるワックス1〜96質量部を含んでいる。なお、エチレン系共重合体及びワックスは、熱接着性繊維の外層において説明した事項と同一であるので説明を省略する。
【0059】
更に、コーティング用樹脂組成物は、粘着付与剤及びその他の添加剤を含有していてもよい。なお、粘着付与剤及びその他の添加剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤など)を含有していてもよい。なお、粘着付与剤及びその他の添加剤は、熱接着性繊維の外層において説明した事項と同一であるので説明を省略する。
【0060】
コーティング用樹脂組成物は、エチレン系共重合体及び融点が40〜150℃であるワックスに、必要な添加剤を加えた上で溶融して混合することによって製造することができる。
【0061】
コーティング用樹脂組成物の180℃における溶融粘度は、500〜1000000mPa・sであり、10000〜100000mPa・sが好ましく、15000〜50000mPa・sがより好ましい。コーティング用樹脂組成物の180℃における溶融粘度が500mPa・s以上であると、繊維本体の表面に円滑に塗工することができる。コーティング用樹脂組成物の180℃における溶融粘度が1000000mPa・s以下であると、熱接着性繊維の繊維本体と外層とを強固に一体化させることができ、繊維本体と外層とが剥離する事態を概ね防止することができる。
【0062】
「溶融粘度」は一定の温度で加熱溶融状態となったコーティング用樹脂組成物の粘度である。コーティング用樹脂組成物の溶融粘度は、ブルックフィールドRVT型粘度計を用い、スピンドルNo.27を用いて測定することができる。例えば、コーティング用樹脂組成物を10.5g計量して180℃に加熱したブルックフィールドRVT型粘度計に投入してコーティング用樹脂組成物を熱溶融させる。投入から30分後、溶融したコーティング用樹脂組成物内でスピンドル(No.27)を粘度にあわせて回転数を調整し、0.5〜20rpmで回転させる。更に30分経過後、コーティング用樹脂組成物の溶融粘度を計測する。
【0063】
熱接着性繊維の外層の原料となるコーティング用樹脂組成物は、溶融粘度が低いので、繊維本体の表面に優れた密着性でもって一体化して繊維本体を被覆することができる。従って、熱接着性繊維の繊維本体と外層とは隙間を殆ど生じさせることなく互いに強固に接着一体化している。熱接着性繊維の外層が繊維本体の表面から剥離する事態を殆ど生じることはない。
【0064】
特に、熱接着性繊維の繊維本体が、マルチフィラメント及びスパン(紡績糸)のように、表面に凹凸を多数有している場合にあっても、コーティング用樹脂組成物は、低い溶融粘度を有しているので、繊維本体の凹凸内に円滑に進入して、繊維本体との間に隙間を殆ど生じさせることなく繊維本体の表面に積層一体化される。従って、熱接着性繊維の繊維本体と外層との間には殆ど隙間が生じておらず、繊維本体と外層とは強固に接着一体化しており、熱接着性繊維の外層が繊維本体の表面から剥離する事態を殆ど生じることはない。
【0065】
そして、熱接着性繊維はその表面における摩擦抵抗が低いので滑り性に優れている。従って、熱接着性繊維を原料として編み機を用いて円滑に編物を製造することができる。熱接着性繊維は優れた滑り性を有しているので、編物の製造工程中において、熱接着性繊維が切断するようなことは殆どない。更に、熱接着性繊維を用いて織布及び不織布などの編物以外の繊維製品を製造する場合にあっても、熱接着性繊維は優れた滑り性を有していることから、熱接着性繊維が切断するようなことは殆どなく、繊維製品を円滑に製造することができる。
【0066】
又、熱接着性繊維を用いて製造された繊維製品は、優れた熱接着性を有している。従って、熱接着性繊維を加熱して外層を溶融させた上で基材上に圧着した後、圧着状態を維持した状態で熱接着性繊維の外層を冷却することによって、繊維製品を基材に容易に接着一体化させることができる。
【0067】
上述の通り、熱接着性繊維の繊維本体と外層との間には殆ど隙間が生じておらず、繊維本体と外層とは強固に接着一体化しており、熱接着性繊維の外層が繊維本体の表面から剥離する事態を殆ど生じることはない。従って、繊維製品又は/及び基材にこれらを相対変位させ又は離間させる応力が加わった場合あっても、繊維製品と基材とが互いに接着一体化した状態を確実に維持する。
【0068】
なお、熱接着性繊維から形成された繊維製品を接着一体化させる基材としては、特に限定されず、例えば、織布、不織布、編物及び布帛などの繊維製品、合成樹脂などの有機化合物、金属又は無機化合物から形成された基材などが挙げられる。基材は、シート状であっても、その他の形態であってもよい。合成樹脂としては、特に限定されず、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ゴム系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【実施例1】
【0069】
以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【0070】
熱接着性繊維を製造するために用いた化合物を下記に示す。
【0071】
[繊維本体]
・マルチフィラメント(ポリエチレンテレフタレート、モノフィラメントの平均繊維径:20μm、マルチフィラメント(繊維本体全体)の平均繊維径:124μm)
【0072】
[エチレン系共重合体]
・エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンケミカル社製 商品名「エバフレックスEV550」、酢酸ビニル成分の含有量:14質量%、メルトフローレイト:15g/10分、軟化点:89℃)
・エチレン−1−オクテン共重合体(ダウケミカル社製 製品名「アフィニティGA1900」、1−オクテン成分の含有量:35〜37モル%、メルトフローレイト:1000g/10分、軟化点:68℃)
・エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(住友化学社製 商品名「アクリフトC M5021」、メタクリル酸メチル成分の含有量:28質量%、メルトフローレイト:450g/10分、軟化点:90℃)
【0073】
[ワックス]
・フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製 商品名「サゾールワックスH1」、融点:105℃)
・マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製 商品名「HI−MIC 1080」、融点:83℃)
・パラフィンワックス(日本精蝋社製 商品名「パラフィンワックス155」、融点:68℃)
・ポリエチレンワックス(三井化学社製 商品名「ハイワックスNL−100」、融点:103℃)
【0074】
[粘着付与剤]
・石油樹脂系粘着付与樹脂(JXTGエネルギー社製 商品名「T−REZ HB103」、軟化点:103℃)
・フェノール樹脂系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製 商品名「タマノル521」、軟化点:108℃)
・テルペン樹脂系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル社製 商品名「YSポリエスターT−100」、軟化点:100℃)
・ロジン系樹脂系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製 商品名「エステルガム105」、軟化点:105℃)
【0075】
(実施例1〜15、比較例1〜3)
エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ワックス及び粘着付与剤を表1に示した所定量ずつ押出機に供給して110℃にて溶融混練してコーティング用樹脂組成物とした。
【0076】
マルチフィラメントを繊維本体として連続的に供給する一方、コーティング用樹脂組成物を110℃となるように押出機から連続的に吐出し、繊維本体の外周面の全面にコーティング用樹脂組成物を連続的に塗工し、コーティング用樹脂組成物を冷却した。繊維本体の外周面がコーティング用樹脂組成物を含む外層によって全面的に被覆されてなる熱接着性繊維を得た。外層の厚みは、100±20μmであった。
【0077】
得られたコーティング用樹脂組成物について、180℃における溶融粘度を測定し、その結果を表1に示した。
【0078】
得られた熱接着性繊維について、せん断引張試験、糸引き抜き試験、摩擦抵抗及び折り曲げ性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0079】
[せん断引張試験]
基材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体繊維(EVA繊維)から形成されたシート、及び、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)から形成されたシートを用意した。一本の熱接着性繊維をその外層の表面が130℃となるように加熱した。
【0080】
次に、熱接着性繊維を各基材上に0.5MPaの圧力で押圧し、押圧状態を維持したまま熱接着性繊維をその表面温度が30℃となるまで冷却して、熱接着性繊維を基材上に熱接着した。
【0081】
熱接着性繊維と基材とをそれぞれ把持し、熱接着性繊維を基材から剥離させたときの状態を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。
A・・・熱接着性繊維の外層がその厚み方向の途中から破壊されていた
B・・・熱接着性繊維の外層と基材との界面から剥離していた。
【0082】
[糸引き抜き試験]
熱接着性繊維の外層を構成しているコーティング用樹脂組成物から構成された厚み0.5mmのシートを用意した。
【0083】
次に、繊維本体を構成するマルチフィラメント5本を用意した。5本のマルチフィラメントを互いに重なり合わないように且つ径方向に互いに密着させた状態でシート上に配設してホットプレスしてマルチフィラメントをシート上に熱接着させた。マルチフィラメントはその長さ方向の4cmの部分だけがシート上に熱接着されていた。ホットプレス条件は、温度110℃、圧力0.5MPa、接着時間1秒とした。
【0084】
しかる後、マルチフィラメント及びシートを20℃の雰囲気中に1時間放置した後、マルチフィラメントを束ねてチャックしてプッシュプルゲージ(イマダ社製のフォースゲージ)にて引き抜き試験(測定雰囲気温度:20℃)を行い、最大荷重を測定した。
【0085】
[摩擦抵抗]
熱接着性繊維を切断して長さ10cmの試験糸を50本作製した。第1ステンレス板に両面テープを貼った。両面テープ上に、上記50本の試験糸を互いに重ならないように並べて固定した。第1ステンレス板の試験糸の配設面上に、質量1kgの第2ステンレス板を載置した。プッシュプルゲージ(イマダ社製のフォースゲージ)で第2ステンレス板を試験糸の長さ方向に押し、第2ステンレス板が動き出したときの荷重を測定した。
【0086】
[折り曲げ性]
熱接着性繊維を切断して長さ10cmの試験糸を作製した。得られた試験糸の両端を手で把持し、試験糸を半円形となるように湾曲させて10秒間に亘って保持した。次に、試験糸を元の状態に復帰させた後、試験糸の外層に割れが生じているか否かを目視観察した。実施例2の熱接着性繊維は、柔軟性に欠けており、糸としての特性を有していなかった。
【0087】
【表1】