特許第6579573号(P6579573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579573
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】自動改札機の架台
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20190912BHJP
【FI】
   G07B15/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-144365(P2015-144365)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-27308(P2017-27308A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】593092482
【氏名又は名称】JR東日本メカトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502064829
【氏名又は名称】株式会社JR東日本メカトロサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】茂木 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】指田 清
(72)【発明者】
【氏名】小関 定二
(72)【発明者】
【氏名】常世田 裕司
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3157815(JP,U)
【文献】 特開2012−084097(JP,A)
【文献】 特開平07−152931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に設置され、自動改札機を支持するとともに、前記自動改札機を利用する利用者の通路を構成する自動改札機の架台であって、
所定の距離をおいて互いに平行に設置される2本の通路板支持部材と、
前記2本の通路板支持部材に跨って設置され、前記通路の通行方向の両端の縁部のそれぞれが前記2本の通路板支持部材のそれぞれの上面に載せ置かれる中央通路板と、
前記中央通路板の前記通路の通行方向の両端側のそれぞれに、前記2本の通路板支持部材のそれぞれと前記設置面とに跨って設置され、前記通路の通行方向の一方の縁部が前記2本の通路板支持部材のそれぞれの上面に載せ置かれる2枚のスロープ通路板と、
前記中央通路板と前記2枚のスロープ通路板の前記通路の幅方向の外側に設置され、前記自動改札機が載せ置かれる改札機支持部材と、
を有し、
前記2枚のスロープ通路板のそれぞれの下面には、下方に向かって突出する係止部が設けられ、
前記2本の通路板支持部材のそれぞれの上面には、所定の位置においては前記係止部が上下方向に挿抜可能で、前記所定の位置よりも前記通路の通行方向の端側の位置においては前記係止部が上下方向に挿抜不可能に係止する係止穴が設けられ、
前記2枚のスロープ通路板のそれぞれの前記係止部が前記係止穴に挿入され、前記2枚のスロープ通路板の間に前記中央通路板が設置された状態では、前記2枚のスロープ通路板は、前記中央通路によって前記係止部が前記係止穴に上下方向に挿抜不可能な位置に維持されることを特徴とする自動改札機の架台。
【請求項2】
前記係止部は、突出方向の付け根側に設けられる首部と、前記突出方向の先端側に設けられ前記首部より大径の頭部と、を有し、
前記係止穴は、前記首部および前記頭部を上下方向に挿抜可能な広幅部と、前記頭部を上下方向に挿抜不可能な狭幅部と、を有し、前記広幅部の前記通路の通行方向の少なくとも一方に、前記狭幅部が前記広幅部に連続して設けられることを特徴とする請求項1に記載の自動改札機の架台。
【請求項3】
前記スロープ通路板は、前記通路板支持部材の上面に載せ置かれた状態で前記設置面に対して平行になる水平部を有し、
前記係止部は、前記水平部の下面に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の自動改札機の架台。
【請求項4】
前記改札機支持部材は、長尺方向の両端部に設けられて前記設置面に接する脚部を有し、
前記2本の通路板支持部材は、前記脚部どうしの間に設置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動改札機の架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動改札機の架台に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道駅構内のレイアウト変更などの工事において、自動改札機を一時的に移設することがある。このような場合には、移設先に仮設用の架台を設け、この仮設用の架台に自動改札機を設置して運用するという方法が用いられている。例えば、特許文献1には、自動改札機の仮設用の架台として、一対の架台(11)に架け渡される通路板(12)と、架台(11)と床面(FL)とに架け渡されるスロープ(13)とを有し、通路板(12)が架台(11)にネジ止めされる構成が開示されている。また、特許文献2には、一対の支持部材(110)に架け渡される天板(120)と、一対の支持部材(110)のそれぞれと床面との間に架け渡されるスロープ板(130)と、支持部材(110)と天板(120)とスロープ板(130)の上側に設けられる(自動改札機が設置される)取付け架台(300)とを有する構成が開示されている。
【0003】
また、自動改札機は、一般的に、自動改札機とは別に設けられる管理システムなどとケーブルによって接続されている。このため、自動改札機を常設して運用する場合には、設置場所の床面等に溝(ピット)を掘り、この溝にケーブルを敷設している。このような構成では、床面等に溝を掘る必要がある。また、溝を掘ることができない場所には、自動改札機の設置が困難である。そこで、自動改札機を常設して運用する場合でも、架台を用いることによって、床面等に溝を掘らなくてもよくする構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3157815号
【特許文献2】特開2012−84097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような自動改札機の架台は、工事の作業者からすると、設置や撤去の作業が容易で、作業工数が少ないことが好ましい。また、管理システムと接続するためのケーブルのメンテナンスや敷設状態の調整のため、自動改札機の設置後においてもケーブルにアクセスできる構成であることが好ましい。さらに、メンテナンスに要する手間が少ないことが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、架台を構成する各部材の結合にネジを用いる構成であるため、設置や撤去作業においてネジの締結や取外し作業が必要となり、手間を要する。また、特許文献1や特許文献2に記載の構成では、自動改札機を設置すると、通路板や天板を取り外すことができないから、その下側に敷設したケーブルにアクセスできない。さらに、通路板やスロープがネジ止めされる構成では、使用者(利用客)の通行の際の振動によってネジが緩むことがあるため、定期的にネジの緩みの点検や締め直しの作業を行わなければならない。
【0006】
一方、改札機の使用者(利用客)からすると、架台に設けられる通路(通路板やスロープ)の上面に段差や突起物等がなく、通路の傾斜が緩く短いことが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、通路板を上面側からネジ止めする構成であるから、ネジの頭部が通路板の上面に突出することがある。また、自動改札機の設置後に通路板の取り外しができない構成であると、ケーブルの敷設構造(引き回しや並べ方)の調整(例えば、水平方向に並べ、高さ方向に重ならないようにするなど)が困難であるほか、敷設の作業性の確保のために、ケーブルを敷設するスペースを大きくしなければならない。このため、通路板を地面から高い位置に設けなければならず、通路の傾斜を緩く短くできない。
【0007】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、設置や撤去やメンテナンスの作業が容易で作業工数が少なく、通路の上面に突起や段差の少ない自動改札機の架台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、設置面に設置され、自動改札機を支持するとともに、前記自動改札機を利用する利用者の通路を構成する自動改札機の架台であって、所定の距離をおいて互いに平行に設置される2本の通路板支持部材と、前記2本の通路板支持部材に跨って設置され、前記通路の通行方向の両端の縁部のそれぞれが前記2本の通路板支持部材のそれぞれの上面に載せ置かれる中央通路板と、前記中央通路板の前記通路の通行方向の両端側のそれぞれに、前記2本の通路板支持部材のそれぞれと前記設置面とに跨って設置され、前記通路の通行方向の一方の縁部が前記2本の通路板支持部材のそれぞれの上面に載せ置かれる2枚のスロープ通路板と、前記中央通路板と前記2枚のスロープ通路板の前記通路の幅方向の外側に設置され、前記自動改札機が載せ置かれる改札機支持部材と、を有し、前記2枚のスロープ通路板のそれぞれの下面には、下方に向かって突出する係止部が設けられ、前記2本の通路板支持部材のそれぞれの上面には、所定の位置においては前記係止部が上下方向に挿抜可能で、前記所定の位置よりも前記通路の通行方向の端側の位置においては前記係止部が上下方向に挿抜不可能に係止する係止穴が設けられ、前記2枚のスロープ通路板のそれぞれの前記係止部が前記係止穴に挿入され、前記2枚のスロープ通路板の間に前記中央通路板が設置された状態では、前記2枚のスロープ通路板は、前記中央通路によって前記係止部が前記係止穴に上下方向に挿抜不可能な位置に維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スロープ通路板は、中央通路板によって通路板支持部材から外れない状態に維持される。また、中央通路板は、その両側に設置されるスロープ通路板によって、位置ずれしない状態に維持される。このため、スロープ通路板および中央通路板をネジ止めしなくても、通路板支持部材に取り付けられた状態に維持される。また、スロープ通路板の設置は、スロープ通路板の係止部を通路板支持部材の係止穴に挿入してスロープ通路体をスライド的に移動させるだけでよい。一方、スロープ通路板の撤去は、設置とは反対側にスライドさせるだけでよい。また、中央通路板は、2枚のスロープ通路板どうしの間に嵌め込むだけで設置できる。したがって、設置作業や撤去作業が容易であり、設置作業や撤去作業においてネジの締結や取外しの作業が不要になるから、作業工数を少なくできる。また、中央通路板やスロープ通路板の設置にネジを用いないから、ネジの緩みの点検が不要になり、メンテナンスの手間を削減することができる。
【0010】
また、通路板の組み立てにネジ等を用いない構成であるから、通路板の上面に突起物が存在しないようにできる。さらに、改札機支持部材は中央通路板の外側に配置される構成であるから、自動改札機が設置された状態であっても、中央通路板を通路支持部材から取り外すことによって、ケーブルが敷設されるスペースにアクセス可能となる。このため、ケーブルの敷設状態の調整(例えば、水平方向に並べ、高さ方向に重ならないようにするなど)が可能となり、ケーブルを束ねた状態で敷設しなくてもよい。したがって、ケーブルを敷設するためのスペースの高さを小さくできるから、中央通路板の位置を低くでき、結果としてスロープ通路板の傾斜を緩く短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る自動改札機の架台の構成例を、模式的に示す分解斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る自動改札機の架台が組み立てられた状態を、模式的に示す外観斜視図である。
図3A図3Aは、改札機支持部材の構成例を模式的に示す斜視図であり、上側から見た図である。
図3B図3Bは、改札機支持部材の構成例を模式的に示す斜視図であり、下側から見た図である。
図4図4は、係止部と係止穴の構成例を模式的に示す部分断面図であり、下側から見た図である。
図5図5は、本実施形態に係る自動改札機の架台の組み立て途中の状態を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、組み立て完了後における通路板支持部材と中央通路板とスロープ通路板3との位置関係を模式的に示す断面図である。
図7図7は、工具穴と工具避け穴との関係および係止部と係止穴との関係を模式的に示す図である。
図8図8は、各規格に用いられる通路板支持部材の構成例を示す斜視図である。
図9図9は、本実施形態に係る自動改札機の架台を並べて設置する構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る自動改札機の架台は、鉄道の駅などで自動改札機を設置するために用いられる。また、本実施形態に係る自動改札機の架台は、自動改札機の利用者の通路としての機能も有する。さらに、本実施形態に係る自動改札機の架台は、鉄道の駅などにおいて、工事などの際に自動改札機を一時的な仮設状態にして運用する場合と、常設して運用する場合のいずれにも用いることができる。
【0013】
本実施形態では、説明の便宜上、自動改札機の架台を単に「架台」と称し、架台が設置される面を「設置面F」と称する。設置面Fは、例えば駅構内の地面や床面などである(図6参照)。また、架台の通路の通行方向を「通路通行方向」と称し、この通路通行方向に直角な方向を「通路幅方向」と称する。各図においては、通路通行方向を矢印Pで示し、通路幅方向を矢印Bで示す。
【0014】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係る架台1の構成例を、模式的に示す分解斜視図である。図2は、本実施形態に係る架台1が組み立てられた状態を、模式的に示す外観斜視図である。図1図2に示すように、本実施形態に係る架台1は、1枚の中央通路板2と、2枚のスロープ通路板3と、2本の通路板支持部材4と、設置する自動改札機9に応じた数の改札機支持部材5とを有する。図1図2においては、通路幅方向Bの両側に自動改札機9を設置するため、架台1が2本の改札機支持部材5を有する構成を例に示す。さらに、本実施形態に係る架台1は、目隠し中央通路板11と、目隠しスロープ通路板12と、サイドカバー13と、改札機スカート15とを有する。
【0015】
1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3が、自動改札機9の利用者の通路を構成する。1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3は、通路通行方向Pに直列に並べて設置される。より具体的には、1枚の中央通路板2が通路通行方向Pの中央に設置され、2枚のスロープ通路板3のそれぞれが通路通行方向Pの両端側に設置される。中央通路板2とスロープ通路板3は、2本の通路板支持部材4に支持される。2本の通路板支持部材4は筒状の部材であり、それらの長手方向が通路幅方向Bに平行な向きで、所定の距離をおいて設置面Fに設置される。そして、中央通路板2の通路通行方向Pの両縁部のそれぞれが、2本の通路板支持部材4のそれぞれの上面に載せ置かれる。また、2枚のスロープ通路板3のそれぞれの通路通行方向Pの中央側の縁部が、2本の通路板支持部材4のそれぞれの上面に載せ置かれる。さらに、中央通路板2およびスロープ通路板3の通路幅方向Bの外側には、改札機支持部材5が、2本の通路板支持部材4を跨いで設置面Fに設置される。そして、それぞれの改札機支持部材5の上側に、自動改札機9が設置される。
【0016】
このような構成であると、中央通路板2は、2本の通路板支持部材4によって設置面Fから浮いた位置に支持される。そして、中央通路板2の下側には、設置面Fと中央通路板2と2本の通路板支持部材4とに囲まれるスペースが形成される。自動改札機9と外部とを接続するケーブルをこのスペースに敷設できる。このため、本実施形態に係る架台1によれば、設置面Fにケーブルを敷設するための溝などを形成しなくてもよい。このため、設置面Fに溝を設ける工事が不要であり、設置作業の作業工数の削減を図ることができる。また、設置面Fに溝を設けることができない場所にも設置できる。
【0017】
なお、特に図2に示すように、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3とで構成される通路の通路通行方向Pの寸法は、改札機支持部材5に設置される自動改札機9の通路通行方向Pの寸法よりも短い。そして、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3とは、通路幅方向視において、改札機支持部材5に設置される自動改札機9の端面よりも内側に収まるように(通路通行方向Pの外側に突出しないように)設置される。このような構成によれば、2枚のスロープ通路板3が、自動改札機9の付近の人の通行を阻害することが無い。なお、中央通路板2とスロープ通路板3の個々の通路通行方向Pの寸法は特に限定されない。要は、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3とが通路通行方向Pに直列に並べられた場合に、その合計寸法が、自動改札機9の通路通行方向Pの寸法よりも短くなればよい。
【0018】
また、図2に示すように、改札機スカート15とスロープ通路板3とは、本実施形態に係る架台1が組み立てられた状態で、通路通行方向Pの端部の位置が一致していることが好ましい。このような構成によれば、本実施形態に係る架台1の通路通行方向Pの端部に凹凸がなくなるから、自動改札機9の付近を通行する利用者等のスムーズな通行を妨げない。
【0019】
(中央通路板とスロープ通路板)
中央通路板2およびスロープ通路板3は、いずれも上下方向視で四辺形の板状の部材である。中央通路板2とスロープ通路板3の通路幅方向Bの寸法は同じである。ただし、通路幅方向Bの具体的な寸法は特に限定されるものではなく、規格などに応じて適宜設定される。また、中央通路板2とスロープ通路板3の通路通行方向Pの具体的な寸法も、特に限定されるものではない。前述のとおり、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3の合計の寸法が、設置される自動改札機9の通路通行方向Pの寸法よりも小さければよい。
【0020】
中央通路板2は、平板状に形成される。一方、スロープ通路板3は、単純な平板状の形状ではなく、通路幅方向視において略「へ」の字状に屈曲または湾曲している。「へ」の字の一方の斜辺に対応する部分を「水平部31」と称し、他方の斜辺に対応する部分を「傾斜部32」と称する。通路通行方向Pの中央側の辺の縁部(中央通路板2に隣接する辺の縁部)が水平部31となり、それ以外の部分が傾斜部32となる。水平部31は、通路板支持部材4の上面に載せ置かれ、その状態で、水平部31の上面は設置面Fに対して平行となる。傾斜部32は、水平部31と反対側の縁部が設置面Fに載せ置かれ、その上面が水平部31の側からその反対側に向かって下り傾斜となる。傾斜部32の上面の設置面Fに対する傾斜は、バリアフリーの観点から、1/13以下であることが好ましい。
【0021】
なお、中央通路板2とスロープ通路板3の水平部31との間で段差が生じないように、中央通路板2とスロープ通路板3水平部31とは、同じ厚さを有する。また、傾斜部32の通路通行方向Pの端側の縁部は、設置面Fとの間で段差が生じないように(または段差が小さくなるように)、通路通行方向Pの端側に向かうにしたがって徐々に薄くなる。例えば、中央通路板2とスロープ通路板3は、厚さが6mmのステンレス板によって形成される。この場合、傾斜部32の通路通行方向Pの端側の縁部は、通路通行方向Pの端側に向かって徐々に薄くなるように加工される。また、スロープ通路板3は、水平部31の厚さが中央通路板2の厚さと同じであればよく、水平部31と傾斜部32とは同じ厚さでなくてもよい。
【0022】
中央通路板2とスロープ通路板3には、設置や撤去などの作業性の向上のため、鍵状の工具を差し込む工具穴21,34が設けられる。工具穴21,34は、厚さ方向に貫通する貫通穴である。工具穴21,34に鍵状の工具の先端を差し込み、差し込んだ工具を把持することによって、中央通路板2やスロープ通路板3の移動などの取り扱いが容易となる。中央通路板2には、通路通行方向Pの端側の2辺(すなわち、スロープ通路板3に隣接する2辺)の一方また両方に工具穴21が形成される。スロープ通路板3には、水平部31に工具穴34が形成される。さらに、スロープ通路板3の水平部31の下面には、下側に向かって突出する係止部33が設けられる(図4参照)。係止部33は、後述する通路板支持部材4の上面に設けられる係止穴41に係止する部分である。係止部33については後述する。
【0023】
中央通路板2とスロープ通路板3の上面には、それぞれ、全面にわたって滑り止めのための凹凸パターンが設けられる。凹凸パターンの寸法や形状は特に限定されるものではない。例えば、図1図2に示すように、円形の凸パターンが二次元状に配列される構成が適用できる。なお、滑り止めのための凹凸パターンは、中央通路板2とスロープ通路板3のそれぞれに一体に形成される。例えば、中央通路板2とスロープ通路板3は、例えば各種縞板や縞鋼板により形成される構成が適用できる。なお、利用者のスムーズな通行を確保するため、中央通路板2とスロープ通路板3の上面には、前述の凹凸パターン以外には突起が設けられない。
【0024】
(通路板支持部材)
図1に示すように、通路板支持部材4は、断面が略長方形の四角筒状の構成を有する部材である。ただし、通路板支持部材4の断面形状は四辺形に限定されるものではなく、設置面Fに設置した状態で上面が設置面Fに平行になる形状であればよい。通路板支持部材4の上面には、改札機支持部材5と結合するためのネジ穴43と、スロープ通路板3の係止部33を係止させる係止穴41と、中央通路板2とスロープ通路板3の設置や取外しに用いる工具との干渉を避けるための工具避け穴42とが設けられる。また、通路板支持部材4の側面の長手方向の端部近傍には、通路板支持部材4どうしを連結する連結板14をネジ止めするためのネジ穴44が設けられる。
【0025】
改札機支持部材5と結合するためのネジ穴43は、通路板支持部材4の長尺方向(通路幅方向B)の端部近傍であって、中央通路板2およびスロープ通路板3が載せ置かれる部分の外側に設けられる。図2においては、通路幅方向Bの両側において改札機支持部材5と結合できるように、ネジ穴43が通路板支持部材4の長尺方向の両端部に設けられる構成を示す。
【0026】
工具避け穴42は、上下方向に貫通する貫通穴である。工具避け穴42については後述する。
【0027】
(改札機支持部材)
図3A図3Bは、改札機支持部材5の構成例を模式的に示す斜視図である。なお、図3Aは上側から見た図であり、図3Bは下側から見た図である。改札機支持部材5は、上下方向視において通路通行方向Pに長い四辺形の枠状の構成を有しており、四辺の枠に囲まれる領域は上下方向に貫通する開口部となっている。また、改札機支持部材5は、設置面Fに設置した状態で、長尺方向の両端部が設置面Fに接触し、長尺方向の中間部は設置面Fとの間に所定の高さの隙間が形成されるように構成される。具体的には、改札機支持部材5の長尺方向の両端部には下方に向かって突出する脚部51が設けられ、改札機支持部材5の下面の長尺方向の中間部は、上側に向かって窪む凹部57が設けられる。このような構成であると、改札機支持部材5を設置面Fに設置した状態では、脚部51の下面が設置面Fに接触し、長尺方向の中間部である凹部57の下面と設置面Fとの間には所定の高さの隙間が形成される。この隙間の高さ寸法(すなわち、脚部51の高さH)は、通路板支持部材4の高さ寸法と同じか、それよりも大きい寸法に設定される。なお、脚部51の高さHは、図3A図3Bに示すように、脚部51の下面から凹部57の下面までの寸法をいうものとする。
【0028】
改札機支持部材5には、通路板支持部材4と結合するためのネジ穴52が設けられる。このほかにも、目隠し中央通路板11をネジ止めするためのネジ穴53と、目隠しスロープ通路板12をネジ止めするためのネジ穴54と、自動改札機9を結合するためのネジ穴55と、サイドカバー13をネジ止めするためのネジ穴56が設けられる。通路板支持部材4と結合するためのネジ穴52は、凹部57の長尺方向の両端部近傍であって、脚部51よりも長尺方向の中心寄りの位置に設けられる。目隠し中央通路板11をネジ止めするためのネジ穴53は、凹部57の下面に設けられる。目隠しスロープ通路板12をネジ止めするためのネジ穴54は、改札機支持部材5の側面に設けられる。自動改札機9を取り付けるためのボルトを通すネジ穴55は、長尺方向の両端部に設けられる。サイドカバー13をネジ止めするためのネジ穴56は、改札機支持部材5の側面に設けられる。
【0029】
(その他の部材)
目隠し中央通路板11は、通路通行方向Pに長い平板状の部材であり、改札機支持部材5と中央通路板2との隙間を塞ぐ。目隠しスロープ通路板12は、断面が略「L」字形状の棒状の部材(アングル材)であり、改札機支持部材5とスロープ通路板3との隙間を塞ぐ。サイドカバー13は、通路通行方向Pに長い平板状の部材であり、改札機支持部材5の側面に設けられる開口部を塞ぐ。目隠し中央通路板11と目隠しスロープ通路板12とサイドカバー13には、それぞれ、改札機支持部材5にネジ止めするためのネジ穴111,121,131が設けられる。改札機スカート15は、上下方向視において略「コ」の字形状を有する部材である。改札機スカート15は、改札機支持部材5の通路通行方向Pの端部に取り付けられ、自動改札機9と設置面Fとの隙間を塞ぐ。これらの部材は、いずれも鋼板などからなり、プレス加工などによって形成される。そして、これらの部材は、ネジなどによって、改札機支持部材5または通路板支持部材4に着脱可能に取り付けられる。
【0030】
(係止部と係止穴)
次に、スロープ通路板3に設けられる係止部33と通路板支持部材4に設けられる係止穴41の構成例について、図4を参照して説明する。図4は、係止部33と係止穴41の構成例を模式的に示す部分断面図であり、下側から見た図である。図4に示すように、スロープ通路板3に設けられる係止部33は、水平部31の下面から下側に向かって突出する。係止部33は、突出方向の付け根側(上側)に設けられる首部331と、首部331よりも大径で突出方向の先端側(下側)に設けられる頭部332とを有する。係止部33は、例えば金属材料により形成され、スロープ通路板3の下面に溶接される。すなわち、係止部33は、スロープ通路板3の上面に突出しないように設けられる。通路板支持部材4の上面に設けられる係止穴41は、上下方向に貫通し、通路板支持部材4の短尺方向(通路通行方向P)に長い長穴である。係止穴41は、広幅部411と狭幅部412とを有する。広幅部411は、係止部33の大径の部分である頭部332を、上下方向に挿抜可能な寸法に形成される。狭幅部412は、広幅部411より狭く、スロープ通路板3の係止部33の頭部332は上下方向に挿抜不可能であるが、小径の部分である首部331は挿抜可能な寸法に形成される。そして、広幅部411は、通路板支持部材4の短尺方向の中央に設けられ、狭幅部412は、広幅部411の通路板支持部材4の短尺方向の両外側に、広幅部411に連続して設けられる。すなわち、係止穴41は、通路板支持部材中心線C2に関して線対称の形状を有する。ただし、狭幅部412は、広幅部411の通路通行方向Pの少なくとも一側に連続して設けられる構成であればよく、両側に設けられる構成でなくてもよい。
【0031】
架台1を組み立てる際には、係止部33を上側から矢印Aの向きに係止穴41の広幅部411に挿入し、その状態でスロープ通路板3を矢印Bの向き(通路板支持部材4の短尺方向の一方であって、通路通行方向Pの端側)にスライドさせるように移動させる。これにより、係止部33の付け根側の首部331が、係止穴41の狭幅部412に嵌まり込む。この状態では、係止部33の先端側の頭部332は、係止穴41から上側に挿抜不可能となる。なお、係止穴41は、通路板支持部材中心線C2に関して線対称の形状を有する。このため、通路板支持部材4が180°反転した向きであっても、同様の手順によって、係止部33を係止穴41に挿入して係止させることができる。
【0032】
(組み立て方法)
次に、本実施形態に係る架台1の組み立て方法について説明する。図5は、架台1の組み立て途中の状態を模式的に示す斜視図である。なお、本実施形態に係る架台1を設置する設置面Fは平面であればよい。また、設置面Fには、自動改札機9と管理システムなどとを接続するケーブルを敷設するための溝などを設けなくてもよい。なお、通路板支持部材4や改札機支持部材5を設置面Fに固定するためのアンカー(ボルト)などを、設置面Fに設けておいてもよい。
【0033】
まず、2本の通路板支持部材4を設置面Fに設置する。この際、それらの長尺方向が通路幅方向Bに平行で、通路通行方向Pに所定の間隔で離間するように設置する。次いで、図5に示すように、改札機支持部材5を設置面Fに設置する。この際、改札機支持部材5の長尺方向が通路通行方向Pに平行で、先に設置した2本の通路板支持部材4を跨ぐように設置する。前述のとおり、改札機支持部材5の脚部51の高さHは、通路板支持部材4の高さと同じか、またはそれよりも高い。このため、改札機支持部材5の脚部51の下面は設置面Fに接触する。そして、改札機支持部材5と2本の通路板支持部材4のそれぞれとを、図略のネジによって結合する。なお、通路板支持部材4と改札機支持部材5を、アンカーなどによって設置面Fに固定してもよい。特に、本実施形態に係る架台1を常設する場合や、仮設であっても長期間にわたって設置する場合には、設置面Fにアンカーを設け、このアンカーに固定することにより、設置後の位置ずれを防止できる。もちろん、設置面Fにアンカーを設けず、通路板支持部材4と改札機支持部材5とを設置面Fに固定しない構成であってもよい。
【0034】
なお、目隠し中央通路板11は、改札機支持部材5を設置面Fに設置するよりも前の段階で、凹部57の下面にネジ止めしておく。同様に、目隠しスロープ通路板12は、改札機支持部材5を設置面Fに設置するよりも前の段階で、改札機支持部材5の側面にネジ止めしておく。
【0035】
次いで、2枚のスロープ通路板3を設置する。この際、2枚のスロープ通路板3のそれぞれについて、水平部31の下面に設けられる係止部33を、通路板支持部材4の上面に設けられる係止穴41の広幅部411に上側から挿入する。そしてその状態で、2枚のスロープ通路板3のそれぞれを、通路板支持部材4に対して通路通行方向Pの端側(中央通路板2が設置される側とは反対側)にスライドさせるように移動させる。これにより、係止部33の首部331が係止穴41の狭幅部412に入り込む。その位置では、係止部33の頭部332が係止穴41から上下方向に挿抜不可能な状態に維持される。このように、本実施形態では、係止部33を係止穴41に挿入してスライドさせるだけで、スロープ通路板3を設置できる。
【0036】
スロープ通路板3が前述の手順で設置されると、スロープ通路板3の水平部31(すなわち、通路通行方向Pの中央寄りの縁部)は通路板支持部材4の上面に載せ置かれる。スロープ通路板3の傾斜部32の通路通行方向Pの端側の縁部は、設置面Fに直接に載せ置かれる。そして、水平部31の上面は設置面Fに対して平行となり、傾斜部32の上面は通路通行方向Pの中央側から端側に向かって下り傾斜となる。スロープ通路板3が設置されると、スロープ通路板3の通路幅方向Bの両側の縁部は、改札機支持部材5に取付けられた目隠しスロープ通路板12の上側に重畳する。このため、スロープ通路板3と改札機支持部材5との隙間は、目隠しスロープ通路板12によって塞がれる。
【0037】
次いで、中央通路板2を、先に設置した2枚のスロープ通路板3どうしの間に嵌め込むように設置する。これにより、中央通路板2の通路通行方向Pの端側の縁部のそれぞれは、2本の通路板支持部材4のそれぞれの上面に載せ置かれる。そして、中央通路板2は、2本の通路板支持部材4によって、設置面Fから上側に離れた位置に、その上面が設置面Fに平行となるように支持される。また、中央通路板2は、その通路幅方向Bの両側の縁部が改札機支持部材5と上下方向に重畳するのではなく、2本の改札機支持部材5どうしの間に嵌まり込むように設置される。中央通路板2が設置されると、中央通路板2の通路幅方向Bの両側の縁部は、改札機支持部材5に取付けられた目隠し中央通路板11の上側に重畳する。このため、中央通路板2と改札機支持部材5との隙間は、目隠し中央通路板11によって塞がれる。
【0038】
このように、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3とにより、自動改札機9の利用者の通路が形成される。このように形成された通路は、通路幅方向視において略台形となり、段差がない。また、前述のとおり、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3の上面には、滑り止めのための凹凸パターンを除いては、突起は設けられない。さらに、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3は、ネジ等により固定される構成ではないから、これらの上面にネジの頭部が突出することもない。このように、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3からなる通路の上面には、利用者のスムーズな通行を妨げるような突起が存在しない。
【0039】
また、本実施形態では、従来構成に比較して、通路の上面に段差が発生する可能性のある箇所を少なくできる。すなわち、特許文献1に記載の構成では、一対の架台(11)のそれぞれと通路板(12)との境界、一対の架台(11)のそれぞれとスロープ(13)との境界、の計4か所において段差が生じる可能性がある。同様に、特許文献2に記載の構成では、一対の支持部材(110)のそれぞれと天板(120)との境界、一対の支持部材(110)のそれぞれとスロープ板(130)との境界、の計4カ所において段差が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態では、通路の上面において段差が生じる可能性があるのは、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3それぞれの境界の計2カ所である。このように、本実施形態では、1枚の中央通路板2と2枚のスロープ通路板3を通路板支持部材4の上面に載せ置いて対向させることにより、従来構成に比較して、段差が生じる可能性のある箇所を少なくできる。
【0040】
自動改札機9の設置は、改札機支持部材5と通路板支持部材4とをネジにより結合した後の段階で行えばよい。この際、設置した自動改札機9と管理システムとを接続するケーブルを、改札機支持部材5に設けられる上下方向に貫通する開口部と、改札機支持部材5の脚部51どうしの間の凹部57を通じて引出す。そして、中央通路板2と2本の通路板支持部材4と設置面Fとに囲まれる空間に敷設する。ケーブルが引出されない改札機支持部材5の凹部57は、改札機支持部材5の側面にサイドカバー13をネジ止めすることによって塞がれる。また、改札機スカート15の取付けは、自動改札機9の設置の前までに行えばよい。サイドカバー13の取付けは、目隠し中央通路板11と目隠しスロープ通路板12の取付けと同じタイミングでよい。
【0041】
以上の手順によって、本実施形態に係る架台1の組み立てが完了する。なお、架台1の撤去は、前述とは逆の手順でよい。
【0042】
このように、本実施形態によれば、中央通路板2とスロープ通路板3をネジ等により固定する構成ではないから、ネジ等を用いる構成に比較して、設置や撤去の作業工数の削減を図ることができる。また、スロープ通路板3の設置は、係止部33を係止穴41に上側から挿入し、その状態で通路通行方向Pの端側にスライドさせるだけでよい。一方、中央通路板2の設置は、2枚のスロープ通路板3の間に嵌め込むだけでよい。したがって、作業が容易である。
【0043】
また、本実施形態によれば、メンテナンスの手間を削減できる。例えば、特許文献1のように、通路板(12)をネジ止めする構成では、利用客等が通路板(12)を通行する際の振動等によって、通路板(12)を固定しているネジが緩むことがある。このため、通路板(12)が外れないように、ネジの緩みを定期的に点検しなければならない。これに対して、本実施形態によれば、中央通路板2とスロープ通路板3の設置にネジを用いないから、ネジの緩みの点検をしなくてもよい。
【0044】
また、前述のとおり、中央通路板2とスロープ通路板3の上面には、滑り止めのための凹凸パターンが設けられる。このため、中央通路板2とスロープ通路板3の上面にすべり止めのシートなどを重ねて敷かなくてもよく、シートの敷設作業を削減できる。すなわち、滑り止めシートを用いる構成では、滑り止めシートを敷設する作業に加え、滑り止めシートが位置ずれしないように固定する作業と、縁部が捲れ上がらないように粘着テープなどを貼り付ける作業が必要になる。これに対して、本実施形態によれば、このような作業が不要になる。また、滑り止めシートを用いる構成では、滑り止めシートの縁部において、設置面Fとの間に段差が生じる。これに対して本実施形態では、このような段差が生じない。
【0045】
特に、特許文献1に記載のように、通路板(12)の固定にネジを用いる構成では、ネジの頭部が通路板(12)の上面に突出することから、通路板(12)の上面に滑り止めのシートを敷設してネジの頭部を覆うことにより、通路板(12)の上面の凹凸を緩和する構成が用いられることがある。このような構成では、ネジの緩みの点検のたびに、滑り止めシートの撤去と敷設の作業が必要になる。これに対して、本実施形態によれば、これらの作業が不要になるから、メンテナンスに要する手間を削減できる。なお、前述のとおり、中央通路板2とスロープ通路板3の上面には、滑り止めのための凹凸パターンが設けられる。このため、中央通路板2とスロープ通路板3の上面にすべり止めのシートなどを重ねて敷かなくても、滑り止めシートを敷設した構成と同様の効果が得られる。
【0046】
図6は、組み立て完了後における通路板支持部材4と中央通路板2とスロープ通路板3との位置関係を模式的に示す断面図である。図6に示すように、中央通路板2の通路通行方向Pの両縁部とスロープ通路板3の水平部31とは、通路板支持部材4の上面に直接に載せ置かれ、通路板支持部材4によって支持される。この状態では、中央通路板2の上面およびスロープ通路板3の水平部31の上面は設置面Fに対して平行となる。そして、中央通路板2およびスロープ通路板3の水平部31は同じ厚さであるから、中央通路板2とスロープ通路板3の水平部31との間に段差が生じない。なお、図6に示すように、中央通路板2とスロープ通路板3の水平部31の互いに対向する端部は、面取りされていることが好ましい。このような構成によれば、中央通路板2の上面高さとスロープ通路板3の水平部31の上面高さに差が生じた場合であっても、スムーズな通行の妨げとなるような段差面が生じないようにできる。
【0047】
スロープ通路板3の係止部33の首部331が通路板支持部材4の係止穴41の狭幅部412に嵌まり込んでおり、係止部33は上側に向かって係止穴41から抜け出ることができない状態となっている。そして、この状態で、2枚のスロープ通路板3どうしの間に、中央通路板2が設置されている。中央通路板2とスロープ通路板3の水平部31とは、通路板支持部材4の上面において上下方向に重畳しておらず、端面どうしが対向または接触している。このような構成であると、スロープ通路板3は、中央通路板2および他方のスロープ通路板3の存在によって、通路通行方向Pの中央側に向かって移動できない。したがって、係止部33の首部331が係止穴41の狭幅部412に嵌まり込んだ状態に維持される。この状態では、係止部33の大径部である頭部332が、上下方向に係止穴41の狭幅部412から挿抜不可能な状態に維持される。したがって、スロープ通路板3が通路板支持部材4から外れることがない。
【0048】
なお、中央通路板2は、ネジなどによって通路板支持部材4に結合される構成ではなく、自重によって、両端部が通路板支持部材4の上面に載せ置かれた状態に維持される。このような構成によれば、スロープ通路板3や中央通路板2を通路板支持部材4などにネジ止めしなくてもよいから、組み立て作業の単純化を図ることができる。また、中央通路板2は、2枚のスロープ通路板3の間に嵌まり込んだ状態にあるから、設置された位置から外れることがない。
【0049】
2本の通路板支持部材4の設置位置と、係止穴41の形状および寸法と、中央通路板2およびスロープ通路板3との隙間の寸法は、前記機能を実現するために適宜設定される。例えば、次のような寸法が適用できる。図6に示すように、係止部33が係止穴41に係止しており、スロープ通路板3がそれ以上は通路通行方向Pの端側に移動できない位置にある状態を想定する。図6において、寸法LSは、前述の位置における2枚のスロープ通路板3の端面どうしの距離である。寸法Mは、前述の位置から係止部33が係止穴41から抜け出ることができる位置までの距離である。寸法LMは、中央通路板2の通路通行方向Pの寸法である。そして、前述の位置において、これらの寸法および距離が、

S≧LM 数式(1)
S−LM<M 数式(2)

の両方を充足するようにする。数式(1)を充足することにより、中央通路板2を2枚のスロープ通路板3どうしの間に設置できる。ただし、中央通路板2とスロープ通路板3との境界の隙間ができるだけ小さくなるように、寸法LSと寸法LMの差はできるだけ小さいことが好ましい。数式(2)を充足することにより、中央通路板2が設置された状態では、スロープ通路板3が通路板支持部材4から外れないように維持できる。
【0050】
また、改札機支持部材5は中央通路板2とスロープ通路板3の通路幅方向Bの外側に設置され、上側に重ねて設置される構成ではない。このため、改札機支持部材5に自動改札機9が設置された状態であっても、中央通路板2やスロープ通路板3の設置や取外しが可能である。このような構成であると、自動改札機9と管理システムを接続するケーブルを、中央通路板2を取り外した状態で敷設することができる。このような構成であると、ケーブルの敷設状態の調整が容易である。このため、ケーブルを水平方向に並べ、高さ方向に重ならないように敷設できるから、ケーブルを敷設するためのスペースの高さ、すなわち、通路板支持部材4の高さを低くできる。例えば、特許文献2に記載のように、天板(120)が取り外せない構成では、ケーブルを通路幅方向Bの一方側から天板(120)の下側に差し込み、反対側から引き出すことになる。このような構成では、作業性の確保のために、ケーブルを敷設するスペースを大きくしなければならない。また、ケーブルの敷設状態の調整が困難であるから、ケーブルの敷設のためのスペースに余裕を持たせなければならない。このため、天板(120)の位置を高くしなければならない。これに対して、本実施形態では、前述のように通路板支持部材4の高さを低くして、中央通路板2の上面高さを低くできる。このため、スロープ通路板3の傾斜部32の傾斜角度を小さくでき、かつ、傾斜部32の通路通行方向Pの長さを小さくできる。そしてその結果、通行の際に利用客等にかかる負荷を低減できる。また、中央通路板2が取り外しできる構成であると、中央通路板2やスロープ通路板3の交換や、自動改札機9と管理システムを接続するケーブルのメンテナンスが容易となる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る架台1によれば、改札機支持部材5は直接に設置面Fに設置される。このような構成によれば、改札機支持部材5が2本の通路板支持部材4に支持される構成と比較して、自動改札機9を安定させることができる。
【0052】
なお、中央通路板2およびスロープ通路板3を設置する際には、これらに設けられる工具穴21,34に鍵状の工具を差し込み、この工具を用いて中央通路板2およびスロープ通路板3を取り扱う。中央通路板2やスロープ通路板3の上面は利用者が通行する通路であるため、設置や取外しの際に把持する部材(例えば取っ手など)が設けると、利用者のスムーズな通行の妨げになるおそれがある。一方、手掛になる部分が設けられない構成であると、スロープ通路板3をスライドさせる作業や中央通路板2を設置する作業の作業性が低い。そこで、本実施形態では、中央通路板2およびスロープ通路板3に工具穴21,34を設け、この工具穴21,34に鍵状の工具を差し込むことによって、中央通路板2やスロープ通路板3を取り扱う。このような構成によれば、中央通路板2およびスロープ通路板3の上面に利用者のスムーズな通行の妨げになるおそれがある突起を設けることなく、作業性の向上を図ることができる。
【0053】
ここで、工具穴21,34と工具避け穴42との関係、および、係止部33と係止穴41との関係について、図7を参照して説明する。図7は、工具穴21,34と工具避け穴42との関係および係止部33と係止穴41との関係を模式的に示す図であり、架台1が組み立てられた状態を下側から見た図である。図7に示すように、中央通路板2に設けられる工具穴21とスロープ通路板3の水平部31に設けられる工具穴34は、組み立てられた状態での上下方向視で、いずれも通路板支持部材4の上面に設けられる工具避け穴42に内包される位置に設けられる。
【0054】
具体的には、通路板支持部材4には、2つの工具避け穴42が、通路中心線C1に関して線対称の位置に設けられる。また、2つの工具避け穴42のそれぞれは、通路板支持部材中心線C2に関して線対称の形状を有する。例えば、工具避け穴42は、通路板支持部材4の短尺方向(通路通行方向P)に長い長穴が適用される。同様に、通路板支持部材4には、2つの係止穴41が、通路中心線C1に関して線対称の位置に設けられる。そして、2つの係止穴41のそれぞれは、通路板支持部材中心線C2に関して線対称の形状を有する。
【0055】
また、中央通路板2の2カ所の工具穴21と、スロープ通路板3の水平部31の2カ所の工具穴34も、それぞれ、通路中心線C1に関して線対称の位置に設けられる。さらに、中央通路板2の2カ所の工具穴21と、スロープ通路板3の水平部31の2カ所の工具穴34は、架台1が組み立てられた状態で、通路板支持部材中心線C2に関して線対称の位置に設けられる。このような構成であれば、工具避け穴42を通路板支持部材4の短尺方向に長い長穴とすることにより、1つの工具避け穴42に、中央通路板2の工具穴21とスロープ通路板3の工具穴34の両方を内包させることができる。また、このような構成であれば、通路板支持部材4が180°反転しても、工具避け穴42と工具穴21,34との位置関係が変わらない。このため、架台1の組み立てにおいて、通路板支持部材4を特定の向きに向けなくてもよく、作業性が向上する。
【0056】
同様に、通路板支持部材4には、2つの係止穴41が、通路中心線C1に関して線対称の位置に設けられる。また、2つの係止穴41のそれぞれは、通路板支持部材中心線C2に関して線対称の形状を有する。すなわち、通路板支持部材4の短尺方向(通路通行方向P)の中心に広幅部411が設けられ、その短尺方向の両側に狭幅部412が広幅部411に連続して設けられる。また、スロープ通路板3の2カ所の係止部33も、通路中心線C1に関して線対称の位置に設けられる。このような構成であれば、通路板支持部材4が180°反転しても、係止部33と係止穴41との位置関係が変わらない。このため、架台1の組み立てにおいて、通路板支持部材4を特定の向きに向けなくてもよく、作業性が向上する。
【0057】
ただし、通路板支持部材4に設けられる2つの係止穴41のそれぞれは、通路板支持部材中心線C2に関して線対称の形状でなくてもよい。すなわち、広幅部411の通路通行方向Pの一方にのみ、狭幅部412が連続して設けられる構成であってもよい。このように、広幅部411の通路通行方向Pの少なくとも一方に狭幅部412が設けられる構成であればよい。この場合には、組み立て作業において通路板支持部材4の向きが限定されることになるが、それ以外は、上述の効果を奏することができる。
【0058】
次に、本実施形態に係る架台1の変形例について説明する。自動改札機9の設置の規格としては、例えば次の(A)〜(C)の3種類の規格が存在する。(A)950mm幅の通路の両側に2台の自動改札機9が設置される規格。(B)1300mm幅の通路の両側に2台の自動改札機9が設置される規格。(C)750mm幅の通路の片側に1台の自動改札機9が設置される規格。なお、これらの通路幅寸法は、自動改札機9を含めた寸法である。
【0059】
本実施形態に係る架台1においては、上記の3つの規格に対応する中央通路板2と、スロープ通路板3と、通路板支持部材4とを用意し、規格に応じて使い分ける。なお、改札機支持部材5の構成は、規格によらず共通である。また、中央通路板2およびスロープ通路板3は、通路幅方向Bの寸法が規格に応じて設定されるが、その他の寸法や構成については前述のとおりである。
【0060】
図8(a)は、規格(A)に用いられる通路板支持部材4を示し、図8(b)は規格(B)に用いられる通路板支持部材4を示し、図8(c)は規格(C)に用いられる通路板支持部材4を示す。図8(a)(b)に示すように、規格(A)と規格(B)においては、通路幅方向Bの両側に自動改札機9を設置できる構成を有する。具体的には、長尺方向の中央部に、中央通路板2およびスロープ通路板3を載せ置く部分(以下、「通路部401」と称する)が設けられ、通路部401の長手方向の両側に改札機支持部材5と結合する部分(以下、「結合部402」と称する)が設けられる。通路部401には、前述のとおり工具避け穴42と係止穴41とが設けられる。結合部402には、改札機支持部材5と結合するためのネジ穴43と、連結板14をネジ止めするためのネジ穴44が設けられる。なお、規格(A)と規格(B)とで、規格に応じて通路部401の長尺方向寸法が相違する。ただし、結合部402の長尺方向寸法は同じである。また、規格(C)においては、通路幅方向Bの片側にのみ自動改札機9が設置されるため、長尺方向の一方に通路部401が設けられ、他方に結合部402が設けられる。規格(A)と規格(C)とで、通路部401の長尺方向寸法は同じである。
【0061】
次いで、本実施形態に係る架台1を通路幅方向Bに並列に並べて設置する構成について、図9を参照して説明する。図9は、架台1を並べて設置する構成を模式的に示す斜視図である。連結板14は、ネジ穴141が形成された平板状の部材である。本実施形態に係る架台1は、連結板14を用いて通路板支持部材4を長尺方向に直列に連結することによって、並列に並べて設置することができる。なお、連結方向(通路幅方向B)の最も端に位置する改札機支持部材5を除いては、サイドカバー13を取付けない。そして、自動改札機9と管理システムを接続するケーブルを、改札機支持部材5の凹部57をくぐらせるように敷設することによって、一群の自動改札機9から引き出すことができる。なお、通路板支持部材4どうしを長尺方向に直列に連結する構成以外の構成は、前述のとおりである。なお、図9では、図8(a)に示す通路板支持部材4どうしを直列に連結する構成を示したが、この構成に限定されない。自動改札機9の設置態様に応じて、図8(a)〜(c)に示す通路板支持部材4を適宜選択して連結すればよい。また、図9では、2本の通路板支持部材4が連結される構成を示したが、連結する数も限定されない。連結する数は、設置する自動改札機9の数に応じて適宜設定される。
【0062】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記各実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、自動改札機の架台に有効な技術である。そして、本発明によれば、設置作業や撤去作業が容易で作業工数を少なくできるとともに、通路の上面に突起が存在しないようにできる。
【符号の説明】
【0064】
1:自動改札機の架台
11:目隠し中央通路板
111:ネジ穴
12:目隠しスロープ通路板
121:ネジ穴
13:サイドカバー
131:ネジ穴
14:連結板
141:ネジ穴
15:改札機スカート
2:中央通路板
21:工具穴
3:スロープ通路板
31:水平部
32:傾斜部
33:係止部
331:首部
332:頭部
34:工具穴
4:通路板支持部材
401:通路部
402:結合部
41:係止穴
411;広幅部
412:狭幅部
42:工具避け穴
43:ネジ穴(改札機支持部材)
44:ネジ穴(連結板)
5:改札機支持部材
51:脚部
52:ネジ穴(通路板支持部材)
53:ネジ穴(目隠し中央通路板)
54:ネジ穴(目隠しスロープ通路板)
55:ネジ穴(改札機)
56:ネジ穴(サイドカバー)
57:凹部
9:自動改札機

1:通路中心線
2:通路板支持部材中心線
P:通路通行方向
B:通路幅方向
F:設置面
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9